JP2004285439A - 電解効率に優れた金属帯の電解処理装置および電解処理方法 - Google Patents

電解効率に優れた金属帯の電解処理装置および電解処理方法 Download PDF

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Masaharu Ikeda
雅晴 池田
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Abstract

【課題】電解のための電気エネルギー効率向上を図ったうえ、電極と金属帯の接触を防止することができる電解効率に優れた金属帯の電解処理装置および電解処理方法を提供する。
【解決手段】走行パスラインを挟んで対向して配置された電極の上下電極間距離を可変とする電極間距離可変手段を具備した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼帯などの金属帯を電解液を介して電解する効率に優れた金属帯の電解処理装置および電解処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼帯をはじめ、金属帯は、特公昭38−12162号公報、特開平3−68799号公報に開示されているように、脱スケール処理や脱脂処理が電解処理により行われる(特許文献1、2)。
この金属帯の電解処理は、図3に示すように、金属帯11に電解液13を介して間接通電して行うのが一般的である。図3に示す電解処理装置は、金属帯11を電解するに際し、電解液13を電解槽12内に満たし、金属帯11の走行パスラインを挟み、対向して配置された電極群14A、14B並びに15A、15Bを介して電解用整流器16から電気を供給する。なお、符号16は、交流電力を整流して金属帯11に直流電流を供給する電解用整流器を示す。
【0003】
このような金属帯の電解処理装置では、上下電極間距離(ここでは、上電極14Aと下電極14Bとの間隔並びに上電極15Aと下電極15Bとの間隔をいう)を小さくするほど、電解処理する際の電気エネルギー効率が向上するため、上電極と下電極との間隔をより狭くしたいという要求がある。
【0004】
【特許文献1】
特公昭38−12162号公報
【特許文献2】
特開平3−68799号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した金属帯の電解処理装置では、上下電極間距離を小さく設定した場合、前工程の操業状況によっては金属帯の長さ方向形状が急激に悪化する箇所がある場合があり、このような箇所において電極と金属帯の接触により、過大な電流が瞬間的に流れ、いわゆるスパーク疵が金属帯表面に発生したり、板厚が厚い場合には電極損傷トラブルが、また板厚が薄い箔帯の場合には板切れトラブルが発生することになる。
【0006】
従って、上述した金属帯の電解処理装置では、このような金属帯を電解するに際し、上下電極間距離を所定値以下に設定することができず、電解のための電気エネルギー効率向上に限界があった。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、金属帯を電解するに際し、電解のための電気エネルギー効率向上を図ったうえ、電極と金属帯の接触を防止することができる電解効率に優れた金属帯の電解処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の通りである。
1. 電解槽内における金属帯の走行パスラインを挟み、対向して配置された電極群と、該電極群に接続された電解用整流器とを備え、電解液を介して前記金属帯を電解する金属帯の電解処理装置であって、
前記走行パスラインを挟んで対向して配置された電極の上下電極間距離を可変とする電極間距離可変手段を具備したことを特徴とする電解効率に優れた金属帯の電解処理装置。
2. 前記電極間距離可変手段が演算制御装置に接続され、該演算制御装置は電解処理前の金属帯の形状情報が入力可能に構成されていることを特徴とする上記1.に記載の電解効率に優れた金属帯の電解処理装置。
3. 電解槽内における金属帯の走行パスラインを挟み、対向して配置された電極群に電解用整流器から電気を供給し、電解液を介して前記金属帯を電解するに当たり、電解処理前の金属帯の形状情報に基づいて、該金属帯を電解する前に上下電極間距離を変更することを特徴とする金属帯の電解処理方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る金属帯の電解処理装置について図1、図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る金属帯Sの電解処理装置の構成図であって、図2に示す鋼帯の連続焼鈍ラインにおいて脱脂処理を行う電解処理装置22として適用した。
