JP2004277553A - 塗料用組成物および塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗装作業性、顔料分散性、耐候性に優れ、弱溶剤を媒体とし、高硬度の塗膜を形成できる塗料用組成物および塗料の提供。
【解決手段】フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマー(10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する)との共重合体である弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体と、分散安定化剤の存在下、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを弱溶剤中で分散重合させて得られる、弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなる非水分散液分散体と、弱溶剤とを含有する塗料用組成物、該塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料。
【選択図】 なし
【解決手段】フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマー(10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する)との共重合体である弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体と、分散安定化剤の存在下、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを弱溶剤中で分散重合させて得られる、弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなる非水分散液分散体と、弱溶剤とを含有する塗料用組成物、該塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料用組成物および塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐候性に優れる塗膜を与える塗料用樹脂としてフッ素樹脂が知られている。該フッ素樹脂は、有機溶剤に溶解させた溶剤型塗料として、重防食トップコートとして用いられたり、建築用セメント系基材へのトップコートとして用いられている。フッ素樹脂を用いた溶剤型塗料としては、例えば特許文献1に、ミネラルスピリット可溶性の含フッ素共重合体を含む塗料用組成物が提案されている。
【0003】
溶剤型塗料は、顔料分散性に優れるため、溶剤型塗料に無機顔料等を配合した場合、光沢の良好な塗膜が得られる。
しかし、溶剤型塗料の場合、樹脂の分子量が高くなるにつれて粘度も高くなるため、分子量の大きい樹脂を用いる場合には、塗装の際、塗料を多量の溶剤で希釈して粘度を下げる必要がある。その結果、塗料中に含まれる不揮発分の含有率が低くなり、塗装時にタレが生じるなどの塗装作業性の問題があった。
【0004】
このような塗装作業性の問題を解決する手段として、非水分散液(以下、NADという。)型塗料が提案されている。例えば特許文献2には、有機溶媒中、有機溶媒可溶性の含フッ素共重合体を分散安定化剤として用い、有機溶媒可溶性のラジカル重合性不飽和モノマーを分散重合させることにより得られる、有機溶媒不溶性のビニル系重合体の安定な分散液が記載されている。
しかし、このようなNAD型塗料は、溶剤型塗料に比べて塗装作業性には優れるが、顔料分散性が劣る。
また、分散安定化剤の存在下で重合させるモノマーとして好適に用いられている(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも40質量%以上含むモノマーを重合させて得られる重合体は、耐候性が低い問題があった。
【0005】
一方、塗装作業性の問題を解決すると同時に顔料分散性に優れる塗料として、例えば、特許文献3には、含フッ素共重合体の有機溶剤溶液に有機顔料を分散させ、これにビニル系重合体のNADを混合してなる塗料が提案されている。
【0006】
しかし、これらの従来技術を利用して、二液タイプの塗料を得るためには、トルエン、キシレン等のいわゆる強溶剤を用いる必要があった。
該二液タイプの塗料とは、硬化剤と、該硬化剤と架橋可能な樹脂を含有する溶液とを使用時に混合して用いる塗料であり、高い硬度と耐汚染性を備えた塗膜を得ることができる。二液タイプの塗料は、樹脂と硬化剤とが架橋して3次元の網目構造を構成するので、得られる塗膜の硬度が高くなり、その結果、耐汚染性が向上する。該二液タイプの塗料としては、たとえばイソシアネート系硬化剤と、該硬化剤との架橋反応性部位として水酸基を有する樹脂とを用いるものが知られており、樹脂中の水酸基の含有量(水酸基価)が多いほど、硬度の高い塗膜が得られる。
【0007】
【特許文献1】
特公平8−32847号公報
【特許文献2】
特開昭62−25103号公報
【特許文献3】
特許2841450号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば特許文献1〜3等で用いられている含フッ素共重合体は、水酸基価をある程度高めると、極性が高くなり、弱溶剤に対して溶解しなくなると推測される。
そのため、従来、含フッ素共重合体を二液タイプの塗料に用いる場合、溶剤として、溶解力の強い強溶剤を用いる必要があった。そのため、該塗料を経年変化した合成樹脂調合ペイント、フタル酸樹脂エナメル、アクリル樹脂系上塗りなどの旧塗膜や下塗り塗膜(プライマー層)に直接塗装すると、チヂミやふくれが生じたり、良好な密着性が得られないなどの問題が生じていた。
【0009】
したがって、本発明は、塗装作業性、顔料分散性および耐候性に優れるとともに、弱溶剤を溶媒とし、高硬度の塗膜を形成できる塗料用組成物および塗料を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の含フッ素共重合体が、弱溶剤に対して溶解性が高く、かつ高い硬度の塗膜を形成できる量の水酸基を含有しており、該含フッ素共重合体と特定のNAD分散体と弱溶剤とを含有する塗料用組成物および該塗料用組成物を含有する塗料により、上記課題を解決できることを見い出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有することを特徴とする弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体(A)、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能な分散安定化剤の存在下、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを弱溶剤中で分散重合させて得られる、弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなるNAD分散体(B)、および弱溶剤(C)を含有する塗料用組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
≪塗料用組成物≫
本発明の塗料用組成物は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有することを特徴とする弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体(A)(以下、(A)成分という。)、弱溶剤中、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能な分散安定化剤の存在下で、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを分散重合させて得られる弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなるNAD分散体(B)(以下、(B)成分という。)、および弱溶剤(C)を含有する。
【0013】
・(A)成分
(A)成分は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有するものであり、弱溶剤可溶性である。
【0014】
フルオロオレフィンとしては、フッ素付加数は2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が2以上であると、耐候性が充分であり好ましい。
フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等を挙げることができ、特にテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンが好ましい。
【0015】
二重結合含有モノマーは、フルオロオレフィンと共重合可能であり、フルオロオレフィン以外のビニル系モノマーが好ましく使用される。該ビニル系モノマーとは、CH2 =CH−で表される炭素−炭素二重結合を有する化合物である。該ビニル系モノマーとしては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等が挙げられる。
【0016】
本発明において、二重結合含有モノマーは、水酸基を含有する二重結合含有モノマー(以下、水酸基含有モノマーという。)と、炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する二重結合含有モノマー(以下、分岐アルキル基含有モノマーという。)の両方を含む。なお、水酸基含有モノマーが炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有していてもよく、分岐アルキル基含有モノマーが水酸基を含有していてもよい。
本発明における二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有する。
水酸基含有モノマーの含有量が10モル%以上であると、硬度の高い塗膜を得るために充分な量の水酸基が含フッ素共重合体中に導入されるため好ましい。
また、水酸基含有モノマーの含有量が30モル%以下であると、弱溶剤に対し、塗料用として充分な溶解性を維持できるため好ましい。
【0017】
