JP2004277356A - 脂肪族カルボン酸化合物の製造方法 - Google Patents

脂肪族カルボン酸化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】脂肪族ニトリル化合物から、触媒の分離操作を必要とせず、簡便で、かつ、工業的な処理操作により、本質的に無機塩の副生を伴うことなしに、高収率で、対応する脂肪族カルボン酸化合物を製造する方法を提供すること。更には、脂肪族多価ニトリル化合物から、重合、分解等の副反応を抑制しつつ、高収率で脂肪族多価カルボン酸化合物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】脂肪族ニトリル化合物を、水又は、アンモニア及び/又はアミンの水溶液の共存下で、100〜450℃の範囲において加水分解反応を行うと共に、該反応の系内から100〜450℃の範囲においてアンモニア及び/又はアミンを水と共に除去することを特徴とする、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
【選択図】 選択図なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪族ニトリル化合物を液相にて加水分解を行い、対応する脂肪族カルボン酸化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニトリル化合物から対応するカルボン酸化合物を製造する方法としては、従来から様々な方法が知られている。
一般的には、無機酸、又は無機塩基を用いた加水分解反応により製造する方法がよく知られている(非特許文献1)。しかしながら、これらの方法では、生成するカルボン酸塩をカルボン酸に転換する際に、少なくともカルボン酸基と等モル数の無機塩が副生するため、その分離が工業的には簡便に行えない。
【0003】
別法として、触媒を用いた加水分解方法が知られている。触媒としては金属触媒(特許公報1)、無機固体触媒等、多様なものが使用されているが、これらの場合には、反応後の触媒の分離工程を必要とし、分離された触媒は大量の廃棄物となるか、新たな触媒再生工程が必要となる。金属触媒を用いる場合、通常、生成したカルボン酸により溶出した触媒由来の金属成分が、製品であるカルボン酸化合物に混入し、純度の低下、物性の低下及び着色の原因となるため、溶出金属成分の除去工程が更に必要となり、工業的に簡便な製造方法とは言えない。
【0004】
また超臨界水を用いたアセトニトリルの加水分解方法が知られている(非特許文献2)。この方法においては、反応系内からのアンモニア除去工程が存在しないためにニトリル基は加水分解を受けるが、その操作によって得られる生成物はアミド化合物とカルボン酸化合物の平衡組成混合物であり、カルボン酸化合物単一の収率は低いものである。
【0005】
特に、2価以上の多価ニトリル化合物から対応する多価カルボン酸の合成を行った場合には、アミドとカルボン酸の平衡組成混合物となる。その混合物は、モノカルボン酸化合物などの中間体も含むために、目的物である多価カルボン酸化合物の選択率は非常に低く、通常20%以下である。本発明者等がアジポニトリルからのアジピン酸合成、及び1,3,6−トリシアノヘキサンからの1,3,6−ヘキサントリカルボン酸合成を該反応条件下で行ったところ、共に当該カルボン酸化合物の収率は10〜20%であった。
また、例えば、特許文献2において、ニトリル化合物を変異微生物を用いて加水分解し、対応するカルボン酸類を製造する方法が知られている。この方法によると、高収率でカルボン酸化合物が得られるが、微生物を用いるために反応後に精密な分離工程が必要であり、また非常に長い反応時間が必要である。更に、対応するニトリル化合物に適した微生物を用意することが必ずしも容易ではない。
【0006】
ところで、特許文献3において、芳香族ニトリル類の水溶液を200ないし300℃で加水分解反応を行い、ニトリル、アミド及びカルボン酸が平衡組成となった加水分解混合物を生成させ、更に、200ないし300℃で、当該温度下での自然発生圧力下において加水分解させつつ、水蒸気とアンモニア蒸気を抜き取り、芳香族カルボン酸を析出、沈殿させるために冷却し濾過することにより、固体の芳香族カルボン酸を得る方法が開示されている。この方法で得られる芳香族カルボン酸類は、比較的結晶性が高く、水に対して難溶性であるため、芳香族カルボン酸化合物を析出させて取り出すことは容易である。
これに対し、脂肪族カルボン酸、特に、多価の脂肪族カルボン酸は、水に対する高い溶解性を持つ化合物が多い。そのため、その溶解度や温度にも左右されるが、反応系からアンモニア及び/又はアミンを除去することによって、上記の方法のように脂肪族カルボン酸化合物を析出させることは、通常、困難である。
