JP2004277900A - 写真印画紙用紙の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】パルプスラリーに少なくともアニオン性ポリアクリルアミド樹脂およびカチオン化澱粉およびポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を含む配合であっても、抄紙系内での発泡を抑え、不均一な分散、凝集を防ぎ、泡が紙の地合に悪影響を及ぼすことを防ぎ、かつ耐浸み込み性良好な写真印画紙用紙を提供する。また、蛍光増白剤による増白効果をより機能的に発現し、蛍光欠点故障を劇的に少なくする。
【解決手段】パルプスラリーに対してアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉の順で添加して製造する。また、パルプ化工程からスラリーの状態で供給される直送パルプにこの順番で添加する。さらに、パルプスラリーに蛍光増白剤をアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段にて添加して製造する。
【選択図】 なし
【解決手段】パルプスラリーに対してアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉の順で添加して製造する。また、パルプ化工程からスラリーの状態で供給される直送パルプにこの順番で添加する。さらに、パルプスラリーに蛍光増白剤をアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段にて添加して製造する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抄紙系内の発泡およびパルプの必要以上の凝集を防ぎ、操業性良く製造出来る写真印画紙用紙の製造方法に関する。更に、抄紙系内の発泡を抑えることにより泡が紙の地合に悪影響を及ぼすことを防ぎ、かつパルプの必要以上の凝集を抑えることにより地合を良化せしめ、さらに耐浸み込み性良好な写真印画紙用紙の製造方法に関するものである。また、蛍光増白剤の効果をより顕著に発現する写真印画紙用紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、写真印画紙用支持体として、外観、腰、強度、価格の面で優れた紙が用いられてきた。しかし、紙を写真印画紙用紙として用いるにあたり、現像時に起きる現像処理液の吸収が大きく、迅速な現像処理、印画紙品質の保持などが欠点として挙げられている。
【0003】
その対策として、原紙の両面をポリオレフィンなどの耐水性樹脂で被覆することが広く行われている。しかしながら、この方法によれば表裏面からの現像液の浸透を防ぐことが出来るものの、支持体端部からの現像液浸透を防止することは不可能である。また、最近の節水型水洗処理では、端部から浸透した現像液を完全に洗浄することも不可能である。
【0004】
端部からの現像液浸透を防止する目的として、原紙にサイズ剤を添加することが行われている。この際、写真印画紙としての保存性およびカブリなどの写真特性への影響がないことを考慮して、中性から弱アルカリ性領域での抄紙におけるサイズ剤としてアルキルケテンダイマーまたはアルケニル無水琥珀酸が一般的に用いられている。
【0005】
従来の技術では、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂と共にアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、アルミニウム塩、アルカリ性物質、サイズ剤を添加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂を順に添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの処方では抄紙スラリー系内における発泡対策には寄与しない。アルキルケテンダイマー、陽イオン系湿潤紙力増強剤と陰イオン系高分子電解質を含有する方法が提案されているが、単純にこれらの薬剤を投入すると系内における発泡が大きく、地合不良や欠点などの品質問題を起こすことがある(例えば、特許文献3参照)。また、中性から弱アルカリ性雰囲気下で用いられるアルキルケテンダイマーに対して、N−ビニルホルムアミドビニルアミン共重合物を含有する方法が開示されているが、サイズ剤定着の為のみに薬剤を添加することはコストアップに繋がり、またこの方法も発泡への解決とはならない(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
抄紙系内における泡対策として消泡剤を用いることは一般的である。しかし、消泡剤を用いた原料を写真印画紙用紙となした際にはトラブルを誘発することが多い。例えば、ポリエーテル系の消泡剤は写真乳剤に悪影響を及ぼし写真性を大幅に悪化させ、シリコン系の消泡剤は写真性が悪くなるばかりでなく、後にポリオレフィン樹脂により紙を被覆する際に、接着不良の原因となる。このようなことから、写真印画紙用紙には消泡剤を使わないことが望ましく、泡対策は基本的な配合中で行うことが望ましい。
【0007】
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は、アルキルケテンダイマー定着能および湿潤強度剤としての機能を有し、写真印画紙用紙を製造するにあたり有効である。しかし、パルプに留まらずにパルプスラリー系内に残存したポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は発泡の原因となる。抄紙系内において泡が発生すると、泡が紙に抄きこまれることによる地合不良、系内の汚染等不利益なことが多く発生する。
【0008】
カチオン性のポリマーにはパルプの歩留まりを向上させる効果があるものがあり、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂にも若干の歩留まり向上効果がある。しかし、パルプ歩留まり効果はパルプを凝集させる効果であるため、凝集により必要以上に作られたフロックは地合を悪化させる。地合の悪い紙を用いた写真印画紙用紙は、画像の再現性、写像性に乏しく良い画質を提供できない。
【0009】
カチオン化澱粉が紙の強度およびパルプの歩留まりに与える影響は大きく、コストも安いことから、前述のように写真印画紙用紙に用いられることは公知である。しかし、カチオン化澱粉の効果を効率よく発現する為には、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂等と比較すると2倍から20倍程度の添加量を必要とし、系内の電荷バランスは大きくカチオン側に傾く。その結果、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を含むカチオン性薬剤の歩留まり低下や不均一な定着、地合不良といった不利益な現象を引き起こす。
【0010】
高い白色度を求められる写真印画紙用紙において、蛍光増白剤を用いて白色度を向上させることは一般的である。しかし、蛍光増白剤は非常に高価であるが故に、使用すればコストの上昇を引き起こす問題がある。また、蛍光増白剤の過度の添加は蛍光増白剤の凝集によるスポットトラブルや写真印画紙用紙の褪色といったトラブルを引き起こす原因となるため、使用するにしても出来るだけ少量の蛍光増白剤を効果的に用いる必要性が存在する。
【0011】
抄紙において、ドライシートパルプ化工程を経ずに、パルプ化工程からスラリーの状態で供給される直送パルプを用いることは、パルプをドライシート化する際の乾燥エネルギーを不要に出来ることでコスト的に非常に有力であるが、ドライシートパルプと比較して低分子多糖などの発泡要因となる物質をパルプと同時に抄紙系に持ち込んでしまうことは避けられない。このことは、写真印画紙用紙のように出来るだけ消泡剤を用いたくない系においては重大な不利益であり、発泡対策は一層重要なものとなる。
【0012】
【特許文献1】
特公昭62−23119号公報(1〜3頁)
【特許文献2】
特開平5−173287号公報(2〜3頁)
【特許文献3】
特開昭60−81396号公報(1、4〜5頁)
【特許文献4】
特開平8−146555号公報(1〜3頁)
【0013】
【発明が解決ようとする課題】
