JP2004285628A - 便座装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】便座装置において、腰掛便器上面にある、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに装飾を付与するのに、従来の方法では、単色以外は容易に行うことができなかった。
本発明は、前記の便蓋、便座、本体ケースに、塗膜の密着性が良好で、かつ細密な装飾が付与された便座装置を提供することにある。
【解決手段】便座装置において、腰掛便器上面にある、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースについて、極性基を有する付加重合物をオレフィン(共)重合体にグラフト共重合させた重合体であるプライマー、およびカラーコートを塗布し、かつ水圧転写による印刷層を形成する。
【選択図】 図1
本発明は、前記の便蓋、便座、本体ケースに、塗膜の密着性が良好で、かつ細密な装飾が付与された便座装置を提供することにある。
【解決手段】便座装置において、腰掛便器上面にある、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースについて、極性基を有する付加重合物をオレフィン(共)重合体にグラフト共重合させた重合体であるプライマー、およびカラーコートを塗布し、かつ水圧転写による印刷層を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腰掛便器上面にある、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースについて、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)への密着性が良好なプライマーまたはカラーコートを塗布し、かつ水圧転写による印刷層を形成することで、塗膜の密着性が良好で、かつ細密な装飾が付与された便座装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、便座装置において、便座に着座した時冷たい感触がしないことが好まれており、見た目に冷たい白色よりカラー製品が求められていた。またトイレの壁紙とのコーディネートから、カラーと模様のバリエーションが要求されていた。さらに高齢化社会により部室にポータブルトイレを置くことも増え、高い意匠性が要求されていた。このため便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに、装飾を付与することが不可欠となった。このため次の検討、対策がなされている。
【0003】
便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースを着色する方法として、射出成形時に樹脂に着色剤を練り込むことが行われている。しかし着色は単色しかできず、成形機において色換えの作業が煩雑であり、樹脂のパージによるむだもありエコロジーからも好ましくない。また色調ごとに製品を在庫する必要があった。
【0004】
また別の方法として、塗装することが行われている。(例えば、特許文献1参照)しかし微細な模様や、色調、濃度の微妙なグラディエーションを、複雑な形状に行うことはできない。さらにポリオレフィンのような塗膜の密着性が良くない樹脂には適用できなかった。
【0005】
また射出成形時に、模様を印刷し真空成形したシートを金型にセットして、一体成形する方法も検討されている。(例えば、特許文献2参照) これも模様ごとに製品を在庫しなくてはならず、製品の形状ごとにシートを準備する必要もある。また複雑な形状ではシートの貼り合わせが困難である。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−54489
【0007】
【特許文献2】
特開2002−17612
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
腰掛便器上面にある、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに装飾を付与するのに、上記の方法では、単色以外は容易に行うことができなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、腰掛便器上面に設置される、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに、塗膜の密着性が良好で、かつ微細な模様や、色調、濃度の微妙なグラディエーションのついた細密な装飾が付与された便座装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明における便座装置は、腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、極性基を有する付加重合物をオレフィン(共)重合体にグラフト共重合させた重合体であるプライマーを第一層として塗布し、第二層としてカラーコートを塗布し、第三層として印刷層を水圧転写で形成し、さらに第四層としてトップコートを塗布したことを特徴とする。このように構成することにより、塗膜の密着性が良好で、かつ細密な装飾を付与することができる。
またプライマーを塗布する前に、便蓋、便座、本体ケースに密着性を向上させる表面改質処理を行うとなお良い。
【0011】
本発明における便座装置は、腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、第一層としてカラーコートを塗布し、第二層として印刷層を水圧転写で形成し、さらに第三層としてトップコートを塗布したことを特徴とする。
便蓋、便座、本体ケースが密着性の良い樹脂であれば、プライマーを省略することができる。
カラーコートは印刷層の色に合せることが望ましい。これにより便蓋、便座、本体ケースの樹脂自体の色調に影響されることなく、装飾を付与することができる。
【0012】
本発明における便座装置は、腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、第一層として印刷層を水圧転写で形成し、第二層としてトップコートを塗布したことを特徴とする。
便蓋、便座、本体ケースの樹脂自体の色調、濃度が印刷層に近い、または印刷層の色調の濃度が濃く下地の色調に影響されないときは、カラーコートを省略することができる。
【0013】
水圧転写の工程は、まず水溶性または水膨潤性のシートの表面に印刷層を形成する。これを印刷層を上にして水面に浮かべ、プライマーおよび/またはカラーコートを塗布した便蓋、便座、本体ケースを上方から押し付けて反転し、表面に印刷層を形成する。さらに水溶性または水膨潤性のシートを水洗いして除去し、乾燥する。
【0014】
トップコートは、印刷層が透過して見えるような透明または半透明なコートであれば良い。またトップコートに顔料、染料などの色材を添加することで、便蓋、便座、本体ケースの外観の光沢を低減することができる。また逆に、透明なトップコートで膜厚を厚く塗布することで、便蓋、便座、本体ケースの外観に光沢を付与し、琺瑯に似た質感を与えることもできる。また透明なトップコートに金属酸化物の粉体を添加することで、同様に、外観に光沢を付与することができる。さらに便蓋、便座、本体ケースの表面を平面や曲面ではなく凹凸のある形状にして、印刷層の模様との相乗効果から、装飾に立体感を付与することができる。
【0015】
本発明における便座装置は、前記のトップコートが、耐擦傷性、及び/または撥水性、及び/または抗菌性を有することを特徴とする。これにより、便蓋、便座、本体ケースを長期間にわたり使用しても、傷が付きにくく、清潔さを保持することができる。
【0016】
さらにカラーコート、トップコートを塗布する前に、被塗装物に密着性を向上させる表面改質処理を行っても良い。
【0017】
なお便蓋、便座、本体ケースへの装飾は、全面に付与してもよいし、一部分のみに行っても良い。
【0018】
さらに本発明は、腰掛便器上面に設置される、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに、塗膜の密着性が良好で、かつ微細な模様や、色調、濃度の微妙なグラディエーションのついた細密な装飾が付与された便座装置を提供することにあるが、前記の便座装置に単色で均一な着色を付与することを妨げるものではない。
【0019】
本発明における便座装置は、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つが、オレフィン重合体であることを特徴とする。
