JP4879161B2 - Dnaアレイ及び醸造用酵母の遺伝子発現解析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、DNAアレイ及び醸造用酵母の遺伝子発現解析方法に関する。
下面ビール酵母は、ビールを始めとする酒類の醸造において最も広く用いられている酵母である。近年、下面ビール酵母の遺伝子発現を解析する技術として、DNAアレイの利用が試みられている(非特許文献1)。
FEMS Yeast Research, Vol.2,563−573(2002).
しかしながら、下面ビール酵母のゲノム配列情報は未だ公開されていないため、非特許文献1に開示された技術では、どの遺伝子の発現が解析されたのか不明であり、下面ビール酵母発酵過程の制御に利用するには不十分である。
他方、下面ビール酵母は、大きなゲノムサイズ(24〜26Mbp)と複雑な染色体構造を有し、非サッカロマイセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子も含んでいるので、そのゲノム配列情報を取得するには膨大な時間とコストが必要である。
そこで、本発明は、醸造用酵母のゲノム配列情報を予め取得する必要がなく、かつ、醸造用酵母発酵過程の制御に十分利用することができる遺伝子発現解析方法、及び当該遺伝子発現解析方法に用いるDNAアレイを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、基板上の複数のスポットに、醸造用酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合したDNAアレイを提供する。
本発明はまた、
(a)種類又は状態が異なる2種の醸造用酵母から、それぞれトータルRNAを抽出するステップと、
(b)一方の種の前記トータルRNAから第1の蛍光色素で標識したcDNA又はcRNAを得、他方の種の前記トータルRNAから第2の蛍光色素で標識したcDNA又はcRNA(以下、蛍光色素で標識したcDNAを「標識cDNA」、蛍光色素で標識したcRNAを「標識cRNA」と呼ぶことがある。)を得るステップと、
(c)基板上の複数のスポットに、前記醸造用酵母と同一又は異なる醸造用酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合したDNAアレイ上で、前記2種の標識cDNA又は2種の標識cRNAを競合ハイブリダイズさせるステップと、
(d)前記スポットのそれぞれにおいて、前記第1及び第2の蛍光色素が発する蛍光を測定するステップと、
(e)前記第1の蛍光色素が発する蛍光の強度と、前記第2の蛍光色素が発する蛍光の強度とを比較するステップと、
(f)蛍光の強度に差の見られたスポットのプラスミド中のゲノムDNA断片の配列を解析するステップと、を備える醸造用酵母の遺伝子発現解析方法を提供する。
本発明のDNAアレイを用いた上記遺伝子発現解析方法では、種類又は状態が異なる複数の酵母の遺伝子発現状態を比較し、差異が見られた遺伝子についてのみ配列解析を行うので、予め醸造用酵母のゲノム配列情報を取得する必要がない。他方、酵母の種類又は状態の差異と遺伝子発現状態の差異との関係を知ることができるので、醸造用酵母発酵過程の制御に十分利用することができる。更に、エキソン領域やオープン・リーディング・フレームの予測のための一般的な解析プログラムによっても解析することができない塩基配列領域についても、その発現状態を解析することができる。そのような塩基配列領域としては、上記プログラムが解析対象としていないnon−coding領域(アミノ酸配列をコードしない領域)の他、上記プログラムではその能力上の制約により解析することができない一部のオープン・リーディング・フレームが挙げられる。
上記DNAアレイを構成するプラスミドに含まれる醸造用酵母のゲノムDNA断片としては、ビール醸造において最も広く用いられる下面ビール酵母由来のものが好適である。
上記DNAアレイは、機能が既知の醸造用酵母の遺伝子(以下、場合により、「既知遺伝子」という。)が結合した他のスポットが更に存在することが好ましい。
このようなDNAアレイを用いれば、既知遺伝子が結合したスポットと類似又は同調する蛍光強度のパターン(第1及び第2の蛍光色素の蛍光強度の比率)を示したスポットのゲノムDNA断片の配列を解析することによって、そのDNA断片に含まれる遺伝子を同定し、その機能を推定することが可能になる。例えば、醸造上重要な既知遺伝子と機能的に類似し、一方でその既知遺伝子と塩基配列が異なる遺伝子がゲノムDNA中に存在する場合、蛍光強度のパターン、すなわち2種の酵母間における遺伝子発現状態の差が上記既知遺伝子と類似又は同調しているゲノムDNA断片の配列を解析することにより、上記遺伝子を同定することができる。すなわち、醸造上重要な既知遺伝子と発酵中の発現パターンが同調しており機能的に類似しているが、遺伝子配列やアミノ酸配列が異なる既知又は新規の遺伝子を見出すことができる。
上記構成のDNAアレイではまた、既知遺伝子が醸造用酵母の種類又は状態に関わらず構成的に発現しているものである場合に、既知遺伝子のスポットにおける蛍光強度を指標として、その周辺(例えば、そのスポットが含まれるブロック内)のスポットにおけるハイブリダイゼーション実験の良否を容易に判定することができる。
