JP2020090751A - リグノセルロース材料用の蒸解促進剤及びパルプの製造方法 - Google Patents

リグノセルロース材料用の蒸解促進剤及びパルプの製造方法 Download PDF

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Takashi Tanaka
多加志 田中
孝次 高井
Koji Takai
孝次 高井
治彦 豊原
Haruhiko Toyohara
治彦 豊原
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Abstract

【課題】アントラキノンなどキノン−ヒドロキノン系化合物を使用せず、木材など植物のリグノセルロース材料の蒸解を促進して高い効率でリグニン成分や天然樹脂成分などを分離できる蒸解促進剤を提供する。【解決手段】本発明の蒸解促進剤は、リグノセルロース材料のアルカリ蒸解、クラフト蒸解或いはポリサルファイド蒸解に用いられる蒸解促進剤であって、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、及び前記4種類の化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有している。【選択図】なし

Description

本発明は、リグノセルロース材料用の蒸解促進剤及びそれを用いたパルプの製造方法に関するものである。
木材など植物のリグノセルロース材料からパルプを製造するには、一般的に、アルカリや亜硫酸塩など使って蒸解処理を行う。この蒸解処理によりリグニン成分や天然樹脂成分などを溶解、分散、分解などした後、ろ過洗浄などしてこれらを除去し、パルプを製造する。
しかしながら、木材などの天然資源は環境問題などから乱伐が規制され、また木材の価格も高くなっているのが現状である。そのため、原木原単位辺りのパルプの生産量を増加し、品質の高いパルプ製品を生産することが重要になってきている。
これらの課題を解決する方法として、蒸解の効率を高めるために蒸解促進剤を使用する技術が知られている。
例えば、特許文献1では、キノン−ヒドロキノン系化合物及びその前駆体が存在するアルカリ蒸解液中でリグノセルロース材料を蒸解する方法において、所定蒸解温度までの昇温時から所定蒸解温度前半までの間で、この蒸解系に還元剤を添加することを特徴とするリグノセルロース材料の蒸解法が提示されている。
特許文献2では、有機還元性物質をリグノセルロース物質の蒸解助剤として用いることを特徴とするパルプ製造方法が提示されており、蒸解助剤として、チオ尿素またはチオ尿素誘導体、還元性糖類などが記載されている。
また、特許文献3では、アミノカルボン酸やオキシカルボン酸等の有機酸やその塩を蒸解助剤として用いる技術が提示されており、特にアルカリ蒸解や亜硫酸塩蒸解に用いることが記載されている。
特開平7−145581号公報 特開2004−143629号公報 特開2009−185413号公報
しかしながら、特許文献1において使用することが前提となっているキノン−ヒドロキノン化合物、特にアントラキノンは、発がん性の問題があって人体への影響を排除できないため、使用しないことが望まれている。
具体的には、欧州食品安全機関(EFSA)は、農薬有効成分としてアントラキノンの発がん作用は排除できず、一方で、ほ乳類に対するハザードである可能性も明白に特定することはできないとしている。国際がん研究機関(IARC)は、アントラキノンをグループ2B(ヒトに対して発がん性の可能性がある)クラスに分類している。そのため、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)においては、食品包装材への使用を推奨する化学物
質リストから除外することとなった。
食品以外の用途にはアントラキノンは使用できるとしても、製紙工場にて蒸解工程を含むパルプ化工程後、さらにそれぞれの抄紙工程に分岐しており、食品にかかわる包装材を製造する際にのみアントラキノンを使用しないというような区分けをするのは操業上困難であり、アントラキノンを用いない蒸解助剤が望まれている。
特許文献2、3において開示された蒸解促進剤は、それらを単独で、すなわちキノン−ヒドロキノン系化合物と併用しなかった場合には蒸解促進効果が不十分であって、いまだ満足する性能のものは得られていない。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、健康有害性の懸念を排除できないアントラキノンなどキノン−ヒドロキノン系化合物を使用せず、木材など植物のリグノセルロース材料の蒸解を促進して高い効率でリグニン成分や天然樹脂成分などを分離できる蒸解促進剤を提供することを目的とする。