JP2004284945A - 結晶質リン酸ジルコニウム - Google Patents
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Abstract
【課題】3価以上の金属元素を含む結晶質リン酸ジルコニウムを提供する。
【解決手段】一般式[M(Zr2(PO4)3)n]m・[RZr2(PO4)3]1-mn(但し、Mは1種又は2種以上の3価以上の金属元素を示す。RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。nは前記金属元素の平均価数を示す。0<m≦1である。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムであって、(1)特定のd−間隔をもつX線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有し、(2)分析的計算による酸化物として式2MO0.5n・4nZrO2・3nP2O5により表わされる、ことを特徴とする結晶質リン酸ジルコニウムに係る。
【選択図】なし
【解決手段】一般式[M(Zr2(PO4)3)n]m・[RZr2(PO4)3]1-mn(但し、Mは1種又は2種以上の3価以上の金属元素を示す。RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。nは前記金属元素の平均価数を示す。0<m≦1である。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムであって、(1)特定のd−間隔をもつX線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有し、(2)分析的計算による酸化物として式2MO0.5n・4nZrO2・3nP2O5により表わされる、ことを特徴とする結晶質リン酸ジルコニウムに係る。
【選択図】なし
Description
本発明は、3価以上の金属元素を含む結晶質リン酸ジルコニウムに関する。
結晶質リン酸ジルコニウムM(I)Zr2(PO4)3及びM(II)Zr4(PO4)6の結晶質リン酸ジルコニウムは、公知の化合物であって、イオン固定化材料、イオン吸着材料、イオン導電体、低膨張材料、触媒・触媒担体、抗菌・殺菌剤等としての利用が研究されている。
しかしながら、上記Mが3価以上の金属元素であるM(III)(Zr2(PO4)3)nの結晶質リン酸ジルコニウムについては、その合成法及び特性について明らかにされていない。上記Mが3価以上の金属元素である結晶質リン酸ジルコニウムを確実に合成することができれば、これら金属元素の特性を活かした材料が期待できる。
従って、本発明の主な目的は、3価以上の金属元素を含む結晶質リン酸ジルコニウムを提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の合成方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の結晶質リン酸ジルコニウムに係る。
すなわち、本発明は、下記の結晶質リン酸ジルコニウムに係る。
1. 一般式[M(Zr2(PO4)3)n]m・[RZr2(PO4)3]1-mn(但し、Mは1種又は2種以上の3価以上の金属元素を示す。RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。nは前記金属元素の平均価数を示す。0<m≦1である。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムであり、
(1)下記表に示すd−間隔をもつX 線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有し、
(1)下記表に示すd−間隔をもつX 線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有し、
2. 結晶質リン酸ジルコニウムの表面及び/又は細孔に当該金属元素が化合物の形態で吸着されている前記項1記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
3. (a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムと、(b)3価以上の金属元素イオンの少なくとも1種を含む溶液とを含有する混合物を100℃以上で熱処理することよって得られる、前記項1記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
4. 熱処理を0.1〜40MPaの圧力下で行う前記項3記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
5. 熱処理をオートクレーブ中で行う前記項4又は5に記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
6. (a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムと、(b)3価以上の金属元素の金属元素を含む化合物の少なくとも1種とを含有する混合物を400℃以上で熱処理することよって得られる、前記項1又は2に記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
7. 3価以上の金属元素を含む化合物が硝酸塩である前記項6記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
本発明では、固定対象金属と結晶質リン酸ジルコニウムとを含む混合物を所定の方法で熱処理することにより、M(Zr2(PO4)3)n(但し、Mは1種又は2種以上の3価以上の金属元素を示し、nは金属元素の平均価数である)あるいはM(Zr2(PO4)3)nとRZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)とからなる結晶質リン酸ジルコニウムが生成する。例えば、上記式において各硝酸塩とHZr2(PO4)3からM(Zr2(PO4)3)nが得られる湯合には、固定対象金属の固定化は下記の反応式に従うものと考えられる。
nHZr2(PO4)3 + M(NO3)n → M[Zr2(PO4)3]n + nHNO3
さらに、固定対象金属は、主としてその化合物の形態で結晶質リン酸ジルコニウムの表面又は細孔に吸着することもできる。これにより、Rサイトに対応する量を超える量の固定対象金属を結晶質リン酸ジルコニウムに固定することが可能となる。
さらに、固定対象金属は、主としてその化合物の形態で結晶質リン酸ジルコニウムの表面又は細孔に吸着することもできる。これにより、Rサイトに対応する量を超える量の固定対象金属を結晶質リン酸ジルコニウムに固定することが可能となる。
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、安定な結晶物質であり、塩類、酸、アルカリ等に対する耐薬品性、耐水性、耐熱性等に優れている。また、この固定化反応においては、固定化体の安定性を阻害するような副生成物はほとんど生じない。
本発明の3価以上の金属元素が固定化された結晶質リン酸ジルコニウムは、金属元素(特に高レベル放射性廃棄物中に存在する放射性元素のほか、一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰中に存在する有害な重金属元素等)の固定化処理のほか、触媒、ガス分離剤、低熱膨張材料、セラミックス材料等への応用にも期待される。
本発明の3価以上の金属元素が固定化された結晶質リン酸ジルコニウムは、金属元素(特に高レベル放射性廃棄物中に存在する放射性元素のほか、一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰中に存在する有害な重金属元素等)の固定化処理のほか、触媒、ガス分離剤、低熱膨張材料、セラミックス材料等への応用にも期待される。
1.結晶質リン酸ジルコニウム
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、一般式[M(Zr2(PO4)3)n]m・[RZr2(PO4)3]1-mn(但し、Mは1種又は2種以上の3価以上の金属元素(以下「固定対象金属」ともいう。)を示す。RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。nは前記金属元素の平均価数を示す。0<m≦1である。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムであり、
(1)下記表に示すd−間隔をもつX 線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有し、
