JP2004284205A - 液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高湿下で強電界を印加した場合であっても、電気化学的反応を抑制することで圧電特性を維持し、高い信頼性を有する液滴吐出ヘッドと、このような液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を得る。
【解決手段】圧電素子144は、圧電体156と、この圧電体156の厚み方向の両端面に設けられた電極層158、160と、で構成され、それぞれの電極層158、160は、圧電体156側から順に、絶縁性酸化錫膜162及び金属膜164、166を有している。幅広いpH範囲で電気化学的に安定であり、且つ導電キャリアが少ない絶縁性酸化錫膜162を備えているので、高温高湿下であっても、強電界が印加されたときの電気化学的反応を抑制でき、圧電素子144の圧電特性の劣化を防止できる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置に関し、さらに詳しくは、液滴を吐出して記録媒体上に文字や画像などを記録したり、基板上に微細パターンや薄膜の形成等を行うための液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧力発生室内に充填された液体に対し、圧電アクチュエータ等の圧力発生手段を用いて圧力波(音響波)を発生させ、その圧力波によって圧力発生室(あるいは圧力室)に連結されたノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドは一般によく知られている。一般に圧電アクチュエータは、画像情報に応じて変形する圧電素子(ピエゾ素子)と、この圧電素子の変形によって振動して、圧力発生室を膨張又は圧縮させる振動板とで構成されている。
【0003】
圧電素子は、圧電体と、その電極材の構成の1例として、圧電体の表裏面に形成された上面電極(クロム/ニッケル/金)及び下面電極(クロム/金)とで構成されているものが挙げられる。このような構造の圧電素子を、常温常湿や高温高湿環境下で電圧印加、連続駆動を行うと上面電極が褐色に変色、電極が剥離して、圧電特性が劣化するという不具合が発生する場合があった。この不具合について調査した結果、
(1)特に高湿環境で不具合が多発する傾向である
(2)褐色変色部は、クロム、ニッケル各々の酸化物である
(3)圧電体と電極層の断面露出部に水分が付着した際に同不具合が発生する
ことがわかり、水分の存在と電界印加による電気化学的反応の進行に起因する不具合現象であることが判明した。即ち、水分存在下で高電界駆動中の圧電体近傍において局部電池が形成され、水分の局部的電気分解によるpH変化が発生、pH値により溶出しやすい材料、標準電極電位の低い材料(上記した材料ではクロム)が優先的に溶出し、電極変色、圧電特性劣化の形で不具合が発生すると考えられる。これら現象抑制を抑制するために、たとえば、幅広いpH範囲で電気化学的に安定な金属の酸化膜、具体的には酸化錫を電極材として使用することが考えられる。例えば、特許文献1には、圧電体91の両面に、導電性酸化物層93と金属層92との積層膜からなる電極が形成された圧電素子9bが記載されている。この構成では、圧電体91で生成される鉛を含む負イオンが電極を通過して電極表面まで移動することを阻止し、電極表面の変色・汚染や電極の浮き上がりが発生しなくなっている。そして、圧電体91を薄板化し、高温高湿の環境下で高電界強度で使用しても、十分な信頼性と耐久性を有するとされている。
【0004】
しかし、この圧電素子9bでは、導電性酸化物層93の導電性によって、特に高湿下や結露下においては十分な耐久性が無くなっている。すなわち、水分の存在下(たとえば、空気中には必ず水分が存在している)で高電界を印加すると、局部的に水の電解が発生して局部pHが変化する為、導電性を保有するが故に導電キャリアを多数有する、より金属ライクな振る舞いをする導電性酸化膜も上記のような電気化学的反応の進行により圧電特性を劣化させてしまう場合があった。
【特許文献1】
特開2001−88296号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであり、高温高湿下で強電界を印加した場合であっても、電気化学的反応を抑制することで圧電特性を維持し、高い信頼性を有する液滴吐出ヘッドと、このような液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、液体が充填される圧力発生室と、前記圧力発生室と連通し、液滴を吐出可能なノズルと、前記圧力発生室のそれぞれに対応して設けられ画像情報に応じて印加された電圧によって変形する圧電素子と、前記圧力発生室の壁面の少なくとも一部を構成し前記圧電素子の変形によって振動して圧力発生室を膨張又は圧縮させる振動板と、を備えたアクチュエータと、を有する液滴吐出ヘッドであって、前記圧電素子が、圧電体と、前記圧電体の厚み方向両端面に設けられた金属膜と、前記金属膜の少なくとも一方と前記圧電体との間に設けられた絶縁性酸化錫膜と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この液滴吐出ヘッドでは、画像情報に応じて電圧が印加されると、圧電素子が変形し、振動板が振動して圧力発生室を膨張又は圧縮することで、圧力室内の液体に圧力波(音響波)を発生させ、ノズルから液滴を吐出する。特に、圧電素子は、圧力発生室のそれぞれに対応して設けられており、圧力発生室ごとに圧電素子が独立して個別化されていることになるので、各々の圧電素子が近傍の圧電素子の影響を受けることなく、それぞれの圧電特性を発揮できる。
