JP2014001488A - クラフト蒸解法及びパルプ収率向上剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】大掛かりな設備変更を必要とせず、パルプ収率を顕著に向上させることが可能なクラフト蒸解法及びそれに用いるパルプ収率向上剤を提供する。
【解決手段】水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムを含む黒液中でパルプ原料の蒸解を行うクラフト蒸解法において、前記黒液中にカチオン性高分子化合物を添加する。カチオン性高分子化合物には架橋型カチオンポリマー、直鎖型カチオンポリマー及びカチオン化でんぷんの少なくとも1種が含まれていることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、黒液中でパルプ原料の蒸解を行う工程において、パルプ収率を顕著に向上させることができるクラフト蒸解法及びそれに用いる添加剤に関する。本発明の実施によってパルプ製造工業におけるパルプ原料の歩留まりが大幅に向上し、森林資源の省資源、CO削減に大きく貢献することができる。
パルプは森林資源をその原料としており、木材チップ等のパルプ原料からいかに収率よくパルプを得るかということは、森林資源の節約、省エネ、CO削減にとって極めて重要な技術である。
従来、木材チップ等のリグノセルロース物質をパルプ原料とする製紙方法として、1)化学的な解繊を行う化学パルプ法と、2)リファイナー等の機械的処理によって解繊を行う機械パルプ法がある。このうち、化学パルプ法は、パルプの白色度や物性を調整し易いという利点を有している。化学パルプの製造方法の中でも、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムで蒸解を行うクラフト蒸解法は、パルプ強度が優れている、使用する木材樹種の制限が少ない、蒸解薬品回収技術が確立している等の理由から製造方法の主流となっている。クラフト蒸解法では、セルロース繊維(一般にパルプと呼ばれる)と、繊維を互いに結合する有機物であるリグニンの大半を含有する蒸解廃液(一般に黒液と呼ばれる)とが得られる。
パルプの収率を改善する方法としては、パルプ収率向上剤を添加してパルプを構成するセルロースやヘミセルロースの溶解を防止する方法が挙げられる。例えば、1)蒸解工程でキノン化合物を添加し、脱リグニンを促進し、セルロースの末端基を酸化して安定化させ、これによりセルロースの溶出を防ぐという方法(特許文献1,2)、2)蒸解薬液を酸化して硫化ナトリウムをポリサルファイド硫黄に変換したり、蒸解薬液に直接硫黄を添加することにより、へミセルロースの末端基を酸化保護して高アルカリ性の蒸解薬液へのヘミセルロース溶出を抑制し、パルプ収率を向上させる方法(非特許文献1)、更に上記1)と2)を組み合わせた方法(特許文献3)等がある。
しかし、いずれもパルプ収率向上効果と比較して薬品添加コストが大きく、さほど普及していないのが現状である。
パルプの収率を改善する方法として、蒸解のプロセス自体を改良することも提案されている(非特許文献2,3)。しかし、これには大掛かりな設備変更を伴うため、膨大な設備投資費用が必要となってしまう。
特開昭52−37803号公報 特開昭53−45404号公報 特開2002−115190号公報
山口 章 「工場チップのポリサルファイド蒸解」 紙パ技協誌第33巻 491−499(1979) Parsad,Brijender;et al. 「Mill closure with high-kappa pulping andextended oxygen delignification」Tappi. Journal, Vol.79,No.9 144-152 (1996) 具延、「COMPACT COOKING TM法及びKOBUDOMARI法の蒸解パルプの収率評価法」、2003年度紙パルプ技術協会 年次大会 講演予稿集、49―59(2003)
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、大掛かりな設備変更を必要とせず、パルプ収率を顕著に向上させることが可能なクラフト蒸解法及びそれに用いるパルプ収率向上剤を提供することを解決すべき課題としている。