これによりプライマー層とさらに強固な密着が得られるだけでなく、洗剤など耐環境性に対しても有効な部材が提供できる。
【0020】
本発明における便座装置は、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つが、プロピレン重合体の100重量部に対し結晶核剤を0.05〜5重量部添加したブロックタイプのプロピレン重合体であり、かつ反射X線回折法で測定した表面層の結晶化度が60%以上であることを特徴とする。
これにより、優れた耐擦傷性を付与させることができる。また結晶化度の上限は、特に制限されるものではないが、耐衝撃性、寸法安定性を勘案すると80%以下であることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を以下に説明する。
【0022】
便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースの材質は、特に限定はされないが、樹脂の例として、アクリロニトリルブタジエンポリスチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレ−ト樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタ−ル樹脂(POM)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(PFEP)テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエ−テル共重合体樹脂(PFA)、などがある。
【0023】
前記の便蓋、便座、本体ケースの材質が金属の場合は、ステンレス合金、真鍮などの耐食性合金であれば何ら制限なく使用できる。耐食性の金属でなくとも耐食性の金属メッキを施せば、いかなる金属をも使用できる。
【0024】
プライマーにおいて、極性基を有する付加重合物は、特に限定はされないが、例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するα、β−不飽和ビニル単量体、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノn−プロピルエステル、マレイン酸モノイソプロピルエステルなどのモノオレフィンジカルボン酸モノアルキルエステル、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、マレイン酸無水物など不飽和カルボン酸無水物などがある。
【0025】
プライマーにおいて、オレフィン(共)重合体は、特に限定はされないが、例として、プロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体などがある。
【0026】
オレフィン(共)重合体に極性基を有する付加重合物をグラフト共重合させる方法としては、種々の公知の方法があげられる。例えば、オレフィン(共)重合体を有機溶媒に溶解し、極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を添加し、加熱攪拌してグラフト共重合させる方法;オレフィン(共)重合体を加熱溶融し、これに極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を添加し攪拌してグラフト共重合させる方法;オレフィン(共)重合体、極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト共重合させる方法;オレフィン(共)重合体の粉末に、極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解してなる溶液を含浸させた後、オレフィン(共)重合体の粉末が溶解しない温度まで加熱してグラフト共重合させる方法などがあげられる。
【0027】
プライマーは、極性基を有する付加重合物をオレフィン(共)重合体にグラフト共重合させた重合体を、有機溶剤に溶解させてなるものである。よって有機溶剤中でグラフト重合を行った溶液そのものを、または適宜に有機溶剤に希釈して、プライマーとして良い。あるいはグラフト共重合体を単離し、これを有機溶剤に溶解させても良い。また前記の反応器中で無溶剤にてオレフィン(共)重合体を加熱、溶融させる、あるいは押出機にて加熱混練して、グラフト共重合を行った後、得られたグラフト共重合体を有機溶剤に溶解させても良い。またポレオレフィンの基材は、従来の塗料では、塗膜の密着性が良くなかった。しかし本発明において、グラフト共重合体中のオレフィン(共)重合体の主鎖が有機溶剤に溶解しつつ、ポレオレフィンの基材に分子間力とアンカー効果により密着し、かつ極性基が印刷層との密着性を向上させることができる。
【0028】
グラフト共重合体中での極性基を有する付加重合物の含有量が0.1〜20重量%となるのが良い。またグラフト共重合体と有機溶剤の配合量は、グラフト共重合体が80〜5重量部、有機溶剤が20〜95重量部が良い。
【0029】
プライマー、カラーコート、トップコートを塗布する前に、被塗装物に密着性を向上させる表面改質処理を行うとなお良い。例として、脱脂処理、アルカリ処理、酸処理、プラズマ処理、紫外線処理などがある。
【0030】
さらにプライマー、カラーコート、トップコートのコーティングの方法としては、スプレーが好適であるが、特に限定されるものではなく、例として、ハケ塗り、スプレー、浸漬(ディッピング)、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、CVD法、真空蒸着法などの通常の各種コート方法を選択することができる。
【0031】
プライマー、カラーコート、トップコートの硬化方法については、硬化後に良好な被膜性能が得られる方法であれば良く特に限定はされないが、例として常温で硬化、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などが適用できる。また熱硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される硬化被膜性能や、被塗布物の耐熱性などに応じて、常温から適当な加熱温度までの範囲をとることができる。
【0032】
プライマーの厚みは、特に限定はされないが、例として、0.1〜50μmが好ましいが、0.5〜10μmがより好ましい。この厚みが薄すぎると密着性や耐候性が得られない恐れがあり、厚すぎると乾燥時に発泡等の恐れがある。
【0033】
カラーコート、トップコートの厚みは、特に制限はなく、例として、0.1〜100μm程度であればよいが、被膜が長期的に安定に密着、保持され、かつ、クラックや剥離が発生しないためには、0.5〜20μmが好ましい。
【0034】
カラーコートには、顔料、染料等の着色剤を添加することにより着色可能である。
【0035】
使用できる顔料としては、特に限定はされないが、例として、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエローなどの有機顔料、さらに、二酸化チタン、硫酸バリウム、ベンガラ、複合金属酸化物、アルミニウム箔、二酸化チタンで表面を被覆したマイカなどの無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0036】
顔料の分散は、特に限定はされず、通常の方法、例として、ダイノーミール、ペイントシェーカーなどにより顔料を直接分散させる方法などでよい。その際、分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤などの使用が可能である。顔料の添加量は、顔料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。顔料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0037】
使用できる染料としては、特に限定はされないが、例として、アゾ系、アントラキノン系、インジコイド系、硫化物系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系などの染料がある。これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0038】
染料の添加量は、染料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。染料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0039】