【0007】
【非特許文献1】
実験化学講座第22巻(第4版)(丸善株式会社)
【非特許文献2】
Chem. Eng. Technol. 22(1999)
【特許公報1】
特開昭54−103802号公報
【特許文献2】
特開2001−120290号公報
【特許文献3】
特開昭48−81828号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、脂肪族ニトリル化合物から、触媒の分離操作を必要とせず、簡便で、かつ、工業的な処理操作により、本質的に無機塩の副生を伴うことなしに、高収率で、対応する脂肪族カルボン酸化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
更には、本発明は、脂肪族多価ニトリル化合物から、重合、分解等の副反応を抑制しつつ、高収率で脂肪族多価カルボン酸化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った。特に、脂肪族ニトリル化合物を、水、又はアンモニア及び/又はアミンの水溶液との共存下における加水分解に関し、鋭意検討を行った。
その結果、脂肪族ニトリル化合物を、水又は、アンモニア及び/又はアミンの水溶液との共存下において、特定の温度範囲で加水分解を行い、更に、特定の温度範囲で反応系中からアンモニア及び/又はアミンを抜き出しつつ更なる加水分解を行うことにより、対応する脂肪族カルボン酸化合物が高収率で得られ、しかも無機塩の副生を伴わず、かつ、重合、分解等による副反応を低く抑え、脂肪族カルボン酸化合物を得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 脂肪族ニトリル化合物を、該ニトリル化合物のニトリル基のモル数の2当量以上の水又は、該ニトリル化合物のニトリル基のモル数の2当量以上の水を有するアンモニア及び/又はアミンの水溶液との共存下で、100〜450℃の範囲において加水分解反応を行うと共に、該反応の系内から100〜450℃の範囲においてアンモニア及び/又はアミンを水と共に除去することを特徴とする、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
(2) 脂肪族ニトリル化合物をアンモニア水溶液との共存下において100〜450℃の範囲において加水分解反応を行うと共に、該反応の系内から100〜450℃の範囲においてアンモニアを水と共に除去することを特徴とする(1)に記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
(3) 加水分解工程の温度範囲が200〜390℃、かつ、アンモニア及び/又はアミンの除去工程の温度範囲が100〜390℃である(1)又は(2)記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
(4) 脂肪族ニトリル化合物が脂肪族多価ニトリル化合物である(2)又は(3)記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
(5)脂肪族ニトリル化合物が1,3,6−トリシアノヘキサンである(2)又は(3)記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、広範囲の脂肪族カルボン酸の製造に適用できる。本発明に用いられる脂肪族ニトリル化合物は、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素ニトリル基が少なくとも1個結合した化合物である。脂肪族ニトリル化合物の例として、アセトニトリル、プロピオニトリル、グリコロニトリル、グルタロニトリル、サクシノニトリル、アセトンシアンヒドリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、イソクロトノニトリル、α,β−ジメチルアクリロニトリル、β,β−ジメチルアクリロニトリル等があげられる。好ましくは、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素にニトリル基が複数結合した多価ニトリル化合物である。多価ニトリル化合物の例として、アジポニトリル、1,3,6−トリシアノヘキサン、1,2,4−トリシアノブタン等が挙げられる。
【0012】
ニトリル基以外に、一般的に加水分解を受けない置換基、例えば、水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、フェニル基(−Ph)、ニトロ基(−NO)、ケトン基(−CO−)などの官能基を、一つ又は複数含有する脂肪族ニトリル化合物であってもよい。