本発明者は、上記従来のパルプ収率向上剤のように、蒸解工程においてヘミセルロース自体の黒液への溶解を防止するのではなく、溶解しやすいヘミセルロースをパルプに吸着させることによって、パルプ収率を向上させることができないかと考え、鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のクラフト蒸解法は、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムを含む黒液中でパルプ原料の蒸解を行うクラフト蒸解法において、前記黒液中にカチオン性高分子化合物を添加することを特徴とする。
蒸解工程において、パルプ原料である木材チップに含まれるリグニン及びへミセルロースの大部分は、黒液に溶出する。黒液中に電離溶解したリグニンはプラスに帯電しているのに対して、へミセルロースはマイナスに帯電しており、更にパルプの主成分であるセルロースは、若干、マイナスに帯電している。ここで黒液にカチオン性高分子化合物を添加すると、クーロン力によってヘミセルロース及びセルロースにカチオン性高分子化合物が吸着する。そして、へミセルロース及びセルロースに吸着したカチオン性高分子化合物どうしが絡みあい、凝集する。その結果、ヘミセルロースはセルロースと一体となり、主にセルロースやヘミセルロースで構成されるパルプの収率が向上するのである。
すなわち、本発明は、従来のパルプ収率向上剤のように、へミセルロースやセルロースの蒸解薬液への溶出を抑制するのではなく、一旦溶出したヘミセルロースをセルロースに吸着させて回収するという、従来技術とは全く異なる技術的思想に基づいているのである。
したがって、本発明のクラフト蒸解法によれば、大掛かりな設備変更を必要とせず、パルプ収率を顕著に向上させることができる。
発明者らの試験結果によれば、カチオン性高分子化合物として架橋型カチオンポリマー、直鎖型カチオンポリマー及びカチオン化でんぷんの少なくとも1種を用いることにより、パルプ収率を確実に高くすることができる。
架橋型カチオンポリマーとしては、ジメチルアミン、アンモニア、及びエピクロルヒドリンをポリマー構成単位として含有することが好ましく、また、ポリエチレンイミンも好ましい。
また、直鎖型カチオンポリマーとしては、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニムクロライド及びアクリルアミドをポリマー構成単位として含有することが好ましい。
さらに、カチオン化でんぷんとしては、3級アミノ基及び/又は4級アンモニウム基を含有することが好ましい。
本発明のクラフト蒸解法によれば、黒液に特定のカチオン性高分子化合物を添加するだけで、大掛かりな設備改善をすることなく、パルプ収率を大幅に向上させることができる。これにより、製造コストの低廉化が図られるとともに、エネルギー原単位が改善されることによって省エネルギー化も図られ、さらには、森林資源の節約にも寄与することとなる。
クラフト蒸解法に用いられる一般的な連続蒸解装置の模式図である。
<原 料>
本発明のクラフト蒸解法では、リグノセルロース系バイオマスが原料となる。具体的には、広葉樹及び針葉樹等の木材や、ケナフ、バガス及び竹等の非木材が挙げられる。これら、いずれの原料を用いても本発明の効果が認められるが、特に広葉樹を原料とした場合に、本発明の効果が大きい。
<パルプ収率向上剤>
こうした原料は黒液によって処理される。本発明のパルプ収率向上剤は、この黒液中に添加されるが、添加場所や黒液の性状について特に制限は無く、蒸解工程や洗浄工程等の黒液に適用できる。中でも、蒸解釜、その付帯設備、及びブロータンク等で構成される蒸解工程では、黒液に溶解しているヘミセルロースの濃度が高いので効果的である。
本発明のパルプ収率向上剤では、カチオン性高分子化合物をその有効成分として用いることができる。カチオン性高分子化合物とは、アミノ基等のカチオン性の官能基を有する高分子をいい、例えば、架橋型カチオンポリマー、直鎖型カチオンポリマー及びカチオン化でんぷん等が挙げられる。
ここで、架橋型カチオンポリマーとは、一種類以上のモノマーの重合によって得られる、分子内にカチオン性官能基を有する高分子化合物であって、
