JP2004282039A - 電子デバイス - Google Patents

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JP2004282039A
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隆一 山本
Takashi Kokubo
尚 小久保
Masahiro Kobashi
昌浩 小橋
Yoshimasa Sakai
良正 酒井
Shinji Aramaki
晋司 荒牧
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Tokyo Institute of Technology NUC
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Tokyo Institute of Technology NUC
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Abstract

【課題】 本発明は、可溶性導電性高分子溶液から自己組織的に凝集し、且つ、その主鎖骨格の結合様式に立体規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず、また結晶の程度、特にラメラ構造の発達の程度に拘わらず、良好な電荷輸送能を有する導電性高分子膜を用いた電子デバイスを提供することを主目的とする。
【解決手段】 本発明は、一般式(1):
【化1】
Figure 2004282039

[式中、Dは電子供与性を有する芳香族基を示し、Aは電子受容性を有する芳香族基を示し、D及びAはそれぞれ芳香環上に置換基を有していても良く、D及びAを構成する全ての原子の中心が、D及びA各々のπ共役平面まで2Å以内に配置された分子構造を有し、Xは3以上の整数を示す]で表される構造を有し、且つ、主鎖骨格において炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合が単結合と交互に連なった構造を有するπ共役交互共重合体を用いることを特徴とする電子デバイスを提供することにより上記目的を達成するものである。
【選択図】 無し

Description

本発明は、有機半導体を用いた電子デバイスに関し、より詳しくは電子供与性部分と電子受容性部分とが交互に結合してなるπ共役交互共重合体を電荷輸送材料として用いた電気−光変換素子、電気・電子素子に関する。
π共役高分子いわゆる導電性高分子は、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系から成り立っており半導体的性質を示す(非特許文献1など参照)。また、一般に導電性高分子は、電子供与性化合物や電子受容性化合物をドープすることによりπ共役主鎖中に電荷が発生し、電気伝導度を大きく増大させることが可能である。例えば、代表的な導電性高分子であるポリアセチレンにおいてはそのフィルムを一軸延伸しヨウ素を高濃度にドープした場合、延伸方向の電気伝導度は10S/cmを示し金属銅と同程度の値を示すことが知られている(非特許文献2など参照)。このように導電性高分子は半導体的性質から金属的性質までを取ることが可能で電気−光変換素子(発光素子)、光−電気変換素子(受光素子)、電気・電子素子への応用研究が活発に行われている。
特に、有機溶媒等に可溶な導電性高分子は、その溶液からスピンコート法、キャスト法、ディップ法等の塗布法、インクジェット法等の印刷法により導電性高分子層を形成できるため、大面積の素子が高価な設備を必要とせず低コストで製造できる利点がある。例えば、インクジェット法により導電性高分子層を作製し電荷輸送層兼発光層として用いたEL(electro luminescence)素子が試作されておりさらに大画面化を目指して研究開発が行われている。また近年、塗布法、印刷法の利点を活かし、半導体層を可溶性導電性高分子で形成した電界効果トランジスタの研究開発が活発化しており、安価な情報タグや前述した有機ELのスイッチング素子などへの応用が期待されている。
このような各種素子に応用する場合、導電性高分子はそれらが凝集して得られる薄膜状態で用いられる場合が多い。その場合、薄膜として良好な電荷輸送能を得るために薄膜中における導電性高分子主鎖内及び主鎖間の有効な導電経路が得られるように導電性高分子及びそれらの凝集構造を制御する必要がある。
前述したように導電性高分子においては高分子主鎖内にπ共役が発達しているため主鎖方向への電荷輸送が基本的に有利である。この性質を利用するために配向したポリイミド膜をガイドとしその配向方向に導電性高分子主鎖が配向するように薄膜を形成しその配向方向すなわち導電性高分子主鎖方向から電荷を取り出すようにした電界効果トランジスタが作製され電荷輸送能を示す電荷移動度が約0.01cm/Vsの比較的大きな値が報告されている(非特許文献3参照)。しかしこの場合、配向したポリイミド膜上に導電性高分子を配向させ固定するために、主鎖型液晶性を示す導電性高分子を用い約280℃で等方相を経由しその後急冷する方法が取られる。このような主鎖型液晶の場合においては、等方相を経由するのに一般的に高温加熱が必要であるという欠点が存在し素子基板が耐熱性に乏しい高分子基板のような場合にはこのような配向プロセスを用いることは出来ない。またこの場合、高分子主鎖方向への有利な電荷輸送は活かされているが高分子主鎖間の良好なπ共役相互作用は達成されていないと考えられる。
一方で可溶性導電性高分子溶液から自己組織的に導電性高分子主鎖間の良好なπ共役相互作用が得られるような系も研究されている。例えば、チオフェン骨格の3位に炭素数4以上のアルキル基を有するポリ(3−アルキルチオフェン)において下記一般式(3):
Figure 2004282039
に示す様な3−アルキルチオフェンの2位と5位とが順次結合し3−アルキルチオフェン骨格相互間の結合様式に立体規則性がある部分においては薄膜化条件を制御することにより自己組織的に凝集し、アルキル側鎖同士、主鎖チオフェン骨格同士が積層したカラム構造いわゆるラメラ構造を形成し主鎖間距離は約3.8Åとなり、且つ、このラメラ構造における主鎖内のチオフェン環同士は平面構造を取る(非特許文献4など参照)。また、グラファイトにおいてはベンゼン環が二次元的に密に連なった強いπ共役相互作用を持つ六員環網状平面の炭素の層から成り立っており、層間距離は3.35Åで常温、常圧における中性状態のπ共役化合物間の相互作用距離では最も短くなっている。従ってグラファイトにおいては炭素六員環網状平面内及び平面間において良好な導電経路が形成されている。前述したポリ(3−アルキルチオフェン)のラメラ構造部分においても主鎖内チオフェン環同士が平面構造を取り、主鎖間距離がグラファイトの層間距離に近いことからラメラ構造部分では主鎖内及び主鎖間で良好な導電経路が形成されていると考えられる。しかし、前記ポリ(3−アルキルチオフェン)において一般式(4)、(5):
Figure 2004282039
に示す様な結合様式の立体規則性がない部分は、π共役の連なりに対する欠陥となる様な主鎖内におけるチオフェン環同士のねじれを導入してしまい、またそのためにラメラ状積層構造を取り得なくなり電荷の輸送を妨げてしまう。従って、一般式(3)に示される部分が主鎖中平均で70〜80%存在し残り30〜20%が一般式(4)及び(5)で形成されるポリ(3−アルキルチオフェン)のキャスト膜を電界効果トランジスタの半導体層に用いた場合その電荷移動度は約10−7cm/Vsの低い値となることが報告されている(非特許文献5参照)。
