JP2004285176A - オイル周り部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンオイル、ブレーキフルード、トランスミッションオイルなどの各種オイル類との接触下、および/または塩化カルシウムとの接触下において良好な耐久性、強度を有するオイル周り部品を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(a)5〜85重量%、ポリフェニレンスルファイド樹脂(b)95〜15重量%を含有してなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填材(c)0.5〜200重量部からなる樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするオイル周り部品。
【選択図】なし
【解決手段】ポリアミド樹脂(a)5〜85重量%、ポリフェニレンスルファイド樹脂(b)95〜15重量%を含有してなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填材(c)0.5〜200重量部からなる樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするオイル周り部品。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、および無機充填材からなり、エンジンオイル、ブレーキフルード、オートマチックトランスミッションオイルなどの各種オイル類との接触下、および/または塩化カルシウムとの接触下において良好な耐久性、強度を有するオイル周り部品に関する。特にエンジンオイルフィルター外装部品に好適に使用できるオイル周り部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は、引張、曲げ等の機械的性質に優れ、しかも耐熱性、耐薬品性が良好なため、自動車分野、電気電子分野など多くの分野で利用されている。自動車分野や建築、土木分野では軽量化、組み立て合理化等から、金属部品の樹脂化が進んでいる。中でもガラス繊維強化ポリアミド66樹脂に代表されるポリアミド樹脂は耐熱性、耐油性、耐薬品性、強靱性に優れた特徴を有し、各種自動車部品に用いられている。
【0003】
ただし、ポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂は、融雪剤として使用されている塩化カルシウムとの接触により、クラックの発生および強度低下を引き起こすため、塩化カルシウムと接触する可能性の高い部位には使用されにくい。
【0004】
ポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂の耐塩化カルシウム性を向上する手法として、アミド基濃度の低いポリアミド610やポリアミド612などをアロイ化する方法(例えば、特許文献1など)、変性ポリオレフィン樹脂をアロイ化する方法が知られている。しかしながら、ポリアミド610や、ポリアミド612、変性ポリオレフィン樹脂いずれの場合もポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂とアロイ化することにより、耐熱性や高温剛性などが低下する問題を有している。従って、高温オイル、および/または塩化カルシウムと接触するオイル周り部品に用いることはできなかった。
【0005】
また、ポリアミド樹脂とポリフェニレンスルファイド樹脂をアロイ化することにより、ポリアミド樹脂の耐熱性を保持し、かつ耐不凍液性を向上させた材料が提案されている(例えば、特許文献2、3など)。しかしながら、該提案には耐オイル性に関することは一切記載されていなければ、その示唆もない。
【0006】
以上のように耐オイル性と耐塩化カルシウム性を兼備した樹脂製オイル周り部品は実用化されておらず、早期開発が望まれている状況である。
【0007】
【特許文献1】
特公昭61−40262号公報(第1頁第10行目〜第3頁第3行目)
【特許文献2】
特開平5−248237号公報(第1頁第13行目〜第3頁第36行目)
【特許文献3】
特開2001−302918号公報([0001]〜[0009]段落)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、および無機充填材からなり、エンジンオイル、ブレーキフルード、トランスミッションオイルなどの各種オイル類との接触下、および/または塩化カルシウムとの接触下において良好な耐久性を有するオイル周り部品、特にエンジンオイルフィルター外装部品に好適に使用できるオイル周り部品を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は主として、
(1)ポリアミド樹脂(a)5〜85重量%、ポリフェニレンスルファイド樹脂(b)95〜15重量%を含有してなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填材(c)0.5〜200重量部からなる樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするオイル周り部品。
【0010】
(2)140℃のエンジンオイル中に2000時間浸漬処理した後の引張強度が未処理時の引張強度の80%以上であることを特徴とする上記(1)記載のオイル周り部品。
【0011】
(3)(i)試験片を50℃、95%RH雰囲気下で24時間処理、
(ii)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、
(iii)50℃、95%RH雰囲気下で4時間調湿、
(iv)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、
(v)試験片を50℃×95%RH雰囲気下で16時間調湿、
を順次行い、その後さらに(ii)〜(v)を9サイクル順次行って、(ii)〜(v)の処理を計10サイクル行った後の引張強度が、未処理時の引張強度の80%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のオイル周り部品。
【0012】
(4)オイル周り部品がエンジンオイルフィルター外装部品であることを特徴とする上記(1)〜(3)記載のオイル周り部品。