水酸基含有モノマーの炭素数は、特に制限はないが、2〜10が好ましく、4〜6がより好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。共重合性に優れ、形成される塗膜の耐候性が良好であることから、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類が好ましい。
該水酸基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明における二重結合含有モノマーのうち、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐アルキル基を含有する。
分岐アルキル基含有モノマーが20〜80モル%であることにより、上記の量の水酸基含有モノマーを用いても、弱溶剤に対する溶解性を確保できる。該分岐アルキル基含有モノマーを用いることにより、弱溶剤に対する溶解性を確保できる理由は明らかではないが、分岐アルキル基含有モノマーの分子構造と弱溶剤の分子構造とが類似しており、相溶性が高いためと推測される。
【0019】
分岐アルキル基含有モノマーにおける分岐アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に制限はなく、4〜15が好ましく、4〜10がより好ましい。
分岐アルキル基含有モノマーとしては、分岐アルキル基を含有するビニルエーテル類、アリルエーテル類または(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基等が挙げられる。分岐アルキル基含有モノマーとしては、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)、tert−ブチルビニルエーテル(t−BuVE)等のビニルエーテル類が共重合性に優れるため好ましく、特に2−EHVEが好ましい。
該分岐アルキル基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明においては、二重結合含有モノマーとして、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸基含有モノマー、分岐アルキル基含有モノマー以外の他の二重結合含有モノマーを用いてもよい。
他の二重結合含有モノマーとしては、アルキル基を含有するモノマーが好ましく、該アルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。該アルキル基の炭素数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
特に、環状アルキル基を含有する二重結合含有モノマーを用いると、(A)成分のガラス転移温度(以下、Tgという。)が上がり、塗膜の硬度がさらに高まるため好ましい。
該環状アルキル基を含有する二重結合含有モノマーとしては、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル等の環状アルキルビニルエーテル類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル類等が挙げられる。
該他の二重結合含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
二重結合含有モノマーの全量における他の二重結合含有モノマーの割合は、0〜60モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましい。
【0021】
(A)成分におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位と二重結合含有モノマーに基づく重合単位の割合は、フルオロオレフィンに基づく重合単位が30〜70モル%であることが好ましく、40〜60モル%であることがより好ましく、二重結合含有モノマーに基づく重合単位が70〜30モル%であることが好ましく、60〜40モル%であることがより好ましい。フルオロオレフィンに基づく重合単位の割合が70モル%以下であると、(A)成分の弱溶剤への溶解性が充分となり、30モル%以上であると充分な耐候性が得られるため好ましい。
【0022】
(A)成分は、フルオロオレフィンと、水酸基含有モノマーおよび分岐アルキル基含有モノマーを所定割合含む二重結合含有モノマーとの混合物に、重合媒体の存在下または非存在下で、重合開始剤または電離性放射線などの重合開始源を作用せしめて共重合反応を行うことにより製造できる。
共重合反応における、フルオロオレフィンと二重結合含有モノマーとの使用量の割合は、上記の(A)成分におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位と二重結合含有モノマーに基づく重合単位の割合と同じであることが好ましい。
重合媒体としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサノン、ソルベントナフサ、ミネラルターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ等の脂肪族系溶剤、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルアミルケトン、酢酸tert−ブチル、4−クロロベンゾトリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、モノクロロトルエン、3,4−ジクロロベンゾトリフルオリド等が挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボネートニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系開始剤;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレイト等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート類等の過酸化物系開始剤;等が挙げられる。
【0023】
(A)成分は、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が、(A)成分の総質量に対して10質量%以上であり、20〜30質量%であることが好ましい。フッ素の含有量が10質量%以上であると、塗膜の耐候性が充分となり好ましい。
また、(A)成分は、硬化剤との反応性部位として水酸基を含有する。(A)成分中の水酸基価(以下、OHVという。)は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、(A)成分の総固形分に対し、40〜55mgKOH/gが好ましく、45〜55mgKOH/gがより好ましい。
OHVが40mgKOH/g以上であると、硬度の高い塗膜を得ることができ、OHVが55mgKOH/g以下であると、弱溶剤に対して(A)成分が充分な溶解性を有するため好ましい。
【0024】
(A)成分は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量(Mn)が5000〜7500であることが好ましい。Mnが5000以上であると耐候性に優れ、Mnが7500以下であると弱溶剤に対する溶解性に優れるため好ましい。
また、(A)成分のTgは、25℃以上が好ましく、30〜40℃がより好ましい。Tgが25℃以上であると、高硬度の塗膜が得られるため好ましい。
【0025】
(A)成分は、さらに、カルボキシ基を含有することが好ましい。カルボキシ基を含有することにより、塗料として用いる際に顔料の分散性が向上する。(A)成分中のカルボキシ基の含有量(酸価(以下、AVという。))は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、(A)成分の総固形分に対し、1〜5mgKOH/gが好ましく、2〜5mgKOH/gがより好ましい。
該カルボキシ基は、例えば、上述したフルオロオレフィンと二重結合含有モノマーとの重合反応後、含フッ素共重合体中の水酸基に多価カルボン酸またはその無水物を反応させることにより導入できる。また、カルボキシ基を有する二重結合含有モノマーの直接重合によっても導入できる。
【0026】
・(B)成分
(B)成分は、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能な分散安定化剤の存在下、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを弱溶剤中で分散重合させて得られる、弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなるNAD分散体である。
【0027】
NAD分散体の調製に用いられる分散安定化剤は、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能であり、ビニル系モノマーの分散重合により得られるビニル系重合体微粉子を安定に分散できるものである。
分散安定化剤としては、下記(a1)〜(g5)のうち、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能なものが挙げられる。
(a1):フルオロオレフィンと炭素数4〜18のアルキル基を含有する脂肪族モノカルボン酸とのビニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、炭素数3〜18のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、および炭素数1〜14のアルキル基を含有するシクロアルキルビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種のビニル系モノマーを主成分とし、必要に応じて、これらと共重合可能な他のビニル系モノマーを共重合させて得られる共重合体。
(a1)において、共重合可能な他のビニル系モノマーには、(A)成分を構成するフルオロオレフィンと共重合可能なビニル系モノマーであって、上述した分散安定化剤(a1)の主成分を構成するビニル系モノマーを除いた全てのビニル系モノマーが含まれる。
このような二重結合含有モノマーとしては、コハク酸モノビニルエステル、アジピン酸モノビニルエステル、セバシン酸モノビニルエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のカルボキシ基含有モノマー;カルボン酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジニル基、シリルオキシカルボニル基、シリルオキシ基等の反応性官能基を有するビニル系モノマー等が挙げられる。