架橋剤により、その高分子化合物同士を連結させ更に巨大化させたポリマー、あるいは、モノマー自身が架橋剤の働きをして、網目構造を有する高分子化合物になったものをいう。具体的には、例えばインクジェット記録紙用添加剤として知られているジメチルアミン又はジエチルアミン、アンモニア、及びエピクロルヒドリンをモノマー単位として含有するポリマー(特開平10−147057号公報参照)や、ポリエチレンイミン、変性ポリエチレンイミン等が挙げられる。変性ポリエチレンイミンとは、ポリエチレンイミン中の1級若しくは2級アミノ基の一部若しくは全部と他の化合物との反応、またはエチレンイミンと他のポリマーとの反応により得られるものをいう。ここで、ポリエチレンイミン中の1級若しくは2級アミノ基の一部若しくは全部と反応し得る他の化合物としては、特に制限されるものではなく、例えば、アルデヒド化合物、ケトン化合物、アルキルハライド化合物、イソシアネート化合物、チオイソシアネート化合物、活性オレフィン化合物、エポキシ化合物、シアナマイド化合物、グアニジン化合物、尿素、チオ尿素、カルボキシ化合物、酸無水物またはアシルハライド化合物などが挙げられる。また、エチレンイミンと反応し得る他のポリマーとしては、特に制限されるものではなく、例えば、カルボキシ含有アクリル樹脂、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
また、直鎖型カチオンポリマーとは、一種類以上のモノマーの反応によって得られる、分子内にカチオン性官能基を有する高分子化合物であって、鎖状に広がった構造を有するものをいう。、具体的には、例えば汚泥脱水剤に用いられているアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドや、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニムクロライドや、アクリルアミドをモノマー単位として含有するポリマー等が挙げられる(特開昭62−262799号公報参照)。
また、カチオン化でんぷんとは、でんぷんとカチオン化剤を反応させて得られるカチオン性官能基を有するでんぷんをいう。具体的には、例えばコーンスターチや、タピオカデンプンや、ポテトスターチなどの原料でんぷんをジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩や3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどでカチオン化した、3級アミノ基、または4級アンモニウム基を含有するカチオン化でんぷん等が挙げられ、例えば日本食品化工株式会社製のネオタック#30T(商品名)等を用いることができる。
本発明のパルプ収率向上剤は、取り扱い性を考慮し、水あるいはプロセスから採取した黒液などにカチオン性高分子化合物を溶解させた原液とすることができる。更に、本発明の効果を減じない範囲で消泡剤等を配合することもできる。
架橋型カチオンポリマーや直鎖型カチオンポリマーをパルプ収率向上剤として利用する場合、調製方法には特に制限は無く、液状のポリマーをそのまま黒液に添加しても良く、また、水などの溶媒に溶解させた後に黒液に添加しても良い。該ポリマーと水などの溶媒の配合比率に特に制限は無く、取り扱い性や添加量を考慮して適宜選択すればよい。また、それらの混合順序についても特に制限は無く、水などの溶媒に該ポリマーを加えても良く、また、その逆でも良い。
カチオン化でんぷんをパルプ収率向上剤として利用する場合の調製方法は、常温の水に、全量に対して数%程度のカチオン化でんぷんを分散させた後、80℃程度に加温してカチオン化でんぷんを溶解糊化させることが好ましい。
<クラフト蒸解法>
次に、本発明のパルプ収率向上剤を用いたクラフト蒸解法について説明する。
図1はクラフト蒸解法に用いられる連続蒸解装置1である。この装置は円筒縦長の蒸解釜2と、該蒸解釜2の塔頂からパルプ原料と白液との混合物を送るための原料供給装置3とを備えている。蒸解釜2は塔頂から順に浸透ゾーンI、上部蒸解ゾーンC1,下部蒸解ゾーンC2,洗浄ゾーンWに分かれている。そして、上部蒸解ゾーンC1と下部蒸解ゾーンC2との間には、パルプ原料及び黒液の流路を取り囲むように蒸解スクリーン5が設けられている。また、下部蒸解ゾーンC2と洗浄ゾーンWとの間には、同様に、抽出スクリーン6が設けられている。さらに、洗浄ゾーンWの最下端には、同様に洗浄スクリーン7が設けられている。
蒸解スクリーン5によってろ過された黒液は、上部蒸解循環ライン8によって上部蒸解ゾーンC1の下部に供給されるようになっている。また、抽出スクリーン6によってろ過された黒液は、下部蒸解循環ライン9によって下部蒸解ゾーンC2の下部に供給されるようになっている。さらに、洗浄スクリーン7によってろ過された洗浄黒液は、洗浄循環ライン10によって蒸解釜2の塔底に供給されるようになっている。
