JP2004284171A - 液体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液体噴射装置のフラッシング受け部における液体の堆積を減少させ、ターゲットの汚染を防ぐ。
【解決手段】プリンタ11は、フレーム12とガイド部材14とを備え、ガイド部材14には、キャリッジ15が往復移動可能に挿通支持されている。キャリッジ15の下部には記録ヘッド20が設けられる。また、プリンタ11は、フレーム12に架設されるようにしてプラテン23を備え、このプラテン23は、記録ヘッド20と対向するように設けられている。プラテン23の右側端部には、貫通孔23aが設けられ、貫通孔23aには、フラッシング液受け部30が嵌入されている。フラッシング液受け部30は、インク排出路35が備えられており、このインク排出路35に形成されている各平面及び斜面には、グリセリン層が形成されている。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置が知られていた。そして、このようなインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズル開口からインクの溶媒が蒸発することによってインク粘度が上昇し、ノズルに目詰まりが生じたり、ノズル開口へ塵埃が付着したりすることがあった。また、カートリッジの交換等に伴ってノズル内に気泡が混入することもあり、これらの現象によって、印刷が良好に行われなくなる可能性があった。
【0003】
そこで、これらの現象を防ぐために、従来から、記録ヘッドに対して印刷とは関係のない駆動信号を出力してノズルからインク滴を吐出させる、いわゆる、フラッシング動作を行うことが知られていた(例えば、特許文献1参照。)。詳しくは、このフラッシング動作は、記録ヘッドのノズルから、プリンタの端部に設置されているフラッシング液受け部に向かってインク滴が噴射されることにより行われるようになっていた。そして、フラッシング液受け部に向けて噴射されたインクは、フラッシング液受け部から廃液タンクへと導かれ、廃液タンク内の吸収材に吸収保持されるようになっていた。
【0004】
以上のフラッシング動作により、ノズルからは、高粘度のインクが定期的に取り除かれ、ノズル開口における目詰まりや塵埃の付着、気泡の滞留等が防がれ、印刷が良好に行われるようになっていた。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−280488号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、上記のようなインクジェット式記録装置においては、高品質化及び高画質化の傾向から、顔料インクが用いられるようになっていた。そして、このような顔料インクは、染料インクと比較して、インクに占める固体成分が多いため、水分等のインク溶媒の蒸発による粘度の上昇が生じやすくなっていた。従って、以上のような顔料インクを使用したインクジェット式記録装置において、上記のようなフラッシング動作を行うと、ノズルから噴射されたインクが、フラッシング液受け部にて固化してしまうことがあった。そして、フラッシング液受け部に、固化したインクが次々と堆積し、フラッシング液の排出性が低下するとともに、堆積したインクによって記録媒体が汚染される可能性があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、フラッシング液受け部における液体の堆積を減少させ、ターゲットの汚染を防ぐことのできる液体噴射装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、同液体噴射ヘッドを、噴射した前記液体がターゲットに対して付着可能な第1の位置と、噴射した前記液体が前記ターゲットに対して付着不可能な第2の位置とに往復移動させる移動手段と、前記液体噴射ヘッドが前記第2の位置に位置しているときに、前記液体噴射ヘッドから噴射される前記液体を受けるとともに、受けた前記液体を廃液貯留手段に移送するフラッシング液受け部とを備えた液体噴射装置において、前記フラッシング液受け部は、前記液体噴射ヘッドから受けた前記液体に含まれている溶媒の蒸発を抑制する抑制手段を備えた。
【0009】
本発明によれば、液体噴射ヘッドからフラッシング液受け部に対して噴射された液体は、抑制手段によって、その溶媒の蒸発が抑制されるようになる。その結果、フラッシング液受け部における液体の粘度の上昇が防がれ、フラッシング液受け部において液体が固着することが抑制される。従って、フラッシング液受け部において液体が堆積されることが防がれ、堆積した液体によってターゲットが汚されることが防がれる。
【0010】
