JP2004285093A - ポリアリーレンスルフィド樹脂の精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非プロトン性有機溶媒中で、硫黄源とジハロゲン芳香族化合物とを重合反応させて得られるポリアリーレンスルフィド樹脂を精製する方法において、軟化ないし溶融状態のポリアリーレンスルフィド樹脂を、重合停止剤、非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒、及び分解防止剤と混合するに際し、攪拌機付きミキサーを用いることを特徴とする方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PAS樹脂と略称することがある)の精製方法に関し、より詳細には、PAS樹脂中に存在するアルカリ金属ハロゲン化物などの不純物を効率よく除去することができるPAS樹脂の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PAS樹脂、中でも特にポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と略称することがある)は、機械的強度、耐熱性などに優れると共に、特に高い剛性を有するエンジニアリング樹脂として知られており、電子・電気機器部品の素材や各種の高剛性材料として有用である。
【0003】
PAS樹脂の製造には、従来、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称することがある)などの非プロトン性有機溶媒中で、p−ジクロロベンゼンなどのジハロゲン芳香族化合物と、硫化ナトリウムなどのナトリウム塩とを反応させるという方法が一般に用いられてきた。しかし、このような反応においては、副生する塩化ナトリウムがNMPなどの溶媒に不溶であるため、樹脂中に取り込まれてしまい、それを洗浄によって取り除くことは容易ではなかった。
【0004】
そこで、ナトリウム塩に代えてリチウム塩を用いて重合を行い、ハロゲン化リチウムを副生させると、ハロゲン化リチウムはNMPなどの多くの非プロトン性有機溶媒(重合用溶媒)に可溶であり、PAS樹脂中のリチウム濃度を比較的容易に低減することが可能となる。それ故、リチウム塩を用いる方法が脚光を浴びてきた。
【0005】
しかしながら、リチウム塩を用いて重合を行った場合にも、副生するハロゲン化リチウムなどが不純物としてPAS樹脂中に残存するという問題は残されている。
【0006】
特許文献1には、PAS樹脂中に残存するハロゲン化リチウムなどの不純物を効率的に除去する方法として、ポリアリーレンスルフィド樹脂を軟化ないし溶融状態で、非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒を用い、かつラインミキサー(管路中に設けた邪魔板機械的攪拌機によって流体を流しながら混合するもので、静的ミキサーも含む)を使用して洗浄する方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、洗浄工程でのPAS樹脂の熱安定性を保つ方法として、ポリアリーレンスルフィドを、非プロトン性有機溶媒及びハロゲン化アルキル化合物とを特定割合で混合した混合物にて洗浄する方法が提案されている。
【0008】
これらの特許文献記載の洗浄方法においては、PAS樹脂と、重合停止剤として添加する塩化アンモニウム水溶液や、添加した分解防止剤との反応が不十分であると、ハロゲン化リチウムが効果的に低減できなかったり、PAS樹脂の熱安定性が不十分であったり、また、熱安定性の低下を防止するために添加する分解防止剤の添加量の増大を招くといった問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−273175号公報、請求項1
【特許文献2】
特開2001−261830号公報、請求項3
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、PAS樹脂中の不純物、とりわけハロゲン化リチウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物を低減すると共に、PAS樹脂の熱安定性を向上させることができ、高分子量のPASが得られるPAS樹脂の精製方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒、重合停止剤及び分解防止剤とを用い、攪拌機付ミキサーを使用してPAS樹脂を機械的に撹拌・洗浄することにより、上記課題を効果的に達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明によれば、非プロトン性有機溶媒中で、硫黄源とジハロゲン芳香族化合物とを重合反応させて得られるポリアリーレンスルフィド樹脂を精製する方法において、軟化ないし溶融状態のポリアリーレンスルフィド樹脂を、重合停止剤、非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒、及び分解防止剤と混合するに際し、攪拌機付ミキサーを用いることを特徴とする方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の精製方法(以下、本発明の方法という)は、非プロトン性有機溶媒中で、硫黄源とジハロゲン芳香族化合物とを重合反応させて得られるポリアリーレンスルフィド樹脂を精製する方法において、軟化ないし溶融状態のポリアリーレンスルフィド樹脂を、重合停止剤、非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒、及び分解防止剤と混合するに際し、攪拌機付ミキサーを用いることを特徴とする。