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、一般式[M(Zr2(PO4)3)n]m・[RZr2(PO4)3]1-mn(但し、Mは1種又は2種以上の3価以上の金属元素(以下「固定対象金属」ともいう。)を示す。RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。nは前記金属元素の平均価数を示す。0<m≦1である。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムであり、
(1)下記表に示すd−間隔をもつX 線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有し、
すなわち、本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、上記RZr2(PO4)3・yH2OのRサイトの一部又は全部が固定対象金属に置換されたものに相当する。従って、Rサイトの全部が置換された場合(m=1の場合)には、結晶質リン酸ジルコニウムM(Zr2(PO4)3)nとなる。
本発明では、固定対象金属は、結晶質リン酸ジルコニウムのRサイトを占有する場合のほか、結晶質リン酸ジルコニウムに吸着される場合もある。この場合には、固定対象金属は、通常は、その化合物の形態で吸着され得る。これにより、Rサイト量を超える量の固定対象金属を結晶質リン酸ジルコニウムで固定することができる。吸着される量は、固定対象金属の種類、化合物の形態等によって適宜変更され得る。化合物の形態としては、限定的でなく、無機酸塩(硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等)、有機酸塩(シュウ酸塩、酢酸塩等)等のいずれの形態であっても良い。特に、本発明では硝酸塩の形態であることが望ましい。
なお、本発明における吸着とは、Rサイトを占有しない状態で結晶質リン酸ジルコニウム中に固定対象金属が存在し、かつ、結晶質リン酸ジルコニウム5gを100mlのイオン交換水中で温度160℃(オートクレーブ中)の条件下で24時間放置した後にも結晶質リン酸ジルコニウム中に上記金属が存在することをいう。
上記Mは、3価以上の金属元素であれば良い。例えば、Sc、Y等の3族元素、Ti、Zr、Hf等の4族元素、V、Nb、Ta等の5族元素、Cr、Mo、W等の6族元素、Mn、Tc、Re等の7族元素、Fe、Ru、Os等の8族元素、Co、Rh、Ir等の9族元素、Ni、Pd、Pt等の10族元素、Cu等の11族元素、Cd等の12族元素、Sn、Pb等の13族元素、Bi等の14族元素等が挙げられる。
上記nは、上記金属元素Mの平均価数を示す。例えば、1モルのMが、3価の金属元素×0.3モル、4価の金属元素×0.7モルの割合で構成されている場合は、その平均価数は(3×0.3+4×0.7)/(0.3+0.7)=3.7となる。
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、上記表のようなd−間隔をもつX線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有する。
なお、上記表に示すX線回折データにおいて、Iは相対強度であり、dは面間隔である。X線回折分析は、X線回折装置「MiniFlex」(リガク製)を使用し、測定時の照射源は0.8kWで操作された銅ターゲットX線管(CuKα1)であり、圧縮粉末を2°(2θ)/分で走査して記録したものである。dは、内部基準物質としてSi又はCoを用いて、記録された回折ピークの2θから計算した。
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、分析的計算による酸化物として式2MO0.5n・4nZrO2・3nP2O5により表わされる。ここでのM及びnは、前記と同じである。
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、無水物のほか、結合水、結晶水等を含むものも包含する。
2.結晶質リン酸ジルコニウムの製造方法
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、好ましくは、一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムを固定対象金属の固定化剤(担体)として用い、下記の製法1又は製法2により得られる。
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、上記表のようなd−間隔をもつX線回折図形により特徴付けられる結晶構造を有する。
なお、上記表に示すX線回折データにおいて、Iは相対強度であり、dは面間隔である。X線回折分析は、X線回折装置「MiniFlex」(リガク製)を使用し、測定時の照射源は0.8kWで操作された銅ターゲットX線管(CuKα1)であり、圧縮粉末を2°(2θ)/分で走査して記録したものである。dは、内部基準物質としてSi又はCoを用いて、記録された回折ピークの2θから計算した。
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、分析的計算による酸化物として式2MO0.5n・4nZrO2・3nP2O5により表わされる。ここでのM及びnは、前記と同じである。
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、無水物のほか、結合水、結晶水等を含むものも包含する。
2.結晶質リン酸ジルコニウムの製造方法
本発明の結晶質リン酸ジルコニウムは、好ましくは、一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムを固定対象金属の固定化剤(担体)として用い、下記の製法1又は製法2により得られる。
固定化剤
固定化剤として使用する結晶質リン酸ジルコニウムは、一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で表わされ、分析的計算による酸化物として式4ZrO2・3P2O5により表わされるものである。
固定化剤として使用する結晶質リン酸ジルコニウムは、一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で表わされ、分析的計算による酸化物として式4ZrO2・3P2O5により表わされるものである。
このような結晶質リン酸ジルコニウム自体は、公知のもの(特開昭60−239313号公報)又は市販品を使用することができる。また、製法も限定的でなく、公知の製法によって得られた結晶質リン酸ジルコニウムを使用することができる。
例えば、次に示すように、ジルコニウム化合物及びカルボン酸化合物を含む原料混合液を用いる方法によって上記結晶質リン酸ジルコニウムを好適に調製することができる。
具体的には、まず、ジルコニウム化合物及びカルボン酸化合物を含む原料混合液に対し、リン酸化合物又はその水溶液を加える。
上記ジルコニウム化合物としては特に限定されないが、水溶性又は酸により水可溶性となる化合物が好ましい。例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ビロオキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム;硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等の鉱酸のジルコニウム塩;酢酸ジルコニル、ギ酸ジルコニル等の有機酸のジルコニウム塩;炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、シユウ酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム錯塩が例示される。これらは、水和物の形態をとり得るものは、水和物も包含する。これら化合物のうち、オキシ塩化ジルコニウム及び硫酸ジルコニウムの少なくとも1種がより好ましい。
カルボン酸化合物は限定されないが、水溶性又は酸により水可溶性となり、かつ、カルボキシル基(−COOH)を2個以上有する脂肪族ポリカルボン酸及びその塩が好ましい。具体的には、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸水素アンモニウム、シュウ酸リチウム、マレイン酸、マロン酸、コハク酸及びこれ等の塩類等の脂肪族二塩基酸とその塩類;クエン酸、クエン酸アンモニウム、酒石酸、リンゴ酸等の脂肪族オキシ酸及びそれ等の塩類等が例示される。これらは、水和物の形態をとり得るものは、水和物も包含する。この中でも、シュウ酸並びにそのナトリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1種がより好ましい。
リン酸化合物としては特に制限されないが、水溶性又は酸により水可溶性となる化合物が好ましい。具体的には、リン酸、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸アンモニウム、第三リン酸ナトリウム等のオルトリン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩;メタリン酸、ピロリン酸等の少なくとも1個のP−O−P結合を有する縮合リン酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が例示される。これらは、水和物の形態をとり得るものは、水和物も包含する。これらのうちでも、リン酸及びオルトリン酸のアンモニウム塩の少なくとも1種がより好ましい。
