JP2004277975A - 嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】白紙光沢が低く、嵩高で不透明性、腰が優れ、高い印刷適性を有する嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法を提供するものである。
【解決手段】ISO白色度75%以上、密度0.60g/cm3以下で、カナダ標準濾水度250〜450mlに叩解したパルプを、全パルプ中に40質量%以下混合したパルプスラリーを用いて抄紙し、10秒コブサイズ度100g/m2以下、脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて密度0.70g/cm3以下に調整して得られた嵩高な原紙に、塗工層を設けてなることを特徴とする嵩高な艶消し塗工紙。および前記請求項1記載の原紙に、重質炭酸カルシウム30〜70質量%含有する塗工液を片面5〜20g/m2塗工し、金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの条件でソフトカレンダー処理し、密度1.00g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度白紙光沢が30%以下とすることを特徴とする嵩高な艶消し塗工紙の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ISO白色度75%以上、密度0.60g/cm3以下で、カナダ標準濾水度250〜450mlに叩解したパルプを、全パルプ中に40質量%以下混合したパルプスラリーを用いて抄紙し、10秒コブサイズ度100g/m2以下、脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて密度0.70g/cm3以下に調整して得られた嵩高な原紙に、塗工層を設けてなることを特徴とする嵩高な艶消し塗工紙。および前記請求項1記載の原紙に、重質炭酸カルシウム30〜70質量%含有する塗工液を片面5〜20g/m2塗工し、金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの条件でソフトカレンダー処理し、密度1.00g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度白紙光沢が30%以下とすることを特徴とする嵩高な艶消し塗工紙の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは白紙光沢が低く、嵩高で不透明性、腰が優れ、高い印刷適性を有する嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、商業印刷では、チラシ、カタログ、パンフレット、ダイレクトメールなどの分野、また、出版印刷分野ではパソコン、ファミコンなど関連書籍、雑誌や写真集、ムック、コミック誌の分野が伸びてきている。
【0003】
一方、ユーザーよりコストダウンに伴って紙の品質を維持しつつ軽量化が求められている。しかし、軽量化すれば紙厚が薄くなり、腰の無い紙となり不透明性も低下する。
【0004】
一般に艶消し塗工紙は、白紙及ぶ印刷の光沢が低く、面がフラットでしっとりした視感、触感を与える。最近、白紙面の光沢は低いが、印刷面の光沢がある程度高いものが望まれつつある。
【0005】
通常の艶消し塗工紙は、グロス塗工紙に比べて白紙の光沢を抑えるために炭酸カルシウムを多量に含有する塗工液をコーターで塗工し、マットカレンダー処理、または軽度のスーパーカレンダー処理を行って製品化する。
【0006】
一般的に嵩高な塗工紙を製造するためには、原紙を嵩高にすることが有効な手段である。その一つとしては、できる限り弱い叩解をした濾水度の高いパルプを用いて原紙を抄造することである。しかし、嵩高な紙は得られるが、同時に平滑性が低下し、塗液が原紙にしみ込み印刷品質を悪化させる。そこで、平滑性を向上させるために原紙のマシンカレンダーを強化すると嵩が失われる結果となってしまう。
【0007】
もう一つも手法として、原紙の平滑性を維持ながら高温ロールの熱カレンダー処理あるいはカレンダー処理前に蒸気を付与する方法が提案されているが、平滑性は向上するものの、嵩が不十分であった。
そこで、カレンダー処理前に蒸気を付与し、100〜150℃の範囲でソフトカレンダー処理する方法で解決できるが提案されているが、まだ不十分であった(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、原紙に低圧で軽度の加熱蒸気を付与した後、100〜150℃の範囲でソフトカレンダー処理、さらに重質炭酸カルシウムを50〜95部の塗液を塗工しマットカレンダーで100℃以上の高温処理で、緊度が1.10g/m2以下する方法も提案されているが、まだ不十分であった(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