Reviews of Modern Physics Vol. 60, p781, 1988年 Advances in Physics Vol. 41, p509, 1992年、Synthetic Metals Vol.22, p1, 1987年 Applied Physics Letters Vol. 77, p406, 2000年 Synthetic Metals Vol. 28, pC419, 1989年、Macromolecules Vol. 31, p7273, 1998年 Macromolecules Vol. 31, p7273, 1998年
以上のことから、可溶性導電性高分子溶液から自己組織的に凝集し、且つ、その凝集構造中に立体規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず良好な電荷輸送能を有する導電性高分子膜を用いた電子デバイスの提供が望まれている。
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、結合様式に立体規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず電子供与性部分と電子受容性部分とが交互に重合してなるπ共役交互共重合体が凝集状態で示す強い主鎖間π共役相互作用を活かし、室温における溶液塗布の簡便なプロセスから良好な電荷輸送層が得られるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明においては、請求項1に記載するように、一般式(1):
Figure 2004282039
[式中、Dは電子供与性を有する芳香族基を示し、Aは電子受容性を有する芳香族基を示し、D及びAはそれぞれ芳香環上に置換基を有していても良く、D及びAを構成する全ての原子の中心が、D及びA各々のπ共役平面まで2Å以内に配置された分子構造を有し、Xは3以上の整数を示す]で表される構造を有し、且つ、主鎖骨格において炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合が単結合と交互に連なった構造を有するπ共役交互共重合体を用いることを特徴とする電子デバイスを提供する。
本発明の電子デバイスは、電子供与性を有する芳香族基と電子受容性を有する芳香族基とが交互に結合し、主鎖骨格に二重結合と単結合とが交互に連なったπ共役交互共重合体の凝集状態において、電子供与・電子受容の結果として生成する正・負の電荷によって主鎖間に静電的引力が生じるため、強い主鎖間π共役相互作用が起こる。これを利用することにより、本発明の電子デバイスは室温における溶液塗布の簡便なプロセスから凝集構造中に立体規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず良好な電荷輸送能を有するものである。
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、上記A又はDが一般式(2):
Figure 2004282039
で表されるイミン結合部位が一つ以上含む芳香族基であるのが好ましい。
A又はDとしてイミン結合部位を一つ以上含む芳香族基を用いることによって、正・負の電荷の偏りが大きくなり、主鎖間π共役相互作用がより強いものとなるため、良好な導電経路を有し、キャリア移動度の高い高速応答性の電子デバイスが得られるからである。
また、上記請求項1または請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、上記D又はAが硫黄原子を一つ以上含む芳香族基であることが好ましい。
D又はAとして硫黄原子を一つ以上含む芳香族基を用いることにより、空気中で安定なπ共役交互共重合体が得られる。従って、高い移動度に代表される良好な半導体特性を示し、安定で劣化の少ない良好な電子デバイスが得られる。
さらに、上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記載するように、上記π共役交互共重合体が半導体的性質を有し、且つ、上記電子デバイスが電界効果トランジスタの機能を有することが好ましい。本発明の利点を効果的に発揮することができるからである。
本発明の電子デバイスは、π共役交互共重合体の凝集状態で示す強い主鎖間π共役相互作用を利用することにより、室温における溶液塗布の簡便なプロセスから主鎖骨格の結合様式に立体規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず、また結晶の程度、特にラメラ構造の発達の程度に拘わらず、良好な電荷輸送能を有するといった効果を奏する。
以下に、本発明の実施の形態を、代表例を示して詳細に説明する。
本発明の電子デバイスは、一般式(1):
Figure 2004282039
[式中、Dは電子供与性を有する芳香族基を示し、Aは電子受容性を有する芳香族基を示し、D及びAはそれぞれ芳香環上に置換基を有していても良く、D及びAを構成する全ての原子の中心が、D及びA各々のπ共役平面まで2Å以内に配置された分子構造を有し、Xは3以上の整数を示す]で表される構造を有し、且つ、主鎖骨格において炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合が単結合と交互に連なった構造を有するπ共役交互共重合体を用いることを特徴とするものであり、電子供与性を有する芳香族基と電子受容性を有する芳香族基とが交互に結合し、主鎖骨格に二重結合と単結合とが交互に連なったπ共役交互共重合体の凝集状態で示す強い主鎖間π共役相互作用を利用することにより、室温における溶液塗布の簡便なプロセスから凝集構造中に立体規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず良好な電荷輸送能を奏するものである。以下、本発明について、詳細に説明する。
[1]π共役交互共重合体
本発明に用いるπ共役交互共重合体は、上記一般式(1)で表される様に電子供与性を有する2価の芳香族基と電子受容性を有する2価の芳香族基とが交互に結合した構造を有しており、且つ、主鎖骨格において炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合が単結合と交互に連なった構造を有する。
ここで電子供与性及び電子受容性について説明する。本発明においては繰返し単位中の芳香族基Dから芳香族基Aにπ電子が移動している状態を、芳香族基Dが電子供与性を有し芳香族基Aが電子受容性を有すると称する。特には、J.J.P.Stewartにより開発された半経験的分子軌道法MOPAC Parametric Method 3(MOPAC PM3)で、調べることができる。
具体的には、繰り返し単位であるD−Aの両末端に水素原子を配したH−D−A−Hなる化合物を想定し、D、Aに共平面構造を取らせてそれ以外の構造を最適化し、HOMO(最高被占軌道)の電荷を算出した場合において、π電子密度が1より小さいものを電子供与性といい、1より大きいものを電子受容性という。
π共役交互共重合体を電子デバイスの電荷輸送層として用いる場合には、電子供与性を有する芳香族基D及び電子受容性を有する芳香族基Aがそれぞれ有するπ電子密度の差αは、鎖間相互作用を好適なものとすることができる範囲内であることが好ましく、通常0<αであり、好ましくは0.04<αであり、より好ましくは0.1<αである。一方、通常α<2であり、好ましくはα<1.9であり、より好ましくはα<1.4である。
MOPAC PM3による計算方法としては、D−Aユニットを複数個有する想定化合物、例えばH−D−A−D−A−Hの分子を、D、Aのπ共役面に平面構造をとらせて、それ以外の構造を最適化した場合に、中央のA−D対のD、A上に現れた全ての軌道の電荷を算出する方法が好ましく挙げられる。この方法は、D、Aに属する原子上の全ての軌道の電荷(電子電荷単位)を加え合わせることにより、算出するものである。この原子上の電荷の解析には、MOPACの計算で標準に用いるCoulsonの方法と、Mullikenの手法を用いる方法とがあるが、ここでは標準方法(Coulson法)で計算された値において、そのDとAとの電荷の差は0.02より大きいものが好ましく、0.03より大きいものがより好ましく、0.04より大きいものがさらに好ましく、0.05より大きいものが最も好ましい。