上記混合液に対し、アンモニウム化合物の少なくとも1種を添加する。これら化合物の添加時期は、原料混合液の調製中のいずれの時点であっても良い。
アンモニウム化合物は限定的でないが、水溶性又は酸により水可溶性となる化合物が好ましい。アンモニウム化合物としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の無機アンモニウム化合物;水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機アンモニウム化合物等が例示される。これらは、水和物の形態をとり得るものは、水和物も包含する。前述のジルコニウム化合物、カルボン酸化合物及びリン酸化合物の少なくとも1種がアンモニウム含有化合物である場合には、これらをアンモニウムイオン源としても同時に使用することができる。この中でも、リン酸アンモニウム、アンモニア水、塩化アンモニウム及びシュウ酸アンモニウムの少なくとも1種がより好ましい。
各原料の混合に際しては、攪拌を行うことが望ましい。特に、リン酸化合物を添加する際には、部分的にリン酸濃度が高くなる状態が持続しないように攪拌を行うことが望ましい。
原料混合液は、ジルコニウム化合物(Zrとして)、カルボン酸化合物(C2O4として)及びリン酸化合物(PO4として)の割合が、第1図([図1])に示すモル比三角成分図において、A(28, 3, 69)、B(63, 6, 31)、C(44, 43, 13)及びD(1, 97, 2)の各点を結ぶ直線で囲まれた領域内におさまり、かつ、Zr1モル当りアンモニウム化合物0.2〜100モル程度となるように調節することが望ましい。混合溶液中の各原料の組成比が上記領域外となる場合には、結晶化速度が遅い、収率が低い、非晶質生成物を混有する、末反応原料が残存する、所望外の結晶形を含む結晶質となる等の問題点の1又は2以上が生ずるおそれがある。
各原料を均一に溶解又は分散させた混合液の形態は、透明溶液又は未溶解の過剰原料を含むスラリー状であっても良い。
原料混合液の濃度は、Zrが0.01〜25重量%、特に0.1〜10重量%とすることが好ましい。Zrが0.01重量%未満の稀薄溶液では経済的に不利である。一方、Zrが25重量%を上回る場合にはカルボン酸塩、リン酸塩等が結晶として析出するので、生成物たる結晶質リン酸ジルコニウムの濾過及び水洗が困難となることがある。
原料混合液はpHは限定的でないが、pH10以下であることが好ましく、より好ましくはpH0.5〜7である。上記pHが10を超える場合には、結晶化度の低い結晶質リン酸ジルコニウムが生成される傾向がある。原料混合液のpH調整剤としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸;水酸化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアンモニウム及びアルカリ金属の水酸化物及び炭酸塩等が例示される。
反応温度(本発明においては、原料各成分の反応及び熟成による結晶質リン酸ジルコニウムの晶出反応を一括して反応という)は、50℃以上とすることが好ましい。反応温度が50℃未満では、目的生成物の晶出に長時間を要するので経済的に不利となるおそれがある。反応温度の上限は、特に制限されないが、経済性の観点からは200℃程度とすれば良い。反応時間は、原料の種類(即ち原料の反応性)、原料の配合比、反応混合液の濃度、温度及びpH、反応生成物の所望の結晶化度等により大幅に変わり得るが、通常30分〜20日程度である。
生成した結晶質リン酸ジルコニウムRZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)は、濾過、デカンテーション、遠心分離等の公知の手段によつて、液相から分離され、洗浄された後、常法に従つて脱水、乾操され、さらに必要に応て1080℃以下で加熱処理される。乾操方法としては、加熱乾操又は風乾のほか、五酸化リン、塩化カルシウム、シリカゲル等の乾燥剤による吸着水の除去等が適用できる。1080℃を上回る温度で加熱処理を行う場合には、所望の結晶形が変形して二リン酸ジルコニウム(ZrP2O7)等に変換される。
このようにして得られる結晶質リン酸ジルコニウムは、化学的・熱的に安定な三次元網状構造を有しており、Rサイトへの置換によって金属元素イオンを固定化できる機能とともに、アンモニウムイオン、水素イオン、分子径の小さいH2O分子等を部分的に網目構造のミクロな細孔中に含むゼオライト状トンネル構造を備えている。固定対象金属は、細孔中に取り込まれると考えられ、外部環境の影響を直接受けることが少なくなるため、外部に浸出し難くなる。
このようにして得られる結晶質リン酸ジルコニウムは、化学的・熱的に安定な三次元網状構造を有しており、Rサイトへの置換によって金属元素イオンを固定化できる機能とともに、アンモニウムイオン、水素イオン、分子径の小さいH2O分子等を部分的に網目構造のミクロな細孔中に含むゼオライト状トンネル構造を備えている。固定対象金属は、細孔中に取り込まれると考えられ、外部環境の影響を直接受けることが少なくなるため、外部に浸出し難くなる。
本発明では、出発原料である結晶質リン酸ジルコニウムの形状は限定されず、粉末、粒状等の任意の形態で固定対象金属を固定化することができる。従って、固定化剤の使用方法等に応じて、取扱い上好ましい形状のものを使用すれば良い。
本発明における固定化剤は、無水物のほか、結合水、結晶水等を含むものも包含する。
このようにして得られた結晶質リン酸ジルコニウムRZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)を固定化剤として、以下のような方法により、本発明の結晶質リン酸ジルコニウムを好適に製造することができる(以下、上記結晶質リン酸ジルコニウムRZr2(PO4)3を単に「固定化剤」と言う場合がある。)。
製法1
製法1では、(a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウム(固定化剤)と、(b)3価以上の金属元素イオンの少なくとも1種を含む溶液とを含有する混合物を100℃以上で熱処理する。
製法1では、(a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウム(固定化剤)と、(b)3価以上の金属元素イオンの少なくとも1種を含む溶液とを含有する混合物を100℃以上で熱処理する。
上記溶液は、3価以上の金属元素を含む化合物を適当な溶媒に溶解させることにより調製することができる。上記金属元素は、前記1.で記載した金属元素から適宜選択することができる。上記化合物としては、上記金属元素を含む有機酸塩及び無機酸塩の少なくとも1種が好ましい。有機酸塩としては、例えば酢酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。無機酸塩としては、例えば硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物等が挙げられる。上記の溶媒としては、水のほか、硝酸、塩酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、アルコール等を含む水溶液が例示できる。上記溶液の濃度は限定的でないが、一般的に0.01〜10重量%とすることが好ましい。
固定化剤と固定対象金属との配合割合(固定対象金属の固定量)は、固定化剤に対して固定対象金属をモル比で換算して1/0.6n以下、特に1/0.8n以下、さらには1/n以下で配合することが望ましい。例えば、nが3である固定対象金属を用いる場合は、固定化剤1モルに対して固定対象金属を(1/1.8=約0.56)モル以下、特に(1/2.4=約0.42)モル以下、さらには(1/3=約0.33)モル以下とすることが好ましい。上記のような比率に設定することにより、混合物中の固定対象金属を確実に固定化することができる。なお、本発明では、上記比率が1/nを超えても、固定対象金属は結晶質リン酸ジルコニウムの表面又は細孔にその化合物の形態で吸着することもできるため、結果として1/nを超えても固定金属元素の固定化が実現される。
次いで、混合物の熱処理を行う。熱処理温度は100℃以上、好ましくは150〜500℃とする。熱処理温度が100℃未満のときには、金属元素を固定することが困難となり、また固定化されたしても安定な固定化体が得られず、特に耐薬品性が不十分となるおそれがある。また、500℃を上回る温度は、エネルギー的に不利であり、また使用できる設備・装置が限定される。熱処理時間は、熱処理温度に依存するので特に限定されないが、一般に高温で熱処理を行う場合には短時間で良く、低温で熱処理を行う場合には長時間を要する。
