JP2004285386A - 熱処理用治具 - Google Patents

熱処理用治具 Download PDF

Info

Publication number
JP2004285386A
JP2004285386A JP2003077564A JP2003077564A JP2004285386A JP 2004285386 A JP2004285386 A JP 2004285386A JP 2003077564 A JP2003077564 A JP 2003077564A JP 2003077564 A JP2003077564 A JP 2003077564A JP 2004285386 A JP2004285386 A JP 2004285386A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
work
heat treatment
support rod
hole
jig
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003077564A
Other languages
English (en)
Inventor
Koichi Asai
浩一 浅井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Subaru Corp
Original Assignee
Fuji Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Heavy Industries Ltd filed Critical Fuji Heavy Industries Ltd
Priority to JP2003077564A priority Critical patent/JP2004285386A/ja
Publication of JP2004285386A publication Critical patent/JP2004285386A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Articles (AREA)
  • Heat Treatments In General, Especially Conveying And Cooling (AREA)

Abstract

【課題】浸炭深さおよび焼き入れが均一で、かつワークに形成された貫通孔の開口端部分の真円度が確保できる熱処理用治具を提供する。
【解決手段】ワークである歯車50の孔53に棒状のワーク支持棒10を挿通して歯車50を吊下支持し、そのワーク支持棒10を治具本体20の相対向する側部21、23間に架け渡して支持する熱処理用治具1であって、ワーク支持棒10は、歯車50の孔53に挿通して治具本体20の側部21、23に架け渡して支持される棒状の基部11に、基部11に突設されて頂部が貫通孔53の開口端部分53aから離れた内周面上部に当接して貫通孔53と基部11との間に間隙を形成して歯車50を吊下支持するワーク支持部17を有する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱処理用治具に関し、特に貫通孔を有するワークを浸炭処理する際に、ワークを保持するための熱処理用治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、歯車等機械類のワークには摩擦部分が多く、これらのワークは表面が硬く耐摩耗性に優れる一方、内部は靱性に富み、衝撃や振動に十分耐えることが好ましい。このため靱性のある鋼の表面層だけを硬化する表面硬化処理として浸炭処理が広く実施されている。
【0003】
この浸炭処理は、例えば図12に示すように熱処理ラインに沿って加熱炉101と、焼き入れ槽102と、焼き戻し炉103とが一連に配置された熱処理装置が用いられる。この加熱炉101の加熱室104に敷設された搬送レール105上に多数の歯車等のワークWをセットした治具を搭載したトレイ106が載置され、各トレイ106が加熱炉101内に搬入されて搬送され、搬送の途中でワークWが浸炭処理される。そして、加熱炉101から搬出されたトレイ106は、焼き入れ槽102上に配設されたエレベータバスケット107に搬入され、エレベータバスケット107が下降してトレイ106と共にワークWを焼き入れ槽102内の焼き入れ油に浸漬して焼き入れ処理する。所定時間浸漬後に、エレベータバスケット107が上昇してトレイ106が搬出され、コンベヤで108で焼き戻し炉103に搬送され、焼き戻し炉103内を搬送される間にワークWに焼き戻し処理を施すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、多数のワークWを同時に処理する場合には、前後、左右壁および底面からなる熱処理用バスケット内に多数のワークWを入れて熱処理する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、加熱炉内において浸炭処理、例えばガス浸炭法では加熱炉内にメタン、プロパン等の浸炭ガスを供給しながら加熱して浸炭させることから、互いに接触するワークW間には浸炭ガスが十分に浸入せず、ワークWの均一な浸炭深さが妨げられる。また、焼き入れ時において焼き入れ油がワークW間に浸入できず焼き入れ性の低下を招く等の不具合がある。