ここで、上記D、Aの組み合わせとしては、隣接する芳香族基同士の相対的な電子状態により、分子構造で一意的には決まらない。一般的な傾向として、酸化電位やイオン化ポテンシャルの低いものがDになりやすく、還元電位の低いものあるいは電子親和力の大きいものがAになりやすい傾向にある。また、3個以上あるいは3種類以上の芳香環が繰り返し単位に含まれる場合、例えば−X−Y−Z−、−X−X−Y−のような構造のものは、DとAにはいくつかの分割方法があるが、最も分極の大きな組み合わせをとればよい。例えば−チオフェン−チオフェン−チアゾール−のような繰り返し単位があった場合には、−ビチオフェン−チアゾール−とすれば最も大きな分極が見られることになるので、ビチオフェンをD、チアゾールをAとみなすことができる。
本発明において、D及びAは平面性の高い構造である。平面性の高い構造とは、D及びAを構成する全ての原子の中心が、D及びA各々のπ共役平面まで2Å以内に配置された分子構造のことをいう。共役鎖自体の平面性が低ければ、いくら分極が大きく、π共役鎖間に静電的引力が生じたとしても、その静電的引力による鎖間の相互作用は強くならない。
この平面性についても、上記H−D−A−D−A−Hの分子を用いた分子軌道計算を用いて調べることができる。これは、D、A部分のすべての原子の中心が、π共役平面まで2Å以内、好ましくは1.90Å以内、より好ましくは1.85Å以内、さらに好ましくは1.80Å以内に収まっている事で判断できる。
芳香環に別の芳香環が結合する際には、分子構造により自由回転が妨げられ、平面構造とならない事がある。例えば、ナフタレン環のα位に芳香環が結合したものは、ペリ位の立体障害により自由回転が妨げられるため、平面性を妨げる構造となるために好ましくないが、5員環もしくは6員環に、別の5員環もしくは6員環の無置換の芳香環が結合しているものは、2Å以内の平面性をとり得る。
一方、フルオレン基は、9位の炭素原子に原子の数として6個以上となる直鎖又は分岐鎖状の炭素原子含有基が結合したものは、必ず2Å以上になってしまうので、本発明に用いられるDやAとしては不適切である。
電子供与性を有する芳香族基D及び電子受容性を有する芳香族基Aに含まれる主鎖芳香環の数は、特に限定されないが、好ましくは3個以下、さらに好ましくは2個以下、より好ましくは1個である。この場合、縮合環は、1個として取り扱う。主鎖芳香環の数が、あまり大きくなりすぎると合成が困難になったり、溶解性が低下したりする可能性がある。
電子供与性を有する芳香族基D及び電子受容性を有する芳香族基Aは、不飽和結合を持ち、4n+2(nは任意の整数)のπ電子を持つ平面構造分子であって、前記一般式(1)における括弧内で表される繰り返し単位を形成した場合に芳香族基Dから芳香族基Aにπ電子の移動があり、繰り返し単位内でπ電子の偏りが起こる組み合わせであれば特に限定はされず、その平面構造内に硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいても良い。
特に芳香族基A又はDがπ電子供与性を有するためには平面構造内にヘテロ原子として硫黄原子または酸素原子を一つ以上含むことが好ましく、硫黄原子を一つ以上含むことが特に好ましい。
一方、芳香族基A又はDがπ電子受容性を有するためには、平面構造内に下記一般式(2):
Figure 2004282039
で示されるイミン結合をとる窒素原子が一つ以上含まれることが特に好ましい。最も好ましくは、芳香族基A又はDが一般式(2)で表されるイミン結合部位を一つ以上含み、かつ、イミン結合部位を含まない方の芳香族基が硫黄原子を1個以上含むものであることである。但し、必ずしも硫黄原子を持つ芳香族基がDに、イミン結合を有する芳香族基がAになるとは限らず、分子構造によっては逆の場合もありうる。
イミン結合は、代表的な共役構造であるC=CをC=Nに置き換えることにより、その電子状態を変化させることができるものであるため、ニトロ基やシアノ基などの共役分子間の相互作用を阻害してしまう電子吸引性や電子供与性の置換基を用いることにより電子状態を改良するよりも好ましい。
また、該芳香族基D及び該芳香族基Aがヘテロ原子を含み、このヘテロ原子が不飽和結合に関与せず非共有電子対を有する場合は非共有電子対をπ電子としてみなす。したがって、上記4n+2のπ電子の一つとして数える。
またさらに、該芳香族基Dと該芳香族基Aとが交互に結合して前記一般式(1)に示される交互共重合体を形成する場合、下記例示式(1)における点線内に示される様に、主鎖骨格において炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合が単結合と交互に連なったπ共役系を形成することが必要である。
Figure 2004282039
さらにまた、該π共役交互共重合体が各種溶媒に可溶となる為には、該芳香族基D及び該芳香族基Aの少なくともどちらか一方に置換基を有していることが好ましい。
該置換基としては、前述したような高い平面性を有する限りにおいて特に限定されるものではないが、好ましくは、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、アルキル基又はアルコキシ基で置換されていても良い芳香族炭化水素基、及びアルキル基又はアルコキシ基で置換されていても良い複素環基を挙げることができる。中でも、直鎖又は分岐のアルキル基、及びアルキル基又はアルコキシ基で置換されていても良い芳香族炭化水素基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
直鎖アルキル基としては、炭素数4以上の基であることが好ましく、炭素数4〜20の基であることがより好ましい。具体的にはn−ブチル基n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基及び複素環基を置換しうるアルキル基としては、直鎖アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜20の直鎖アルキル基であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基及び複素環基を置換しうるアルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基であることが好ましく、炭素数4以上の直鎖アルコキシ基であることがより好ましく、炭素数4〜20の直鎖アルコキシ基であることがさらに好ましい。
置換基の個数は可溶性を付与することができ、π共役相互作用の妨げとならない範囲であれば特に限定されないが、芳香族基Dと芳香族基Aの1組について1個以上、6個以下とするのが好ましく、より好ましくは1個以上、5個以下とする。
具体的には、芳香族基の一方としてはチオフェン誘導体、フラン誘導体、ジチエノ[3,2−b:2´,3´−d]チオフェン誘導体、3,4−エチレンジオキシチオフェン誘導体などが挙げられ、より具体的には
Figure 2004282039
などの芳香族基が挙げられる。ここで、R、R、Rは各々アルキル基を表し、RとRは同じでも異なっていても良い。
また、もう一方の芳香族基A又はDとしては、チアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体などが挙げられ、より具体的には
Figure 2004282039
などの芳香族基が挙げられる。ここで、R、R、R、R、Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。中でも、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環化合物基、カルボキシル基、アシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、およびハロゲン原子からなる群から選ばれる基であることが好ましい。なお、R、R、R、Rは同じでも、異なっていてもよい。