本発明における加水分解反応は、水又は、アンモニア及び/又はアミンの水溶液の共存下において行われる。アンモニア及び/又はアミンを共存させることにより反応速度を一層向上させることが可能である。
【0013】
脂肪族ニトリル化合物の加水分解反応に際して、脂肪族ニトリル化合物のニトリル基のモル数の2当量以上、好ましくは5〜400当量以上の水、又は該ニトリル化合物のニトリル基のモル数の2当量以上、好ましくは5〜400当量以上の水を有するアンモニア及び/又はアミンの水溶液との共存下で加水分解反応を行うことが必要である。アンモニア及びアミンの量に関しては、原料のニトリル基のモル数に対して、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.1〜10当量のアンモニア及び/又はアミンを用いた時に反応速度に与える効果が顕著になる。
【0014】
脂肪族ニトリル化合物の加水分解に際して用いられるアミンは、好ましくはアンモニアと同程度の塩基性を有する化合物である。アミンは、加水分解時に適当なヒドロキシルイオン濃度をもたらす効果を有しており、加水分解条件下に充分な水溶性をもつ任意のアミンを使用できる。好ましくは揮発性を有し、カルボン酸との分離が容易なものである。
アミンを選択する場合、アミノ基以外の官能基を併せもつアミンを利用する時は、例えば、2つのアミン分子間の反応等、副反応の可能性を考慮して、ニトリル化合物の加水分解反応を阻害する副反応を引き起こす可能性を持ったアミンの使用を避ける。具体的には、操作条件に応じ、エーテル、ハロゲン原子、ニトロ基又は不飽和基のような官能基をもつアミンは、それぞれ、開裂、加水分解、熱分解、重合又は付加反応を生じる可能性がある。アルカノールアミンを用いる場合、エステル化反応が生じる可能性がある。
【0015】
本発明に用いられるアミンとしては三級アミンが好ましい。一級又は二級アミンも使用することもできる。これらは、加熱により分解し、モノ−又はジアルキルアミドを形成しやすい。隣接炭素原子に結合した2つのカルボキシル基をもつアミンは他のものより遥かに容易に分解し、対応するN−アルキルイミドを作る傾向がある。アミド及びイミドは加水分解工程に循環してアミンに再度変えることができるが、三級アミンを使用する場合に比べて処理工程に負担がかかる場合がある。
【0016】
特に好ましい三級アミンの例としては、トリメチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’‐テトラメチル−1,3−プロピレンジアミン等が挙げられる。他の好ましい三級アミンは、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’‐テトラ−1、3−及び1、4−ブタンジアミン、キヌクリジン及びそれらの同族化合物、並びに環式脂肪族アミン、例えば、ヘキサメチレンテトラミンがある。
【0017】
本発明において、アンモニアとアミンを同時に使用することも可能であり、複数のアミンを同時に使用することも可能である。
本発明において、加水分解反応を行う反応温度は100〜450℃の範囲であり、好ましくは200〜390℃である。反応温度が増加するにつれて副反応が起こりやすくなり、生成するカルボン酸が着色しやすくなる。反応温度が低くなるにつれて反応速度が低下する。反応温度が100℃未満では、反応速度が非常に遅く、450℃を越えると、副反応を併発し、生成するカルボン酸化合物の純度が低下する。その傾向は、特に多価ニトリル化合物から多価カルボン酸化合物を製造する際に顕著である。
【0018】
反応系中の圧力は、例えば、オートクレーブのような密閉反応容器を用いて反応を行う場合には、当該反応温度下における水、又はアンモニア及び/又はアミンがもたらす自然発生圧力下又はそれ以上の圧力下で行うことができる。自然発生圧力とは、密閉反応装置で加水分解反応を行う際に、当該反応温度下における気液平衡状態下での発生圧力を指しており、意図的に圧縮を行うことや、反応に関与しないガスを用いての加圧を行わない場合の圧力を指している。意図的に反応に関与しないガスを用いて、自然発生圧力を超える高圧下に置くことによって反応速度は向上する。
【0019】
連続的に反応させることができる、いわゆる流通反応装置を用いる場合には、どのような圧力下においても反応は可能であるが、一般的には0.1〜30MPaの範囲が用いられる。
ニトリル化合物の加水分解を行う反応容器としては、反応温度及び反応時にかけられる圧力に耐え得る構造及び材質を有するものであれば制限はない。反応形態としては、バッチ式及び連続式のいずれでもよい。反応装置としては、例えば、密閉反応容器、流通反応装置、その他適当な反応容器を用いることができる。
【0020】