【0006】
この対策として、ワークW相互間の接触を回避する熱処理用治具が用いられている。この熱処理用治具110は、図13に斜視図を示すように治具本体111とワーク支持棒115によって構成され、治具本体111は基枠112によって開口部を有する略箱状に形成されている。一方、ワーク支持棒115は、その一端に一対のフランジ部116が形成される棒状であって、ワーク支持部117に貫通孔Waを有する環状のワークWを互いに離間して複数個嵌装して吊下支持し、ワークWを吊下したワーク支持棒115を治具本体111の基枠112の上部で相対向する上枠113間に複数本架け渡して治具本体111にセットする。
【0007】
このように複数のワークWを吊下したワーク支持棒115を、治具本体111にセットし、熱処理用治具110と共にワークWを加熱炉、焼き入れ槽、焼き戻し炉等に搬入してワークWに熱処理を施すものである。
【0008】
また図14に斜視図を示すように、長手方向に沿って上縁および下縁に略V字状のワーク受け部122が複数連続形成された一対の帯状部材121を対向配置し、対向する帯状部材121を連結部123で梯子状に連結したワーク支持棒120も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−34716号公報
【特許文献2】
特開昭64−55324号公報
【特許文献3】
特開平9−13120号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記図13に示す熱処理用治具によると、ワークWを吊下した複数のワーク支持棒115を本治具本体111に架け渡してワークWを熱処理用治具110にセットし、熱処理用治具110と共にワークWを加熱炉、焼き入れ槽、焼き戻し炉等に搬入してワークWに熱処理することによって、多数のワークWを同時に熱処理することができる。
【0011】
しかし、ワークWの貫通孔Waにワーク支持棒115のワーク支持部117を差し込んでワークWをワーク支持棒115に吊下支持し、その状態で例えば900℃前後の高温で浸炭処理する際、ワークWの自重によってワーク支持部117に支持された貫通孔Waの内周面Wbの上部範囲が全長に亘って熱変形する。この熱変形に伴って貫通孔Waの開口端部分が、例えば図15(a)に熱処理前の断面形状を示すように真円度が確保された状態から、(b)に熱処理後の断面形状を示すように真円度が大きく低下することがある。
【0012】
また、図14に示すワーク支持棒120によると、対向する帯状部材121に形成されたワーク受け部122によってワークWの貫通孔Waの開口端部分が点接触状態で保持され、浸炭ガスや焼き入れ油の流れが良好になり浸炭深さや焼き入れが均一になる。
【0013】
しかし、ワークWをワーク支持棒120のワーク受け部122に吊下支持して高温で浸炭処理する際に、ワークWの自重によってワーク受け部122に点接触状態で支持された貫通孔Waの開口端部分が熱変形して、貫通孔Waの開口端部分の真円度が大きく低下することがある。
【0014】
ワークWに穿設された貫通孔Waの開口端部分が熱変形してその真円度が低下すると、後工程における研磨加工等にあたり、加工機のセンタを貫通孔Waの開口端部分に嵌合して芯出しした際、加工機のセンタ軸芯に対しワークWの軸芯が偏芯して加工精度の低下を招くことが懸念される。
【0015】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、浸炭深さおよび焼き入れが均一で、かつワークに形成された貫通孔の開口端部分の真円度が確保できる熱処理用治具を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する請求項1に記載の熱処理用治具の発明は、ワークに穿設された貫通孔にワーク支持棒を挿通して上記ワークを吊下支持し、該ワーク支持棒を治具本体の相対向する側部間に架け渡して支持する熱処理用治具において、上記ワーク支持棒は、上記ワークの貫通孔に挿通して上記治具本体の相対向する側部間に架け渡して支持される棒状の基部と、頂部が上記貫通孔の開口端部分から離れた内周面の上部に当接して上記貫通孔と上記基部との間に間隙を形成して上記ワークを吊下支持する上記基部に突設されたワーク支持部とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項1の発明によると、ワークに穿設された貫通孔の開口端部分から離れた内周面を基部から突出するワーク支持部によって支持することによって、貫通孔の開口端部部分はワーク支持棒と離間してワークが保持され、浸炭処理する際に、ワーク支持部によって支持された貫通孔の長手方向中央部範囲がワークの自重によって熱変形するものの、貫通孔の開口端部分は熱変形が有効的に防止されてその開口端部分は真円度が確保できる。