により達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明で用いられる(a)ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0015】
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、150℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0016】
とりわけ好ましいポリアミド樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマーまたはナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12およびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのポリアミド樹脂を耐衝撃性、成形加工性、相溶性などの必要特性に応じて混合物として用いてもよい。
【0017】
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度としては、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。
【0018】
ポリアミド樹脂の樹脂成分中の含有量は、靭性や耐塩化カルシウム性の点で5〜85重量%であり、好ましくは15〜80重量%である。
【0019】
また、本発明のポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの銅化合物などが挙げられる。なかでも1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いる(b)ポリフェニレンスルファイド樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0021】
【化1】
【0022】
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また、ポリフェニレンスルファイド樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
【0023】
【化2】
【0024】
かかる構造を一部有するポリフェニレンスルファイド樹脂は、融点が低くなるため熱可塑性樹脂の融点が低い場合には成形性の点で有利となる。
【0025】
本発明で用いられるポリフェニレンスルファイド樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常50〜20000poise(320℃、剪断速度1000sec−1)のものが好ましく使用され、100〜5000poiseの範囲がより好ましい。
【0026】
かかるポリフェニレンスルファイド樹脂は通常公知の方法によって製造できる。本発明において上記の様に得られたポリフェニレンスルファイド樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0027】
ポリフェニレンスルファイド樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃である。また、加熱処理時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0028】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0029】
本発明に用いるポリフェニレンスルファイド樹脂は脱イオン処理を施されたポリフェニレンスルファイド樹脂であることが好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶媒洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせても良い。
【0030】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリフェニレンスルファイド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は1種類または2種類以上を混合して使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリフェニレンスルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリフェニレンスルファイド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0031】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を熱水で洗浄処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるポリフェニレンスルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリフェニレンスルファイド樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリフェニレンスルファイド樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0032】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリフェニレンスルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はポリフェニレンスルファイド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリフェニレンスルファイド樹脂を残留している酸または塩などを除去するために、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリフェニレンスルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
【0033】
ポリフェニレンスルファイド樹脂の樹脂成分中の含有量は、95〜15重量%であり、耐熱性や耐塩化カルシウム性の点で85〜20重量%が好ましい。
【0034】