またカラーコートに添加剤を添加しても良い。添加剤は、例として、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、塩素捕捉剤、無機質繊維、アンチブロッキング剤、目ヤニ防止剤、界面活性剤などがある。
【0040】
またプライマーおよび/またはトップコートに、必要に応じ、調色のために顔料、染料などの着色剤が含まれていてもよい。使用可能な着色剤としては、カラーコートに添加可能な前述したものがあげられる。プライマーまたはトップコートへの着色剤の配合量の好ましい数値範囲についても、前述のカラーコートの場合と同様である。
【0041】
さらにプライマーおよび/またはトップコートに、添加剤が含まれていても良い。使用可能な添加剤としては、カラーコートに添加可能な前述したものがあげられる。
【0042】
水圧転写において、水溶性または水膨潤性のシートは、特に限定されるものではないが、例として、デンプン系高分子材料、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアルコールを主体とする混合樹脂、ポリビニルアルコールとデンプンを主体とする混合材料、デキストリン、ゼラチン、ニカワ、カゼイン、シェラック、アラビアゴム、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダなどがある。さらに水溶性または水膨潤性のシートに印刷層を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例として、凹版印刷、平版印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、ハケ塗り、ヘラ塗り、吹付け、描画などの通常の印刷方法を選択することができる。
【0043】
印刷層には、紫外線吸収剤、光安定剤を添加しても良い。紫外線吸収剤の添加量は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.5〜10重量部である。また光安定剤は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.5〜10重量部である。
【0044】
また水溶性または水膨潤性のシートに印刷層を形成し、さらに活性剤を含有する膜を塗布しても良い。活性剤は有機溶剤で、印刷層を溶解、膨潤し、印刷層の接着性を向上させる。活性剤を含有する膜を塗布する方法は、特に限定されるものではないが、例として、グラビアコート、オフセットグラビアコート、ロールコート、カーテンフローコート、バーコート、ハケ塗り、スプレー、超音波コートなどの通常の塗布方法を選択することができる。活性剤の添加量は、特に限定はされないが、例として1〜50g/m2である。また活性剤を含有する膜に無機質繊維、可塑剤を添加しても良い。無機質繊維の添加量は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、5〜30重量部である。また可塑剤は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、20〜100重量部である。
【0045】
また水溶性または水膨潤性のシートはロール状から水面に浮かべ、便蓋、便座、本体ケースの全体に印刷層を形成しても良く、または特定の形状にカットし、水面に浮かべて一部分にだけ印刷層を形成しても良い。
【0046】
またトップコートには、耐擦傷性向上のため、無機微粒子を含有することができる。
【0047】
無機微粒子は、例として、コロイダルシリカ、酸化アンチモン・ゾル、酸化スズ・ゾル、酸化チタンと酸化鉄の複合微粒子、酸化チタン・ゾル、酸化セリウムと酸化チタンの複合微粒子、表面被覆処理した表面改質酸化チタン微粒子、酸化タングステン・ゾルなどがある。またこれらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。さらにバインダーは、例として、オルガノアルコキシシラン化合物および/またはその加水分解物、多官能アクリレート、多官能メタクリレートなどがある。またエポキシ樹脂を併用しても良い。
【0048】
また無機微粒子の好ましい粒径は、1〜300μmの範囲である。
【0049】
無機微粒子の配合割合は、塗料中での全重合化合物100重量部に対し、5重量部未満では表面硬化による耐擦傷性向上が認められず、80重量部を超えると硬化しにくくなり、クラックが発生するようになる。したがって、5〜80重量部であることが望ましい。
【0050】
またトップコートには、撥水性向上のため、シリコ−ン樹脂またはフッ素樹脂を含有することができる。
【0051】
トップコートに含有させるシリコーン樹脂としては、例として、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーンなどのシリコーン、およびそれらの変性樹脂としてアルキッド変性、ポリエステル変性、エポキシ変性、アクリル変性、フェノール変性、ウレタン変性、メラミン変性などの変性シリコーンがあるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
トップコートに含有させるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(PFEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)などがある。
【0053】
さらにトップコートには、抗菌剤を添加配合することもできる。
【0054】
抗菌剤としては、無機系抗菌剤として、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀等。銀、銅、亜鉛、錫を担持したゼオライト。銀、銅、亜鉛、錫を担持したシリカゲルなどがあるが、これに限定するものではない。
【0055】
配合割合については塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.1重量部未満では抗菌性が認められず、5重量部を越えると着色や劣化など樹脂組成物の特性を著しく損う。したがって、0.3〜3重量部であることが望ましい。
【0056】
有機系抗菌剤として、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどイミダゾール誘導体、シクロフルアニドなどN−ハロアルキルチオ系化合物、10−オキシビスフェノキサアルシンなどフェニルエーテル誘導体、セシルジメチルエチルアンモニウムブロミドなど第4級アンモニウム塩および2、3、5、6テトラコロル−4−(メチルスルホニル)ピリジンなどスルホン誘導体などがあるが、これに限定するものではない。
【0057】
配合割合については、有機系防かび剤については、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.02重量部未満では防かび性はほとんどなく、5重量部を越えるとブルームするなど不具合が発生する。したがって、0.05〜1重量部の範囲であることが望ましい。
【0058】
プロピレン重合体は、特に限定されるものではないが、プロピレン単独重合体が最も好適である。またプロピレンでないα−オレフィンをプロピレンと共重合させた共重合体にしても良い。プロピレンでないα−オレフィンとしては、例として、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチルー1−ペンテンなどがある。またこれらを2種以上含有することもできる。さらにランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれでもよいが、特にブロック共重合体が好ましい。またプロピレンでないα−オレフィンの含有量は、単量体単位で3.0モル%未満が好ましい。
【0059】
プロピレン重合体には、他の樹脂を混合しても良い。他の樹脂としては、例として、エチレン、1−ブテン、1−ペンチン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの単独共重合体、またはα−オレフィンとプロピレンのブロック共重合体あるいはランダム共重合体などがある。
【0060】
射出成形体の結晶性を高めるために、電子供与体を添加しても良い。電子供与体としては、例として、エーテル、アミン、アミド、含硫黄化合物、ニトリル、カルボン酸、酸アミド、酸無水物、酸エステル、有機ケイ素化合物などがある。このうち有機ケイ素化合物が最も好適である。