【0018】
また、ワーク支持棒に吊り下げ支持されてワークは、ワーク支持部の頂部が当接する比較的小さい接触面積範囲を除いて貫通孔の内周面がワーク支持棒の基部から離れ、この内周面と基部の間に十分な隙間が形成されて浸炭処理の際に優れた浸炭ガスの通過性が得られて均一な浸炭深さが確保できる。また、焼き入れの際にも焼き入れ油の良好な流れが得られ、均一な焼き入れが確保できる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1の熱処理用治具において、上記ワーク支持棒は、上記ワーク支持部に吊下支持されたワークの両端部にそれぞれ対向してワークのワーク支持棒長手方向の移動を規制するワーク位置決め部を有することを特徴とする。
【0020】
請求項2によると、搬送等によって熱処理用治具を介してワークに振動が作用し、あるいはワーク支持棒が傾斜した場合でも、ワーク支持部に吊下支持されたワークがワーク位置決め部に当接して受け止められて、ワークの移動が防止されてワークの安定した支持状態が維持できる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項2の熱処理用治具において、上記ワーク位置決め部は、上記基部から放射状に突出する複数のワーク係止突起であることを特徴とする。
【0022】
請求項3の発明によると、浸炭ガスの流れ、および焼き入れ油の流れが、隣り合うワーク係合突起の間の隙間からも行われ、ワーク位置決め部による浸炭ガスや焼き入れ油の流れへの影響が抑制されて浸炭ガスおよび焼き入れ油の良好な流通性が確保できる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの熱処理用治具において、上記ワーク支持部は、上記頂部が基部の長手方向に沿って連続し、かつ上記ワークの重心位置の上方において上記貫通孔の開口端部分から離れた内周面の上部に当接してワークを吊下支持するワーク支持突起であることを特徴とする。
【0024】
請求項4の発明によると、ワークが、そのワークの重心位置の上方においてワーク支持突起の長手方向に連続する頂部によって安定した状態で吊り下げ支持され、搬送等によって熱処理用治具を介してワークに振動が作用し、あるいはワーク支持棒が傾斜した場合でもワークの揺動や移動が抑制され、安定した状態でワークが保持される。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項4の熱処理用治具において、上記ワーク支持突起は、上記基部から上側および下側にそれぞれ突設されて一対配置されたことを特徴とする。
【0026】
請求項5の発明によると、ワーク支持突起を、基部から上側および下側にそれぞれ突設されて一対配置することから、ワーク支持棒を上下に反転して使用することができ、熱処理毎あるいは所定の熱処理回数毎に反転して使用することによってワーク支持棒の熱的変形を抑制することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの熱処理用治具において、上記治具本体は、上記側部上縁に凹設された係合凹部を有し、上記ワーク支持棒は、上記基部と同軸上で係合凹部に嵌合する軸部と、該軸部に突設して上記係合凹部の端部に当接してワーク支持棒の回転を規制する係合リブと、係合凹部を両側から挟持してワーク支持棒の長手方向の移動を規制する一対のフランジ部とを備えた支持棒位置決め部とを有することを特徴とする。
【0028】
請求項6の発明によると、治具本体の側部に凹設された係合凹部に、支持棒位置決め部の軸部を嵌合させて係合リブを係合凹部の端部に当接し、かつ一対のフランジ部によって係合凹部を挟持することによってワーク支持棒の回転および長手方向の移動が規制されたワーク支持棒を安定した状態で治具本体に保持することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による熱処理用治具の実施の形態をワークが歯車である場合を例に図1乃至図10を参照して説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態における熱処理用治具1の全体斜視図であり、熱処理用治具1は複数、本実施の形態では2本のワーク支持棒10と、ワーク支持棒10を位置決めして支持する治具本体20とによって構成される。
【0031】
図2はワーク支持棒10の側面図、図3は図2の平面図、図4は図2のA矢視図、図5は図3のI−I線断面図、図6は図2のB部拡大図、図7は図2のII−II線断面図、図8は図2のIII−III線断面図である。
【0032】
熱処理を施すワークである歯車50は、図2および図6に仮想線で示すように外周51aが歯切りされた円筒状のホイール51およびこのホイール51と同軸上で貫通孔である孔53が穿孔されて両端が突出するハブ52が一体形成されたハブ付き歯車である。
【0033】