また、芳香族基D及び芳香族基Aは2価の芳香族基であるが、その結合位置は前述の様に例示式(1)の点線内に示される様に主鎖骨格においてπ共役系を形成するものであれば特に限定されない。
またさらに、置換基の導入位置に関しては特に限定はされず、前記一般式(3)に示される様な結合様式に対しての立体規則性が存在しても、しなくても良く、該芳香族基Dがチオフェンで、該芳香族基Aがアルキル置換チアゾールである場合のポリ(アルキルチアゾール−alt−チオフェン)で例示するならば、下記一般式(6)または(7)のどちらでも良い。
Figure 2004282039
前記一般式(1)で示される該π共役交互共重合体における重合度を表すXは、3以上であれば特に限定されないが、各種溶媒に可溶となり不溶成分が存在しないようにするために、その下限は3以上、特に5以上であることが好ましく、その上限は300以下、特に200以下であることが好ましい。
この様なπ共役交互共重合体の製造方法は特に制限がなく、公知の様々な方法を用いうるが、例えば、一般式で表すと、
Figure 2004282039
となる。ここで、Xはハロゲン元素を表す。より具体的には、例えば、MeSn−D−SnMe(芳香族基Dにトリメチルスズ基を重合すべき位置に置換させた化合物)と、Br−A−Br(芳香族基Aにブロムを重合すべき位置に置換させた化合物)を1:1(モル比)で混合させ、Pd(PPhを触媒として必要に応じて加熱しつつ、重合させることにより下記化合物を得ることができる。
Figure 2004282039
このようにして得られるD−Aの好ましい組み合わせの例を以下に挙げるが、これらに限定されるわけではない。
Figure 2004282039
[2]π共役交互共重合体の特性
本発明に用いるπ共役交互共重合体の有すべき好ましい特性について説明する。
本発明に用いるπ共役交互共重合体においては、該π電子供与性芳香族基Dから該π電子受容性芳香族基Aへπ電子が移動することにより形成される該π電子供与性芳香族基D上の正電荷と該π電子受容性芳香族基A上の負電荷のために、隣接主鎖間に静電的引力が働くような相互作用が可能となり一般的導電性高分子の主鎖間の相互作用よりも強くすることが可能である。例えば前記一般式(7)で表される結合に関して立体規則性の存在しないポリ(アルキルチアゾール−alt−チオフェン)においては前述したポリ(3−アルキルチオフェン)と同様なラメラ構造を形成するが、主鎖繰り返し単位内でπ電子供与性芳香族基であるチオフェンからπ電子受容性芳香族基であるアルキル置換チアゾール環にπ電子が移動しπ電子の偏りが起こり、隣接主鎖間において正に帯電したチオフェン環と負に帯電したアルキル置換チアゾール環が静電的に引き合うことによりラメラ構造内の主鎖間距離は約3.6Åを示し、ポリ(3−アルキルチオフェン)の場合よりも短くなっている(荒井 穣 東京工業大学修士論文 1998年など参照)。
この様に主鎖骨格における繰り返し単位内に生成した正電荷と負電荷を利用して隣接主鎖間の相互作用を強くすることによって、結合様式に立体規則性があるとないとに拘わらず、凝集状態である薄膜において有効な導電経路を形成せしめ、良好な電荷輸送層を有する電子デバイスが作製可能となる。この際、ラメラ構造部分における主鎖間距離は、短いほど主鎖間相互作用が強いと考えられ、その上限が、4.2Å以下であることが好ましく、さらに好ましくは4.0Å以下、より好ましくは3.9Å以下、さらに好ましくは3.7Å以下、特に好ましくは3.6Å以下である。一方、下限値は特にないが、実質的には通常2.0Å以上である。
また、前述の様に本発明に用いるπ共役交互共重合体は隣り合う主鎖間同士のπ共役相互作用を強めることにより電荷が高速で移動しやすくなるが、この様なπ共役交互共重合体を電子デバイスの電荷輸送層として用いる際に該π共役交互共重合体の電気伝導度は半導体的性質を有する範囲内であることが好ましく、具体的には、該π共役交互共重合体の薄膜フィルムの電気伝導度(室温、空気中での測定値)は10−4S/cm以下が好ましく、10−5S/cm以下がより好ましく、10−6S/cm以下が特に好ましい。この範囲内であれば、薄膜フィルムにした場合の固有な自由電荷が抑制できるので、例えば電界効果トランジスタにおいてON/OFF比が低下するなどの問題がないといった利点がある。
[3]電子デバイス
本発明において電子デバイスとは、電子の働きを利用した能動素子を総称したものであり、具体的には、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気または化学物質等により、好ましくは光以外のものにより、制御するデバイスである。
例えば、電圧や電流の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子が挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振が挙げられる。現在シリコン等で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。電子デバイスのより具体的な例は、S. M. Sze 著、Physics of Semiconductor Devices, 2nd Edition, Wiley−Interscience, 1981年に記載されているものを挙げることができる。
本発明によれば、可溶性導電性高分子であるπ共役交互共重合体を用いるため、比較的低温のプロセスで製造できるので基板にプラスチックフィルムが使用でき、軽量で柔軟性に優れた壊れにくい電子デバイスを作製できる利点がある。
また、塗布法や印刷法によって高品質な薄膜を形成できるので大面積のデバイスが、高価な設備を必要とせず簡便なプロセスにより低コストで製造できる利点もある。さらに、有機物は材料のバリエーションが豊富で分子構造を変化させて材料特性を根本的に変えることもできるので、無機物にはない機能を持つ素子が得られる可能性がある。
またさらに、本発明の電子デバイスは、結合様式の立体的規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず、電荷移動度が高く高速応答性があるという利点を有する。
本発明の電子デバイスの好ましい例としては、電界効果トランジスタ(FET)、静電誘導トランジスタ(SIT)、ダイオード、抵抗、コンデンサ、受光素子、発光素子などが挙げられる。中でも、本発明の電子デバイスとしては電界効果トランジスタの機能を有することが好ましい。電界効果トランジスタの機能を有するとは、後述するように、ゲート、ソース、ドレインの三つの電極を持ち、ゲートに信号を加えるとソースとドレイン間の電流の通路(チャネル)の幅が変わり、それによりドレインへの出力電流が変調されるという仕組みを有することをいい、具体的には、電界効果トランジスタの機能を有する有機薄膜トランジスタ(TFT)などが挙げられる。以下、個々について詳細に説明する。
[3−1]電界効果トランジスタ(FET)
電界効果トランジスタは、半導体材料からなる層にソース電極とドレイン電極を設け、絶縁体層を介してゲート電極を設けた構造を有する。基本的には、p型半導体あるいはn型半導体の一方のキャリア(正孔あるいは電子)が電荷を輸送する、モノポーラ素子の代表的なものである。
本発明によれば、半導体材料としてπ共役交互共重合体を用いるため、比較的低温のプロセスで製造できるので基板にプラスチックフィルムが使用でき、軽量で柔軟性に優れた壊れにくいデバイスを作製できる利点がある。従って、薄膜で可撓性のある電界効果トランジスタが製造できるので、これを各セルのスイッチング素子に利用することで、可撓性のあるアクティブマトリクスディスプレーが作製できるなど、広く応用できる。