【0061】
結晶化度は、プロピレン重合体の表面層における結晶成分の量を示す指標であり、反射X線回折測定によって求められる値である。表面層の結晶化度は、薄膜試料装置を装着したX線回折装置において、表面と入射X線との成す角度を1.0°となるように被測定物を設置した状態で回折強度を測定し、得られたX線回折強度曲線を非晶質ハローと各結晶質ピークに波形分離を行い、非晶質ハローの面積(非晶質ハローの積分強度)と全結晶質ピークの面積(各結晶質ピークの積分強度の総和)から下記の(1)式によって求められる値である。
【0062】
表面層の結晶化度=Sc/(Sc+Sa)×100 (%)・・・・(1)
ただし、Sc:全結晶質ピークの面積Sa:非晶質ハローの面積
【0063】
反射X線回折法で測定した結晶化度が、プロピレン重合体において表面から100μm以内で60%以上にすることにより、優れた耐擦傷性を付与させることができる。また結晶化度の上限は、特に制限されるものではないが、耐衝撃性、寸法安定性を勘案すると80%以下であることが好ましい。
【0064】
結晶核剤は、特に限定されるものではないが、例として、Al−p−t−ブチルベンゾエート、β−ナフト酸ナトリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム、シクロペンタンカルボン酸ナトリウムなどのカルボン酸金属塩系化合物;ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸マグネシウム塩、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、2,2−メチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、2,2−メチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸マグネシウム塩、2,2−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸塩リチウム、2,2−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、ビスー(4−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、ビスー(4−t−ブチルフェニル)リン酸マグネシウム塩などの芳香族リン酸金属塩系化合物;ジベンジリデンソルビトール、1.3,2.4−ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(ブチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(メトキシベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(エトキシベンジリデン)ソルビトール、1.3−クロルベンジリデン、2.4−メチルベンジリデンソルビトール、モノ(メチル)ジベンジリデンソルビトールなどのジベンジリデンソルビトール系化合物;シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、微粉タルク、マイカ、ミョウバン、顔料などの無機化合物などがある。このうち、特に、Al−p−t−ブチルベンゾエート、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸金属塩などが、耐擦傷性を向上させる上で最も好適である。 また2種以上の結晶核剤を併用してもよい。
【0065】
結晶核剤は、プロピレン重合体の100重量部に対して、0.05〜5重量部添加するのが好ましく、0.1〜3重量部が特に好ましい。添加量が0.05重量部未満では所定の耐擦傷性にならず、5重量部を超えると添加した効果が飽和する。
【0066】
プロピレン重合体において、表面層の結晶化度をさらに向上させるために、前記の結晶核剤の添加に加えて、表面層に特定の熱履歴を与える工程を併用することができる。熱履歴を与える方法は、特に限定されないが、好適な方法としては、射出成形後の成形体の表面温度を80℃から当該樹脂の融解温度未満の範囲内で、20秒〜5時間保持する方法がある。具体的には金型の内面温度を調節して、成形体の表面温度が所定時間、所定温度に保たれるようにする。
【0067】
またプロピレン重合体には、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、着色剤、無機充填剤、抗菌剤、芳香剤などを添加しても良い。
【0068】
さらにプロピレン重合体の射出成形方法としては、特に限定されるものではないが、例として、単軸射出成形、多軸射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、ガス圧縮射出成形、メルトコア射出成形、インサート射出成形、コアバック射出成形、二色射出成形などがある。
【0069】
以上説明した本発明を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明すると、図1は本発明に係わる第1乃至8の実施例を表す装飾の層構成の概念図、表1は第1乃至8の実施例の性能評価である。
【0070】
図1、表1に示す本発明の第1乃至第8の実施例を説明する。図1は装飾の層構成であり、2種類の層構成を示している。一つとして、便蓋、本体ケースに、第一層としてプライマー、第二層としてカラーコート、第三層として印刷層、第四層としてトップコートにしたものである。
【0071】
図2は、便蓋、本体ケースに、第一層としてカラーコート、第二層として印刷層、第三層としてトップコートにしたものである。便蓋の材質は高結晶性のブロックタイプのポリプロピレンで、タルク、フィラーを添加していないグレードを使用している。また本体ケースの表示部はABS樹脂で、同様にタルク、フィラーを添加していない。
【0072】
これらに前記の2種類の装飾を付与し、以下の方法で、密着性、ロックウェル硬度、鉛筆硬度、耐傷付性、光沢度について評価した。
[密着性]
試験片にカッターで1mm×1mmの碁盤目を100目入れ、セロハンテープを貼り、剥がした。これを20回行い、剥離しなかった目の数を数えた。
[ロックウェル硬度]
JIS K 7202(Rスケール)に準じて行った。
[鉛筆硬度]
JIS K5400に準じて行った。具体的には,直径2mmφの鉄ピンを試験片に対し45°の方向にセットし,100gの荷重を加えながら150mm/秒の一定速度において試験片表面を引っ掻き,その傷跡を基準に基づき評価した。
[耐傷付性]
ラビングテスターの先端にフェルトを取り付け、その上から便座を掃除する際使用する可能性の高い、綿布、トイレットペーパー被せて、3kgの荷重で試験片表面を5往復擦り、耐傷つき性を評価した。なお、耐傷つき性の比較は目視にて観察し、傷つきなしを(○)、摺動部全面に傷を(×)、その中間を(△)として評価した。
[光沢度]
JIS−Z8741に準じて,光沢測定器により60°鏡面グロス値を測定して評価した。
【0073】
以下本発明を更に具体的に説明するための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【表1】
下記表は本発明に係る第1乃至8の実施例の仕様と試験結果を表した一覧表である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1乃至8の実施例を表す装飾の層構成の概念図である。
【図2】本発明に係る他の実施例を表す装飾の層構成の概念図である。
【符号の説明】
1…便蓋または便座または本体ケース、2…プライマー、3…カラーコート、4…印刷層、5…トップコート
【発明の属する技術分野】
本発明は、腰掛便器上面にある、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースについて、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)への密着性が良好なプライマーまたはカラーコートを塗布し、かつ水圧転写による印刷層を形成することで、塗膜の密着性が良好で、かつ細密な装飾が付与された便座装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、便座装置において、便座に着座した時冷たい感触がしないことが好まれており、見た目に冷たい白色よりカラー製品が求められていた。またトイレの壁紙とのコーディネートから、カラーと模様のバリエーションが要求されていた。さらに高齢化社会により部室にポータブルトイレを置くことも増え、高い意匠性が要求されていた。このため便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに、装飾を付与することが不可欠となった。このため次の検討、対策がなされている。