上記に鑑み、本発明は消泡剤を使用したくない、または出来ない抄紙系内でも発泡、パルプの必要以上の凝集を防ぎ、操業性良く製造出来る写真印画紙用紙の製造方法に関する。また、系内の発泡を抑えることにより泡が紙の地合に悪影響を及ぼすことを防ぎ、かつパルプの必要以上の凝集を抑えることで地合を良化し、さらには十分な耐浸み込み性を有する写真印画紙用紙の提供に関するものである。ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を用いた系においても抄紙系での発泡が著しく改善される種々の配合の添加順を創出することを目的とする。特に直送パルプを使用する場合、ドライシートパルプよりも多く抄紙系内に持ち込まれる低分子多糖等による発泡の悪化があるため、ドライシートパルプを使用した場合でも消泡効果が達成できる写真印画紙用紙の製造方法を目的とする。
【0014】
加えて、写真印画紙用紙と成した際に必要である耐浸み込み性において、カチオン性アルキルケテンダイマーの使用を選択することで、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂とアルキルケテンダイマーが離れて添加されてしまうことによる歩留まり低下を防ぎ、発泡対策と浸み込み対策を両立することを目的とする。
【0015】
また、この発明は蛍光増白剤を使用する系においては、パルプスラリーに対して蛍光増白剤添加順を検討することによって、蛍光増白剤の効果をより機能的に発現させることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、パルプスラリーにアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉をこの順序で添加して製造することを特徴とする写真印画紙用紙の製造方法である。
【0017】
このようにして作成された紙を原紙とし、その両面をポリオレフィン樹脂で被覆したことを特徴とする支持体により、写真印画紙用支持体として優位に達成される。
【0018】
さらに、内添サイズ剤として、パルプスラリーにカチオン性アルキルケテンダイマーを添加することによってさらに有利に達成される。
【0019】
加えて、パルプとして直送パルプを用いる場合、さらに顕著に効果を達成することが出来る。
【0020】
また、蛍光増白剤使用時には、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段にて蛍光増白剤を添加することによって、蛍光増白剤の効果をより機能的に発現することが出来る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の写真印画紙用紙の製造方法および写真印画紙用紙について、詳細に説明する。
【0022】
本発明は、紙中に少なくともアニオン性ポリアクリルアミド樹脂およびポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂およびカチオン化澱粉を含む写真印画紙用紙である。
【0023】
湿潤紙力剤として用いられるポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加量は、対パルプ0.1〜1質量%が望ましいが、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の過度の使用は写真印画紙となした時の写真乳剤特性に影響を与えることがあるため、対パルプ0.1〜0.3質量%が望ましい。また0.1質量%未満では、写真印画紙支持体と成した際、現像時の現像液浸み込みによる強度低下や寸法安定性の低下があるため相応しくない。
【0024】
本発明に用いるポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂としては、紙質およびアルキルケテンダイマーへの影響を考慮し、分子量50万〜200万が好ましく、より望ましくは80万〜120万が望ましい。
【0025】
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は高pHにて分解し、写真印画紙となした時の写真乳剤特性に影響を与えることがあるため、抄紙時のスラリーpHは9以下であることが望ましい。また、サイズ剤、顔料、蛍光剤等の歩留まりおよび効果を考えるとpHは7〜9がより好ましい。
【0026】
本発明でのポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加は、カチオン化澱粉よりも前にスラリーに対して行われる。カチオン化澱粉添加により系内のカチオン化物質が多くなる前にポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を添加することで、カチオン化澱粉添加後に添加するよりもポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の高い歩留まりを得ることが出来、結果としてパルプに留まらずに系内を循環するポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を減らし、発泡対策として効果を挙げることが出来る。
【0027】
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加によりパルプスラリーのフロックが形成されるため、その添加位置は出来るだけ上流に置き、その後のシェアーによるフロック破壊を起こすことが望ましい。フロックを破壊しないと、紙と成した後にフロックが起こすプロファイル不良が地合を悪化させ、写真印画紙用紙と成した時の画像再現性および写像性等に悪影響を与える。具体的にはスクリーンやファンポンプといったシェアーのかかるパートより前が望ましい。
【0028】
さらに、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加の前段にパルプスラリーに添加することによって、一層の発泡減少効果を得た。本発明においては、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂以外のアニオン種も各種検討したが、紙質およびコスト面からポリアクリルアミド樹脂が一番効果的であった。
【0029】
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加量としては対パルプ0.1〜5質量%が望ましい。0.1質量%未満では効果が発現できず、5質量%より多いとスラリーのアニオン/カチオンバランスを壊す。望ましくは1〜3質量%が望ましく、ヘッドボックスにおけるゼータ電位が+10〜−20mV、より望ましくは+5〜−10mVの間に入ることを指標に適宜増減することが望ましい。また、本発明に用いるアニオン性ポリアクリルアミド樹脂としては、紙質への影響を考慮し、分子量50万〜400万が好ましく、より望ましくは70万〜200万が望ましい。
【0030】
また、蛍光増白剤を使用する場合、蛍光増白剤をアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加の前段でパルプスラリーに添加することにより、蛍光増白剤による増白効果を向上することが出来た。この発明により、写真印画紙用紙の白色度が格段に向上すると共に、蛍光増白剤の凝集によるスポットトラブル欠点数も著しく減少した。
【0031】
本発明に用いる蛍光増白剤には一般に知られる各種蛍光増白剤を用いることが出来るが、中でもジアミノスチルベン系ジスルホン酸誘導体がコストおよび効果から望ましく、本発明においてもっとも効果的に機能を発現することが出来る。
【0032】
特に、サイズ剤としてカチオン性アルキルケテンダイマーを用いることで、本発明はさらに有利に達成される。アルキルケテンダイマーはポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂と同時に使用することによりその歩留まりを若干向上させることが出来、添加位置は両薬剤が近いほど望ましい。しかし、アルキルケテンダイマーは加水分解によりその能力を失ってしまうため、出来るだけ下流での添加、望ましくは種箱以降での添加が望ましくこれより上流であると加水分解によりその能力を失い効果的な使用が出来ない。従って、本発明において上流にて添加されるポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂と同時に添加することが出来ないが、この矛盾をパルプへの自己定着能を有するカチオン性アルキルケテンダイマーを用いることで補完し、一層の効果向上を得た。カチオン性アルキルケテンダイマーの添加量は対パルプ0.1〜0.4質量%が望ましい。0.4質量%以上の添加ではアルキルケテンダイマーのサイズ性が飽和域に達してしまい、0.1%未満の添加量では現像時の現像液浸み込みに耐えうる十分なサイズ性を発揮できない。