この液体噴射装置において、前記抑制手段は、前記フラッシング液受け部の表面に層状に形成されている蒸発抑制層であり、同蒸発抑制層は、少なくとも、前記液体に含まれる前記溶媒を含む蒸発抑制用材料によって形成されている。
【0011】
これによれば、フラッシング液受け部に対して噴射された液体は、フラッシング液受け部の表面に形成されている蒸発抑制層に接触するようになる。そして、この蒸発抑制層は、少なくとも、液体に含まれる溶媒を含む蒸発抑制用材料によって形成されているので、フラッシング液受け部に対して噴射された液体は、この蒸発抑制層の蒸発抑制用材料に対して親和するようになる。その結果、このフラッシング液受け部において、液体に含まれる溶媒の蒸発が効果的に抑制されるようになり、液体の粘度の上昇が防がれる。その結果、フラッシング液受け部において、液体が固着し、堆積することが防がれる。従って、堆積した液体によってターゲットが汚されることが防がれる。
【0012】
この液体噴射装置において、前記蒸発抑制層は、前記蒸発抑制用材料を、前記フラッシング液受け部に対して塗布することにより形成されている。
これによれば、例えば、フラッシング液受け部の表面を、蒸発抑制用材料を塗布する部分と塗布しない部分とに分けることができる。そして、その結果、液体の噴射を受けやすい位置にのみに蒸発抑制用材料を塗布することが可能となる。従って、フラッシング液受け部に塗布される蒸発抑制用材料の量を節約することが可能となる。
【0013】
この液体噴射装置において、前記蒸発抑制層は、前記蒸発抑制用材料の中に前記フラッシング液受け部を浸すことにより形成されている。
これによれば、フラッシング液受け部の表面に蒸発抑制層を形成するための作業が、蒸発抑制用材料の中にフラッシング液受け部を浸すことによって行うことができ、フラッシング液受け部の製造工程を簡略化させることができる。
【0014】
この液体噴射装置において、前記液体はインクであり、前記溶媒は、低揮発性溶剤である。
これによれば、インクジェット式記録装置等のように、記録ヘッドから記録媒体に対してインクを噴射させて印刷を行う装置において、フラッシング液受け部を、フラッシング動作時におけるフラッシング液受け部として使用することが可能となる。なお、フラッシング動作とは、記録ヘッドに印刷と関係のない駆動信号を出力してインクを噴出させ、記録ヘッドのノズルの目詰まり等を解消する動作のことである。そして、このフラッシング液受け部には、低揮発性溶剤、例えば、グリセリン、あるいは、トリエチレングリコールといったインクの溶媒による蒸発抑制層が形成されているので、このフラッシング液受け部に対して噴射されたインクは、この蒸発抑制層の低揮発性溶剤に対して親和するようになる。その結果、このフラッシング液受け部において、インクに含まれる溶媒の蒸発が効果的に抑制されるようになり、インクの粘度の上昇が防がれる。その結果、フラッシング液受け部において、インクが固着し、堆積することが防がれる。従って、堆積したインクによって記録媒体が汚されることが防がれる。
【0015】
この液体噴射装置において、前記フラッシング液受け部は、前記液体を受ける部分の平滑度を高める平滑手段を備えた。
これによれば、フラッシング液受け部に噴射された液体は、フラッシング液受け部の表面に沿って滑りながら移動しやすくなり、廃液貯留手段へと移送されやすくなる。その結果、液体がフラッシング液受け部に滞留する時間が短くなり、フラッシング液受け部における液体の粘度の上昇がより効果的に防がれるようになる。その結果、フラッシング液受け部における液体の固着が効果的に抑制され、堆積した液体によってターゲットが汚されることがより効果的に防がれる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのプリンタ11は、フレーム12、ガイド部材14、移動手段としてのキャリッジ15、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20、インクカートリッジ21、プラテン23、廃液貯留手段としての廃液タンク25、ヘッドクリーニング機構27を備える。
【0017】
フレーム12は、プリンタ11の装置全体を覆うものである。ガイド部材14は、このフレーム12の長手方向に沿って架設されている。また、キャリッジ15は、ガイド部材14に対して移動可能に挿通支持されている。そして、キャリッジ15は、タイミングベルト28を介してキャリッジモータ29に接続されており、キャリッジモータ29の駆動により、ガイド部材14に沿う方向、すなわち、主走査方向Xに沿って、往復移動される。
【0018】
記録ヘッド20は、前記キャリッジ15の下部に搭載されており、その下面に複数のノズル(図示しない)が形成されている。インクカートリッジ21は、キャリッジ15の上部に搭載されており、記録ヘッド20において圧電素子(図示しない)が駆動されることによって、インクカートリッジ21から記録ヘッド20へと液体としてのインクが供給され、記録ヘッド20のノズルからインク滴が吐出される。