熱処理における圧力は限定されないが、一般に0.1〜40MPa、特に0.1〜20MPaとすることが望ましい。このような圧力条件下で熱処理するためには、本発明ではオートクレーブ中で熱処理を実施することが望ましい。オートクレーブ中で熱処理する場合には、揮発性の金属元素でもオートクレーブ外への揮発がないので周辺設備が侵食されることがなく、特殊な材質の設備等を必要としない。しかも、長期間安定に保持することができる。オートクレーブ自体は、公知又は市販のオートクレーブ装置を用いることができる。
このようにして、製法1では、上記金属元素のイオンを含む溶液を結晶質リン酸ジルコニウムとともに100℃以上で加熱することにより、本発明の第一発明又は第二発明の結晶質リン酸ジルコニウムを得ることができる。すなわち、3価以上の金属元素が固定された結晶質リン酸ジルコニウム(固定化体)を得ることができる。
この固定化体は、比較的安定な結晶物質であり、塩類、酸、アルカリ等に対する耐薬品性が良好であり、しかも耐水性、耐熱性等にも優れている。また、この固定化に際しては、固定化体の安定性を阻害するような副生成物はほとんど生じないので、純度が高い結晶質リン酸ジルコニウム[M(Zr2(PO4)3)n]m・[RZr2(PO4)3]1-mnが得られる。
製法2
製法2では、(a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムと、(b)3価以上の金属元素の化合物の少なくとも1種とを含有する混合物を400℃以上で熱処理する。
製法2では、(a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムと、(b)3価以上の金属元素の化合物の少なくとも1種とを含有する混合物を400℃以上で熱処理する。
上記金属元素としては、前記1.で挙げたものから適宜選択することができる。上記化合物としては特に限定されないが、好ましくは硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩等の無機酸塩が例示される。これらの中でも、特に硝酸塩がより好ましい。例えば、硝酸ニッケル、硝酸イットリウム、硝酸鉄、硝酸マンガン等が挙げられる。これら硝酸塩の性状は限定されず、固体状のほか、遊離の硝酸を含むものであって良い。固体状の硝酸塩の場合には、固定化剤と硝酸塩とを混合して均質な混合物とすれば良い。また、固定対象金属が遊離の硝酸を多量に含む液状の場合には、固定化剤と溶液状の固定対象金属とを混合し、蒸発乾固して均質な混合物とすれば良い。すなわち、上記結晶質リン酸ジルコニウム及び上記金属元素の化合物からなり、実質的に溶媒を含まない混合物を好適に用いることができる。
固定化剤と固定対象金属との配合割合(固定対象金属の固定量)は、固定化剤に対して固定対象金属をモル比で換算して1/0.6n以下、特に1/0.8n以下、さらには1/n以下で配合することが望ましい。例えば、nが3である固定対象金属を用いる場合は、固定化剤1モルに対して固定対象金属を(1/1.8=約0.56)モル以下、特に(1/2.4=約0.42)モル以下、さらには(1/3=約0.33)モル以下とすることが好ましい。上記のような比率に設定することにより、混合物中の固定対象金属を確実に固定化することができる。なお、本発明では、上記比率が1/nを超えても、固定対象金属は結晶質リン酸ジルコニウムの表面又は細孔にその化合物の形態で吸着することもできるため、結果として1/nを超えても固定金属元素の固定化が実現される。
次いで、結晶質リン酸ジルコニウムと前記化合物とを含む混合物を400〜1250℃、好ましくは550〜1100℃で熱処理する。熱処理温度が400℃未満のときには、固定対象金属の固定化量が低下し、安定した固定化体が得られず、特に耐薬品性が不十分となるおそれがある。また、1250℃を上回る温度は、固定対象金属の固定化のために不必要であるため、エネルギー的に不利であり、さらに処理容器も高耐熱性のものに限定されるおそれがある。熱処理時間は、熱処理温度に依存するので限定されないが、一般に高温で熱処理を行う場合には短時間で良く、低温で熱処理を行なう場合には長時間を要する。
以下に実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。但し、本発明は、実施例の範囲に限定されるものではない。
実施例1
塩化アンモニウム44.6g、シュウ酸2水和物116.4g、ZrO2換算で55.8gに相当するオキシ塩化ジルコニウム、リン酸−ナトリウム2水和物58.0gを順次水に加えて混合溶液3000gを調製した。この混合溶液をアンモニア水でpH3.8に調節した後、90℃の恒温室中に3日間保持した。得られた反応生成物をろ過し、水洗した後、脱水結晶質NH4Zr2(PO4)3を得た。得られたNH4Zr2(PO4)3を650℃で3時間熱処理して、HZr2(PO4)3を得た。さらに、得られたHZr2(PO4)3を水中に3日間放置することにより、H3OZr2(PO4)3を得た。これらの生成物は、X線回折、熱天秤−示差熱分析及び化学分析の結果から、各組成式で表される結晶質リン酸ジルコニウムであることが確認された。
このようにして得られた各固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/3になるように3価の各金属元素イオンCr3+、Fe3+、Ni 3+、Bi3+、In3+、La3+、Gd3+、Y3+又はYb3+を含む水溶液50mlとをそれぞれオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度250℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水で洗浄し、さらに100℃にて乾燥し、固定対象金属(M3+)の固定化体を得た。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度をそれぞれ第2表〜第10表([表4]〜[表12]に対応)に示し、それらに対応する各X線回折図を第2図〜第10図にそれぞれ示す。
塩化アンモニウム44.6g、シュウ酸2水和物116.4g、ZrO2換算で55.8gに相当するオキシ塩化ジルコニウム、リン酸−ナトリウム2水和物58.0gを順次水に加えて混合溶液3000gを調製した。この混合溶液をアンモニア水でpH3.8に調節した後、90℃の恒温室中に3日間保持した。得られた反応生成物をろ過し、水洗した後、脱水結晶質NH4Zr2(PO4)3を得た。得られたNH4Zr2(PO4)3を650℃で3時間熱処理して、HZr2(PO4)3を得た。さらに、得られたHZr2(PO4)3を水中に3日間放置することにより、H3OZr2(PO4)3を得た。これらの生成物は、X線回折、熱天秤−示差熱分析及び化学分析の結果から、各組成式で表される結晶質リン酸ジルコニウムであることが確認された。
このようにして得られた各固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/3になるように3価の各金属元素イオンCr3+、Fe3+、Ni 3+、Bi3+、In3+、La3+、Gd3+、Y3+又はYb3+を含む水溶液50mlとをそれぞれオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度250℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水で洗浄し、さらに100℃にて乾燥し、固定対象金属(M3+)の固定化体を得た。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度をそれぞれ第2表〜第10表([表4]〜[表12]に対応)に示し、それらに対応する各X線回折図を第2図〜第10図にそれぞれ示す。
固定対象金属の固定化量は、原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により決定した。固定化量(M3+/HZr2(PO4)3)は、Cr=0.23、Fe=0.31、Ni=0.20、Bi=0.33、In=0.25、La=0.25、Gd=0.30、Y=0.30、Yb=0.33であった。
また、固定化剤としてNH4Zr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3を用いた場合も、同様の結果が得られた。
試験例1
(1)実施例1で得られた金属元素固定化体について、以下の方法での浸出特性試験を行なった。
(1)実施例1で得られた金属元素固定化体について、以下の方法での浸出特性試験を行なった。
(a)大気圧下における純水中での固定対象金属元素イオン(M3+)の浸出試験
試料(金属元素固定化体)5.0gを100mlのイオン交換水中に浸漬し、マグネット式ホッティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰り返し行ったときの金属イオン(M3+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属元素イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