【0033】
本発明におけるアルキルケテンダイマーとして、炭素数が8〜30の高級脂肪酸からなるものが好ましく、特に炭素数18〜22が望ましい。この際、炭素数は単一である必要はなく、複数の炭素数を持つ高級脂肪酸が混在してなるものでも構わない。
【0034】
本発明の写真印画紙用紙は、原料として直送パルプを使用することで、コスト面においてより効果を発揮する。本発明における直送パルプとは、蒸解・漂白・脱墨等の処理を経たパルプが、ドライシートパルプ化されること無く抄紙系内にて用いられるものを指す。直送パルプの使用は、ドライシートパルプ化に必要である乾燥エネルギーが不要となることでパルプ原料コストを抑え、結果として製品コストを抑える効果的な方法であり、本発明下においてもコストダウンの効果を保持出来るが、反面ドライシートパルプよりも低分子多糖等を多く含むが故に発泡のトラブルを起こしやすい。このような直送パルプにあっては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂をカチオン化澱粉の前に添加することにより発泡を抑える効果を一層顕著に発揮出来る。
【0035】
本発明におけるパルプには、樹種、蒸解法、漂白法を問わずあらゆるパルプを使用出来るが、紙質や面質を考慮した際にはNBKPおよびLBKPが望ましい。パルプは離解、叩解の処理を経て抄紙機へと送られるが、その際の濾水度がカナディアンスタンダードフリーネスにおいて200〜400mlが望ましく、繊維長は0.50〜0.70mmが望ましい。400ml以上の濾水度および0.70mm以上の繊維長では写真印画紙用紙として十分な面質を得ることが出来ない。200mm未満の濾水度では操業時に水引きが悪く抄速を上げられない。また、0.50mm未満の繊維長では、写真印画紙用紙として必要な剛度などの紙力を維持出来ない。
【0036】
本発明の実施にあたり、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉、カチオン性アルキルケテンダイマー、蛍光増白剤以外の各種添加物をパルプスラリーに添加、または写真印画紙用紙に含有させることも可能である。サイズ剤としてアニオン性アルキルケテンダイマー、脂肪酸金属塩、脂肪酸、エポキシ系高級脂肪酸アミド、アルケニルまたはアルキルコハク酸無水物、ロジン誘導体など、乾燥紙力剤としてカチオンまたは両性のポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ガラクトマンナンなど、湿潤紙力剤としてポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂等、填料としてクレー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等、定着剤として塩化アルミニウム、硫酸バンド等の水溶性アルミニウム塩等、pH調節剤として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸、塩酸等、その他着色顔料、染料などを適宜組み合わせて含有すると有利である。
【0037】
本発明におけるカチオン化澱粉には、コーン、ポテト、タピオカ、小麦など澱粉の原料、澱粉の分子量およびカチオン化度を問わずあらゆるカチオン化澱粉が使用出来る。抄造目的に応じて使い分けることが望ましいが、写真性の観点においてコーン、小麦澱粉はポテト、タピオカよりも微量の金属を含みにくく有利である。カチオン化澱粉の添加量は対パルプ0.5〜3質量%が望ましい。0.5質量%未満ではカチオン化澱粉添加による効果を発揮出来ず、3質量%より多いと濾水などに影響し操業面に不利益を生ずる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。配合比率はすべて質量比率である。また、以下表において、略号により薬剤を省略標記した。
蛍光増白剤 :蛍光剤
カチオン化澱粉 :C.St.
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂:PAE
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂 :A−PAM
アニオン性アルキルケテンダイマー :A−AKD
カチオン性アルキルケテンダイマー :C−AKD
【0039】
予備操作1
LBKPドライシートパルプを離解し、濾水度350mlCSFに叩解し1%スラリーとなし、水酸化ナトリウムまたは硫酸を用いてpH6.0に調節し、抄紙原料とした。
【0040】
比較例1および実施例1〜3
予備操作1で得た抄紙原料10000に対し、蛍光増白剤0.01、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂0.1、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.2、カチオン化澱粉1、カチオン性アルキルケテンダイマー0.2を表1に示す順で添加しパルプスラリーを得た。また、これを長網抄紙機で170g/m2に抄紙し原紙試料とした。また、抄紙の際にワイヤー下に落ちた白水を回収し、これを白水試料とした。
【0041】
予備操作2
LBKPパルプ化工程からスラリーの状態で直送されたパルプを離解し、濾水度350mlCSFに叩解し1%スラリーとなし、水酸化ナトリウムまたは硫酸を用いてpH6.0に調節し、抄紙原料とした。
【0042】
比較例2および実施例4〜6
予備操作2で得た抄紙原料10000に対し、蛍光増白剤0.01、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂0.1、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.2、カチオン化澱粉1、カチオン性アルキルケテンダイマー0.2を表1に示す順で添加しパルプスラリーを得た。また、これを長網抄紙機で170g/m2に抄紙し原紙試料とした。また、抄紙の際にワイヤー下に落ちた白水を回収し、これを白水試料とした。
【0043】
【表1】
【0044】
<発泡性測定方法>
パルプスラリーまたは白水試料の発泡性は以下の方法により測定される。内径5cm長さ30cmの筒の上下を内径8mmのガラス管を通したゴム栓で封じたものを発泡層とした。発泡層は垂直に固定され、下部のガラス管から5ml/秒の速さで液を送り出すチュービングポンプへゴム管で結ばれ、チュービングポンプから上部のガラス管へゴム管で結ばれ発泡試験装置を成す。発泡層中にパルプスラリーまたは抄紙白水を下のゴム栓から5cmまで入れ、チュービングポンプを回転させて上部ガラス管からパルプスラリーまたは抄紙白水を25cm滴下し、10分後に液面に出来る泡の大きさ、数、消えるまでの時間によって泡の評価とした。
【0045】
<試験結果>
パルプスラリーの泡試験結果を表2に、抄紙白水の泡試験結果を表3に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
<結果の評価>
表2に示すように、比較例1と実施例1および実施例2の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、ドライシートパルプ使用時のパルプスラリー泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。また、実施例2と実施例3の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著にパルプスラリー泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。
【0048】