以上のように構成された連続蒸解装置1では、パルプ原料と白液との混合物が原料供給装置3によって蒸解釜2の塔頂部に供給される。そして、図示しない蒸気供給装置から蒸気が塔頂部に供給されて、所定の温度に昇温される。さらに、浸透ゾーンIでは白液がパルプ原料に浸透し、蒸解反応が開始される。また、上部蒸解ゾーンC1及び下部蒸解ゾーンC2において、蒸解反応によりパルプ原料からリグニン及びへミセルロースが溶出し、白液はリグニンやヘミセルロース等を溶解した黒液となる。このとき、蒸解ゾーンC1の下端に設けられた蒸解スクリーン5でろ過された黒液は、上部循環ライン8によって上部蒸解ゾーンC1の下部に供給される。また、蒸解ゾーンC2の下端に設けられた抽出スクリーン6でろ過された黒液も、下部蒸解循環ライン9によって下部蒸解ゾーンC2の下部に供給される。黒液に溶解せずに残留するのがパルプであり、主としてセルロースで構成される。こうして得られたパルプは、洗浄ゾーンWにて、洗浄黒液によって向流洗浄された後、ブローされて図示しないブロータンクに送られる。洗浄スクリーン7によってろ過された洗浄黒液は、洗浄循環ライン10によって蒸解釜2の塔底に供給される。
本発明のパルプ収率向上剤は、黒液に添加することによってパルプ収率が高められる。黒液に添加されるならば特に添加箇所は制限されない。例えば、良好な撹拌が期待できる蒸解釜2の循環ライン(頂部循環ライン4、上部蒸解循環ライン8、下部蒸解循環ライン9)に添加することが好ましい。これにより黒液中に溶出したヘミセルロースを効率よくパルプに吸着させることができる。
本発明のパルプ収率向上剤の黒液への添加は、一般的には薬注ポンプを使用し、連続、あるいは間欠で添加する。また、添加量や薬注ポンプの能力により水などの溶媒で希釈して添加してもよい。
黒液に対するパルプ収率向上剤の添加量は、対象とする黒液の性状によって異なるため、事前に選定試験を実施することが望ましいが、一般的には、蒸解工程の黒液に対する添加量として、架橋型カチオンポリマーの場合は乾燥重量で5~300mg/kg、好ましくは7~200mg/kg、さらに好ましくは10~150mg/kg、直鎖型カチオンポリマーの場合は50~1000mg/kg、好ましくは100~700mg/kg、さらに好ましくは150~500mg/kg、カチオン化でんぷんの場合は10~700mg/kg、好ましくは50~500mg/kg、さらに好ましくは90~350mg/kg、である。パルプ収率向上剤の添加量が増すとパルプ収率は向上するが、高い添加量領域では添加量の増加に見合うだけの収率向上が得られないので、経済的なメリットが得られる添加量範囲内で添加することが好ましい。
本発明のパルプ製造方法によれば、本発明のパルプ収率向上剤を黒液に添加することにより、黒液中のヘミセルロースが効率的に回収されパルプ中のセルロースに吸着するため、非常にパルプ収率の高いパルプを製造することができる。
以下、本発明を具体化した実施例について詳細に説明する。
<パルプ収率向上剤>
パルプ収率向上剤として、以下に示す架橋型カチオンポリマー(実施例1〜3)、直鎖型カチオンポリマー(実施例4)及びカチオン化でんぷん(実施例5)を調製した。詳細を以下に示す。
[架橋型カチオンポリマー]
(実施例1)
1L三つ口フラスコに50%ジメチルアミン(DMA)水溶液を178.5g(1.98mol)と、25%アンモニア(NH3)水溶液を1.4g(0.02mol)を仕込み、それに93.1gのイオン交換水を加えて混合し均一にした。続いて、エピクロロヒドリン(ECH)185g(2.0mol)を、反応溶液を50℃以下に保ちながら添加した。ECHの添加後、60℃で4時間熟成した。その後、硫酸でpH4.2に調整することにより、反応を停止し、実施例1のパルプ収率向上剤を得た。このパルプ収率向上剤は、架橋型カチオンポリマーからなり、液体クロマトグラフィーより求めた重量平均分子量は、3.5万であった。
(実施例2)
1L三つ口フラスコに50%ジメチルアミン(DMA)水溶液を178.5g(1.98mol)と、25%アンモニア(NH3)水溶液を1.4g(0.02mol)を仕込み、それに93.1gのイオン交換水を加えて混合し均一にした。続いて、エピクロロヒドリン(ECH)185g(2.0mol)を、反応溶液を50℃以下に保ちながら添加した。ECHの添加後、60℃で12時間熟成した。続いて、ECH1.9g(0.02mol)と25%NH3水溶液1.4g(0.02mol)を加え、80℃で4時間架橋反応を行った。その後、硫酸でpH4.2に調整することにより、反応を停止し、実施例2のパルプ収率向上剤を得た。このパルプ収率向上剤は、架橋型カチオンポリマーからなり、液体クロマトグラフィーより求めた重量平均分子量は、16万であった。
