JP4337227B2 - 紙の抄造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は紙の抄造方法に係り、特に、機械パルプや脱墨パルプからなる紙料(パルプスラリー)に多価金属化合物、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを添加して抄造する方法において、歩留りや濾水性を高めて効率的な抄造を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、製紙工程においては、生産性の向上、使用原料や添加薬品の低減、循環する白水の清浄化等の目的のために、抄紙機のワイヤー上での歩留りや濾水性を改善すべく、歩留り向上剤ないし濾水性向上剤が使用されている。例えば、特開昭59−179899号公報には、機械パルプ、脱墨パルプを含む紙料に、多価金属化合物としての水和硫酸アルミニウムと、カチオン性ポリマーとしてのジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下「DADMAC」と略称する。)重合体或いはDADMACとアクリルアミド(以下「AAM」と略称する。)との共重合体と、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下「AMPS」と略称する。)1〜20モル%と他のビニル性単量体とからなるアニオン性ポリマーとを添加して抄造する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、抄紙機の高速化や、古紙の使用比率の増加による原料パルプ事情の悪化、抄紙用水の水質の低下などにより、従来の歩留り向上剤や濾水性向上剤では十分に満足し得る向上効果が得られない状況となってきている。特に、機械パルプや脱墨パルプからなる紙料は、アニオントラッシュと称されるアニオン性の不純物(機械パルプではリグニン、脱墨パルプではインク等を主成分とする。)が多いために、特開昭59−179899号公報に記載される方法では歩留りないし濾水性向上効果が十分に得られない。
【0004】
本発明は上記従来の問題点を解決し、機械パルプや脱墨パルプからなる紙料に多価金属化合物、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを添加して抄造する方法において、十分な歩留りないし濾水性向上効果を得て効率的な抄造を行う方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の紙の抄造方法は、パルプの50〜100重量%が機械パルプ及び/又は脱墨パルプである紙料に対して、多価金属化合物、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを添加して抄造する方法であって、該多価金属化合物が、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸チタニルの1種又は2種以上であり、アニオン性ポリマーとして、下記a)及び/又はb)を添加する紙の抄造方法において、該カチオン性ポリマーとして、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド重合体、ポリビニルアミン及びメラミンホルムアルデヒド縮合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアミン系ポリマーを添加することを特徴とする。
a) 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)と他のビニル性単量体とからなるアニオン性ポリマーであって、AMPSの含有量が1〜20モル%のアニオン性ポリマー
【0006】
本発明の紙の抄造方法では、多価金属化合物とカチオン性ポリマーと特定のアニオン性ポリマーとを添加して抄造を行うに当たり、カチオン性ポリマーとして上記特定のアミン系ポリマー、好ましくはポリエチレンイミンを用いることにより、抄紙機のワイヤー上での歩留り、濾水性が改善され、機械パルプ及び/又は脱墨パルプを多量に含む新聞、中質紙、下級紙において白色度向上の目的で添加するホワイトカーボンや製品品質向上の目的で添加するサイズ剤や紙力剤等の定着性が大幅に改善され、高品質の製品を効率的に製造することが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0008】
本発明においては、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ、リファイナメカニカルパルプ等の機械パルプ及び/又は古紙等を脱インキした脱墨パルプを50〜100重量%含むパルプに、各種の填料を添加して常法に従って固形分0.3〜2.0重量%、pH4.5〜8に調整した紙料に対して、多価金属化合物、カチオン性ポリマーとしての特定のアミン系ポリマー及び特定のアニオン性ポリマーを添加して常法に従って抄造する。