本発明において、(a)成分のポリアミド樹脂と(b)成分のポリフェニレンスルファイド樹脂の相溶性の向上を目的として従来公知の相溶化剤を配合することもできる。これら相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロック、グラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これらは2種以上同時に使用することもできる。
【0035】
本発明に用いる(c)無機充填材としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウム、シリカ、グラファイトなどの非繊維状充填剤が挙げられる。上記充填材中、ガラス繊維および炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填材は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填材はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理することは、より優れた機械的強度、耐塩化カルシウム性を得る意味において好ましい。
【0036】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被膜あるいは集束されていてもよい。
【0037】
上記の(c)無機充填材の添加量は、(a)ポリアミド樹脂および(b)PPS樹脂の合計量100重量部に対し、0.5〜200重量部であり、機械特性、耐熱性などの点で5〜200重量部が好ましく、10〜150重量部がより好ましい。
【0038】
本発明のオイル周り部品を構成する樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0039】
本発明のオイル周り部品とは、エンジンオイルやブレーキフルード、トランスミッションオイルなどの各種オイル類、および/または塩化カルシウムと接触して用いられる部品であり、さらには外装部品として好ましく用いることができる。特に、エンジンオイルフィルター外装部品に好ましく用いることができる。これら外装部品の具体例としては、エンジンオイルパン、エンジンオイルエレメントキャップなどが挙げられる。
【0040】
ここで、本発明の要件である耐オイル性試験方法について述べる。耐圧容器に試験片を入れ、試験片全体が浸漬するだけのエンジンオイルを入れ、蓋をする。該耐圧容器を140℃のオーブンに2000時間安置し、浸漬処理する。処理後の試験片表面のエンジンオイルをふき取った後、引張試験を行い、引張強度、および未処理試験片の引張強度に対する保持率を求める。
【0041】
次に、本発明の要件である耐塩化カルシウム性試験方法について述べる。
(i)試験片を50℃、95%RH雰囲気下で24時間処理、(ii)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、(iii)50℃、95%RH雰囲気下で4時間調湿、(iv)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、(v)試験片を50℃×95%RH雰囲気下で16時間調湿、を順次行い、その後さらに(ii)〜(v)を9サイクル順次行った後、引張試験を行い、引張強度、および未処理試験片の引張強度に対する保持率を求める。
【0042】
本発明のオイル周り部品を構成する樹脂組成物を得る方法としては特に制限はないが、溶融混練において、たとえば2軸押出機で溶融混練する場合にメインフィーダーからポリアミド樹脂とポリフェニレンスルファイド樹脂を供給し、無機充填材を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法や事前にポリアミド樹脂とポリフェニレンスルファイド樹脂を溶融混練した後、無機充填材と溶融混練する方法などが挙げられる。
【0043】
本発明のオイル周り部品は公知の方法で賦形でき、その成形方法に関しても制限はなく射出成形、射出圧縮成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等を利用することができる。中でも射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形が生産性の点で好ましい。また、一般的には単層であるが、多層にしてもかまわない。
【0044】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0045】
(1)材料強度
以下の方法に従って測定した。
引張 :ASTM D638
曲げ :ASTM D790
Izod衝撃:ASTM D256
相対粘度 :JIS K6920に従い、98%濃硫酸法により測定した。
【0046】
(2)耐エンジンオイル性
耐圧容器に試験片を入れ、試験片全体が浸漬するだけのエンジンオイル(トヨタ純正キャッスルモーターオイルSL(5W−30))を入れ、蓋をする。該耐圧容器を140℃のオーブンに2000時間安置し、浸漬処理する。処理後の試験片表面のエンジンオイルをふき取った後、引張、曲げ、Izod衝撃試験を行った。引張強度については未処理試験片の物性に対する保持率を求めた。
【0047】
(3)耐塩化カルシウム性
試験片を50℃、95%RH雰囲気下で24時間処理する。その後、▲1▼塩化カルシウム水溶液(濃度50重量%)を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、▲2▼50℃、95%RH雰囲気下で4時間調湿、▲3▼塩化カルシウム水溶液(濃度50重量%)を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、▲4▼試験片を50℃×95%RH雰囲気下で16時間調湿する。▲1▼〜▲4▼を10サイクル行う。
上記処理後、引張、曲げ、Izod衝撃試験を行った。引張強度については未処理試験片の物性に対する保持率を求めた。
【0048】
(4)エンジンオイルエレメントキャップの耐エンジンオイル性
エンジンオイルエレメントキャップを耐圧容器に入れ、試験片全体が浸漬するだけのエンジンオイル(トヨタ純正キャッスルモーターオイルSL(5W−30))を入れ、蓋をする。該耐圧容器を140℃のオーブンに2000時間安置し、浸漬処理する。処理後の試験片表面のエンジンオイルをふき取った後、相対粘度を測定した。
【0049】
(5)エンジンオイルエレメントキャップの耐塩化カルシウム性
