JP2004283169A - 醸造用酵母遺伝子のスクリーニング法 - Google Patents

醸造用酵母遺伝子のスクリーニング法 Download PDF

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Abstract

【課題】工業用酵母、特に醸造用酵母の全ゲノム塩基配列データベースを作製し、目的とする醸造特性に関わる遺伝子を選択する方法を提供する。また該遺伝子が関わる醸造特性を発揮する酵母を育種する方法並びにこの酵母を用いて生産性や品質を向上させたアルコール又は酒類を製造する方法を提供する。
【解決手段】(イ)工業用酵母の全ゲノム塩基配列を解析し、(ロ)該ゲノム塩基配列をS.cerevisiaeの全ゲノム塩基配列と比較し、(ハ)S.cerevisiaeの遺伝子がコードするアミノ酸配列と70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする該工業用酵母の遺伝子を選択し、(ニ)該遺伝子の機能解析を行うことによって該遺伝子が酵母に付与する特性を同定する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビールや清酒等の酒類、燃料用アルコール等の製造に用いられる工業用酵母、特に酒類の製造に用いられる醸造用酵母の遺伝子のスクリーニング方法に関する。詳しくは、酒類の製造において、醸造用酵母の塩基配列情報をデータベース化し、その生産性の向上及び/又は香味の安定化や増強等の香味の改善に関わる遺伝子を選択する方法、該遺伝子が破壊された酵母又は該遺伝子を高発現させた酵母等の作製によって、該遺伝子の発現を制御し、醸造に適した酵母を育種する方法、並びに育種された酵母を用いて酒類を製造する方法に関する。
工業用酵母を用いて、燃料用アルコール、ビールや清酒等の酒類等の製造技術の開発が行われている。特に醸造用酵母を用いての酒類の製造において、酒類の生産性を向上させたり、また香味を安定化させたり向上させたり等、香味を改善するための技術の開発が盛んに進められている。
世界で最も飲用されている酒類はビールであり、2001年度の世界の生産量は約1億4,000万kLである。ビールの種類は、酵母の種類と発酵の方法により大きく3つに分けられる。醸造所に棲み付いた酵母や微生物を利用して発酵させる自然発酵ビール、S.cerevisiaeに属する上面発酵酵母を用いて20〜25℃の温度で発酵し、その後の熟成期間を短くするエールタイプのビール、およびサッカロマイセス パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus:以下S.pastorianusと略す)に属する下面発酵酵母を用いて6〜15℃の温度で発酵させ、その後低温熟成させるラガータイプのビールの3種類である。現在世界のビール生産量の9割以上はラガータイプのビールであり、従って、このラガータイプビールの醸造に使用されている下面発酵酵母は、ビール醸造において最も広く用いられている。
上記の醸造用酵母を含め、微生物を用いて生産する、いわゆる発酵生産においては、発酵プロセスを最適化すること、及び有用な菌株を選択・育種することが、生産性の向上及び生産物の品質向上にとって重要である。
例えばビール醸造の場合、ビール醸造プロセスの最適化には、エタノールをはじめとするアルコール類やエステル、有機酸といった酵母の代謝物をモニターし、温度や通気量、あるいは原料濃度などを制御する方法が行われている。これらの制御は、ビール酵母の細胞内外への物質移送及び細胞内物質代謝をブラックボックスとして扱っており、極めて表面的な制御を行っているに過ぎない。また、例えば酒類に高い香味性を付与する等の目的から、ビール醸造中の酸素供給量を抑制するプロセス制御方法等が試みられているが、この方法では酸素不足によって酵母の増殖速度自体が低下し、発酵の遅延や品質の低下等の悪影響を引き起こす場合等がある。従って、発酵プロセスの最適化による生産性及び品質の向上には限界があった。
一方、有用な工業用酵母、例えば有用なビール酵母を育種する方法としては、これまでは育種というよりも優良菌株の選択という手法が広く用いられていた。ビール醸造そのものはパスツールによる微生物の発見よりはるか以前から行われており、ビール醸造においては、ビール醸造所で用いられている優良なビール酵母を選択するという方法が伝統的に行われ、積極的に優良形質をもつビール酵母を育種した例は少ない。
例えば積極的な育種方法として、薬剤や放射線による人為的な突然変異誘発を利用する方法があるが、醸造用酵母、とりわけビール醸造に広く用いられている下面発酵酵母は高次倍数体であることが多く、かかる高次倍数体の酵母においては、変異を起こしたい対立遺伝子の全てに変異を起こさないと目的の変異株が得られない。従って、望む変異を引き起こすことは、一倍体の実験室酵母で可能であっても、高次倍数体のビール酵母では実質的には不可能である。
近年になって、下面発酵酵母から胞子分離をおこない、それらを用いた変異導入や交雑による育種が試みられている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、高次倍数体である下面発酵酵母は、複雑な染色体構成のために増殖能をもつ胞子の分離は難しく、さらにその中から優良形質を有する菌株を取得することは殆ど不可能に近い。
また、最近では遺伝子工学的な手法を用いて、目的とする遺伝子を醸造用酵母に導入・発現させることが可能になり、遺伝子の機能解析や、機能解析された遺伝子を利用して、望ましい形質をもつ酵母を育種することが可能となった。ところが、既に全ゲノム塩基配列が知られているパン酵母(S.cerevisiae、例えば非特許文献2参照)と比べて、下面発酵酵母では全ゲノム塩基配列が知られておらず、下面発酵酵母の醸造特性に関する遺伝子、及びビール醸造における該遺伝子の働きについてもごくわずかな知見しかない。
近年、ゲノム上の遺伝子あるいは遺伝子以外の領域のDNA断片を固定支持体に固着したDNAアレイ、DNAチップ等を用い、膨大な数の遺伝子についてその解析が行われている。例えば、Olesenらは、GeneFilters(Research Genetics社製)を用い、醸造中における下面発酵酵母の網羅的遺伝子発現解析を行っている。しかしながら、下面発酵酵母の全ゲノム塩基配列が明らかにされていないことから、正確にはどの遺伝子の発現をモニターしたのかは不明であり、結果として下面発酵酵母の物質代謝解析や、有用酵母の育種、ビール醸造プロセス制御に応用するための情報としては極めて不十分である。
近年、S.cerevisiae、大腸菌(例えば非特許文献4参照)、結核菌(例えば非特許文献5参照)を初め、既に100種以上の微生物全ゲノム塩基配列が決定されており(例えば非特許文献6参照)、決定された全塩基配列に基づき、その微生物の遺伝子の同定、その遺伝子と公知の遺伝子との塩基配列における比較が行われ、遺伝学的、生化学的、分子生物学的な実験をすることなく、膨大な数の遺伝子の機能推定がなされている。しかしながら、産業上広く利用されている醸造用酵母の中でも、異質倍数性を有する下面発酵酵母は特に複雑な染色体構造を有し(例えば非特許文献7)、アセンブリ(塩基配列を連結する作業)が難しいと予想されることから、全ゲノム塩基配列の決定はいまだ報告されていない。
具体的なアルコール又は酒類の製造において、例えば酒類の香味の改善を目的とした技術開発として、製品中の亜硫酸濃度を高める技術が挙げられる。亜硫酸は、高い抗酸化効果を有する化合物であり、食品や飲料、医薬品などの分野では酸化防止剤として広く用いられ、酒類においても同様に酸化防止剤として利用されている。例えば長期間の熟成を必要とするワインでは、亜硫酸はその品質保持性に重要な役割を果たしている。またビール醸造においても、製品に含まれる亜硫酸濃度の上昇に依存して品質保持期間が長期化することが知られており、製品中の亜硫酸含有量を高めれば、香味安定性に優れ、長期の品質保持期間を有する製品を製造することができる。
製品中の亜硫酸含量を増加させる最も簡単な方法は、亜硫酸を添加することである。日本国内では、ワインに限り、亜硫酸残留濃度が350ppm以下までの亜硫酸添加が厚生労働省により許可されている。しかしながらその場合、亜硫酸は食品添加物として扱われるため、食品添加物に対する消費者のマイナスイメージ等を考慮すれば、ビールに亜硫酸を添加することは好適ではない。
しかしながら醸造で用いられる酵母は、その生命活動に必要な含硫アミノ酸等の含硫化合物を生合成するために、培地中の硫酸イオンを還元して硫化水素を生成している。亜硫酸はその中間代謝産物であり、酵母のこの能力を利用して、醸造中に亜硫酸を産生させ、その亜硫酸を細胞外に効率的に排出することができれば、発酵液中及び製品中の亜硫酸含有量を増加させることが可能であると考えられた。
醸造工程で発酵液中の亜硫酸濃度を上昇させる方法としては、発酵プロセスの制御による方法と、醸造用酵母の育種による方法がある。発酵プロセスの制御による方法では、ビール発酵中の亜硫酸の生成量が初期酸素供給量と逆比例することから、発酵工程における酸素供給量を低減させて、亜硫酸の生成量を増加させるとともにその酸化を抑制する方法等が試みられている。しかしながら、この方法では酸素不足によって酵母の増殖速度が低下し、発酵の遅延や品質の低下を引き起こす等の悪影響があるため実用的とはいえない。
一方、醸造用酵母の育種による方法には、上述した通り、遺伝子操作技術を用いた方法の開発が進められている。例えば、酵母の硫黄代謝において、亜硫酸(SO2)が含硫アミノ酸やビタミンの生合成経路における中間生成物であり、細胞外から取り込まれた硫酸イオン(SO4 2‐) から、硫酸イオン(SO4 2-)→APS(adenylylsulfate)→PAPS (phosphoadenylylsulfate)→亜硫酸イオン(SO3 2-)という還元反応を経て生成されることに着目し、ここで硫酸イオン(SO4 2-)→APS(adenylylsulfate)の反応に関与するMET3遺伝子、APS(adenylylsulfate)→PAPS(phosphoadenylylsulfate)の反応に関与するMET14遺伝子の遺伝子コピー数を増加させることによって、酵母の亜硫酸生成能を向上させることを試みた例(例えば非特許文献8参照)、またMET10遺伝子の破壊によって亜硫酸イオン(SO3 2-)の還元を阻害し、酵母の亜硫酸生成量を増加させようと試みた例(例えば非特許文献9参照)が開示されている。これらの試みによれば、MET10遺伝子破壊株の亜硫酸生成量は親株の10倍以上まで増加したが、その一方で、若干の発酵の遅延およびビール成分中のアセトアルデヒドと1−プロパノール含有量の増加が認められるなど、これら育種された酵母を実用化するには問題があった。
よって、遺伝子操作技術を用いた工業用酵母、例えば醸造用酵母の育種方法の開発が進められてはいるものの、醸造用酵母のゲノム情報が乏しいために、醸造用酵母の醸造特性に関わる遺伝子を選択し、該遺伝子がコードするタンパク質の機能を解析し、それらの知見を育種に利用することが十分に行えないのが現状である。
従って、発酵速度や製品の品質を損なうことなく目的とする特性が発揮できる酵母を育種する方法は未だ確立されておらず、該方法の開発が、醸造のみならず酵母を用いる産業界において非常に望まれている。
C.ジャーマンセン(C. Gjermansen)、減数分裂分離体の交配によるサッカロマイセスカールスベルゲンシスハイブリッド醸造株の構築(Construction of a hybrid brewing Strain of Saccharomyces carlsbergensis by mating of meioticsegregants)、カールスバーグリサーチコミュニケーション(Carlsberg Res. Commun.)、第46巻, p1−11、1981年 A.ゴフォーら(A. Goffeau et al.)、酵母ゲノムダイレクトリー(The Yeast Genome Directory),第387巻、p5−105、1997年 K.オールセン(K. Olesen et al.)、ラガービール発酵の製造スケール中の醸造用酵母サッカロマイセス カールスベルゲンシスの遺伝子発現情報(トランスクリプトーム)の動態(The dynamics of the Saccharomyces carlsbergensis brewing yeast transcriptome during a production-scale lager beer fermentation)、FEMSイーストリサーチ(FEMS Yeast Research)、第2巻, p563−573、2000年 F.R.ブラットナーら(F. R. Blattner et al.)、大腸菌K−12株の全ゲノム塩基配列(The Complete Genome Sequence of Escherichia coli K-12)、サイエンス(Science)、第277巻、p1453−62、1997年 S.T.コールら(S. T. Cole et al.)、全ゲノム塩基配列に基づくマイコバクテリウムチュベルキュロシスの生物学的解析(Deciphering the biology of Mycobacterium tuberculosis from the complete genome sequence)、ネイチャー(Nature)、第393巻、p537-544、1998年 ザナショナルセンターフォーバイオテクノロジーインフォメーション(The National Center for Biotechnology Information)、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PMGifs/Genomes/micr.html Y. 玉井ら(Y. Tamai et al.)、下面発酵酵母、サッカロマイセス パストリアヌスには2種類の染色体が存在(Co-existence of two types of chromosome in the fermenting yeast, Saccharomyces pastorianus.)、イースト(Yeast)、第10巻、p923-33、1998年 C.コークら(C. Korch et al.)、プロシーディングオブヨーロッピアンブルワリィコンベンションコングレス;リスボン(Proc.Eur. Brew. Conv. Congress., Lisbon)、p201-208、1991年 J.ハンセンら(J. Hansen et al.)、醸造酵母におけるMET10遺伝子の不活化により、ビール醸造中のSO2生成が特異的に増加する(Inactivation of MET10 in brewer's yeast specifically increases SO2 formation during beer production)、ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotech.)、第14巻、p1587-1591、1996年 T.シエンら(T. Sijen et al.)、転写及び転写後の遺伝子抑制は、機構的に関連している(Transcriptional and posttranscriptional gene silencing are mechanistically related.)、カレントバイオロジー(Curr. Biol.)、第11巻、p436−440、2001年 N.後藤ら(N.Goto et al.)、ワイン酵母の亜硫酸耐性遺伝子SSU1-Rは、SSU1の対立遺伝子であって、SSU1とは異なる上流塩基配列を有する(SSU1-R, a sulphite resistance gene of wine yeast, is an allele of SSU1 with a different upstream sequence.)、ジャーナルオブファーメンテイションアンドバイオエンジニアリング(J. Ferment. Bioeng.)、第86巻、p427−433、1998年 D.アブラムら(D. Avram et al.)、サッカロマイセス セレビシエにおいて、SSU1は亜硫酸の許容度に関与するタンパク質のネットワークにおいて重要な役割を果たす形質膜タンパク質をコードする(SSU1 encodes a plasma membrane protein with a central role in a network of proteins conferring sulfite tolerance in Saccharomyces cerevisiae)、ジャーナルオブバクテリオロジー(J. Bacteriol.)、第179巻、p5971−5974、1997年 H.パークら(H. Park et al.)、サッカロマイセス セレビシエにおいて、SSU1は、亜硫酸の流出を仲介する(SSU1 mediates sulphite efflux in Saccharomyces cerevisiae)、イースト(Yeast)、第16巻、p881−888、2000年
本発明は、工業用酵母、特にビール等の酒類の製造に用いられる醸造用酵母の全ゲノム塩基配列データベース(以降、ゲノムDBと略す場合もある)を作製し、そのデータベースを基に、醸造用酵母の遺伝子を選択し、該遺伝子を破壊及び/又は高発現させることにより該遺伝子の機能解析を行い、目的とする醸造特性に関わる遺伝子を選択する方法を提供することを目的とする。また、該遺伝子が関わる醸造特性を発揮する酵母を育種する方法並びに該酵母を用いて生産性や品質を向上させたアルコール又は酒類を製造する方法を提供することを目的とする。更には該酵母の遺伝子及びその遺伝子がコードするペプチドを提供することも目的とする。
工業用酵母として広く用いられている醸造用酵母はその多くが高次倍数体であり、その中でも下面発酵酵母は少なくとも2種類のゲノムから構成されている異質倍数体であることが知られている。そのうちのひとつは全ゲノム塩基配列が解読されているS.cerevisiae 由来のゲノムと考えられているが、残りのゲノムの由来は解明されていなかった。
そこで本発明者らは、醸造用酵母の優れた醸造特性の基盤となる、醸造用酵母特有の機能をもつ未同定の遺伝子を見出すために、醸造用酵母のひとつである下面発酵酵母の全ゲノム塩基配列を決定した。そして既に全ゲノム配列が明らかにされているS.cerevisiaeのゲノムDBに登録されているアミノ酸配列と比較し、醸造用酵母の遺伝子がコードするタンパク質の機能推定を行った結果、該下面発酵酵母の遺伝子は、アミノ酸配列において、S.cerevisiaeと100%近い同一性を示すSc型遺伝子と、70〜97%前後の同一性を示す非Sc型遺伝子に大別されることを明らかにした。更に下面発酵酵母は、Sc型塩基配列だけからなるSc型染色体、非Sc型塩基配列だけからなる非Sc型染色体のほか、両染色体のキメラであるSc/非Sc型キメラ染色体が混在する複雑な構成となっていることを明らかにした。下面発酵酵母の全染色体の構成を図1に示す。本発明者らは、本発明で明らかにしたゲノム情報をもとに、このような予想もしない複雑な染色体の構成を知見し、下面発酵酵母の遺伝子のスクリーニング方法、詳しくは、(イ)工業用酵母、特に醸造用酵母のひとつである下面発酵酵母の全ゲノム塩基配列を解析し、(ロ)該ゲノム塩基配列をS.cerevisiaeの全ゲノム塩基配列と比較し、(ハ)S.cerevisiaeの遺伝子がコードするアミノ酸配列と70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする該下面発酵酵母の遺伝子を選択し、更に(ニ)選択された該遺伝子の機能解析を行うことによって該遺伝子が酵母に付与する醸造特性を同定することを特徴とする、醸造用酵母特有の醸造特性に関わる遺伝子のスクリーニング方法に想到した。本発明者らはこれらの知見を基に更に鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