電界効果トランジスタの動作特性は、半導体層の電荷移動度、電導度、絶縁層の静電容量、素子の構成(ソース・ドレイン電極間距離及び幅、絶縁層の膜厚等)などにより決まるが、本発明に係る電界効果トランジスタは、電荷移動度が高く高速応答性であり、簡便な方法により低コストで製造できるという利点がある。
以下、図を用いて本発明の電界効果トランジスタについてより詳細に説明するが、本発明はこれら構造には限られない。
図1に、A〜Dとして、電界効果トランジスタ素子のいくつかの構造例を示す。1が半導体層、2が絶縁体層、3及び4がソース電極及びドレイン電極、5がゲート電極、6が基板である。なお、各層や電極の配置は、素子の用途により適宜選択できる。
基板6は、上に形成される各層が剥離することなく保持できる必要がある。このような材料としては、例えば、樹脂からなる板やフィルム、紙、ガラス、セラミックなどの絶縁性材料、金属や合金などの導電性基板上にコーティング等により絶縁層を形成したもの、樹脂と無機材料など各種組合せからなる複合材等が挙げられる。樹脂フィルムや紙を用いると素子に可撓性を持たせることができ好ましい。
電極3,4,5には導電性を有する材料を用いうる。例えば、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属及びそれらを含む合金、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン等の導電性高分子化合物、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等の半導体、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料等が挙げられる。また、導電性高分子化合物や半導体にはドーピングが行われていても良い。ドーパントとしては、例えば、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF、AsF、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子等が挙げられる。また、上記材料にカーボンブラックや金属粒子などを分散した導電性の複合材料も用いうる。
また、電極3,4,5には図示しない配線が連結されているが、配線も電極とほぼ同様の材料により作製できる。
絶縁体層2は絶縁性を有する材料を用いうる。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、SrTiO、BaTiO等の強誘電性酸化物、窒化珪素等の窒化物、硫化物、フッ化物などの誘電体、あるいはこれら誘電体の粒子を分散させたポリマー等が挙げられる。
一般に、絶縁体層2の静電容量が大きいほど、ゲート電圧を低電圧で駆動できることになるので有利である。このためには、誘電率の大きな絶縁材料を用いるか、絶縁体層の厚さを薄くすることが望ましい。好ましくは、誘電率が3以上の絶縁材料を用いる。
絶縁体層2の膜厚は、上記の通り必要な機能を果たせる範囲で薄いほど好ましい。通常、膜厚は1nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。但し、通常、膜厚は10μm以下であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは500nm以下である。
半導体層1の材料としては、上述のπ共役交互共重合体を主成分として含む半導体層が好ましく用いられる。主成分とは50重量%以上含むことをいう。より好ましくは80重量%以上含む。特性を改善したり他の特性を付与するために、必要に応じて他の有機半導体材料と混合して用いたり、各種添加剤を添加しても良い。また、半導体層1は複数の層から成っても良い。
半導体層1の膜厚は、必要な機能を果たせる範囲で、薄いほど好ましい。図1に例示するような横型の電界効果トランジスタ素子(ソース電極とドレイン電極がほぼ水平に配置されている)においては、所定以上の膜厚があれば素子の特性は膜厚に依存しない一方、膜厚が厚くなると漏れ電流が増加してくることが多いためである。必要な機能を果たすために、通常、膜厚は1nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。但し、通常、膜厚は10μm以下であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは500nm以下である。
また、図2に例示するような縦型の電界効果トランジスタ素子(ソース電極3とドレイン電極4とが半導体層1の上下に設けられ、該半導体層1の内部に絶縁体被覆7を施したゲート電極5が配置されている)においては、半導体層1の膜厚は、通常、5nm以上であり、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは100nm以上である。但し、この場合にも膜厚の上限はあり、好ましい範囲は横型の電界効果トランジスタと同じ範囲である。
また、各層の間や素子の外面には、必要に応じて他の層を設けても良い。例えば、外気の影響を最小限にするために、素子にはさらに保護層を形成することができる。保護層の材料は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等の各種樹脂からなる膜や、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化膜や窒化膜等の誘電体からなる膜が好ましく挙げられる。
[3−2]静電誘導トランジスタ(SIT)
FETはソース電極とドレイン電極が基板上に並べて配置され、電流の流れる方向が、ゲートにより誘起される電場に垂直方向であるのに対し、SITではソースとドレインの間の適当な位置に、ゲート電極がグリッド上に配置され、電流の方向が、ゲートにより誘起される電場に平行方向である点を特徴とする。
図3は静電誘導トランジスタ(SIT)の模式図である。3がソース電極、4がドレイン電極であり、5がゲート電極、1が半導体層である。これらは図示しない基板上に設けられる。SIT構造によれば、キャリアの流れが平面状に広がるので一度に大量のキャリアを移動できる。またソース電極とドレイン電極が縦に配されているので電極間距離を小さくできるため応答が高速である。従って、大電流を流したり、高速のスイッチングを行う用途に好ましく適用できる。
5のゲート電極は、電極間をキャリアが通り抜けていく網目あるいはストライプ状の構造をしている。ゲート電極の網目の間隔は、ソースとドレインとの距離(素子の厚さに相当する。)よりも小さいことが望ましい。また、電極の厚みは、通常10nm以上であり、好ましくは20nm以上である。但し、通常10μm以下であり、好ましくは1μm以下である。
ゲート電極5の材料としては上述の電極3,4,5と同様のものが用いうるが、好ましくは金属、合金や導電性高分子等の導電性材料からなる島状構造薄膜を用いる。例えば、厚さ50nm以下の薄膜で半透明のアルミニウム電極などを用いうる。
半導体層1の材料としては、上記FETで説明したものと同様に上述のπ共役交互共重合体を主成分として含む半導体層が好ましく用いられる。
ゲート電極5と半導体層1の間には、通常、絶縁層あるいはエネルギー障壁を設け、電極からのキャリアの出入りが抑えられるようにする。例えば電極の周りに絶縁層をパターニングして形成しても良い。また、電極材料として、半導体とエネルギー障壁を作りうる金属を選択し、半導体層との間でキャリアの出入りを押さえても良い。例えばアルミニウムを選ぶことで、p型半導体との間にいわゆるショットキー障壁を形成しうる。
また、各層の間や素子の外面には、必要に応じて他の層を設けても良い。
本発明に係る静電誘導トランジスタは、電荷移動度が高く高速応答性を有し、簡便なプロセスにより低コストで製造できるという利点がある。
[3−3]ダイオード素子