【0008】
圧電素子には、金属膜の少なくとも一方と圧電体との間に、絶縁性酸化錫膜が設けられている。絶縁性酸化錫は、幅広いpH範囲で電気化学的に安定な性質を持ち、且つ、導電キャリアも少ないため、従来と比較して、強電界印加時の電気化学的反応が抑制され、圧電素子の圧電特性が劣化しない。特に、高温高湿下で強電界を印加した場合であっても、電気化学的反応を抑制することで圧電特性を維持することができ、高い信頼性を有する液滴吐出ヘッドとなる。
【0009】
本発明に係る絶縁性酸化錫膜は、金属膜の少なくとも一方と圧電体との間に設けられていればその効果を発揮するが、特に、請求項2に記載のように、金属膜のうち正電位が印加される金属膜と圧電体との間に設けられていると、強電界印加時の電気化学的反応を、より効果的に抑制できる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記圧電素子を構成する前記圧電体、前記金属膜及び前記絶縁性酸化錫膜の断面が露出していることを特徴とする。
【0011】
このように、圧電体、金属膜及び絶縁性酸化錫膜の断面が露出している構成であっても、強電界印加時の断面近傍での電気化学的反応を抑制できる。断面を被覆する必要がないので、圧電素子を低コストで構成できる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを有しているので、強電界印加時(特に、高温高湿下)の電気化学的反応が抑制され、圧電素子の圧電特性を維持することができ、高い信頼性を有する液滴吐出装置となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
図1及び図2には、本発明の第1実施形態の液滴吐出ヘッド112の液滴吐出部が部分的に示されている。また、図2には、この液滴吐出ヘッド112を備えた液滴吐出装置102が示されている。本実施形態の液滴吐出ヘッド112はいわゆるインクジェット記録ヘッドとされており、この液滴吐出ヘッド112を備えた液滴吐出装置102は、インクジェット記録装置とされている。液滴吐出装置102は、記録媒体である記録用紙P上に、液滴吐出ヘッド112のノズル140から着色インクの液滴(インク滴)を吐出し、この液滴によるドットで画像を記録するために使用される。
【0016】
図3に示すように、液滴吐出装置102は、液滴吐出ヘッド112が搭載されるキャリッジ104と、キャリッジ104を記録用紙Pの記録面に沿った所定の主走査方向方向に移動(主走査)させる主走査機構106、および、記録用紙Pを主走査方向と交差(好ましくは直交)する所定の副走査方向に搬送(副走査)させるための副走査機構108を含んで構成されている。なお、図面において主走査方向を矢印Mで、副走査方向を矢印Sでそれぞれ示す。
【0017】
液滴吐出ヘッド112は、後述するノズル140が形成されたノズル面114S(図2参照)が記録用紙Pと対向するようにキャリッジ104上に搭載されており、主走査機構106によって主走査方向に移動されながら記録用紙Pに対して液滴を吐出することにより、一定のバンド領域BEに対して画像の記録を行う。主走査方向への1回の移動が終了すると、副走査機構108によって記録用紙Pが副走査方向に搬送され、再びキャリッジ104を主走査方向に移動させながら次のバンド領域を記録する。こうした動作を複数回繰り返すことにより、記録用紙Pの全面にわたって画像記録を行うことができる。
【0018】
図1及び図2から分かるように、液滴吐出ヘッド112は、積層流路板114を有している。積層流路板114は、ノズルプレート116、流路プレート118、供給路プレート120、圧力発生室プレート122、および振動板124の合計5枚のプレートを位置合わせして積層し、接着剤等の接合手段によって接合することにより形成されている。圧力発生室プレート122、供給路プレート120および流路プレート118には、副走査方向に沿って長孔126、128、130が形成されており、流路プレート118、供給路プレート120および圧力発生室プレート122が積層された状態で、長孔126、128、130によって、共通流路が構成される。
【0019】
振動板124には、共通流路の端部に対応する位置に、インク供給孔134が形成されている。インク供給孔134には、図示しないインク供給装置が接続される。
【0020】
流路プレート118には、長孔130から連続して、且つ主走査方向に沿って複数(図1では12本のみ示す)の流路136が形成されており、供給路プレート120、流路プレート118およびノズルプレート116が積層された状態で、流路136内を液体が流れるようになる。
【0021】