(1) (イ)工業用酵母の全ゲノム塩基配列を解析し、(ロ)該ゲノム塩基配列をサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae:以降、S.cerevisiaeと略す)の全ゲノム塩基配列と比較し、(ハ)S. cerevisiaeの遺伝子がコードするアミノ酸配列と70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする該工業用酵母の遺伝子を選択し、(ニ)該選択された該遺伝子の機能解析を行うことによって該遺伝子が酵母に付与する特性を同定することを特徴とする、アルコール又は酒類の製造においてその生産性の向上及び/又は香味の改善に関わる遺伝子のスクリーニング方法、
(2) 上記(ニ)においてDNAアレイを用いて機能解析を行なうことを特徴とする前記(1)のスクリーニング方法、
(3) 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイを用いることを特徴とする前記(2)に記載のスクリーニング方法、
(ア)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレーム(open reading frame、以外にORFと略す場合もある。)にある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
(イ)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列、
(4) 前記(3)に記載のオリゴヌレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを基板に固定したDNAアレイを用いることを特徴とする前記(2)に記載のスクリーニング方法、
(5) 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイを用いることを特徴とする前記(2)に記載のスクリーニング方法、
(ア)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレーム以外に存在する非翻訳領域にある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
(イ)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列、
(6) 前記(5)に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする前記(2)に記載のスクリーニング方法、
(7) 前記(3)に記載された1又は複数のヌクレオチド、
前記(4)に記載された1又は複数のヌクレオチド、
前記(5)に記載された1又は複数のヌクレオチドおよび
前記(6)に記載された1又は複数のヌクレオチド、
からなる4群のうちの2群以上から選ばれたヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイを用いることを特徴とする前記(2)に記載のスクリーニング方法、
(8) 工業用酵母が、醸造用酵母であることを特徴とする前記(1)ないし(7)に記載のスクリーニング方法、
(9) 醸造用酵母が、ビール酵母であることを特徴とする前記(1)ないし(8)に記載のスクリーニング方法、
(10) 前記(1)に記載のスクリーニング方法によって得られる遺伝子、
(11) 前記(10)に記載の遺伝子を酵母で発現させた場合、該酵母の培養液中の亜硫酸濃度が上昇することを特徴とする前記(10)に記載の遺伝子、
(12) 配列番号:1又は2で表される塩基配列からなるDNA又は該DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA、
(13) 配列番号:3又は4で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又は配列番号:3又は4で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA、
(14) 前記(10)〜(13)のいずれかに記載の遺伝子又はDNAを有する組換えベクター、
(15) 前記(10)〜(13)のいずれかに記載の遺伝子又はDNAに隣接して、プロモーター及び/又はターミネーターを設置していることを特徴とする前記(9)に記載の組換えベクター、
(16) プロモーターが、構成的な発現をするプロモーターであることを特徴とする前記(15)に記載の組換えベクター、
(17) プロモーターが、グリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターであることを特徴とする前記(15)又は(16)に記載の組換えベクター、
(18) 前記(10)〜(17)のいずれかに記載の遺伝子、DNA又は組換えベクターを含む形質転換体、
(19) Saccharomyces属酵母であることを特徴とする前記(18)に記載の形質転換体、
(20) 前記(10)〜(13)のいずれかに記載の遺伝子又はDNAによりコードされるポリペプチド又は該ポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(21) 配列番号:3又は4に表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又は配列番号:3又は4で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(22) 前記(18)又は(19)に記載の形質転換体を用いることを特徴とするアルコール又は酒類の製造方法、
(23) 前記(10)若しくは(11)に記載の遺伝子又は前記(12)若しくは(13)に記載のDNA上の遺伝子の発現を制御することを特徴とするアルコール又は酒類の製造に適した酵母の育種方法、
(24) 酵母が、Saccharomyces属であることを特徴とする前記(23)に記載の育種方法、
(25) 前記(23)又は(24)に記載の育種方法により得られる酵母、
(26) 前記(25)に記載の酵母を用いるアルコール又は酒類の製造方法、
(27) 前記(26)に記載のアルコール又は酒類の製造方法を用いて製造されるアルコール又は酒類、
(28) 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ、
(1)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレームにある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
(2)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列、
(29) 前記(28)に記載の塩基配列を有するオリゴヌレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズする1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ、
(30) 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ、
(1)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレーム以外に存在する非翻訳領域にある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
(2)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列、
(31) 前記(30)に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズする1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ、
(32) 前記(3)に記載された1又は複数のヌクレオチド、
前記(4)に記載された1又は複数のヌクレオチド、
前記(5)に記載された1又は複数のヌクレオチドおよび
前記(6)に記載された1又は複数のヌクレオチド、
からなる4群のうちの2群以上から選ばれたヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ、
に関する。
工業用酵母、特にビール等の酒類の製造に用いられる醸造用酵母の全ゲノム塩基配列データベースを作製し、そのデータベースを基に、醸造用酵母の醸造特性に関わると考えられる遺伝子を選択し、その遺伝子を破壊、及び/又は高発現させてその遺伝子の機能解析を行うことにより、目的とする醸造特性に関わる遺伝子を選択することができる。また該遺伝子を利用して、該遺伝子の発現を制御することにより、該遺伝子が関わる醸造特性を発揮する酵母を育種し、この酵母を用いて生産性や品質を向上させたアルコール又は酒類、例えば製品中で抗酸化作用をもつ亜硫酸含量が高く、香味安定性に優れ、より品質保持期間の長い酒類を製造することが可能となる。
また、工業用酵母、特にビール等の酒類の製造に用いられる醸造用酵母の全ゲノム塩基配列データベースを基にDNAアレイの提供が可能となる。さらに該DNAアレイを用いた遺伝子の機能解析、酵母の分類、塩基多形の検出などが可能となる。
本発明における工業用酵母(Industrial Yeast)としては、ビール、ワイン、清酒等の醸造用酵母、燃料用アルコールの生産に用いられる酵母等が挙げられる。具体的には、Saccharomyces属等の酵母が挙げられるが、本発明においては、ビール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌス ヴァイヘンステファン(Saccharomyces pastorianus Weihenstephan)34/70、BH84、NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954等が使用できる。またウイスキー酵母、例えばS.cerevisiae NCYC90等、ワイン酵母、例えば協会ぶどう酒用1号、同3号、同4号等、清酒酵母、例えば協会酵母清酒用7号、同9号等も用いることができる。
本発明の遺伝子のスクリーニング方法は、(イ)工業用酵母、特に醸造用酵母のひとつである下面発酵酵母の全ゲノム塩基配列を解析し、(ロ)該ゲノム塩基配列をS.cerevisiaeの全ゲノム塩基配列と比較し、(ハ)S.cerevisiaeの遺伝子がコードするアミノ酸配列と70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする該下面発酵酵母の遺伝子を選択し、更に(ニ)選択された該遺伝子の機能解析を行うことによって該遺伝子が酵母に付与する醸造特性を同定することを特徴とする。
また、本発明のスクリーニング方法によって得られた醸造用酵母に特有の醸造特性に関わる遺伝子を利用して、該遺伝子を酵母で高発現させたり、該遺伝子を遺伝子破壊する等の発現制御を行うことにより、優れた醸造特性を有する酵母を育種することができる。従って、本発明の遺伝子のスクリーニング方法によって得られた遺伝子及びその遺伝子にコードされるペプチド、該遺伝子を利用した工業用酵母の育種方法、該育種方法によって得られた酵母、および該酵母を用いたアルコール又は酒類の製造方法も本発明の範囲内である。
(イ)工業用酵母の全ゲノム塩基配列の決定
工業用酵母の全ゲノム塩基配列の決定には、まず(a)酵母よりゲノムDNAを調製し、(b)ショットガンライブラリー及び(c)コスミドライブラリーを作製し、次いで(d)これらのライブラリークローンを用いて塩基配列決定に用いるDNA断片を調製し、(e)シーケンス反応によってライブラリーDNA断片の塩基配列を決定し、(f)該DNA断片をアセンブリして全ゲノム塩基配列を再構築する過程が含まれる。
(a)〜(f)に用いられる方法は、特に限定されず、公知の手段に準じて行ってよいが、それぞれ好ましい方法について以下に記載する。
(a)全DNAの抽出・精製等の調製は、従来の方法、例えば“Yeast a practical approach(IRL PRESS、6.2.1、p228)”、「生物化学実験法39 酵母分子遺伝学実験法(大嶋泰治編、学会出版センター、p84-85、1996)」等に記載の公知の方法に準じて行われるのが好ましい。以下に具体的な好ましいDNA調製方法の例を示す。
ゲノムDNAの調製用酵母菌体を通常の方法により培養する。培地として、該酵母が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該微生物の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれも用いることができる。例えば、YPD培地(2%(w/w)グルコース、1%(w/w)酵母エキス、2%(w/w)ポリペプトン)等を用いることができる。培養方法としては、約25〜35℃で終夜振とう培養するのがよい。
培養後、遠心分離により培養液から菌体を回収する。得られた菌体を洗浄液で洗浄する。該洗浄液として、例えば、バッファーA(50mM リン酸Na、25mM EDTA、1%(v/v)β-メルカプトエタノール、pH7.5)、等をあげることができる。該洗浄菌体からのゲノムDNAの取得は、ザイモリアーゼおよびSDS等を用いて該菌体の細胞壁を溶解後、フェノール溶液およびフェノール/クロロホルム溶液を用いて蛋白質等を除き、エタノール等を用いてゲノムDNAを沈殿させる一般的なゲノムDNAの調製法に準じて行うことができるが、具体的には以下の方法を例示することができる。
培養して得られた菌体を、バッファーA(50mM リン酸Na、25mM EDTA、1%(v/v)β−メルカプトエタノール、pH7.5)で洗浄した後に再度バッファーAに懸濁し、約5〜10mgのザイモリアーゼ−100T(生化学工業)を添加しておだやかに約25〜40℃、約30分〜2時間振とうする。振とう後、SDSを含むバッファー、例えばバッファーB(0.2M Tris−HCl、80mM EDTA、1%SDS、pH9.5)等を加えて約60〜70℃で約30分静置することにより溶菌させる。溶菌後、氷上で冷却し、5M酢酸カリウムを加えて混和し、さらに約60分間氷上に静置する。得られた溶液を遠心分離(例えば5,000g、10分、15℃)し、回収した上清に等容量のエタノールを添加してDNAを沈殿させ、直ちに遠心分離(例えば5,000g、10分、15℃)を行いDNAを回収する。得られた沈殿物を70%(v/v)エタノールで洗浄後、自然乾燥させた後に、DNA懸濁用溶液、例えばTEバッファー(10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH8.0)等に溶解し、粗ゲノムDNA溶液を得る。得られた粗ゲノムDNA溶液に塩化セシウム及びビスベンズイミドを加えて溶解し、この溶液を超遠心分離(例えば100,000g、17時間、25℃)後、UVライトを照射してDNAバンドを可視化させ、下層のバンドを回収する。回収したDNA溶液から、塩化セシウム溶液で飽和したイソプロパノールを用いてビスベンズイミドを抽出・除去し、回収した水層に4倍容量の0.3M酢酸ナトリウムを加えて混和した後、DNAをエタノール沈殿させ、遠心分離により回収する。回収したDNAをRNase処理後、フェノール/クロロホルム抽出し、回収した水層から再びエタノール沈殿によってDNAを精製する。遠心分離で回収した沈殿を70%(v/v)エタノールで洗浄後、自然乾燥してTEバッファーに溶解し、ゲノムDNA溶液を調製する。
(b)ショットガンライブラリーの作製
上記(a)で調製した酵母のゲノムDNAを用いてゲノムDNAライブラリーを作製する方法としては、“Molecular Cloning, A laboratory Manual, Third Edition (2001)(以下、モレキュラークローニング第3版と略す)”に記載の方法を用いることができるが、特にショットガン法による全塩基配列の決定に用いるのに適したショットガンライブラリーの作製法としては、以下に記載の方法を例示する事ができる。
(a)で調製したゲノムDNAにTEバッファーを加え、Hydroshear(ジンマシーンズ社製)等を用いてゲノムDNAを断片化する。DNAブランティングキット(DNA Blunting kit、宝酒造社製)等を用いて、ゲノム断片の末端を平滑化したのち、アガロース電気泳動により分画し、約1.5〜2.5kbのゲノム断片をゲルから切り出し、該ゲルにDNA溶出用バッファー、例えばMG溶出バッファー(0.5M酢酸アンモニウム、10mM酢酸マグネシウム、1mM EDTA、0.1%SDS)等を加え、約25〜40℃で終夜振とうしてDNAを溶出する。DNA溶出液をフェノール/クロロホルム処理後、エタノール沈殿しゲノムライブラリーインサートを得る。T4リガーゼ(宝酒造社製)を用いて、上記インサート全量と、適当なベクター、例えばpUC18SmaI/BAP(アマシャムバイオサイエンス社製)等とを約10〜20℃で、約20〜50時間ライゲーションする。ライゲーション反応物をエタノール沈殿し、得られた組換えベクターDNAを適量のTEバッファーに溶解する。エレクトロポレーション等の手段により、大腸菌、例えばELECTRO CELL DH5α(宝酒造社製)株に組換えベクターDNAを形質転換する。エレクトロポレーションは、添付実験マニュアルに示された条件で行うのがよい。
ゲノムDNA断片を含有する組換えベクターを導入された形質転換株は、適当な選択培地上で選択される。例えば、ベクターにpUC18SmaI/BAPを用いた場合、形質転換株は約0.01〜0.1mg/mLのアンピシリン、約0.1mg/mLのX−gal、約1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を含むLB平板培地〔1.6%寒天を含むLB培地(10g/L バクトトリプトン、5g/L 酵母エキス、10g/L 塩化ナトリウム、pH7.0)〕上で約30〜37℃終夜培養することにより、白色コロニーを形成するため、選択が容易である。該平板培地上に形成されたコロニーより得られた形質転換株を、約0.1mg/mL アンピシリンを含むLB培地を添加した384穴タイタープレート中で、約30〜37℃終夜静置培養した後、LBと等倍量の50%グリセロール水溶液を加え、攪拌してグリセロールストックとする。グリセロールストックは通常約−80℃で保存が可能である。
(c)コスミドライブラリーの作製
(a)で得られたゲノムDNAを適切な制限酵素、例えばSau3AI(宝酒造社製)等で部分消化する。得られた制限酵素消化DNA断片を、該断片と連結可能な付着末端を生じる制限酵素消化部位を有するコスミドベクター、例えばSuper Cos Iベクター(ストラタジーン社製)を用いる場合は、Sau3AI消化DNA断片を該ベクターのBamHI部位に挿入することが可能である。制限酵素処理及び連結は、添付のプロトコールに従って行うとよい。この方法により得られた連結産物を、Gigapack III Gold(ストラタジーン社製)等を用いてパッケージングを行い、添付実験手順マニュアルに従い、大腸菌、例えばXL1−Blue MR株(ストラタジーン社製)等に導入する。これをアンピシリンを含むLB平板培地に塗抹し、約30〜37℃で終夜培養する。得られたコロニーは、アンピシリン添加LB培地を有する96穴タイタープレートの各ウェル中で、約30〜37℃終夜培養した後、前記LBと等倍量の50%グリセロール水溶液を加え、攪拌してグリセロールストックとする。グリセロールストックは通常約−80℃で保存が可能である。
(d)塩基配列決定用のDNA断片の調製