既知遺伝子が結合した他のスポットが更に存在するDNAアレイとしては、醸造用酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合した複数のスポットと、既知遺伝子が結合したスポットとから構成されるブロックが、基板上に複数配列しているタイプが使用に適している。このようなタイプのDNAアレイを用いれば、ブロックごとに、既知遺伝子を指標として、ゲノムDNA断片中の遺伝子の機能を推定し、又はハイブリダイゼーション実験の良否を判定することが可能になる。上記のようなタイプの中でも、ブロックが等しい形状を有しており、それぞれのブロックの同じ位置に、既知遺伝子が結合したスポットが存在するタイプは、プラスミド又は既知遺伝子が結合したスポットの位置が判別しやすく、特に好適である。
上記ステップ(c)における競合ハイブリダイゼーションは一個のDNAアレイ上で競合的に行うが、ステップ(c)のように競合ハイブリダイゼーションを行う代わりに、酵母の種類又は状態ごとに別々のDNAアレイ(但し、それぞれのDNAアレイの同じ位置には、同一のプラスミド又は既知遺伝子が結合しているものとする。)上でハイブリダイゼーションを行ってもよい。すなわち、本発明は更に、
(a)種類又は状態が異なる2種の醸造用酵母から、それぞれトータルRNAを抽出するステップと、
(b)前記トータルRNAから以下の(b1)又は(b2)を得るステップと、
(b1)第1の蛍光色素で標識した第1の標識cDNA及び第2の蛍光色素で標識した第2の標識cDNA
(b2)第1の蛍光色素で標識した第1の標識cRNA及び第2の蛍光色素で標識した第2の標識cRNA
(c)基板上の複数のスポットに、前記醸造用酵母と同一又は異なる醸造用酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合したDNAアレイを2つ準備し(但し、2つのDNAアレイは同一のもので、一方を第1のDNAアレイ、他方を第2のDNAアレイとする。)、以下の(c1)又は(c2)のようにハイブリダイズさせるステップと、
(c1)第1のDNAアレイに対して第1の標識cDNA、第2のDNAアレイに対して第2の標識cDNA
(c2)第1のDNAアレイに対して第1の標識cRNA、第2のDNAアレイに対して第2の標識cRNA
(d)前記第1のDNAアレイと前記第2のDNAアレイの対応するスポットのそれぞれにおいて、前記第1の蛍光色素及び前記第2の蛍光色素が発する蛍光を測定するステップと、
(e)前記第1の蛍光色素が発する蛍光の強度と、前記第2の蛍光色素が発する蛍光の強度とを比較するステップと、
(f)蛍光の強度に差の見られたスポットのプラスミド中のゲノムDNA断片の配列を解析するステップと、を備える醸造用酵母の遺伝子発現解析方法を提供する。ここで、第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素は、相互に異なる色素であっても、また、同一の色素であってもよい。
第1実施形態に係るDNAアレイを模式的に示す平面図である。 第2実施形態に係るDNAアレイを模式的に示す平面図である。 実施例1で作製したDNAアレイを模式的に示す平面図である。 実施例1で作製したDNAアレイのブロックの一つを拡大して模式的に示した平面図である。 浮遊酵母数の経時変化を示すグラフである。 抽出したトータルRNAの純度をバイオアナライザーで分析した結果を示すチャートである。 DNAアレイの短辺方向の最端の一列を構成する4ブロックについて検出された蛍光を示す写真に対応する図である。 DNAアレイ上の蛍光パターンに基づいて行ったクラスタリングの結果を示す図である。 サッカロミセス・セレビシェのゲノムDNA中におけるSBc33P17の領域の位置を示す図である。
符号の説明
1…基板、2…プラスミド、3…既知遺伝子、4…ブロック、10,20,30…DNAアレイ。
以下、図面を参照しながら、本発明のDNAアレイ及び遺伝子発現解析方法の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
(DNAアレイ)
図1は、第1実施形態に係るDNAアレイを模式的に示す平面図である。第1実施形態に係るDNAアレイ10は、基板1と、基板1上の複数のスポットに結合したプラスミド2とから構成されている。DNAアレイ10では、プラスミド2が結合した複数のスポットが基板1上に格子状に配列している。
図2は、第2実施形態に係るDNAアレイを模式的に示す平面図である。第2実施形態に係るDNAアレイ20は、基板1と、基板1上の複数のスポットに結合したプラスミド2と、基板1上の他のスポットに結合した、機能が既知の醸造用酵母の遺伝子3とから構成されている。DNAアレイ20では、プラスミド2が結合した複数のスポットと、既知遺伝子3が結合したスポットとから構成されるブロック4が、基板1上に複数配列している。また、複数のブロック4が等しい形状を有しており、それぞれのブロック4の同じ位置に、既知遺伝子3が結合したスポットが存在する。ブロック4は格子状に配列したスポットから構成され、かつ、ブロック4は基板1上に格子状に配列している。