【0019】
プラテン23は、紙Pを支持する支持台である。そして、プラテン23は、前記フレーム12に対して、ガイド部材14と平行となるようにして架設されており、記録ヘッド20と対向している。また、このプラテン23上には、図示しない紙送り機構によって、副走査方向Y(図1参照)に沿って紙Pが給送されるようになっており、紙Pはこのプラテン23上において、前記記録ヘッド20に対向するようになる。そして、本実施形態においては、記録ヘッド20が、プラテン23において、紙Pと対向する位置を第1の位置とする。
【0020】
そして、前記キャリッジ15がこの第1の位置の範囲内で、ガイド部材14に沿って往復移動されながら、印刷データに基づいて前記圧電素子が駆動されると、記録ヘッド20から紙Pに対してインク滴が吐出され、印刷が行われる。
【0021】
また、プラテン23は、図2の右側の端部に、上下方向に貫通する貫通孔23aを備えている。そして、この貫通孔23aには、フラッシング液受け部30が嵌入されている。このフラッシング液受け部30は、フラッシング動作において、インクの受け部として機能するものである。なお、フラッシング動作とは、プリンタ11において、記録ヘッド20に対して印刷とは関係のない駆動信号を出力してノズルからインク滴を吐出させる動作のことをいう。そして、本実施形態においては、記録ヘッド20が、このフラッシング動作を行うために、フラッシング液受け部30と対向する位置を第2の位置とする。また、このフラッシング液受け部30の詳細な説明については後述する。
【0022】
図2に示すように、廃液タンク25は、上面が開口する箱形に形成されている。そして、この廃液タンク25は、前記プラテン23を下方に投影したときに、廃液タンク25の上部開口が、その投影した部分全体を包含することができるような大きさ及び位置に設けられている。そして、この廃液タンク25の内部には、多孔質素材による廃液吸収材31が、積層されるようにして複数備えられている。従って、前記フラッシング動作時において、前記フラッシング液受け部30に吐出されたインクは、フラッシング液受け部30から下方に落下して、この廃液吸収材31に吸収保持されるようになっている。
【0023】
ヘッドクリーニング機構27は、プリンタ11の図2の右側端部、すなわち、非印刷領域(ホームポジション)に設けられている。そして、ヘッドクリーニング機構27は、キャップ部材32と、同キャップ部材32に接続されている吸引チューブ33と、同吸引チューブ33の途中に設けられている吸引ポンプ34とを備える。
【0024】
キャップ部材32は、図示しない公知の昇降手段により上下動可能に前記フレーム12に取着されている。そして、キャップ部材32は、キャリッジ15がホームポジションに移動すると、上昇することによって、キャリッジ15の記録ヘッド20に設けられているノズル形成面を封止できるようになっている。従って、キャップ部材32は、プリンタ11の休止期間中において記録ヘッド20のノズル形成面の乾燥を防止する蓋体として機能する。
【0025】
吸引チューブ33は、シリコンゴム等の可撓性材料によって形成され、一端が前記キャップ部材32の内部と連通するとともに、他端が前記廃液タンク25内に位置している。従って、キャップ部材32の内部と廃液タンク25とは、吸引チューブ33を介して接続されている。
【0026】
吸引ポンプ34は、前記吸引チューブ33の流路途中に設けられており、図示しない駆動手段によって駆動されることにより、吸引チューブ33の上流側の流体を減圧させることが可能となっている。従って、キャップ部材32によって記録ヘッド20のノズル形成面を封止した状態で吸引ポンプ34を駆動させると、記録ヘッド20とキャップ部材32とによって形成される空間内の流体が減圧され、記録ヘッド20のノズルからインクが吸引される。そして、吸引されたインクは、吸引チューブ33を介して廃液タンク25に排出されるようになっている。すなわち、このヘッドクリーニング機構27によって、記録ヘッド20におけるインク滴の吐出能力を回復させるクリーニングを行うことができるようになっている。
【0027】
次に、前記フラッシング液受け部30について、図3〜図5に従って詳しく説明する。
図3は、本実施形態におけるフラッシング液受け部30の平面図を示し、図4は、同じく、フラッシング液受け部30の正面側の断面図を示し、図5は、同じく、フラッシング液受け部30の側面側の断面図を示す。図3〜図5に示すように、フラッシング液受け部30は、プラスチック等の合成樹脂により形成されている。そして、このフラッシング液受け部30には、インク排出路35が備えられており、このインク排出路35は、フラッシング液受け部30の上面30aから下面30bに向かって貫通するように形成されている。
【0028】