試料(金属元素固定化体)5.0gを100mlのイオン交換水中に浸漬し、マグネット式ホッティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰り返し行ったときの金属イオン(M3+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属元素イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
(b)高温・高圧下における純水中での固定対象金属元素イオン(M3+)の浸出試験
試料5.0gを100mlのイオン交換水と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属元素イオン(M3+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
試料5.0gを100mlのイオン交換水と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属元素イオン(M3+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
(c)高温・高圧下における1N−HCl水溶液中でのでの固定対象金属イオン(M3+)の浸出試験
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(M3+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。9種類の各固定化体からの金属イオンの浸出量はCr=3.6×10-3g/m2/day、Fe=8.2×10-3g/m2/day、Ni=1.3×10-3g/m2/day、Bi=1.5×10-3g/m2/day、In=8.2×10-3g/m2/day、La=2.9×10-3g/m2/day、Gd=4.7×10-3g/m2/day、Y=3.3×10-3g/m2/day、Yb=6.9×10-3g/m2/dayであった。固定対象金属イオンの浸出試験の結果、金属イオン(M3+)の浸出は、いずれも非常に少ないものであった。
従って、上記(a)及び(b)の結果も含めて、3価の各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて、燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Cr=450℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(M3+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。9種類の各固定化体からの金属イオンの浸出量はCr=3.6×10-3g/m2/day、Fe=8.2×10-3g/m2/day、Ni=1.3×10-3g/m2/day、Bi=1.5×10-3g/m2/day、In=8.2×10-3g/m2/day、La=2.9×10-3g/m2/day、Gd=4.7×10-3g/m2/day、Y=3.3×10-3g/m2/day、Yb=6.9×10-3g/m2/dayであった。固定対象金属イオンの浸出試験の結果、金属イオン(M3+)の浸出は、いずれも非常に少ないものであった。
従って、上記(a)及び(b)の結果も含めて、3価の各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて、燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Cr=450℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
実施例2
実施例1で得られた固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/4になるように4価の各金属元素イオンTi 4+、Zr4+、Sn4+又はCe4+を含む水溶液50mlとをそれぞれオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度250℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水洗浄し、さらに100℃にて乾燥して、固定対象金属(M3+)の固定化体を得た。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度をそれぞれ第11表〜第14表([表13]〜[表16]に対応)に示し、それらに対応する各X線回折図を第11図〜第14図にそれぞれ示す。
実施例1で得られた固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/4になるように4価の各金属元素イオンTi 4+、Zr4+、Sn4+又はCe4+を含む水溶液50mlとをそれぞれオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度250℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水洗浄し、さらに100℃にて乾燥して、固定対象金属(M3+)の固定化体を得た。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度をそれぞれ第11表〜第14表([表13]〜[表16]に対応)に示し、それらに対応する各X線回折図を第11図〜第14図にそれぞれ示す。
固定対象金属の固定化量は、原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により決定した。固定化量(M4+/HZr2(PO4)3)は、Ti=0.24、Zr=0.25、Sn=0.25、Ce=0.25となった。
また、固定化剤にNH4Zr2(PO4)3、又は、H3OZr2(PO4)3を用いた場合も、同様な結果が得られた。
試験例2
(1)実施例2で得た金属元素固定化体について、以下の方法での浸出特性試験を行なった。
(1)実施例2で得た金属元素固定化体について、以下の方法での浸出特性試験を行なった。
(a)大気圧下における純水中での固定対象金属元素イオン(M4+)の浸出試験
試料(金属元素固定化体)5.0gを100mlのイオン交換水中に浸漬し、マグネット式ホツティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰り返し行なつたときの金属イオン(M4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
試料(金属元素固定化体)5.0gを100mlのイオン交換水中に浸漬し、マグネット式ホツティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰り返し行なつたときの金属イオン(M4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
(b)高温・高圧下における純水中での固定対象金属元素イオン(M4+)の浸出試験
試料5.0g及びイオン交換水(100ml)と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(M4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
試料5.0g及びイオン交換水(100ml)と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(M4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
(c)高温・高圧下における1N−HCl水溶液中でのでの固定対象金属元素イオン(M4+)の浸出試験
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(M4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。4種類の各固定化体からの金属イオンの浸出量は、Ti=4.3×10-3g/m2/day、Zr=4.1×10-3g/m2/day、Sn=9.5×10-3g/m2/day、Ce=7.7×10-3g/m2/dayであった。固定対象金属のイオンの浸出試験の結果、いずれも金属イオン(M4+)の浸出は非常に少ないものであった。
従って、上記(a)及び(b)の結果も含めて、4価の各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の金属元素固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。 前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Ti=450℃、Sn=480℃、Ce=510℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