DNAアレイ10又は20を構成する基板1の材料は、プラスミド2を安定して結合させることができるものであればよく、例えば、ガラス及び合成樹脂や、その他ポリカーボネート、プラスチック等が挙げられる。また、基板1の形状としては、板状又はフィルム状が好ましい。
プラスミド2は、醸造用酵母のゲノムDNA断片を含んでいる。醸造用酵母としては、下面ビール酵母が好ましく、その中でも更に、ビール醸造において最も広く用いられているサッカロマイセス・パストリアヌス・ヴァイヘンステファン(Saccharomyces pastorianus Weihenstephan)34/70が好ましい。
プラスミド2に含まれるゲノムDNA断片のサイズは、好ましくは1.5〜3.0kbpである。1.5kbpより短いと、醸造用酵母のゲノムDNAが網羅されるようにDNAアレイを作製しようとした場合に、必要なゲノムDNA断片数が多くなり、DNAアレイの作製コストが高くなる傾向がある。他方、3.0kbpより長いと、一個のDNA断片に含まれる遺伝子又はエキソンの数が多くなり、遺伝子発現解析の過程が煩雑になる傾向がある。
DNAアレイの実質的な冗長度(DNAアレイ上のゲノムDNA断片の長さの合計を、DNAアレイの作製に用いた醸造用酵母のゲノムサイズで除した値)が1.5以上2.0以下のものが好ましい。実質的な冗長度が1.5未満であると、DNAアレイ上のゲノムDNA断片が全体としてカバーするゲノム領域が小さくなる傾向があり、実質的な冗長度が2.0を超えると、異なるスポットのゲノムDNA断片間で重複する領域が大きくなり、遺伝子発現解析が煩雑になる傾向がある。
なお、プラスミド2の代わりに、そのインサートである醸造用酵母のゲノムDNA断片を上記のDNAアレイに直接結合させてもよい。この場合においても、ゲノムDNA断片のサイズ及び冗長度は、上記したプラスミド2を用いる場合と同じであることが好ましい。
DNAアレイ20を構成する既知遺伝子3は、実験者がその目的に応じて選択することができる。既知遺伝子3は、サッカロマイセス・セレビシェ由来の遺伝子が好適であり、その配列情報は、Saccharomyces Genome DataBase(http://www.yeastgenome.org/)より入手することができる。
DNAアレイ20においては、プラスミド2はブロックによって異なっている方がよい。また、既知遺伝子3は、各ブロックの同じ位置に同じ既知遺伝子が結合しているのが好ましい。
各ブロック4に複数種類の既知遺伝子3が存在する場合、少なくとも一種は醸造用酵母の種類又は状態に関わらず構成的に発現しているものであることが好ましい。このような遺伝子がブロックごとに存在していれば、各ブロックにおけるハイブリダイゼーション実験の良否を容易に判定することができる。そのような遺伝子として、サッカロマイセス・セレビシェ由来のACT1遺伝子が挙げられる。
なお、DNAアレイ10又は20のように、プラスミド又は既知遺伝子が結合した複数のスポットが格子状に配列していれば、スポットの位置を座標で表すことができるので、スポットの位置を特定しやすく、遺伝子発現解析に好都合である。また、DNAアレイ20においては、各スポットの同じ位置に同じ既知遺伝子が結合しているのが好ましい。
本発明のDNAアレイの作製は、醸造用酵母のランダムゲノムライブラリーから無作為に選んだプラスミドを基板表面に結合させることにより行う。
醸造用酵母のランダムゲノムライブラリーの作製は下記の操作1)〜6)により行うことができる。各操作は、特に断らない限り、公知の方法に従えばよい。
1)醸造用酵母からゲノムDNAを抽出、精製する。
2)抽出、精製したゲノムDNAを断片化する。ゲノムDNAの断片化は、ランダムなDNA断片を得るために、DNA断片化装置を用いて行うのが好ましい。
3)得られたゲノムDNA断片から、電気泳動により一定のサイズのゲノムDNA断片を回収する。
4)得られたゲノムDNA断片を平滑末端化し、適当なプラスミドベクターに連結する。
5)得られた組換えベクターを適当な宿主細胞に導入する。
6)宿主細胞を適当な培地上で培養し、形質転換細胞を選択する。
プラスミドの基板表面への結合は、例えば、ゲノムDNA断片を含むプラスミドを溶解した固定液を、表面処理(ポリリジン処理等)を施した基板上にスポッターでスポッティングし、プラスミドを基板表面上に固定化する方法を用いることができる。ここで、固定液として、アルカリ性固定液を用いれば、二本鎖プラスミドは固定液中で2個の一本鎖プラスミドに分離される。アルカリ性ではない固定液を用いる場合は、加熱処理等によって二本鎖を一本鎖にすればよい。
(遺伝子発現解析方法)
本発明の遺伝子発現解析方法は、下記のステップを備えるものである。
(a)種類又は状態が異なる2種の醸造用酵母から、それぞれトータルRNAを抽出するステップ
(b)一方の種の前記トータルRNAから第1の蛍光色素で標識したcDNA又はcRNAを得、他方の種の前記トータルRNAから第2の蛍光色素で標識したcDNA又はcRNAを得るステップ