また、比較例2と実施例4および実施例5の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、直送パルプ使用時のパルプスラリー泡の発生個数が激減し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。さらに、実施例5と実施例6の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著に泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。特に、比較例1と比較例2を比べると直送パルプを使用した際のパルプスラリー泡がドライシートパルプ使用時よりも多いことが確認出来るが、実施例1および実施例2および実施例3と、実施例4および実施例5および実施例6を比べると、直送パルプとドライシートパルプでのパルプスラリー泡の差がほぼ無くなっており、本発明の効果が直送パルプにおいて、より顕著に発揮されていることが確認出来る。
【0049】
【表3】
【0050】
<結果の評価>
表3に示すように、比較例1と実施例1および実施例2の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、ドライシートパルプ使用時の白水泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。また、実施例2と実施例3の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著に白水泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。
【0051】
また、比較例2と実施例4および実施例5の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、直送パルプ使用時の白水泡の発生個数が激減し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。さらに、実施例5と実施例6の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著に泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。特に、比較例1と比較例2を比べると直送パルプを使用した際の白水泡がドライシートパルプ使用時よりも多いことが確認出来るが、実施例1および実施例2および実施例3と、実施例4および実施例5および実施例6を比べると、直送パルプとドライシートパルプでの白水泡の差がほぼ無くなっており、本発明の効果が直送パルプにおいて、より顕著に発揮されていることが確認出来る。
【0052】
<地合評価方法>
3Dシートアナライザー(M/K SYSTEM社製)を用いて、抄紙後の地合評価を行った。測定条件は以下の通りである。結果を表3に示す。
測定モード :フロック測定モード
フィルター :赤フィルター(フロック測定モード用)
レンジ :3
該機により測定されるM/K INDEXは地合評価指数であり、数値が大きい方が地合として良好であることを示す。
【0053】
<浸み込み評価法>
ベンジルアルコール:ジエチレングリコール:ローズベンガル=100:100:1の液を作成し、20℃に調温し評価溶液とした。評価片は表裏にポリエチレンラミネート処理を施し、23℃65%RHの環境下にて8時間調湿したのち、カッターにて5×5cmにカットしサンプルとした。カットしたサンプルを評価溶液に3分間浸漬し、取り出した後即座に水洗いし、ただちに水を拭き取り、必要以上に評価溶液がサンプルに浸透することを防いだ。赤染料が確認出来る、サンプルのカッター切断辺からの距離を、目視にてサンプル間の比較を行った。結果は数値化が困難なため、大きく5段階に分けて優劣で判定した。サイズ性が高いものは評価溶液が内部に浸透しないため、浸透度合いの低いものが優れたサイズ性を発揮していることになる。
【0054】
<写像性評価方法>
抄紙した紙をスーパーカレンダー処理にて密度1.00g/cm2にした後、表裏にポリエチレンラミネート処理を施しサンプルとする。測定は、写像性測定器ICM−1DP(スガ試験器株式会社)を使用した。数値が大きい方が、写像性として良好である。
【0055】
原紙試料について、地合、浸み込み、泡抜け、写像性について評価した。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
<結果の評価>
表4に示すように、比較例1と実施例1、および比較例2と実施例2の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、ドライシート・直送のどちらのパルプについても、抄紙後の紙の地合、泡抜け、写像性が明確に良化した。また、実施例1と実施例2、および実施例4と実施例5の比較において、アルキルケテンダイマーをアニオン性からカチオン性に変えることで、ドライシート・直送のどちらのパルプについても、浸み込みが良化した。実施例2と実施例3、実施例5と実施例6の比較において、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加によって紙物性に悪影響を与えていないことがわかる。
【0058】
<蛍光強度測定方法>
日本電色工業株式会社製PF−10を用いて、蛍光強度の測定を行った。光源にUVカットフィルターを使用したときと使用していないときの白色度の差異を蛍光強度として表した。測定条件を下記に示す。
光源 :C/2光源
UVカットフィルター波長 :420nm
蛍光強度算出式 :白色度(フィルターなし)−白色度(フィルターあり))
【0059】
<蛍光欠点測定方法>
蛍光欠点はサンプルをブラックライト下で観察し、蛍光を示すスポット状の欠点の数を1m2あたりの数で表示する。蛍光欠点が少ない方が優良なサンプルとなる。
【0060】
原紙試料について、蛍光強度、蛍光欠点の評価を行った。結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
<結果の評価>
表5に示すように、実施例2と実施例3の比較において、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂を蛍光増白剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の間にて添加することにより、蛍光強度が大幅に増大した。このことは、同一量の蛍光増白剤であってもより効果的にその機能を発現出来るようになったことを示している。また、実施例5と実施例6の比較により、直送パルプを使用した場合でもアニオン性ポリアクリルアミド樹脂を蛍光増白剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の間にて添加することによる蛍光増白剤の効果的な機能発現が確認出来た。実施例2、実施例3、実施例5、実施例6の比較から、ドライシートパルプ使用時においても直送パルプ使用時においても、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂を蛍光増白剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の間にて添加することによる蛍光増白剤の効果的な機能発現能力はほとんど同等に効果が出ることが確認出来た。
【0063】
比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段に蛍光増白剤を添加した時、顕著に蛍光欠点が減ることが確認された。また、比較例2、実施例4、実施例5、実施例6の比較により、ドライシートパルプ使用のみならず直送パルプ使用時においてもアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段に蛍光増白剤を添加することによる蛍光欠点の著しい減少が確認出来た。
【0064】
【発明の効果】