ワーク支持棒10は、棒状の基部11を有し、基部11の一端に、図2乃至図5に示すように基部11と同軸上で小径の軸部12aおよび軸部12aを介して対向する一対の大径のフランジ部12bによって形成された支持棒位置決め部12が一体に結合され、軸部12aから水平に突出して両フランジ部12bに連結する一対の係止リブ12cが突設している。また、各フランジ部12bの上縁にワーク支持棒10の上側および下側を識別するための識別表示手段である切り欠き部12dが形成されている。一方、基部11の他端に基部11と同軸上でその長手方向外側に向けて円柱状で基部11より大径の係合突部13が一体に突出形成されている。この係合突部13の外径dは、歯車50の孔53の内径Dより小さく設定され、歯車50の孔53に容易に挿入できる。
【0034】
図2、図3および図8に示すように基部11に、その長手方向に均等に離間して複数、本実施の形態では4箇所に、それぞれ周方向に等間隔で上方、下方、両側方に放射状に突出して頂部が長手方向に連続する断面円弧状のワーク係止突起16a〜16dを有するワーク位置決め部15が設けられている。
【0035】
また、基部11には、それぞれの隣接するワーク位置決め部15の間に、図2、図3および図7に示すように上下にそれぞれ基部11から突出して頂部が長手方向に連続する断面円弧状のワーク支持突起18a、18bを有するワーク支持部17が設けられている。
【0036】
各隣接するワーク位置決め部15の離間距離L1は、歯車50のハブ52の嵌挿を可能にするためにハブ52の長さL0より若干大きく設定され、かつ各ワーク支持部17のワーク支持突起18aと18bの頂部間の距離L2は歯車50に穿設された孔53の内径Dより小さく設定されている。
【0037】
また、ワーク支持突起18a、18bは、図2、図6に示すように歯車50の孔53に係合突部13側から基部11を差し込み、隣接するワーク位置決め部15のそれぞれのワーク係止突起16aと16aの間に歯車50のハブ52を嵌挿した際に、長さ方向において円筒歯車50の重心位置Gを含み、かつ孔53の開口端部分53aおよびそれぞれのワーク位置決め部15から離間して隣接するワーク位置決め部15の間に突設し、その頂部によって歯車50を安定した状態で保持するに十分な長さL3を有している。
【0038】
さらに、図7および図8に示すように基部11からワーク支持突起18a、18bのそれぞれの頂部までの高さ寸法h1に対し、基部11からワーク係止突起16a〜16dのそれぞれの頂部まで高さ寸法h2が大きく設定され、かつワーク係止突起16aと16cの頂部間の距離およびワーク係止突起16bと16dの頂部間の距離L4は歯車50の孔53の内径Dより小さく設定されている。
【0039】
一方、治具本体20は、上下が開放された箱状であって、その各側部21〜24にそれぞれ開口部21a〜24aが開口し、相対向する側部21および23のそれぞれの上縁21b、23bに、ワーク支持棒10を保持するための係合凹部26および27が複数列設されている。
【0040】
側部21の上縁21bに形成される係合凹部26は、ワーク支持棒10に設けられた支持棒位置決め部12の軸部12aが嵌合する略半円形の凹形状であって、その両端部26aは、軸部12aを係合凹部26に嵌合した状態でそれぞれの係止リブ12cが当接あるいは近接する位置に形成され、係止リブ12cを当接することによりワーク支持棒10の回転を規制する。なお、支持棒位置決め部12の対向するフランジ部12bは軸部12aを介して係合凹部26を両側から挟持可能な寸法だけ離間して形成され、係合凹部26に軸部12aを嵌合した際ワーク支持棒10の長手方向の位置決め機能を果たす。なお、係合凹部26の形状は円弧形状に限らず、矩形の切り欠き等任意形状に変更することもできる。
【0041】
側部23の上縁23bに形成される係合凹部27は、側部21に形成される係合凹部26と対向して設けられ、係合凹部26に支持棒位置決め部12が嵌合して位置決めされたワーク支持棒10の他端に突設された係合突部13が嵌合可能な凹状に形成される。
【0042】
次に、このように構成された熱処理用治具1の使用方法について説明する。
【0043】
先ず、支持棒位置決め部12のフランジ部12bに形成された切り欠き部12dを上方にしてワーク位置決め部15のワーク係合突起16aおよびワーク支持部17のワーク支持突起18aが上方側にした状態で、係合突部13側からワーク支持棒10を浸炭処理を施すべき複数の歯車50の孔53に差し込み、図2および図6に歯車50を仮想線で示すように、相対向するワーク位置決め部15間にハブ52を嵌入した状態でワーク支持部17に吊下する。
【0044】
各ワーク支持部17に吊下支持された歯車50は、図6に示すように、歯車50の両側に位置するそれぞれのワーク位置決め部15のワーク係合突起16aにハブ52の両端部52aが当接可能に対向してワーク支持棒10の長手方向の移動が防止され、かつワーク支持部17のワーク支持突起18aの頂部によって、歯車50の重心位置Gの上方において孔53の内周面54の上部範囲が長手方向に延在する線接触状態で支持される。このワーク支持突起18aが当接する極めて小さい内周面54の上部範囲を除いて孔53の開口端部分53aの内側全周を含む内周面54のほぼ全面がワーク支持棒10の基部11およびワーク支持突起18bから離れた状態で安定した状態に保持される。