また、原紙に低圧で軽度の加熱蒸気を付与した後、100〜150℃の範囲でソフトカレンダー処理、さらに重質炭酸カルシウムを50〜95部の塗液を塗工しマットカレンダーで100℃以上の高温処理で、緊度が1.10g/m2以下する方法も提案されているが、まだ不十分であった(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
合成樹脂粒子を配合し、金属ロールと樹脂ロールの2段カレンダーで100〜160℃処理で、光沢度40%以下とする方法も提案されているが、まだ合成樹脂粒子は高価であり、嵩が不十分なだけでなく光沢がマット調でない(例えば、特許文献4参照。)。
【0011】
密度が0.7g/cm3以下の原紙にジルコニウム化合物を含有した下塗り層およびサチンホワイトを配合した上塗り層を設けてカレンダー処理にて密度を1.10g/cm3以下が提案されているが、白紙光沢および印刷光沢が不十分なだけでなく高価である(例えば、特許文献5参照。)。
【0012】
ポリオキシエチレンエーテルのコッブ法による吸水量(30秒)5〜100g/m2であり、全パルプ繊維の60重量%以上が非木材繊維の原紙に塗被量/製品に対する重量比率が8〜30重量%、かつカレンダーにて密度を0.95g/cm3以下が提案されている。しかし、非木材繊維の配合により嵩高ではあるが、強度が弱く、吸水性が大きいため浸透むら、乾燥むらが発生するだけでなく褪色性も劣る(例えば、特許文献6参照。)。
【0013】
ポリビニルアルコールを主成分とし、泡安定化剤および耐水化剤を含有する下塗り液を発砲倍率3倍以上にしてカナダ標準濾水度が400〜500mlの原紙に塗布し、さらに重質炭酸カルシウム50〜80重量%の上塗り液を塗被することが提案されている。しかし、泡によりクレーターが発生するだけでなく、印刷むらになる(例えば、特許文献7参照。)。
【0014】
繊維状マグネシウム化合物を10〜20重量%内添しカナダ標準濾水度が250〜400mlの原紙に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工し、蒸気をを付与した後、ソフトカレンダーで処理することがが提案されている。しかし、繊維状マグネシウムが高価で実用的ではない(例えば、特許文献8参照。)。
【0015】
填料として無定形シリケートが2〜12重量%、機械パルプが10重量%以上含有する原紙60g/m2以下に、塗工液を塗工して剛性ロールの温度が150℃以上であるソフトカレンダーで処理することがが提案されている。しかし、無定形シリケートが高価であり、機械パルプを多量に配合すると面質および印刷上がりが悪目である、さらにソフトカレンダー処理が高温のため思ったほど低密度にならい(例えば、特許文献9参照。)。
【0016】
平均吸油量がであり、機械パルプを多量に配合すると面質および印刷上がりが悪目である、さらにソフトカレンダー処理が高温のため思ったほど低密度にならい(例えば、特許文献9参照。)。
【0017】
【特許文献1】
特開平4−370298号公報
【特許文献2】
特開平6−73685号公報
【特許文献3】
特開平7−238493号公報
【特許文献4】
特開平7−238495号公報
【特許文献5】
特開平8−92894号公報
【特許文献6】
特開平9−158088号公報
【特許文献7】
特開平9−176996号公報
【特許文献8】
特開平9−209297号公報
【特許文献9】
特開平11−279988号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、白紙光沢が低く、嵩高で不透明性、腰が優れ、高い印刷適性を有する嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明の嵩高な艶消し塗工紙は、ISO白色度75%以上、密度0.60g/cm3以下で、カナダ標準濾水度250〜450mlに叩解したパルプを、全パルプ中に40質量%以下混合したパルプスラリーを用いて抄紙し、10秒コブサイズ度100g/m2以下、脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて密度0.70g/cm3以下に調整して得られた嵩高な原紙に、塗工層を設けてなることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の艶消し塗工紙の製造方法は、上記発明における原紙に、重質炭酸カルシウム30〜70質量%含有する塗工液を片面5〜20g/m2塗工し、金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの条件でソフトカレンダー処理し、密度1.00g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度白紙光沢が30%以下とすることを特徴とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の艶消し塗工紙およびその製造方法について、詳細に説明する。
【0023】
本発明に用いられるパルプのISO白色度は、75%以上が好ましい。75%未満では40質量%以下であっても白色度が低く視的にも好まれない。
【0024】
また、パルプの密度が、0.60g/cm3より高いと配合量を増加しても期待したほどの嵩が得られない。
【0025】