そのほかの例として、ダイオード素子が挙げられる。これは、非対称な構造をした2端子素子である。図4のE,Fはダイオード素子の模式図である。これらは図示しない基板上に設けられる。
構造例Eは、仕事関数の異なる2つの金属電極11及び12で半導体層13を挟んだ構造のものである。半導体層13に関する説明は上記半導体層1と同様である。電極11及び12の少なくとも一方は、半導体材料との間でエネルギー障壁を形成している。エネルギー障壁を形成するためには、電極と半導体とで仕事関数が異なるものを選べば良いが、例えば、p型半導体との間でエネルギー障壁を形成する金属としては、アルミニウムがよく用いられる。他の電極の材料としては上述の電極3,4,5と同様のものが用いうるが、好ましくは金属、合金である。本素子に電圧を印加すると、電圧の極性によって流れる電流値が異なる、いわゆる整流作用が見られる。従ってこのようなダイオード素子の応用例としては、整流素子が挙げられる。
また、構造例Fは仕事関数が互いに大きく異なる半導体層16及び17を、電極14及び15で挟んだ構造のものである。半導体層16に関する説明は上記半導体層1と同様である。半導体層17については、半導体層16と仕事関数が大きく異なれば良いが、このような材料としては例えばペリレン顔料やフタロシアニン材料、フラーレン、共役高分子等が挙げられる。
電極14、15については、同じ材料でも異なる材料でも良く、上述の電極3,4,5と同様のものを用いうる。
また、各層の間や素子の外面には、必要に応じて他の層を設けても良い。
[3−4]抵抗素子
また、他の応用例として抵抗素子が挙げられる。これは、基板上に設けられた半導体層を2つの電極で挟んだ、対称な構造をもつ2端子素子である。抵抗素子は、電極間の抵抗を調整するための抵抗器として用いたり、抵抗を大きくして電極間の電気容量を調整するためのコンデンサとして用いることができる。
半導体層に関する説明は上記半導体層1と同様であり、電極に関する説明は上記電極3,4,5と同様である。
また、各層の間や素子の外面には、必要に応じて他の層を設けても良い。
このようなダイオード素子や抵抗素子は、高い電荷移動度を示す本発明の有機半導体材料を用いることにより、抵抗値等のデバイスパラメータを広く制御できるメリットがあり、集積化に都合が良い。
[3−5]本発明の電子デバイスの応用
本発明の電子デバイスは、ディスプレーのアクティブマトリクスのスイッチング素子として利用することができる。これは、ゲートに印加される電圧でソースとドレイン間の電流をスイッチングできることを利用して、ある表示素子に電圧を印加あるいは電流を供給する時のみスイッチを入れ、その他の時間は回路を切断する事により、高速、高コントラストな表示を行うものである。
適用される表示素子としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロルミネッセント(EL)素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられる。
特に、本発明の電子デバイスは、低温プロセスでの素子作製が可能であり、プラスチック板、プラスチックフィルムや紙等の、高温処理に耐えない基板を用いることができる。また、塗布あるいは印刷プロセスでの素子作製が可能であることから、大面積のディスプレーへの応用に適している。また、従来のアクティブマトリクスの代替としても、省エネルギープロセス、低コストプロセスの可能な素子として有利である。
また、本発明の電子デバイスは、EL素子などの電気−光変換素子(発光素子)への応用にも適している。同様に塗布あるいは印刷プロセスでの素子作製が可能であることから大面積の素子を低コストプロセスで製造できるという利点がある。
さらに、トランジスタを集積することにより、デジタル素子やアナログ素子が実現できる。これらの例としては、AND、OR、NAND、NOT等の論理回路、メモリー素子、発振素子、増幅素子、等が挙げられる。さらにこれらを組み合わせることにより、ICカードやICタグを作製することができる。
有機半導体は、ガスや化学物質、温度等の外部の刺激により、特性が大きく変化するので、それらのセンサーへの応用も考えられる。例えば本発明の電子デバイスの特性が、気体や液体との接触により変化する量を測定することにより、定性的あるいは定量的にそれに含まれている化学物質を検出することが可能である。
[4]本発明の電子デバイスの製造方法
本発明の電子デバイスの好ましい製造方法について、図1の構造例Aに示す電界効果トランジスタ(FET)を例として、以下に説明するが、これらは他の電子デバイスにも同様に適用しうる。
一般に、電界効果トランジスタなどの電子デバイスは、基板1上に必要な層や電極を設けることで作製される。基板としては上記[3]で説明したものを用いうる。
基板に所定の表面処理を行うことで、デバイスの特性を向上できる場合がある。例えば基板表面の親水性/疎水性の度合いを調整することで、その上に成膜される膜の膜質を改良しうる。特に、本発明に用いるπ共役交互共重合体は分子の配向など膜の状態によって特性が大きく変わるが、基板表面処理によって、基板とその後に成膜される半導体膜との界面部分の分子配向を制御し、特性を改良できると推定される。
このような基板処理としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシラン等による疎水化処理、塩酸や硫酸、酢酸等による酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等によるアルカリ処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴン等のプラズマ処理、ラングミュアブロジェット膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理、機械的処理、コロナ放電などの電気的処理などが挙げられる。
次に、ゲート電極5を形成する。電極材料としては上記[3]で説明したものを用いうる。
ゲート電極5を成膜するにあたっては公知の各種方法を用いうるが、例えば真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等を用いうる。
成膜後、所望の形状になるよう必要に応じてパターニングを行う。パターニング方法も公知の各種方法を用いうるが、例えばフォトレジストのパターニングとエッチング(エッチング液によるウエットエッチングや反応性のプラズマによるドライエッチング)を組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれら手法を複数組み合わせた手法を利用できる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去したり材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを作製しても良い。
次に、絶縁体層2を形成する。絶縁体材料としては上記[3]で説明したものを用いうる。
絶縁体層2を成膜するにあたっては公知の各種方法を用いうるが、例えばスピンコーティングやブレードコーティングなどの塗布法、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法、真空蒸着法、スパッタリング法、そのほか、アルミニウム上のアルマイトのように金属上に酸化物膜を形成する方法等を用いうる。
なお、絶縁体層上に半導体層を形成する態様においては、両層の界面で半導体分子を良好に配向させるために、絶縁体層に所定の表面処理を行うことができる。表面処理の手法は、基板の表面処理と同様のものが用いうる。
さらにソース電極3及びドレイン電極4を形成するが、形成方法等はゲート電極5に準ずる。
続いて、半導体層1を形成する。半導体材料としては上記[1]で説明したπ共役交互共重合体を用いる。半導体層1を成膜するにあたっては公知の各種方法を用いうるが、例えば、塗布法、印刷法などの溶液プロセスでの形成方法を用いうる。