すなわち、より安全な蒸解促進剤とその蒸解促進剤を用いたパルプの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の蒸解方法においては、アスコルビン酸、その立体異性体であるエリソルビン酸、これらの誘導体又はこれらの塩が、アントラキノン等のキノン−ヒドロキノン系化合物を含まない蒸解液において優れた蒸解促進の効果を発現することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち本発明は、リグノセルロース材料のアルカリ蒸解、クラフト蒸解或いはポリサルファイド蒸解に用いられる蒸解促進剤であって、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、及び前記4種類の化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有している蒸解促進剤に関する。アスコルビン酸誘導体とは、アルカリ蒸解、クラフト蒸解或いはポリサルファイド蒸解による蒸解工程において分解或いは還元によってアスコルビン酸を生成する物質のことである。エリソルビン酸誘導体とは、アルカリ蒸解、クラフト蒸解或いはポリサルファイド蒸解による蒸解工程において分解或いは還元によってエリソルビン酸を生成する物質のことである。
また、本発明は、アルカリ蒸解、クラフト蒸解或いはポリサルファイド蒸解による蒸解工程と、洗浄工程とを含み、蒸解工程では、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、及び前記4種類の化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するリグノセルロース材料用の蒸解促進剤の存在下でリグノセルロース材料を蒸解する、パルプの製造方法に関する。
さらに、本発明においては、前記蒸解工程では、キノン化合物が未添加であることが好ましい。ここでキノン化合物とは、アントラキノン、ナフトキノン、これらの芳香環に炭素数1〜4のアルキル基、アミノ基又はニトロ基を有する化合物及びこれらの芳香環の一部を水添した化合物である。また、キノン化合物が未添加であるということは、蒸解工程に添加することによりキノン化合物となる前駆体も未添加である、ということである。
本発明によれば、人体への悪影響を排除することができない成分を用いることなく、木材など植物のリグノセルロース材料の蒸解を促進して効率よくパルプを生産することができる蒸解促進剤及びそれを用いたパルプの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、木材など植物のリグノセルロースの使用量削減と蒸解にかかる
エネルギーを低減することができ、環境問題など寄与することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態)
本実施形態のリグノセルロース材料用の蒸解促進剤は、アルカリ蒸解、クラフト蒸解又はポリサルファイド蒸解に用いられる蒸解促進剤であって、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、及び前記4種類の化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するものである。
アスコルビン酸は、L体あるいはD体の光学異性体であってもよい。エリソルビン酸はL−アスコルビン酸の立体異性体である。
アスコルビン酸及びエリソルビン酸の誘導体としては、前記蒸解の工程において分解あるいは還元されてアスコルビン酸又はエリソルビン酸が発生するものであれば特に制限はなく、脂肪酸エステル、リン酸エステル、グリセリンエーテル、糖エーテル又はデヒドロ体を挙げることができる。
前記脂肪酸エステルとしては、アスコルビン酸又はエリソルビン酸の炭素数2〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸エステルを挙げることができ、エステルの位置は2,3,5又は6位のヒドロキシ基のうち1つ又は2つ以上であってよい。このような化合物としては、具体的には、L−アスコルビル2,6−ジブチラート、アスコルビル6−パルミタート、L−アスコルビル2,6−ジパルミタート、アスコルビル6−ステアラートを挙げることができる。
前記リン酸エステルとしては、アスコルビン酸又はエリソルビン酸の2,3,5,6位のヒドロキシ基の1つ又は2つ以上がリン酸エステルになった化合物を挙げることができ、具体的にはL−アスコルビン酸−2−リン酸エステル、L−アスコルビン酸−3−リン酸エステル、L−アスコルビン酸−6−リン酸エステルが好ましい。
前記グリセリンエーテルとしては、アスコルビン酸の2,3,5,6位のヒドロキシ基の1つ又は2つ以上がグリセリンエーテルになった化合物を挙げることができ、具体的には2−グリセリル−L−アスコルビン酸、3−グリセリル−L−アスコルビン酸、2,3−ビスグリセリル−L−アスコルビン酸が好ましい。
前記糖エーテルとしては、アスコルビン酸の2,3,5,6位のヒドロキシ基の1つ又は2つ以上が糖エーテルになった化合物を挙げることができ、具体的にはL−アスコルビン酸−2−グルコシドが好ましい。
