JP2005224103A - Dnaアレイ、それを用いた遺伝子発現解析方法及び有用遺伝子探索方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ランダムに切断したゲノムDNA断片より調整したゲノムライブラリーを個々に識別し対応付けを可能とする基板に直接固定することにより、遺伝子配列情報量に一切の制限を受けることなく網羅的遺伝子発現解析を可能とする。さらに、作成したランダムゲノムDNAアレイにより検出したプラスミドをより短いDNAに断片化して基板上に固定したサブDNAアレイを作製して遺伝子発現を解析し、有用遺伝子を探索する。
【選択図】図5
Description
なお、従来の複数の遺伝子候補からの発現変動遺伝子探索フローの例を、図3に示す。従来は、1.DNAアレイで発現変動が確認されたDNA断片の塩基配列解析、2.遺伝子の予測、3.ノーザンブロットあるいはRT-PCRによる予測された遺伝子個々の発現解析、といった連続する複数の解析が必要であった。
真核生物ではそのmRNAは3’端にpoly A構造を共通して保持する特徴を利用して個々の遺伝子配列に対応するcDNAクローンを回収することが可能であり、また一般にEST解析と呼ばれる手法により個々の遺伝子配列の少なくとも一部を解析することが可能である。しかし、大腸菌をはじめとする原核生物のmRNAはpoly Aのような共通構造を持たない為EST解析は困難であり、真核生物にて用いられるようなcDNAクローンをプローブとする高密度DNAアレイは作製されていない。
また、上記非特許文献1、2の方法では、PCRはその増幅対象となるDNA配列によって反応結果が不安定であり、増幅が見られない場合、あるいは目的とする断片以外の余分なDNA断片増幅、が観察される。そのため、PCR後に増幅産物の確認作業が必須であり、DNAアレイの作製にあたって塩基配列情報は必要なくなったものの依然その作製工程は猥雑である。
(1)アレイ、及びアレイの作成方法について、有用遺伝子探索のフローを表わした図5の上段部や、ランダムゲノムDNAアレイ作成フローを表わした図2に示すとおり、ランダムゲノムライブラリーを構築し、配列解析を行うことなく各々のゲノムDNA断片を基板上に固定する。即ち、ランダムゲノムライブラリーから抽出したクローンをそのまま基板上に固定するのである。固定するDNA断片の調製にPCRを用いないことにより、基版に固定するDNA断片長をより長くすることが可能となり、任意のDNA断片長を固定したDNAアレイの作製が可能となった。
(2)また、発現解析方法については、図5の中段に示した通りである。即ち、上記(1)にて作成したランダムゲノムDNAアレイに、RNAを逆転写した蛍光標識されたcDNAなど、サンプルを供給し、ハイブリダイゼーション反応させて、発現解析を行う。このサンプルは、例えばコントロールと特定の刺激を与えるなど培養条件を変えた2種類以上のRNAを準備し、競合反応させてもよい。
加えてクローンを直接固定化することにより、PCR増幅可能な長さに制限されていたDNA断片長を発現解析の目的に応じて数 kbp〜数十 kbpあるいはそれ以上の長さに自由に選択可能とした。網羅的な発現解析を行うには同一基板上に全遺伝子種のDNA断片が固定されていることが望まれるが、固定する分子の種類は解析対象とする生物のゲノムサイズと固定するDNA断片の長さ、同一基板に固定可能なDNA断片数、基板作製のコストにより決定される。ゲノムサイズが大きい場合や、基板に固定可能なDNA断片数が少ない場合、作製コストを低くしたい場合には、固定するDNA断片長を長くすることが効果的である。
次に本発明では、先に作製されたDNAアレイにおいて発現変動が確認されたDNA断片をさらに短いゲノム断片に分割、具体的には1遺伝子あるいは1エクソン長より短いと想定される500 bp程度の断片に分割し、再度DNAアレイ(サブDNAアレイ)を作製して発現解析を行うことにより、真に発現変動する遺伝子を網羅的に解析することを特徴とする。
しかし、本発明で作製するDNAアレイを用いた網羅的発現解析の結果により確認された複数のDNA断片についてこれらの解析を行うのは煩雑な場合がある。