【0045】
次に、このようにして複数の歯車50を吊下して保持したワーク支持棒10の端部に突出形成した係合突部13を治具本体20の側部23の上縁23bに凹設された係合凹部27に嵌装し、かつ支持棒位置決め部12の軸部12aを側部21の上縁21bに形成された対応する係合凹部26に嵌入すると共に対向するフランジ部12b間によって係合凹部26を挟持してワーク支持棒10を治具本体20に対して位置決めし、かつ各係止リブ12cが係合凹部26の両端部26aと当接あるいは近接させることによりワーク支持棒10の回動を阻止した状態でワーク支持棒10を側部21と23の間に架け渡す。
【0046】
同様に、側部21、23の各対応する係合凹部26と27との間に歯車50を吊下したワーク支持棒10を架け渡して適宜個数のワーク支持棒10を治具本体20に並列した状態で保持する。
【0047】
ワーク支持棒10を治具本体20に架け渡して保持させる上記作業にあたり、ワーク支持棒10が傾斜した場合でも、吊下支持した歯車50の移動が、ワーク位置決め部15のワーク係合突起16a〜16d等にハブ52の端部52aが当接して阻止され、各歯車50が互いに離れて安定した状態に保持される。
【0048】
このように複数の歯車50を吊下支持した複数のワーク支持棒10が装着された治具本体20、すなわち複数の歯車50を支持した熱処理用治具1は、例えば熱処理ラインに沿って配置された加熱炉、焼き入れ槽、焼き戻し炉に順次搬送されて熱処理される。
【0049】
加熱炉においては、例えば加熱室に敷設された搬送レール上のトレイに複数の歯車50が吊下支持されたワーク支持棒10を保持した治具本体20からなる熱処理用治具1を載置し、トレイが加熱室内を搬送される間に、加熱炉内に浸炭ガスを供給しながら加熱され、浸炭処理する。
【0050】
この加熱炉内において、ワーク支持部17のワーク支持突起18aの頂部によって孔53の内周面54が支持された歯車50は、その重心位置Gの上方においてワーク支持突起18aによって長手方向に延在する接線状に接触した安定した状態で吊下支持され、かつ対向配置されたワーク位置決め部15の各ワーク係合突起16a等によって長手方向の移動が防止されることから、搬送等によって熱処理用治具1を介して歯車50に回動や長手方向の振動が作用し、あるいはワーク支持棒10が傾斜した場合でも歯車50の揺動や移動が抑制されて、各歯車50が互いに当接することなく、歯車50が安定した状態でワーク支持棒10に保持される。
【0051】
また、ワーク支持棒10に吊り下げ支持された歯車50は、ワーク支持突起18aの頂部が線接触状態で接触する内周面54の極めて小さい接触面積範囲を除いた内周面54のほぼ全面がワーク支持棒10の基部11から離れ、この内周面54と基部11の間に十分な隙間が形成されて浸炭ガスの通過性が優れ、浸炭深さのバラツキが大幅に減少して浸炭深さが均一になる。また、この内周面54と基部11との間の浸炭ガスの流れは、ワーク位置決め部15の隣り合うワーク係合突起16a〜16dのそれぞれの隙間およびワーク支持部17のワーク支持突起18aと18bの間からも行われ、ワーク位置決め部15およびワーク支持部17に影響されることなく良好な浸炭ガスの流通性が確保できる。
【0052】
ここで、歯車50の孔53の両端に位置する開口端部分53aから離れた内周面54の長手方向中央部の上面部分がワーク支持突起18aによって支持され、内周面54の開口端部分53aはワーク支持棒10と離間して保持されることから、高温で浸炭処理する際、歯車50の自重によってワーク支持突起18aによって支持された内周面54の長手方向中央部範囲が熱変形するものの、孔53の開口端部分53aは熱変形が有効的に防止され、孔53の開口端部分53aはその真円度が維持される。
【0053】
さらに、焼き入れのため熱処理用治具1を、例えばエレベータバスケットに載置して下降せしめて焼き入れ槽内の焼き入れ油に浸漬および焼き入れ油から引き上げる際、あるいは焼き入れ油の攪拌等の波動が作用した場合でも、歯車50の揺動および接触が回避され、かつワーク支持突起18aの頂部が接触する部分を除いた内周面54のほぼ全面がワーク支持棒10から離れて十分に確保された内周面54と基部11の隙間を円滑に焼き入れ油が流れ、歯車50の各部における冷却速度のバラツキが抑制されることと相まって、焼き入れムラの発生が回避され、均一な焼き入れが確保される。また、この内周面54と基部11との間の焼き入れ油の流れは、ワーク位置決め部15の隣り合うワーク係合突起16a、16b、16c、16dの間の隙間およびワーク支持部17のワーク支持突起18aと18bの間からも行われ、ワーク位置決め部15およびワーク支持部17に影響されることなく良好な焼き入れ油の流通性が確保できる。
【0054】
また、焼き戻しにおいてもワーク支持棒10に吊り下げ支持された各歯車50の揺動および接触が上記同様回避される。
【0055】