前記デヒドロ体としては、L−デヒドロアスコルビン酸が挙げられる。
また、前記の塩としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸、これらのリン酸エステル、これらのデヒドロ体の、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩)やアルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩)等を挙げることができる。具体的には、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸マグネシウム、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、エリソルビン酸カルシウム、エリソルビン酸マグネシウム、L-アスコルビン酸-2-
リン酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウムが好ましい。
また、前記の化合物は、L体、D体などの異性体、水和物、脱水物などを使用できる。
本実施形態の蒸解促進剤は、アスコルビン酸、エリソルビン酸又はそのアルカリ金属塩を含むことが好ましい。
本実施形態の蒸解促進剤は、前記の化合物を1質量%以上100質量%以下含有していることが好ましく、含有量は10質量%以上100質量%以下がより好ましく、20質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
本実施形態の蒸解促進剤は、そのまま使用してもよいが、水や有機溶剤を配合し、溶解や乳化あるいは分散状で剤化させて使用することができる。前記有機溶剤の種類としては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1〜6の低級アルコール;前記低級アルコールのアルキレンオキシド付加物;エチレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール;3−メチル−3−メトキシブタノールなどが挙げられる。
また、蒸解促進剤は、木材への浸透性や洗浄性などを付与するために、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油、有機溶剤、オレンジオイルなどの天然溶剤、アルカリ剤など配合して使用できる。蒸解後の洗浄効率を向上させるため、消泡剤、洗浄剤などを配合して使用できる。さらに、アントラキノン以外の従来公知の蒸解促進剤(例えば、チオ尿素やチオール化合物)を本実施形態の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
本発明の蒸解促進剤を適用できる蒸解方法は、アルカリ蒸解、クラフト蒸解及びポリサルファイド蒸解である。
パルプの製造方法は、一般的に木材に熱や圧力などの物理処理やアルカリ剤などの化学処理を行ってパルプ化する蒸解工程、蒸解工程にて得られた粗パルプを洗浄する工程、洗浄したパルプを漂泊する工程などが含まれるが、本発明のパルプの製造方法は、アルカリ蒸解、クラフト蒸解又はポリサルファイド蒸解のいずれかの蒸解工程において、アスコルビン酸、エリソルビン酸、これらの誘導体又はこれらの塩を、単独又は2種以上含有する蒸解促進剤を用いることを特徴とする。
本実施形態のパルプの製造方法に使われるリグノセルロース材料は、木材(針葉樹、広葉樹)または非木材が挙げられる。非木材の具体例としては、わら、バカス、ヨシ、ケナフ、クワ、竹、草本類、雑草等がある。
本実施形態の蒸解促進剤が適応できるアルカリ蒸解としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤を用いるものが挙げられるが、水酸化ナトリウムを用いるソーダ法、炭酸ソーダを用いる炭酸ソーダ法が好ましい。これらのアルカリ剤の使用量としては、リグノセルロース材料の種類によって異なるが、水酸化ナトリウムであればリグノセルロース材料に対して1〜120質量%とすることが好ましく、5〜60質量%とすることがより好ましい。
本実施形態の蒸解促進剤の効果を発揮するには、蒸解液のアルカリ剤の濃度を3質量%以上とすることがこのましく、5質量%以上とすることがより好ましい。
クラフト蒸解は、前記と同様の条件のアルカリ剤とともに硫化ナトリウムを含む蒸解液を使用する方法である。例えば、アルカリ剤が水酸化ナトリウムの場合、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとを、水酸化ナトリウム100質量部に対して硫化ナトリウムを1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部となるように用いる。