また、パルプのカナダ標準濾水度は、250mlより低いと抄紙し難いだけでなく、嵩もで難い。また、450mlより高いと強度がでない。
【0026】
上記パルプの配合量は、強度、白色度、嵩などの紙質を考量すると全パルプ中に40質量%以下が好ましく。40質量%より多いと品質が得にくい。
【0027】
本発明に用いられる他のパルプとしては、LBKP,NBKPなどの化学パルプ およびGP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および古紙パルプなどの各種パルプが挙げられる。また、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0028】
また、本発明の原紙においては、ノーサイズプレス原紙、澱紛、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた原紙などを用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施す場合も有る。
【0029】
本発明において、10秒コブサイズ度が、100g/m2より高いと、印刷適性が低下する傾向にあり、100g/m2以下が良好である。
【0030】
脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて原紙密度は、0.70g/cm3以下に調整することで製品が嵩高となるが、0.70g/cm3より高いと嵩が得られない。
【0031】
また、本発明の艶消し塗工紙の製造方法において、塗工液成分の顔料として、重質炭酸カルシウムは30〜70質量%であることが好ましい。70質量%より多い配合では、白紙光沢が低くインキセットが遅くなる傾向にある。
30質量%未満では白紙光沢が高いがインキ光沢が低く、インキセットが遅くなる。
【0032】
本発明において、塗工方法はサイズプレスコーター、ゲートロール、コーター、シムサイザー、ブレードコーターなどの公知の塗工機が挙げられる。
【0033】
本発明において、塗工液に用いられる他の顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイトなどの複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0034】
塗工液に用いられる澱粉としては、通常の澱紛、酸化澱紛、エーテル化澱紛、エステル化澱紛、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉などが挙げられる。
【0035】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0036】
塗工液に用いられる澱粉以外のバインダーとしては、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。
【0037】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0038】
一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は、金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの条件でソフトカレンダー処理する。処理温度が、90℃より高いと潰れすぎて嵩が得られない。逆に、30℃未満であると光沢およぶ平滑性が得られず、品質が低下する。また、処理線圧は、品質を考慮すると20〜90kgf/cmが好ましい。
【0039】
製品品質は、密度が1.0g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度の白紙光沢が30%以下であることが艶消し塗工紙の紙質および印刷適性として好ましい。
【0040】
塗工量は、乾燥後の質量として、通常片面塗工量が5〜20g/m2、好ましくは7〜18g/m2である。
【0041】
塗工層中に含まれるラテックスバインダーの添加量は、全顔料の質量に対し、固形分で通常8〜16質量%、好ましくは9〜15質量%である。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に指定のない限り、すべて質量部および質量%を示す。
【0043】
<原紙配合>
LBKP(濾水度450mlcsf) 70部
NBKP(濾水度500mlcsf) 30部
【0044】
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量70g/m2の原紙を長網抄紙機で抄造し、オンラインでマシンカレンダーで密度を調整した。
【0045】
<塗工液配合>
市販高白微粒カオリン 50部
市販高白1級カオリン 20部
市販重質炭酸カルシウム 30部
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
ラテックスバインダー 12部
市販燐酸エステル化澱粉 1部
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
ステアリン酸カルシウム 0.5部
印刷適性剤 0.5部
水酸化ナトリウム pH9.8に調製