(3)項と同様にしてエンジンオイルエレメントキャップを塩化カルシウム処理し、クラックの有無を実体顕微鏡(ニコン製SMZ−10型)を用いて倍率10倍で観察した。クラックが発生していないものを○、発生しているものを×とした。
【0050】
なお、実施例および比較例で使用した原材料は以下のとおり。特に断らない限りはいずれも常法に従い重合を行い、調整した。
【0051】
<ポリアミド樹脂>
融点265℃、相対粘度2.95のナイロン66樹脂。
融点222℃、相対粘度2.70のナイロン610樹脂。
【0052】
<ポリフェニレンスルファイド樹脂>
融点280℃、MFR2000g/10分、Mw18000のPPS樹脂。
【0053】
<無機充填材>
ガラス繊維:TP67(繊維径13μm、3mmチョップドストランド)(日本板ガラス社製)。
【0054】
実施例1〜3、比較例1〜2
表1に示す割合でポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂を混合し、2軸押出機のメインフィーダーから供給し、シリンダー途中のサイドフィーダーからガラス繊維を供給する方法で混練温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、シリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で射出成形することにより試験片、および直径60mm、高さ80mmのオイルエレメントキャップを成形した。得られた試験片、およびオイルエレメントキャップを用いて、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1〜3および比較例1〜2より本発明の樹脂成形体は、良好な耐オイル性、耐塩化カルシウム性を備えたものであり、オイル周り部品として好適なものであった。
【0057】
【発明の効果】
ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、および無機充填材からなり、エンジンオイル、ブレーキフルード、トランスミッションオイルなどの各種オイル類との接触下、および/または塩化カルシウムとの接触下において良好な耐久性、強度を有するオイル周り部品、特にエンジンオイルフィルター外装部品に好適に使用できるオイル周り部品を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、および無機充填材からなり、エンジンオイル、ブレーキフルード、オートマチックトランスミッションオイルなどの各種オイル類との接触下、および/または塩化カルシウムとの接触下において良好な耐久性、強度を有するオイル周り部品に関する。特にエンジンオイルフィルター外装部品に好適に使用できるオイル周り部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は、引張、曲げ等の機械的性質に優れ、しかも耐熱性、耐薬品性が良好なため、自動車分野、電気電子分野など多くの分野で利用されている。自動車分野や建築、土木分野では軽量化、組み立て合理化等から、金属部品の樹脂化が進んでいる。中でもガラス繊維強化ポリアミド66樹脂に代表されるポリアミド樹脂は耐熱性、耐油性、耐薬品性、強靱性に優れた特徴を有し、各種自動車部品に用いられている。
【0003】
ただし、ポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂は、融雪剤として使用されている塩化カルシウムとの接触により、クラックの発生および強度低下を引き起こすため、塩化カルシウムと接触する可能性の高い部位には使用されにくい。
【0004】
ポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂の耐塩化カルシウム性を向上する手法として、アミド基濃度の低いポリアミド610やポリアミド612などをアロイ化する方法(例えば、特許文献1など)、変性ポリオレフィン樹脂をアロイ化する方法が知られている。しかしながら、ポリアミド610や、ポリアミド612、変性ポリオレフィン樹脂いずれの場合もポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂とアロイ化することにより、耐熱性や高温剛性などが低下する問題を有している。従って、高温オイル、および/または塩化カルシウムと接触するオイル周り部品に用いることはできなかった。
【0005】
また、ポリアミド樹脂とポリフェニレンスルファイド樹脂をアロイ化することにより、ポリアミド樹脂の耐熱性を保持し、かつ耐不凍液性を向上させた材料が提案されている(例えば、特許文献2、3など)。しかしながら、該提案には耐オイル性に関することは一切記載されていなければ、その示唆もない。
【0006】
以上のように耐オイル性と耐塩化カルシウム性を兼備した樹脂製オイル周り部品は実用化されておらず、早期開発が望まれている状況である。
【0007】
【特許文献1】
特公昭61−40262号公報(第1頁第10行目〜第3頁第3行目)
【特許文献2】
特開平5−248237号公報(第1頁第13行目〜第3頁第36行目)
【特許文献3】
特開2001−302918号公報([0001]〜[0009]段落)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、および無機充填材からなり、エンジンオイル、ブレーキフルード、トランスミッションオイルなどの各種オイル類との接触下、および/または塩化カルシウムとの接触下において良好な耐久性を有するオイル周り部品、特にエンジンオイルフィルター外装部品に好適に使用できるオイル周り部品を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は主として、
(1)ポリアミド樹脂(a)5〜85重量%、ポリフェニレンスルファイド樹脂(b)95〜15重量%を含有してなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填材(c)0.5〜200重量部からなる樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするオイル周り部品。
【0010】
(2)140℃のエンジンオイル中に2000時間浸漬処理した後の引張強度が未処理時の引張強度の80%以上であることを特徴とする上記(1)記載のオイル周り部品。