醸造用酵母のゲノムの全塩基配列は、主に全ゲノムショットガン法を用いて決定する。該方法で塩基配列を決定するDNA断片は、上記(b)で調製したショットガンライブラリーよりPCR法を用いて調製する。具体的には、アンピシリンを含むLB培地を、ウェル当り約50μLずつ分注した384穴タイタープレートに全ゲノムショットガンライブラリー由来クローンをレプリケーター(ジンソリューション社製)等を用いて植菌し、約30〜37℃で終夜静置培養する。該培養液を、PCR用反応液[TaKaRa Ex Taq(宝酒造社製)]を約10μLずつ分注した384穴リアクションプレート(エービージーン社製)に、レプリケーター(ジンソリューション社製)等を用いて移し、GeneAmp PCR System9700 (アプライドバイオシステムズ社製)等を用い、牧野らのプロトコール“DNA Research、5、p1-9(1998)”等を用いてPCRを行い、挿入断片の増幅を行う。
PCR産物精製用キット(アマシャムバイオサイエンス社製)等を用いて余剰プライマー及びヌクレオチドの除去を行い、これをシーケンス反応のテンプレートとして用いる。
(c)のコスミドライブラリーよりのDNA断片は、以下の方法で調製する。アンピシリンを含む適当な培地、例えば2×YT培地(1.6% バクトトリプトン、1%酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム、pH7.0)を約1.0mLずつ分注した96穴プレートの各ウェルに、全コスミドライブラリー由来クローンを植菌し、約30〜37℃で終夜振とう培養を行う。該培養液より、プラスミド自動調製機KURABO PI-1100(倉敷紡績社製)等を用い、倉敷紡績社のプロトコールに従って、コスミドDNAを調製し、これをシーケンス反応のテンプレートとして用いる。
(e)シーケンス反応
シーケンス反応は、市販のシーケンスキット等を用いて行うことができる。以下に、本発明において好ましい例を示す。
DYEnamic ET Terminator Sequencing Kit(アマシャムバイオサイエンス社製)約2μlに対し、ショットガンDNA断片のシーケンス反応には、M13_forプライマー(配列番号:5)およびM13_RVプライマー(配列番号:6)(タカラバイオ社製)等を、コスミドDNAのシーケンス反応には、順方向プライマー、例えばSS-cosF.1(配列番号:7)及び逆方向プライマー、例えばSS‐cosR.1(配列番号:8)等を使用し、上記(d)で調製したPCR産物又はコスミドDNAを混ぜて約8μLのシーケンス反応液とする。プライマーおよびDNA断片の量は各々約1〜4pmoleおよび約50〜200ngである。該反応液を用い、Gene AmpPCR System9700 (アプライドバイオシステムズ社製)で、約50〜70サイクルのダイターミネーターシーケンス反応を行う。サイクルパラメーターは市販のキット、例えばDYEnamic ET Terminator Sequencing Kitを用いる場合には、その付属マニュアルに従う。サンプルの精製はMultiScreen HV plate(ミリポア社製)等を用い、ミリポア社のマニュアルに従って行う。精製された反応物をエタノール沈殿し、得られた沈殿物を乾燥後、約4℃の暗所で保存する。市販のシーケンサー及びアナライザー、例えばMegaBACE1000 Sequencing System(アマシャムバイオサイエンス社製)およびABI PRISM 3700 DNA Analyser(アプライドバイオシステムズ社製)等を用い、付属のマニュアルに従って分析する。
(f)アセンブリ(塩基配列断片を整列して重ね合わせ、連結する作業)によるゲノムDNAの再構築
(e)で得られたDNA断片のシークエンスデータから、ゲノムDNAの再構築を行うことができる。ゲノム塩基配列の再構築の全作業はUNIX(登録商標)プラットフォーム上で行う。例えばベースコールをphred(The University of Washington)、ベクター配列のマスクをCross Match(The University of Washington)、アセンブリをPhrap(The University of Washington)で行う。アセンブリの結果得られるコンティグはグラフィカルエディター、例えばconsed(The University of Washington)を用いて解析する。ベースコールからアセンブリまでの一連の作業はconsedに付属するスクリプトphredPhrapを利用することで、一括して行うことができる。
(ロ)S.cerevisiaeの全ゲノム塩基配列との比較
(イ)で得られたゲノム塩基配列とS.cerevisiaeの全ゲノム塩基配列との比較には、(g)コスミド、ショットガンクローン両端塩基配列、コンティグ塩基配列それぞれのS.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベース作成およびS.cerevisiaeゲノム塩基配列へのマッピングを行う過程が含まれる。
(g)コスミド、ショットガンクローン両端塩基配列、コンティグ塩基配列それぞれのS.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベース作成およびS.cerevisiaeゲノム塩基配列へのマッピング
広く用いられている工業用酵母、例えば下面発酵酵母、例えばS.pastorianus等はS.cerevisiaeとその近縁種(例えばS.bayanus等)との自然交雑体であると考えられている”Int.J.Syst Bacteriol.35、p508-511(1985)”。そこで(e)で得られたコスミドクローンの両端塩基配列を、S.cerevisiaeゲノム塩基配列に対しての相同性検索アルゴリズムによる相同性検索を行うことにより、各塩基配列について、S.cerevisiaeゲノム塩基配列上での相同領域の選択とその同一性を決定し、データベースを作成する。コスミド塩基配列について対応するS.cerevisiaeゲノム塩基配列との%同一性分布図の例を図2に示す。コスミドの塩基配列は、S.cerevisiaeゲノム塩基配列と約94%より高い同一性を示す塩基配列群と、約84%前後の同一性を示す塩基配列群に大別される。従って、94%より高い同一性を示す塩基配列は、S.cerevisiae由来のSc型塩基配列、約84%前後の同一性を示す塩基配列群はS.cerevisiae近縁種ゲノム由来の非Sc型塩基配列とし、Sc型塩基配列又は非Sc型塩基配列を有する遺伝子を、それぞれSc型遺伝子又は非Sc型遺伝子とする。
同様に(e)で得られたショットガンクローン両端塩基配列とS.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベースを作成する。作成した比較データベースで得られた情報を基にコスミドクローン、ショットガンクローンのS.cerevisiaeゲノム塩基配列上へのマッピングを行う(例えば図3参照)。また、(f)で得られたコンティグ塩基配列とS.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベース作成(例えば表1参照)を行い、マッピングを行う。マッピング手法は上記に述べた方法とほぼ同様であるが、コスミドあるいはショットガンクローンのフォワード鎖とリバース鎖が異なるコンティグ内に存在する場合、これらのコンティグ間を連結させる(例えば図4参照)。
(ハ)S.cerevisiaeの遺伝子がコードするアミノ酸配列と70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする下面発酵酵母の遺伝子の選択
S.cerevisiaeの遺伝子がコードするアミノ酸配列と70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする下面発酵酵母の遺伝子を選択する段階には、(h)ORFの同定と機能推定の過程が含まれる。
(h)ORFの同定と機能推定
(f)でアセンブリした塩基配列中のORF(Open Reading Frame)の同定を行う。好ましい実施例を具体的に下記に示す。開始コドンから終始コドンまである一定の長さ、例えば150塩基配列以上の長さをもつ配列に対し、相補鎖も含めて6種類の読み枠についてORFを同定するプログラム、例えばORF finder (http://www.ncbi.nih.gov/gorf/gorf.html)を用い、(f)でアセンブリした塩基配列中に存在するORFの同定を行う。
抽出したORFにコードされたタンパク質の機能推定は、Saccharomyces Genome Database(SGD:http://genome-www.stanford.edu/Saccharomyces/)に登録され、公開されているS.cerevisiaeのORFのアミノ酸配列との相同性検索により行う。
一方で、市販のDNAアレイとPCRを用いて醸造用酵母の染色体の構造解析を行うことができる。
醸造用酵母又はS.cerevisiaeからのゲノムDNAの調製はQIAGEN Genomic Tip 100/G (#10243)およびQIAGEN Genomic DNA buffer set (#19060)を用いて、キットに添付のマニュアルに従って行う。このDNA 10μgをWinzelerらの方法“Science 281 p1194-1197, (1998)”に従ってDNaseI(インビトロジェン社製)で消化し、ターミナルトランスフェラーゼ(ロッシュ社製)でビオチン化して、DNAアレイ(Affymetrix Gene Chip Yeast Genome S98 Array)にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションおよびアレイの輝度の検出はアフィメトリクス社製Gene Chip解析基本システムを用いて行ってよい。
S.cerevisiaeと醸造用酵母のそれぞれから得たプローブの輝度を発現解析用ソフト(マイクロアレイスィート5.0(アフィメトリクス社製))を用いて比較し、輝度の差をS.cerevisiaeを基準としたシグナル比(Signal log ratio)として算出する。次に各プローブのシグナル比を表計算ソフト(マイクロソフトExcel 2000)を用いて各染色体ごとに整列させ、シグナル比を棒グラフで表す(例えば図5参照)。例えば上記の条件では、醸造用酵母ゲノムの遺伝子中でS.cerevisiae由来の遺伝子の塩基配列と100%近い同一性を有する遺伝子(Sc型遺伝子)のみがハイブリダイズするために、醸造用酵母ゲノム中のSc型遺伝子の数が変化することでシグナル比の変化が生じると考えられ、シグナル比の値が大きく変化する箇所では、Sc型塩基配列からなるSc型染色体と非Sc型塩基配列からなる非Sc型染色体(あるいはその逆)とが繋がったキメラ染色体構造の存在が推定されることになる。
このキメラ染色体構造は、ショットガン法により決定した醸造用酵母のゲノム塩基配列を基に、片側がSc型、反対側が非Sc型の塩基配列であるプライマーを設計し、醸造用酵母由来のゲノムDNAをテンプレートとしてPCRを行うことによって確認できる。
PCRは、TaKaRaLA TaqTMと添付のバッファーを用い、添付のマニュアルに従い、TaKaRa PCR Thermal Cycler SPを用いて反応を行う。
PCRの結果、醸造用酵母から、一定の長さのDNA断片が増幅されたことを0.8%アガロース電気泳動で確認する。ここで、PCRのテンプレートとして実験室株S.cerevisiaeのゲノムDNAを用いた場合にはDNA断片の増幅は認められないこととなる。さらに醸造用酵母から増幅されたDNA断片の両端の塩基配列を確認することにより、確かにショットガン法により決定したゲノム塩基配列と一致していることが明らかとなり、その領域内においてSc型染色体と非Sc型染色体の連結(乗換え)が生じ、キメラ染色体が形成されていることを確認できる。
(ニ)遺伝子の機能解析
遺伝子の機能解析の段階には、(i)遺伝子の選定過程、(i’)遺伝子のクローニング過程、(j)遺伝子破壊による遺伝子の機能解析過程、(k)遺伝子高発現による遺伝子の解析過程が含まれる。
(i)遺伝子の選定
機能解析を行う遺伝子の選定方法には例えば上記(h)で得られたORFの機能推定による方法と、以下に述べるDNAアレイを用いる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
DNAアレイを用いる方法としては、遺伝子発現解析により、ある条件で特徴的な発現を示す遺伝子を特定する方法と、DNA−DNAハイブリダイゼーションにより、他の領域に比べて輝度が高い、あるいは低い領域を検出することにより、遺伝子の数や塩基配列の違う遺伝子を特定する方法などが挙げられる。
(i’)遺伝子のクローニング
上記(i)で得られたORFの情報に基づき、該下面発酵酵母の遺伝子を、モレキュラークローニング第3版等に記載の常法により調製し取得することができる。即ち、該遺伝子に隣接する塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、それをプライマーとして、下面発酵酵母から得たゲノムDNAをテンプレートとして用い、通常のPCRクローニング法により該遺伝子を取得することができる。このようにして取得されるDNAの塩基配列として、例えば、配列番号1又は2で表される塩基配列を有するDNAを挙げることができる。
遺伝子を例えばここで遺伝子(1)とすると、遺伝子(1)をコードするDNAあるいは遺伝子(1)をPCR法で増幅するためのプライマーは、上記配列情報に基づき、ポリヌクレオチド合成機を用いて合成することもできる。また遺伝子(1)をコードするDNAには、上記で取得される遺伝子(1)の塩基配列を含むDNAのみならず、該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも含まれる。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、上記で同定された遺伝子(1)の塩基配列を有するDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法又はサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAをいう。具体的には、遺伝子(1)の塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、更に好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、[モレキュラークローニング第3版]、”Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)”、”DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University (1995)”等に記載されている方法に準じて行うことができる。
より具体的には、(g)で得られた比較データベースを用いて、上記遺伝子(1)を含むクローンを検索し、相同性及び位置情報等に基づき、完全長の構造遺伝子を含むDNA断片が挿入されたショットガンクローンを取得することができる。ショットガンライブラリーから選択した該クローンに遺伝子の全長がない場合は、PCR法によって遺伝子の全長をコードするDNA断片を取得する。例えば配列番号:13および配列番号:14等で表される合成DNAプライマー対を用いることによって、上記遺伝子を含むDNA断片が得られる。同様に、S.cerevisiae又は下面発酵酵母のゲノムDNAをテンプレートとして、既に公開されているSGDの情報を元に設計したプライマー対を用いてPCRを行ない、上記下面発酵酵母の非Sc型遺伝子に対応するSc型遺伝子の全長を取得する。プライマーには、例えば配列番号:15および16の合成DNAプライマー対を用いることができ、この組み合わせによってSc型遺伝子を含むDNA断片が得られる。
上記のようにして得られる非Sc型DNA断片又はSc型DNA断片を、TA cloningキット等を用いて適当なベクター、例えばTA cloningキットに添付のpCR2.1-TOPOベクターに挿入し、それぞれのDNA断片を含む組換えベクターTOPO/非Sc型遺伝子(非Sc型DNA断片を有する組換えベクターはTOPO/非Sc型遺伝子とする)、又は組換えベクターTOPO/Sc型遺伝子(Sc型DNA断片を有するベクターは、TOPO/Sc型遺伝子とする)を取得することができる。得られた非Sc型およびSc型DNA断片の塩基配列は、サンガーの方法“F.Sanger,Science,214,p1215,1981”により調べることができる。
(j)遺伝子破壊による遺伝子の機能解析
文献 “Goldstein et al., yeast.15,p1541(1999)”の方法に従い、薬剤耐性マーカーを含むプラスミド(例えばpFA6a (G418r)、pAG25 (nat1))をテンプレートとしたPCRによって遺伝子破壊用DNA断片を作製することができる。PCR用のプライマーとして、非Sc型遺伝子の破壊には、例えば非Sc型SSU1_for(配列番号:17)/非Sc型SSU1_rv(配列番号:18)等を、Sc型遺伝子破壊には例えばScSSU1_for(配列番号:19)/ScSSU1_rv(配列番号:20)等を用いる。非Sc型遺伝子の破壊には、更にプラスミド、例えばpPGAPAUR(AUR1-C)及びプライマー、例えば非Sc型SSU1_for+pGAPAUR(配列番号:21)/非Sc型SSU1_rv+AUR1-C(配列番号22)等を用いることもできる。
上述の方法で作製した遺伝子破壊用DNA断片で醸造用酵母を形質転換する。形質転換は特開平07−303475号公報に記載された方法に従ってよい。また選択薬剤の濃度は、宿主とする酵母の該薬剤への感受性を測定し、適宜決定すればよい。
ここで得られた形質転換体について、それぞれ用いた薬剤耐性マーカーが導入され、かつ各遺伝子が破壊されていることをSouthern解析によって確認できる。具体的には、まず親株および形質転換体から抽出したゲノムDNAを、Sc型又は非Sc型遺伝子を分別するのに適切な制限酵素を用いて消化(例えば37℃、18hrs)し、これを1.5%アガロースゲル電気泳動で展開後、メンブレンにトランスファーする。以下はAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャム社製)のプロトコールに従って、Sc型あるいは非Sc型遺伝子に特異的なプローブとハイブリダイズ(例えば55℃,18hrs)させ、CDP-Starでシグナルを検出する。
親株並びに上記(j)で得られた遺伝子破壊株を用いて発酵試験を行い、それらの発酵特性を比較することにより、(i’)でクローニングされた該遺伝子の機能の確認を行うことができる。親株並びに上記(j)で得られた遺伝子破壊株の培養は、例えば麦汁を含む培地で、以下の条件で行うことができる。
麦汁エキス濃度 約10〜15%
麦汁容量 1〜3L
麦汁溶存酸素濃度 約 8〜10ppm
発酵温度 約15℃
酵母投入量 約8〜12g 湿酵母菌体 / 2L麦汁
発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(OD600)、外観エキス濃度、(i’)でクローニングされた該遺伝子の機能に関わると考えられる物質の濃度の経時変化等を調べる。例えば、(i’)でクローニングされた遺伝子の機能が亜硫酸の排出に関わる場合、発酵液中の亜硫酸濃度の経時変化を測定する。亜硫酸の定量は、酸性下で蒸留により亜硫酸を過酸化水素水に捕集した後、アルカリで滴定することによって行う((財)日本醸造協会 改訂BCOJビール分析法)。
(k)遺伝子高発現による遺伝子の機能解析