【0003】
便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースを着色する方法として、射出成形時に樹脂に着色剤を練り込むことが行われている。しかし着色は単色しかできず、成形機において色換えの作業が煩雑であり、樹脂のパージによるむだもありエコロジーからも好ましくない。また色調ごとに製品を在庫する必要があった。
【0004】
また別の方法として、塗装することが行われている。(例えば、特許文献1参照)しかし微細な模様や、色調、濃度の微妙なグラディエーションを、複雑な形状に行うことはできない。さらにポリオレフィンのような塗膜の密着性が良くない樹脂には適用できなかった。
【0005】
また射出成形時に、模様を印刷し真空成形したシートを金型にセットして、一体成形する方法も検討されている。(例えば、特許文献2参照) これも模様ごとに製品を在庫しなくてはならず、製品の形状ごとにシートを準備する必要もある。また複雑な形状ではシートの貼り合わせが困難である。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−54489
【0007】
【特許文献2】
特開2002−17612
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
腰掛便器上面にある、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに装飾を付与するのに、上記の方法では、単色以外は容易に行うことができなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、腰掛便器上面に設置される、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに、塗膜の密着性が良好で、かつ微細な模様や、色調、濃度の微妙なグラディエーションのついた細密な装飾が付与された便座装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明における便座装置は、腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、極性基を有する付加重合物をオレフィン(共)重合体にグラフト共重合させた重合体であるプライマーを第一層として塗布し、第二層としてカラーコートを塗布し、第三層として印刷層を水圧転写で形成し、さらに第四層としてトップコートを塗布したことを特徴とする。このように構成することにより、塗膜の密着性が良好で、かつ細密な装飾を付与することができる。
またプライマーを塗布する前に、便蓋、便座、本体ケースに密着性を向上させる表面改質処理を行うとなお良い。
【0011】
本発明における便座装置は、腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、第一層としてカラーコートを塗布し、第二層として印刷層を水圧転写で形成し、さらに第三層としてトップコートを塗布したことを特徴とする。
便蓋、便座、本体ケースが密着性の良い樹脂であれば、プライマーを省略することができる。
カラーコートは印刷層の色に合せることが望ましい。これにより便蓋、便座、本体ケースの樹脂自体の色調に影響されることなく、装飾を付与することができる。
【0012】
本発明における便座装置は、腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、第一層として印刷層を水圧転写で形成し、第二層としてトップコートを塗布したことを特徴とする。
便蓋、便座、本体ケースの樹脂自体の色調、濃度が印刷層に近い、または印刷層の色調の濃度が濃く下地の色調に影響されないときは、カラーコートを省略することができる。
【0013】
水圧転写の工程は、まず水溶性または水膨潤性のシートの表面に印刷層を形成する。これを印刷層を上にして水面に浮かべ、プライマーおよび/またはカラーコートを塗布した便蓋、便座、本体ケースを上方から押し付けて反転し、表面に印刷層を形成する。さらに水溶性または水膨潤性のシートを水洗いして除去し、乾燥する。
【0014】
トップコートは、印刷層が透過して見えるような透明または半透明なコートであれば良い。またトップコートに顔料、染料などの色材を添加することで、便蓋、便座、本体ケースの外観の光沢を低減することができる。また逆に、透明なトップコートで膜厚を厚く塗布することで、便蓋、便座、本体ケースの外観に光沢を付与し、琺瑯に似た質感を与えることもできる。また透明なトップコートに金属酸化物の粉体を添加することで、同様に、外観に光沢を付与することができる。さらに便蓋、便座、本体ケースの表面を平面や曲面ではなく凹凸のある形状にして、印刷層の模様との相乗効果から、装飾に立体感を付与することができる。
【0015】
本発明における便座装置は、前記のトップコートが、耐擦傷性、及び/または撥水性、及び/または抗菌性を有することを特徴とする。これにより、便蓋、便座、本体ケースを長期間にわたり使用しても、傷が付きにくく、清潔さを保持することができる。
【0016】
さらにカラーコート、トップコートを塗布する前に、被塗装物に密着性を向上させる表面改質処理を行っても良い。
【0017】
なお便蓋、便座、本体ケースへの装飾は、全面に付与してもよいし、一部分のみに行っても良い。
【0018】
さらに本発明は、腰掛便器上面に設置される、便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースに、塗膜の密着性が良好で、かつ微細な模様や、色調、濃度の微妙なグラディエーションのついた細密な装飾が付与された便座装置を提供することにあるが、前記の便座装置に単色で均一な着色を付与することを妨げるものではない。
【0019】
本発明における便座装置は、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つが、オレフィン重合体であることを特徴とする。
これによりプライマー層とさらに強固な密着が得られるだけでなく、洗剤など耐環境性に対しても有効な部材が提供できる。
【0020】
本発明における便座装置は、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つが、プロピレン重合体の100重量部に対し結晶核剤を0.05〜5重量部添加したブロックタイプのプロピレン重合体であり、かつ反射X線回折法で測定した表面層の結晶化度が60%以上であることを特徴とする。
これにより、優れた耐擦傷性を付与させることができる。また結晶化度の上限は、特に制限されるものではないが、耐衝撃性、寸法安定性を勘案すると80%以下であることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を以下に説明する。
【0022】
便蓋、便座、内部に制御装置などを収納した本体ケースの材質は、特に限定はされないが、樹脂の例として、アクリロニトリルブタジエンポリスチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレ−ト樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタ−ル樹脂(POM)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(PFEP)テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエ−テル共重合体樹脂(PFA)、などがある。
【0023】
前記の便蓋、便座、本体ケースの材質が金属の場合は、ステンレス合金、真鍮などの耐食性合金であれば何ら制限なく使用できる。耐食性の金属でなくとも耐食性の金属メッキを施せば、いかなる金属をも使用できる。
【0024】
プライマーにおいて、極性基を有する付加重合物は、特に限定はされないが、例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するα、β−不飽和ビニル単量体、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノn−プロピルエステル、マレイン酸モノイソプロピルエステルなどのモノオレフィンジカルボン酸モノアルキルエステル、マレイン酸などの不飽和カルボン酸、マレイン酸無水物など不飽和カルボン酸無水物などがある。