【0011】
(3)(i)試験片を50℃、95%RH雰囲気下で24時間処理、
(ii)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、
(iii)50℃、95%RH雰囲気下で4時間調湿、
(iv)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、
(v)試験片を50℃×95%RH雰囲気下で16時間調湿、
を順次行い、その後さらに(ii)〜(v)を9サイクル順次行って、(ii)〜(v)の処理を計10サイクル行った後の引張強度が、未処理時の引張強度の80%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のオイル周り部品。
【0012】
(4)オイル周り部品がエンジンオイルフィルター外装部品であることを特徴とする上記(1)〜(3)記載のオイル周り部品。
により達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明で用いられる(a)ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0015】
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、150℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0016】
とりわけ好ましいポリアミド樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマーまたはナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12およびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのポリアミド樹脂を耐衝撃性、成形加工性、相溶性などの必要特性に応じて混合物として用いてもよい。
【0017】
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度としては、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。
【0018】
ポリアミド樹脂の樹脂成分中の含有量は、靭性や耐塩化カルシウム性の点で5〜85重量%であり、好ましくは15〜80重量%である。
【0019】
また、本発明のポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの銅化合物などが挙げられる。なかでも1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いる(b)ポリフェニレンスルファイド樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0021】
【化1】
【0022】
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また、ポリフェニレンスルファイド樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
【0023】
【化2】
【0024】
かかる構造を一部有するポリフェニレンスルファイド樹脂は、融点が低くなるため熱可塑性樹脂の融点が低い場合には成形性の点で有利となる。
【0025】
本発明で用いられるポリフェニレンスルファイド樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常50〜20000poise(320℃、剪断速度1000sec−1)のものが好ましく使用され、100〜5000poiseの範囲がより好ましい。
【0026】
かかるポリフェニレンスルファイド樹脂は通常公知の方法によって製造できる。本発明において上記の様に得られたポリフェニレンスルファイド樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0027】
ポリフェニレンスルファイド樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃である。また、加熱処理時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0028】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0029】
本発明に用いるポリフェニレンスルファイド樹脂は脱イオン処理を施されたポリフェニレンスルファイド樹脂であることが好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶媒洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせても良い。
【0030】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリフェニレンスルファイド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は1種類または2種類以上を混合して使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリフェニレンスルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリフェニレンスルファイド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0031】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を熱水で洗浄処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるポリフェニレンスルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリフェニレンスルファイド樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリフェニレンスルファイド樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0032】