圧力発生室プレート122には、流路136のそれぞれに対応して複数の圧力発生室142を構成する開口が形成されており、この開口と、圧力発生室142及び供給路プレート120とで、圧力発生室142が構成されている。さらに、それぞれの圧力発生室142に対応して、振動板124には圧電素子144が取り付けられており、振動板124と圧電素子144とで、圧力発生室142にそれぞれに対応した単板型のピエゾアクチュエータ154(圧電アクチュエータ)が複数構成されている。
【0022】
また、供給路プレート120には、図1から分かるように、圧力発生室142のそれぞれに1つずつ、インク供給路146およびインク排出路148が形成されている。さらに、流路プレート118およびノズルプレート116には、それぞれインク排出路148に対応する位置に、連通路150およびインク吐出口152が形成されている。インク排出路148、連通路150およびインク吐出口152によって、ノズル140が構成されている。さらに、圧力発生室142、ノズル140およびピエゾアクチュエータ154によって、イジェクタが構成されている。
【0023】
したがって、図2の断面図からも分かるように、流路136から圧力発生室142、インク排出路148、連通路150およびインク吐出口152へと連続するインクの通路が構成されていることになる。図示しないインク供給装置から送られてきたインクは、インク供給孔134を介して液滴吐出ヘッド112に供給され、共通流路内からそれぞれの流路136を経て、圧力発生室142内に充填されている。
【0024】
図2に示すように、圧電素子144は、圧電体156と、この圧電体156の厚み方向の両端面に設けられた電極層158、160と、で構成されている。それぞれの電極層158、160は、圧電体156側から順に、絶縁性酸化錫膜162及び金属膜164、166を有している。この圧電素子144に、画像情報に応じた駆動電圧波形を印加すると、圧電素子144が変形して振動板124が振動し、圧力発生室142を膨張または圧縮させる。これによって圧力発生室142に体積変化が生じると、圧力発生室142内に圧力波が発生する。この圧力波の作用によってノズル140(インク排出路148、連通路150およびインク吐出口152)のインクが運動し、インク吐出口152から外部へ排出されることにより液滴が形成される。特に、本実施形態では、図1及び図2から分かるように、圧電素子144が、圧力発生室142のそれぞれに対応して一対一で設けられており、圧力発生室142ごとに圧電素子144が独立して個別化されている。このため、各々の圧電素子144が、隣接する圧電素子144の影響を受けることなく、それぞれの圧電特性を発揮できるようになっている。
【0025】
ここで、本実施形態の圧電素子144では、電極層158、160のうち、圧電体156に対向する面に絶縁性酸化錫膜162が設けられている。一般に絶縁性酸化錫は、幅広いpH範囲で電気化学的に安定であり、且つ導電キャリアが少ない。このため、従来のように、絶縁性酸化錫膜を有さない構成のものと比較して、例えば高温高湿下であっても、強電界が印加されたときの電気化学的反応を抑制でき、圧電素子144の圧電特性の劣化を防止できる。さらに、液滴吐出ヘッドとしても、高い信頼性を有する。
【0026】
特に、本実施形態のように、圧電体156及び電極層158、160の断面が露出した構造では、この断面露出部の近傍において、水の電解や局所的なpH変化等が発生しやすい。このため、従来のように、電気化学的に不安定なクロムや導電性酸化膜が設けられた構成では、これら金属膜や導電性酸化膜の一部が溶出し、電極層の変色や圧電特性の劣化が生じるおそれがある。これに対し、本実施形態では、圧電体156及び電極層158、160の断面が露出していても、電極層の変色や圧電特性の劣化を抑制することが可能であり、前述のような不都合を防止するために、圧電体156及び電極層158、160の断面を被覆する必要もないので、圧電素子144を低コストで構成できる。
【0027】
なお、絶縁性酸化錫膜162は、圧電体156の厚み方向端面の少なくとも一方の面に設けられていてもよいが、本実施形態のように両面に設けられていることが好ましい。いずれか一方にのみ設ける場合には、上記した水の分解や局所的なpH変化が特に正電位印加側に発生しやすいことを考慮し、正電位印加側に設けることが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態の圧電素子144及び液滴吐出ヘッド112の製造方法について説明する。
【0029】
(1)まず、必要な厚さに加工した圧電体156の厚み方向端面(好ましくは、少なくとも正電位印加側の端面)に酸化錫の膜を形成し、更にその上部に金属(クロム/ニッケル/金、又はニッケル/金)を連続積層し、成膜する。酸化錫膜の形成は酸素を流入させながら行う反応性スパッタリング法、又は、酸化錫ターゲットを使用したスパッタリング法を用いることができる。ここで、たとえば反応性スパッタリングを用いた場合には、酸素流量を増大させて、絶縁性にする。具体的には、例えばAr:20cm/min O2:5cm/minの条件で行うことができる。勿論、酸素流量を更に増大させて成膜しても良い。
【0030】
(2)次に、圧電体との電気接点を取る為の金属膜を、金属膜と同一材料ターゲットを使用し、スパッタリングにより連続成膜する。
【0031】