さらに、上記の割合の塗工液を調製し、ベントブレード方式の塗工機を用いて、塗工速度1200m/分で塗工液を片面当たり12g/m2塗工し、オンラインソフトカレンダーにて仕上げた。
【0046】
実施例および比較例の原紙、艶消し塗工紙について、下記の製造方法と評価測定した結果を表1、2、3に示した。
【0047】
(1)坪量は、JIS P8124、厚みと密度は、JIS P8118にて測定した。
【0048】
(2)ISO白色度は、JIS P8148、ISO不透明度は、JIS P8149にて測定した。
【0049】
(3)カナダ標準濾水度は、JIS P8121にて測定した。
【0050】
(4)平滑度は、J.TAPPI No.5(スムースター平滑度試験器/東映電子工業社製)にて測定した。
【0051】
(5)剛直性は、JIS P8143(クラークこわさ試験器)にて測定した。
【0052】
(6)10秒コッブサイズは、JIS P8140にて測定した。
【0053】
(7)75度白紙光沢は、JIS P8142にて測定した。
【0054】
(8)印刷光沢は、RI印刷適性試験機を用いて藍色、紅色、黄色のインキ(DIC社製大豆油インキと鉱物油インキ、0.3CC)の重色ベタ印刷し、一昼夜放置後、角度60度で測定した。
【0055】
(9)印刷面質、印刷着肉性は、目視判定にて5段階評価した(5;良、1;悪)。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1、2、3の結果より、実施例および比較例を比べると、白色度が75%以上、密度が0.60g/cm3以下、カナダ標準濾水度250〜500mlのパルプを40質量%以下、10秒コブサイズ度100g/m2以下、脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて密度0.7g/cm3以下に調整したものが、嵩高であり印刷評価においても良好であった。
【0060】
また、2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの範囲でソフトカレンダー処理にて密度1.0g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度白紙光沢が30%以下にすることで嵩高で不透明性があり、腰、印刷適正の優れたものが得られた。
【0061】
【発明の効果】
上記のとおり、本発明の嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法により、白紙光沢が低く、嵩高で不透明性、腰が優れ、軽量化ができ、高い印刷適性を有する嵩高な艶消し塗工紙を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは白紙光沢が低く、嵩高で不透明性、腰が優れ、高い印刷適性を有する嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、商業印刷では、チラシ、カタログ、パンフレット、ダイレクトメールなどの分野、また、出版印刷分野ではパソコン、ファミコンなど関連書籍、雑誌や写真集、ムック、コミック誌の分野が伸びてきている。
【0003】
一方、ユーザーよりコストダウンに伴って紙の品質を維持しつつ軽量化が求められている。しかし、軽量化すれば紙厚が薄くなり、腰の無い紙となり不透明性も低下する。
【0004】
一般に艶消し塗工紙は、白紙及ぶ印刷の光沢が低く、面がフラットでしっとりした視感、触感を与える。最近、白紙面の光沢は低いが、印刷面の光沢がある程度高いものが望まれつつある。
【0005】
通常の艶消し塗工紙は、グロス塗工紙に比べて白紙の光沢を抑えるために炭酸カルシウムを多量に含有する塗工液をコーターで塗工し、マットカレンダー処理、または軽度のスーパーカレンダー処理を行って製品化する。
【0006】
一般的に嵩高な塗工紙を製造するためには、原紙を嵩高にすることが有効な手段である。その一つとしては、できる限り弱い叩解をした濾水度の高いパルプを用いて原紙を抄造することである。しかし、嵩高な紙は得られるが、同時に平滑性が低下し、塗液が原紙にしみ込み印刷品質を悪化させる。そこで、平滑性を向上させるために原紙のマシンカレンダーを強化すると嵩が失われる結果となってしまう。
【0007】
もう一つも手法として、原紙の平滑性を維持ながら高温ロールの熱カレンダー処理あるいはカレンダー処理前に蒸気を付与する方法が提案されているが、平滑性は向上するものの、嵩が不十分であった。
そこで、カレンダー処理前に蒸気を付与し、100〜150℃の範囲でソフトカレンダー処理する方法で解決できるが提案されているが、まだ不十分であった(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、原紙に低圧で軽度の加熱蒸気を付与した後、100〜150℃の範囲でソフトカレンダー処理、さらに重質炭酸カルシウムを50〜95部の塗液を塗工しマットカレンダーで100℃以上の高温処理で、緊度が1.10g/m2以下する方法も提案されているが、まだ不十分であった(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