π共役交互共重合体を溶液プロセスによって成膜し半導体層を得る方法について詳しく説明する。まず、π共役交互共重合体を溶媒に溶かして基板上に塗布する。塗布の方法としては、溶媒をたらすだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、さらにはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いうる。さらに、塗布に類似の技術として、水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュアブロジェット法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入する方法等も挙げられる。
溶液プロセスを用いることにより、比較的安価な設備で、大面積の電子デバイスを作製しやすいという利点がある。
本発明の製造方法においては、半導体層を成膜後に、半導体層の溶融温度以上まで加熱したのち冷却する工程を含んでもよい。これによれば、塗布直後に比べて結晶性の高い膜を作製できる利点がある。
すなわち、半導体層を成膜する際には構造柔軟性と大面積に亘る均一性を有する非晶質性(アモルファス性)の高い材料を用いることで、塗布法など溶液プロセスによって簡便かつ安価に均一性の良い膜を成膜でき、かつ、成膜後には上記加熱・冷却によって結晶性を高めることで優れた特性を有する半導体膜を得ることができるという、両方の利点を併せ持つ製造法を提供できる。
この加熱工程は、塗布溶媒を留去するなど他の目的を兼ねても良い。
また、本発明に用いるπ共役交互共重合体が液晶性を示す場合、好ましくは、膜を等方相となるまで加熱し冷却することが好ましい。
上記[2]において説明したように、半導体膜が高い電荷移動度を示すためには、隣り合う主鎖間同士の距離が短い方が望ましく、例えば高分子主鎖結合様式において立体規則性を持たせたラメラ構造とすることによって、短い鎖間距離が得られている。
しかし本発明によれば、高分子主鎖結合様式に立体規則性がある部分と無い部分とが混在している、いないに拘わらず、また結晶性が高い、高くないに拘わらず、電子供与・電子受容の結果として生成する正・負の電荷による鎖間の静電的引力によって起こる強い主鎖間π共役相互作用を利用することにより高い電荷輸送能を得られるという利点がある。
このように作製された半導体層は、後処理によりさらに特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、成膜時に生じた膜中の歪みを緩和することができ、特性の向上や安定化を図ることができる。さらに、酸素や水素等の酸化性あるいは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化あるいは還元による特性変化を誘起することもできる。これは例えば膜中のキャリア密度の増加あるいは減少の目的で利用することができる。
また、ドーピングと呼ばれる微量の元素や原子団、分子、高分子を加えることにより、特性を変化させて望ましいものにすることができる。例えば、酸素、水素、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF、AsF、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウムカリウム等の金属原子等をドーピングする事が挙げられる。これは、これらのガスに接触させたり、溶液に浸したり、電気化学的なドーピング処理をすることにより達成できる。これらのドーピングは膜の形成後でなくても、材料合成時に添加したり、溶液からの作製プロセスでは、その溶液に添加したり、前駆体膜の段階で添加することができる。
これらのドーピングの効果は、キャリア密度の増加あるいは減少による電気伝導度の変化、キャリアの極性の変化(p型、n型)、フェルミ準位の変化等が挙げられ、半導体デバイスでは良く利用されているものである。ドーピング処理は同様に本発明の有機電子デバイスでも利用することができる。
本発明の電子デバイスには各層の間や素子の外面に必要に応じて他の層を設けることが出来る。例えば、さらに保護層を設けることもできる。保護層材料としては上記[3]で説明したものを用いうる。
保護層を成膜するにあたっては公知の各種方法を用いうるが、保護層が樹脂からなる場合は、例えば、樹脂溶液を塗布後、乾燥させて樹脂膜とする方法、樹脂モノマーを塗布あるいは蒸着したのち重合する方法などが挙げられる。成膜後に架橋処理を行っても良い。保護層が無機物からなる場合は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法を用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
下記一般式(7)に示されるような構造を有する立体規則性のないポリ(ペンチルチアゾール−alt−チオフェン)を窒素雰囲気下、室温において、トリフルオロ酢酸に、1wt%となるように溶解した。
Figure 2004282039
この1wt.%regiorandomポリ(ペンチルチアゾールチオフェン)トリフルオロ酢酸溶液を(n+)Si/SiO基板上に1500rpmでスピンコートし薄膜を作製した。Auを蒸着して電極を作製し、図1のBに示した構造のTFTを作製した。このTFTの電気特性を測定したところ、field−effect−mobility(電界効果移動度)は2.5×10−3cm/Vsであり、10−3cm/Vsオーダーの移動度が確認できた。得られた薄膜はX線構造解析により、ラメラ構造における層間距離に由来する回折ピークが見られるが、比較的ブロードであり、この回折の2次、3次のピークは得られず、ラメラ構造は未発達であることが分かった。
半経験的分子軌道計算プログラムMOPAC PM3近似で、H−ペンチルチアゾール−チオフェン−Hなる化合物を想定し、ペンチルチアゾール、チオフェンに共平面構造を取らせてそれ以外の構造を最適化し、HOMOの電荷を算出したところ、チアゾール部分のπ電子密度は1.1であり、チオフェン部分のπ電子密度は0.9であった。
また、H−ペンチルチアゾール−チオフェン−ペンチルチアゾール−チオフェン−Hなる化合物を想定し、ペンチルチアゾール、チオフェンに共平面構造を取らせてそれ以外の構造を最適化し、中央のチオフェン−ペンチルチアゾール対のペンチルチアゾール、チオフェン上に現れた全ての電荷を計算し、その差を求めたところ、0.056となりチオフェンが+に、チアゾール部分が−に分極していることが分かった。ここで得られた化合物の構造は、Yamamoto, T. Macromolecules 2003, 36, 7986に記載されている通り、π共役平面から2Å以内に配置されるものである。
(実施例2)
下記一般式(9)に示されるような構造を有するポリ(チオフェン−alt−オクチルオキシフェニルキノキサリン)を窒素雰囲気下、室温において、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に1wt%になるように溶解した。
Figure 2004282039
この1wt%ポリ(チオフェンキノキサリン)NMP溶液をAu電極つきの(n+)Si/SiO基板上に1500rpmでスピンコートし薄膜を作製して、図1のAに示した構造のTFTを作製した。このTFTの電気特性を測定したところ、field−effect−mobility(電界効果移動度)は4.1×10−4cm/Vsであった。得られた薄膜はX線構造解析により、ラメラ構造内の主鎖間距離3.6Åに由来する回折ピークが得られた。ラメラの周期構造に対応する低角の回折は小さくブロードであり、2次、3次のピークは見られず、ラメラ構造は未発達であることが分かった。