ポリフェニレンスルファイド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリフェニレンスルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はポリフェニレンスルファイド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリフェニレンスルファイド樹脂を残留している酸または塩などを除去するために、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリフェニレンスルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
【0033】
ポリフェニレンスルファイド樹脂の樹脂成分中の含有量は、95〜15重量%であり、耐熱性や耐塩化カルシウム性の点で85〜20重量%が好ましい。
【0034】
本発明において、(a)成分のポリアミド樹脂と(b)成分のポリフェニレンスルファイド樹脂の相溶性の向上を目的として従来公知の相溶化剤を配合することもできる。これら相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロック、グラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これらは2種以上同時に使用することもできる。
【0035】
本発明に用いる(c)無機充填材としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウム、シリカ、グラファイトなどの非繊維状充填剤が挙げられる。上記充填材中、ガラス繊維および炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填材は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填材はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理することは、より優れた機械的強度、耐塩化カルシウム性を得る意味において好ましい。
【0036】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被膜あるいは集束されていてもよい。
【0037】
上記の(c)無機充填材の添加量は、(a)ポリアミド樹脂および(b)PPS樹脂の合計量100重量部に対し、0.5〜200重量部であり、機械特性、耐熱性などの点で5〜200重量部が好ましく、10〜150重量部がより好ましい。
【0038】
本発明のオイル周り部品を構成する樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0039】
本発明のオイル周り部品とは、エンジンオイルやブレーキフルード、トランスミッションオイルなどの各種オイル類、および/または塩化カルシウムと接触して用いられる部品であり、さらには外装部品として好ましく用いることができる。特に、エンジンオイルフィルター外装部品に好ましく用いることができる。これら外装部品の具体例としては、エンジンオイルパン、エンジンオイルエレメントキャップなどが挙げられる。
【0040】
ここで、本発明の要件である耐オイル性試験方法について述べる。耐圧容器に試験片を入れ、試験片全体が浸漬するだけのエンジンオイルを入れ、蓋をする。該耐圧容器を140℃のオーブンに2000時間安置し、浸漬処理する。処理後の試験片表面のエンジンオイルをふき取った後、引張試験を行い、引張強度、および未処理試験片の引張強度に対する保持率を求める。
【0041】
次に、本発明の要件である耐塩化カルシウム性試験方法について述べる。
(i)試験片を50℃、95%RH雰囲気下で24時間処理、(ii)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、(iii)50℃、95%RH雰囲気下で4時間調湿、(iv)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、(v)試験片を50℃×95%RH雰囲気下で16時間調湿、を順次行い、その後さらに(ii)〜(v)を9サイクル順次行った後、引張試験を行い、引張強度、および未処理試験片の引張強度に対する保持率を求める。
【0042】
本発明のオイル周り部品を構成する樹脂組成物を得る方法としては特に制限はないが、溶融混練において、たとえば2軸押出機で溶融混練する場合にメインフィーダーからポリアミド樹脂とポリフェニレンスルファイド樹脂を供給し、無機充填材を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法や事前にポリアミド樹脂とポリフェニレンスルファイド樹脂を溶融混練した後、無機充填材と溶融混練する方法などが挙げられる。
【0043】
本発明のオイル周り部品は公知の方法で賦形でき、その成形方法に関しても制限はなく射出成形、射出圧縮成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等を利用することができる。中でも射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形が生産性の点で好ましい。また、一般的には単層であるが、多層にしてもかまわない。
【0044】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0045】
(1)材料強度
以下の方法に従って測定した。
引張 :ASTM D638
曲げ :ASTM D790
Izod衝撃:ASTM D256
相対粘度 :JIS K6920に従い、98%濃硫酸法により測定した。
【0046】
(2)耐エンジンオイル性
耐圧容器に試験片を入れ、試験片全体が浸漬するだけのエンジンオイル(トヨタ純正キャッスルモーターオイルSL(5W−30))を入れ、蓋をする。該耐圧容器を140℃のオーブンに2000時間安置し、浸漬処理する。処理後の試験片表面のエンジンオイルをふき取った後、引張、曲げ、Izod衝撃試験を行った。引張強度については未処理試験片の物性に対する保持率を求めた。
【0047】
(3)耐塩化カルシウム性