【0009】
多価金属化合物としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸チタニルの1種又は2種以上を用い、その添加量は紙料中のSSに対して4重量%以上であることが好ましい。また、多価金属化合物添加後の紙料のpHは4.0〜7であることが好ましい。
【0010】
また、カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド重合体、ポリビニルアミン、メラミンホルムアルデヒド縮合物の1種又は2種以上のアミン系ポリマーを用いるが、本発明では、これらのうち、特にポリエチレンイミンを用いるのが、濾水性、歩留り向上効果の面で好ましい。
【0011】
このようなアミン系ポリマーの添加量は、紙料中の濃度で0.01重量%以上、特に0.025重量%以上とするのが好ましい。アミン系ポリマーは0.1重量%を超えて添加しても添加量に見合う効果の向上は望めないことから、アミン系ポリマーの添加量は0.025〜0.1重量%特に0.025〜0.05重量%とするのが好ましい。
【0012】
なお、アミン系ポリマーの分子量は10万〜500万程度であることが好ましい。
【0013】
本発明において、アニオン性ポリマーとしては、AMPSとその他のビニル性単量体とからなる共重合体であって、AMPSの含有量が1〜20モル%であるもの、或いは、AMPSとアクリル酸と他のビニル性単量体とからなる共重合体であって、AMPSとアクリル酸との合計の含有量が1〜20モル%であるものを用いる。AMPSとアクリル酸は、一部又は全部が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の金属塩、或いはアンモニウム塩を形成していてもよい。ここで、他の単量体としては、AAMが好ましく、従って、アニオン性ポリマーとしてはAAM/AMPS共重合体であってAMPS含有量が1〜20モル%のもの、或いは、AAM/アクリル酸/AMPS共重合体であって、アクリル酸とAMPSとの合計の含有量が1〜20モル%であるものが好ましい。このようなアニオン性ポリマーの分子量は500万〜1500万程度であることが好ましい。
【0014】
このようなアニオン性ポリマーの添加量は、紙料中の濃度で、0.005重量%以上、特に0.02〜0.05重量%とするのが好ましい。
【0015】
本発明において填料としてはタルク、クレー、ホワイトカーボン等の無機填料又は有機填料、或いは脱墨パルプから持ち込まれる填料を利用することができる。特に、本発明では、原料パルプの不純物成分が多く、得られる抄紙の白色度が若干劣る場合があるため、ホワイトカーボン等の白色の填料をSSに対して1.0〜30.0重量%添加するのが好ましい。
【0016】
本発明においては、上記添加成分の他、更に必要に応じてサイズ剤や紙力剤等の通常の抄紙工程で添加される添加剤を添加することができる。
【0017】
本発明の紙の抄造方法では、機械パルプ、脱墨パルプ以外の原料パルプの種類、抄造される紙の種類、抄紙機の種類等には特に制限はなく、各種のものを適用することができる。
【0018】
例えば、機械パルプ、脱墨パルプ以外の原料パルプとしては、クラフトパルプ等の化学パルプ、セミケミカルパルプなどを併用することができる。
【0019】
また、本発明は、新聞用紙、中・下級印刷紙、微塗工紙、中質コート原紙、白板紙などの各種の紙の製造に適用でき、抄紙機としては、長網抄紙機、円網抄紙機、各種のツインワイヤー抄紙機を採用することができる。
【0020】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0021】
なお、以下の実施例及び比較例において、試験に供したカチオン性ポリマーは次の通りである。
ポリエチレンイミン: 「ポリミンSK」(BASF社製)
ジシアンジアミド重合体: 「クリフロックLC−551」(栗田工業(株)製)
ポリビニルアミン: 分子量300万
メラミンホルムアルデヒド縮合物: 「クリスタックB−100」(栗田工業(株)製)
DADMAC(重合体)
DADMAC/AAM(30/70):DADMAC/AAM共重合体(DADMAC:AAM=30:70(モル比))
DADMAC/AAM(50/50):DADMAC/AAM共重合体(DADMAC:AAM=50:50(モル比))
【0022】
また、以下において、添加量を示す「%」はいずれも「重量%」である。また、各種添加剤の添加量は特記しない限り、紙料に対する添加量である。
【0023】
実施例1〜4、比較例1〜3
砕木パルプ(GP)30%、脱墨パルプ(DIP)60%、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)10%からなる紙料を固形分0.8%に調整した後、填料としてタルクをSSに対して25%添加し、その後、多価金属化合物として液体硫酸バンド4%を添加しpHを4.7に調整した。この紙料の性状は表1に示す通りである。
【0024】
【表1】