本発明は、パルプスラリーに少なくともアニオン性ポリアクリルアミド樹脂およびカチオン化澱粉およびポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を添加し、かつこの3種の成分をパルプスラリーに対してアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉の順で添加して製造することによって、抄紙系内での発泡及び不均一な分散、凝集を防ぎ、操業性良く写真印画紙用紙を製造出来る。更に、系内の発泡を抑えることにより泡が紙の地合に悪影響を及ぼすことを防ぎ、かつパルプの凝集を抑えることで地合を良化せしめ、耐浸み込み性良好な写真印画紙用紙を提供出来る。また、パルプとして直送パルプを使用した際に、上記の効果をより顕著に発揮出来る。さらに、パルプスラリーに蛍光増白剤をアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段にて添加して製造することにより、蛍光増白剤による増白効果をより機能的に発現し、蛍光欠点故障を劇的に少なくすることが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、抄紙系内の発泡およびパルプの必要以上の凝集を防ぎ、操業性良く製造出来る写真印画紙用紙の製造方法に関する。更に、抄紙系内の発泡を抑えることにより泡が紙の地合に悪影響を及ぼすことを防ぎ、かつパルプの必要以上の凝集を抑えることにより地合を良化せしめ、さらに耐浸み込み性良好な写真印画紙用紙の製造方法に関するものである。また、蛍光増白剤の効果をより顕著に発現する写真印画紙用紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、写真印画紙用支持体として、外観、腰、強度、価格の面で優れた紙が用いられてきた。しかし、紙を写真印画紙用紙として用いるにあたり、現像時に起きる現像処理液の吸収が大きく、迅速な現像処理、印画紙品質の保持などが欠点として挙げられている。
【0003】
その対策として、原紙の両面をポリオレフィンなどの耐水性樹脂で被覆することが広く行われている。しかしながら、この方法によれば表裏面からの現像液の浸透を防ぐことが出来るものの、支持体端部からの現像液浸透を防止することは不可能である。また、最近の節水型水洗処理では、端部から浸透した現像液を完全に洗浄することも不可能である。
【0004】
端部からの現像液浸透を防止する目的として、原紙にサイズ剤を添加することが行われている。この際、写真印画紙としての保存性およびカブリなどの写真特性への影響がないことを考慮して、中性から弱アルカリ性領域での抄紙におけるサイズ剤としてアルキルケテンダイマーまたはアルケニル無水琥珀酸が一般的に用いられている。
【0005】
従来の技術では、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂と共にアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、アルミニウム塩、アルカリ性物質、サイズ剤を添加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂を順に添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの処方では抄紙スラリー系内における発泡対策には寄与しない。アルキルケテンダイマー、陽イオン系湿潤紙力増強剤と陰イオン系高分子電解質を含有する方法が提案されているが、単純にこれらの薬剤を投入すると系内における発泡が大きく、地合不良や欠点などの品質問題を起こすことがある(例えば、特許文献3参照)。また、中性から弱アルカリ性雰囲気下で用いられるアルキルケテンダイマーに対して、N−ビニルホルムアミドビニルアミン共重合物を含有する方法が開示されているが、サイズ剤定着の為のみに薬剤を添加することはコストアップに繋がり、またこの方法も発泡への解決とはならない(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
抄紙系内における泡対策として消泡剤を用いることは一般的である。しかし、消泡剤を用いた原料を写真印画紙用紙となした際にはトラブルを誘発することが多い。例えば、ポリエーテル系の消泡剤は写真乳剤に悪影響を及ぼし写真性を大幅に悪化させ、シリコン系の消泡剤は写真性が悪くなるばかりでなく、後にポリオレフィン樹脂により紙を被覆する際に、接着不良の原因となる。このようなことから、写真印画紙用紙には消泡剤を使わないことが望ましく、泡対策は基本的な配合中で行うことが望ましい。
【0007】
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は、アルキルケテンダイマー定着能および湿潤強度剤としての機能を有し、写真印画紙用紙を製造するにあたり有効である。しかし、パルプに留まらずにパルプスラリー系内に残存したポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は発泡の原因となる。抄紙系内において泡が発生すると、泡が紙に抄きこまれることによる地合不良、系内の汚染等不利益なことが多く発生する。
【0008】
カチオン性のポリマーにはパルプの歩留まりを向上させる効果があるものがあり、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂にも若干の歩留まり向上効果がある。しかし、パルプ歩留まり効果はパルプを凝集させる効果であるため、凝集により必要以上に作られたフロックは地合を悪化させる。地合の悪い紙を用いた写真印画紙用紙は、画像の再現性、写像性に乏しく良い画質を提供できない。
【0009】
カチオン化澱粉が紙の強度およびパルプの歩留まりに与える影響は大きく、コストも安いことから、前述のように写真印画紙用紙に用いられることは公知である。しかし、カチオン化澱粉の効果を効率よく発現する為には、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂等と比較すると2倍から20倍程度の添加量を必要とし、系内の電荷バランスは大きくカチオン側に傾く。その結果、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を含むカチオン性薬剤の歩留まり低下や不均一な定着、地合不良といった不利益な現象を引き起こす。
【0010】
高い白色度を求められる写真印画紙用紙において、蛍光増白剤を用いて白色度を向上させることは一般的である。しかし、蛍光増白剤は非常に高価であるが故に、使用すればコストの上昇を引き起こす問題がある。また、蛍光増白剤の過度の添加は蛍光増白剤の凝集によるスポットトラブルや写真印画紙用紙の褪色といったトラブルを引き起こす原因となるため、使用するにしても出来るだけ少量の蛍光増白剤を効果的に用いる必要性が存在する。
【0011】
抄紙において、ドライシートパルプ化工程を経ずに、パルプ化工程からスラリーの状態で供給される直送パルプを用いることは、パルプをドライシート化する際の乾燥エネルギーを不要に出来ることでコスト的に非常に有力であるが、ドライシートパルプと比較して低分子多糖などの発泡要因となる物質をパルプと同時に抄紙系に持ち込んでしまうことは避けられない。このことは、写真印画紙用紙のように出来るだけ消泡剤を用いたくない系においては重大な不利益であり、発泡対策は一層重要なものとなる。
【0012】
【特許文献1】
特公昭62−23119号公報(1〜3頁)
【特許文献2】
特開平5−173287号公報(2〜3頁)
【特許文献3】
特開昭60−81396号公報(1、4〜5頁)
【特許文献4】
特開平8−146555号公報(1〜3頁)
【0013】
【発明が解決ようとする課題】
上記に鑑み、本発明は消泡剤を使用したくない、または出来ない抄紙系内でも発泡、パルプの必要以上の凝集を防ぎ、操業性良く製造出来る写真印画紙用紙の製造方法に関する。また、系内の発泡を抑えることにより泡が紙の地合に悪影響を及ぼすことを防ぎ、かつパルプの必要以上の凝集を抑えることで地合を良化し、さらには十分な耐浸み込み性を有する写真印画紙用紙の提供に関するものである。ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を用いた系においても抄紙系での発泡が著しく改善される種々の配合の添加順を創出することを目的とする。特に直送パルプを使用する場合、ドライシートパルプよりも多く抄紙系内に持ち込まれる低分子多糖等による発泡の悪化があるため、ドライシートパルプを使用した場合でも消泡効果が達成できる写真印画紙用紙の製造方法を目的とする。
【0014】
加えて、写真印画紙用紙と成した際に必要である耐浸み込み性において、カチオン性アルキルケテンダイマーの使用を選択することで、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂とアルキルケテンダイマーが離れて添加されてしまうことによる歩留まり低下を防ぎ、発泡対策と浸み込み対策を両立することを目的とする。
【0015】
また、この発明は蛍光増白剤を使用する系においては、パルプスラリーに対して蛍光増白剤添加順を検討することによって、蛍光増白剤の効果をより機能的に発現させることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、パルプスラリーにアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉をこの順序で添加して製造することを特徴とする写真印画紙用紙の製造方法である。