(c)基板上の複数のスポットに、前記醸造用酵母と同一又は異なる醸造用酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合したDNAアレイ上で、前記2種の標識cDNA又は2種の標識cRNAを競合ハイブリダイズさせるステップ
(d)前記スポットのそれぞれにおいて、前記第1及び第2の蛍光色素が発する蛍光を測定するステップ
(e)前記第1の蛍光色素が発する蛍光の強度と、前記第2の蛍光色素が発する蛍光の強度とを比較するステップ
(f)蛍光の強度に差の見られたスポットのプラスミド中のゲノムDNA断片の配列を解析するステップ
ステップ(a)において、醸造用酵母の「種類又は状態が異なる」とは、醸造用酵母株の種類自体が異なるか、又は醸造用酵母の生育条件(温度、生育時間、培地の成分、培地への通気量等)、発酵条件(発酵温度、発酵時間等)等が異なることを意味する。
ステップ(a)におけるトータルRNAの抽出は、例えば、ホットフェノール法(加温したフェノールとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で酵母を溶解しながらRNAを抽出する方法)に従って行うこともできるが、分解度の低い高純度RNAを得るために、酵母を液体窒素で凍結した後、磨砕機で磨砕し、RNA抽出試薬でRNAを抽出する方法で行うのが好ましい。ここで、磨砕機としてはクライオプレス(マイクロテック・ニチオン社製)が、RNA抽出試薬としてはIsogenTM(ニッポンジーン社製)が挙げられる。
ステップ(b)における標識cDNA又は標識cRNAは、例えば、標識cDNAは、上記の醸造用酵母から抽出したトータルRNAにオリゴdTプライマーをアニールさせた後、蛍光色素が結合したdNTPの存在下で逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、未反応の基質をスピンカラムで取り除くことにより調製できる。その際、オリゴdTカラムを用いて、トータルRNAからポリARNAを単離精製し、上記の逆転写反応を行ってもよい。
また、標識cRNAは、上記のトータルRNA又はポリARNAにT7プロモーターの配列が付いたオリゴdTプライマーを用いて、逆転写反応で未標識のcDNAを合成し、蛍光色素が結合したNTPの存在下で、得られたcDNAにT7 RNAポリメラーゼを反応させてcRNAを合成し、未反応の基質をスピンカラムで取り除くことにより調製できる。
cDNA又はcRNAの標識に用いる蛍光色素は、酵母の種類又は状態ごとに色(蛍光波長)が区別し得るものであればよいが、Cyanine色素が好ましい。互いに色が異なるCyanine色素としては、例えばCy3(緑色色素)及びCy5(赤色色素)が挙げられる。
ステップ(c)で用いるDNAアレイは、既知遺伝子が結合した他のスポットが更に存在することが好ましい。このようなDNAアレイとしては、醸造用酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合した複数のスポットと、既知遺伝子が結合したスポットとから構成されるブロックが、基板上に複数配列しているタイプが使用に適しており、特に、ブロックが等しい形状を有しており、それぞれのブロックの同じ位置に、既知遺伝子が結合したスポットが存在するとよい。
上記ステップ(c)における競合ハイブリダイゼーションは、一個のDNAアレイ上で競合的に行う。cDNAをハイブリダイズさせる場合は、ハイブリダイゼーション前に加熱処理等によって二本鎖を一本鎖にする。ハイブリダイゼーションは、例えば、「DNAアレイと最新PCR法」(秀潤社)に記載の方法に従って行えばよい。
なお、ステップ(c)のように競合ハイブリダイゼーションを行う代わりに、酵母の種類又は状態ごとに別々のDNAアレイ(但し、それぞれのDNAアレイの同じ位置には、同一のプラスミド又は既知遺伝子が結合しているものとする。)上でハイブリダイゼーションを行うこともできる。この場合は、cDNA又はcRNAの標識に用いる蛍光色素は、酵母の種類又は状態ごとに異なっていても、また、同一であってもよい。
ステップ(d)における蛍光強度の測定は、CCDカメラやスキャナで画像データを取得し、これをソフトウエアで数値化することにより行うことができる。
ステップ(e)における蛍光強度の比較は、ステップ(d)で測定された第1及び第2の蛍光色素の蛍光強度の比を求めることにより行うことができる。
ステップ(f)におけるDNA断片の配列解析では、ゲノムDNA断片の塩基配列を決定した後、そのDNA断片に含まれる遺伝子を同定し、その遺伝子の機能を予測する。具体的には、測定された蛍光強度に差の見られたゲノムDNA断片について、その塩基配列を決定した後、酵母株の種類又は状態と関連付け、また、データベースリサーチ(相同性検索等)を行うことにより遺伝子を同定し、ゲノムDNA断片中の遺伝子の機能を予測する。ここで、蛍光強度に差の見られたゲノムDNA断片の検出は、ステップ(a)〜(e)を複数回繰り返し、その結果を発現比率パターンの類似度に基づいてクラスタリングすることにより行うのが好ましい。なお、配列解析は、解析対象のゲノムDNA断片に対応する、ライブラリー中のプラスミドを用いて行えばよい。