(b1):ポリブタジエンやポリイソプレンなどの不飽和結合含有ポリオレフィン系重合体に、上述したフルオロオレフィンおよびビニル単量体類よりなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系モノマーを共重合させて得られるグラフト共重合体。
(c1):n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の、炭素数4以上のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル類を主成分とし、必要に応じて、上述したビニル系モノマーを共重合させて得られる共重合体。
(d1):アルキド樹脂であって、弱溶剤に可溶であるもの。
(e1):炭素数4〜12のアルキルアルコールでエーテル化されたアルキルエーテル化メラミン樹脂縮合体であって、弱溶剤に可溶であるもの。
(f1):12−ヒドロキシステアリン酸等の水酸基含有飽和脂肪酸の自己縮合ポリエステルの末端位にあるカルボキシ基に、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和結合含有エポキシ化合物を付加させて得られる末端不飽和結合含有ポリエステル。
(g1):炭素数4〜17のアルキル基を含有するカルボン酸ビニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、炭素数2〜18のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、およびシクロアルキルビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種のビニル系モノマーを主成分とし、必要に応じて、(a1)において述べた、共重合可能な他のビニル系モノマーを共重合させて得られる共重合体。
(a2)、(b2)、(c2)、(g2):上述した(a1)、(b1)、(c1)、(g1)の各分散安定化剤のうち、カルボキシ基を含有する共重合体のカルボキシ基に対して、(f1)で述べた不飽和結合含有エポキシ化合物を付加させて得られる各不飽和結合含有共重合体。
(a3)、(b3)、(c3)、(g3):上述した(a1)、(b1)、(c1)、(g1)の各分散安定化剤のうち、水酸基を含有する共重合体の水酸基に対して、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸モノビニルエステル等のカルボン酸無水基を含有するモノマーを付加させて得られる各不飽和結合含有共重合体。
(a4)、(c4)、(f4)、(g4):上述した(a2)、(c2)、(g2)の各不飽和結合含有共重合体、および(f1)の末端不飽和結合含有ポリエステルに、炭素数1〜3のアルキル基を含有するカルボン酸ビニルエステルを共重合させて得られる各グラフト共重合体。
(a5)、(c5)、(g5):上述した(a3)、(c3)、(g3)の各不飽和結合含有共重合体に炭素数1〜3のアルキル基を含有するカルボン酸ビニルエステルを共重合させて得られる各グラフト共重合体。
【0028】
なお、上述した各分散安定化剤のうち、不飽和結合含有共重合体においては、グラフト点として上述したカルボキシ基または水酸基のほかに、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基等の反応性官能基を用いることもできる。グラフト点となる反応性官能基に対して、該反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有する不飽和結合含有単量体類を付加させることによっても、不飽和結合含有共重合体を調製できる。
【0029】
さらに、各分散安定化剤のうち、不飽和結合を有するものに対して、(A)成分を形成するために用いられる各モノマーの混合物をグラフト重合させて得られるグラフト共重合体も使用できる。
【0030】
各分散安定化剤のうち、グラフト共重合体を除いた他の分散安定化剤は、(B)成分の分散安定性および重合安定性の面から、弱溶剤に溶解可能であることが好ましい。
【0031】
本発明の塗料用組成物を用いて得られる塗膜の耐候性の観点から、分散安定化剤のうち、(a)、(b)および(c)群の共重合体を用いることが特に好ましい。
【0032】
分散安定化剤にグラフト点をもたせるために、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、または各種の反応性官能基を有するモノマーを、弱溶剤に対する分散安定化剤の溶解性を落さない程度に共重合させることもできる。
【0033】
(B)成分の調製における分散安定化剤の使用量は、(B)成分の調製に用いられるビニル系モノマーの総固形分の100質量部に対して2〜400質量部が好ましく、5〜300質量部がより好ましい。
【0034】
(B)成分の調製に用いられるビニル系モノマーとしては、(A)成分の調製に用いられるフルオロオレフィン、該フルオロオレフィンと共重合可能な他のビニル系モノマーを用いることができるが、得られるビニル系重合体が弱溶剤に溶解するモノマー、またはそのような組み合わせの使用は除外される。
【0035】
分散重合による(B)成分の調製は、例えば、以下の(1)〜(4)の方法により行うことができる。
(1)弱溶剤および分散安定化剤を仕込んだ反応器に、ビニル系モノマーおよび重合開始剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する、
(2)弱溶剤、分散安定化剤、ビニル系モノマーの一部および重合開始剤の一部を仕込んだ反応器に、残りのビニル系モノマーおよび重合開始剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する、
(3)弱溶剤および分散安定化剤の一部を仕込んだ反応器に、ビニル系モノマー、重合開始剤および残りの分散安定化剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する、
(4)弱溶剤だけを仕込んだ反応器に、ビニル系モノマー、重合開始剤および分散安定化剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する。
【0036】
分散重合における反応温度および反応圧力は、重合開始剤、弱溶剤の種類、得ようとするビニル系重合体の分子量などに応じて、適宜、選択される。反応温度は0〜140℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。反応圧力は、100kg/cm2以下が好ましい。
【0037】
重合開始剤としては、特に限定されず、公知のラジカル重合開始剤の中から選ばれる。たとえば、アゾビスイソブチロニトリルまたはアゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。
該ラジカル重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類、重合温度、共重合体の分子量などに応じて適宜決定されるが、共重合させるモノマーの総量(固形分)の0.01〜10質量%が好ましい。
【0038】
また、分散重合の際、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン・ダイマーなどの連鎖移動剤を用いて分子量を調節してもよい。
【0039】
このようにして得られるビニル系重合体からなるNAD分散体は、弱溶剤不溶性であり、弱溶剤中において単独では安定に分散し得ないが、弱溶剤可溶性の分散安定化剤の存在により安定に分散し、弱溶剤を分散媒とするNAD(弱溶剤型NAD)を形成する。
【0040】
・弱溶剤(C)
本発明の塗料用組成物は、弱溶剤(C)を含有する。
弱溶剤とは、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第3種有機溶剤とされているものであり、下記イ)〜ハ)のいずれかに相当するものである。
イ)ガソリン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む)、
ロ)イ)のみからなる混合物、
ハ)イ)と、イ)以外のものの混合物で、イ)を5質量%を越えて含有するもの。
本発明の塗料用組成物は、弱溶剤(C)として、これらの第3種有機溶剤を使用したもので、強溶剤に相当する第2種有機溶剤を、全溶剤の5質量%を越えて含有しないものである。
弱溶剤(C)としては、引火点が室温以上であることから、ミネラルスピリットが好ましい。
【0041】
本発明の塗料用組成物中、(A)成分と(B)成分との混合割合は、固形分の質量比として、(A)成分:(B)成分=5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30がより好ましい。
(A)成分の割合が上記範囲であると、顔料分散性に優れ、(B)成分の割合が上記範囲内であると、塗装作業性に優れるため好ましい。
【0042】
本発明の塗料用組成物は、例えば、(A)成分を弱溶剤に溶解させ、これに、弱溶剤中に(B)成分が分散した弱溶剤型NADを混合することによって調製できる。
【0043】
本発明の塗料用組成物は、樹脂成分として、(A)成分および(B)成分のほか、塗膜の乾燥性を改善するために、CAB(セルロースアセテートブトレート)、NC(ニトロセルロース)等を含有していてもよく、塗膜の光沢、硬度、塗料の施工性の改良のために、アクリル酸またはそのエステルからなる重合体、ポリエステル等の弱溶剤可溶性塗料用樹脂を含有していてもよい。
【0044】
塗料用組成物における弱溶剤(C)の量は、(A)成分の溶解性、塗料用組成物を塗料として塗装する際の適度な粘度、塗装方法などを考慮して適宜決定される。
【0045】
本発明の塗料用組成物は、二液タイプの塗料として、使用前に硬化剤と混合されて用いられる。
【0046】
≪塗料≫
本発明の塗料は、本発明の塗料用組成物および硬化剤を含有する。
該硬化剤としては、(A)成分中の水酸基と架橋可能な硬化剤が好ましく、例えばイソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤、メラミン系硬化剤等の塗料用硬化剤が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の無黄変イソシアネート類が挙げられる。