このように熱処理された歯車50は、ワーク支持棒10のワーク支持部17のワーク支持突起18aに線接触で安定した状態に保持され、浸炭ガスおよび焼き入れ油等の流れが良好になり、浸炭深さおよび焼き入れ性が均一になり歯車50の変形や歪みが防止できる。
【0056】
特に、歯車50の孔53の両端に位置する開口端部分53aから離れた内周面54の上面部分をワーク支持突起18aによって支持することによって、孔53の開口端部分53a付近はワーク支持棒10と離間して保持され、浸炭処理する際の孔53の開口端部53a付近の熱変形が有効的に防止され、孔53の開口端部分53aの真円度が維持される。
【0057】
ここで、この熱処理用治具1を使用して孔53の内径Dが30mmの歯車50を熱処理したところ、図6に仮想線a−aで示す孔53の開口端部分における熱処理前の断面形を図9(a)に示し、かつ熱処理後の断面形状を同図(b)に示すように熱処理前の真円度が3μmであり、熱処理後の真円度が15μmであった。同様に図10に示すように通常の円柱状のワーク支持棒60を使用して孔53の内径Dが30mmの歯車50を熱処理したところ、仮想線b−bで示す孔53の開口端部分における熱処理前の断面形状を図11(a)に示し、熱処理後の断面形状を同図(b)に示すように熱処理前の真円度が3μmであったが、熱処理に伴って、歯車50の自重によってワーク支持棒60に支持された孔53の上部範囲が大きく熱変形し、熱処理後の真円度が30μmに大きく低下した。これから本実施の形態による熱処理用治具1を使用することによって、熱処理に伴う孔53の開口端部分の真円度の低下が極めて抑制できることが確認できた。
【0058】
このように歯車50に穿設された孔53の開口端部分の真円度が確保できることから、後工程における研磨加工等にあたり、加工機のセンタを孔53の開口端に嵌合して芯出しした際、加工機のセンタ軸芯に対し歯車50の軸芯の偏芯が極めて少なくなり、加工作業が容易になるとともに加工精度の向上が得られ、不良品の発生率が低減できる。
【0059】
また、ワーク支持棒10の支持棒位置決め部12、係合突部13および基部11に形成されるワーク支持部17、ワーク位置決め部15の主要部の形状が上下に対称形に形成されることから、ワーク支持突起18b側が上方になるように反転して使用することができ、熱処理毎あるいは所定熱処理回数毎に反転して使用することによってワーク支持棒10の熱的変形を抑制することができる。このワーク支持棒10の上側および下側は支持棒位置決め部12のフランジ部12bに形成された切り欠き部12dによって容易に確認できる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態ではワーク支持部17をワーク支持棒10の長手方向の3箇所に設定したが、熱処理すべき歯車の寸法や熱処理用治具1の大きさ等により他の複数箇所に配置することも可能であり、ワーク係止突起の数を適宜個数に変更することもできる。また、歯車以外の貫通孔を有する他のワークの熱処理に適用することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明した本発明の熱処理用治具によると、ワークに穿設された貫通孔の開口端部分から離れた内周面を、ワーク支持棒の基部から突出するワーク支持部によって吊り下げ支持することから、貫通孔の開口端部分と基部との間に間隙が形成されて貫通孔の開口端部分はワーク支持棒と離間して保持され、浸炭処理する際、ワークの自重に起因する熱変形が貫通孔の開口端部分において有効的に防止され、貫通孔の開口端部分の真円度が維持される。
【0062】
また、ワーク支持棒に吊り下げ支持されたワークは、ワーク支持部の頂部が当接する小さい接触面積範囲を除いた内周面のほぼ全面がワーク支持棒から離れ、この内周面と基部の間に十分な隙間が形成されて浸炭処理の際の浸炭ガスの通過性に優れ、浸炭深さが均一になり、かつ焼き入れの際にも焼き入れ油の通過性に優れ、均一な焼き入れが確保されて優れた熱処理が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱処理用治具の実施の形態の概要を示す熱処理用治具の全体斜視図である。
【図2】ワーク支持棒の側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2のA矢視図である。
【図5】図3のI−I線断面図である。
【図6】図2のB部拡大図である。
【図7】図2のII−II線断面図である。
【図8】図2のIII−III線断面図である。
【図9】熱処理前と熱処理後における孔の開口部分の真円度の説明図であり、(a)は熱処理前における図6のa−a線断面図、(b)は熱処理後のa−a線断面図である。
【図10】本実施の形態と比較する従来の熱処理用治具の概要説明図である。
【図11】図10に示す熱処理用治具を用いた熱処理前と熱処理後における孔の開口部分の真円度の説明図であり、(a)は熱処理前における図10のb−b線断面図、(b)は熱処理後のa−a線断面図である。
【図12】浸炭処理の概要を示す説明図である。
【図13】従来の熱処理用治具の説明図である。