(i’)で得られたプラスミドTOPO/非Sc型遺伝子から、適当な制限酵素処理によって、非Sc型遺伝子の全長を含むDNA断片を切り出す。これを同様に制限酵素処理した遺伝子発現用ベクター、例えばpNI-NUT等に挿入し、非Sc型遺伝子を高発現するためのベクター(pYI-非Sc型遺伝子)を構築する。ベクターpNI-NUTは酵母染色体相同組換え部位としてURA3、選択マーカーとしてヌーセオスリシン耐性遺伝子(nat1)およびアンピシリン耐性遺伝子(Ampr)を含んでいる。一方、Sc型遺伝子を高発現するためのベクター(pNI-Sc型遺伝子)は、上記pYI-非Sc型遺伝子の非Sc型遺伝子部分を、対応するSc型遺伝子で置換した構造である。ここで導入した非Sc型遺伝子又はSc型遺伝子の高発現には、例えばグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子(TDH3)のプロモーターおよびターミネーターを用いることができる。
上述の方法で作製した高発現ベクターを用いて、下面発酵酵母を形質転換する。形質転換は特開平07−303475号公報に記載された方法で行い、選択マーカーである抗生物質等を含むYPD平板培地等で選択するのがよい。
高発現の確認はRT-PCR法等によって行ってよい。totalRNAの抽出にはRNeasy Mini Kit(キアゲン社製)等を用い、for total RNA isolation from yeastのマニュアルに従って行うのがよい。Sc型遺伝子の特異的プライマーには、例えばScSSU1_for331(配列番号:23)/ScSSU1_982rv(配列番号:24)、非Sc型遺伝子の特異的プライマーには、例えばnonSc−SSU1_for329(配列番号:25)/nonSc−SSU1_981rv(配列番号:26)等、内部標準には、酵母で構成的に発現している遺伝子、例えばPDA1等を用いることができる。このときの特異的プライマーとしては、例えばPDA1_for1(配列番号:27)/PDA1_730rv(配列番号:28)等を用いることができる。PCR産物を1.2%アガロース電気泳動で展開後、エチジウムブロマイド溶液で染色し、各遺伝子のシグナル値を内部標準として用いた遺伝子、例えばPDA1等のシグナル値で標準化して親株のそれと比較する。こうして確認された高発現株をSc型遺伝子高発現株、非Sc型遺伝子高発現株とすることができる。
親株並びに上記(k)で得られた遺伝子高発現株を用いて発酵試験を行い、それらの発酵特性を比較することにより、(i’)でクローニングされた該遺伝子の機能の確認を行うことができる。親株並びに上記(k)で得られた遺伝子高発現株の培養は、(j)で記載した条件で行うことができる。
(j)と同様に、発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(OD600)、外観エキス濃度、(i’)でクローニングされた遺伝子の機能に関わる物質の濃度の経時変化等を調べる。
本発明のスクリーニング方法によって得られるDNAとしては、上記で取得される非Sc型遺伝子の塩基配列を含むDNAおよび該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを挙げることができる。
本発明のスクリーニング方法によって得られるDNAとは、一本鎖および二本鎖DNAを含むが、これらに限定されるものではない。上記で取得される非Sc型遺伝子の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAには、該遺伝子がコードするタンパク質のコドンの縮重変異体が含まれる。縮重変異体とは、塩基配列では本発明で選択される非Sc型遺伝子の塩基配列と異なっているが、コドンの縮重により同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド断片をいう。
具体的な例としては、配列番号:1又は2に示される塩基配列を有するDNA、該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA等をあげることができる。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、上記で同定された非Sc型遺伝子の塩基配列を有するDNA断片をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。
ハイブリダイゼーションは、「モレキュラークローニング第3版」、「カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー」、“DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University(1995)”等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、FASTA、BLAST、Smith-Waterman“Meth.Enzym.,164,p765(1988)”等の相同性検索ソフトウェアにより、デフォルト(初期設定)のパラメータを用いて計算したときに、配列番号:1又は2に示される塩基配列と少なくとも60%以上の同一性を有するDNA、好ましくは80%以上の同一性を有するDNA、更に好ましくは95%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。
また、本発明のスクリーニング方法によって得られるDNAとして、配列番号:3又は4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNAまたは該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAをあげることができる。
本発明のスクリーニング方法によって得られるDNAによりコードされるポリペプチドとしては、上記で取得されるORFの塩基配列を含むDNAおよび該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチド又は配列番号:3又は4に表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられる。
さらに、該ポリペプチドの有するアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ該ポリペプチドの活性と実質的に同一の活性を有するポリペプチドも本発明に含まれる。該ポリペプチドの活性と実質的に同一の活性とは、欠失及び/又は置換及び/又は付加する前のポリペプチドが有する固有の機能あるいは酵素活性などに代表される活性と同一の活性を意味している。該ポリペプチドは、「モレキュラークローニング第3版」、「カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー」、“Nuc.Acids.Res.,10,6487(1982)”、“Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409(1982)”、“Gene,34,315(1985)”、“Nuc.Acids.Res.,13,4431(1985)”、“Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488(1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。例えば、配列番号:3又は4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。欠失及び/又は置換及び/又は付加されるアミノ酸残基の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失及び/又は置換及び/又は付加できる程度の数であり、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、更に好ましくは1〜5個である。
本発明のポリペプチドの有するアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失及び/又は置換及び/又は付加があることを意味し、欠失及び/又は置換及び/又は付加が同時に生じてもよく、置換及び/又は付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸残基としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システイン等があげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニンB群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸C群:アスパラギン、グルタミンD群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリンF群:セリン、スレオニン、ホモセリンG群:フェニルアラニン、チロシンまた、得られる変異ポリペプチドが、変異前のポリペプチドの有する活性と実質的に同一の活性を有するためには、変異前のポリペプチドの有するアミノ酸配列と、BLASTやFASTA等の解析ソフトウェアで、デフォルト(初期設定)のパラメータを用いて計算した時に、少なくとも60%以上、通常は80%以上、特に95%以上の相同性を有していることが好ましい。
また、本発明のポリペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセル−ベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
本発明を用いることにより、工業用酵母のゲノムの全塩基配列を決定し、工業用酵母の有用遺伝子を同定することができ、更に該遺伝子の機能の推定が可能となる。工業用酵母の遺伝子は産業上有用な遺伝子である場合が多く、その遺伝子を推定された機能に基づいて分類することで、その酵母の特徴が明らかとなり、工業用酵母を育種する上で貴重な情報を得ることができる。例えば工業用酵母が醸造用酵母であるならば、酒類の製造におけるその生産性の向上や香味の改善に関わる遺伝子を同定し、その遺伝子が生産性の向上や香味の改善等にマイナスとなるのであればその遺伝子を破壊して発現を制御したり、或いはアンチセンス法若しくはRNAi法(例えば非特許文献10参照)によって該遺伝子を発現させないか、若しくは発現を抑制することによって、醸造特性の優れた酵母を育種することができる。また該遺伝子が生産性の向上や香味の改善等にプラスとなるのであればその遺伝子を酵母で高発現させたりして、産業上有用な醸造特性の優れた醸造用酵母を育種することができる。
本発明のスクリーニング方法で得られる遺伝子を利用して、有用酵母を育種する例を以下に示す。
ビール醸造において、製品中の亜硫酸含有量を高めれば、香味安定性等に優れた製品を製造することができることは上述した通りである。よって、本発明のスクリーニング方法によって得られる遺伝子が亜硫酸の生成や排出機能に関わる遺伝子であれば、該遺伝子を導入した形質転換体酵母を培養し、該遺伝子を形質転換体酵母で発現させた場合、もろみ中の亜硫酸濃度が上昇して、香味安定性等に優れた製品を製造することができる。
下面発酵酵母は、細胞外から取り込まれた硫酸イオン(SO 2−)を還元し、亜硫酸イオン(SO 2−)を生成することが知られている。ところが、亜硫酸はエネルギー代謝経路においてグリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼを阻害し、酵母自身の細胞内ATP濃度を低下させてしまうため、酵母は過剰量の亜硫酸が細胞内に蓄積しないよう、細胞外へと亜硫酸を排出する機能を有する。ここで亜硫酸感受性変異を相補する遺伝子として単離されたのが、例えばSSU1遺伝子である(例えば非特許文献11参照)。このSSU1遺伝子産物は、458残基のアミノ酸残基からなり、構造解析の結果から、9〜10ヶ所の膜貫通領域をもつトランスポーターであることが推定されており(例えば非特許文献12参照) 、更にSSU1遺伝子高発現株を用いた実験によって、SSU1遺伝子産物が、亜硫酸の排出に関与していることが既に証明されている(例えば非特許文献13参照)。
一般に下面発酵酵母は亜硫酸生成能が高いのに対して、上面発酵酵母は殆ど亜硫酸を生成しない。本発明のスクリーニング方法を用いることによって、例えばSSU1遺伝子について、下面発酵酵母および上面発酵酵母が共にもつSc型SSU1遺伝子の他、下面発酵酵母由来の非Sc型SSU1遺伝子を選択できる。また同様にして、亜硫酸の生成に関与するタンパク質をコードするMET14遺伝子についても、下面発酵酵母由来の非Sc型MET14を選択できる。下面発酵酵母特有の高亜硫酸生成能は、例えばこの非Sc型SSU1、非Sc型MET14の機能が大いに関与しており、より高い亜硫酸生成能を有する酵母の育種を目指すためには、この非Sc型SSU1遺伝子、非Sc型MET14遺伝子等を強化することが効果的である。
これら非Sc型SSU1遺伝子及び非Sc型MET14を強化した酵母の育種方法は、具体的に実施例で述べる。
本発明のスクリーニング法で選択された醸造用酵母の遺伝子を宿主酵母に導入する際、宿主として用いられる酵母としては、醸造用に使用可能な酵母であれば特に限定されないが、現在醸造用酵母として広く用いられている任意の酵母、例えばBH84、NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954等のビール酵母が使用できる。さらに、ウイスキー酵母(例えばS.cerevisiae NCYC90)、ワイン酵母(例えば協会ぶどう酒用1号、3号、4号等)、清酒酵母(例えば協会酵母清酒用7号、9号等)も同様に使用できる。
上記宿主酵母に遺伝子を導入する際に用いるベクターは、酵母で導入された遺伝子を発現できるベクターであれば特に限定されず、例えば多コピー型プラスミド(YEp型)、単コピー型プラスミド(YCp型)、染色体DNA組み込み型プラスミド(YIp型)のいずれもが利用可能である。例えば、YEp型ベクターとしてはYEp51(J.R.Broach et al., Experimental Manipulation of Gene Expression, Academic Press, New York, 83,1983)等、YCp型ベクターとしてはYCp50(M.D.Rose et al.,Gene,60,237,1987)等、YIp型ベクターとしてはYIp5(K.Struhl et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USP,76,1035,1979)等が挙げられる。これらのプラスミドは市販されており、容易に入手することができる。
上記ベクターは、酵母に導入された遺伝子の発現を調製するその他の配列、具体的には、プロモーター、オペレーター、エンハンサー、サイレンサー、リボソーム結合配列、ターミネーター等を有していてもよい。上記ベクター内において、醸造用酵母の遺伝子を発酵初期から構成的に発現させるためのプロモーター及びターミネーターは、醸造用酵母中で機能し、発酵液中の亜硫酸濃度に非依存的であれば、特に限定されず、任意の組み合わせで用いてよい。例えばプロモーターとしては、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ (TDH3) 遺伝子のプロモーター、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK1) 遺伝子のプロモーター等が利用可能である。これらのプロモーターは公知であり、例えばPGK1遺伝子は公知文献“M.F.Tuite et al.,EMBO J.,1,p603(1982)”等に詳細に記載されており、容易に入手することができる。
酵母に導入された遺伝子の発現に必要な上記のその他の配列は、本発明のスクリーニング方法によって得られるDNAがこれらを含む限り、特にベクター側に特に備わっていなくてもよい。そのようなその他の配列が該DNAに含まれない場合には、別にその他の配列を調製し、作動可能な状態に該DNAに連結することが好ましい。あるいは、より高い発現量もしくは特異的な発現調節を期待する場合にも、それに見合ったその他の配列を作動可能な状態に該DNAに連結するのが好ましい。
上記ベクターを宿主酵母に形質転換する方法は、公知の手段に従って行ってよい。例えば、以下の方法等を用いることができる。例えば、エレクトロポレーション法“Meth. Enzym.,194,p182(1990)”、スフェロプラスト法“Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75, p1929(1978)”、酢酸リチウム法“J.Bacteriology,153,p163(1983)”、“Proc.Natl.Acad.Sci. USA,75,p1929(1978)”記載の方法等をあげることができる。
より具体的には、宿主酵母を標準酵母栄養培地(例えばYEPD培地“Genetic Engineering,vol.1,Plenum Press, New York,117(1979)”等)で、OD600nmの値が1〜6となるように培養する。この培養酵母を遠心分離して集め、洗浄し、濃度約1〜2Mのアルカリ金属イオン、好ましくはリチウムイオンで前処理する。この細胞を約30℃で、約60分間静置した後、導入するDNA(約1〜20μg)とともに約30℃で、約60分間静置する。ポリエチレングリコール、好ましくは約4,000ダルトンのポリエチレングリコールを、最終濃度が約20%〜50%となるように加える。約30℃で、約30分間静置した後、この細胞を約42℃で約5分間加熱処理する。好ましくは、この細胞懸濁液を標準酵母栄養培地で洗浄し、所定量の新鮮な標準酵母栄養培地に入れて、約30℃で約60分間静置する。その後、選択マーカーとして用いる抗生物質等を含む標準寒天培地上に植えつけ、形質転換体を取得する。
その他、一般的なクローニング技術に関しては、「モレキュラークローニング第3版」、“Methods in Yeast Genitics、A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, NY)”等を参照した。
形質転換の際に用いる選択マーカーとしては、醸造用酵母の場合は栄養要求性マーカーが利用できないので、G418耐性遺伝子(G418r)、銅耐性遺伝子(CUP1)“M.Marin et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,p337,1984”、セルレニン耐性遺伝子(fas2m,PDR4)(「猪腰淳嗣ら,生化学,64,p660,1992」、“M.Hussain et al., Gene,101,p149,1991”)等が利用可能である。
本発明で育種された醸造用酵母は、酵母の増殖や発酵能においては親株を用いた場合と変化はない。したがって、原料、製造設備、製造管理等は従来法と全く同一でよい。このことは本発明の重要な特徴である。しかしながら、所望により、発酵時間などの条件を種々変化させてよいことは言うまでもない。例えば、亜硫酸排出能が増強された醸造用酵母を育種し、この酵母を用いて酒類を製造する場合は、上記のごとく排出される亜硫酸の含量のみが変化し、酵母の増殖や発酵能においては親株を用いた場合と変化はない。したがって、原料、製造設備、製造管理等は従来法と全く同一でよく、亜硫酸含量が増加し、香味の改善が得られた酒類を製造するためのコストの増加はない。
(ホ)DNAアレイの作製
上記(f)、(h)で取得される本発明のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを用いて、DNAアレイを作製することができる。具体的には、上記(f)で取得される塩基配列からなるポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および/またはこれらポリヌクレオチドの有する塩基配列中の連続する少なくとも10〜200塩基からなる配列を有するポリヌクレオチド、並びに上記(h)で取得されるORFをコードするアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、さらに上記(h)で取得されるORF間のDNA塩基配列である遺伝子間塩基配列からなるポリヌクレオチドおよび/またはこれらポリヌクレオチドの有する塩基配列中の連続する少なくとも10〜200塩基からなる配列を有するポリヌクレオチドの、1以上好ましくは2以上を固体支持体に固着したDNAアレイをあげることができる。