ブロックイソシアネート系硬化剤としては、イソシアネート硬化剤のイソシアネート基をカプロラクタム、イソホロン、β−ジケトン等でブロックしたものが挙げられる。
メラミン系硬化剤としては、ブチル化メラミン等の低級アルコールによりエーテル化されたメラミン、エポキシ変性メラミン等が挙げられる。
【0047】
塗料における硬化剤の含有量は、塗料用組成物中の(A)成分100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
硬化剤が1質量部以上であると、塗膜の耐溶剤性と硬度が充分であり、硬化剤が100質量部以下であると、加工性、耐衝撃性に優れるため好ましい。
【0048】
本発明の塗料は、必要に応じて、他の機能性配合剤を含有することが好ましい。他の機能性配合剤としては、着色顔料、染料、塗膜の付着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤、界面活性剤、表面調整剤等が挙げられる。
着色顔料、染料としては、耐候性の良いカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料、染料等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
硬化促進剤としては、イソシアネート系硬化剤用にジブチルスズジラウレート等、メラミン系硬化剤用にパラトルエンスルホン酸等の酸性触媒が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(以上、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等が挙げられ、つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの塗膜を形成できる。
界面活性剤は、表面張力を制御するため、特定の成分の表面濃度の調整に有効である。界面活性剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型のいずれでもよく、レオレックスASE(第一工業製薬社製、商品名)、ホモゲノールL−18(花王社製、商品名)等が挙げられる。
表面調整剤としては、フッ素系のサーフロンS382(旭硝子社製、商品名)、アクリル系のモダフロー(モンサント社製、商品名)、レオファットシリーズ(花王社製、商品名)等が挙げられる。
【0049】
本発明の塗料の製造は、本発明の塗料用組成物、硬化剤、必要に応じて添加される機能性配合剤を混合することにより行うことができる。
その混合順序は特に限定されず、本発明の塗料用組成物と添加剤を予め混合し、それに硬化剤を混合してもよく、本発明の塗料用組成物および硬化剤を混合し、次いで添加剤を混合してもよく、これらを同時に混合してもよい。
【0050】
本発明の塗料を用いて塗装する方法としては、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーター等の任意の方法を適用できる。
【0051】
塗装される物品材質としては、コンクリート、自然石、ガラス等の無機物、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属、プラスチック、ポリカーボネート、ゴム、接着剤、木材等の有機物が挙げられる。特に、すでに形成された塗膜の表面への塗装に適する。また有機無機複合材であるFRP、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等の塗装にも適する。
【0052】
また塗装される物品としては、自動車、電車、航空機等の輸送用機器、橋梁部材、鉄塔などの土木部材、防水材シート、タンク、パイプ等の産業機材、ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等の建築部材、道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁等の道路部材、透明透光板、通信機材、電気および電子部品等が挙げられる。
【0053】
【実施例】
本発明をより詳細に説明するために実施例(例1が実施例、例2〜4が比較例)を示す。本発明は、これらの例によって何ら制限されない。
【0054】
(含フッ素共重合体Aの製造)
内容積2000mLのステンレス製撹拌機付きオートクレーブに、組成がシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の263g、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)の182g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の107gである二重結合含有モノマー混合物と、キシレンの670g、エタノールの189gおよび炭酸カリウムの9.5gを入れ、窒素により溶存酸素を除去した。
その後、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の505gをオートクレーブ中に導入して徐々に昇温し、65℃に達した後、tert−ブチルパーオキシピバレートの50%キシレン溶液の7.0gを7時間かけてオートクレーブ中に導入し、その後さらに15時間撹拌した後、反応を停止した。
得られた含フッ素共重合体のキシレン溶液をエバポレーションしながらミネラルスピリットへの溶媒置換を行い、不揮発分を60質量%にした後、水素添加無水フタル酸の5.8gを添加し、さらにトリエチルアミンの0.05gを添加した後、フラスコを徐々に昇温した。フラスコ内の温度が70℃に達した後、その温度を2時間保持し、Mnが7300、OHVが46mgKOH/g、AVが2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Aのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を得た。
【0055】
(含フッ素共重合体Fの製造)
含フッ素共重合体Aの製造において、二重結合含有モノマーの組成をCHVEの263g、イソプロピルビニルエーテル(IPVE)の182g、HBVEの107gとした以外は含フッ素共重合体Aの製造と同様にして、Mnが7500、OHVが46mgKOH/g、AVが2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Fのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Fは、炭素数3以上の分岐状アルキル基含有モノマーを含有しない点で、本発明に相当しない。
【0056】
得られた含フッ素共重合体A、Fのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を1として、ミネラルスピリットを用いて白濁するまで希釈を行い、希釈可能倍率(ミネラルスピリット希釈性)を求めた。
【0057】
表1に、含フッ素共重合体A、Fのモノマー組成(モル%)、OHV、AV、Mnおよびミネラルスピリット希釈性を示す。なお、含フッ素共重合体Aは、10倍に希釈した時点でも全く白濁が見られなかったため、ミネラルスピリット希釈性が10倍以上とした。
塗装作業においては、塗装に使用した器具をミネラルスピリットを用いて洗浄する際に、ミネラルスピリット希釈性が4倍未満では未溶解の樹脂が器具に残留し、塗装作業性に悪影響を及ぼすため、塗料用の含フッ素共重合体には、4倍以上のミネラルスピリット希釈性を有することが望まれている。本発明の含フッ素共重合体Aは、10倍以上の優れたミネラルスピリット希釈性を有しており、塗料用として好適なものであった。これに対し、含フッ素共重合体Fのミネラルスピリット希釈性は3倍であり、塗料用として好ましくないものであった。
【0058】
【表1】
【0059】
[例1〜4]
含フッ素共重合体A、Fのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)の表2に示す量(質量部)に対し、ミネラルスピリットの50質量部および酸化チタン「D−918」(堺化学社製、商品名)の50質量部を混合し、グラインドミルで60分間分散せしめて白色ミルベースを得た。これに、表2に示す量(質量部)の、「ヒタロイド6500」(日立化成工業社製、商品名;ミネラルターペンを溶媒に用いたアクリルポリオール樹脂のNAD)およびミネラルスピリット可溶型イソシアネート硬化剤「タケネートD−177N」(三井武田ケミカル社製、商品名)を加えて塗料A、Fを調製した。
【0060】
塗料A、Fを、イワタカップ(粘度調整用器具)で30秒になるようにミネラルスピリットで希釈し、粘度調整を行って評価用塗料A、Fとし、下記の評価に用いた。結果を表2に示す。
「タレ試験」
評価用塗料A、Fを、平面に置いたアルミ板上に、20μmから100μmまでの膜厚(乾燥塗膜)となるように塗膜を傾斜塗装し、すぐにアルミ板を垂直にセットした。
そのまま室温で7日間放置した後、タレの生じない最大膜厚(μm)を測定した。
「塗膜光沢」
クロメート処理したアルミ板の表面に、白色の溶剤型アクリルウレタン塗料を25μmの膜厚で塗装して塗膜を形成した。塗膜の表面に、評価用塗料A、Fを30μmの膜厚になるよう塗装して塗膜を形成し、試験板とした。これを室温で7日間養生した後、鏡面光沢度計を用いて60°光沢を測定することによって塗膜光沢を評価した。
「耐候性」
上記「塗膜光沢」の評価に用いた試験板を、キセノンウェザーメーター(X−75、スガ試験機社製)を用い、JIS 5600−7−7に準拠して促進耐候性試験を行い、5000時間後の光沢を、「塗膜光沢」と同様にして測定し、その光沢保持率(%)を、[促進耐候性試験後の60°光沢/促進耐候性試験前の60°光沢]により算出して耐候性を評価した。
「塗膜硬度」
上記「塗膜光沢」の評価に用いた試験板を用い、JIS 5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定し、塗膜硬度を評価した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2において、含フッ素共重合体Aおよびタケネート6500を使用した例1の塗料を用いた塗膜は、全ての評価項目において優れていた。
これに対し、含フッ素共重合体Fを使用した例2の塗料を用いた塗膜は、塗膜光沢が低かった。これは、含フッ素共重合体Fの弱溶剤に対する溶解性が低く、弱溶剤溶液とならなかったために、顔料分散性がよくなかったことが原因であると考えられる。