【0025】
プライマーにおいて、オレフィン(共)重合体は、特に限定はされないが、例として、プロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体などがある。
【0026】
オレフィン(共)重合体に極性基を有する付加重合物をグラフト共重合させる方法としては、種々の公知の方法があげられる。例えば、オレフィン(共)重合体を有機溶媒に溶解し、極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を添加し、加熱攪拌してグラフト共重合させる方法;オレフィン(共)重合体を加熱溶融し、これに極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を添加し攪拌してグラフト共重合させる方法;オレフィン(共)重合体、極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を押出機に供給して加熱混練しながらグラフト共重合させる方法;オレフィン(共)重合体の粉末に、極性基を有する付加重合物およびラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解してなる溶液を含浸させた後、オレフィン(共)重合体の粉末が溶解しない温度まで加熱してグラフト共重合させる方法などがあげられる。
【0027】
プライマーは、極性基を有する付加重合物をオレフィン(共)重合体にグラフト共重合させた重合体を、有機溶剤に溶解させてなるものである。よって有機溶剤中でグラフト重合を行った溶液そのものを、または適宜に有機溶剤に希釈して、プライマーとして良い。あるいはグラフト共重合体を単離し、これを有機溶剤に溶解させても良い。また前記の反応器中で無溶剤にてオレフィン(共)重合体を加熱、溶融させる、あるいは押出機にて加熱混練して、グラフト共重合を行った後、得られたグラフト共重合体を有機溶剤に溶解させても良い。またポレオレフィンの基材は、従来の塗料では、塗膜の密着性が良くなかった。しかし本発明において、グラフト共重合体中のオレフィン(共)重合体の主鎖が有機溶剤に溶解しつつ、ポレオレフィンの基材に分子間力とアンカー効果により密着し、かつ極性基が印刷層との密着性を向上させることができる。
【0028】
グラフト共重合体中での極性基を有する付加重合物の含有量が0.1〜20重量%となるのが良い。またグラフト共重合体と有機溶剤の配合量は、グラフト共重合体が80〜5重量部、有機溶剤が20〜95重量部が良い。
【0029】
プライマー、カラーコート、トップコートを塗布する前に、被塗装物に密着性を向上させる表面改質処理を行うとなお良い。例として、脱脂処理、アルカリ処理、酸処理、プラズマ処理、紫外線処理などがある。
【0030】
さらにプライマー、カラーコート、トップコートのコーティングの方法としては、スプレーが好適であるが、特に限定されるものではなく、例として、ハケ塗り、スプレー、浸漬(ディッピング)、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、CVD法、真空蒸着法などの通常の各種コート方法を選択することができる。
【0031】
プライマー、カラーコート、トップコートの硬化方法については、硬化後に良好な被膜性能が得られる方法であれば良く特に限定はされないが、例として常温で硬化、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などが適用できる。また熱硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される硬化被膜性能や、被塗布物の耐熱性などに応じて、常温から適当な加熱温度までの範囲をとることができる。
【0032】
プライマーの厚みは、特に限定はされないが、例として、0.1〜50μmが好ましいが、0.5〜10μmがより好ましい。この厚みが薄すぎると密着性や耐候性が得られない恐れがあり、厚すぎると乾燥時に発泡等の恐れがある。
【0033】
カラーコート、トップコートの厚みは、特に制限はなく、例として、0.1〜100μm程度であればよいが、被膜が長期的に安定に密着、保持され、かつ、クラックや剥離が発生しないためには、0.5〜20μmが好ましい。
【0034】
カラーコートには、顔料、染料等の着色剤を添加することにより着色可能である。
【0035】
使用できる顔料としては、特に限定はされないが、例として、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエローなどの有機顔料、さらに、二酸化チタン、硫酸バリウム、ベンガラ、複合金属酸化物、アルミニウム箔、二酸化チタンで表面を被覆したマイカなどの無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0036】
顔料の分散は、特に限定はされず、通常の方法、例として、ダイノーミール、ペイントシェーカーなどにより顔料を直接分散させる方法などでよい。その際、分散剤、分散助剤、増粘剤、カップリング剤などの使用が可能である。顔料の添加量は、顔料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、たとえば、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。顔料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0037】
使用できる染料としては、特に限定はされないが、例として、アゾ系、アントラキノン系、インジコイド系、硫化物系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系などの染料がある。これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0038】
染料の添加量は、染料の種類により隠蔽性が異なるので特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。染料の添加量が5重量部未満の場合は隠蔽性が悪くなる傾向があり、80重量部を超えると塗膜の平滑性が悪くなることがある。
【0039】
またカラーコートに添加剤を添加しても良い。添加剤は、例として、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、塩素捕捉剤、無機質繊維、アンチブロッキング剤、目ヤニ防止剤、界面活性剤などがある。
【0040】
またプライマーおよび/またはトップコートに、必要に応じ、調色のために顔料、染料などの着色剤が含まれていてもよい。使用可能な着色剤としては、カラーコートに添加可能な前述したものがあげられる。プライマーまたはトップコートへの着色剤の配合量の好ましい数値範囲についても、前述のカラーコートの場合と同様である。
【0041】
さらにプライマーおよび/またはトップコートに、添加剤が含まれていても良い。使用可能な添加剤としては、カラーコートに添加可能な前述したものがあげられる。
【0042】
水圧転写において、水溶性または水膨潤性のシートは、特に限定されるものではないが、例として、デンプン系高分子材料、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアルコールを主体とする混合樹脂、ポリビニルアルコールとデンプンを主体とする混合材料、デキストリン、ゼラチン、ニカワ、カゼイン、シェラック、アラビアゴム、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダなどがある。さらに水溶性または水膨潤性のシートに印刷層を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例として、凹版印刷、平版印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、ハケ塗り、ヘラ塗り、吹付け、描画などの通常の印刷方法を選択することができる。
【0043】
印刷層には、紫外線吸収剤、光安定剤を添加しても良い。紫外線吸収剤の添加量は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.5〜10重量部である。また光安定剤は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.5〜10重量部である。
【0044】