(3)前記Ti金属元素固定化体について、以下の方法での光焼触媒特性試験を行なった。 ビーカー中でメチルオレンジ0.5gを水500mlに溶かした。この溶液に試料粉末5gを入れ、600Wの水銀ランプを当て、メチルオレンジが脱色するまでの時間を測定した。市販のアナターゼ型酸化チタン粉末(比表面積50m2/g)及びTi金属元素固定化体ともに3時間かかった。
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)と共にオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(M4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。4種類の各固定化体からの金属イオンの浸出量は、Ti=4.3×10-3g/m2/day、Zr=4.1×10-3g/m2/day、Sn=9.5×10-3g/m2/day、Ce=7.7×10-3g/m2/dayであった。固定対象金属のイオンの浸出試験の結果、いずれも金属イオン(M4+)の浸出は非常に少ないものであった。
従って、上記(a)及び(b)の結果も含めて、4価の各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の金属元素固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。 前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Ti=450℃、Sn=480℃、Ce=510℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
(3)前記Ti金属元素固定化体について、以下の方法での光焼触媒特性試験を行なった。 ビーカー中でメチルオレンジ0.5gを水500mlに溶かした。この溶液に試料粉末5gを入れ、600Wの水銀ランプを当て、メチルオレンジが脱色するまでの時間を測定した。市販のアナターゼ型酸化チタン粉末(比表面積50m2/g)及びTi金属元素固定化体ともに3時間かかった。
実施例3
実施例1で得られた固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/5又は1/6になるように5価の金属元素イオンAs5+又は6価の金属元素イオンMo6+をそれぞれ含む水溶液50mlとをオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度250℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水洗浄し、さらに100℃にて乾燥して、固定対象金属(As5+、Mo6+)の固定化体をそれぞれ得た。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度をそれぞれ第15表〜第16表([表17]〜[表18]に対応)に示し、それらに対応する各X線回折図を第15図〜第16図にそれぞれ示す。
実施例1で得られた固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/5又は1/6になるように5価の金属元素イオンAs5+又は6価の金属元素イオンMo6+をそれぞれ含む水溶液50mlとをオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度250℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水洗浄し、さらに100℃にて乾燥して、固定対象金属(As5+、Mo6+)の固定化体をそれぞれ得た。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度をそれぞれ第15表〜第16表([表17]〜[表18]に対応)に示し、それらに対応する各X線回折図を第15図〜第16図にそれぞれ示す。
固定対象金属の固定化量は、原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により決定した。固定化量(As5+、又は、Mo6+/HZr2(PO4)3)は、As=0.035、Mo=0.075であった。
また、固定化剤としてNH4Zr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3を用いた場合も、同様な結果が得られた。
試験例3
(1)実施例3で得られた金属元素固定化体について以下の方法での浸出特性試験を行なった。
(1)実施例3で得られた金属元素固定化体について以下の方法での浸出特性試験を行なった。
(a)大気圧下における純水中での固定対象金属元素イオン(As5+、Mo6+)の特性浸出試験
試料(金属元素固定化体)5.0gを100mlのイオン交換水中に浸漬し、マグネット式ホツティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰返し行なつたときの金属イオン(As5+、Mo6+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。2種類の固定化体からの金属イオンの浸出量はAs=1.1×10-3g/m2/day、Mo=1.9×10-3g/m2/dayとなった。
試料(金属元素固定化体)5.0gを100mlのイオン交換水中に浸漬し、マグネット式ホツティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰返し行なつたときの金属イオン(As5+、Mo6+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。2種類の固定化体からの金属イオンの浸出量はAs=1.1×10-3g/m2/day、Mo=1.9×10-3g/m2/dayとなった。
(b)高温・高圧下における純水中での固定対象金属イオン(As5+、Mo6+)の浸出試験
試料5.0g及びイオン交換水(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(As5+、Mo6+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
試料5.0g及びイオン交換水(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの金属イオン(As5+、Mo6+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
(c)高温・高圧下における1N−HCl水溶液中でのでの固定対象金属イオン(As5+、Mo6+)の浸出試験
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの固定対象金属元素イオン(As5+、Mo6+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの固定対象金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
これら(a)及び(b)の結果も含めて、5価又は6価の各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の金属元素固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。 前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で、示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて、燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Mo=450℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの固定対象金属元素イオン(As5+、Mo6+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの固定対象金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
これら(a)及び(b)の結果も含めて、5価又は6価の各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の金属元素固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。 前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で、示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて、燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Mo=450℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