(3)このようにして構成された圧電体、酸化錫及び金属膜の積層体を、各圧力発生室142に対応した形状で、且つ圧電体、酸化錫及び金属膜の断面が露出する構造となるようにブラスト法やダイシング法等により個別化し、圧電素子144を形成する。
【0032】
(4)上記圧電素子144を、あらかじめ複数のプレートが積層された積層流路板114の振動板124に接着等の手段により接合し、圧電素子144と振動板124とでピエゾアクチュエータ154を構成する。
【0033】
(5)圧電素子144の上部の電極層158に半田接合等の電気接点を介してフレキシブルケーブルを接続する。
【0034】
以上により、本実施形態に係る圧電素子144を備えた液滴吐出ヘッド112が構成されるが、圧電素子144及び液滴吐出ヘッド112の製造方向は、これに限定されない。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明に好適な実施形態を示したものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち、本発明の主旨を逸脱することなく、種々の変形、改良、修正、簡略化などを、上記実施形態に加えてもよい。
【0036】
たとえば、積層流路板114として、上記説明では複数のプレートの積層によって流路を形成しているが、プレートの構成、材質などは上記実施形態に限定されない。例えば、セラミックス、ガラス、樹脂、シリコンなどの材料を用いて、流路を一体成型してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、記録用紙P上に着色インクの液滴(インク滴)を吐出して文字や画像などの記録を行うインクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置を例に挙げたが、本発明の液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置としては、このようなインクジェット記録、すなわち、記録用紙上への文字や画像の記録に用いられるものに限定されない。また、記録媒体は紙に限定されるわけではなく、吐出する液体も着色インクに限定されるわけではない。「記録媒体」としては、液滴吐出ヘッドによって液滴を吐出する対象物であればよく、同様に、「画像」あるいは「記録画像」としても、液滴が記録媒体上に付着されることで得られる記録媒体上のドットのパターンであれば、すべて含まれる。したがって、「記録媒体」には、記録用紙やOHPシートなどが含まれるのはもちろんであるが、これら以外にも、たとえば基板、ガラス板などが含まれる。また、「画像」あるいは「記録画像」には、一般的な画像(文字、絵、写真など)のみならず、基板上の配線パターンや3次元物体、有機薄膜などが含まれる。例えば、高分子フィルムやガラス上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う部品実装用のバンプの形成、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成、溶融状態のハンダを基板上に吐出して行う電気実装用のバンプの形成など、様々な工業的用途を対象とした液滴噴射装置一般に対して、本発明の液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置を適用することも可能である。
【0038】
また、液滴吐出装置として、上記では液滴吐出ヘッドをキャリッジによって移動させながら液滴吐出を行う形態としたが、インク吐出口152を記録媒体の全幅にわたって配置したライン型の液滴吐出ヘッドを用い、このライン型ヘッドを固定して、記録媒体のみを搬送しながら記録を行う(この場合は主走査のみとなる)など、別の装置形態に本発明を適用することも可能である。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
本実施例では、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法により製造された液滴吐出ヘッドに対し、高温高湿環境下寿命試験、及び水滴下駆動試験(断面露出部に水を滴下し駆動させる試験)を実施した。
【0041】
また、比較例として、実施例の絶縁性酸化錫膜に代えて、抵抗率がそれぞれ異なる2種類の導電性酸化錫膜が設けられた圧電素子を有する液滴吐出ヘッド(比較例1及び比較例2)、及び、このような酸化錫膜を設けない圧電素子を有する液滴吐出ヘッド(比較例3)についても、同様の試験を実施した。各酸化錫膜の抵抗率は、
・実施例 絶縁性酸化錫膜 :10Ω・cm
・比較例1 導電性酸化錫膜a:10Ω・cm
・比較例2 導電性酸化錫膜b:10Ω・cm
であった。
【0042】
なお、比較例1及び比較例2において、抵抗率の調整は、反応性スパッタリング時のO流量を変化(減少)させて成膜することにより行なった。
【0043】
また、金属膜164は(Ni/Au)、金属膜166は(Ni/Au)の層構成とした。
【0044】
[高温高湿環境下寿命試験]
温度を40℃に保ち、湿度をパラメータ(相対湿度:70%、80%、95%)として、最大電界強度1kV/mmの高周波で駆動した。そして、電極変色、電極剥離、圧電特性劣化の何れかの不具合が発生するまでの時間を、100時間を限度として測定した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