(実施例3)
1L三つ口フラスコに50%ジメチルアミン(DMA)水溶液を178.5g(1.98mol)と、25%アンモニア(NH3)水溶液を1.4g(0.02mol)を仕込み、それに93.1gのイオン交換水を加えて混合し均一にした。続いて、エピクロロヒドリン(ECH)185g(2.0mol)を、反応溶液を50℃以下に保ちながら添加した。ECHの添加後、60℃で12時間熟成した。続いて、ECH1.9g(0.02mol)と25%NH3水溶液1.4g(0.02mol)を加え、80℃で8時間架橋反応を行った。その後、硫酸でpH4.2に調整することにより、反応を停止し、実施例3のパルプ収率向上剤を得た。このパルプ収率向上剤は架橋型カチオンポリマーからなり、液体クロマトグラフィーより求めた重量平均分子量は、36万であった。
[直鎖型カチオンポリマー]
(実施例4)
1Lビーカーにアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドの80%水溶液を53.6g(20モル%)、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドの80%水溶液を74.8g(20モル%)、及びアクリルアミド47.3g(60モル%)を仕込み、それに360.1gのイオン交換水を加えて混合し均一にした。40℃に加温し、窒素ガスにより脱酸素を行った後、過硫酸アンモニウムの1%水溶液を1.5cc、亜硫酸水素ナトリウムの1%水溶液を1.5cc加えて、重合を開始させ、16時間重合を継続し、実施例4のパルプ収率向上剤を得た。このパルプ収率向上剤は直鎖型カチオンポリマーからなり、液体クロマトグラフィーより求めた重量平均分子量は450万であった。
[カチオン化でんぷん]
(実施例5)
実施例5のパルプ収率向上剤は、タピオカデンプンのカチオン変性物(4級アンモニウム)(商品名:ネオタック#30T、日本食品化工株式会社製)である。
(実施例6)
実施例6では、ポリエチレンイミンをパルプ収率向上剤とした。ポリエチレンイミンとして、BASF(ビーエーエスエフ)社製のポリミンP(商品名)を用いた。
−評 価−
以上のように調製した実施例1〜6のパルプ収率向上剤について、以下に示す2通りのパルプ収率試験を行った。
(パルプ収率試験1)
実装置の連続蒸解釜から抽出された黒液をろ紙でろ過し、懸濁物を除去した。一方、同じ実装置の連続蒸解釜からブローされた未晒パルプを充分に洗浄した。ろ過した黒液692gと洗浄した未晒パルプ23g(絶乾重量)を2Lのステンレスバットに入れ、攪拌しながら、70℃に温度制御した。試験温度70℃という条件は、蒸解工程のブローライン〜ブロータンク周辺の温度環境を模したものである。未晒パルプ投入の30分後に、実施例1〜6のパルプ収率向上剤を所定量添加し、60分経過後、黒液−パルプ混合液をろ紙でろ過し、パルプと黒液を分離した。得られたパルプは清水で充分に洗浄し、次式によってパルプの収率向上率(%)を算出した。
X:試験前の絶乾パルプ重量(g)
Y:試験後の絶乾パルプ重量(g)
パルプ収率向上率(%)=(Y−X)/X×100
尚、絶乾パルプ重量の測定は、JIS P8203記載の「絶乾試料の質量」の測定方法に準じて行った。
その結果、表1に示すように、実施例1〜6のパルプ収率向上剤を添加した場合、無添加と比べてパルプ収率が大幅に増大することが分かった。パルプ収率試験1における試験温度70℃という条件は、蒸解工程のブローライン〜ブロータンク周辺の温度環境を模したものであることから、ブローライン〜ブロータンク周辺に本発明のパルプ収率向上剤を添加した場合、パルプ収率を高められることが立証された。
また、いずれのパルプ収率向上剤においても、添加量を増加させるとパルプ収率が増加することが分かった。実施例1〜3、及び実施例6の架橋型カチオンポリマーの添加量は、黒液1kgに対して乾燥重量で10mgから150mgが効果的であることが分かった。また、実施例4の直鎖型カチオンポリマーでは150mgから500mgが効果的であることが分かった。また、実施例5のカチオン化でんぷんでは90mgから350mgが効果的であることが分かった。
Figure 2014001488