実施例4
実施例1で得た固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対して金属元素のモル比で1/3又は1/4になるように3価の金属元素イオンCr3+、Bi3+若しくはY3+の硝酸塩又は4価の金属元素イオンSn4+の硝酸塩をそれぞれよく分散混合した後、蒸発皿で蒸発乾固した。この乾燥を磁製ルツボに入れ、700℃に調整した電気炉中で5時間熱処理して固体粉末を得た。固体粉末を取り出して十分に水洗浄し、さらに100℃にて乾燥し、固定対象金属(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の固定化体をそれぞれ得た。
得られた固定化体は、熱処理前の粉末状態と外観の変化はなく、またルツボ容器も変化が認められなかつた。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度を第17表〜第20表([表19]〜[表22]に対応)にそれぞれ示し、それらに対応する各X線回折図を第17図〜第20図にそれぞれ示す。
実施例1で得た固定化剤(NH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対して金属元素のモル比で1/3又は1/4になるように3価の金属元素イオンCr3+、Bi3+若しくはY3+の硝酸塩又は4価の金属元素イオンSn4+の硝酸塩をそれぞれよく分散混合した後、蒸発皿で蒸発乾固した。この乾燥を磁製ルツボに入れ、700℃に調整した電気炉中で5時間熱処理して固体粉末を得た。固体粉末を取り出して十分に水洗浄し、さらに100℃にて乾燥し、固定対象金属(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の固定化体をそれぞれ得た。
得られた固定化体は、熱処理前の粉末状態と外観の変化はなく、またルツボ容器も変化が認められなかつた。固定化剤としてHZr2(PO4)3を用いた場合の生成物のX線回折法によるピーク位置及び強度を第17表〜第20表([表19]〜[表22]に対応)にそれぞれ示し、それらに対応する各X線回折図を第17図〜第20図にそれぞれ示す。
固定対象金属の固定化量は、原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により決定した。固定化量(Cr3+、Bi3+、Y3+又はSn4+/HZr2(PO4)3)は、Cr=0.33、Bi=0.33、Y=0.33、Sn=0.25であった。
また、固定化剤としてNH4Zr2(PO4)3又はH3OZr2(PO4)3を用いた場合も、同様な結果が得られた。
試験例4
(1)実施例4で得た金属元素固定化体について、以下の方法で浸出特性試験を行なった。
(1)実施例4で得た金属元素固定化体について、以下の方法で浸出特性試験を行なった。
(a)大気圧下における純水中での固定対象金属元素イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の特性浸出試験
試料(金属元素固定化体)5.0gをイオン交換水(100ml)中に浸漬し、マグネット式ホツティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰り返し行なつたときの金属イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
試料(金属元素固定化体)5.0gをイオン交換水(100ml)中に浸漬し、マグネット式ホツティングスターラーを用いて還流しながら加熱攪拌を7時間行ない、次いで加熱をやめて17時間静置し、これを7回繰り返し行なつたときの金属イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの金属イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
(b)高温・高圧下における純水中での固定対象金属元素イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出試験
試料5.0g及びイオン交換水(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの固定対象金属元素イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの固定対象金属元素イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
試料5.0g及びイオン交換水(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの固定対象金属元素イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。固定化体からの固定対象金属元素イオンの浸出量は、いずれも検出限界以下であった。
(c)高温・高圧下における1N−HCl水溶液中での固定対象金属元素イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出試験
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの固定対象金属元素イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。各固定化体からの金属イオンの浸出量は、Cr=1.2×10-5g/m2/day、Bi=2.2×10-4g/m2/day、Y=3.1×10-5g/m2/day、Sn=1.1×10-4g/m2/dayであった。固定対象金属元素イオンの浸出試験の結果、金属イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出は、いずれも極めて少ないものであった。
従って、上記(a)及び(b)の結果も含めて、各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の金属元素固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。 前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で、示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて、燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Cr=440℃、Sn=470℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
試料5.0g及び1N−HCl水溶液(100ml)をオートクレーブに入れ、160℃の条件下で24時間放置したときの固定対象金属元素イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出量を原子吸収光度法、ICP法及び蛍光X線分析法により測定した。各固定化体からの金属イオンの浸出量は、Cr=1.2×10-5g/m2/day、Bi=2.2×10-4g/m2/day、Y=3.1×10-5g/m2/day、Sn=1.1×10-4g/m2/dayであった。固定対象金属元素イオンの浸出試験の結果、金属イオン(Cr3+、Bi3+、Y3+、Sn4+)の浸出は、いずれも極めて少ないものであった。
従って、上記(a)及び(b)の結果も含めて、各種金属元素を固定化した結晶質リン酸ジルコニウムは、耐水性、耐薬品性に優れていることがわかる。
(2)前記の金属元素固定化体について、以下の方法での燃焼触媒特性試験を行なった。 前記固定化体に10重量%の活性炭を混合した各試料10mgを昇温速度10℃/minにて静止大気中で、示差走査熱分析装置(リガク、TG8110)を用いて、燃焼触媒特性を測定した。活性炭単体での燃焼に伴う発熱ピークが550℃であるのに対し、Cr=440℃、Sn=470℃であり、燃焼温度の顕著な低下が認められた。
試験例5
第21図([図21])に固定化剤(HZr2(PO4)3)の窒素ガスの吸着等温線を示すが、吸着点として数〜十数nm以下の細孔などが多く存在することがわかる。実施例1で得た固定化剤(HZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/3〜1/1.8になるようにY3+金属元素イオンを含むY(NO3)3水溶液50mlとをオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度150〜400℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水で洗浄し、さらに700℃にて熱処理し、Y固定化体(1)を得た。