【図14】従来の熱処理用治具の説明図である。
【図15】従来の熱処理用治具を用いた熱処理に伴うワークの熱変形の概要を示す説明図であり、(a)は熱処理前の状態を示す図、(b)は熱処理後の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 熱処理用治具
10 ワーク支持棒
11 基部
12 支持棒位置決め部
12a 軸部
12b フランジ部
12c 係止リブ
13 係合突部
15 ワーク位置決め部
16a、16b、16c、16d ワーク係合突起
17 ワーク支持部
18a、18b ワーク支持突起
20 治具本体
21、22、23、24 側部
21b、23b 上縁
26 係合凹部
26a 端部
27 係合凹部
50 歯車(ワーク)
53 孔(貫通孔)
53a 開口端部分

Claims (6)

  1. ワークに穿設された貫通孔にワーク支持棒を挿通して上記ワークを吊下支持し、該ワーク支持棒を治具本体の相対向する側部間に架け渡して支持する熱処理用治具において、
    上記ワーク支持棒は、
    上記ワークの貫通孔に挿通して上記治具本体の相対向する側部間に架け渡して支持される棒状の基部と、
    頂部が上記貫通孔の開口端部分から離れた内周面の上部に当接して上記貫通孔と上記基部との間に間隙を形成して上記ワークを吊下支持する上記基部に突設されたワーク支持部とを有することを特徴とする熱処理用治具。
  2. 上記ワーク支持棒は、
    上記ワーク支持部に吊下支持されたワークの両端部にそれぞれ対向してワークのワーク支持棒長手方向の移動を規制するワーク位置決め部を有することを特徴とする請求項1に記載の熱処理用治具。
  3. 上記ワーク位置決め部は、
    上記基部から放射状に突出する複数のワーク係止突起であることを特徴とする請求項2に記載の熱処理用治具。
  4. 上記ワーク支持部は、
    上記頂部が基部の長手方向に沿って連続し、かつ上記ワークの重心位置の上方において上記貫通孔の開口端部分から離れた内周面の上部に当接してワークを吊下支持するワーク支持突起であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱処理用治具。
  5. 上記ワーク支持突起は、
    上記基部から上側および下側にそれぞれ突設されて一対配置されたことを特徴とする請求項4に記載の熱処理用治具。
  6. 上記治具本体は、
    上記側部上縁に凹設された係合凹部を有し、
    上記ワーク支持棒は、
    上記基部と同軸上で上記係合凹部に嵌合する軸部と、該軸部に突設して上記係合凹部の端部に当接してワーク支持棒の回転を規制する係合リブと、係合凹部を両側から挟持してワーク支持棒の長手方向の移動を規制する一対のフランジ部とを備えた支持棒位置決め部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱処理用治具。
JP2003077564A 2003-03-20 2003-03-20 熱処理用治具 Pending JP2004285386A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003077564A JP2004285386A (ja) 2003-03-20 2003-03-20 熱処理用治具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003077564A JP2004285386A (ja) 2003-03-20 2003-03-20 熱処理用治具

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004285386A true JP2004285386A (ja) 2004-10-14

Family

ID=33292287

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003077564A Pending JP2004285386A (ja) 2003-03-20 2003-03-20 熱処理用治具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004285386A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007297664A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Aisin Aw Co Ltd 減圧徐冷装置及び鋼部材の熱処理装置
CN109338079A (zh) * 2018-11-26 2019-02-15 葫芦岛龙源采油配套设备有限公司 自动管端热处理装置
WO2019044768A1 (ja) * 2017-08-28 2019-03-07 Ntn株式会社 熱処理システムおよび熱処理方法
JP2019143210A (ja) * 2018-02-22 2019-08-29 日本製鉄株式会社 焼入れ用治具およびはすば歯車の製造方法