また、ポリサルファイド蒸解は、前記と同様のアルカリ剤とともに、硫化ナトリウムと多硫化ナトリウム(Na:x=2〜5)とを含む蒸解液を使用する方法である。なお、蒸解液を調製するには、各成分を混合してもよいし、硫化ナトリウムの一部を多硫化ナトリウムに転換させてもよく、例えば、硫化ナトリウムに元素状硫黄を添加して多硫化ナトリウムを生成させる方法、KP白液に黒液を混合して空気により酸化する方法、撥水処理した活性炭触媒により空気酸化させる方法などがある。
蒸解設備は連続式またはバッチ式のいずれでもよい。さらに、蒸解システムとして、MCC(修正蒸解法)、ITC(全缶等温蒸解法)、Lo−solids(釜内固形分の低減)、BLI(黒液を浸透段に使用)などの蒸解法にも適用できる。
本発明のパルプの製造方法における蒸解促進剤の添加時期及び方法は、パルプ化する蒸解工程を含むそれ以前の工程が好ましく、具体的には、本発明の蒸解促進剤を蒸解前や蒸解工程中に蒸解釜に直接添加する方法、蒸解前の木材チップに吹きかける方法、循環する黒液に添加する方法などが挙げられる。また、蒸解促進剤の添加方法としては、一括または分割して添加する方法、連続して添加する方法のいずれでもよい。
本実施形態の蒸解促進剤は、そのまま使用してもよいが、水や有機溶剤等の溶媒に溶解、乳化あるいは分散、希釈等をさせて使用することができる。溶媒としては、前記した蒸解促進剤の成分として例示したものを用いることができる。蒸解促進剤は、木材への浸透性や洗浄性などを付与するために、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油、有機溶剤、オレンジオイルなどの天然溶剤、アルカリ剤など併用して使用できる。蒸解後の洗浄効率を向上させるため、消泡剤、洗浄剤などを併用して使用できる。アントラキノンなどのキノン化合物以外の従来公知の蒸解促進剤(例えば、チオ尿素やチオール系化合物)を本実施形態の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
本実施形態の蒸解促進剤の使用量は、分解効果やコストの観点から、リグノセルロース材料の乾燥重量に対して、アスコルビン酸、エリソルビン酸、これらの誘導体及びこれらの塩の総質量が0.0001質量%以上10質量%以下となる量で用いることが好ましく、0.001質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。
蒸解の処理温度としては、目的のパルプ製品によって異なり限定されるものではないが、50〜300℃が好ましく、80〜250℃がより好ましい。
蒸解の処理圧としては、目的のパルプ製品によって異なり限定されるものではないが、常圧〜10MPaが好ましく、常圧〜5MPaがより好ましい。
また、本発明のパルプの製造方法は、さらに蒸解効果をあげるために、蒸解釜に酸素を導入する方法も適用できる。
酸素を導入する方法としては特に限定はしないが、酸素又は空気を用い、蒸解釜の圧力を調整しながら酸素分圧を高く設定し蒸解釜に圧入する方法や、木材チップの供給や蒸解液の供給の際に圧入する方法などがある。場合によっては過酸化水素や過酸化カリウム等
の過酸化物や過炭酸ナトリウムや過酢酸等の過酸化物など、蒸解条件で酸素を発生し得る酸化剤を蒸解液に加えても良い。
なお、酸素を圧入する場合には酸素分圧が0.05〜1MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaとなるように酸素を圧入する。酸素源としては純酸素の他、空気や酸素と空気との混合ガスが用いられる。酸素分圧が前記の範囲に保持できれば限定されないが、装置の耐圧度を高くすると装置費が嵩むことから、純酸素や酸素と空気の混合ガスを使うのが好ましい。なお、蒸解中に酸素との接触を容易にするためには、気相蒸解が好ましい。
以下実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、使用した薬剤は試薬である。
(アルカリ蒸解)
実施例1
105℃で10時間乾燥させたL材の木材チップを50g、水酸化ナトリウム16g、水134g、及び試薬のL-アスコルビン酸を0.015g(木材チップに対し0.03質量%)をミニカラー染色試験機(テクサム技研製)のポットに仕込み、155℃で2時間蒸解を行った(蒸解工程)。
冷却後、ケミスタラーにて木材を十分にほぐした後、No.2ろ紙にてろ過洗浄を繰り返し、ろ液の色がなくなるまで洗浄した(洗浄工程)。洗浄して得られたろ過残渣のパルプと木材片の混合物を6/1000インチのフラットスクリーン(熊谷理機製)に通した(6カット)。
フラットスクリーンを通らなかった未蒸解の木材片を回収し、105℃で10時間乾燥後、質量を測定し「フラットスクリーンで回収した木材片量(g)」とし、木材片の残留率(%)を下記式によって算出した。
木材片の残留率(%)=[フラットスクリーンで回収した木材片量(g)/蒸解した木材チップ(50g)]×100
一方、フラットスクリーンを通った液は200メッシュ金網に通して、200メッシュ金網を通らなかったパルプを回収し、105℃で10時間乾燥させた後、質量を測定し「200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)」とした。パルプの歩留まり率(%)を下記式によって算出した。