また、タケネート6500を用いなかった例3の塗料を用いた塗膜は、タレ試験の評価が低く、塗装作業性がよくなかった。
また、含フッ素共重合体を含まず、タケネート6500のみを用いた例4の塗料を用いた塗膜は、塗膜光沢が低く、耐候性も悪かった。また、塗膜硬度も低かった。
【0063】
【発明の効果】
上述のように、本発明の塗料用組成物および塗料は、含フッ素共重合体の有機溶剤溶液により耐候性に優れ、顔料分散性に優れ、非水分散液により塗装作業性に優れ、弱溶剤を媒体とし、すでに形成された塗膜を痛めずにその表面に塗膜が形成でき、高硬度の塗膜を形成できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料用組成物および塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐候性に優れる塗膜を与える塗料用樹脂としてフッ素樹脂が知られている。該フッ素樹脂は、有機溶剤に溶解させた溶剤型塗料として、重防食トップコートとして用いられたり、建築用セメント系基材へのトップコートとして用いられている。フッ素樹脂を用いた溶剤型塗料としては、例えば特許文献1に、ミネラルスピリット可溶性の含フッ素共重合体を含む塗料用組成物が提案されている。
【0003】
溶剤型塗料は、顔料分散性に優れるため、溶剤型塗料に無機顔料等を配合した場合、光沢の良好な塗膜が得られる。
しかし、溶剤型塗料の場合、樹脂の分子量が高くなるにつれて粘度も高くなるため、分子量の大きい樹脂を用いる場合には、塗装の際、塗料を多量の溶剤で希釈して粘度を下げる必要がある。その結果、塗料中に含まれる不揮発分の含有率が低くなり、塗装時にタレが生じるなどの塗装作業性の問題があった。
【0004】
このような塗装作業性の問題を解決する手段として、非水分散液(以下、NADという。)型塗料が提案されている。例えば特許文献2には、有機溶媒中、有機溶媒可溶性の含フッ素共重合体を分散安定化剤として用い、有機溶媒可溶性のラジカル重合性不飽和モノマーを分散重合させることにより得られる、有機溶媒不溶性のビニル系重合体の安定な分散液が記載されている。
しかし、このようなNAD型塗料は、溶剤型塗料に比べて塗装作業性には優れるが、顔料分散性が劣る。
また、分散安定化剤の存在下で重合させるモノマーとして好適に用いられている(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも40質量%以上含むモノマーを重合させて得られる重合体は、耐候性が低い問題があった。
【0005】
一方、塗装作業性の問題を解決すると同時に顔料分散性に優れる塗料として、例えば、特許文献3には、含フッ素共重合体の有機溶剤溶液に有機顔料を分散させ、これにビニル系重合体のNADを混合してなる塗料が提案されている。
【0006】
しかし、これらの従来技術を利用して、二液タイプの塗料を得るためには、トルエン、キシレン等のいわゆる強溶剤を用いる必要があった。
該二液タイプの塗料とは、硬化剤と、該硬化剤と架橋可能な樹脂を含有する溶液とを使用時に混合して用いる塗料であり、高い硬度と耐汚染性を備えた塗膜を得ることができる。二液タイプの塗料は、樹脂と硬化剤とが架橋して3次元の網目構造を構成するので、得られる塗膜の硬度が高くなり、その結果、耐汚染性が向上する。該二液タイプの塗料としては、たとえばイソシアネート系硬化剤と、該硬化剤との架橋反応性部位として水酸基を有する樹脂とを用いるものが知られており、樹脂中の水酸基の含有量(水酸基価)が多いほど、硬度の高い塗膜が得られる。
【0007】
【特許文献1】
特公平8−32847号公報
【特許文献2】
特開昭62−25103号公報
【特許文献3】
特許2841450号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば特許文献1〜3等で用いられている含フッ素共重合体は、水酸基価をある程度高めると、極性が高くなり、弱溶剤に対して溶解しなくなると推測される。
そのため、従来、含フッ素共重合体を二液タイプの塗料に用いる場合、溶剤として、溶解力の強い強溶剤を用いる必要があった。そのため、該塗料を経年変化した合成樹脂調合ペイント、フタル酸樹脂エナメル、アクリル樹脂系上塗りなどの旧塗膜や下塗り塗膜(プライマー層)に直接塗装すると、チヂミやふくれが生じたり、良好な密着性が得られないなどの問題が生じていた。
【0009】
したがって、本発明は、塗装作業性、顔料分散性および耐候性に優れるとともに、弱溶剤を溶媒とし、高硬度の塗膜を形成できる塗料用組成物および塗料を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の含フッ素共重合体が、弱溶剤に対して溶解性が高く、かつ高い硬度の塗膜を形成できる量の水酸基を含有しており、該含フッ素共重合体と特定のNAD分散体と弱溶剤とを含有する塗料用組成物および該塗料用組成物を含有する塗料により、上記課題を解決できることを見い出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有することを特徴とする弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体(A)、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能な分散安定化剤の存在下、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを弱溶剤中で分散重合させて得られる、弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなるNAD分散体(B)、および弱溶剤(C)を含有する塗料用組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
≪塗料用組成物≫
本発明の塗料用組成物は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有することを特徴とする弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体(A)(以下、(A)成分という。)、弱溶剤中、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能な分散安定化剤の存在下で、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを分散重合させて得られる弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなるNAD分散体(B)(以下、(B)成分という。)、および弱溶剤(C)を含有する。
【0013】
・(A)成分
(A)成分は、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有するものであり、弱溶剤可溶性である。
【0014】
フルオロオレフィンとしては、フッ素付加数は2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が2以上であると、耐候性が充分であり好ましい。
フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等を挙げることができ、特にテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンが好ましい。
【0015】
二重結合含有モノマーは、フルオロオレフィンと共重合可能であり、フルオロオレフィン以外のビニル系モノマーが好ましく使用される。該ビニル系モノマーとは、CH2 =CH−で表される炭素−炭素二重結合を有する化合物である。該ビニル系モノマーとしては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等が挙げられる。
【0016】
本発明において、二重結合含有モノマーは、水酸基を含有する二重結合含有モノマー(以下、水酸基含有モノマーという。)と、炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有する二重結合含有モノマー(以下、分岐アルキル基含有モノマーという。)の両方を含む。なお、水酸基含有モノマーが炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有していてもよく、分岐アルキル基含有モノマーが水酸基を含有していてもよい。
本発明における二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有する。
水酸基含有モノマーの含有量が10モル%以上であると、硬度の高い塗膜を得るために充分な量の水酸基が含フッ素共重合体中に導入されるため好ましい。
また、水酸基含有モノマーの含有量が30モル%以下であると、弱溶剤に対し、塗料用として充分な溶解性を維持できるため好ましい。
【0017】
水酸基含有モノマーの炭素数は、特に制限はないが、2〜10が好ましく、4〜6がより好ましい。
水酸基含有モノマーとしては、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。共重合性に優れ、形成される塗膜の耐候性が良好であることから、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類が好ましい。
該水酸基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明における二重結合含有モノマーのうち、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐アルキル基を含有する。
分岐アルキル基含有モノマーが20〜80モル%であることにより、上記の量の水酸基含有モノマーを用いても、弱溶剤に対する溶解性を確保できる。該分岐アルキル基含有モノマーを用いることにより、弱溶剤に対する溶解性を確保できる理由は明らかではないが、分岐アルキル基含有モノマーの分子構造と弱溶剤の分子構造とが類似しており、相溶性が高いためと推測される。
【0019】
分岐アルキル基含有モノマーにおける分岐アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に制限はなく、4〜15が好ましく、4〜10がより好ましい。