半経験的分子軌道計算プログラムMOPAC PM3近似で、H−チオフェン−キノキサリン−チオフェン−キノキサリン−Hなる化合物を想定し、キノキサリン、チオフェンに共平面構造を取らせてそれ以外の構造を最適化し、中央のキノキサリン−チオフェン対のキノキサリン、チオフェン上に現れた全ての電荷を計算し、その差を求めたところ、0.089となりチオフェンが−に、キノキサリン部分が+に分極していることが分かった。また、π共役平面にベンゼン環が2個隣り合う位置に結合しているが、すべての原子がチオフェンとキノキサリンの共役平面から2Å以内に配置されることがわかった。
(実施例3〜4)
下記一般式(12)に示されるような構造を有するポリ(チオフェン−alt−ドデシルイミダゾール)及びポリ(チオフェン−alt−オクタデシルイミダゾール)を、各々窒素雰囲気下、室温において、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に0.5wt%になるように溶解した。
Figure 2004282039
この2種の0.5wt%ポリ(チオフェンアルキルベンゾイミダゾール)NMP溶液をAu電極つきの(n+)Si/SiO基板上に1500rpmでスピンコートし薄膜を作製して、図1のAに示した構造のTFTを各々作製した。このTFTの電気特性を測定したところ、field−effect−mobility(電界効果移動度)はポリ(チオフェン−alt−ドデシルイミダゾール)で3.39×10−4cm/Vs、ポリ(チオフェン−alt−オクタデシルイミダゾール)で3.25×10−4cm/Vsであった。得られた薄膜はX線構造解析により、ラメラ構造内の主鎖間距離が共に3.6Åに由来する回折ピークが得られた。ラメラの周期構造に対応する低角の回折は小さくブロードであり、2次、3次のピークは見られず、ラメラ構造は未発達であることがわかった。
半経験的分子軌道計算プログラムMOPAC PM3近似で、H−チオフェン−ベンゾイミダゾール−チオフェン−ベンゾイミダゾール−Hなる化合物を想定し、ベンゾイミダゾール、チオフェンに共平面構造を取らせてそれ以外の構造を最適化し、中央のベンゾイミダゾール−チオフェン対のベンゾイミダゾール、チオフェン上に現れた全ての電荷を計算し、その差を求めたところ、0.142となりチオフェンが−に、ベンゾイミダゾール部分が+に分極していることが分かった。また、すべての原子がチオフェンとベンゾイミダゾールの共役平面から2Å以内に配置されることがわかった。
(比較例1)
立体規則性のないポリ(3−ヘキシルチオフェン)を空気中、室温において、クロロホルムに、15mg/mlとなるように溶解した。
この15mg/ml regiorandom ポリ(3−ヘキシルチオフェン)クロロホルム溶液を(n+)Si/SiO基板上にAu電極を作製した上にキャストして薄膜を作製し、図1のAに示した構造のTFTを作製した。このTFTの電気特性を測定したところ、field−effect−mobilityは8.2×10−7cm/Vsであり、10−7cm/Vsオーダーであった。得られた薄膜は、X線構造解析により、ラメラ構造における層間距離に由来するシャープな回折ピークが観察され、またこの回折の2次、3次のピークが得られ、ラメラ構造が発達していることが分かった。
一方、キャスト法に代えてスピンコートにより作製した薄膜の場合は、ラメラ構造は発達しないがπ欠陥が緩和されて平均的π共役は強くなるためfield−effect−mobilityは6.3×10−5cm/Vsであり、10−5cm/Vsオーダーであった。
半経験的分子軌道計算プログラムMOPAC PM3近似で、H−ヘキシルチオフェン−ヘキシルチオフェン−Hなる化合物を想定し、ヘキシルチオフェンに共平面構造を取らせてそれ以外の構造を最適化し、HOMOの電荷を算出し、チオフェン環のπ電子密度を計算したところ、立体規則性がある場合もない場合もどちらも1.0であった。
(比較例2)
下記一般式(10)に示されるポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−alt−ビチオフェン)(F8T2)を窒素雰囲気下、室温において、キシレンに0.5wt%になるように溶解した。
Figure 2004282039
この0.5wt%F8T2キシレン溶液をAu電極つきの(n+)Si/SiO基板上に1500rpmでスピンコートし薄膜を作製して、図1のAに示した構造のTFTを作製した。このTFTの電気特性を測定したところ、field−effect−mobility(電界効果移動度)は9.2×10−6cm/Vsであった。得られた薄膜はX線構造解析により、ラメラ構造内の主鎖間距離4.2Åに対応する回折ピークが得られた。ラメラの周期構造に対応する低角の回折は小さくブロードであり、2次、3次のピークは見られず、ラメラ構造は未発達であることが分かった。
半経験的分子軌道計算プログラムMOPAC PM3近似で、H−ビチオフェン−フルオレン−ビチオフェン−フルオレン−Hなる化合物を想定し、ビチオフェン、フルオレンに共平面構造を取らせてそれ以外の構造を最適化し、中央のフルオレン−ビチオフェン対のフルオレン、ビチオフェン上に現れた全ての電荷を計算し、その差を求めたところ、0.198となりビチオフェンが−に、フルオレン部分が+に分極していることが分かった。しかしながら、この分子構造は、フルオレン環の9位のアルキル基の為にそのπ共役平面から2Å以上の距離の位置にアルキル基を構成する原子が存在してしまう事が分かった。したがって、本比較例化合物は、比較的分子内の分極は大きいにもかかわらず、平面性が不良な為、塗布しただけの膜では共役高分子主鎖間の相互作用を阻害してしまう事を示唆している。
なお、TFT構造の違い(図1のA及びB)に起因するfield−effect−mobilityの差は、あるとしてもせいぜい数倍程度であるため、本実施例におけるfield−effect−mobilityの差は十分に有意性がある。
本発明に係る電界効果トランジスタ(FET)の構造例の模式図である。 本発明に係る縦型電界効果トランジスタの構造例の模式図である。 本発明に係る静電誘導トランジスタ(SIT)の構造例の模式図である。 本発明に係るダイオード素子の構造例の模式図である。
符号の説明
1 … 半導体層
2 … 絶縁体層
3 … ソース電極
4 … ドレイン電極
5 … ゲート電極
6 … 基板
7 … 絶縁体被覆
11 … 金属電極
12 … 金属電極
13 … 半導体層
14 … 電極
15 … 電極
16 … 半導体層
17 … 半導体層

Claims (4)

  1. 一般式(1):
    Figure 2004282039
    [式中、Dは電子供与性を有する芳香族基を示し、Aは電子受容性を有する芳香族基を示し、D及びAはそれぞれ芳香環上に置換基を有していても良く、D及びAを構成する全ての原子の中心が、D及びA各々のπ共役平面まで2Å以内に配置された分子構造を有し、Xは3以上の整数を示す]で表される構造を有し、且つ、主鎖骨格において炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合が単結合と交互に連なった構造を有するπ共役交互共重合体を用いることを特徴とする電子デバイス。
  2. 前記A又はDが一般式(2):
    Figure 2004282039
    で表されるイミン結合部位を一つ以上含む芳香族基であることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 前記A又はDが硫黄原子を一つ以上含む芳香族基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子デバイス。
  4. 前記π共役交互共重合体が半導体的性質を有し、且つ、前記電子デバイスが電界効果トランジスタの機能を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の電子デバイス。
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