ステップ(c)でDNAアレイ20を用いた場合は、ステップ(f)において、既知遺伝子と類似又は同調する蛍光強度のパターン(第1及び第2の蛍光色素の蛍光強度の比率)を示したゲノムDNA断片の配列を解析することによって、そのゲノムDNA断片に含まれる遺伝子を同定し、その機能を推定することができる。この場合、その遺伝子の塩基配列を同定した後、既知遺伝子の機能と関連付け、また、データベースリサーチ(相同性検索等)を行うことにより、ゲノムDNA断片中の遺伝子の機能を予測する。ここで、既知遺伝子と類似又は同調する蛍光強度のパターンを示すゲノムDNA断片の検出は、ステップ(a)〜(e)を複数回繰り返し、その結果を発現比率パターンの類似度に基づいてクラスタリングすることにより行うのが好ましい。
本発明の遺伝子発現解析方法は、ステップ(f)に至る前までに、DNAアレイ上のゲノムDNA断片中の、リボソームRNAの遺伝子領域を特定するステップを備えていることが好ましい。リボソームRNAの遺伝子領域が特定されていれば、配列解析においてそのような領域を除外して、より精度の高い解析を行うことが可能になる。
リボソームRNAの遺伝子領域の特定は、下記の操作1)〜3)により行うことができる。
1)18SリボソームRNA遺伝子の一部及び28SリボソームRNA遺伝子の一部をプライマーとして、また、醸造用酵母のゲノムDNAを鋳型として用いて、醸造用酵母のゲノムDNA中の18SリボソームRNA遺伝子領域及び28SリボソームRNA遺伝子領域に相補的なDNA断片をPCRで増幅させる。
2)得られたDNA断片を蛍光色素、放射性同位体等で標識する。
3)得られた標識DNA断片をDNAアレイ上のプラスミドとハイブリダイズさせる。
4)標識を検出する。
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1:DNAアレイの作製)
ランダムゲノムライブラリーの作製:
醸造用酵母としてサッカロマイセス・パストリアヌス・ヴァイヘンステファン34/70を用いて、醸造用酵母のランダムゲノムライブラリーを作製した。
醸造用酵母からのゲノムDNAの抽出及び精製は、例えば、「酵母遺伝子実験マニュアル(Method in Yeast Genetics A ColdSpring Harbor Laboratory CourseManual)」(大矢禎一監修、丸善株式会社、p.113−119)に記載の方法に準じて行った。
ランダムゲノムライブラリーの作製は、次のように行った。1)DNA断片化装置(HydroShear)によってゲノムDNAを断片化した。2)得られたゲノムDNA断片を電気泳動したアガロースゲルから、約2.5kbpのDNA断片を切り出した。3)ゲノムDNA断片の末端を平滑化した後、pUC19ベクターに連結した。4)得られた組換えベクターを大腸菌に導入し、得られたコロニーよりグリセロールストックを作製した。5)グリセロールストックよりLB培地(10g/Lバクトトリプトン、5g/L酵母エキス、10g/L塩化ナトリウム、pH7.0)(液体培地)に大腸菌を移植し、約20000のプラスミドクローンを抽出した。各プラスミドクローンは約2.5kbpのゲノムDNA断片を含むので、抽出したプラスミドクローン全体は約50Mbp(2.5kbp×20000クローン)のゲノムDNA断片を含み、ゲノムサイズ24〜26Mbpの下面ビール酵母ゲノムを約2.0の冗長度で保有していたと推定される。
ランダムゲノムライブラリーの評価:
ランダムゲノムライブラリーの評価は、次のように行った。1)プラスミドDNAを制限酵素BamHIで消化した後、アガロースゲル電気泳動を行った。2)96穴プレート8枚に分注されたプラスミドDNAを鋳型として、ベクタープライマーによる塩基配列解析を行った。その結果、約90%のクローンは、ゲノムDNAの挿入断片を有することが確認された。すなわち、作製されるDNAアレイの実質的な冗長度は約1.8(2.0×0.9)になると推定される。
DNAアレイの作製:
図3は、実施例1で作製したDNAアレイを模式的に示す平面図である。図3に示されるように、実施例1で作製したDNAアレイ30では、12行×4列(計48個)のブロック4が基板1上に配列している。図4は、DNAアレイ30のブロック4の一つを拡大して模式的に示した平面図である。ブロック4はプラスミド2又は既知遺伝子3が結合した21×21個のスポットから構成されている。既知遺伝子3が結合した21個のスポットは、各ブロック4において、DNAアレイ30の短辺方向の最端の一列を構成している。なお、図4では、ブランクは便宜上、既知遺伝子3として示している。異なるスポットに結合している既知遺伝子3は、互いに種類が異なっていてもよい。
DNAアレイ30の作製は、プラスミド2を各ブロック4の2〜21行目のスポットに、既知遺伝子3を各ブロック4の1行目のスポットに固定化することにより行った。基板1としてはガラス基板を用い、固定化は、アルカリ性固定液に溶解したプラスミド2又は既知遺伝子3を、表面処理(ポリリジン処理)を施したガラス基板上にスポッティングすることにより行った。