また水溶性または水膨潤性のシートに印刷層を形成し、さらに活性剤を含有する膜を塗布しても良い。活性剤は有機溶剤で、印刷層を溶解、膨潤し、印刷層の接着性を向上させる。活性剤を含有する膜を塗布する方法は、特に限定されるものではないが、例として、グラビアコート、オフセットグラビアコート、ロールコート、カーテンフローコート、バーコート、ハケ塗り、スプレー、超音波コートなどの通常の塗布方法を選択することができる。活性剤の添加量は、特に限定はされないが、例として1〜50g/m2である。また活性剤を含有する膜に無機質繊維、可塑剤を添加しても良い。無機質繊維の添加量は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、5〜30重量部である。また可塑剤は、特に限定はされないが、例として、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、20〜100重量部である。
【0045】
また水溶性または水膨潤性のシートはロール状から水面に浮かべ、便蓋、便座、本体ケースの全体に印刷層を形成しても良く、または特定の形状にカットし、水面に浮かべて一部分にだけ印刷層を形成しても良い。
【0046】
またトップコートには、耐擦傷性向上のため、無機微粒子を含有することができる。
【0047】
無機微粒子は、例として、コロイダルシリカ、酸化アンチモン・ゾル、酸化スズ・ゾル、酸化チタンと酸化鉄の複合微粒子、酸化チタン・ゾル、酸化セリウムと酸化チタンの複合微粒子、表面被覆処理した表面改質酸化チタン微粒子、酸化タングステン・ゾルなどがある。またこれらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。さらにバインダーは、例として、オルガノアルコキシシラン化合物および/またはその加水分解物、多官能アクリレート、多官能メタクリレートなどがある。またエポキシ樹脂を併用しても良い。
【0048】
また無機微粒子の好ましい粒径は、1〜300μmの範囲である。
【0049】
無機微粒子の配合割合は、塗料中での全重合化合物100重量部に対し、5重量部未満では表面硬化による耐擦傷性向上が認められず、80重量部を超えると硬化しにくくなり、クラックが発生するようになる。したがって、5〜80重量部であることが望ましい。
【0050】
またトップコートには、撥水性向上のため、シリコ−ン樹脂またはフッ素樹脂を含有することができる。
【0051】
トップコートに含有させるシリコーン樹脂としては、例として、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーンなどのシリコーン、およびそれらの変性樹脂としてアルキッド変性、ポリエステル変性、エポキシ変性、アクリル変性、フェノール変性、ウレタン変性、メラミン変性などの変性シリコーンがあるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
トップコートに含有させるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(PFEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)などがある。
【0053】
さらにトップコートには、抗菌剤を添加配合することもできる。
【0054】
抗菌剤としては、無機系抗菌剤として、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀等。銀、銅、亜鉛、錫を担持したゼオライト。銀、銅、亜鉛、錫を担持したシリカゲルなどがあるが、これに限定するものではない。
【0055】
配合割合については塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.1重量部未満では抗菌性が認められず、5重量部を越えると着色や劣化など樹脂組成物の特性を著しく損う。したがって、0.3〜3重量部であることが望ましい。
【0056】
有機系抗菌剤として、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾールなどイミダゾール誘導体、シクロフルアニドなどN−ハロアルキルチオ系化合物、10−オキシビスフェノキサアルシンなどフェニルエーテル誘導体、セシルジメチルエチルアンモニウムブロミドなど第4級アンモニウム塩および2、3、5、6テトラコロル−4−(メチルスルホニル)ピリジンなどスルホン誘導体などがあるが、これに限定するものではない。
【0057】
配合割合については、有機系防かび剤については、塗料中での全重合化合物100重量部に対して、0.02重量部未満では防かび性はほとんどなく、5重量部を越えるとブルームするなど不具合が発生する。したがって、0.05〜1重量部の範囲であることが望ましい。
【0058】
プロピレン重合体は、特に限定されるものではないが、プロピレン単独重合体が最も好適である。またプロピレンでないα−オレフィンをプロピレンと共重合させた共重合体にしても良い。プロピレンでないα−オレフィンとしては、例として、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチルー1−ペンテンなどがある。またこれらを2種以上含有することもできる。さらにランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれでもよいが、特にブロック共重合体が好ましい。またプロピレンでないα−オレフィンの含有量は、単量体単位で3.0モル%未満が好ましい。
【0059】
プロピレン重合体には、他の樹脂を混合しても良い。他の樹脂としては、例として、エチレン、1−ブテン、1−ペンチン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの単独共重合体、またはα−オレフィンとプロピレンのブロック共重合体あるいはランダム共重合体などがある。
【0060】
射出成形体の結晶性を高めるために、電子供与体を添加しても良い。電子供与体としては、例として、エーテル、アミン、アミド、含硫黄化合物、ニトリル、カルボン酸、酸アミド、酸無水物、酸エステル、有機ケイ素化合物などがある。このうち有機ケイ素化合物が最も好適である。
【0061】
結晶化度は、プロピレン重合体の表面層における結晶成分の量を示す指標であり、反射X線回折測定によって求められる値である。表面層の結晶化度は、薄膜試料装置を装着したX線回折装置において、表面と入射X線との成す角度を1.0°となるように被測定物を設置した状態で回折強度を測定し、得られたX線回折強度曲線を非晶質ハローと各結晶質ピークに波形分離を行い、非晶質ハローの面積(非晶質ハローの積分強度)と全結晶質ピークの面積(各結晶質ピークの積分強度の総和)から下記の(1)式によって求められる値である。
【0062】
表面層の結晶化度=Sc/(Sc+Sa)×100 (%)・・・・(1)
ただし、Sc:全結晶質ピークの面積Sa:非晶質ハローの面積
【0063】
反射X線回折法で測定した結晶化度が、プロピレン重合体において表面から100μm以内で60%以上にすることにより、優れた耐擦傷性を付与させることができる。また結晶化度の上限は、特に制限されるものではないが、耐衝撃性、寸法安定性を勘案すると80%以下であることが好ましい。
【0064】
結晶核剤は、特に限定されるものではないが、例として、Al−p−t−ブチルベンゾエート、β−ナフト酸ナトリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム、シクロペンタンカルボン酸ナトリウムなどのカルボン酸金属塩系化合物;ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸マグネシウム塩、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、2,2−メチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、2,2−メチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸マグネシウム塩、2,2−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸塩リチウム、2,2−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、ビスー(4−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、ビスー(4−t−ブチルフェニル)リン酸マグネシウム塩などの芳香族リン酸金属塩系化合物;ジベンジリデンソルビトール、1.3,2.4−ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(ブチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(メトキシベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(エトキシベンジリデン)ソルビトール、1.3−クロルベンジリデン、2.4−メチルベンジリデンソルビトール、モノ(メチル)ジベンジリデンソルビトールなどのジベンジリデンソルビトール系化合物;シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、微粉タルク、マイカ、ミョウバン、顔料などの無機化合物などがある。このうち、特に、Al−p−t−ブチルベンゾエート、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸金属塩などが、耐擦傷性を向上させる上で最も好適である。 また2種以上の結晶核剤を併用してもよい。