分岐アルキル基含有モノマーとしては、分岐アルキル基を含有するビニルエーテル類、アリルエーテル類または(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基等が挙げられる。分岐アルキル基含有モノマーとしては、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)、tert−ブチルビニルエーテル(t−BuVE)等のビニルエーテル類が共重合性に優れるため好ましく、特に2−EHVEが好ましい。
該分岐アルキル基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明においては、二重結合含有モノマーとして、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸基含有モノマー、分岐アルキル基含有モノマー以外の他の二重結合含有モノマーを用いてもよい。
他の二重結合含有モノマーとしては、アルキル基を含有するモノマーが好ましく、該アルキル基としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。該アルキル基の炭素数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
特に、環状アルキル基を含有する二重結合含有モノマーを用いると、(A)成分のガラス転移温度(以下、Tgという。)が上がり、塗膜の硬度がさらに高まるため好ましい。
該環状アルキル基を含有する二重結合含有モノマーとしては、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル等の環状アルキルビニルエーテル類、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル類等が挙げられる。
該他の二重結合含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
二重結合含有モノマーの全量における他の二重結合含有モノマーの割合は、0〜60モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましい。
【0021】
(A)成分におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位と二重結合含有モノマーに基づく重合単位の割合は、フルオロオレフィンに基づく重合単位が30〜70モル%であることが好ましく、40〜60モル%であることがより好ましく、二重結合含有モノマーに基づく重合単位が70〜30モル%であることが好ましく、60〜40モル%であることがより好ましい。フルオロオレフィンに基づく重合単位の割合が70モル%以下であると、(A)成分の弱溶剤への溶解性が充分となり、30モル%以上であると充分な耐候性が得られるため好ましい。
【0022】
(A)成分は、フルオロオレフィンと、水酸基含有モノマーおよび分岐アルキル基含有モノマーを所定割合含む二重結合含有モノマーとの混合物に、重合媒体の存在下または非存在下で、重合開始剤または電離性放射線などの重合開始源を作用せしめて共重合反応を行うことにより製造できる。
共重合反応における、フルオロオレフィンと二重結合含有モノマーとの使用量の割合は、上記の(A)成分におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位と二重結合含有モノマーに基づく重合単位の割合と同じであることが好ましい。
重合媒体としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサノン、ソルベントナフサ、ミネラルターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ等の脂肪族系溶剤、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルアミルケトン、酢酸tert−ブチル、4−クロロベンゾトリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、モノクロロトルエン、3,4−ジクロロベンゾトリフルオリド等が挙げられる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボネートニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系開始剤;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレイト等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート類等の過酸化物系開始剤;等が挙げられる。
【0023】
(A)成分は、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が、(A)成分の総質量に対して10質量%以上であり、20〜30質量%であることが好ましい。フッ素の含有量が10質量%以上であると、塗膜の耐候性が充分となり好ましい。
また、(A)成分は、硬化剤との反応性部位として水酸基を含有する。(A)成分中の水酸基価(以下、OHVという。)は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、(A)成分の総固形分に対し、40〜55mgKOH/gが好ましく、45〜55mgKOH/gがより好ましい。
OHVが40mgKOH/g以上であると、硬度の高い塗膜を得ることができ、OHVが55mgKOH/g以下であると、弱溶剤に対して(A)成分が充分な溶解性を有するため好ましい。
【0024】
(A)成分は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される数平均分子量(Mn)が5000〜7500であることが好ましい。Mnが5000以上であると耐候性に優れ、Mnが7500以下であると弱溶剤に対する溶解性に優れるため好ましい。
また、(A)成分のTgは、25℃以上が好ましく、30〜40℃がより好ましい。Tgが25℃以上であると、高硬度の塗膜が得られるため好ましい。
【0025】
(A)成分は、さらに、カルボキシ基を含有することが好ましい。カルボキシ基を含有することにより、塗料として用いる際に顔料の分散性が向上する。(A)成分中のカルボキシ基の含有量(酸価(以下、AVという。))は、水酸化カリウムの化学的反応当量に換算して、(A)成分の総固形分に対し、1〜5mgKOH/gが好ましく、2〜5mgKOH/gがより好ましい。
該カルボキシ基は、例えば、上述したフルオロオレフィンと二重結合含有モノマーとの重合反応後、含フッ素共重合体中の水酸基に多価カルボン酸またはその無水物を反応させることにより導入できる。また、カルボキシ基を有する二重結合含有モノマーの直接重合によっても導入できる。
【0026】
・(B)成分
(B)成分は、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能な分散安定化剤の存在下、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを弱溶剤中で分散重合させて得られる、弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなるNAD分散体である。
【0027】
NAD分散体の調製に用いられる分散安定化剤は、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能であり、ビニル系モノマーの分散重合により得られるビニル系重合体微粉子を安定に分散できるものである。
分散安定化剤としては、下記(a1)〜(g5)のうち、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能なものが挙げられる。
(a1):フルオロオレフィンと炭素数4〜18のアルキル基を含有する脂肪族モノカルボン酸とのビニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、炭素数3〜18のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、および炭素数1〜14のアルキル基を含有するシクロアルキルビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種のビニル系モノマーを主成分とし、必要に応じて、これらと共重合可能な他のビニル系モノマーを共重合させて得られる共重合体。
(a1)において、共重合可能な他のビニル系モノマーには、(A)成分を構成するフルオロオレフィンと共重合可能なビニル系モノマーであって、上述した分散安定化剤(a1)の主成分を構成するビニル系モノマーを除いた全てのビニル系モノマーが含まれる。
このような二重結合含有モノマーとしては、コハク酸モノビニルエステル、アジピン酸モノビニルエステル、セバシン酸モノビニルエステル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のカルボキシ基含有モノマー;カルボン酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジニル基、シリルオキシカルボニル基、シリルオキシ基等の反応性官能基を有するビニル系モノマー等が挙げられる。
(b1):ポリブタジエンやポリイソプレンなどの不飽和結合含有ポリオレフィン系重合体に、上述したフルオロオレフィンおよびビニル単量体類よりなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系モノマーを共重合させて得られるグラフト共重合体。
(c1):n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の、炭素数4以上のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル類を主成分とし、必要に応じて、上述したビニル系モノマーを共重合させて得られる共重合体。
(d1):アルキド樹脂であって、弱溶剤に可溶であるもの。
(e1):炭素数4〜12のアルキルアルコールでエーテル化されたアルキルエーテル化メラミン樹脂縮合体であって、弱溶剤に可溶であるもの。
(f1):12−ヒドロキシステアリン酸等の水酸基含有飽和脂肪酸の自己縮合ポリエステルの末端位にあるカルボキシ基に、アリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和結合含有エポキシ化合物を付加させて得られる末端不飽和結合含有ポリエステル。