既知遺伝子3としてはサッカロマイセス・セレビシェ由来のものを用い、これをPCRで増幅させたDNAを固定化した。DNAアレイに固定化した既知遺伝子の遺伝子名、機能、及びPCR増幅において使用したプライマーの種類は下記1)〜10)のとおりである。
1) 遺伝子名:ACT1、機能:アクチン生成、プライマー:(5’−TCGGTAGACCAAGACACCAA−3’、5’−CCTTACGGACATCGACATCA−3’)
2) 遺伝子名:ATF1、機能:酢酸エステル合成、プライマー:(5’−GCCACATCCAGTGCATGATT−3’、5’−TAGTTGTGAGCGGCAATCTG−3’)
3) 遺伝子名:ATF2、機能:酢酸エステル合成、プライマー:(5’−CGAAGAGGCCTAATTGGAGA−3’、5’−TCACCGTTGTCGTACGATTC−3’)
4) 遺伝子名:Lg−ATF1、機能:酢酸エステル合成、プライマー:(5’−GGTGTGATTCTCAACGAGCA−3’、5’−AACGGAGTGATGGTGCACTT−3’)
5) 遺伝子名:EHT1、機能:脂質代謝、プライマー:(5’−TACCAGAGGTTGTGCACGTT−3’、5’−TCTGCAATTGCCTTGGTAGC−3’)
6) 遺伝子名:IAH1、機能:エステラーゼ活性、プライマー:(5’−GATCAGTATGCTCTTGGAGC−3’、5’−GTTGTTGCCAAGCATCACCA−3’)
7) 遺伝子名:LEU4、機能:イソプロピルマレート合成、プライマー:(5’−ACGGTGGAAGCATTAACAGG−3’、5’−GGATCCAATGGCAAGTATGG−3’)
8) 遺伝子名:OLE1、機能:脂肪酸の不飽和化、プライマー:(5’−CTCCGTTTTCTACTACGCTG−3’、5’−GTTGGGTCGTATTGGTACCA−3’)
9) 遺伝子名:SSU1、機能:亜硫酸塩の輸送、プライマー:(5’−TGCTCTTACGAGGCAGTTTG−3’、5’−ATGGCATGCAGCCACGTTAA−3’)
10) 遺伝子名:Lg−FLO1、機能:凝集性遺伝子、プライマー:(5’−CAACAAAGCAAACCAAGGGG−3’、5’−TTACCATACGATTGCCAGCA−3’)
各ブロック4において、DNAアレイ30の短辺方向の最端の一列を構成するスポットには、1:ACT1、2:ATF1、3:ATF2、4:Lg−ATF1、5:EHT1、6:IAH1、7:LEU4、8:OLE1、9〜18:ブランク、19:pUC19(コントロール)、20:SSU1、21:Lg−FLO1を順に固定化した。すなわち、DNAアレイ30には、528個(11×4列×12行)の既知遺伝子(コントロールを含む)と、20160個(20×21×4列×12行)個のプラスミドとがガラス基板表面に固定化されている。なお、ACT1遺伝子は、醸造用酵母の種類又は状態に関わらず構成的に発現している遺伝子である。
リボソームRNA遺伝子領域の特定:
上記DNAアレイ上のゲノムDNA断片中に重複して存在するリボソームRNA遺伝子領域を特定するために、下記に示した配列を有するDNA断片を18SリボソームRNA遺伝子及び28SリボソームRNA遺伝子用のプライマーとして、また、下面ビール酵母のゲノムDNAを鋳型として用いて、下面ビール酵母のゲノムDNA中の18SリボソームRNA遺伝子領域及び28SリボソームRNA遺伝子領域に相補的なDNA断片をPCRで増幅させた。
・18SリボソームRNA遺伝子用プライマー:
(5’−CTGGTTGATYCTGCCAGT−3’、5’−CYGCAGGTTCACCTACRG−3’)
・28SリボソームRNA遺伝子用プライマー:
(5’−RCATCGATGAAGAACGYWG−3’、5’−MRGGCTKAATCTCARYRGATCG−3’)
得られたDNA断片をCy5で標識してプローブとし、このプローブを用いて上記DNAアレイ上でハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションは、例えば、「DNAアレイと最新PCR法」(秀潤社)に記載の方法に従って、62℃の恒温槽で14時間行った。
その結果、基板に固定化したゲノムDNA断片20160個の内、1129個(約6%)のゲノムDNA断片をリボソームRNA遺伝子領域であると判断し、以降の解析ではマスクすることにした。
(実施例2:下面ビール酵母の遺伝子発現解析)
トータルRNAの抽出:
下面ビール酵母を用いた発酵試験を以下の条件で行った。
・麦汁エキス濃度 約11%
・麦汁容量 2.5L
・麦汁溶存酸素濃度 約5〜10ppm
・発酵温度 約13℃
・酵母投入量 20〜24g湿酵母菌体
・発酵回数 3回
発酵液を経時的にサンプリングし、浮遊酵母数(酵母増殖量)の経時変化を調べた。発酵初期、中期及び後期に浮遊している酵母をサンプリングした。具体的には、発酵開始から47、95及び143時間が経過した時点でサンプリングを行った。図5は、浮遊酵母数の経時変化を示すグラフである。
上記の3種の発酵途中の酵母のそれぞれから、次のようにトータルRNAを抽出した。1)発酵液より回収した酵母(約1g)を遠心チューブごと液体窒素で凍結させた。2)凍結している状態の酵母をクライオプレス(マイクロテック・ニチオン社製)で磨砕した(30秒間の磨砕を3回行った)。3)磨砕物を約10mlのIsogenTM(ニッポンジーン社製)に溶解し、付属のマニュアルに従ってトータルRNAを精製した。