また、原紙に低圧で軽度の加熱蒸気を付与した後、100〜150℃の範囲でソフトカレンダー処理、さらに重質炭酸カルシウムを50〜95部の塗液を塗工しマットカレンダーで100℃以上の高温処理で、緊度が1.10g/m2以下する方法も提案されているが、まだ不十分であった(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
合成樹脂粒子を配合し、金属ロールと樹脂ロールの2段カレンダーで100〜160℃処理で、光沢度40%以下とする方法も提案されているが、まだ合成樹脂粒子は高価であり、嵩が不十分なだけでなく光沢がマット調でない(例えば、特許文献4参照。)。
【0011】
密度が0.7g/cm3以下の原紙にジルコニウム化合物を含有した下塗り層およびサチンホワイトを配合した上塗り層を設けてカレンダー処理にて密度を1.10g/cm3以下が提案されているが、白紙光沢および印刷光沢が不十分なだけでなく高価である(例えば、特許文献5参照。)。
【0012】
ポリオキシエチレンエーテルのコッブ法による吸水量(30秒)5〜100g/m2であり、全パルプ繊維の60重量%以上が非木材繊維の原紙に塗被量/製品に対する重量比率が8〜30重量%、かつカレンダーにて密度を0.95g/cm3以下が提案されている。しかし、非木材繊維の配合により嵩高ではあるが、強度が弱く、吸水性が大きいため浸透むら、乾燥むらが発生するだけでなく褪色性も劣る(例えば、特許文献6参照。)。
【0013】
ポリビニルアルコールを主成分とし、泡安定化剤および耐水化剤を含有する下塗り液を発砲倍率3倍以上にしてカナダ標準濾水度が400〜500mlの原紙に塗布し、さらに重質炭酸カルシウム50〜80重量%の上塗り液を塗被することが提案されている。しかし、泡によりクレーターが発生するだけでなく、印刷むらになる(例えば、特許文献7参照。)。
【0014】
繊維状マグネシウム化合物を10〜20重量%内添しカナダ標準濾水度が250〜400mlの原紙に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工し、蒸気をを付与した後、ソフトカレンダーで処理することがが提案されている。しかし、繊維状マグネシウムが高価で実用的ではない(例えば、特許文献8参照。)。
【0015】
填料として無定形シリケートが2〜12重量%、機械パルプが10重量%以上含有する原紙60g/m2以下に、塗工液を塗工して剛性ロールの温度が150℃以上であるソフトカレンダーで処理することがが提案されている。しかし、無定形シリケートが高価であり、機械パルプを多量に配合すると面質および印刷上がりが悪目である、さらにソフトカレンダー処理が高温のため思ったほど低密度にならい(例えば、特許文献9参照。)。
【0016】
平均吸油量がであり、機械パルプを多量に配合すると面質および印刷上がりが悪目である、さらにソフトカレンダー処理が高温のため思ったほど低密度にならい(例えば、特許文献9参照。)。
【0017】
【特許文献1】
特開平4−370298号公報
【特許文献2】
特開平6−73685号公報
【特許文献3】
特開平7−238493号公報
【特許文献4】
特開平7−238495号公報
【特許文献5】
特開平8−92894号公報
【特許文献6】
特開平9−158088号公報
【特許文献7】
特開平9−176996号公報
【特許文献8】
特開平9−209297号公報
【特許文献9】
特開平11−279988号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、白紙光沢が低く、嵩高で不透明性、腰が優れ、高い印刷適性を有する嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法を提供するものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明の嵩高な艶消し塗工紙は、ISO白色度75%以上、密度0.60g/cm3以下で、カナダ標準濾水度250〜450mlに叩解したパルプを、全パルプ中に40質量%以下混合したパルプスラリーを用いて抄紙し、10秒コブサイズ度100g/m2以下、脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて密度0.70g/cm3以下に調整して得られた嵩高な原紙に、塗工層を設けてなることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の艶消し塗工紙の製造方法は、上記発明における原紙に、重質炭酸カルシウム30〜70質量%含有する塗工液を片面5〜20g/m2塗工し、金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの条件でソフトカレンダー処理し、密度1.00g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度白紙光沢が30%以下とすることを特徴とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の艶消し塗工紙およびその製造方法について、詳細に説明する。
【0023】