そして、インク排出路35は、本実施形態では、上方から下方に向かって、順に、第1のインク排出路37、第2のインク排出路38、第3のインク排出路39、第4のインク排出路40を連続するようにして備える。そして、これら第1〜第4のインク排出路37,38,39,40は、いずれも、その平面方向の断面形状が略長方形形状を有するようにして形成されている。
【0029】
第1のインク排出路37は、前記主走査方向Xに沿って設けられている相対峙する2つの平面37a,37bと、前記副走査方向Yに沿って設けられている相対峙する2つの平面37c,37dを備える。そして、これら4つの平面37a、37b、37c、37dは、いずれも、鉛直方向に沿って設けられている。従って、この第1のインク排出路37においては、その平面方向の断面積が、上方から下方に向かって変化しないようになっている。
【0030】
第2のインク排出路38は、前記主走査方向Xに沿って設けられている相対峙する2つの平面38a,38bと、前記副走査方向Yに沿って設けられている相対峙する2つの斜面38c,38dとを備える。そして、平面38a,38bは、ともに、鉛直方向に沿って設けられている。また、斜面38c,38dは、鉛直方向に対して斜めになるようにして設けられている。そして、平面38a,38b及び斜面38c,38dは、それぞれ、前記第1のインク排出路37の平面37a〜37dと連続するようにして設けられている。
【0031】
なお、前記斜面38c,38dの傾きの方向は、前記第2のインク排出路38の平面方向における断面積が、上方から下方に向かって小さくなるような方向となっている。すなわち、第2のインク排出路38は、前記主走査方向Xに沿った長さが、上方から下方に向かって小さくなるとともに、副走査方向Yに沿った長さが変化しないように形成されている。
【0032】
第3のインク排出路39は、主走査方向Xに沿って設けられている、相対峙する平面39aと斜面39bとを備える。また、第3のインク排出路39は、副走査方向Yに沿って設けられている、相対峙する2つの平面39c,39dを備える。そして、平面39a,39c,39dは、それぞれ、鉛直方向に沿って設けられている。また、斜面39bは、鉛直方向に対して斜めとなるようにして設けられている。そして、平面39a、斜面39b、平面39c,39dは、それぞれ、前記第2のインク排出路38の平面38a,38b及び斜面38c,38dと連続するようにして設けられている。
【0033】
なお、前記斜面39bは、その傾きの方向が、前記第3のインク排出路39の平面方向における断面積が、上方から下方に向かって小さくなるような方向となっている。すなわち、第3のインク排出路39は、前記主走査方向Xに沿った長さが、上方から下方に向かって変化しないとともに、副走査方向Yに沿った長さが上方から下方に向かって小さくなるように形成されている。
【0034】
第4のインク排出路40は、主走査方向Xに沿って設けられている相対峙する平面40a,40bと、副走査方向Yに沿って設けられている相対峙する平面40c,40dとを備える。そして、平面40a〜40dは、それぞれ、鉛直方向に沿って設けられている。そして、平面40a〜40dは、それぞれ、前記第3のインク排出路39の平面39a、斜面39b、平面39c,39dと、連続するようにして設けられている。従って、この第4のインク排出路40においては、その平面方向の断面積が、上方から下方に向かって変化しないようになっている。
【0035】
従って、以上のインク排出路35は、上方から下方に向かって、その断面積が小さくなるような、略漏斗形状に形成されている。そして、本実施形態においては、前記第1〜第4のインク排出路37〜40に備えられている各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bには、蒸発抑制用材料としてのグリセリンが刷毛等によって塗布されている。そして、このグリセリンは、インク溶媒である低揮発性有機溶剤の1つであり、これにより、フラッシング液受け部30には、図示しない蒸発抑制層としてのグリセリン層が形成されている。
【0036】
そして、以上のように構成されたフラッシング液受け部30は、図1及び図2に示すように、プリンタ11のプラテン23の貫通孔23aに嵌入されることによって固定される。この状態で、プリンタ11において、フラッシング動作が行わると、このフラッシング液受け部30には、インクが吐出される。そして、吐出されたインクは、各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bに付着するとともに、重力に従って、下方に移動する。その後、インクはフラッシング液受け部30から下方に落下し、前記廃液タンク25の廃液吸収材31にて吸収保持される。
【0037】