【0014】
本発明の方法においては、PAS樹脂は軟化ないし溶融状態で洗浄される。PAS樹脂を軟化ないし溶融状態とするのは、固体状態のPAS樹脂の洗浄では、ハロゲン化リチウムなどの不純物の除去が十分に進行しないという不都合があるからである。
【0015】
PAS樹脂を軟化ないし溶融状態にするには、通常は、PAS樹脂を、重合停止剤、非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒、及び分解防止剤を含む洗浄液に添加し、220〜320℃に加熱することによる。
【0016】
本発明の方法を適用し得るPAS樹脂に特に制限はなく、例えば、p−ジクロロベンゼンと硫黄源とを、非プロトン性有機溶媒中でそれ自体公知の方法により重縮合させることにより得られるPPS樹脂などが挙げられる。PAS樹脂は一般に、その製造法によって、実質上線状(リニアー)で分岐、架橋構造を有しない分子構造のものと、分岐や架橋構造を有する分子構造のものとが知られているが、本発明の方法は、そのいずれのタイプのものにも適用できる。
【0017】
PAS樹脂としては、繰り返し単位として、パラフェニレンスルフィド単位を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含有するホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0018】
共重合構成単位としては、例えば、メタフェニレンスルフィド単位、オルソフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンスルフィド単位、p,p’−ビフェニレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンエーテルスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンメチレンスルフィド単位、p,p’−ジフェニレンクメニルスルフィド単位、ナフチルスルフィド単位などが挙げられる。
【0019】
本発明の方法は、前記具体例に記載した実質上線状のポリマーの他に、モノマーの一部分として3個以上の官能基を有するモノマーを少量混合して重合した分岐又は架橋ポリアリーレンスルフィドや、これを前記の線状ポリマーにブレンドした配合ポリマーにも適用できる。
【0020】
本発明の方法に用いる非プロトン性有機溶媒としては、例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物などを挙げることができる。
【0021】
非プロトン性の極性有機溶媒化合物のうち、アミド化合物の具体例としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミドなどが挙げられる。
【0022】
ラクタム化合物の具体例としては、例えば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム、N−イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロピルカプロラクタム、N−ノルマルブチルカプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタムなどのN−アルキルカプロラクタム類;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N−ノルマルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピぺリドン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル−2−ピペリドンなどが挙げられる。
【0023】
尿素化合物の具体例としては、例えば、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素などが挙げられる。
【0024】
有機硫黄化合物の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジフェニレンスルフォン、1−メチル−1−オキソスルフォラン、1−エチル−1−オキソスルフォラン、1−フェニル−1−オキソスルフォランなどが挙げられる。
【0025】
環式有機リン化合物の具体例としては、例えば、1−メチル−1−オキソホスホラン、1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン、1−フェニル−1−オキソホスホランなどが挙げられる。
【0026】