発酵後期の酵母から抽出したトータルRNAについて、吸光度測定によってその濃度を、また、バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)によってその品質をチェックした。濃度は、231.79ng/μLであった。図6は、抽出したトータルRNAの純度をバイオアナライザーで分析した結果を示すチャートである。図6に示されるように、抽出したトータルRNA中の18S及び28SリボソームRNAの比率は1:1.6であり、かつ、28SリボソームRNA由来の分解産物は検出されなかった。これらの結果より、高純度のトータルRNAが抽出されたことが分かる。
蛍光色素による標識:
上記トータルRNAに対し、オリゴdTプライマーをアニールさせた後、aminoallyl−dUTP存在下で逆転写酵素反応を行い、aminoallyl−dUTPが導入されたcDNAを調製した。カップリング反応を用いてcDNAをCyanine色素(Cy3又はCy5)で標識した。一個のDNAアレイ上のプラスミド及び既知遺伝子にハイブリダイズさせる2種のcDNAの一方をCy3(緑色色素)で、他方をCy5(赤色色素)で標識した。
ハイブリダイゼーション:
一個のDNAアレイにつき2種の蛍光色素標識cDNAを、DNAアレイ上のプラスミド及び既知遺伝子に競合的にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは、例えば、「DNAアレイと最新PCR法」(秀潤社)に記載の方法に従って、62℃の恒温槽で14時間行った。
蛍光強度の測定:
ハイブリダイゼーション後、DNAアレイを洗浄し、スライドスキャナー(Agilent Scanner、Agilent社製)でシグナルを取り込んだ。得られたシグナルの画像データは、専用ソフトFeatureExtraction〈Agilent社製)を用いて数値データに変換した。バックグラウンドにはネガティブコントロールの蛍光値を用い、各スポットの蛍光値から差し引いた。サンプルとコントロール(pUC19)間のノーマライゼーションは、グローバルノーマライゼーション法(全体のスポットを用いて正規化する方法)によって行った。
上記ハイブリダイゼーション実験の良否の確認は、スキャニング後の画像におけるACT1遺伝子の48個(4列×12行)分の蛍光強度から判断した。図7は、DNAアレイの短辺方向の最端の一列を構成する4ブロックについて検出された蛍光を示す写真に対応する図である。図7において、既知遺伝子(ブランクを含む。)が結合したスポットは、各ブロック内で、DNAアレイの短辺側の最端の一列を構成している。図7に示されるように、構成的に発現しているACT1遺伝子(図中、白色の丸枠でその位置を示している。)の蛍光強度がどのブロックにおいてもほぼ一定であることから、ハイブリダイゼーション実験の結果が良であると判断した。
配列解析:
3回の発酵試験で得られたDNAアレイ上の蛍光パターンに基づいて、クラスタリングを行った。既知遺伝子として、アルコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子ATF1を固定化したスポットと蛍光パターンが同調する7つのスポットが選ばれた。これらのスポットについて、ランダムゲノムライブラリー中の相当するゲノムDNA断片の配列解析を行い、BLAST等を用いたデータベースリサーチから遺伝子の機能を推定した。その結果、6つのゲノムDNA断片(SBc40I13、SBc48I02、SBc14M04、SBc43M13、SBc27E10及びSBc22M06)からは、表1の10個の遺伝子がアノテーションされたが、1つのゲノムDNA断片(SBc17A14)は非サッカロミセス・セレビシェタイプであった。図8は、DNAアレイ上の蛍光パターンに基づいて行ったクラスタリングの結果を示す図である。図8において、control02はATF1遺伝子を表す。
Figure 0004879161
また、クラスタリングにより、発酵工程中に遺伝子発現が上昇し続けるスポットが5つ選ばれた。これらのスポットに対応する5つのゲノムDNA断片(SBc25J18、SBc35O20、SBc42N04、SBc32N16及びSBc33P17)は、配列解析により、サッカロミセス・セレビシェに同等するゲノムDNA断片であることが明らかとなった。図9は、サッカロミセス・セレビシェのゲノムDNA中におけるSBc33P17の領域の位置を示す図である。図9に示されるように、SBc33P17は、サッカロミセス・セレビシェの第XV染色体の32250bp〜34492bpの領域に相当するが、本領域にはオープン・リーディング・フレームが存在せず、non−coding領域であった。
本発明によれば、醸造用酵母のゲノム配列情報を予め取得する必要がなく、かつ、醸造用酵母発酵過程の制御に十分利用することができる遺伝子発現解析方法、及び当該遺伝子発現解析方法に用いるDNAアレイが提供される。本発明のDNAアレイ及び遺伝子発現解析方法は、酵母の発酵を用いる酒類の製造に利用することができる。