【0017】
このようにして作成された紙を原紙とし、その両面をポリオレフィン樹脂で被覆したことを特徴とする支持体により、写真印画紙用支持体として優位に達成される。
【0018】
さらに、内添サイズ剤として、パルプスラリーにカチオン性アルキルケテンダイマーを添加することによってさらに有利に達成される。
【0019】
加えて、パルプとして直送パルプを用いる場合、さらに顕著に効果を達成することが出来る。
【0020】
また、蛍光増白剤使用時には、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段にて蛍光増白剤を添加することによって、蛍光増白剤の効果をより機能的に発現することが出来る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の写真印画紙用紙の製造方法および写真印画紙用紙について、詳細に説明する。
【0022】
本発明は、紙中に少なくともアニオン性ポリアクリルアミド樹脂およびポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂およびカチオン化澱粉を含む写真印画紙用紙である。
【0023】
湿潤紙力剤として用いられるポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加量は、対パルプ0.1〜1質量%が望ましいが、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の過度の使用は写真印画紙となした時の写真乳剤特性に影響を与えることがあるため、対パルプ0.1〜0.3質量%が望ましい。また0.1質量%未満では、写真印画紙支持体と成した際、現像時の現像液浸み込みによる強度低下や寸法安定性の低下があるため相応しくない。
【0024】
本発明に用いるポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂としては、紙質およびアルキルケテンダイマーへの影響を考慮し、分子量50万〜200万が好ましく、より望ましくは80万〜120万が望ましい。
【0025】
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は高pHにて分解し、写真印画紙となした時の写真乳剤特性に影響を与えることがあるため、抄紙時のスラリーpHは9以下であることが望ましい。また、サイズ剤、顔料、蛍光剤等の歩留まりおよび効果を考えるとpHは7〜9がより好ましい。
【0026】
本発明でのポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加は、カチオン化澱粉よりも前にスラリーに対して行われる。カチオン化澱粉添加により系内のカチオン化物質が多くなる前にポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を添加することで、カチオン化澱粉添加後に添加するよりもポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の高い歩留まりを得ることが出来、結果としてパルプに留まらずに系内を循環するポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を減らし、発泡対策として効果を挙げることが出来る。
【0027】
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加によりパルプスラリーのフロックが形成されるため、その添加位置は出来るだけ上流に置き、その後のシェアーによるフロック破壊を起こすことが望ましい。フロックを破壊しないと、紙と成した後にフロックが起こすプロファイル不良が地合を悪化させ、写真印画紙用紙と成した時の画像再現性および写像性等に悪影響を与える。具体的にはスクリーンやファンポンプといったシェアーのかかるパートより前が望ましい。
【0028】
さらに、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加の前段にパルプスラリーに添加することによって、一層の発泡減少効果を得た。本発明においては、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂以外のアニオン種も各種検討したが、紙質およびコスト面からポリアクリルアミド樹脂が一番効果的であった。
【0029】
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加量としては対パルプ0.1〜5質量%が望ましい。0.1質量%未満では効果が発現できず、5質量%より多いとスラリーのアニオン/カチオンバランスを壊す。望ましくは1〜3質量%が望ましく、ヘッドボックスにおけるゼータ電位が+10〜−20mV、より望ましくは+5〜−10mVの間に入ることを指標に適宜増減することが望ましい。また、本発明に用いるアニオン性ポリアクリルアミド樹脂としては、紙質への影響を考慮し、分子量50万〜400万が好ましく、より望ましくは70万〜200万が望ましい。
【0030】
また、蛍光増白剤を使用する場合、蛍光増白剤をアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加の前段でパルプスラリーに添加することにより、蛍光増白剤による増白効果を向上することが出来た。この発明により、写真印画紙用紙の白色度が格段に向上すると共に、蛍光増白剤の凝集によるスポットトラブル欠点数も著しく減少した。
【0031】
本発明に用いる蛍光増白剤には一般に知られる各種蛍光増白剤を用いることが出来るが、中でもジアミノスチルベン系ジスルホン酸誘導体がコストおよび効果から望ましく、本発明においてもっとも効果的に機能を発現することが出来る。
【0032】
特に、サイズ剤としてカチオン性アルキルケテンダイマーを用いることで、本発明はさらに有利に達成される。アルキルケテンダイマーはポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂と同時に使用することによりその歩留まりを若干向上させることが出来、添加位置は両薬剤が近いほど望ましい。しかし、アルキルケテンダイマーは加水分解によりその能力を失ってしまうため、出来るだけ下流での添加、望ましくは種箱以降での添加が望ましくこれより上流であると加水分解によりその能力を失い効果的な使用が出来ない。従って、本発明において上流にて添加されるポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂と同時に添加することが出来ないが、この矛盾をパルプへの自己定着能を有するカチオン性アルキルケテンダイマーを用いることで補完し、一層の効果向上を得た。カチオン性アルキルケテンダイマーの添加量は対パルプ0.1〜0.4質量%が望ましい。0.4質量%以上の添加ではアルキルケテンダイマーのサイズ性が飽和域に達してしまい、0.1%未満の添加量では現像時の現像液浸み込みに耐えうる十分なサイズ性を発揮できない。
【0033】
本発明におけるアルキルケテンダイマーとして、炭素数が8〜30の高級脂肪酸からなるものが好ましく、特に炭素数18〜22が望ましい。この際、炭素数は単一である必要はなく、複数の炭素数を持つ高級脂肪酸が混在してなるものでも構わない。
【0034】
本発明の写真印画紙用紙は、原料として直送パルプを使用することで、コスト面においてより効果を発揮する。本発明における直送パルプとは、蒸解・漂白・脱墨等の処理を経たパルプが、ドライシートパルプ化されること無く抄紙系内にて用いられるものを指す。直送パルプの使用は、ドライシートパルプ化に必要である乾燥エネルギーが不要となることでパルプ原料コストを抑え、結果として製品コストを抑える効果的な方法であり、本発明下においてもコストダウンの効果を保持出来るが、反面ドライシートパルプよりも低分子多糖等を多く含むが故に発泡のトラブルを起こしやすい。このような直送パルプにあっては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂をカチオン化澱粉の前に添加することにより発泡を抑える効果を一層顕著に発揮出来る。
【0035】