これら各種の非プロトン性極性有機溶媒化合物は、それぞれ1種単独で又は2種以上を混合して、さらには、本発明の目的に支障の無い他の溶媒成分と混合して、前記非プロトン性有機溶媒として使用することができる。
【0027】
前記各種の非プロトン性有機溶媒の中でも、好ましいのはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−アルキルカプロラクタム及びN−アルキルピロリドンであり、特に好ましいのはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0028】
非プロトン性有機溶媒と混合して用いられる水には特に制限はないが、蒸留水であることが好ましい。非プロトン性有機溶媒と水との混合比は、質量比(非プロトン性有機溶媒/水)で55/45〜95/5の範囲とすることが好ましく、65/35〜90/10の範囲がより好ましく、70/30〜85/15の範囲が特に好ましい。水の混合比率が45質量%を超えると、PAS樹脂が軟化ないし溶融状態になり難く、PAS樹脂が固化する可能性がある。また、水の混合比率が5質量%未満では、PAS樹脂が全て溶媒に溶解し均一な溶液となってしまうため、洗浄を行うことができない。
【0029】
重合停止剤として使用する物質は、酸、又は強酸と弱塩基との反応により得られる塩などであれば特に制限はない。強酸と弱塩基との反応により得られる塩としては、例えば、塩化アンモニウムなどが特に好ましい。重合停止剤として塩酸なども使用できるが、装置材質に対する腐食性を考慮すると、よりマイルドな塩化アンモニウムなどがより好ましい。
【0030】
分解防止剤としては、PAS樹脂の分解を抑制することができる化合物であれば特に制限はないが、前記特許文献2、段落番号0043に記載されている電子吸引基を有するハロゲン化芳香族化合物、特に、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルスルフォンなどが特に好ましい。
【0031】
PAS樹脂の洗浄濃度は、非プロトン性有機溶媒1リットルに対し、洗浄されるPAS樹脂を10〜400gとすることが好ましく、50〜300gがより好ましく、100〜250gが特に好ましい。洗浄されるPAS樹脂の量が400gを超えると、洗浄効率が低下する傾向にあり、また10g未満では経済的に不利となる。なお、洗浄用の非プロトン性有機溶媒には、PAS樹脂が溶解可能な範囲で飽和溶解してもよい(例えば、カウンターフロー(向流接触)等)。
【0032】
PAS樹脂の洗浄時の洗浄液温度は、220〜320℃の範囲であることが好ましく、230〜290℃がより好ましく、240〜280℃が特に好ましい。洗浄液の温度が320℃を超えると、PAS樹脂が分解し、220℃未満では、PAS樹脂が軟化ないし溶融しない。
【0033】
本発明の方法で用いる攪拌機付ミキサーとは、ポリマー相と溶媒相とを機械的に強制撹拌できる装置をいう。攪拌機付ミキサーの撹拌翼形状、槽形状などには特に制限はなく、縦型でも横型でもよい。静的(スタティック)ミキサー、例えば、ケニックス式スタティックミキサー、スルーザ式スタティックミキサーなどは含まない。この理由は、ポリマー末端のLi基と重合停止剤との反応を高効率で行わせるためには、攪拌機付ミキサーによる強制撹拌が必須であり、スタティックミキサーでは、どうしてもポリマー末端のLiの一部が未反応のまま残ってしまうため、その後、洗浄操作を繰り返しても、ポリマー中のLi不純物量が低減できないからである(後記する表1参照)。
【0034】
分解防止剤との反応も同様に、分解防止剤とPAS中に存在する分解促進物質とを効率良く反応させるためには、攪拌機付ミキサーによる強制撹拌が必須であり、分解促進物質がPAS樹脂中に残留した場合、熱安定性の良好なポリマーが得られず、高分子量ポリマーを得ることができないからである(後記する表1参照)。
【0035】
本発明の方法において、攪拌機付ミキサーの撹拌強度は、好ましくは0.02〜3kw/m3の範囲内、より好ましくは0.03〜1.5kw/m3、特に好ましくは0.04〜1kw/m3である。撹拌強度が0.02kw/m3より低いと、重合停止剤や分解防止剤とPASとの混合が不十分となる場合があり好ましくない。撹拌強度を3kw/m3より高くしても、それ以上の洗浄効率は得られず経済的に不利となる。
【0036】
本発明の方法において、攪拌機付ミキサーによる撹拌時間は、好ましくは2分〜1時間の範囲内、より好ましくは3分〜10分である。2分未満では、PAS樹脂と洗浄液との混合が不十分となる場合があり、また、1時間を超えてもそれ以上の洗浄効率は得られず、経済的に不利となる。
【0037】
本発明の方法を実施する際に用いる撹拌槽及び攪拌機付ミキサーは、耐食性を有する材料からなることが好ましい。これは、洗浄液に含まれる、酸又は強酸と弱塩基からなる塩である重合停止剤が金属腐食性を有するため、腐蝕から装置を保護するためである。
【0038】
さらに、PAS重合槽出口から先の装置は、配管も含めてジャケット付設備で製作されていることが望ましい。
【0039】
撹拌槽及び攪拌機付ミキサー、並びに上記ジャケットを構成する耐食性を有する材料としては、例えば、SUS316L,SCS14,SUS329J4L等のステンレススチール、ハステロイ、Ti及びTi合金などが挙げられる。
【0040】