試験片を50℃、95%RH雰囲気下で24時間処理する。その後、▲1▼塩化カルシウム水溶液(濃度50重量%)を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、▲2▼50℃、95%RH雰囲気下で4時間調湿、▲3▼塩化カルシウム水溶液(濃度50重量%)を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、▲4▼試験片を50℃×95%RH雰囲気下で16時間調湿する。▲1▼〜▲4▼を10サイクル行う。
上記処理後、引張、曲げ、Izod衝撃試験を行った。引張強度については未処理試験片の物性に対する保持率を求めた。
【0048】
(4)エンジンオイルエレメントキャップの耐エンジンオイル性
エンジンオイルエレメントキャップを耐圧容器に入れ、試験片全体が浸漬するだけのエンジンオイル(トヨタ純正キャッスルモーターオイルSL(5W−30))を入れ、蓋をする。該耐圧容器を140℃のオーブンに2000時間安置し、浸漬処理する。処理後の試験片表面のエンジンオイルをふき取った後、相対粘度を測定した。
【0049】
(5)エンジンオイルエレメントキャップの耐塩化カルシウム性
(3)項と同様にしてエンジンオイルエレメントキャップを塩化カルシウム処理し、クラックの有無を実体顕微鏡(ニコン製SMZ−10型)を用いて倍率10倍で観察した。クラックが発生していないものを○、発生しているものを×とした。
【0050】
なお、実施例および比較例で使用した原材料は以下のとおり。特に断らない限りはいずれも常法に従い重合を行い、調整した。
【0051】
<ポリアミド樹脂>
融点265℃、相対粘度2.95のナイロン66樹脂。
融点222℃、相対粘度2.70のナイロン610樹脂。
【0052】
<ポリフェニレンスルファイド樹脂>
融点280℃、MFR2000g/10分、Mw18000のPPS樹脂。
【0053】
<無機充填材>
ガラス繊維:TP67(繊維径13μm、3mmチョップドストランド)(日本板ガラス社製)。
【0054】
実施例1〜3、比較例1〜2
表1に示す割合でポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂を混合し、2軸押出機のメインフィーダーから供給し、シリンダー途中のサイドフィーダーからガラス繊維を供給する方法で混練温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、シリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で射出成形することにより試験片、および直径60mm、高さ80mmのオイルエレメントキャップを成形した。得られた試験片、およびオイルエレメントキャップを用いて、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1〜3および比較例1〜2より本発明の樹脂成形体は、良好な耐オイル性、耐塩化カルシウム性を備えたものであり、オイル周り部品として好適なものであった。
【0057】
【発明の効果】
ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、および無機充填材からなり、エンジンオイル、ブレーキフルード、トランスミッションオイルなどの各種オイル類との接触下、および/または塩化カルシウムとの接触下において良好な耐久性、強度を有するオイル周り部品、特にエンジンオイルフィルター外装部品に好適に使用できるオイル周り部品を提供することができる。
Claims (4)
- ポリアミド樹脂(a)5〜85重量%、ポリフェニレンスルファイド樹脂(b)95〜15重量%を含有してなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填材(c)0.5〜200重量部からなる樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするオイル周り部品。
- 140℃のエンジンオイル中に2000時間浸漬処理した後の引張強度が、未処理時の引張強度の80%以上であることを特徴とする請求項1記載のオイル周り部品。
- (i)試験片を50℃、95%RH雰囲気下で24時間処理、
(ii)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、
(iii)50℃、95%RH雰囲気下で4時間調湿、
(iv)濃度50重量%の塩化カルシウム水溶液を試験片に塗布し、試験片を100℃オーブン中で2時間処理、
(v)試験片を50℃×95%RH雰囲気下で16時間調湿、
を順次行い、その後さらに(ii)〜(v)を9サイクル順次行って、(ii)〜(v)の処理を計10サイクル行った後の引張強度が、未処理時の引張強度の80%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のオイル周り部品。 - オイル周り部品がエンジンオイルフィルター外装部品であることを特徴とする請求項1〜3記載のオイル周り部品。
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JP2003078083A JP2004285176A (ja) | 2003-03-20 | 2003-03-20 | オイル周り部品 |
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Cited By (3)
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CN101885914A (zh) * | 2010-07-13 | 2010-11-17 | 东莞市意普万工程塑料有限公司 | 一种汽车发动机油底壳专用复合材料及其制备方法 |
CN102167904A (zh) * | 2011-04-29 | 2011-08-31 | 东莞市意普万工程塑料有限公司 | 一种无卤阻燃纳米增强尼龙复合材料及其制备方法 |
JP2016224011A (ja) * | 2015-06-04 | 2016-12-28 | 日本ゼオン株式会社 | 浸漬試験方法 |
-
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- 2003-03-20 JP JP2003078083A patent/JP2004285176A/ja active Pending
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