本発明におけるパルプには、樹種、蒸解法、漂白法を問わずあらゆるパルプを使用出来るが、紙質や面質を考慮した際にはNBKPおよびLBKPが望ましい。パルプは離解、叩解の処理を経て抄紙機へと送られるが、その際の濾水度がカナディアンスタンダードフリーネスにおいて200〜400mlが望ましく、繊維長は0.50〜0.70mmが望ましい。400ml以上の濾水度および0.70mm以上の繊維長では写真印画紙用紙として十分な面質を得ることが出来ない。200mm未満の濾水度では操業時に水引きが悪く抄速を上げられない。また、0.50mm未満の繊維長では、写真印画紙用紙として必要な剛度などの紙力を維持出来ない。
【0036】
本発明の実施にあたり、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉、カチオン性アルキルケテンダイマー、蛍光増白剤以外の各種添加物をパルプスラリーに添加、または写真印画紙用紙に含有させることも可能である。サイズ剤としてアニオン性アルキルケテンダイマー、脂肪酸金属塩、脂肪酸、エポキシ系高級脂肪酸アミド、アルケニルまたはアルキルコハク酸無水物、ロジン誘導体など、乾燥紙力剤としてカチオンまたは両性のポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ガラクトマンナンなど、湿潤紙力剤としてポリアミドポリアミンエピハロヒドリン樹脂等、填料としてクレー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等、定着剤として塩化アルミニウム、硫酸バンド等の水溶性アルミニウム塩等、pH調節剤として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸、塩酸等、その他着色顔料、染料などを適宜組み合わせて含有すると有利である。
【0037】
本発明におけるカチオン化澱粉には、コーン、ポテト、タピオカ、小麦など澱粉の原料、澱粉の分子量およびカチオン化度を問わずあらゆるカチオン化澱粉が使用出来る。抄造目的に応じて使い分けることが望ましいが、写真性の観点においてコーン、小麦澱粉はポテト、タピオカよりも微量の金属を含みにくく有利である。カチオン化澱粉の添加量は対パルプ0.5〜3質量%が望ましい。0.5質量%未満ではカチオン化澱粉添加による効果を発揮出来ず、3質量%より多いと濾水などに影響し操業面に不利益を生ずる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。配合比率はすべて質量比率である。また、以下表において、略号により薬剤を省略標記した。
蛍光増白剤 :蛍光剤
カチオン化澱粉 :C.St.
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂:PAE
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂 :A−PAM
アニオン性アルキルケテンダイマー :A−AKD
カチオン性アルキルケテンダイマー :C−AKD
【0039】
予備操作1
LBKPドライシートパルプを離解し、濾水度350mlCSFに叩解し1%スラリーとなし、水酸化ナトリウムまたは硫酸を用いてpH6.0に調節し、抄紙原料とした。
【0040】
比較例1および実施例1〜3
予備操作1で得た抄紙原料10000に対し、蛍光増白剤0.01、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂0.1、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.2、カチオン化澱粉1、カチオン性アルキルケテンダイマー0.2を表1に示す順で添加しパルプスラリーを得た。また、これを長網抄紙機で170g/m2に抄紙し原紙試料とした。また、抄紙の際にワイヤー下に落ちた白水を回収し、これを白水試料とした。
【0041】
予備操作2
LBKPパルプ化工程からスラリーの状態で直送されたパルプを離解し、濾水度350mlCSFに叩解し1%スラリーとなし、水酸化ナトリウムまたは硫酸を用いてpH6.0に調節し、抄紙原料とした。
【0042】
比較例2および実施例4〜6
予備操作2で得た抄紙原料10000に対し、蛍光増白剤0.01、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂0.1、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.2、カチオン化澱粉1、カチオン性アルキルケテンダイマー0.2を表1に示す順で添加しパルプスラリーを得た。また、これを長網抄紙機で170g/m2に抄紙し原紙試料とした。また、抄紙の際にワイヤー下に落ちた白水を回収し、これを白水試料とした。
【0043】
【表1】
【0044】
<発泡性測定方法>
パルプスラリーまたは白水試料の発泡性は以下の方法により測定される。内径5cm長さ30cmの筒の上下を内径8mmのガラス管を通したゴム栓で封じたものを発泡層とした。発泡層は垂直に固定され、下部のガラス管から5ml/秒の速さで液を送り出すチュービングポンプへゴム管で結ばれ、チュービングポンプから上部のガラス管へゴム管で結ばれ発泡試験装置を成す。発泡層中にパルプスラリーまたは抄紙白水を下のゴム栓から5cmまで入れ、チュービングポンプを回転させて上部ガラス管からパルプスラリーまたは抄紙白水を25cm滴下し、10分後に液面に出来る泡の大きさ、数、消えるまでの時間によって泡の評価とした。
【0045】
<試験結果>
パルプスラリーの泡試験結果を表2に、抄紙白水の泡試験結果を表3に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
<結果の評価>
表2に示すように、比較例1と実施例1および実施例2の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、ドライシートパルプ使用時のパルプスラリー泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。また、実施例2と実施例3の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著にパルプスラリー泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。
【0048】
また、比較例2と実施例4および実施例5の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、直送パルプ使用時のパルプスラリー泡の発生個数が激減し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。さらに、実施例5と実施例6の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著に泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。特に、比較例1と比較例2を比べると直送パルプを使用した際のパルプスラリー泡がドライシートパルプ使用時よりも多いことが確認出来るが、実施例1および実施例2および実施例3と、実施例4および実施例5および実施例6を比べると、直送パルプとドライシートパルプでのパルプスラリー泡の差がほぼ無くなっており、本発明の効果が直送パルプにおいて、より顕著に発揮されていることが確認出来る。
【0049】
【表3】
【0050】
<結果の評価>
表3に示すように、比較例1と実施例1および実施例2の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、ドライシートパルプ使用時の白水泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。また、実施例2と実施例3の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著に白水泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。
【0051】