本発明においてDNAアレイとは、ポリヌクレオチドアレイ、DNAチップ、DNAマクロアレイ、DNAアレイ等と呼ばれるものを含み、固体支持体の表面に1又は複数のポリヌクレオチドまたは該断片を固着させたものをいう。固体支持体に固着させるポリヌクレオチドあるいはオリゴヌクレオチドとしては、上記(f)、(h)で取得される本発明のポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを用いることができる。固体支持体へポリヌクレオチドあるいはオリゴヌクレオチドを高密度に固着することにより、後述の解析を効率よく実施可能であるが、必ずしも高密度である必要はない。高密度に固着するためのアレイヤーロボット等の装置は、宝酒造社(GMS417 Arrayer)等より市販されており、該市販品を用いることができる。また、光リソグラフ法等により本発明のオリゴヌクレオチドを固体支持体上で直接合成してもよい〔Lipshutz et al.,Nat.Genet.,21,20-24
(1999)〕。通常、合成するオリゴヌクレオチドの長さは、10〜30塩基であるが、これに限定されるものではない。DNAアレイの作製方法は特に限定されず、公知の手段に準じて行ってよいが、それぞれ好ましい方法について以下に記載する。
(l)DNAアレイの製造工程
(l)−1 基板
本発明のDNAアレイに用いる基板の材料としては、オリゴヌクレオチドを安定して固定化することができるものであればよい。例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。基板の形態も特に限定されるものではないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。
(l)−2 オリゴヌクレオチドの選択
本発明にかかわるDNAアレイの基板表面に固定されるオリゴヌクレオチドは例えば、上記(h)で推測したORFのDNA塩基配列、又は上記(h)から推測した遺伝子間領域のDNA塩基配列情報に基づき選択することができる。特定のプローブの作製は、例えばGeneChip技術(アフィメトリクス社)を用いて、全ゲノム塩基配列に対してユニークな(PM;Perfect Match)プローブを選択することができる。具体的なプローブとしては例えば工業用酵母のゲノム全塩基配列中のORFにある10〜30塩基からなるオリゴヌクレオチドで、当該塩基配列が該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しないオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドの塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及びこれらのオリゴヌレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズする10〜30塩基のオリゴヌクレオチドが使用できる。また、工業用酵母のゲノム全塩基配列中のORF以外に存在する非翻訳領域にある10〜30塩基からなる折後ヌクレオチドで、当該塩基配列が該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しないオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドの塩基配列に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及びこれらのオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが使用できる。1オリゴヌクレオチドあたりの塩基数は特に限定はされないが、10から30塩基が望ましい。解析において広範な定量性と再現性が得られるように1領域あたり11−50プローブを選択することが出来る。また、2種類の近縁種ゲノムを有する例えば下面発酵酵母の塩基配列において、塩基配列が類似しているため、解析における非特異的なハイブリダイゼーションの度合いを定量するためにPMプローブの1塩基、例えば中央の塩基のみ異なるミスマッチ(MM;MisMatch)プローブも設計することができる。
(l)−3 オリゴヌクレオチドの固定化
オリゴヌクレオチドの基板表面への固定方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば上記より選択した全PMおよびMMプローブをGeneChip技術を用いて基板上に集積合成することによりDNAアレイを作製することが出来る。
次にDNAアレイを用いる例として、遺伝子発現解析により、ある条件で特徴的な発現を示す遺伝子を特定する方法、工業用酵母の分類、塩基多型の検出、及びこれらを用いた機能解析を行なう遺伝子の選出について説明するが、DNAアレイを用いた遺伝子の解析はこれらの方法に限るものではなく、それぞれの方法はここに示した例に限るものではない。
(m)遺伝子発現解析
(l)で作製した本発明のDNAアレイを用いることにより、例えば工業用酵母の発現遺伝子の変動を解析することができる。例えば、培地の成分変化や、あるいは環境変化に応じて発現量が増大または減少する遺伝子(群)を同定することができる。一方で、工業用酵母に特徴的な発現挙動を示す遺伝子(群)を同定することも可能であるが、これに限定されるものではない。
遺伝子発現解析には工業用酵母の培養、培養した酵母からのmRNAの調製、標識cRNA(あるいはcDNA)の調製、ハイブリダイゼーション、データ解析の工程からなる。以下例を示して各工程を説明するが、この例に限定されるものではない。
(m)−1 種々の条件での培養
発現解析の対象となる工業用酵母は目的に応じて種々の環境で培養する。例えば培養中の成分変化に応答する遺伝子マーカーの同定を行う場合には以下の方法にて培養することができる。
工業用酵母を適当な培地、例えばLZMM+40μM ZnSO4培地に植菌し、30℃で終夜振盪培養を行う。LZMM培地は、0.17%アミノ酸を含まないイーストナイトロジェンベース(ディフコ社製)、0.5%硫酸アンモニウム、20mM クエン酸ナトリウム(pH4.2)、125μM塩化マンガン、10μM塩化鉄、2%マルトース、10mM EDTA(pH8.0)からなる。酵母菌体を回収し、適当量の滅菌水で3回洗浄し、適当量の酵母菌体、例えばOD600nmの吸光度が0.25になるように酵母菌体を500 mlの1)亜鉛枯渇培地、例えばLZMM培地、2)LZMM+40μM ZnSO4培地、3)酸化ストレス培地、例えばLZMM+40μM ZnSO4+過酸化水素培地(上記LZMM+40μM ZnSO4培地に過酸化水素を2mMになるように添加した培地)、4)炭素源飢餓培地、例えばLZMM+40μM ZnSO4-Mal培地(上記LZMM+40μM ZnSO4培地からマルトースを除いた培地)に植菌し30℃で振盪 培養を行う。適当時間培養後、RNA調製のためにそれぞれの酵母培養液を適当量、例えば50mLずつ回収する。
また、ビール試験発酵中の酵母菌体を回収し、以下の実験に供することも可能である。
(m)−2 mRNAの調製
トータルRNAの調製は市販のキット、例えばRNeasy(登録商標)ミニキット(キアゲン社製)を用いて添付のマニュアルに従って行なうことができる。
それぞれのトータルRNAからのポリAメッセンジャーRNA(of Poly(A)+ mRNA)の調製は、市販のキット、例えばオリゴテックスダイレクトmRNAキット(キアゲン社製)を用いて添付のマニュアルに従って行なうことができる。
(m)−3 標識cRNAの調製
標識cRNAの合成は市販のキット、例えばバイオアレイハイイールドRNAトランスクリプトラベリングキット(アフィメトリクス社製)を用いて添付のマニュアルに従って行うことができる。標識色素としては例えばビオチンを使用することができる。
(m)−4ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションカクテルを調製するには、例えば、5μgのビオチンラベルされたcRNA、1.7μlの3nMコントロールオリゴヌクレオチドB2(アフィメトリクス社製)、5μlの20倍濃度 ユーカリオティックハイブリダイゼーションコントロール(アフィメトリクス社製),1μlの10mg/mLサケ精子DNA(アフィメトリクス社製),1μlの50mg/mLアセチル化牛血清アルブミン(アフィメトリクス社製),50μlの2倍濃度ハイブリダイゼーション溶液(アフィメトリクス社製)を混ぜ、全量100μlになるよう滅菌水(アフィメトリクス社製)を加えて混ぜた後、市販の装置、例えば、ハイブリダイゼーションオーブン(アフィメトリクス社製)を用いて、添付のマニュアルに従い、DNAアレイにハイブリダイゼーションを行う。適当な時間、例えば16時間のハイブリダイゼーション後、ハイブリダイゼーションカクテルをDNAアレイから除去し、市販の装置、例えば、ジーンチップフルディクスステーション(アフィメトリクス社製)を用いて、DNAアレイを付属のマニュアルに従い、洗浄後、適当な染色溶液、例えばストレプトアビジン−フィコエリトリン溶液で染色する。ストレプトアビジン−フィコエリトリン溶液は、300μlの2倍濃縮メス染色溶液(アフィメトリクス社製)、24μlの50mg/mLアセチル化牛血清アルブミン、6μlの1mg/mLストレプトアビジン−フィコエリトリン(アフィメトリクス社製),及び270μlの滅菌水から成る。
(m)−5データ解析
固体支持体上のDNAアレイについての解析・定量には、データの解析は市販の解析ソフト、例えば、ジーンチップオペレーティングシステム(GCOS; GeneChip Operating Software 1.0 アフィメトリクス社製)を用いて行うことができる。遺伝子発現量の解析には、市販の解析ソフトウェア(例えばGeneSpring;シリコンジェネティクス社製、ImaGene;富士フイルム社製、Array Gauge;アマシャムファルマシアバイオテク社製、ImageQuant等)を使用することができる。遺伝子発現量の解析の結果、ある条件で特徴的な発現を示す遺伝子群を特定することができ、これらの遺伝子群を機能解析のターゲットとして選出することができる。さらに、機能解析の結果をもとに、醸造条件を最適化することができる。
(n)工業用酵母の分類
本発明のDNAアレイを用いた工業用酵母の分類は例えば以下の方法にて行なうことができる。酵母からのゲノムDNAの調製、およびアレイへのハイブリダイゼーションは前述の方法を用いて行ってよい。アレイの輝度の検出は上述のGCOSを用いて行うことができる。本発明のDNAアレイのSc型、非Sc型プローブにハイブリダイズする割合を算出することによって、被検株と全塩基配列を決定した工業用酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌス ヴァイヘンステファン34/70株との相同性を算出することができ、その値によって工業用酵母を分類することができる。
(o)塩基多型検出
DNA−DNAハイブリダイゼーションの結果を詳細に解析することによって塩基多型を検出することも可能である。塩基多型検出を検出する目的で使用する本発明のDNAアレイのプローブは、全塩基配列を決定した工業用酵母の配列と同じ配列のオリゴヌクレオチド(PMプローブ)と、例えば中央の位置の塩基が異なる配列のオリゴヌクレオチド(MMプローブ)を用いる。この本発明のDNAアレイを用いることにより、PMプローブよりもMMプローブにより強くハイブリダイズしている遺伝子については塩基配列が34/70株とは異なる可能性が高いと判断できる。被検株のDNAを本DNAアレイにハイブリダイズさせた結果から、MMプローブの輝度が、PMプローブの輝度の、例えば5倍以上のものを抽出すれば、塩基多型を検出することができる。
(p)機能解析を行なう遺伝子の選出
本発明のDNAアレイを用いて、機能解析を行う遺伝子を選出することができる。酵母からのゲノムDNAの調製、およびDNAアレイへのハイブリダイゼーション、DNAアレイの輝度の検出は前述の方法を用いて行ってよい。本発明のDNAアレイのプローブの中で被検株とハイブリダイズしなかった遺伝子は、被検株においては遺伝子が欠失しているか、塩基配列が全塩基配列を決定した34/70株とは異なる可能性が高いと判断できる。また、他のプローブに比べて高い輝度を示した遺伝子は被検株に於いてコピー数が高くなっている可能性が高いと判断できる。このような違いが醸造特性に影響を及ぼしている可能性が考えられ、これらの遺伝子を機能解析のターゲットとして選出することができる。
また、塩基多型検出に用いた本発明のDNAアレイを用いることにより、上述のPMプローブよりもMMプローブにより強くハイブリダイズしている遺伝子を抽出し、塩基多型を検出することによって、機能解析を行う遺伝子を選定することも可能である。
〔実施例〕
以下、実施例によって本発明の詳細を述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
サッカロマイセス パストリアヌス ヴァイヘンステファン34/70株(Saccharomyces pastorianus Weihenstephan34/70、以降34/70株と略す)のゲノムDNAの調製
ゲノムDNAの調製は“Yeast a practical approach(IRL PRESS)6.2.1(p228-229)”に記載された方法を一部改変して行った。34/70株を200mLのYPD培地(2%グルコース、1%酵母エキス、2%ポリペプトン)に接種し、培養液の660nmにおける吸光度が4になるまで30℃で振とう培養した後、遠心分離により菌体を回収した。得られた菌体を25mLのバッファーA(50mMリン酸ナトリウム、25mM EDTA、1%(v/v)β-メルカプトエタノール、pH7.5)で洗浄した後、再度25mLのバッファーAに懸濁し、7mgのザイモリアーゼ-100T(生化学工業)を添加して37℃、60分間穏やかに振とうした。25mLのバッファーB(0.2M Tris-HCl、80mM EDTA、1% SDS、(pH9.5))を加えて65℃、30分間静置した後、氷上で冷却し、12mLの5M酢酸カリウムを加えて混和してさらに60分間氷上に静置した。得られた溶液を5,000g、10分、15℃で遠心分離し、回収した上清に等容量のエタノールを添加してDNAを沈殿させ、直ちに5,000g、10分、15℃で遠心分離して回収した。得られた沈殿物を70%(v/v)エタノールで洗浄後、自然乾燥させた後に5mLのTEバッファー(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH8.0)に溶解し、粗ゲノムDNA溶液を得た。3.5mLの粗ゲノムDNA溶液に4.06gの塩化セシウム、840μgのビスベンズイミド(Hoechst33258)を加えて溶解し、100,000g、17時間、25℃で遠心分離後、UVライトを照射してDNAバンドを可視化させ、下層のバンドを回収した。回収したDNA溶液は塩化セシウム溶液で飽和したイソプロパノールで抽出してビスベンズイミド(Hoechst33258)を除き、回収した水層に4倍容量の0.3M酢酸ナトリウムを加えて混和した後、3倍容量のエタノールを添加してDNAを沈殿させ、遠心分離により回収した。回収したDNAは75μg/mLのRNaseを含むTEバッファーに溶解し、37℃で5分間保持した後、フェノール/クロロホルム抽出を3回繰り返し、回収した水層から再びエタノール沈殿によって精製した。遠心分離で回収した沈殿を70%(v/v)エタノールで洗浄後に自然乾燥し、TEバッファーに溶解してゲノムDNA溶液を調製した。
ショットガンライブラリーの作製
実施例1で調製した34/70株のゲノム溶液を、TEバッファーを用いて1mg/mLの濃度に調製し、その0.1mLをHydroshear(ジンマシーンズ社製、speed6、cycle20)で処理することにより、ゲノムDNAを断片化した。DNAブランティングキット(DNA Blunting kit、宝酒造社製)を用いて、ゲノム断片の末端を平滑化したのち、0.8%アガロース電気泳動により分画し、1.5〜2.5kbのゲノム断片をゲルから切り出しDNAを溶出した。DNA溶出液をフェノール/クロロホルム処理後、エタノール沈殿しゲノムライブラリーインサートを得た。T4リガーゼ(宝酒造社製)を用いて、上記インサート全量とpUC18 SmaI/BAP(アマシャムバイオサイエンス社製)0.5μgとを15℃で、15時間ライゲーションした。
ライゲーション反応物をエタノール沈殿し、10μLのTEバッファーに溶解した。大腸菌ELECTRO CELL DH5α(宝酒造社製)40μLに対して1μLのライゲーション溶液を、添付実験マニュアルに示された条件で、エレクトロポレーションにより導入した。これを0.1mg/mLアンピシリン、0.1mg/mL X−gal、1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を含むLB平板培地〔寒天を1.6%含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、1% 塩化ナトリウム、pH7.0)〕に塗布し、37℃終夜培養した。
該平板培地上に形成されたコロニーより得られた形質転換体を、0.1mg/mLアンピシリンを含むLB培地50μLを添加した384穴タイタープレート中で、37℃終夜静置培養した後、50%グリセロール水溶液を50μL加え、攪拌してグリセロールストックとして用いた。
コスミドライブラリーの作製
実施例1で得られた34/70株ゲノムDNA約0.1mgをSau3AI(宝酒造社製)で部分消化した。この断片のSuper Cos Iベクター(ストラタジーン社製)のBamHI部位への挿入は、マニュアルに従って行った。この方法により得られた連結産物は、Gigapack III Gold(ストラタジーン社製)を用いてパッケージングを行い、マニュアルに従い、大腸菌XL1−BlueMR株(ストラタジーン社製)株に導入した。これをアンピシリン0.1mg/mLを含むLB平板培地に塗布し、37℃で終夜培養した。得られたコロニーは、96穴タイタープレートで0.1mg/mLアンピシリンを含むLB培地(各ウェル50μL)で37℃終夜培養した後、50%グリセロール水溶液50μLを加え、攪拌してグリセロールストックとした。
塩基配列の決定
(4−1)DNA断片の調製
34/70株ゲノムの全塩基配列は、主に全ゲノムショットガン法を用いて決定した。該方法で塩基配列を決定するDNA断片は、上記実施例2で調製したショットガンライブラリーよりPCR法を用いて調製した。具体的には、0.1mg/mLアンピシリンを含むLB培地をウェルあたり50μLずつ分注した384穴タイタープレートに全ゲノムショットガンライブラリー由来クローンをレプリケーター(ジンソリューション社製)で植菌し、37℃で終夜静置培養を行った。該培養液を、10μLのPCR用反応液[TaKaRa Ex Taq(宝酒造社製)]を含む384穴リアクションプレート(エービージーン社製)に、レプリケーター(ジンソリューション社製)を用いて移し、GeneAmp PCR System9700 (アプライドバイオシステムズ社製)を用い、牧野らのプロトコール“DNA Research,5,p1-9 (1998)”に従ってPCRを行い、挿入断片の増幅を行った。プライマーにはM13_forプライマー(配列番号:5)およびM13_rvプライマー(配列番号:6)を使用した。その後、PCR産物精製用キット(アマシャムバイオサイエンス社製)により余剰プライマーおよびヌクレオチドの除去を行い、これをシーケンス反応のテンプレートとして用いた。