【0065】
結晶核剤は、プロピレン重合体の100重量部に対して、0.05〜5重量部添加するのが好ましく、0.1〜3重量部が特に好ましい。添加量が0.05重量部未満では所定の耐擦傷性にならず、5重量部を超えると添加した効果が飽和する。
【0066】
プロピレン重合体において、表面層の結晶化度をさらに向上させるために、前記の結晶核剤の添加に加えて、表面層に特定の熱履歴を与える工程を併用することができる。熱履歴を与える方法は、特に限定されないが、好適な方法としては、射出成形後の成形体の表面温度を80℃から当該樹脂の融解温度未満の範囲内で、20秒〜5時間保持する方法がある。具体的には金型の内面温度を調節して、成形体の表面温度が所定時間、所定温度に保たれるようにする。
【0067】
またプロピレン重合体には、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、着色剤、無機充填剤、抗菌剤、芳香剤などを添加しても良い。
【0068】
さらにプロピレン重合体の射出成形方法としては、特に限定されるものではないが、例として、単軸射出成形、多軸射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、ガス圧縮射出成形、メルトコア射出成形、インサート射出成形、コアバック射出成形、二色射出成形などがある。
【0069】
以上説明した本発明を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明すると、図1は本発明に係わる第1乃至8の実施例を表す装飾の層構成の概念図、表1は第1乃至8の実施例の性能評価である。
【0070】
図1、表1に示す本発明の第1乃至第8の実施例を説明する。図1は装飾の層構成であり、2種類の層構成を示している。一つとして、便蓋、本体ケースに、第一層としてプライマー、第二層としてカラーコート、第三層として印刷層、第四層としてトップコートにしたものである。
【0071】
図2は、便蓋、本体ケースに、第一層としてカラーコート、第二層として印刷層、第三層としてトップコートにしたものである。便蓋の材質は高結晶性のブロックタイプのポリプロピレンで、タルク、フィラーを添加していないグレードを使用している。また本体ケースの表示部はABS樹脂で、同様にタルク、フィラーを添加していない。
【0072】
これらに前記の2種類の装飾を付与し、以下の方法で、密着性、ロックウェル硬度、鉛筆硬度、耐傷付性、光沢度について評価した。
[密着性]
試験片にカッターで1mm×1mmの碁盤目を100目入れ、セロハンテープを貼り、剥がした。これを20回行い、剥離しなかった目の数を数えた。
[ロックウェル硬度]
JIS K 7202(Rスケール)に準じて行った。
[鉛筆硬度]
JIS K5400に準じて行った。具体的には,直径2mmφの鉄ピンを試験片に対し45°の方向にセットし,100gの荷重を加えながら150mm/秒の一定速度において試験片表面を引っ掻き,その傷跡を基準に基づき評価した。
[耐傷付性]
ラビングテスターの先端にフェルトを取り付け、その上から便座を掃除する際使用する可能性の高い、綿布、トイレットペーパー被せて、3kgの荷重で試験片表面を5往復擦り、耐傷つき性を評価した。なお、耐傷つき性の比較は目視にて観察し、傷つきなしを(○)、摺動部全面に傷を(×)、その中間を(△)として評価した。
[光沢度]
JIS−Z8741に準じて,光沢測定器により60°鏡面グロス値を測定して評価した。
【0073】
以下本発明を更に具体的に説明するための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【表1】
下記表は本発明に係る第1乃至8の実施例の仕様と試験結果を表した一覧表である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1乃至8の実施例を表す装飾の層構成の概念図である。
【図2】本発明に係る他の実施例を表す装飾の層構成の概念図である。
【符号の説明】
1…便蓋または便座または本体ケース、2…プライマー、3…カラーコート、4…印刷層、5…トップコート
Claims (6)
- 腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、極性基を有する付加重合物をオレフィン(共)重合体にグラフト共重合させた重合体であるプライマーを第一層として塗布し、第二層としてカラーコートを塗布し、第三層として印刷層を水圧転写で形成し、さらに第四層としてトップコートを塗布したことを特徴とする便座装置
- 腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、第一層としてカラーコートを塗布し、第二層として印刷層を水圧転写で形成し、さらに第三層としてトップコートを塗布したことを特徴とする便座装置
- 腰掛便器上面に設置され、便蓋、便座及び内部に制御装置などを収納した本体ケースとからなる便座装置において、前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つに、第一層として印刷層を水圧転写で形成し、第二層としてトップコートを塗布したことを特徴とする便座装置
- 前記のトップコートが、耐擦傷性、及び/または撥水性、及び/または抗菌性を有することを特徴とする請求項1乃至3記載の便座装置。
- 前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つが、オレフィン重合体であることを特徴とする請求項1乃至4記載の便座装置。
- 前記便蓋、前記便座、前記本体ケースのうち少なくとも一つが、プロピレン重合体の100重量部に対し結晶核剤を0.05〜5重量部添加したブロックタイプのプロピレン重合体であり、かつ反射X線回折法で測定した表面層の結晶化度が60%以上であることを特徴とする請求項1乃至4記載の便座装置。
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KR100867186B1 (ko) * | 2006-01-25 | 2008-11-06 | 주식회사 엘지화학 | 표면 장식층이 형성된 인조 싱크볼 또는 세면기볼 및 그제조방법 |
EP3545804A1 (de) * | 2018-03-26 | 2019-10-02 | Zhejiang Hengyuan Sanitary Ware Co., Ltd. | Verfahren zur herstellung eines toilettensitzes mit wenigstens einem teilweise reliefartigen motiv und ein nach diesem verfahren hergestellter toilettensitz |
IT202100012191A1 (it) * | 2021-05-12 | 2022-11-12 | Cominotti S R L | Copriwater in polietilene tereftalato |
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2003
- 2003-03-20 JP JP2003077267A patent/JP2004285628A/ja not_active Withdrawn
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