なお、このとき、フラッシング液受け部30の、前記各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bには、グリセリン層が形成されているため、フラッシング液受け部30に付着しているインクは、インクの溶媒の1つであるグリセリンと親和する。その結果、インクは、溶媒の蒸発が抑制さえるようになる。すなわち、インクは、このグリセリンによって、フラッシング液受け部30において、固化することが防がれ、良好な排出性で廃液タンク25に向かって落下するようになっている。その結果、フラッシング液受け部30に固化したインクが堆積することが生じないようになっている。
【0038】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、フラッシング液受け部30の各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bには、グリセリン層が形成されるようにした。従って、記録ヘッド20からフラッシング液受け部30に対して噴射されたインクは、このグリセリン層に接触し、インクの溶媒の1つであるグリセリンと親和するようになる。その結果、このフラッシング液受け部30において、インクに含まれる溶媒の蒸発が効果的に抑制されるようになり、インクの粘度の上昇が防がれる。その結果、フラッシング液受け部30において、インクが固着して堆積することが防がれる。そして、堆積したインクによって紙Pが汚されることが防がれる。
【0039】
(2)上記実施形態では、フラッシング液受け部30の各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bに対してグリセリンを刷毛等で塗布することによって、グリセリン層を形成するようにした。従って、フラッシング液受け部30のうち、グリセリン層の形成されている部分とそうでない部分とを作ることが可能となり、例えば、インクの噴射を受けやすい位置にのみグリセリン層を形成することが可能となる。その結果、フラッシング液受け部30に塗布されるグリセリンの量を節約することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、抑制手段として、フラッシング液受け部30に形成したグリセリン層に具体化して説明したが、フラッシング液受け部30におけるインクの溶媒の蒸発を抑制するものであれば、その他の抑制手段に具体化するようにしてもよい。例えば、フラッシング液受け部30の、各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bに、スポンジ等の吸収材を設け、その吸収材にインクが吸収されることによって、インクの溶媒の蒸発を抑制するようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、フラッシング液受け部30の、各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bに、グリセリン層を設けるようにした。これを、各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bのうちの一部分にのみ設けるようにしてもよい。例えば、斜面38c,38d,39bにのみグリセリン層を設けるようにしてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、フラッシング液受け部30に対してグリセリン層を設けるときには、フラッシング液受け部30に対して、刷毛等によってグリセリンを塗布することによって設けるようにした。これを、大量のグリセリンの中にフラッシング液受け部30自体を浸すことによって形成するようにしてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、蒸発抑制層として、インクの溶媒である低揮発性有機溶剤の1つであるグリセリンによるグリセリン層を使用するようにした。これを、インクの溶媒であれば、その他の材料による蒸発抑制層を形成するようにしてもよい。例えば、インクの溶媒としてのトリエチレングリコールによって、蒸発抑制層としてのトリエチレングリコール層を形成するようにしてもよい。また、ポリエチレングリコール#200,#400,#600、トリエタノールアミン、プロピレングリコール、さらには、尿素、トリメチロールプロパン、糖類等の固体湿潤剤の水溶液による層を形成するようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、フラッシング液受け部30は、その各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bに、直接グリセリン層が形成されるようにした。これを、フラッシング液受け部30のインクを受ける部分を、平滑手段としてのPET等によるフィルム材によって被覆し、さらにその表面にグリセリン層を形成するようにしてもよい。詳しくは、図6に示すように、フラッシング液受け部30の各平面37a〜37b,38a,38b,39a,39c,39d,40a〜40d及び各斜面38c,38d,39bを一括して覆うフィルム材51を設け、このフィルム材51の表面にグリセリン層を形成するようにしてもよい。