【0009】
実施の形態に係る電解処理装置により、金属帯Sを電解するに際しては、電解液8を電解槽7内に満たし、図2に示す電極群1A、1B並びに2A、2Bを介して電解用整流器9から電気を供給する。
この金属帯の電解処理装置は、図1、図2に示すように、金属帯Sの走行パスラインを挟み、対向して配置された電極群1A、1B並びに2A、2Bと、これらの電極群に接続された電解用整流器9とを備え、走行パスラインを挟んで対向して配置された電極1A、1B並びに2A、2Bの上下電極間距離を可変とする電極間距離可変手段を具備している。
【0010】
電極間距離可変手段は、図1に示すように、電極支持部材3Aと、ラックと歯車を有する動力伝達機構3と、モータ4を有する。上電極1Aと下電極1Bは、それぞれに接続した電極支持部材3Aにより支持され、電極支持部材3Aには、モータ4が動力伝達機構3を介して接続されている。電極間距離可変手段のモータ4の回転は、演算制御装置5により制御され、上電極1Aと下電極1Bのそれぞれの上下方向位置は、モータ4の回転数がモータ軸に接続された歯車とラックを介して電極支持部材3Aの上下方向の移動量に変換されて設定される。
【0011】
ここで、上述した演算制御装置5は、電解処理前の金属帯の形状情報が格納されている情報記憶装置6に接続され、金属帯Sを電解するに際しては、電解処理前の金属帯の形状情報が演算制御装置5に入力される。また、図1には、電極1A、1Bの電極間距離可変手段を示したが、電極2A、2Bも同様な上下電極間距離を可変とする電極間距離可変手段を具備している。従って、図2に示す電解用整流器9に接続された電極2A、2Bも電極間距離可変手段により、電解処理前の金属帯の形状情報に基づいて金属帯Sを電解する前に上下電極間距離を変更することができる。
【0012】
このような電解処理装置によれば、電解処理前の金属帯の形状情報に基づいて金属帯Sを電解する前に、金属帯Sの形状悪化箇所以外では上下電極間距離を金属帯Sと電極とが接触しない範囲で小さくすることができ、また、金属帯長さ方向に急激な形状悪化箇所があった場合には、その箇所を電解する際に上下電極間距離を大きくして金属帯Sと電極との接触を防止することができる。
【0013】
このため、本発明の電解処理装置によれば、金属帯Sの形状悪化箇所以外では上下電極間距離を従来より小さくして電解することができるため、電気エネルギー効率の向上を図ることができる。なお、電極間距離可変手段が演算制御装置5に接続され、演算制御装置5は、電解処理前の金属帯の形状情報が格納されている情報記憶装置6に接続されていることが、電解処理前の金属帯の形状情報に基づいて精度よく、かつ迅速に上下電極間距離を変更することができるので好ましい。
【0014】
上記の電極間距離可変手段における、電極間距離を可変とする機構は、ラックと歯車を有する動力伝達機構3とモータ4に限定されず、油圧シリンダー、空気圧シリンダーを用いた電極間距離距離可変手段とすることもできる。要するに、金属帯Sの走行パスラインを挟んで対向して配置された電極群の上下電極間距離をそれぞれ可変にできる機構であればよい。但し、電極と電極支持部材間はウレタンゴムなどの絶縁体により電気的に絶縁しておく。
【0015】
また、電解処理前の金属帯の形状情報としては、望ましくは当該電解処理装置の入側に形状検出器を設け、耳伸び、腹伸び、あるいはクオーター伸びなどの形状パターンおよび金属帯の平坦度を金属帯長手方向全長にわたり測定した形状データを用いるのがよい。
あるいは、前工程で得られた形状データを電解処理前の金属帯の形状情報として用いることもできる。例えば、図2に示すようなステンレス鋼帯の電解脱脂処理をおこなう電解処理装置22では冷間圧延設備で得た形状データを用いることができる。
【0016】
【実施例】
図2に示す一実施例の鋼帯の連続焼鈍ラインにおいて、板厚30〜50μm のステンレス鋼帯に脱脂と熱延処理を施した。金属帯の電解処理装置は、冷間圧延油等の表面付着物を除去する電解処理装置22として焼鈍炉23より上流に設置した。
【0017】
なお連続焼鈍ラインでは、ペイオフリール21から払い出された冷間圧延後の鋼帯Sは、電解処理装置22により鋼帯表面から冷間圧延油等の表面付着物が除去される。引き続き、リンス液スプレー25でリンス液をスプレーされ、鋼帯表面に付着した電解脱脂液や電解脱脂により生じた生成物が除去され、リンガーロール26によりリンス液の水切りが行われ、続くドライヤー27での乾燥が容易にされる。これにより、発錆を防止しつつ、鋼帯表面に付着している冷間圧延油等の表面付着物が除去された冷間圧延後の鋼帯Sがブライドルロール28により鋼帯張力を調整された状態で焼鈍炉23および冷却帯24で所定の熱処理を受け、巻取リール29で巻取られる。