Figure 0004337227
【0025】
この紙料に表2に示すカチオン性ポリマー0.05%と、アニオン性ポリマーとしてAAM/AMPS共重合体(AAM:AMPS=90:10(モル比),分子量1500万)0.02%とを添加し、濾水効果及び歩留り効果を下記の方法により測定し、結果を表2に示した。
【0026】
▲1▼ 濾水効果の測定法
紙料180mLを容量300mLのポリビーカーに採り、薬剤を添加し、タービン羽根を備えた攪拌機を用いて、250rpmで20秒間攪拌を行った。次いで、プラスチックワイヤを敷いたヌッチェロートに、内径50mmの金属製の円筒を置き、その中へ凝集した紙料を注ぎ込み、メスシリンダーを用いて10秒後の濾液量を測定した。
【0027】
▲2▼ 歩留り効果の測定法
紙料2Lをダイナミックリテンションテスター(栗田工業(株)製)に採り、所定量の薬剤を添加し、1000rpmで60秒間攪拌を行った。次いでコックを開き、ワイヤを通って流出する濾液の最初の200mLを採取し、そのうちの100mLを計り採ってそのSS濃度を測定し、下記式で歩留り率を算出した。
【0028】
【数1】
Figure 0004337227
【0029】
【表2】
Figure 0004337227
【0030】
表2より明らかなようにカチオン性ポリマーとして本発明に係るアミン系ポリマーを用いた実施例1〜4、特にポリエチレンイミンを用いた実施例1では、DADMACポリマーを用いた比較例1〜3よりも濾液量が増大しており、濾水性が向上している。また、歩留り率も向上している。
【0031】
実施例5〜12、比較例4〜7
サーモメカニカルパルプ(TMP)40%、脱墨パルプ(DIP)50%、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)10%からなる種箱原料に白水を所定量混合してSSを0.869%に調整した後、填料として尿素ホルマリンポリマー粒子(三井東圧化学社製:商品名「ユーパール」)をSSに対して2.5%添加し、その後ホワイトカーボン(徳山曹達社製:商品名「トクシール」)を添加して30秒間攪拌した。その後、多価金属化合物として液体硫酸バンドを4%添加後、硫酸を用いてpH4.7に調整した。この紙料の性状は表3に示す通りである。なお、表3には、用いた種箱原料と白水の性状も併記した。
【0032】
【表3】
Figure 0004337227
【0033】
この紙料に紙力剤としてポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂(日本PMC社製:商品名「エピノックス」)0.5%を添加して30秒攪拌した後、エマルションサイズ剤0.5%を添加して30秒攪拌した。次いで表4に示すカチオン性ポリマーを表4に示す量添加して20秒攪拌し、最後にアニオン性ポリマーとしてAAM/AMPS共重合体(AAM:AMPS=90:10(モル比),分子量1500万)を表4に示す量添加して20秒攪拌した。なお、いずれも攪拌は300rpmで行った。
【0034】
得られた紙料について、実施例1と同様にして濾水効果を測定し、結果を表4に示した。
【0035】
【表4】
Figure 0004337227
【0036】
表4より明らかなように、カチオン性ポリマーとしてアミン系ポリマーを添加することにより、特に、その添加量を0.025%以上とすることにより濾水性の向上効果がみられる。なお、アミン系ポリマーは0.05%を超えて添加しても本系においては添加量に見合った効果は得られない。
【0037】
実施例13〜18、比較例8
実施例5において、ポリエチレンイミンの添加量及びAAM/AMPS共重合体の添加量を表5に示す割合としたこと以外は同様にして紙料を調製し(ただし、比較例8ではポリエチレンイミンとAAM/AMPS共重合体添加せず。)、得られた紙料について実施例1と同様にしてSS濃度と歩留り率を測定し、結果を表5に示した。
【0038】
比較例9〜11
実施例13〜15において、AAM/AMPS共重合体として、AAM:AMPS=70:30(モル比)で分子量1500万のものを添加したこと以外はそれぞれ同様にして紙料を調製し、得られた紙料について実施例1と同様にしてSS濃度と歩留り率を測定し結果を表5に示した。
【0039】
【表5】
Figure 0004337227
【0040】
表5より明らかなように、アニオン性ポリマーとしてAAM:AMPS=90:10(モル比)のAAM/AMPS共重合体を用いた実施例13〜18は、AAM:AMPS=70:30(モル比)のAAM/AMPS共重合体を用いた比較例9〜11よりも歩留り率が向上している。また、このAAM:AMPS=90:10(モル比)のAAM/AMPS共重合体の添加量は0.02%以上とすると良好な歩留り向上効果が得られる。
【0041】
実施例19,20