パルプの歩留まり率(%)=[200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)/蒸解した木材チップ(50g)]×100
また、JIS P 8211(2011)に記載の方法により、得られたカッパー価を測定した。
木材片の残留率は10%以下を合格とし、パルプの歩留まり率は40%以上を合格とした。また、カッパー価は低い方が好ましい。結果を表1に示す。
実施例2〜14
蒸解促進剤として表1に示した化合物を表1に示した使用量で添加したこと以外は実施例1と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2020090751
比較例1
蒸解促進剤を添加せず、それ以外は、実施例1と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー値を求めた。結果を表2に示す。
比較例2〜11
蒸解促進剤として表2に示した化合物を表2に示した使用量で添加した以外は実施例1と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結果を表2に示す。
Figure 2020090751
(クラフト蒸解)
実施例15
105℃で10時間乾燥させたN材の木材チップ50g、硫化ナトリウム5g、水酸化ナトリウム10g、水135g、及びL-アスコルビン酸0.015g(木材チップに対し0.03質量%)をミニカラー染色試験機(テクサム技研製)のポットに仕込み、155℃で1時間蒸解を行った(蒸解工程)。
冷却後、ケミスタラーにて木材を十分にほぐした後、No.2ろ紙にてろ過洗浄を繰り返し、ろ液の色がなくなるまで洗浄した(洗浄工程)。洗浄して得られたろ過残渣のパルプと木材片の混合物を6/1000インチのフラットスクリーン(熊谷理機製)に通した(6カット)。
フラットスクリーンを通らなかった未蒸解の木材片を回収し、105℃で10時間乾燥させた後、質量を測定し「フラットスクリーンで回収した木材片量(g)」とし、木材片の残留率(%)を前記式によって算出した。
一方、フラットスクリーンを通った液は200メッシュ金網に通して、200メッシュ金網を通らなかったパルプを回収し、105℃で10時間乾燥させた後、質量を測定し「200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)」とした。パルプの歩留まり率(%)を前記式によって算出した。
また、得られたパルプについて前記と同様にカッパー価を測定した。結果を表3に示す。
実施例16〜28
蒸解促進剤として表3に示した化合物を表3に示した使用量で添加した以外は実施例15と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結
果を表3に示す。
Figure 2020090751
比較例12
蒸解促進剤を添加せず、それ以外は、実施例15と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。
比較例13〜22
蒸解促進剤として表4に示した化合物を表4に示した使用量で添加した以外は実施例15と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結果を表4に示す。
Figure 2020090751
(ポリサルファイド蒸解)
実施例29
105℃で10時間乾燥させたN材の木材チップを50g、硫化ナトリウム2.8g、水酸化ナトリウム12g、4硫化ナトリウム1.2g、水134g、及びL-アスコルビン酸0.015g(木材チップに対して0.03質量%)を、ミニカラー染色試験機(テクサム技研製)のポットに仕込み、155℃で1時間蒸解を行った(蒸解工程)。
冷却後、ケミスタラーにて木材を十分にほぐした後、No.2ろ紙にてろ過洗浄を繰り返し、ろ液の色がなくなるまで洗浄した(洗浄工程)。洗浄して得られたろ過残渣のパルプと木材片の混合物を6/1000インチのフラットスクリーン(熊谷理機製)に通した(6カット)。
フラットスクリーンを通らなかった未蒸解の木材片を回収し、105℃で10時間乾燥させた後、質量を測定し「フラットスクリーンで回収した木材片量(g)」とし、木材片の残留率(%)を前記式によって算出した。
一方、フラットスクリーンを通った液は200メッシュ金網に通して、200メッシュ金網を通らなかったパルプを回収し、105℃で10時間乾燥させた後、質量を測定し「200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)」とした。パルプの歩留まり率(%)を前記式によって算出した。
また、得られたパルプについて前記と同様にカッパー価を測定した。結果を表5に示す。
実施例30〜36
蒸解促進剤として表5に示した化合物を表5に示した使用量で添加した以外は実施例29と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結果を表5に示す。