上記実施例3のコスミドライブラリーからのDNA断片は以下の方法で調製した。アンピシリン50μg/mLを含む2×YT培地(1.6%バクトトリプトン、1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.0)を1.0mLずつ分注した96穴プレートの各ウェルに、全コスミドライブラリー由来クローンを植菌し、30℃で終夜振とう培養を行った。該培養液より、プラスミド自動調製機KURABO PI-1100(倉敷紡績社製)を用い、倉敷紡績社のマニュアルに従って、コスミドDNAを調製し、これをシーケンス反応のテンプレートとして用いた。
(4−2)シーケンス反応
2μLのDYEnamic ET Terminator Sequencing Kit(アマシャムバイオサイエンス社製)に対し、ショットガンDNA断片のシーケンス反応用プライマー対としてM13_for(配列番号:5)/M13_rv(配列番号:6)“DNA Research, 5, p1-9 (1998)”を、コスミドDNAのシーケンス反応プライマー対としてSS-cosF.1(配列番号:7)/SS-cosR.1(配列番号:8)を使用し、上記(4−1)で調製したPCR産物又はコスミドDNAを混ぜて8μLのシーケンス反応液とした。プライマーおよびDNA断片の量は各々3.2pmolおよび50〜200ngである。該反応液を用い、GeneAmp PCR System9700で60サイクルのダイターミネーターシーケンス反応を行った。サイクルパラメーターはDYEnamic ET Terminator Sequencing Kitに付属するマニュアルに従った。サンプルの精製はMultiScreen HV plate(ミリポア社製)を用い、ミリポア社のマニュアルに従って行った。精製された反応物は4℃の暗所で保存した。MegaBACE1000 Sequencing System(アマシャムバイオサイエンス社製)およびABI PRISM 3700 DNA Analyser(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、付属のマニュアルに従って分析した。MegaBACE1000 Sequencing Systemで得られた332,592配列と3700 DNA Analyserで得られた13,461配列のデータは、サーバーEnterprise6500(サンマイクロシステムズ社製)へ転送し、保存した。346,053配列分のデータはゲノムサイズの約7倍に相当した。
尚、実施例で用いるPCR用プライマーの一覧を表3に示す。
アセンブリ(塩基配列断片を整列して重ね合わせ、連結する作業)
上記実施例4で得られた346,053配列のDNA断片のシークエンスデータからゲノム塩基配列の再構築の全作業はUNIX(登録商標)プラットフォーム上で行った。ベースコールをphred(ワシントン大学)、ベクター配列のマスクをCross_Match(ワシントン大学)、アセンブリをPhrap(ワシントン大学)で行った。アセンブリの結果得られるコンティグはグラフィカルエディターconsed(ワシントン大学)を用いて解析した。ベースコールからアセンブリまでの一連の作業はconsedに付属するスクリプトphredPhrapを利用することで一括して行った。
S.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベース作成
S. pastorianusは、S.cerevisiaeとその近縁種との自然交雑体であると考えられている“Int.J.Syst Bacteriol.,35,p508-511(1985)”。そこで、(4−2)で得られたコスミドDNAクローンの両端塩基配列(10,044塩基配列)をS.cerevisiaeゲノム塩基配列に対しての相同性検索アルゴリズムによる相同性検索を行うことにより、各塩基配列について、S.cerevisiaeゲノム塩基配列上での相同領域の特定とその同一性を決定し、データベースを作成した。コスミド塩基配列について対応するS.cerevisiaeゲノム塩基配列との同一性分布図を図2に示す。コスミドの塩基配列は、S.cerevisiaeゲノム塩基配列と94%より高い同一性を示す塩基配列群と約84%前後の同一性を示す塩基配列群に大別された。94%より高い同一性を示す塩基配列群はSc型塩基配列、約84%前後の同一性を示す塩基配列群は非Sc型塩基配列とした。同様に(4−2)で得られたショットガンクローンおよびコスミドクローン両端塩基配列とS.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベースを作成した。表1は、3,648コスミドクローンの両端塩基配列とS.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベースの例を示す表である。塩基配列決定を行ったコスミドのフォワード鎖、リバース鎖それぞれのS.cerevisiaeゲノム塩基配列上での相同領域とその同一性を示す。
作成した比較データベースで得られた情報を基にコスミドクローン、ショットガンクローンのS.cerevisiaeゲノム塩基配列上へのマッピングを行った(図3)。また、実施例5で得られたコンティグ塩基配列とS.cerevisiaeゲノム塩基配列との比較データベース作成を行い、マッピングを行った。マッピング手法は上記に述べた方法とほぼ同様であるが、コスミドあるいはショットガンクローンのフォワード鎖とリバース鎖が異なるコンティグ内に存在する場合、これらのコンティグ間を連結させた(図4)。
ORFの同定と機能推定
実施例5でアセンブリした塩基配列中のORF(Open Reading Frame)の同定を行った。実施例を具体的に下記に示す。開始コドンから終始コドンまで150塩基配列以上の長さをもつ配列に対し、相補鎖も含めて6種類の読み枠についてORFを同定するプログラム、ORF finder (http://www.ncbi.nih.gov/gorf/gorf.html)を用い、実施例5でアセンブリした塩基配列中に存在するORFの同定を行った。抽出したORFの機能推定は、SGDに登録され、公開されているS.cerevisiaeのORFのアミノ酸配列との相同性検索により行った。表2は、非Sc型ゲノム中に存在するORFの機能予測結果に対応するS.cerevisiaeのORF名の例を示す表である。左から順に、ビール酵母ゲノム塩基配列に存在するORF名、ORFのポリヌクレオチド長、ORFのポリペプチド長、相同性検索により決定されたS.cerevisiaeのORF名、同一性、一致長及び遺伝子の機能を示す。
DNAマイクロアレイとPCRによる染色体構造の解析
酵母からのゲノムDNAの調製はQIAGEN Genomic Tip 100/G (#10243:キアゲン社製)およびQIAGEN Genomic DNA buffer set (#19060:キアゲン社製)を用いて、キットに添付のマニュアルに従って行った。このDNA 10μgをWinzelerらの方法“Science 281 1194-1197, (1998)”に従ってDNaseI(インビトロジェン社製)で消化し、ターミナルトランスフェラーゼ(ロッシュ社製)でビオチン化して、DNAマイクロアレイ(Affymetrix Gene Chip Yeast Genome S98 Array:アフィメトリクス社製)にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションおよびアレイの輝度の検出はアフィメトリクス社製 Gene Chip解析基本システムを用いて行った。
S.cerevisiaeS288C株と34/70株のそれぞれから得たプローブの輝度を発現解析用ソフト(マイクロアレイスィート5.0:アフィメトリクス社製)を用いて比較し、輝度の差をS.cerevisiaeS288C株を基準としたシグナル比(Signal log ratio)として算出した。次に各プローブのシグナル比を表計算ソフト(マイクロソフトExcel2000)を用いて各染色体ごとに整列させ、シグナル比を棒グラフで表すと、図5に示すようにシグナル比の値が大きく変化する箇所がいくつかの染色体で認められた。この実験で用いられているハイブリダイゼーションの条件では、34/70株ゲノムの中で、S.cerevisiaeと100%近い同一性を示すSc型遺伝子のみがハイブリダイズするために、34/70株ゲノム中のSc型遺伝子の数が変化することでシグナル比の変化が生じたと考えられ、シグナル比の値が大きく変化する箇所では、Sc型塩基配列からなるSc型染色体から非Sc型塩基配列からなる非Sc型染色体(あるいはその逆)へのキメラ染色体構造の存在が示唆された。
このキメラ染色体構造を、ショットガン法により決定した34/70株のゲノム塩基配列を基に、片側がSc型、反対側が非Sc型の塩基配列であるプライマーを2組(XVI-1(L)cer-95894(配列番号:9)/XVI-1(R)nonSc-106302rv(配列番号:10)、XVI-2(L)cer-859737(配列番号:11)/XVI-2(R)nonSc-864595rv(配列番号:12)設計し、34/70株由来のゲノムDNAをDNA断片としてPCRによって確認した。以下、XVI番染色体の2箇所についての例を述べる。
PCRは、TaKaRa LA TaqTMと添付のバッファーを用い、添付のマニュアルに従い、TaKaRa PCR Thermal Cycler SPを用いて反応を行った。
PCRの結果、34/70株からは、予想される長さのDNA断片が増幅されたことが0.8%アガロース電気泳動で確認されたが、PCRのテンプレートとして実験室株S.cerevisiaeX2180−1AのゲノムDNAを用いた場合にはDNA断片の増幅は認められなかった。さらに34/70株から増幅されたDNA断片の両端の塩基配列を確認したところ、確かにショットガン法により決定したゲノム塩基配列と一致していることが明らかとなり、その領域内においてSc型染色体と非Sc型染色体の連結(乗換え)が生じていることが確認された。
以上の結果からXVI番染色体には、図6に示すように少なくとも2種類の染色体が存在すると考えられた。同様の手法を用いて、Sc型染色体と非Sc型染色体(あるいはその逆)との連結、つまりキメラ染色体構造の存在が示唆される領域に関して確認を行った。このようなSc型染色体と非Sc型染色体のキメラ染色体構造は、34/70株全染色体中では少なくとも13個所確認された(図1)。
ゲノム情報を利用することによって、下面発酵酵母の複雑な染色体構造が明らかとなり、34/70株には少なくとも37種類以上の染色体が存在することが明らかとなった。
34/70株のSSU1遺伝子のクローニング
実施例6で得られた比較データベースを用いて、非Sc型SSU1遺伝子を含むクローンを検索し、ショットガンクローンのフォワード塩基配列、リバース塩基配列とS.cerevisiaeとの相同性がそれぞれ62.9%、82.9%で、位置情報より完全長の非Sc型SSU1遺伝子を含む約2.4kbの断片が挿入されたショットガンクローンSSS103_G08を取得した。
これをショットガンライブラリーから選択し、PCR法によって非Sc型SSU1遺伝子の全長を取得した。プライマーとしてSacI-nonSc-SSU1_for1(配列番号:13)、およびBglII-nonSc-SSU1_rv1460(配列番号:14)の合成DNAを用いた。この組み合わせによって非Sc型SSU1遺伝子の塩基番号1〜1460が増幅され、約1.5kbのSacI-BglII断片が得られた。
Sc型SSU1遺伝子については、34/70株のゲノムDNAをテンプレートとし、SGDの情報を元に設計したプライマー対を用いたPCRで遺伝子の全長を取得した。プライマーにはSacI-ScSSU1_for1(配列番号:15)、およびBglII-ScSSU1_rv1406(配列番号:16)の合成DNAを用いた。この組み合わせによってSc型SSU1遺伝子の塩基番号1〜1406が増幅され、約1.4kbのSacI-BglII断片が得られた。
上記のようにして得られたSc型および非Sc型SSU1遺伝子断片を、TA cloningキット(インビトロジェン社製)によってキットに添付のpCR 2.1-TOPOベクターに挿入し、これらをそれぞれTOPO/ScSSU1およびTOPO/nonSc-SSU1とした。得られたSc型および非Sc型SSU1遺伝子の塩基配列は、サンガーの方法“F.Sanger,Science,214,p1215,1981”で調べた(図10)。
SSU1遺伝子破壊株の作製
文献 “Goldstein et al., yeast.15 1541(1999)”に記載の方法に従い、薬剤耐性マーカーを含むプラスミド(pFA6a (G418r)、pAG25(nat1)) をテンプレートとしたPCRによって遺伝子破壊用断片を作製した。PCR用のプライマーとして、非Sc型SSU1遺伝子破壊にはnonSc-SSU1_for(配列番号:17)/nonSc-SSU1_rv(配列番号:18)を、Sc型SSU1遺伝子破壊にはScSSU1_for(配列番号:19)/ScSSU1_rv(配列番号:20)を用いた。非Sc型SSU1遺伝子の破壊にはさらにプラスミドpPGAPAUR (AUR1-C)およびプライマーnonSc-SSU1_for+pGAPAUR(配列番号:21)/nonSc-SSU1_rv+AUR1-C(配列番号:22)を用いた。このようにしてSc型SSU1遺伝子破壊用断片2種類、非Sc型SSU1遺伝子破壊用断片3種類を作製した。
上述の方法で作製した遺伝子破壊用断片で下面発酵酵母BH96株を形質転換した。形質転換は特開平07−303475号公報に記載された方法で行い、選択薬剤の濃度はそれぞれgeneticin 300mg/L、nourseothricin 50mg/L、aureobasidin A 1mg/Lとした。
ここで得られた形質転換体について、それぞれ用いた薬剤耐性マーカーが導入されかつ各SSU1遺伝子が破壊されていることをSouthern解析によって確認した。まず、親株および形質転換体から抽出したゲノムDNAを、Sc型SSU1遺伝子破壊確認にはNcoIで、非Sc型SSU1遺伝子破壊確認にはHindIIIで制限酵素処理(37℃、18hrs)し、これを1.5%アガロースゲル電気泳動で展開後、メンブレンにトランスファーした。以下はAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)のプロトコールにしたがって、Sc型1あるいは非Sc型SSU1遺伝子に特異的なプローブとハイブリダイズ(55℃、18hrs)させ、CDP-Starでシグナルを検出した。
このようにして遺伝子破壊が確認できた株を、それぞれ
Sc-1 (ScSSU1/Scssu1::G418r)
Sc-2 (Scssu1::G418r/Scssu1::nat)
nonSc-1 (nonSc-SSU1/nonSc-SSU1/nonSc-ssu1::G418r)
nonSc-2 (nonSc-SSU1/nonSc-ssu1::G418r/nonSc-ssu1::nat)
nonSc-3 (nonSc-ssu1::G418r/nonSc-ssu1::nat/nonSc-ssu1::AUR1-C)
と命名した。
ビール試験醸造における亜硫酸生成量の解析
親株ならびに実施例10で得られた遺伝子破壊株 Sc-1〜nonSc-3を用いた発酵試験を以下の条件で行った。
麦汁エキス濃度 12.75%
麦汁容量 2L
麦汁溶存酸素濃度 約9ppm
発酵温度 15℃一定
酵母投入量 10g 湿酵母菌体/2L麦汁
発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(OD600)(図7−a)、外観エキス濃度(図7−b)、亜硫酸濃度(図7−c)の経時変化を調べた。亜硫酸の定量は、酸性下で蒸留により亜硫酸を過酸化水素水に捕集した後、アルカリで滴定することによって行った((財)日本醸造協会 改訂BCOJビール分析法)。
この結果、Sc型SSU1遺伝子破壊株では親株と同程度の亜硫酸生成量であったのに対し、非Sc型SSU1遺伝子破壊株では著しく低下していることが分かった。このことから、亜硫酸生成において下面発酵酵母特有の非Sc型SSU1遺伝子が大きく寄与していることが示唆された。
またこのとき、非Sc型SSU1遺伝子破壊株では増殖速度およびエキス消費速度が著しく低下しており、亜硫酸排出能を欠落させることによって細胞内に過剰の亜硫酸が蓄積し、生育を阻害するという考えを支持する結果が得られた。
SSU1遺伝子高発現株の作製
実施例9記載のプラスミドTOPO/nonSc-SSU1から制限酵素(SacI−BglII)処理によって非Sc型SSU1遺伝子全長を含む約1.5kbの断片を切り出した。これを同様に制限酵素(SacI−BglII)処理したpNI−NUTに挿入し、非Sc型SSU1遺伝子高発現ベクターpYI-nonSc-SSU1を構築した。ベクターpNI-NUTは酵母染色体相同組換え部位としてURA3、形質転換マーカーとしてヌーセオスリシン耐性遺伝子(nat1)およびアンピシリン耐性遺伝子(Ampr)を含んでいる。一方、Sc型SSU1遺伝子高発現ベクターpNI-SSU1は、上記pYI-nonSc-SSU1の非Sc型SSU1遺伝子部分を、約2kbのS.cerevisiae由来のSSU1-R“J.Ferment.Bioeng.,86,p427,(1998)”で置換した構造である。ここで導入した各SSU1遺伝子の高発現には、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子(TDH3)のプロモーターおよびターミネーターを用いた。
上述の方法で作製した高発現ベクターで下面発酵酵母BH225株を形質転換した。形質転換は特開平07−303475号公報に記載された方法で行い、nourseothricin50mg/Lを含むYPD平板培地で選択した。
高発現の確認はRT−PCRによって行った。totalRNAの抽出にはRNeasy Mini Kit(キアゲン社製)を用い、for total RNA isolation from yeastのマニュアルにしたがって行った。Sc型SSU1遺伝子特異的プライマーにはScSSU1_for331(配列番号:23)/ScSSU1_982rv(配列番号:24)、非Sc型SSU1遺伝子特異的プライマーにはnonSc-SSU1_for329(配列番号:25)/nonSc-SSU1_981rv(配列番号:26)、内部標準には酵母において構成的発現遺伝子であるPDA1を用い、特異的プライマーとしてPDA1_for1(配列番号:27)/PDA1_730rv(配列番号:28)を用いた。PCR産物を1.2%アガロース電気泳動で展開後、エチジウムブロマイド溶液で染色し、各SSU1遺伝子のシグナル値をPDA1遺伝子のシグナル値で標準化して親株のそれと比較した。こうして高発現が確認された株をそれぞれSc型SSU1遺伝子高発現株、非Sc型SSU1遺伝子高発現株と命名した。
ビール試験醸造における亜硫酸排出量の解析
親株並びに実施例12で得られたSSU1遺伝子高発現株を用いた発酵試験を以下の条件で行った。
麦汁エキス濃度 12.83%
麦汁容量 2L
麦汁溶存酸素濃度 約9ppm
発酵温度 12℃一定
酵母投入量 10g湿酵母菌体/2L麦汁
実施例11と同様に、発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量 (OD600) (図8−a)、外観エキス濃度(図8−b)、亜硫酸濃度(図8−c)の経時変化を調べた。亜硫酸生成量は、Sc型SSU1高発現株(発酵終了時において19ppm)は親株(同12ppm)より若干高い程度であったのに対して、非Sc型SSU1遺伝子高発現株では著しい増大(同45ppm)がみられた。またこのとき、親株と高発現株の間で、増殖速度およびエキス消費速度には差がみられなかった。