Claims (7)

  1. 基板上の複数のスポットに、下面ビール酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合し、
    前記ゲノムDNA断片のサイズが1.5〜3.0kbpであり、
    冗長度が1.5以上2.0以下であり、
    醸造用酵母の遺伝子が結合した他のスポットが更に存在し、かつ、当該遺伝子は、それと類似又は同調する発現パターンを示した前記ゲノムDNA断片に含まれる遺伝子を同定し、その機能を推定するために用いられる、DNAアレイ。
  2. 下面ビール酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合した複数のスポットと、醸造用酵母の遺伝子が結合したスポットとから構成されるブロックが、基板上に複数配列している、請求項1に記載のDNAアレイ。
  3. 前記ブロックが等しい形状を有しており、それぞれのブロックの同じ位置に、醸造用酵母の遺伝子が結合したスポットが存在する、請求項記載のDNAアレイ。
  4. (a)種類又は状態が異なる2種の下面ビール酵母から、それぞれトータルRNAを抽出するステップと、
    (b)一方の種の前記トータルRNAから第1の蛍光色素で標識したcDNA又はcRNAを得、他方の種の前記トータルRNAから第2の蛍光色素で標識したcDNA又はcRNAを得るステップと、
    (c)基板上の複数のスポットに、前記下面ビール酵母と同一又は異なる下面ビール酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合し、前記ゲノムDNA断片のサイズが1.5〜3.0kbpであり、冗長度が1.5以上2.0以下であり、醸造用酵母の遺伝子が結合した他のスポットが更に存在し、かつ、当該遺伝子は、それと類似又は同調する発現パターンを示した前記ゲノムDNA断片に含まれる遺伝子を同定し、その機能を推定するために用いられる、DNAアレイ上で、前記2種の標識cDNA又は2種の標識cRNAを競合ハイブリダイズさせるステップと、
    (d)前記スポットのそれぞれにおいて、前記第1の蛍光色素及び前記第2の蛍光色素が発する蛍光を測定するステップと、
    (e)前記第1の蛍光色素が発する蛍光の強度と、前記第2の蛍光色素が発する蛍光の強度とを比較するステップと、
    (f)蛍光の強度に差の見られたスポットのプラスミド中のゲノムDNA断片の配列を解析するステップと、を備える下面ビール酵母の遺伝子発現解析方法。
  5. (a)種類又は状態が異なる2種の下面ビール酵母から、それぞれトータルRNAを抽出するステップと、
    (b)前記トータルRNAから以下の(b1)又は(b2)を得るステップと、
    (b1)第1の蛍光色素で標識した第1の標識cDNA及び第2の蛍光色素で標識した第2の標識cDNA
    (b2)第1の蛍光色素で標識した第1の標識cRNA及び第2の蛍光色素で標識した第2の標識cRNA
    (c)基板上の複数のスポットに、前記下面ビール酵母と同一又は異なる下面ビール酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合し、前記ゲノムDNA断片のサイズが1.5〜3.0kbpであり、冗長度が1.5以上2.0以下であり、醸造用酵母の遺伝子が結合した他のスポットが更に存在し、かつ、当該遺伝子は、それと類似又は同調する発現パターンを示した前記ゲノムDNA断片に含まれる遺伝子を同定し、その機能を推定するために用いられる、DNAアレイを2つ準備し(但し、2つのDNAアレイは同一のもので、一方を第1のDNAアレイ、他方を第2のDNAアレイとする。)、以下の(c1)又は(c2)のようにハイブリダイズさせるステップと、
    (c1)第1のDNAアレイに対して第1の標識cDNA、第2のDNAアレイに対して第2の標識cDNA
    (c2)第1のDNAアレイに対して第1の標識cRNA、第2のDNAアレイに対して第2の標識cRNA
    (d)前記第1のDNAアレイと前記第2のDNAアレイの対応するスポットのそれぞれにおいて、前記第1の蛍光色素及び前記第2の蛍光色素が発する蛍光を測定するステップと、
    (e)前記第1の蛍光色素が発する蛍光の強度と、前記第2の蛍光色素が発する蛍光の強度とを比較するステップと、
    (f)蛍光の強度に差の見られたスポットのプラスミド中のゲノムDNA断片の配列を解析するステップと、を備える下面ビール酵母の遺伝子発現解析方法。
  6. ステップ(c)で用いるDNAアレイにおいて、下面ビール酵母のゲノムDNA断片を含むプラスミドが結合した複数のスポットと、醸造用酵母の遺伝子が結合したスポットとから構成されるブロックが、基板上に複数配列している、請求項4又は5に記載の遺伝子発現解析方法。
  7. ステップ(c)で用いるDNAアレイにおいて、前記ブロックが等しい形状を有しており、それぞれのブロックの同じ位置に、醸造用酵母の遺伝子が結合したスポットが存在する、請求項6に記載の遺伝子発現解析方法。
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