本発明に用いられるパルプのISO白色度は、75%以上が好ましい。75%未満では40質量%以下であっても白色度が低く視的にも好まれない。
【0024】
また、パルプの密度が、0.60g/cm3より高いと配合量を増加しても期待したほどの嵩が得られない。
【0025】
また、パルプのカナダ標準濾水度は、250mlより低いと抄紙し難いだけでなく、嵩もで難い。また、450mlより高いと強度がでない。
【0026】
上記パルプの配合量は、強度、白色度、嵩などの紙質を考量すると全パルプ中に40質量%以下が好ましく。40質量%より多いと品質が得にくい。
【0027】
本発明に用いられる他のパルプとしては、LBKP,NBKPなどの化学パルプ およびGP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および古紙パルプなどの各種パルプが挙げられる。また、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0028】
また、本発明の原紙においては、ノーサイズプレス原紙、澱紛、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた原紙などを用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施す場合も有る。
【0029】
本発明において、10秒コブサイズ度が、100g/m2より高いと、印刷適性が低下する傾向にあり、100g/m2以下が良好である。
【0030】
脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて原紙密度は、0.70g/cm3以下に調整することで製品が嵩高となるが、0.70g/cm3より高いと嵩が得られない。
【0031】
また、本発明の艶消し塗工紙の製造方法において、塗工液成分の顔料として、重質炭酸カルシウムは30〜70質量%であることが好ましい。70質量%より多い配合では、白紙光沢が低くインキセットが遅くなる傾向にある。
30質量%未満では白紙光沢が高いがインキ光沢が低く、インキセットが遅くなる。
【0032】
本発明において、塗工方法はサイズプレスコーター、ゲートロール、コーター、シムサイザー、ブレードコーターなどの公知の塗工機が挙げられる。
【0033】
本発明において、塗工液に用いられる他の顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイトなどの複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0034】
塗工液に用いられる澱粉としては、通常の澱紛、酸化澱紛、エーテル化澱紛、エステル化澱紛、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉などが挙げられる。
【0035】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0036】
塗工液に用いられる澱粉以外のバインダーとしては、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。
【0037】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0038】
一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は、金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの条件でソフトカレンダー処理する。処理温度が、90℃より高いと潰れすぎて嵩が得られない。逆に、30℃未満であると光沢およぶ平滑性が得られず、品質が低下する。また、処理線圧は、品質を考慮すると20〜90kgf/cmが好ましい。
【0039】
製品品質は、密度が1.0g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度の白紙光沢が30%以下であることが艶消し塗工紙の紙質および印刷適性として好ましい。
【0040】
塗工量は、乾燥後の質量として、通常片面塗工量が5〜20g/m2、好ましくは7〜18g/m2である。
【0041】
塗工層中に含まれるラテックスバインダーの添加量は、全顔料の質量に対し、固形分で通常8〜16質量%、好ましくは9〜15質量%である。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に指定のない限り、すべて質量部および質量%を示す。
【0043】
<原紙配合>
LBKP(濾水度450mlcsf) 70部
NBKP(濾水度500mlcsf) 30部
【0044】
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量70g/m2の原紙を長網抄紙機で抄造し、オンラインでマシンカレンダーで密度を調整した。
【0045】
<塗工液配合>
市販高白微粒カオリン 50部
市販高白1級カオリン 20部
市販重質炭酸カルシウム 30部
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