(g1):炭素数4〜17のアルキル基を含有するカルボン酸ビニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、炭素数2〜18のアルキル基を含有するアルキルビニルエーテル、およびシクロアルキルビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種のビニル系モノマーを主成分とし、必要に応じて、(a1)において述べた、共重合可能な他のビニル系モノマーを共重合させて得られる共重合体。
(a2)、(b2)、(c2)、(g2):上述した(a1)、(b1)、(c1)、(g1)の各分散安定化剤のうち、カルボキシ基を含有する共重合体のカルボキシ基に対して、(f1)で述べた不飽和結合含有エポキシ化合物を付加させて得られる各不飽和結合含有共重合体。
(a3)、(b3)、(c3)、(g3):上述した(a1)、(b1)、(c1)、(g1)の各分散安定化剤のうち、水酸基を含有する共重合体の水酸基に対して、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸モノビニルエステル等のカルボン酸無水基を含有するモノマーを付加させて得られる各不飽和結合含有共重合体。
(a4)、(c4)、(f4)、(g4):上述した(a2)、(c2)、(g2)の各不飽和結合含有共重合体、および(f1)の末端不飽和結合含有ポリエステルに、炭素数1〜3のアルキル基を含有するカルボン酸ビニルエステルを共重合させて得られる各グラフト共重合体。
(a5)、(c5)、(g5):上述した(a3)、(c3)、(g3)の各不飽和結合含有共重合体に炭素数1〜3のアルキル基を含有するカルボン酸ビニルエステルを共重合させて得られる各グラフト共重合体。
【0028】
なお、上述した各分散安定化剤のうち、不飽和結合含有共重合体においては、グラフト点として上述したカルボキシ基または水酸基のほかに、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基等の反応性官能基を用いることもできる。グラフト点となる反応性官能基に対して、該反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有する不飽和結合含有単量体類を付加させることによっても、不飽和結合含有共重合体を調製できる。
【0029】
さらに、各分散安定化剤のうち、不飽和結合を有するものに対して、(A)成分を形成するために用いられる各モノマーの混合物をグラフト重合させて得られるグラフト共重合体も使用できる。
【0030】
各分散安定化剤のうち、グラフト共重合体を除いた他の分散安定化剤は、(B)成分の分散安定性および重合安定性の面から、弱溶剤に溶解可能であることが好ましい。
【0031】
本発明の塗料用組成物を用いて得られる塗膜の耐候性の観点から、分散安定化剤のうち、(a)、(b)および(c)群の共重合体を用いることが特に好ましい。
【0032】
分散安定化剤にグラフト点をもたせるために、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、または各種の反応性官能基を有するモノマーを、弱溶剤に対する分散安定化剤の溶解性を落さない程度に共重合させることもできる。
【0033】
(B)成分の調製における分散安定化剤の使用量は、(B)成分の調製に用いられるビニル系モノマーの総固形分の100質量部に対して2〜400質量部が好ましく、5〜300質量部がより好ましい。
【0034】
(B)成分の調製に用いられるビニル系モノマーとしては、(A)成分の調製に用いられるフルオロオレフィン、該フルオロオレフィンと共重合可能な他のビニル系モノマーを用いることができるが、得られるビニル系重合体が弱溶剤に溶解するモノマー、またはそのような組み合わせの使用は除外される。
【0035】
分散重合による(B)成分の調製は、例えば、以下の(1)〜(4)の方法により行うことができる。
(1)弱溶剤および分散安定化剤を仕込んだ反応器に、ビニル系モノマーおよび重合開始剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する、
(2)弱溶剤、分散安定化剤、ビニル系モノマーの一部および重合開始剤の一部を仕込んだ反応器に、残りのビニル系モノマーおよび重合開始剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する、
(3)弱溶剤および分散安定化剤の一部を仕込んだ反応器に、ビニル系モノマー、重合開始剤および残りの分散安定化剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する、
(4)弱溶剤だけを仕込んだ反応器に、ビニル系モノマー、重合開始剤および分散安定化剤をそれぞれ連続的に、または分割して添加する。
【0036】
分散重合における反応温度および反応圧力は、重合開始剤、弱溶剤の種類、得ようとするビニル系重合体の分子量などに応じて、適宜、選択される。反応温度は0〜140℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。反応圧力は、100kg/cm2以下が好ましい。
【0037】
重合開始剤としては、特に限定されず、公知のラジカル重合開始剤の中から選ばれる。たとえば、アゾビスイソブチロニトリルまたはアゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。
該ラジカル重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類、重合温度、共重合体の分子量などに応じて適宜決定されるが、共重合させるモノマーの総量(固形分)の0.01〜10質量%が好ましい。
【0038】
また、分散重合の際、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン・ダイマーなどの連鎖移動剤を用いて分子量を調節してもよい。
【0039】
このようにして得られるビニル系重合体からなるNAD分散体は、弱溶剤不溶性であり、弱溶剤中において単独では安定に分散し得ないが、弱溶剤可溶性の分散安定化剤の存在により安定に分散し、弱溶剤を分散媒とするNAD(弱溶剤型NAD)を形成する。
【0040】
・弱溶剤(C)
本発明の塗料用組成物は、弱溶剤(C)を含有する。
弱溶剤とは、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第3種有機溶剤とされているものであり、下記イ)〜ハ)のいずれかに相当するものである。
イ)ガソリン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む)、
ロ)イ)のみからなる混合物、
ハ)イ)と、イ)以外のものの混合物で、イ)を5質量%を越えて含有するもの。
本発明の塗料用組成物は、弱溶剤(C)として、これらの第3種有機溶剤を使用したもので、強溶剤に相当する第2種有機溶剤を、全溶剤の5質量%を越えて含有しないものである。
弱溶剤(C)としては、引火点が室温以上であることから、ミネラルスピリットが好ましい。
【0041】
本発明の塗料用組成物中、(A)成分と(B)成分との混合割合は、固形分の質量比として、(A)成分:(B)成分=5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30がより好ましい。
(A)成分の割合が上記範囲であると、顔料分散性に優れ、(B)成分の割合が上記範囲内であると、塗装作業性に優れるため好ましい。
【0042】
本発明の塗料用組成物は、例えば、(A)成分を弱溶剤に溶解させ、これに、弱溶剤中に(B)成分が分散した弱溶剤型NADを混合することによって調製できる。
【0043】
本発明の塗料用組成物は、樹脂成分として、(A)成分および(B)成分のほか、塗膜の乾燥性を改善するために、CAB(セルロースアセテートブトレート)、NC(ニトロセルロース)等を含有していてもよく、塗膜の光沢、硬度、塗料の施工性の改良のために、アクリル酸またはそのエステルからなる重合体、ポリエステル等の弱溶剤可溶性塗料用樹脂を含有していてもよい。
【0044】
塗料用組成物における弱溶剤(C)の量は、(A)成分の溶解性、塗料用組成物を塗料として塗装する際の適度な粘度、塗装方法などを考慮して適宜決定される。
【0045】
本発明の塗料用組成物は、二液タイプの塗料として、使用前に硬化剤と混合されて用いられる。
【0046】
≪塗料≫
本発明の塗料は、本発明の塗料用組成物および硬化剤を含有する。
該硬化剤としては、(A)成分中の水酸基と架橋可能な硬化剤が好ましく、例えばイソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤、メラミン系硬化剤等の塗料用硬化剤が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の無黄変イソシアネート類が挙げられる。
ブロックイソシアネート系硬化剤としては、イソシアネート硬化剤のイソシアネート基をカプロラクタム、イソホロン、β−ジケトン等でブロックしたものが挙げられる。
メラミン系硬化剤としては、ブチル化メラミン等の低級アルコールによりエーテル化されたメラミン、エポキシ変性メラミン等が挙げられる。
【0047】
塗料における硬化剤の含有量は、塗料用組成物中の(A)成分100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
硬化剤が1質量部以上であると、塗膜の耐溶剤性と硬度が充分であり、硬化剤が100質量部以下であると、加工性、耐衝撃性に優れるため好ましい。
【0048】
本発明の塗料は、必要に応じて、他の機能性配合剤を含有することが好ましい。他の機能性配合剤としては、着色顔料、染料、塗膜の付着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤、界面活性剤、表面調整剤等が挙げられる。
着色顔料、染料としては、耐候性の良いカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料、染料等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