(パルプ収率試験2)
パルプ収率試験2は、パルプ収率試験1において容器として用いたステンレスバットをオートクレーブに替え、反応温度は150℃と高くした。試験温度150℃という条件は、蒸解工程の蒸解釜の循環ライン周辺の温度環境を模したものである。その他についてはパルプ収率向上試験方法1と同様であり、説明を省略する。試験結果を表2に示す。
Figure 2014001488
表2から、パルプ収率試験2における試験温度150℃という条件においても、実施例1〜6のパルプ収率向上剤を添加した場合、無添加と比べてパルプ収率が顕著に向上することが分かった。パルプ収率試験2における試験温度150℃という条件は、蒸解工程の蒸解釜の循環ライン周辺の温度環境を模したものであることから、蒸解釜の循環ライン周辺に本発明のパルプ収率向上剤を添加した場合においても、パルプ収率を高められることが立証された。
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
1…連続蒸解装置、2…蒸解釜(I…浸透ゾーン、C1…上部蒸解ゾーン、C2…下部蒸解ゾーン、W…洗浄ゾーン)、3…原料供給装置、4…頂部循環ライン、5…蒸解スクリーン、6…抽出スクリーン、7…洗浄スクリーン、8…上部蒸解循環ライン、9…下部蒸解循環ライン、10…洗浄循環ライン

Claims (12)

  1. 水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムを含む黒液中でパルプ原料の蒸解を行うクラフト蒸解法において、
    前記黒液中にカチオン性高分子化合物を添加することを特徴とするクラフト蒸解法。
  2. 前記カチオン性高分子化合物には架橋型カチオンポリマー、直鎖型カチオンポリマー及びカチオン化でんぷんの少なくとも1種が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のクラフト蒸解法。
  3. 前記架橋型カチオンポリマーがジメチルアミン、アンモニア、及びエピクロルヒドリンをポリマー構成単位として含有することを特徴とする請求項2記載のクラフト蒸解法。
  4. 前記架橋型カチオンポリマーがポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項2記載のクラフト蒸解法。
  5. 前記直鎖型カチオンポリマーがアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニムクロライド及びアクリルアミドをポリマー構成単位として含有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のクラフト蒸解法。
  6. 前記カチオン化でんぷんが3級アミノ基及び/又は4級アンモニウム基を含有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のクラフト蒸解法。
  7. カチオン性高分子化合物を含有することを特徴とするパルプ収率向上剤。
  8. 前記カチオン性高分子化合物には架橋型カチオンポリマー、直鎖型カチオンポリマー及びカチオン化でんぷんの群から選ばれた1種又は2種以上が含まれることを特徴とする請求項7に記載のパルプ収率向上剤。
  9. 前記架橋型カチオンポリマーがジメチルアミン、アンモニア、及びエピクロルヒドリンをポリマー構成単位として含有することを特徴とする請求項8記載のパルプ収率向上剤。
  10. 前記架橋型カチオンポリマーがポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項8記載のパルプ収率向上剤。
  11. 前記直鎖型カチオンポリマーがアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニムクロライド、及びアクリルアミドをポリマー構成単位として含有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載のパルプ収率向上剤。
  12. 前記カチオン化でんぷんが3級アミノ基及び/又は4級アンモニウム基を含有することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載のパルプ収率向上剤。
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