本発明の方法によれば、攪拌機付ミキサーでの強制混合により、PAS樹脂と重合停止剤との反応効率を向上させることができ、PAS樹脂からアルカリ金属ハロゲン化物を効率的に除去することが可能となる。
【0041】
さらに、攪拌機付ミキサーでの強制混合により、PAS樹脂と分解防止剤との反応効率を向上させることができ、PAS樹脂の反応槽以降の洗浄精製系におけるポリマー熱安定性が向上し、高分子量ポリマーの製造が可能となる。
【0042】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
実施例1
(1)硫黄源(硫化リチウム)の合成
上部に蒸留塔を備えた1.3m3の攪拌機付き反応器に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)500kg及び水酸化リチウム1水和物100kg(2.38キロモル)を仕込み、減圧下140℃に昇温し、水酸化リチウム水和物分の水を脱水した。続いて蒸留塔をバルブで切り離し、反応槽を孤立した状態で、130℃の温度下で液中に硫化水素を総量81.2kg吹き込み、水硫化リチウムを合成した。このときの反応槽内圧力は0.06MPaであった。引き続いて、反応槽を再度蒸留塔に接続し、反応槽を205℃目標に昇温した。150℃を超した時点から水硫化リチウム生成に伴って副生した水が蒸発し始めたので、コンデンサーにより凝集して系外に抜き出した。また、同時に硫化水素の一部を脱硫した。反応槽内温度205℃で2時間保持し、硫化リチウム合成を終了した。
【0044】
(2)プレポリマーの製造
上記(1)で合成した硫化リチウムスラリー液を、撹拌しながらサンプリングし、存在する硫化リチウム濃度を測定した。なお、硫黄濃度はヨードメトリー法により分析した。リチウム濃度は、仕込みリチウム量と脱水操作による物質収支(マテリアルバランス)から算出した。分析結果は、S/Li=0.488(モル/モル)であった。反応槽を再度孤立し、反応槽内温度を200℃に降温し、水酸化リチウム4.17kg(0.174キロモル)、パラジクロロベンゼン(pDCB)165.5kg(1.126キロモル)及び水6.27kg(0.348キロモル)を投入した。水投入と同時に縮合反応に伴う発熱が始まるので、ジャケット熱媒による温度制御を行い、210℃にて4時間の予備重合反応を行った後、90℃まで冷却した。冷却後、pDCBを10.2kg(0.0694キロモル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)127kgを追加投入し、連続重合用プレポリマーを製造し、プレポリマー貯槽に移送した。
【0045】
(3)ポリアリーレンスルフィドの製造
容量60リットルの撹拌翼付き反応槽を連続重合槽に用いた。一段の連続槽型反応(CSTR)で反応温度260℃、プレポリマー供給量は、上記(2)で製造したプレポリマーをポンプにて15kg/hr(滞留時間3時間)の条件で連続重合槽へチャージした。重合槽出口から先の装置は、配管を含めて全てジャケット付設備を使用した。
【0046】
重合槽出口に、2リットルの攪拌機付ミキサー(8枚タービン翼2段、撹拌回転数300rpm(0.045kw/m3)を設置し、その上流に重合停止剤として塩化アンモニウム(NH4Cl)、分解防止剤として4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン(DCDPS)を、NMPと水との混合溶媒に溶解して供給した。供給量は次の通りであった。
【0047】
▲1▼NH4Cl 0.312kg/hr(5.83×10−3キロモル/hr)
▲2▼DCDPS 0.033kg/hr(0.114×10−3キロモル/hr)
▲3▼NMP 8.0kg/hr(0.081キロモル/hr)
▲4▼H2O 2.0kg/hr(0.111キロモル/hr)
【0048】
プレポリマーと上記▲1▼〜▲4▼の混合物を250℃の温度で静置槽に導入し、静置槽上部よりプレポリマーの反応液などを連続的に抜き出し、静置槽下部よりポリマー相を連続的に抜き出した。
【0049】
(4)ポリアリーレンスルフィドの洗浄
その後、上記(3)で抜き出されたポリマー相と、NMP 85質量%/H2O 15質量%の洗浄液を、20kg/hrの供給量で、上記(3)と同一の条件で攪拌機付ミキサーで混合し、洗浄した。同様なミキサー/セトラー型の連続洗浄を、この後3段実施した。重合槽出口からは、上記(3)での重合停止剤・分解防止剤の混合も含めると、計5回のポリマー洗浄を実施した。
【0050】
(5)精製されたポリアリーレンスルフィドの評価
各静置槽下部には、ポリマーをサンプリングできる設備を設置し、各洗浄槽毎に洗浄後のポリマーの分子量(固有粘度として)及び残留Li量を測定した。これらの結果を後記する表1に示す。なお、PAS中の残留Li量と分子量(固有粘度)の測定は、以下の方法によって実施した。
【0051】
▲1▼残留Li量
上記(3)及び(4)の各段で得られたPASをそれぞれ粉砕し、白金るつぼに1gを採取秤量し、マッフル炉にて600℃、10時間焼成灰化したものを測定試料とした。原子吸光法を用いて、各測定試料のLi量を定量した。
【0052】
▲2▼分子量(固有粘度)