硬化促進剤としては、イソシアネート系硬化剤用にジブチルスズジラウレート等、メラミン系硬化剤用にパラトルエンスルホン酸等の酸性触媒が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(以上、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等が挙げられ、つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの塗膜を形成できる。
界面活性剤は、表面張力を制御するため、特定の成分の表面濃度の調整に有効である。界面活性剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型のいずれでもよく、レオレックスASE(第一工業製薬社製、商品名)、ホモゲノールL−18(花王社製、商品名)等が挙げられる。
表面調整剤としては、フッ素系のサーフロンS382(旭硝子社製、商品名)、アクリル系のモダフロー(モンサント社製、商品名)、レオファットシリーズ(花王社製、商品名)等が挙げられる。
【0049】
本発明の塗料の製造は、本発明の塗料用組成物、硬化剤、必要に応じて添加される機能性配合剤を混合することにより行うことができる。
その混合順序は特に限定されず、本発明の塗料用組成物と添加剤を予め混合し、それに硬化剤を混合してもよく、本発明の塗料用組成物および硬化剤を混合し、次いで添加剤を混合してもよく、これらを同時に混合してもよい。
【0050】
本発明の塗料を用いて塗装する方法としては、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーター等の任意の方法を適用できる。
【0051】
塗装される物品材質としては、コンクリート、自然石、ガラス等の無機物、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属、プラスチック、ポリカーボネート、ゴム、接着剤、木材等の有機物が挙げられる。特に、すでに形成された塗膜の表面への塗装に適する。また有機無機複合材であるFRP、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等の塗装にも適する。
【0052】
また塗装される物品としては、自動車、電車、航空機等の輸送用機器、橋梁部材、鉄塔などの土木部材、防水材シート、タンク、パイプ等の産業機材、ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等の建築部材、道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁等の道路部材、透明透光板、通信機材、電気および電子部品等が挙げられる。
【0053】
【実施例】
本発明をより詳細に説明するために実施例(例1が実施例、例2〜4が比較例)を示す。本発明は、これらの例によって何ら制限されない。
【0054】
(含フッ素共重合体Aの製造)
内容積2000mLのステンレス製撹拌機付きオートクレーブに、組成がシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の263g、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2−EHVE)の182g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の107gである二重結合含有モノマー混合物と、キシレンの670g、エタノールの189gおよび炭酸カリウムの9.5gを入れ、窒素により溶存酸素を除去した。
その後、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の505gをオートクレーブ中に導入して徐々に昇温し、65℃に達した後、tert−ブチルパーオキシピバレートの50%キシレン溶液の7.0gを7時間かけてオートクレーブ中に導入し、その後さらに15時間撹拌した後、反応を停止した。
得られた含フッ素共重合体のキシレン溶液をエバポレーションしながらミネラルスピリットへの溶媒置換を行い、不揮発分を60質量%にした後、水素添加無水フタル酸の5.8gを添加し、さらにトリエチルアミンの0.05gを添加した後、フラスコを徐々に昇温した。フラスコ内の温度が70℃に達した後、その温度を2時間保持し、Mnが7300、OHVが46mgKOH/g、AVが2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Aのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を得た。
【0055】
(含フッ素共重合体Fの製造)
含フッ素共重合体Aの製造において、二重結合含有モノマーの組成をCHVEの263g、イソプロピルビニルエーテル(IPVE)の182g、HBVEの107gとした以外は含フッ素共重合体Aの製造と同様にして、Mnが7500、OHVが46mgKOH/g、AVが2mgKOH/g、Tgが30℃である含フッ素共重合体Fのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を得た。
含フッ素共重合体Fは、炭素数3以上の分岐状アルキル基含有モノマーを含有しない点で、本発明に相当しない。
【0056】
得られた含フッ素共重合体A、Fのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)を1として、ミネラルスピリットを用いて白濁するまで希釈を行い、希釈可能倍率(ミネラルスピリット希釈性)を求めた。
【0057】
表1に、含フッ素共重合体A、Fのモノマー組成(モル%)、OHV、AV、Mnおよびミネラルスピリット希釈性を示す。なお、含フッ素共重合体Aは、10倍に希釈した時点でも全く白濁が見られなかったため、ミネラルスピリット希釈性が10倍以上とした。
塗装作業においては、塗装に使用した器具をミネラルスピリットを用いて洗浄する際に、ミネラルスピリット希釈性が4倍未満では未溶解の樹脂が器具に残留し、塗装作業性に悪影響を及ぼすため、塗料用の含フッ素共重合体には、4倍以上のミネラルスピリット希釈性を有することが望まれている。本発明の含フッ素共重合体Aは、10倍以上の優れたミネラルスピリット希釈性を有しており、塗料用として好適なものであった。これに対し、含フッ素共重合体Fのミネラルスピリット希釈性は3倍であり、塗料用として好ましくないものであった。
【0058】
【表1】
【0059】
[例1〜4]
含フッ素共重合体A、Fのミネラルスピリット溶液(不揮発分60質量%)の表2に示す量(質量部)に対し、ミネラルスピリットの50質量部および酸化チタン「D−918」(堺化学社製、商品名)の50質量部を混合し、グラインドミルで60分間分散せしめて白色ミルベースを得た。これに、表2に示す量(質量部)の、「ヒタロイド6500」(日立化成工業社製、商品名;ミネラルターペンを溶媒に用いたアクリルポリオール樹脂のNAD)およびミネラルスピリット可溶型イソシアネート硬化剤「タケネートD−177N」(三井武田ケミカル社製、商品名)を加えて塗料A、Fを調製した。
【0060】
塗料A、Fを、イワタカップ(粘度調整用器具)で30秒になるようにミネラルスピリットで希釈し、粘度調整を行って評価用塗料A、Fとし、下記の評価に用いた。結果を表2に示す。
「タレ試験」
評価用塗料A、Fを、平面に置いたアルミ板上に、20μmから100μmまでの膜厚(乾燥塗膜)となるように塗膜を傾斜塗装し、すぐにアルミ板を垂直にセットした。
そのまま室温で7日間放置した後、タレの生じない最大膜厚(μm)を測定した。
「塗膜光沢」
クロメート処理したアルミ板の表面に、白色の溶剤型アクリルウレタン塗料を25μmの膜厚で塗装して塗膜を形成した。塗膜の表面に、評価用塗料A、Fを30μmの膜厚になるよう塗装して塗膜を形成し、試験板とした。これを室温で7日間養生した後、鏡面光沢度計を用いて60°光沢を測定することによって塗膜光沢を評価した。
「耐候性」
上記「塗膜光沢」の評価に用いた試験板を、キセノンウェザーメーター(X−75、スガ試験機社製)を用い、JIS 5600−7−7に準拠して促進耐候性試験を行い、5000時間後の光沢を、「塗膜光沢」と同様にして測定し、その光沢保持率(%)を、[促進耐候性試験後の60°光沢/促進耐候性試験前の60°光沢]により算出して耐候性を評価した。
「塗膜硬度」
上記「塗膜光沢」の評価に用いた試験板を用い、JIS 5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定し、塗膜硬度を評価した。
【0061】
【表2】
【0062】
表2において、含フッ素共重合体Aおよびタケネート6500を使用した例1の塗料を用いた塗膜は、全ての評価項目において優れていた。
これに対し、含フッ素共重合体Fを使用した例2の塗料を用いた塗膜は、塗膜光沢が低かった。これは、含フッ素共重合体Fの弱溶剤に対する溶解性が低く、弱溶剤溶液とならなかったために、顔料分散性がよくなかったことが原因であると考えられる。
また、タケネート6500を用いなかった例3の塗料を用いた塗膜は、タレ試験の評価が低く、塗装作業性がよくなかった。
また、含フッ素共重合体を含まず、タケネート6500のみを用いた例4の塗料を用いた塗膜は、塗膜光沢が低く、耐候性も悪かった。また、塗膜硬度も低かった。
【0063】
【発明の効果】
上述のように、本発明の塗料用組成物および塗料は、含フッ素共重合体の有機溶剤溶液により耐候性に優れ、顔料分散性に優れ、非水分散液により塗装作業性に優れ、弱溶剤を媒体とし、すでに形成された塗膜を痛めずにその表面に塗膜が形成でき、高硬度の塗膜を形成できる。
Claims (2)
- フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合含有モノマーとの共重合体であり、フルオロオレフィンに基づくフッ素の含有量が10質量%以上であり、二重結合含有モノマーのうち、10〜30モル%が水酸基を含有し、20〜80モル%が炭素数3以上の分岐状アルキル基を含有することを特徴とする弱溶剤可溶性の含フッ素共重合体(A)、弱溶剤に溶解ないし膨潤可能な分散安定化剤の存在下、弱溶剤に可溶なビニル系モノマーを弱溶剤中で分散重合させて得られる、弱溶剤不溶性のビニル系重合体からなる非水分散液分散体(B)、および弱溶剤(C)を含有する塗料用組成物。
- 請求項1に記載の塗料用組成物および硬化剤を含有する塗料。
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