以上の結果から、本発明によって開示された下面発酵酵母の亜硫酸排出ポンプを高レベルで構成的に発現させて、亜硫酸のビール中への排出能が強化された酵母では、発酵工程や発酵期間を変えることなく、ビールの抗酸化剤として作用する亜硫酸の排出量を特異的に増加させることが可能となった。これによって香味安定性に優れ、より品質保持期間の長い酒類を製造することが可能となった。
34/70株のMET14遺伝子のクローニング
実施例6で得られた比較データベースを用いて、非Sc型MET14遺伝子を含むクローンを検索し、ショットガンクローンのフォワード塩基配列、リバース塩基配列とS.cerevisiaeとの相同性がそれぞれ79.0%、56.0%で、位置情報より完全長の非Sc型MET14構造遺伝子を含む約1.9kbの断片が挿入されたショットガンクローンSSS134_O21を取得した。
これをショットガンライブラリーから選択し、PCRによって非Sc型MET14遺伝子の全長を取得した。プライマーとして、表3に示すSacI-nonSc-MET14_for-21(配列番号:29)、およびBamHI-nonSc-MET14_rv618(配列番号:30)の合成DNAを用いた。この組み合わせによって約0.6kbの非Sc型MET14遺伝子SacI−BamHI断片が得られた。
Sc型MET14遺伝子については、34/70株のゲノムDNAをテンプレートとし、SGDの情報を元に設計したプライマー対を用いたPCRで遺伝子の全長を取得した。プライマーにはSacI-ScMET14_for(配列番号:31)、およびBamHI-ScMET14_rv(配列番号:32)の合成DNAを用いた。この組み合わせによって約0.6kbのSc型MET14遺伝子の塩基番号1〜609が増幅され、約0.6kbのSacI-BamHI断片が得られた。
上記のようにして得られたSc型および非Sc型MET14遺伝子断片を、TA cloningキット(インビトロジェン社製)によってキットに添付のpCR 2.1-TOPOベクターに挿入し、これらをそれぞれTOPO/ScMET14およびTOPO/nonSc-MET14とした。
得られたSc型および非Sc型MET14遺伝子の塩基配列は、サンガーの方法“Science,214,p1215(1981)”で調べた(図11)。
Sc型SSU1遺伝子高発現株における各MET14遺伝子の高発現
実施例14記載のSc型および非Sc型MET14遺伝子を含む約0.6kbの断片をpUP3GLP(特開2000−316559)のマルチクローニングサイトに挿入し、各MET14遺伝子がグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターおよびターミネーターで発現されるような、高発現ベクターpUP3ScMET14、pUP3nonSc-MET14を構築した。一方、実施例12記載のSc型SSU1遺伝子高発現ベクターpNI-SSU1で上面ビール酵母KN009F株を形質転換し、Sc型SSU1遺伝子高発現株FOY227株を作製した。このFOY227株を上述のpUP3ScMET14、pUP3nonSc-MET14で形質転換し、Sc型SSU1遺伝子高発現株におけるSc型MET14遺伝子高発現株FOY306株,非Sc型MET14遺伝子高発現株FOY307株を作製した。
ビール試験醸造における亜硫酸排出量の解析
実施例15で得られたSc型SSU1遺伝子高発現株FOY227株、Sc型SSU1高発現株におけるSc型MET14遺伝子高発現株FOY306株、非Sc型MET14遺伝子高発現株FOY307株および親株KN009F株を用いた発酵試験を以下の条件で行った。
麦汁エキス濃度 12.84%
麦汁容量 1.5L
麦汁溶存酸素濃度 約9ppm
発酵温度 25℃一定
酵母投入量 7.5g湿酵母菌体/1.5L麦汁
実施例11と同様に、発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量 (OD600)、外観エキス濃度、亜硫酸濃度の経時変化を調べた。酵母増殖量、エキス消費量には各株間で差が認められなかったが、亜硫酸生成量は、図9に示すように、親株(KN009F)が殆ど亜硫酸を生成しない(発酵終了時において0.32ppm)のに対し、Sc型SSU1遺伝子高発現株FOY227株では僅かに生成量が増加(同3.4ppm)しており、これに更にSc型MET14を高発現させた株FOY306株では、若干増加が認められ(同6.4ppm)非Sc型MET14遺伝子高発現株では著しい増大(同16.6ppm)が認められた。
以上の結果から、本発明によって開示された下面発酵酵母特有のアデニリル硫酸キナーゼを構成的に発現させて、亜硫酸の生成能が強化された酵母では、発酵工程や発酵期間を変えることなく、ビールの抗酸化剤として作用する亜硫酸の排出量を特異的に増加させることが可能となった。これによって香味安定性に優れ、より品質保持期間の長い酒類を製造することが可能となった。
下面発酵酵母のDNAマイクロアレイの作製
下面発酵酵母のDNAマイクロアレイを34/70株の全ゲノム塩基配列情報から推定したORFおよびそのORF間の領域のDNA塩基配列に基づいて作成した。
DNA マイクロアレイの作製
(1)34/70株の全ゲノム塩基配列情報から22483領域、(2)34/70株でSc型ORFとして同定されていない403個のSGD由来のS.cerevisiae ORF領域、(3)Genbankに登録されている20個のS.pastorianus遺伝子配列情報から27領域、(4)内部標準として64個の遺伝子塩基配列領域情報に基づき、GeneChip技術(アフィメトリクス社)を用いて、ビール酵母全ゲノム塩基配列に対してユニークなPM(Perfect Match)プローブ(25塩基のオリゴヌクレオチド配列)を設計した。解析において広範な定量性と再現性が得られるよう上記(1)、(2)、(3)で選択した領域について1領域から11プローブ、(4)について1領域から20プローブを選択した。また、各プローブで非特異的なハイブリダイゼーションの度合いを定量するためにPMプローブの13番目の塩基が異なるMM(MisMatch)プローブも設計した。
設計した全PMおよびMMプローブをGeneChip技術を用いて基板上に合成し、下面発酵酵母DNAマイクロアレイを作製した。
1)には以下のものが含まれる。
6307個のA)非Sc型ORF由来のDNA塩基配列、B)7640個のSc型ORF由来のDNA塩基配列、C)28個の34/70株のミトコンドリアORF由来のDNA塩基配列、D)553個の上記ORFとして同定されていないが、NCBI-BlastX相同性検索で相同性が存在したDNA塩基配列領域、E)7955個の上記A)、B)のORF間の領域。
2)には以下のものが含まれる。
YBL108C-A、YBR074W、YFL061W、YIL165C、YGR291C、YJR052W、YDR223W、YAL025C、YAR073W、YFL057C、YLL015W、YJR105W、YLR299C-A、YNR073C、YDL246C、YHL049C、YAR010C、YKL096W、YBL026W、YMR230W、YAL037C-A、YAL037C-B、YAL037W、YAL063C-A、YAL064C-A、YAL064W、YAL065C、YAL068W-A、YAL069W、YAR009C、YAR020C、YAR042W、YAR047C、YAR053W、YAR060C、YAR061W、YAR062W、YBL027W、YBL040C、YBL068W-A、YBL101W-B、YBL109W、YBL112C、YBR092C、YBR191W-A、YBR219C、YCL019W、YCL029C、YCL065W、YCL066W、YCL068C、YCL069W、YCL073C、YCL074W、YCL075W、YCL076W、YCR035C、YCR036W、YCR038W-A、YCR101C、YCR104W、YCR105W、YCR106W、YCR107W、YCR108C、YDL003W、YDL037C、YDL064W、YDL073W、YDL094C、YDL095W、YDL096C、YDL136W、YDL143W、YDL152W、YDL191W、YDL200C、YDL201W、YDL247W-A、YDL248W、YDR014W、YDR015C、YDR034C-D、YDR039C、YDR045C、YDR098C-B、YDR160W、YDR210C-D、YDR210W-B、YDR215C、YDR225W、YDR261C-D、YDR261W-B、YDR292C、YDR302W、YDR304C、YDR305C、YDR342C、YDR344C、YDR364C、YDR365W-B、YDR427W、YDR433W、YDR471W、YDR510C-A、YDR543C、YDR544C、YEL012W、YEL075W-A、YER039C-A、YER046W-A、YER056C-A、YER060W-A、YER074W、YER138C、YER187W、YER188C-A、YER190C-A、YFL002W-A、YFL014W、YFL019C、YFL020C、YFL030W、YFL031W、YFL051C、YFL052W、YFL053W、YFL054C、YFL055W、YFL056C、YFL063W、YFL065C、YFL066C、YFL067W、YFR012W-A、YGL028C、YGL041C、YGL052W、YGL210W-A、YGL259W、YGL262W、YGL263W、YGR034W、YGR038C-B、YGR089W、YGR107W、YGR109W-A、YIL082W-A、YGR122C-A、YGR146C、YGR148C、YGR161W-B、YGR182C、YGR183C、YGR271C-A、YGR290W、YGR295C、YHL009W-A、YHL009W-B、YHL015W-A、YHL046W-A、YHL047C、YHL048C-A、YHL048W、YHR032C-A、YHR032W-A、YHR039C-A、YHR043C、YHR070C-A、YHR071C-A、YHR071W、YHR141C、YHR165W-A、YHR179W、YHR180C-B、YHR180W-A、YHR182W、YHR193C、YHR193C-A、YHR207C、YHR211W、YHR213W-A、YHR216W、YHR217C、YHR218W-A、YIL029C、YIL052C、YIL069C、YIL148W、YIL171W、YIL174W、YIL176C、YIR018C-A、YIR041W、YIR042C、YIR043C、YIR044C、YJL012C-A、YJL014W、YJL062W-A、YJL136C、YJL175W、YJL222W-B、YJR024C、YJR027W、YJR032W、YJR053W、YJR054W、YJR094W-A、YJR107W、YJR110W、YJR111C、YJR140W-A、YJR151C、YJR152W、YJR153W、YJR154W、YJR155W、YJR162C、YKL018W、YKL020C、YKL044W、YKL224C、YKL225W、YKR012C、YKR013W、YKR017C、YKR018C、YKR019C、YKR020W、YKR035C、YKR036C、YKR040C、YKR041W、YKR042W、YKR052C、YKR053C、YKR057W、YKR062W、YKR094C、YKR102W、YKR103W、YKR104W、YLL014W、YLL030C、YLL037W、YLL038C、YLL043W、YLL065W、YLR029C、YLR030W、YLR062C、YLR098C、YLR099W-A、YLR107W、YLR139C、YLR140W、YLR142W、YLR144C、YLR145W、YLR154C-G、YLR154W-A、YLR154W-B、YLR154W-C、YLR154W-E、YLR154W-F、YLR155C、YLR156W、YLR157C-B、YLR157W-C、YLR162W、YLR205C、YLR207W、YLR209C、YLR227W-B、YLR236C、YLR237W、YLR238W、YLR245C、YLR251W、YLR271W、YLR278C、YLR287C-A、YLR305C、YLR306W、YLR311C、YLR317W、YLR338W、YLR344W、YLR345W、YLR354C、YLR364W、YLR380W、YLR401C、YLR402W、YLR410W-B、YLR411W、YLR412C-A、YLR412W、YLR413W、YLR448W、YLR460C、YLR461W、YLR463C、YLR465C、YML003W、YML039W、YML073C、YMR087W、YMR143W、YMR175W-A、YMR247W-A、YMR268W-A、YMR324C、YMR325W、YNL020C、YNL035C、YNL054W-B、YNL243W、YNR034W-A、YNR075C-A、YNR077C、YOL038C-A、YOL053W、YOL101C、YOL103W-B、YOL162W、YOL163W、YOL164W、YOL164W-A、YOL165C、YOL166C、YOL166W-A、YOR050C、YOR096W、YOR101W、YOR192C-B、YOR192C-C、YOR225W、YOR235W、YOR343W-B、YOR366W、YOR381W-A、YOR382W、YOR383C、YOR384W、YOR385W、YOR386W、YOR387C、YOR389W、YPL003W、YPL019C、YPL023C、YPL036W、YPL048W、YPL055C、YPL060C-A、YPL175W、YPL194W、YPL197C、YPL257W-B、YPR002C-A、YPR008W、YPR014C、YPR028W、YPR043W、YPR048W、YPR087W、YPR094W、YPR108W、YPR137C-B、YPR161C、YPR162C、YPR163C、YPR164W、YPR165W、YPR166C、YPR167C、YPR168W、YPR169W、YPR169W-A、YPR170C、YPR170W-A、YPR171W、YPR172W、YPR173C、YPR174C、YPR175W、YPR176C、YPR177C、YPR178W、YPR179C、YPR180W、YPR181C、YPR182W、YPR183W、YPR184W、YPR185W、YPR186C、YPR187W、YPR188C、YPR189W、YPR190C
3)は以下のものが含まれる。
GenBank Accession 番号;AY130327、BAA96796.1、BAA96795.1、BAA14032.1、NP_012081.1、NP_009338.1、BAA19915.1、P39711、AY130305、AF399764、AX684850、AB044575、AF114923、AF114915、AF114903、M81158、AJ229060、X12576、X00731、X01963の遺伝子
4)は以下のものが含まれる。
GenBank 登録番号;J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、X03453.1、X03453.1、L38424.1、L38424.1、L38424.1、X17013.1、X17013.1、X17013.1、M24537.1、M24537.1、M24537.1、X04603.1、X04603.1、X04603.1、K01391.1、K01391.1、K01391.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、J04423.1、X03453.1、X03453.1、L38424.1、L38424.1、L38424.1、X17013.1、X17013.1、X17013.1、M24537.1、M24537.1、M24537.1、X04603.1、X04603.1、X04603.1、V01288.1、V01288.1、V01288.1、X16860.1、X16860.1、X16860.1、L12026.1、L12026.1、L12026.1、Z75578.1、Z75578.1、Z75578.1、Z75578.1、Z75578.1、J01355.1、J01355.1、J01355.1、J01355.1、J01355.1の遺伝子
亜鉛枯渇条件下で高発現される遺伝子マーカーの同定
1.mRNAの調製
34/70株を1LのLZMM+40mM ZnSO4培地に植菌し、30℃で終夜振盪培養を行った。LZMM培地は、0.17%アミノ酸を含まないイーストナイトロジェンベース(ディフコ社製)、0.5%硫酸アンモニウム、20mM クエン酸ナトリウム(pH4.2)、125μM塩化マンガン、10μM塩化鉄、2%マルトース、10mM EDTA(pH8.0)からなる。酵母菌体を回収し、300mLの滅菌水で3回洗浄し、OD600nmの吸光度が0.25になるように500mlの1)亜鉛枯渇培地(上記LZMM培地)、2)LZMM+40mM ZnSO4培地、3)酸化ストレス培地(LZMM+40μM ZnSO4+過酸化水素培地;上記LZMM+40μM ZnSO4培地に過酸化水素を2mMになるように添加した培地)、4)炭素源飢餓培地(LZMM+40μM ZnSO4-Mal培地;上記LZMM+40μM ZnSO4培地からマルトースを除いた培地)に植菌し30℃で振盪 培養を行った。6時間培養後、RNA調製のためにそれぞれの酵母培養液を50mLずつ回収した。
RNeasy(登録商標)ミニキット(キアゲン社製)を用いて添付のマニュアルに従ってトータルRNAの調製を行った。
それぞれのトータルRNAからのポリAメッセンジャーRNA(Poly(A)+ mRNA)の調製はオリゴテックスダイレクトmRNAキット(キアゲン社製)を用いて添付のマニュアルに従って行った。
2.ビオチンラベルされたcRNAの調製
ビオチンラベルされたcRNAの合成はバイオアレイハイイールドRNAトランスクリプトラベリングキット(アフィメトリクス社製)を用いて添付のマニュアルに従って行った。
3.ハイブリダイゼーション
5μgのビオチンラベルされたcRNA、1.7μlの3nMコントロールオリゴヌクレオチドB2(アフィメトリクス社製)、5μlの20倍濃度ユーカリオティックハイブリダイゼーションコントロール(アフィメトリクス社製),1μlの10mg/mL サケ精子DNA(アフィメトリクス社製),1μlの50mg/mLアセチル化牛血清アルブミン(アフィメトリクス社製),50μlの2倍濃度ハイブリダイゼーション溶液(アフィメトリクス社製)を混ぜ、全量100μlになるよう滅菌水(アフィメトリクス社製)を加えてハイブリダイゼーションカクテルを調製した。これをハイブリダイゼーションオーブン(アフィメトリクス社製)を用いて付属のマニュアルに従い、DNAマイクロアレイにハイブリダイズさせた。16時間のハイブリダイゼーション後、ハイブリダイゼーションカクテルをDNAマイクロアレイから除去し、ジーンチップフルディクスステーション(アフィメトリクス社製)を用いて、付属のマニュアルに従い、DNAマイクロアレイを洗浄した。その後、600μLのストレプトアビジン−フィコエリトリン溶液で染色した。ストレプトアビジン−フィコエリトリン溶液は、300μlの2倍濃縮 メス染色溶液(アフィメトリクス社製)、24μlの50mg/mLアセチル化牛血清アルブミン、6μlの1mg/mLストレプトアビジン−フィコエリトリン(アフィメトリクス社製)、270μlの滅菌水(アフィメトリクス社製)で調製した。
4.データ解析
マイクロアレイのシグナル強度の検出はジーンチップオペレーティングシステム(GCOS; GeneChip Operating Software 1.0 アフィメトリクス社製)を用いて行った。比較解析におけるシグナル強度の調整のためのノーマライゼーションは、GCOS上のオールプローブセットを使用して行った。(1)亜鉛枯渇対亜鉛存在、(2)酸化ストレス対亜鉛存在、(3)炭素源飢餓対亜鉛存在、それぞれの遺伝子発現の比較ファイルをGCOSを用いて作成した。酸化ストレスおよび炭素源飢餓状態ではその発現が増加せず、亜鉛枯渇培地でのみ発現が増加されている遺伝子で、増加の度合いを示すシグナルログ比が0.3以上の遺伝子を表4に示す。