Figure 2004284205
この表1から分かるように、本実施例の絶縁性酸化錫を用いた液滴吐出ヘッドの場合、電極変色、電極剥離、圧電特性劣化のいずれも発生せず、効果が確認された。一方、酸化錫を使用していない従来の圧電素子を用いた液滴吐出ヘッド(比較例3)の場合、いずれの相対湿度下であっても、短時間で不具合が発生している。また、導電性酸化錫を用いた液滴吐出ヘッドの場合(比較例1及び比較例2)、比較例3に比べて不具合の程度が軽微であり、且つ発生までに時間がかかるものの、薄っすらとした電極変色が発生し、 圧電特性も一部劣化したものが発生した。この原因は、以下のように考えられる。すなわち、比較例1及び比較例2では、酸化錫が導電性を有するが為に、導電性酸化錫中には導電をつかさどるキャリアが存在している。これらキャリアは酸化錫中の酸素欠損等に起因し、又、電気化学的には金属錫ライクな状態であると考えられるため、特に高湿下といった多量の水分の存在下で液滴吐出ヘッドを高電界駆動することにより、圧電体及び電極層の断面露出部近傍において、水の電解、局部的pH変化等の電気化学的反応が進む。そして、導電性酸化錫及び金属膜であるニッケルの一部が溶出する結果、電極変色や圧電特性劣化に至る。
【0046】
[水滴下駆動試験]
上記した各構造(実施例及び比較例1〜3)の液滴吐出ヘッドに対し、圧電体及び電極層の断面露出部に水を滴下し、電界強度を最大で1kV/mmまで漸増させてDC駆動を実施した。そして、電極層の変色を目視にて観察した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 2004284205
表2に示すこの試験結果からも、絶縁性酸化錫を用いた本実施例の液滴吐出ヘッドの場合には、導電性酸化錫を用いた液滴吐出ヘッド(比較例1)や、酸化錫を用いていない液滴吐出ヘッド(比較例3)に比べて、水分の存在下における耐性が強いことがわかる。
【0048】
以上2つの試験結果から、圧電体及び電極層の断面が露出した構造であっても、本発明では、酸化錫が用いられていない液滴吐出ヘッドで発生していた電極層の変色等の不具合が改善されると共に、さらに、導電性酸化錫が用いられた液滴吐出ヘッドと比較しても、特に高温高湿下における信頼性に優れた液滴吐出ヘッドを提供できることが分かる。
【0049】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、高温高湿下で強電界を印加した場合であっても、電気化学的反応を抑制することで圧電特性を維持し、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の液滴吐出ヘッドを部分的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の液滴吐出ヘッドを部分的に示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】従来のインクジェット記録ヘッドの圧電素子の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
102 液滴吐出装置
104 キャリッジ
112 液滴吐出ヘッド
124 振動板
140 ノズル
142 圧力発生室
144 圧電素子
156 圧電体
158 電極層
160 電極層
162 絶縁性酸化錫膜
164 金属膜
166 金属膜

Claims (4)

  1. 液体が充填される圧力発生室と、
    前記圧力発生室と連通し、液滴を吐出可能なノズルと、
    前記圧力発生室のそれぞれに対応して設けられ画像情報に応じて印加された電圧によって変形する圧電素子と、前記圧力発生室の壁面の少なくとも一部を構成し前記圧電素子の変形によって振動して圧力発生室を膨張又は圧縮させる振動板と、を備えたアクチュエータと、
    を有する液滴吐出ヘッドであって、
    前記圧電素子が、
    圧電体と、
    前記圧電体の厚み方向両端面に設けられた金属膜と、
    前記金属膜の少なくとも一方と前記圧電体との間に設けられた絶縁性酸化錫膜と、
    を備えていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記絶縁性酸化錫膜が、前記金属膜のうち正電位が印加される金属膜と前記圧電体との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記圧電素子を構成する前記圧電体、前記金属膜及び前記絶縁性酸化錫膜の断面が露出していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とする液滴吐出装置。
JP2003079800A 2003-03-24 2003-03-24 液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置 Pending JP2004284205A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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