実施例17において、硫酸バンドの添加量を表6に示す割合としたこと以外は同様にして紙料を調製し(このときの硫酸バンド添加後の紙料のpH及びゼータ電位は表6に示す通りである。)、実施例1と同様にして濾水効果を測定し、結果を表6に示した。また、手抄紙を作製し、その物性及びドロップサイズ度を調べ、結果を表6に示した。なお、表6には実施例17についても同様にして濾水効果を測定すると共に手抄紙を評価した結果を併記した。
【0042】
比較例12
実施例17においてポリエチレンイミンの代りにDADMAC重合体を用いたこと以外は同様にして紙料を調製し、同様に濾水効果を測定すると共に手抄紙を評価し、結果を表6に示した。
【0043】
【表6】
Figure 0004337227
【0044】
表6より明らかなように、カチオン性ポリマーとしてポリエチレンイミンを用いた実施例17,19,20では、カチオン性ポリマーとしてDADMACを用いた比較例12よりも、濾水性、サイズ度がいずれも向上している。また、多価金属化合物の添加量は4%以上とすることが好ましいことがわかる。
【0045】
実施例21〜26、比較例13
新聞紙原料に白水を添加して稀釈し、固形分0.838%に調整した後(このときの紙料のゼータ電位は−6.4mVであった。)、多価金属化合物として液体硫酸バンドを5%添加したところ、pHが5.2となったので、その後硫酸を添加してpH4.9とした。この紙料の性状は表7に示す通りであった。なお、表7には用いた新聞紙原料と白水の性状も併記した。
【0046】
【表7】
Figure 0004337227
【0047】
この紙料にカチオン性ポリマーとしてのポリエチレンイミンとアニオン性ポリマーとしてのAAM/AMPS共重合体(AAM:AMPS=90:10(モル比),分子量1500万)をそれぞれ表8に示す量添加して紙料を調製し(ただし、比較例13ではポリエチレンイミンとAAM/AMPS共重合体添加せず。)、得られた紙料について実施例1と同様にして濾水効果、濾液の濁度及び歩留り効果(歩留り効果については実施例21〜23のみ測定した。)を測定し、結果を表8に示した。
【0048】
【表8】
Figure 0004337227
【0049】
表8より、新聞紙原料についても、本発明によれば、良好な濾水性、歩留り向上効果が得られることがわかる。また、実施例21〜26において、濾液の濁度はいずれも比較例13に比べて低下しており、この結果から、本発明によれば、抄紙系内の汚れやピッチを低減させることができるものと考えられる。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の紙の抄造方法によれば、特にアニオン性の不純物を多量に含むために、歩留り向上剤や濾水性向上剤による歩留り、濾水性向上効果が十分に得られない機械パルプや脱墨パルプを含む紙料による製紙の抄紙工程において、セルロース繊維及び填料などの歩留りを向上させ、また濾水性を向上させることにより抄紙工程、乾燥工程での処理効率を高め、生産性を大幅に向上させることができる。また、循環する白水を清浄に保つことにより、安定した操業性を確保することができる上に、白水回収工程での負荷の軽減、廃水処理工程での負荷の低減を図ることができる。

Claims (2)

  1. パルプの50〜100重量%が機械パルプ及び/又は脱墨パルプである紙料に対して、多価金属化合物、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを添加して抄造する方法であって、
    該多価金属化合物が、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸チタニルの1種又は2種以上であり、
    該カチオン性ポリマーとして、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド重合体、ポリビニルアミン及びメラミンホルムアルデヒド縮合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアミン系ポリマーを添加し、
    該アニオン性ポリマーとして、下記a)及び/又はb)を添加することを特徴とする紙の抄造方法。
    a) 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と他のビニル性単量体とからなるアニオン性ポリマーであって、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の含有量が1〜20モル%のアニオン性ポリマー
    b) 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸と他のビニル性単量体とからなるアニオン性ポリマーであって、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びアクリル酸の合計の含有量が1〜20モル%のアニオン性ポリマー
  2. 請求項1において、アミン系ポリマーがポリエチレンイミンであることを特徴とする紙の抄造方法。
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