CN111304582A (zh) * 2020-03-03 2020-06-19 苏州亚太金属有限公司 一种薄板大直径齿轮渗碳淬火变形的控制工艺
CN114293137A (zh) * 2021-12-31 2022-04-08 常州新区河海热处理工程有限公司 一种薄壁大内孔平齿轮渗碳微变形装夹方法及装夹装置
WO2023195201A1 (ja) * 2022-04-05 2023-10-12 日本精工株式会社 焼入れ方法及び焼入れ装置
CN117004809A (zh) * 2023-09-22 2023-11-07 安徽众鑫科技股份有限公司 一种同步齿套表面渗碳设备

Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007297664A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Aisin Aw Co Ltd 減圧徐冷装置及び鋼部材の熱処理装置
JP4724596B2 (ja) * 2006-04-28 2011-07-13 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 減圧徐冷装置及び鋼部材の熱処理装置
WO2019044768A1 (ja) * 2017-08-28 2019-03-07 Ntn株式会社 熱処理システムおよび熱処理方法
JP2019039053A (ja) * 2017-08-28 2019-03-14 Ntn株式会社 熱処理システムおよび熱処理方法
JP2019143210A (ja) * 2018-02-22 2019-08-29 日本製鉄株式会社 焼入れ用治具およびはすば歯車の製造方法
CN109338079A (zh) * 2018-11-26 2019-02-15 葫芦岛龙源采油配套设备有限公司 自动管端热处理装置
CN109338079B (zh) * 2018-11-26 2023-10-20 葫芦岛龙源采油配套设备有限公司 自动管端热处理装置
CN111304582A (zh) * 2020-03-03 2020-06-19 苏州亚太金属有限公司 一种薄板大直径齿轮渗碳淬火变形的控制工艺
CN114293137A (zh) * 2021-12-31 2022-04-08 常州新区河海热处理工程有限公司 一种薄壁大内孔平齿轮渗碳微变形装夹方法及装夹装置
WO2023195201A1 (ja) * 2022-04-05 2023-10-12 日本精工株式会社 焼入れ方法及び焼入れ装置
CN117004809A (zh) * 2023-09-22 2023-11-07 安徽众鑫科技股份有限公司 一种同步齿套表面渗碳设备
CN117004809B (zh) * 2023-09-22 2024-03-26 安徽众鑫科技股份有限公司 一种同步齿套表面渗碳设备

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2004285386A (ja) 熱処理用治具
JP2013087359A (ja) 被処理物の焼入装置
JP2010007146A (ja) 焼入装置、被処理物の焼入方法、及び、これらに用いられる載置台
JP5973306B2 (ja) 熱処理装置
JP5818153B2 (ja) 被処理物の焼入装置
JP4401652B2 (ja) 切削工具を熱処理するための方法と手段
JP2009228055A (ja) ガス窒化処理方法、及び、ガス窒化処理装置
KR100670158B1 (ko) 수평 이송식 고주파 열처리장치
JP2013019029A (ja) 熱処理治具および熱処理装置
JPH07278647A (ja) 回転熱処理炉
AU2001272673A1 (en) Method and means for heat treating cutting tools
JPH0913120A (ja) 熱処理用治具
JPH1089851A (ja) 連続型熱処理炉
US2445150A (en) Method of heat-treating a metallic annulus
JP5828394B2 (ja) 被処理物の焼入装置
JP2010215943A (ja) 熱処理方法、熱処理装置および熱処理部品
JP2006009087A (ja) 多段連続浸炭焼入れ炉及び連続浸炭焼入れ方法
US10870909B2 (en) Heat treatment facility
JP3486054B2 (ja) 内周面に歯形形状を有する部材の浸炭方法および前記浸炭方法に用いられるワーク保持機構
JP2018052685A (ja) チェーン式搬送装置
US20150275346A1 (en) Heat treatment apparatus
JP5515339B2 (ja) 熱処理方法および熱処理装置
KR101626830B1 (ko) 침탄 열처리용 모재의 받침트레이 시스템
JP6801377B2 (ja) 鋼材部品の熱処理方法
JP2019128113A (ja) 熱処理炉