Figure 2020090751
比較例23
蒸解促進剤を添加せず、それ以外は、実施例29と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。
比較例24〜28
蒸解促進剤として表6に示した化合物を表6に示した使用量で添加した以外は実施例29と同じ処理を行い、木材片の残留率、パルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結果を表6に示す。
Figure 2020090751
(空気置換をしたクラフト蒸解)
実施例37
105℃で10時間乾燥しN材の木材チップを50g、硫化ナトリウム5g、水酸化ナトリウム10g、水135g、及びL−アスコルビン酸0.015g(木材チップに対して0.03質量%)使用し、ミニカラー染色試験機(テクサム技研製)のポットに仕込み、155℃で20分間の蒸解を行った(蒸解工程)。次いで、これを常温及び常圧に戻し、ポットの蓋を開けて空気置換することで系内に酸素を導入した。これを1回として計3回の酸素を導入した蒸解を行った。
冷却後、ケミスタラーにて木材を十分にほぐした後、No.2ろ紙にてろ過洗浄を繰り返し、ろ液の色がなくなるまで洗浄した(洗浄工程)。洗浄して得られたろ過残渣のパルプと木材片の混合物を6/1000インチのフラットスクリーン(熊谷理機製)に通した(6カット)。
フラットスクリーンを通らなかった未蒸解の木材片を回収し、105℃で10時間乾燥させた後、質量を測定し「フラットスクリーンで回収した木材片量(g)」とし、木材片の残留率(%)を前記式によって算出した。
一方、フラットスクリーンを通った液は200メッシュ金網に通して、200メッシュ金網を通らなかったパルプを回収し、105℃で10時間乾燥させた後、質量を測定し「200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)」とした。パルプの歩留まり率(%)を前記式によって算出した。
得られたパルプについて前記と同様にカッパー価を測定した。結果を表7に示す。また、表7には空気置換をしていないクラフト蒸解の実施例の評価結果を併記する。
実施例38〜40
蒸解促進剤として表7に示した化合物を表7に示した使用量で添加した以外は実施例37と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結果を表7に示す。
Figure 2020090751
比較例29
蒸解促進剤を添加しないほかは、実施例37と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表8に示す。また、表8には空気置換をしていないクラフト蒸解の比較例の評価結果を併記する。
比較例30〜32
蒸解促進剤として表8に示した化合物を表8に示した使用量で添加した以外は実施例37と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率及びカッパー価を求めた。結果を表8に示す。
Figure 2020090751
アスコルビン酸、エリソルビン酸、これらの誘導体又はこれらの塩を含む本実施形態の蒸解促進剤を用いた実施例はいずれも、アントラキノンなどキノン−ヒドロキノン系化合物を含まない、アルカリ蒸解、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、さらに空気を混入させたクラフト蒸解など各蒸解方法に対して、優れた蒸解促進効果を発揮した。一方、比較例のグルコール酸、乳酸リチウム、DL−リンゴ酸などについては蒸解促進効果が極めて低かった。
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。

Claims (2)

  1. リグノセルロース材料のアルカリ蒸解、クラフト蒸解或いはポリサルファイド蒸解に用いられる蒸解促進剤であって、
    アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、及び前記4種類の化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有している、蒸解促進剤。
  2. 蒸解工程と、洗浄工程とを含み、
    前記蒸解工程がアルカリ蒸解、クラフト蒸解或いはポリサルファイド蒸解であって、
    前記蒸解工程では、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、及び前記4種類の化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するリグノセルロース材料用の蒸解促進剤の存在下で、リグノセルロース材料を蒸解する、パルプの製造方法。
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