【0045】
これによれば、フラッシング動作時においてフラッシング液受け部30に噴射されたインクは、重力に従って、フラッシング液受け部30のフィルム材の表面に沿って滑りながら移動されやすくなり、廃液タンク25へと落下しやすくなる。その結果、インクがフラッシング液受け部30において滞留する時間が短くなり、フラッシング液受け部30におけるインクの粘度の上昇がより効果的に防がれるようになる。その結果、フラッシング液受け部30におけるインクの固着が効果的に抑制され、堆積したインクによって紙Pが汚されることが、より効果的に防がれるようになる。
【0046】
・上記実施形態では、液体噴射装置として、液体としてのインクを液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20を介してターゲットとしての紙Pに対して噴射するプリンタ11(ファックス、コピア等の印刷装置を含む)を用いて説明した。これを、他の液体を噴射する液体噴射装置に具体化するようにしてもよい。例えば、他の液体を噴射する液体噴射装置として、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【0047】
また、液体もインク以外の液体を使用するようにしてももちろんよい。そして、液体として、インク以外の液体を使用した場合には、少なくとも、その液体の溶媒を含む蒸発抑制用材料によって形成された蒸発抑制層をフラッシング液受け部に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態におけるプリンタの斜視図。
【図2】同じく、プリンタの断面図。
【図3】同じく、フラッシング液受け部の平面図。
【図4】同じく、フラッシング液受け部の断面図。
【図5】同じく、フラッシング液受け部の断面図。
【図6】別例における、フラッシング液受け部の断面図。
【符号の説明】
11…液体噴射装置としてのプリンタ、P…ターゲットとしての紙、20…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、25…廃液貯留手段としての廃液タンク、30…フラッシング液受け部。

Claims (6)

  1. 液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
    同液体噴射ヘッドを、噴射した前記液体がターゲットに対して付着可能な第1の位置と、噴射した前記液体が前記ターゲットに対して付着不可能な第2の位置とに往復移動させる移動手段と、
    前記液体噴射ヘッドが前記第2の位置に位置しているときに、前記液体噴射ヘッドから噴射される前記液体を受けるとともに、受けた前記液体を廃液貯留手段に移送するフラッシング液受け部と
    を備えた液体噴射装置において、
    前記フラッシング液受け部は、前記液体噴射ヘッドから受けた前記液体に含まれている溶媒の蒸発を抑制する抑制手段を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の液体噴射装置において、
    前記抑制手段は、前記フラッシング液受け部の表面に層状に形成されている蒸発抑制層であり、
    同蒸発抑制層は、少なくとも、前記液体に含まれる前記溶媒を含む蒸発抑制用材料によって形成されていることを特徴とする液体噴射装置。
  3. 請求項2に記載の液体噴射装置において、
    前記蒸発抑制層は、前記蒸発抑制用材料を、前記フラッシング液受け部に対して塗布することにより形成されていることを特徴とする液体噴射装置。
  4. 請求項2に記載の液体噴射装置において、
    前記蒸発抑制層は、前記蒸発抑制用材料の中に前記フラッシング液受け部を浸すことにより形成されていることを特徴とする液体噴射装置。
  5. 請求項2〜4のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
    前記液体はインクであり、
    前記溶媒は、低揮発性有機溶剤であることを特徴とする液体噴射装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
    前記フラッシング液受け部は、前記液体を受ける部分の平滑度を高める平滑手段を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
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