上記(3)及び(4)の各段で得られたPASをそれぞれ粉砕し、水、アセトンで繰り返し洗浄し、真空乾燥機にて乾燥させ測定試料とした。この測定試料0.04±0.001gをα−クロロナフタレン10ミリリットル中に235℃、15分以内で溶解させ、206℃の恒温槽内で得られる粘度の、ポリマーを溶解させていないα−クロロナフタレンの粘度に対する相対粘度を測定した。これらの値を用い、次式にしたがって、PASの固有粘度ηinhを算出した。
ηinh(dl/g)=ln(相対粘度)/ポリマー濃度
【0053】
実施例2
(1)プレポリマーの製造
上記実施例1(2)のプレポリマー合成において、プレポリマー合成前に水酸化リチウムを追加添加せず、予備重合時間を2時間に短縮し、プレポリマーを90℃に冷却後、pDCBの追加添加量を18.7kg(0.127キロモル)とした以外は、実施例1と同様にプレポリマーを製造した。
【0054】
(2)ポリアリーレンスルフィドの製造
連続重合槽へのプレポリマーのチャージ量を20kg/hr(滞留時間2時間)とし、実施例1(3)と同一の攪拌機付ミキサーの運転条件で、重合停止剤として塩化アンモニウム(NH4Cl)、分解防止剤として4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン(DCDPS)、NMPと水との混合溶媒の供給量を以下のように変更した以外は実施例1(3)と同様にしてポリマーを製造した。
【0055】
▲1▼NH4Cl 0.416kg/hr(7.78×10−3キロモル/hr)
▲2▼DCDPS 0.045kg/hr(0.155×10−3キロモル/hr)
▲3▼NMP 12.0kg/hr(0.12キロモル/hr)
▲4▼H2O 3.0kg/hr(0.17キロモル/hr)
【0056】
(3)ポリアリーレンスルフィドの洗浄
洗浄液組成を、NMP 80質量%/水 20質量%に変更した以外は実施例1(4)と同様にしてポリマーを洗浄した。
【0057】
(4)精製されたポリアリーレンスルフィドの評価
得られたポリマーの残留Li量及び分子量(固有粘度)を測定し、その結果を後記する表1に示す。
【0058】
比較例1
実施例1で用いた攪拌機付ミキサーの代わりにスタティックミキサー(スルーザ式のSMX8エレメント(内径15mm、長さ365mm)を用いた以外は、実施例1と同様の条件でポリマーを製造した。得られたポリマーの残留Li量及び分子量(固有粘度)を測定し、その結果を後記する表1に示す。
【0059】
比較例2
実施例2で用いた攪拌機付ミキサーの代わりにスタティックミキサー(スルーザ式のSMX8エレメント(内径15mm、長さ365mm)を用いた以外は、実施例2と同様にしてポリマーを製造した。得られたポリマーの残留Li量及び分子量(固有粘度)を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表1の結果から、実施例1及び2では、重合停止剤との反応効率が高く、No1静置槽からNo5静置槽まで、順に残留Li量が減少しており、No5静置槽では<1となっており、残留Li量が極めて低減されていることがわかる。
【0062】
これに対し、比較例1及び2では、PAS末端Liと重合停止剤との反応が完結できず、No4段目以降は、洗浄してもLi量を低減することができないことがわかる。
【0063】
実施例1では、高分子量ポリマーは、No5静置槽においても低分子化されておらず、分解防止剤との反応効率が高いことがわかる。
【0064】
比較例1では、高分子量ポリマーと分解防止剤との反応が完結されておらず、分子量0.283dl/gから0.2dl/gへ低下していることがわかる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、PAS樹脂中に存在するアルカリ金属ハロゲン化物、特にハロゲン化リチウム、などの不純物を効率良く除去することができると共に、かつPAS樹脂の熱安定性を向上させることができ、高分子量のPAS樹脂が得られる。
Claims (5)
- 非プロトン性有機溶媒中で、硫黄源とジハロゲン芳香族化合物とを重合反応させて得られるポリアリーレンスルフィド樹脂を精製する方法において、
軟化ないし溶融状態のポリアリーレンスルフィド樹脂を、重合停止剤、非プロトン性有機溶媒と水との混合溶媒、及び分解防止剤と混合するに際し、攪拌機付ミキサーを用いることを特徴とする方法。 - 攪拌機付ミキサーの撹拌強度が0.02〜3kw/m3の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の精製方法。
- 攪拌機付ミキサーによる撹拌時間が2分〜1時間の範囲内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の精製方法。
- 撹拌槽及び攪拌機付ミキサーが、耐食性を有する材料からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の精製方法。
- 耐食性を有する材料が、ステンレススチール、ハステロイ、Ti及びTi合金からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の精製方法。
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