ラテックスバインダー 12部
市販燐酸エステル化澱粉 1部
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
ステアリン酸カルシウム 0.5部
印刷適性剤 0.5部
水酸化ナトリウム pH9.8に調製
さらに、上記の割合の塗工液を調製し、ベントブレード方式の塗工機を用いて、塗工速度1200m/分で塗工液を片面当たり12g/m2塗工し、オンラインソフトカレンダーにて仕上げた。
【0046】
実施例および比較例の原紙、艶消し塗工紙について、下記の製造方法と評価測定した結果を表1、2、3に示した。
【0047】
(1)坪量は、JIS P8124、厚みと密度は、JIS P8118にて測定した。
【0048】
(2)ISO白色度は、JIS P8148、ISO不透明度は、JIS P8149にて測定した。
【0049】
(3)カナダ標準濾水度は、JIS P8121にて測定した。
【0050】
(4)平滑度は、J.TAPPI No.5(スムースター平滑度試験器/東映電子工業社製)にて測定した。
【0051】
(5)剛直性は、JIS P8143(クラークこわさ試験器)にて測定した。
【0052】
(6)10秒コッブサイズは、JIS P8140にて測定した。
【0053】
(7)75度白紙光沢は、JIS P8142にて測定した。
【0054】
(8)印刷光沢は、RI印刷適性試験機を用いて藍色、紅色、黄色のインキ(DIC社製大豆油インキと鉱物油インキ、0.3CC)の重色ベタ印刷し、一昼夜放置後、角度60度で測定した。
【0055】
(9)印刷面質、印刷着肉性は、目視判定にて5段階評価した(5;良、1;悪)。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1、2、3の結果より、実施例および比較例を比べると、白色度が75%以上、密度が0.60g/cm3以下、カナダ標準濾水度250〜500mlのパルプを40質量%以下、10秒コブサイズ度100g/m2以下、脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて密度0.7g/cm3以下に調整したものが、嵩高であり印刷評価においても良好であった。
【0060】
また、2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの範囲でソフトカレンダー処理にて密度1.0g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度白紙光沢が30%以下にすることで嵩高で不透明性があり、腰、印刷適正の優れたものが得られた。
【0061】
【発明の効果】
上記のとおり、本発明の嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法により、白紙光沢が低く、嵩高で不透明性、腰が優れ、軽量化ができ、高い印刷適性を有する嵩高な艶消し塗工紙を得ることができる。
Claims (2)
- ISO白色度75%以上、密度0.60g/cm3以下で、カナダ標準濾水度250〜450mlに叩解したパルプを、全パルプ中に40質量%以下混合したパルプスラリーを用いて抄紙し、10秒コブサイズ度100g/m2以下、脱水プレス線圧およびマシンカレンダーにて密度0.70g/cm3以下に調整して得られた嵩高な原紙に、塗工層を設けてなることを特徴とする嵩高な艶消し塗工紙。
- 前記請求項1記載の原紙に、重質炭酸カルシウム30〜70質量%含有する塗工液を片面5〜20g/m2塗工し、金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる2段ソフトニップを有する2スタック、処理温度30〜90℃、処理線圧20〜90kgf/cmの条件でソフトカレンダー処理し、密度1.00g/cm3以下、スムースター平滑度30kPa以下、75度白紙光沢が30%以下とすることを特徴とする嵩高な艶消し塗工紙の製造方法。
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JP2003075160A JP2004277975A (ja) | 2003-03-19 | 2003-03-19 | 嵩高な艶消し塗工紙およびその製造方法 |
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JP2006322096A (ja) * | 2005-05-17 | 2006-11-30 | Daio Paper Corp | 出版用紙 |
JP2007100228A (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-19 | Daio Paper Corp | 印刷用塗工紙 |
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2003
- 2003-03-19 JP JP2003075160A patent/JP2004277975A/ja active Pending
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