また、実施例1で得た固定化剤(HZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/3〜1/1.8になるようにY3+金属元素イオンを含むY(NO3)3水溶液50mlとを混合した後、700℃にて熱処理して得た固体粉末を取り出して十分に水で洗浄し、さらに700℃にて熱処理し、Y固定化体(2)を得た。
Y固定化体(1)及び(2)ともに、そのX線回折法によるピーク位置及び強度から、結晶質リン酸ジルコニウムNH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3及びH3OZr2(PO4)3と同じNASICON型構造を維持していることが判明した。
Y固定化体(1)におけるY固定量を蛍光X線分析法により測定した。固定化量(Y3+/HZr2(PO4)3)とY固定化体0.2gを純水50ml中に放置した場合の溶液のpH値との関係を第22図に示す。第22図([図22])に示すように、固定化剤(HZr2(PO4)3)のみでは固定化剤中に含まれるH+の影響で溶液中のpHは酸性を示すが、そのH+が徐々にY3+に置換されることによりpHは中性に近づく。一方、H+がすべてY3+に置換されたY固定化量が0.33以上の0.5のY固定化体も先に述べたように、そのX線回折からNASICON型構造を維持している。この場合のYの固定化場所は、固定化剤(HZr2(PO4)3)のH+サイトだけなく、結晶質リン酸ジルコニウムの表面及び細孔の吸着サイトも含まれる。Y固定化量が0.5の場合は、溶液中のpHはアルカリ性を示し、結晶質リン酸ジルコニウムの表面および細孔の吸着サイトのY2O3が影響を考えられる。
さらに、オートクレーブ処理のみなされたY固定化体(1)のY固定化量が0.5のY固定化体の赤外吸収スペクトルを第23図([図23])に示す。第23図によれば、そのスペクトル中にはNO3基(1378cm-1)が観測され、H+サイトを置換したY3+以外のYからなるY(NO3)3がY固定化体中に存在していることがわかる。
また、Ti4+、As5+、Mo6+等の4〜6価の金属元素でも同様な結果が得られた。価数が大きくなるにつれて、その中で、固定化剤(HZr2(PO4)3)のH+サイトをすべて置換する前から、結晶質リン酸ジルコニウムの表面及び細孔の吸着サイトへの固定対象金属の化合物の固定化が顕著となることが確認された。
上記のような場合の金属元素固定化体(上記Y固定化体(1))の高温・高圧下(160℃のオートクレーブ)における1N−HCl水溶液中での固定対象金属元素イオン浸出特性試験も行った。その結果、金属元素イオンの浸出は1×10-1g/m2/day以下であった。
このことから、本発明の金属元素固定化方法では、固定化剤(HZr2(PO4)3)のH+サイト置換による金属元素の安定な固定化のほかに、結晶質リン酸ジルコニウムの表面又は細孔の吸着サイトへの金属元素化合物の安定な固定化も起こっていることがわかる。
第21図([図21])に固定化剤(HZr2(PO4)3)の窒素ガスの吸着等温線を示すが、吸着点として数〜十数nm以下の細孔などが多く存在することがわかる。実施例1で得た固定化剤(HZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/3〜1/1.8になるようにY3+金属元素イオンを含むY(NO3)3水溶液50mlとをオートクレーブに入れた。オートクレーブを処理温度150〜400℃の条件下で24時間放置した後、固体粉末を取り出して十分に水で洗浄し、さらに700℃にて熱処理し、Y固定化体(1)を得た。
また、実施例1で得た固定化剤(HZr2(PO4)3)5gと、固定化剤に対してモル比で1/3〜1/1.8になるようにY3+金属元素イオンを含むY(NO3)3水溶液50mlとを混合した後、700℃にて熱処理して得た固体粉末を取り出して十分に水で洗浄し、さらに700℃にて熱処理し、Y固定化体(2)を得た。
Y固定化体(1)及び(2)ともに、そのX線回折法によるピーク位置及び強度から、結晶質リン酸ジルコニウムNH4Zr2(PO4)3、HZr2(PO4)3及びH3OZr2(PO4)3と同じNASICON型構造を維持していることが判明した。
Y固定化体(1)におけるY固定量を蛍光X線分析法により測定した。固定化量(Y3+/HZr2(PO4)3)とY固定化体0.2gを純水50ml中に放置した場合の溶液のpH値との関係を第22図に示す。第22図([図22])に示すように、固定化剤(HZr2(PO4)3)のみでは固定化剤中に含まれるH+の影響で溶液中のpHは酸性を示すが、そのH+が徐々にY3+に置換されることによりpHは中性に近づく。一方、H+がすべてY3+に置換されたY固定化量が0.33以上の0.5のY固定化体も先に述べたように、そのX線回折からNASICON型構造を維持している。この場合のYの固定化場所は、固定化剤(HZr2(PO4)3)のH+サイトだけなく、結晶質リン酸ジルコニウムの表面及び細孔の吸着サイトも含まれる。Y固定化量が0.5の場合は、溶液中のpHはアルカリ性を示し、結晶質リン酸ジルコニウムの表面および細孔の吸着サイトのY2O3が影響を考えられる。
さらに、オートクレーブ処理のみなされたY固定化体(1)のY固定化量が0.5のY固定化体の赤外吸収スペクトルを第23図([図23])に示す。第23図によれば、そのスペクトル中にはNO3基(1378cm-1)が観測され、H+サイトを置換したY3+以外のYからなるY(NO3)3がY固定化体中に存在していることがわかる。
また、Ti4+、As5+、Mo6+等の4〜6価の金属元素でも同様な結果が得られた。価数が大きくなるにつれて、その中で、固定化剤(HZr2(PO4)3)のH+サイトをすべて置換する前から、結晶質リン酸ジルコニウムの表面及び細孔の吸着サイトへの固定対象金属の化合物の固定化が顕著となることが確認された。
上記のような場合の金属元素固定化体(上記Y固定化体(1))の高温・高圧下(160℃のオートクレーブ)における1N−HCl水溶液中での固定対象金属元素イオン浸出特性試験も行った。その結果、金属元素イオンの浸出は1×10-1g/m2/day以下であった。
このことから、本発明の金属元素固定化方法では、固定化剤(HZr2(PO4)3)のH+サイト置換による金属元素の安定な固定化のほかに、結晶質リン酸ジルコニウムの表面又は細孔の吸着サイトへの金属元素化合物の安定な固定化も起こっていることがわかる。
Claims (7)
- 結晶質リン酸ジルコニウムの表面及び/又は細孔に当該金属元素が化合物の形態で吸着されている請求項1記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
- (a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムと、(b)3価以上の金属元素イオンの少なくとも1種を含む溶液とを含有する混合物を100℃以上で熱処理することよって得られる、請求項1記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
- 熱処理を0.1〜40MPaの圧力下で行う請求項3記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
- 熱処理をオートクレーブ中で行う請求項4又は5に記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
- (a)一般式RZr2(PO4)3(但し、RはH、H3O又はNH4カチオンを示す。)で示される結晶質リン酸ジルコニウムと、(b)3価以上の金属元素の金属元素を含む化合物の少なくとも1種とを含有する混合物を400℃以上で熱処理することよって得られる、請求項1又は2に記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
- 3価以上の金属元素を含む化合物が硝酸塩である請求項6記載の結晶質リン酸ジルコニウム。
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JP2004061187A JP2004284945A (ja) | 2003-03-05 | 2004-03-04 | 結晶質リン酸ジルコニウム |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011168491A (ja) * | 2011-05-13 | 2011-09-01 | Toagosei Co Ltd | 低熱膨張性フィラー及びその製造方法 |
JP7011750B1 (ja) * | 2021-10-14 | 2022-02-10 | 第一稀元素化学工業株式会社 | リン酸ジルコニウム |
CN115849325A (zh) * | 2022-11-29 | 2023-03-28 | 福建瑞森新材料股份有限公司 | 一种立方体磷酸锆钠载体及其载银锌抗菌粉体的制备方法 |
-
2004
- 2004-03-04 JP JP2004061187A patent/JP2004284945A/ja active Pending
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