また、比較例2と実施例4および実施例5の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、直送パルプ使用時の白水泡の発生個数が激減し、出来た泡が消えるまでの時間も著しく短縮されたことが確認出来る。さらに、実施例5と実施例6の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂をポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の前に添加することにより、さらに顕著に泡の発生個数が減少し、出来た泡が消えるまでの時間も短縮された。特に、比較例1と比較例2を比べると直送パルプを使用した際の白水泡がドライシートパルプ使用時よりも多いことが確認出来るが、実施例1および実施例2および実施例3と、実施例4および実施例5および実施例6を比べると、直送パルプとドライシートパルプでの白水泡の差がほぼ無くなっており、本発明の効果が直送パルプにおいて、より顕著に発揮されていることが確認出来る。
【0052】
<地合評価方法>
3Dシートアナライザー(M/K SYSTEM社製)を用いて、抄紙後の地合評価を行った。測定条件は以下の通りである。結果を表3に示す。
測定モード :フロック測定モード
フィルター :赤フィルター(フロック測定モード用)
レンジ :3
該機により測定されるM/K INDEXは地合評価指数であり、数値が大きい方が地合として良好であることを示す。
【0053】
<浸み込み評価法>
ベンジルアルコール:ジエチレングリコール:ローズベンガル=100:100:1の液を作成し、20℃に調温し評価溶液とした。評価片は表裏にポリエチレンラミネート処理を施し、23℃65%RHの環境下にて8時間調湿したのち、カッターにて5×5cmにカットしサンプルとした。カットしたサンプルを評価溶液に3分間浸漬し、取り出した後即座に水洗いし、ただちに水を拭き取り、必要以上に評価溶液がサンプルに浸透することを防いだ。赤染料が確認出来る、サンプルのカッター切断辺からの距離を、目視にてサンプル間の比較を行った。結果は数値化が困難なため、大きく5段階に分けて優劣で判定した。サイズ性が高いものは評価溶液が内部に浸透しないため、浸透度合いの低いものが優れたサイズ性を発揮していることになる。
【0054】
<写像性評価方法>
抄紙した紙をスーパーカレンダー処理にて密度1.00g/cm2にした後、表裏にポリエチレンラミネート処理を施しサンプルとする。測定は、写像性測定器ICM−1DP(スガ試験器株式会社)を使用した。数値が大きい方が、写像性として良好である。
【0055】
原紙試料について、地合、浸み込み、泡抜け、写像性について評価した。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
<結果の評価>
表4に示すように、比較例1と実施例1、および比較例2と実施例2の比較において、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の添加位置をカチオン化澱粉の後から前に移すことで、ドライシート・直送のどちらのパルプについても、抄紙後の紙の地合、泡抜け、写像性が明確に良化した。また、実施例1と実施例2、および実施例4と実施例5の比較において、アルキルケテンダイマーをアニオン性からカチオン性に変えることで、ドライシート・直送のどちらのパルプについても、浸み込みが良化した。実施例2と実施例3、実施例5と実施例6の比較において、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加によって紙物性に悪影響を与えていないことがわかる。
【0058】
<蛍光強度測定方法>
日本電色工業株式会社製PF−10を用いて、蛍光強度の測定を行った。光源にUVカットフィルターを使用したときと使用していないときの白色度の差異を蛍光強度として表した。測定条件を下記に示す。
光源 :C/2光源
UVカットフィルター波長 :420nm
蛍光強度算出式 :白色度(フィルターなし)−白色度(フィルターあり))
【0059】
<蛍光欠点測定方法>
蛍光欠点はサンプルをブラックライト下で観察し、蛍光を示すスポット状の欠点の数を1m2あたりの数で表示する。蛍光欠点が少ない方が優良なサンプルとなる。
【0060】
原紙試料について、蛍光強度、蛍光欠点の評価を行った。結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
<結果の評価>
表5に示すように、実施例2と実施例3の比較において、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂を蛍光増白剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の間にて添加することにより、蛍光強度が大幅に増大した。このことは、同一量の蛍光増白剤であってもより効果的にその機能を発現出来るようになったことを示している。また、実施例5と実施例6の比較により、直送パルプを使用した場合でもアニオン性ポリアクリルアミド樹脂を蛍光増白剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の間にて添加することによる蛍光増白剤の効果的な機能発現が確認出来た。実施例2、実施例3、実施例5、実施例6の比較から、ドライシートパルプ使用時においても直送パルプ使用時においても、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂を蛍光増白剤とポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の間にて添加することによる蛍光増白剤の効果的な機能発現能力はほとんど同等に効果が出ることが確認出来た。
【0063】
比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の比較により、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段に蛍光増白剤を添加した時、顕著に蛍光欠点が減ることが確認された。また、比較例2、実施例4、実施例5、実施例6の比較により、ドライシートパルプ使用のみならず直送パルプ使用時においてもアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段に蛍光増白剤を添加することによる蛍光欠点の著しい減少が確認出来た。
【0064】
【発明の効果】
本発明は、パルプスラリーに少なくともアニオン性ポリアクリルアミド樹脂およびカチオン化澱粉およびポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を添加し、かつこの3種の成分をパルプスラリーに対してアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉の順で添加して製造することによって、抄紙系内での発泡及び不均一な分散、凝集を防ぎ、操業性良く写真印画紙用紙を製造出来る。更に、系内の発泡を抑えることにより泡が紙の地合に悪影響を及ぼすことを防ぎ、かつパルプの凝集を抑えることで地合を良化せしめ、耐浸み込み性良好な写真印画紙用紙を提供出来る。また、パルプとして直送パルプを使用した際に、上記の効果をより顕著に発揮出来る。さらに、パルプスラリーに蛍光増白剤をアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段にて添加して製造することにより、蛍光増白剤による増白効果をより機能的に発現し、蛍光欠点故障を劇的に少なくすることが出来る。
Claims (4)
- パルプスラリーにアニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン化澱粉をこの順序で添加して製造することを特徴とする写真印画紙用紙の製造方法。
- パルプスラリーにカチオン性アルキルケテンダイマーを添加することを特徴とする請求項1記載の写真印画紙用紙の製造方法。
- パルプスラリーに蛍光増白剤をアニオン性ポリアクリルアミド樹脂の前段にて添加して製造することを特徴とする請求項1または2記載の写真印画紙用紙の製造方法。
- パルプスラリーに用いるパルプが直送パルプであることを特徴とする請求項1、2または3記載の写真印画紙用紙の製造方法。
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- 2003-03-13 JP JP2003068826A patent/JP2004277900A/ja active Pending
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