本発明においてゲノムDNA断片を結合させる基板として、ポリリジン処理を行ったスライドガラスを使用し、スポッティング法によってDNA断片を固定したが、ゲノムDNA断片を固定しうるものであれば使用する基板に特に制限はなく、またその固定方法も制限を受けない。
なお、DNAの切断、連結、大腸菌の形質転換、遺伝子の塩基配列決定、cDNAの標識等一般の遺伝子解析に必要な方法は、一般的に用いられる方法によってしたがって行うことができる。
(実施例1 ランダムゲノムDNAアレイの作製)
大腸菌JM-109株よりCTAB法によりゲノムDNAの抽出を行った。
抽出したゲノムDNAを制限酵素Taq αIにより部分分解し、約2 k bpの切断DNA断片群をアガロースゲルより回収した。
酵素処理済のpUC19を大腸菌より回収した切断ゲノムDNA断片と混合し、ライゲースにより連結し、大腸菌 XLI-Blue MRF'株のコンピテントセルに導入を行った。
寒天培地上より任意の3000コロニーのプラスミド導入大腸菌よりアルカリ-SDS法によりプラスミドを回収し、ランダムゲノムライブラリーをプラスミド3000クローンとして得た。このプラスミドライブラリーはそれぞれ約 2 k bpのゲノム切断断片を含むので、3000クローンでは6 M bp (2 k bp×3000クローン)のゲノム断片からなり、ゲノムサイズ4.2 M bpの大腸菌ゲノムを約1.4の冗長度で保有すると想定された。
ランダムゲノムDNAアレイによる発現解析の精度評価を目的としてOD600=1.0 まで37℃のLB液体培地で培養した大腸菌JM-109株より total RNAを抽出した。
抽出したtotal RNAをランダム6 merをプライマーとして逆転写酵素によりcDNA化した。合成したcDNAを2つに分け、それぞれをCy3あるいはCy5で標識し、同一のランダムゲノムDNAアレイ上にて競合ハイブリダイセーションを行った。得られたシグナル値をプロットした結果を図6に示した。アレイ上に固定したスポットは2倍発現変化内に分布しており、この結果は発現比較実験により得られる2倍以上の変化を示すクローンは発現に差があるものと推察される。
3種のtotal RNAをランダム6 merをプライマーとして逆転写酵素によりcDNA化した後、高温刺激による遺伝子発現変化の解析では37℃培養大腸菌に由来するcDNAをCy3で標識し、50℃培養大腸菌に由来するcDNAをCy5で標識を行い、同一のランダムゲノムDNAアレイ上にて競合ハイブリダイセーションを行った。図7のAは高温刺激の解析結果であり、横軸に50℃培養に由来するシグナル値、縦軸に37℃培養に由来するシグナル値をプロットしたものである。
いずれの解析においてもグラフ中に赤破線で示した2倍発現変動を超える値を示した複数の固定DNA断片が確認され、培養条件による遺伝子発現の差を本発明により作製したランダムゲノムDNAアレイにより検出可能であることが確かめられた。
この結果は、本発明により作製したアレイにより得られる網羅的発現解析の結果は信頼できるものであることを示している。
サブDNAアレイ作製の概要図を図10に示した。ランダムゲノムDNAアレイにより検出された発現変動プラスミド個々をそれぞれ制限酵素あるいは物理せん断により500 bp程度の断片に分割後、プラスミドベクターに連結し、プラスミドライブラリーを得る。回収するコロニーの数は切断前の発現変動プラスミドに挿入されていたゲノムDNA断片長に依存して変動するが、網羅性を保持するためには冗長度5以上となる数を得るのが好ましい。
標識したcDNAを用いたハイブリダイゼーションを行って個々のスポットについて発現変動を解析する。
本サブDNAアレイ上に固定されているゲノムDNA断片は500 bp程度と充分に短いため、単一の遺伝子のみを含むと推察され、塩基配列解析により容易に真に発現が変動する遺伝子についても同定可能である。
参照株に対し異なる表現形を与える変異株を有する場合、参照株あるいは変異株のゲノムDNAライブラリーより作製したショットガンゲノムアレイ、もしくはそれぞれの株のゲノムライブラリーを同一基板上に固定したアレイを用いて、それぞれの株の発現解析を行うことが可能である。本解析によって得られる遺伝子発現の違いは株間の表現系の違いに関係すると推察される。