Sc-1159-1_at、Sc-1161-1_at、Sc-5030-1_at、Sc-2123-1_atはそれぞれSc型のYGL258W、YGL256W、YOL154W、YKL175Wであり、亜鉛枯渇条件下において転写レベルでの発現が誘導されることが知られている(Higgins,VJ.,et al.,Appl.Environ.Microbiol.,69: 7535-7540(2003))。一方で、Lg-4216-1_s_atは非Sc型のYKL175W(亜鉛イオンのトランスポーター)であり、その機能をもつ遺伝子は亜鉛枯渇時に誘導されることが確認されている。
本実験結果より、34/70株の全ゲノム塩基配列情報に基づき作製したDNAマイクロアレイによって、亜鉛枯渇条件下で高発現される遺伝子マーカーを同定することができた。
プローブセット名はDNAマイクロアレイに載せたプローブセットの名称を示す。検出は転写産物がGCOSの検出アルゴリズム(パラメーター;初期設定)に基づき、検出されている(P;Present)か検出されていない(A;Absent)かを示す。変化は転写産物がGCOSの変化アルゴリズム(パラメーター;初期設定)に基づき、転写産物が比較データの転写産物と比べて増加している(I;Increase)、変化していない(NC;No Change)、減少している(D;Decrease)をそれぞれ示す。シグナルログ比は二つのアレイ結果を比較した時に、マイナスなら減少、プラスなら増加を示し、数値はそれぞれの大きさを示す。遺伝子名はそのプローブがどの遺伝子領域から作成されたかを示す。型はSc型遺伝子(Sc)、および非Sc型遺伝子(非Sc)のいずれであるかを示す。
ビール試験醸造中の下面発酵酵母の遺伝子発現解析
34/70株を用いた発酵試験を以下の条件で行った。
麦汁エキス濃度 12.84%
麦汁容量 2L
麦汁溶存酸素濃度 約9ppm
発酵温度 15℃一定
酵母投入量 10g 湿酵母菌体/2L麦汁
発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(OD600)(図12−a)、外観エキス濃度(図12−b)の経時変化を調べた。発酵開始時から42時間目の菌体をサンプリングし、(実施例18)と同様の方法でmRNAを調整し、ビオチンラベルし、下面発酵酵母のDNAマイクロアレイにハイブリダイズさせた。
DNAマイクロアレイのシグナル強度(輝度)の検出はジーンチップオペレーティングシステム(GCOS; GeneChip Operating Software 1.0 アフィメトリクス社製)を用いて行った。
Sc型遺伝子と、対応する非Sc型遺伝子のプローブセットの輝度(発現量)を比較したところ、両者間で顕著な差が認められたものが存在した。発酵中の亜硫酸の生成に関与すると考えられるSSU1遺伝子、MET14遺伝子の例を表5に示す。34/70株において、非Sc型SSU1遺伝子はSc型SSU1遺伝子の約3.4倍、非Sc型MET14遺伝子はSc型MET14遺伝子の約7倍発現していることが明らかとなった。
これらの輝度の差が各プローブセットのハイブリダイゼーションの効率の違いや、Sc型、非Sc型間のクロスハイブリダイゼーションの影響によるものどうかを調べるために、下面発酵酵母のDNAマイクロアレイを用いたDNA−DNAハイブリダイゼーションを行った。下面発酵酵母34/70株、実験室酵母(S.cerevisiae)S288C株、Saccharomyces carlsbergensis IFO11023株のゲノムDNAを実施例8と同様の方法で下面発酵酵母のDNAマイクロアレイにハイブリダイズさせ、各プローブセットの輝度を測定した。表6に示すように、34/70株のSSU1遺伝子、MET14遺伝子それぞれのSc型に対する非Sc型の輝度の比は1.0から1.3倍であり、発現量の比に比べて極めて小さかった。また、非Sc型SSU1遺伝子、非Sc型MET14遺伝子を持たないS288C株は非Sc型のSSU1プローブ、非Sc型MET14プローブにおける輝度が極めて低く、Sc型SSU1遺伝子、Sc型MET14遺伝子を持たないIFO11023株はSc型SSU1プローブ、Sc型MET14プローブにおける輝度が極めて低いことから、Sc型、非Sc型間でのクロスハイブリダイゼーションの可能性はきわめて低いことも明らかになった。以上のことから、下面発酵酵母34/70株の非Sc型SSU1遺伝子、非Sc型MET14遺伝子は対応するSc型遺伝子よりも有意に高発現していることが明らかとなった。これらの遺伝子は下面発酵酵母の高亜硫酸生成能に関与する遺伝子の候補と考えられる。
以上の結果から、機能解析の対象となる遺伝子の特定を行う上で、下面発酵酵母のDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析が有効であることが明らかとなった。
下面発酵酵母のDNAアレイを用いた醸造用酵母の分類
酵母からのゲノムDNAの調製、およびアレイへのハイブリダイゼーションは(実施例8)と同様に行い、DNAマイクロアレイの輝度の検出はAffymetrix社製Gene Chip解析基本システム(GCOS; GeneChip operating Software 1.0)を用いて行った。表7に示すように全塩基配列を決定した34/70株は本発明のDNAアレイのSc型、非Sc型プローブの99%以上に対してハイブリダイズすることが確認された。また、他の下面発酵酵母についても同様のDNA−DNAハイブリダイゼーションを行ったところ、多くの場合(たとえば表7、BH225株、BH232株、BH235株)においてSc型、非Sc型プローブの99%以上に対してハイブリダイズすることが確認され、これらの株が34/70株と非常に近縁であることが明らかになった。このことは、本発明のDNAアレイがこれらの株の遺伝子発現解析にも使用可能であることを示している。一方、本発明のDNAアレイのプローブに対してハイブリダイズする割合が低い株(たとえば表7 BH212株)においては、先に挙げた株よりも34/70株から分類学的に離れた株であることが示唆された。
以上の結果から下面発酵酵母間の相同性を算出することができ、これをもとに醸造用酵母を分類することが可能であった。
また、下面発酵酵母のDNAアレイのプローブの中で被検株とハイブリダイズしなかった遺伝子は、被検株においては遺伝子が欠失しているか、塩基配列が全塩基配列を決定した34/70株とは異なる可能性が高い。また、他のプローブに比べて高い輝度を示した遺伝子は被検株に於いてコピー数が高くなっている可能性が高い。これらの遺伝子を機能解析の対象として選出することができる。
下面発酵酵母のDNAアレイを用いた塩基多型の検出
DNA−DNAハイブリダイゼーションの結果を詳細に解析することによって塩基多型を検出することが可能であった。本発明のDNAアレイのプローブは全塩基配列を決定した34/70株の配列と同じ配列のオリゴヌクレオチド(PM;パーフェクトマッチ)と中央の位置の塩基が異なる配列のオリゴヌクレオチド(MM;ミスマッチ)から構成されているが、PMよりもMMにより強くハイブリダイズしている遺伝子については塩基配列が34/70株とは異なる可能性が高い。実験室株S288C株のDNAを本発明のDNAアレイにハイブリダイズさせた結果から、MMの輝度がPMの輝度の5倍以上のものを抽出して塩基配列を比較したところ、表8に示すように1塩基の塩基多型の検出が可能であることが確認できた。
ビール酵母全染色体構造を示す図である。白抜きはSc型、黒抜きは非Sc型染色体を示す。楕円はセントロメアを示す。ローマ数字はそれぞれ対応するS.cerevisiaeの染色体番号を示す。非Sc型染色体を示す図で、黒の塗り潰し部分はその領域で連結していることを示している。例えばnonScII-nonScIVは黒の塗り潰し部分(300kb)でnonScIIとnonScIVが連結していることを示している。 34/70株のゲノムDNAより調製した3648個のコスミドの両端塩基配列とS.cerevisiaeゲノム塩基配列との同一性分布を示す図である。横軸はS.cerevisiaeとの相同性を示し、例えば横軸84は82%より大きく、84%以下の相同性を示している。縦軸は、その同一性を示すコスミド塩基配列の個数を示す。 コスミド、ショットガンクローンのS.cerevisiaeゲノム塩基配列へのマッピング例を示す図である。(1)、(2)はそれぞれ、S.cerevisiaeXVI番染色体塩基配列上のワトソン鎖に存在する遺伝子、塩基配列、クリック鎖上に存在する遺伝子を示す。(2)、(4)、(5)、(6)はそれぞれ、Sc型塩基配列を有するコスミドクローン、非Sc型塩基配列を有するコスミドクローン、Sc型塩基配列を有するショットガンクローン、非Sc型塩基配列を有するショットガンクローンを示す。 ビール酵母コンティグのS.cerevisiaeゲノム塩基配列へのマッピング結果の一例を示す。AはS.cerevisiae XVI番染色体の模式図を示す。BはXVI番染色体の857-886kb部分を拡大した図である。縦軸および横軸はS.cerevisiaeゲノム塩基配列に対するコンティグの同一性(%)、アライメントされた位置をそれぞれ示す。実線およびその上の数値はコンティグ、コンティグ番号をそれぞれ示す。点線は同じショットガンおよびコスミド由来のフォワードーリバース鎖情報を用いてコンティグ間を連結したことを示す。 34/70株のゲノムDNAをDNAマイクロアレイにハイブリさせ、プローブの輝度をS.cerevisiaeS288C株と比較したシグナル比(Signal log ratio)をXVI番染色体上のプローブについて整列させた結果を示す。矢印で示した3箇所でシグナル比の顕著な変化が認められ、この部分でSc型、非Sc型の乗換えが生じていることが示唆される。 DNAマイクロアレイとPCRによる解析結果から推定される34/70株のXVI番染色体の構造を示す。 SSU1遺伝子破壊株を用いたビール試験醸造における発酵過程の経時変化を示す図である。3つのグラフの横軸はいずれも発酵時間を表しており、縦軸はそれぞれa) 酵母増殖量(OD600)、b) 外観エキス濃度(w/w%)、c) 亜硫酸濃度(ppm)を示している。 SSU1遺伝子高発現株を用いたビール試験醸造における発酵過程の経時変化を示す図である。3つのグラフの横軸はいずれも発酵時間を表しており、縦軸はそれぞれa) 酵母増殖量(OD600)、b) 外観エキス濃度(w/w%)、c) 亜硫酸濃度(ppm)を示している。 Sc型SSU1高発現株におけるMET14遺伝子高発現株を用いたビール試験醸造における発酵過程の経時変化を示す図である。グラフの横軸は発酵時間を、縦軸は亜硫酸濃度(ppm)を表している。 解析した各SSU1遺伝子の塩基配列を示す図である。 解析した各MET14遺伝子の塩基配列を示す図である。 34/70株を用いたビール試験醸造における発酵過程の経時変化を示す図である。2つのグラフの横軸はいずれも発酵時間を表しており、縦軸はそれぞれa)酵母増殖量(OD600)、b)外観エキス濃度(w/w%)を示している。

Claims (32)

  1. (イ)工業用酵母の全ゲノム塩基配列を解析し、(ロ)該ゲノム塩基配列をサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae:以降、S.cerevisiaeと略す)の全ゲノム塩基配列と比較し、(ハ)S.cerevisiaeの遺伝子がコードするアミノ酸配列と70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする該工業用酵母の遺伝子を選択し、(ニ)該選択された該遺伝子の機能解析を行うことによって該遺伝子が酵母に付与する特性を同定することを特徴とする、アルコール又は酒類の製造においてその生産性の向上及び/又は香味の改善に関わる遺伝子のスクリーニング方法。
  2. 上記(ニ)においてDNAアレイを用いて機能解析を行なうことを特徴とする請求項1のスクリーニング方法。
  3. 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイを用いることを特徴とする請求項2に記載のスクリーニング方法。
    (1)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレーム(open reading frame、以下ORFと略す場合もある)にある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
    (2)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列。
  4. 請求項3に記載のオリゴヌレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを基板に固定したDNAアレイを用いることを特徴とする請求項2に記載のスクリーニング方法。
  5. 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイを用いることを特徴とする請求項2に記載のスクリーニング方法。
    (1)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレーム以外に存在する非翻訳領域にある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
    (2)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列。
  6. 請求項5に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする請求項2に記載のスクリーニング方法。
  7. 請求項3に記載された1又は複数のヌクレオチド、
    請求項4に記載された1又は複数のヌクレオチド、
    請求項5に記載された1又は複数のヌクレオチドおよび
    請求項6に記載された1又は複数のヌクレオチド、
    からなる4群のうちの2群以上から選ばれたヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイを用いることを特徴とする請求項2に記載のスクリーニング方法。
  8. 工業用酵母が、醸造用酵母であることを特徴とする請求項1ないし7に記載のスクリーニング方法。
  9. 醸造用酵母が、ビール酵母であることを特徴とする請求項1ないし8に記載のスクリーニング方法。
  10. 請求項1に記載のスクリーニング方法によって得られる遺伝子。
  11. 請求項10に記載の遺伝子を酵母で発現させた場合、該酵母の培養液中の亜硫酸濃度が上昇することを特徴とする請求項10に記載の遺伝子。
  12. 配列番号:1又は2で表される塩基配列からなるDNA又は該DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
  13. 配列番号:3又は4で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又は配列番号:3又は4で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA。
  14. 請求項10〜13のいずれかに記載の遺伝子又はDNAを有する組換えベクター。
  15. 請求項10〜13のいずれかに記載の遺伝子又はDNAに隣接して、プロモーター及び/又はターミネーターを設置していることを特徴とする請求項9に記載の組換えベクター。
  16. プロモーターが、構成的な発現をするプロモーターであることを特徴とする請求項15に記載の組換えベクター。
  17. プロモーターが、グリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターであることを特徴とする請求項15又は16に記載の組換えベクター。
  18. 請求項10〜17のいずれかに記載の遺伝子、DNA又は組換えベクターを含む形質転換体。
  19. Saccharomyces属酵母であることを特徴とする請求項18に記載の形質転換体。
  20. 請求項10〜13のいずれかに記載の遺伝子又はDNAによりコードされるポリペプチド又は該ポリペプチドが有するアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド。
  21. 配列番号:3又は4に表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又は配列番号:3又は4で表されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基が欠失及び/又は置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド。
  22. 請求項18又は19に記載の形質転換体を用いることを特徴とするアルコール又は酒類の製造方法。
  23. 請求項10若しくは11に記載の遺伝子又は請求項12若しくは13に記載のDNA上の遺伝子の発現を制御することを特徴とするアルコール又は酒類の製造に適した酵母の育種方法。
  24. 酵母が、Saccharomyces属であることを特徴とする請求項23に記載の育種方法。
  25. 請求項23又は24に記載の育種方法により得られる酵母。
  26. 請求項25に記載の酵母を用いるアルコール又は酒類の製造方法。
  27. 請求項26に記載のアルコール又は酒類の製造方法を用いて製造されるアルコール又は酒類。
  28. 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ。
    (1)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレームにある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
    (2)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列。
  29. 請求項28に記載の塩基配列を有するオリゴヌレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズする1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ。
  30. 以下の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる、1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ。
    (1)工業用酵母のゲノム全塩基配列中のオープンリーディングフレーム以外に存在する非翻訳領域にある10〜30ヌクレオチドの塩基配列であって、かつ
    (2)該全ゲノム塩基配列の他の部分には存在しない塩基配列。
  31. 請求項30に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズする1ないし複数のオリゴヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ。
  32. 請求項3に記載された1又は複数のヌクレオチド、
    請求項4に記載された1又は複数のヌクレオチド、
    請求項5に記載された1又は複数のヌクレオチドおよび
    請求項6に記載された1又は複数のヌクレオチド、
    からなる4群のうちの2群以上から選ばれたヌクレオチドが基板に固定されているDNAアレイ。
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