【0018】
その際に、前工程で測定した冷間圧延後の鋼帯形状を、情報記憶装置6から演算制御装置5に送り、鋼帯Sの形状情報に基づいて電極間距離可変手段を介して上下電極間距離を設定した。上下電極間距離は、演算装置5により、電極と鋼帯Sの接触を防止することができ、かつ電解脱脂処理する際の電気エネルギー効率を高めることができるように設定した。
【0019】
但し、発明例では、電解脱脂処理のために、電解電気量密度として10C/dmが得られるように電圧を調整した。この結果、表1に示すように、発明例では、従来例よりも上下電極間距離を小さく設定することができ、しかも、金属帯長さ方向に急激な形状悪化箇所があってもその箇所での金属帯と電極との接触を防止することができた。一方、従来例の場合には、10C/dmが得られるようにするには、直流電源の電圧が平均3.0Vであったが、発明例では、直流電源の電圧が平均2.5Vで済んだ。
【0020】
【表1】
Figure 2004285439
【0021】
発明例の場合には、平均電圧が従来例の平均電圧に対して約16%低く、従って、発明例の方が投入電力が従来より少であるにもかかわらず、従来法と同等の効果が得られており、発明例の電気エネルギー効率が従来例より高いことがわかる。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、金属帯を電解するに際し、金属帯の形状悪化箇所以外では上下電極間距離を小さくすることができ、電解する際の電気エネルギー効率の向上を図ったうえ、金属帯長さ方向に急激な形状悪化箇所があった場合でも、その箇所での金属帯と電極との接触を防止することができ、スパーク疵の発生を防止することができる。また、本発明により、電極と金属帯の接触による電極損傷トラブルや板切れトラブルをなくすことができるようになり、電解処理ラインの処理能率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る金属帯の電解処理装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る金属帯の電解処理装置を適用した連続焼鈍ラインの概略配置図である。
【図3】従来の金属帯の電解処理装置の説明である。
【符号の説明】
S 金属帯
1A、2A 上電極
1B、2B 下電極
3A 電極支持部材
3 動力伝達機構(ラックと歯車)
4 モータ
5 演算制御装置
6 情報記憶装置
7 電解槽
8 電解液
9 電解用整流器
21 ペイオフリール
22 電解処理装置
23 焼鈍炉
24 冷却帯
25 リンス液スプレー
26 リンガーロール
27 ドライヤー
28 ブライドルロール
29 巻取リール

Claims (3)

  1. 電解槽内における金属帯の走行パスラインを挟み、対向して配置された電極群と、該電極群に接続された電解用整流器とを備え、電解液を介して前記金属帯を電解する金属帯の電解処理装置であって、
    前記走行パスラインを挟んで対向して配置された電極の上下電極間距離を可変とする電極間距離可変手段を具備したことを特徴とする電解効率に優れた金属帯の電解処理装置。
  2. 前記電極間距離可変手段が演算制御装置に接続され、該演算制御装置は電解処理前の金属帯の形状情報が入力可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電解効率に優れた金属帯の電解処理装置。
  3. 電解槽内における金属帯の走行パスラインを挟み、対向して配置された電極群に電解用整流器から電気を供給し、電解液を介して前記金属帯を電解するに当たり、電解処理前の金属帯の形状情報に基づいて、該金属帯を電解する前に上下電極間距離を変更することを特徴とする金属帯の電解処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018031049A (ja) * 2016-08-24 2018-03-01 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板の製造方法及び製造装置
JP7509115B2 (ja) 2021-10-27 2024-07-02 Jfeスチール株式会社 金属帯の脱脂方法及び脱脂装置

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