例えば標準株(α株)に対し、生産性の高い変異株(β株)、生産性の低い変異株(γ株)の発現比較を行うことにより、生産性の向上に寄与する遺伝子及び生産性の低下に寄与する遺伝子を検出可能である。生産性を改変する遺伝子は、遺伝子組換え等の生物育種に利用可能であり、産業応用において非常に重要である。
尚、類縁株の解析も同様の手法で解析可能である。
ランダムゲノムアレイは高い網羅性を達成するために、基板上に多くのDNA断片を固定している。しかし、発現解析の結果により注目すべきDNA断片が決定された場合は、ランダムゲノムアレイの網羅性を維持する必要はないと思われる。
Claims (10)
- 任意の細胞由来のゲノムDNAの断片を含む、プラスミドを表面に固定化した核酸アレイ。
- 任意の細胞からゲノムDNAを抽出する工程と、
前記ゲノムDNAを断片化して得られるゲノムDNA断片を含むプラスミドを作製する工程と、
前記ゲノムDNA断片を含むプラスミドを基板に固定化する工程とを有することを特徴とする核酸アレイ作製方法。 - 任意の細胞からゲノムDNAを抽出する工程と、
前記ゲノムDNAを断片化して得られるゲノムDNA断片を含むプラスミドを作製する工程と、
前記ゲノムDNA断片を含むプラスミドを固定化した第1の基板を用いて、前記ゲノムDNA断片を含むプラスミドから任意のプラスミドを選択する工程と、
前記任意のプラスミドを断片化して得られる任意プラスミド断片を含むプラスミドを作製する工程と、
前記任意プラスミド断片を含むプラスミドを第2の基板に固定化する工程とを有することを特徴とする核酸アレイ作成方法。 - ゲノムDNAの少なくとも一部から作成されたゲノムライブラリーを用いて、前記ゲノムDNAの塩基配列の少なくとも一部を含む第1の核酸分子群を調整する工程と、
前記第1の核酸分子群を第1の基板に固定化する工程と、
前記第1の基板に分析対象核酸を供給し、前記第1の核酸分子群と前記分析対象核酸とのハイブリダイズの結果を解析する工程とを有することを特徴とする核酸分析方法。 - 前記ハイブリダイズの結果の解析に基づいて、前記第1の核酸分子群のうちの任意の核酸分子の塩基配列を選択する工程と、
前記任意の核酸分子を断片化し、短断片群からなるサブゲノムライブラリーを作成する工程と、
前記サブゲノムライブラリーを用いて、前記任意の核酸分子の塩基配列の少なくとも一部を含む第2の核酸分子群を調整する工程と、
前記第2の核酸分子群を第2の基板に固定化する工程と、
前記第2の基板に前記分析対象核酸を供給し、前記第2の核酸分子群と前記分析対象核酸とのハイブリダイズの結果を解析する工程とをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の核酸分析方法。 - 前記分析対象核酸は、前記ゲノムDNAをゲノムDNAとして保持する生物より得るmRNAを鋳型として調整したcDNAであることを特徴とする請求項4に記載の核酸分析方法。
- 前記任意の核酸分子の塩基配列を選択する工程では、前記任意の核酸分子の塩基配列について相同性検索を行い、前記任意の核酸分子が含む遺伝子の解析を行うことを特徴とする請求項5に記載の核酸分析方法。
- 前記短断片群の断片長は、前記ゲノムDNAが原核生物由来の場合には予想される遺伝子長、前記ゲノムDNAが真核生物の場合にはエクソン長以下のDNA断片であることを特徴とする請求項5に記載の核酸分析方法。
- 前記ゲノムDNAは培養条件変化の前の細胞に由来したものであり、前記分析対象核酸は前記培養条件変化の後の細胞に由来したものであり、前記第1の核酸分子群と前記分析対象核酸とのハイブリダイズの結果を解析する工程では、前記培養条件変化の前後での遺伝子発現について分析することを特徴とする請求項4に記載の核酸分析方法。
- 前記ハイブリダイズの結果の解析に基づき、前記第1の核酸分子群から任意の核酸分子を選択して第3の基板に固定化する工程と、前記第3の基板に前記分析対象核酸を供給し、前記任意の核酸分子と前記分析対象核酸とのハイブリダイズの結果を解析する工程とをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の核酸分析方法。
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