高純度、低着色のカルボン酸化合物を得るためには、純度の低下及び/又は製品の着色を誘引する、容器からの金属等の溶出が無い又は極めて少ない材質を用いることが好ましく、そのような材質として、例えば、チタン、ジルコニウム、ハステロイ、インコネル及びこれらに準ずる材質が挙げられる。
次に、アンモニア及び/又はアミンを水と共に除去する工程について説明する。反応系からのアンモニア及び/又はアミンの除去は、脂肪族ニトリル化合物の加水分解反応と平行して行ってもよく,加水分解反応終了後に行ってもよい。脂肪族ニトリル化合物を加水分解して加水分解混合溶液を得る際と同様の理由から、アンモニア及び/又はアミンの除去は100〜450℃、好ましくは100〜390℃の温度範囲において行われる。
【0021】
脂肪族ニトリル化合物の加水分解反応と平行してアンモニア及び/又はアミンの除去を行う場合、アンモニア及び/又はアミンの除去、及びカルボン酸化合物への完全な加水分解に対する負担を考慮して、仕込んだニトリル化合物中のニトリル基のうち、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは95%以上が加水分解され、アミド基又はカルボン酸基に転化された後、アンモニア及び/又はアミンの除去を開始する。
【0022】
アンモニア及び/又はアミンの除去手段は、反応条件に応じて適宜の手段が採用される。例えば、オートクレーブを用いて、加水分解と、アンモニア及び/又はアミンの除去を平行して行う場合、気相中のアンモニア及び/又はアミン蒸気を水蒸気と共に連続的又は断続的に抜き出しつつ、ニトリル及びアミドの加水分解を完結させ、カルボン酸化合物とする方法が好ましく用いられる。同様に、反応器において加圧下に二酸化炭素で処理し、当該カルボン酸化合物を固体又は水溶液で得る方法が好適に用いられる。また、反応蒸留塔を用いて反応蒸留によりアンモニア及び/又はアミンを抜き出す方法、更に、反応蒸留塔を用いて、例えば、二酸化炭素を向流接触させることにより、アンモニア及び/又はアミンを同伴させることによって抜き出し効率を上げることも可能である。
【0023】
なお、上記の反応蒸留とは、反応器からの効果的なアンモニア及び/又はアミンの除去を行いつつ加水分解を行い、遊離カルボン酸を製造することを指す。アンモニア及び/又はアミンが連続的に除去される反応系中においては、アミドとアンモニウム塩との平衡反応はアンモニウム塩側に偏り、高純度の遊離酸を生ずる。加水分解混合物を反応蒸留にかけると、平衡は反応塔内でアミドからアンモニウム塩、ひいてはカルボン酸側へ移行する。なぜならば、装置内の温度条件下にアンモニウム塩は遊離カルボン酸とアンモニアへ転化され、アンモニアは絶えず反応系中から除去されるためである。
【0024】
このようにアミド基の窒素全てが最後にはアンモニアへ転化されるようになり、高純度の遊離カルボン酸が生成物として得られる。遊離したアンモニアを効率よく抜き出し、非常に純度の高いカルボン酸生成物を製造するためには、多数の分別蒸留段階が必要となる。しかしながら、蒸留系へ二酸化炭素を導入することによって、この少量のアンモニアは、炭酸と組み合わさって炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、その他よく知られた加水分解中間体を生成し、反応系中から除去される。その結果、所望のカルボン酸化合物の純度に達するために要する段階数を減少させることが可能である。
【0025】
反応蒸留を用いる方法については、特開昭52−59126号公報に詳しく記載されている。この公報には、芳香族カルボン酸の製造に好適に用いられると記載されているが、芳香族カルボン酸だけでなく、水への溶解性が高く、析出させて濾過により回収することが困難な脂肪族カルボン酸の類に対しても好適に適応できることが今回明らかとなった。
【0026】
脂肪族カルボン酸化合物、特に、一部の多価カルボン酸化合物のように、水への溶解性が高いカルボン酸類を製造する場合には、加水分解反応を完結させたカルボン酸水溶液から、減圧蒸留などの適当な方法を用いて水を除去することによってカルボン酸化合物を得ることができる。
本発明の方法によって、高収率で脂肪族カルボン酸化合物が製造されう、得られる脂肪族カルボン酸化合物は、窒素含有副生物が無い、又は極めて少ない高純度の製品である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
本発明で用いられる測定方法は以下の通りである。
[カルボン酸化合物の測定法]
カルボン酸化合物の純度は、下記方法による高速液体クロマトグラフィー(以下、LC、と略す)による測定により求める。
各測定は、以下の装置及び条件で行う。
【0028】
LC測定:
装置:(株)島津製作所製LC−10A
カラム:(株)島津製作所製SCR−101Hを1本
検出器:RI及びUV(波長210nm)
展開液:過塩素酸水溶液でpH2.2〜2.4の範囲(25℃におけるpH)
カラム温度:40℃
展開液流速:1.0ml/min
過塩素酸:和光純薬工業(株)製(60%濃度、精密分析用)
【0029】
GPC測定:
各化合物2.0mgをテトラヒドロフラン2.0gに溶解し、0.5μmフィルターで濾過を行い、下記の条件で展開、検出することにより分析を行う。
測定装置:東ソー(株)製HLC−8120GPC
検出器:RI
展開液:テトラヒドロフラン
展開液流速:1.0ml/min
カラム:東ソー(株)製TSKgel(登録商標)GMHHR−N1本及びTSKgel(登録商標)G1000HXL2本を直列に設置
カラム温度:40℃
【0030】
【実施例1】
1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の作製
1.2Lオートクレーブ(ハステロイC−276製)に、蒸留精製した1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分として含むニトリル混合物120g(0.745mol)、精製水68.3g(20.33mol)及びアンモニア水(和光純薬(株)製特級、25%)411.7g(6.706mol)を仕込み、密閉し、撹拌羽を用いて撹拌(500rpm)しつつ200℃に昇温して、当該温度下における自然発生圧力下において加水分解反応を行った。8時間加熱後、LCを用いてニトリル基の転化率が100%となったことを確認した。
【0031】
次に、同じく200℃の加熱状態及び圧力を維持しつつ、200〜300ml/hで気相部分からアンモニア及び水の抜き出しを行った。同時に200〜300ml/hで水を加え、反応器中の溶液量を一定に保ちつつ、抜き出し操作を40時間行ったところ、ニトリル基の転化率は100%、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の選択率は95%であった。その後、反応溶液を取り出し、エバポレーターを用いて反応液から水を除去して乾固させ、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の固体を取り出した。
【0032】
【実施例2】
1,3,6−トリシアノヘキサンの加水分解
1.2Lオートクレーブ(ハステロイC−276製)に、蒸留精製した1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分として含むニトリル混合物16.2g(0.101mol)、精製水522.0g(29.0mol)及びアンモニア水(和光純薬(株)製特級、25%)61.2g(0.9mol)を仕込み密閉し、撹拌羽を用いて撹拌(500rpm)しつつ250℃に昇温し、当該温度下における自然発生圧力下において加水分解反応を行った。3.5時間反応後、LCを用いてニトリル基のConv.が100%となったことを確認した。また、同様の仕込みにおいて290℃に昇温し、当該温度下における自然発生圧力下において加水分解を行ったところ、1時間反応後にニトリル基の転化率が100%となったことが確認された。
更に同様の仕込みにおいて350℃、374℃、390℃の温度条件下においてそれぞれ加水分解を行ったところ、それぞれ20分、30分、35分の反応時間をもってニトリル基の転化率が100%となったことが確認された。
【0033】
【実施例3】
1,3,6−トリシアノヘキサンの加水分解
予めオーブンを用いて350℃に加熱しておいたチューブリアクター(φ1/8インチ、長さ10m、SUS316製)に、2つのポンプを用いて、それぞれのポンプから蒸留精製した1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分として含むニトリル混合物及び精製水をチューブリアクターへフィードした。ニトリル混合物と精製水の体積比率は1:9でフィードを行い、流通下においてチューブリアクター中でニトリル混合物の加水分解反応を行った。チューブリアクターの出口には背圧弁を設けリアクターの内圧を15〜20MPaにコントロールして反応液を抜き出した。
【0034】
ニトリル混合物と精製水のフィード速度を変化させることにより加熱時間を変化させたところ、加熱時間25分でニトリル基の転化率が100%となることが確認された。続いて250〜300℃に加熱した反応蒸留塔に該反応液をフィードし、アンモニア蒸気を反応蒸留塔上部から抜き出しつつ更に加水分解を行ったところ、1,3,6−トリシアノヘキサンの水溶液が得られ、選択率は99%であった。
【0035】
【比較例1】
密閉条件下での加水分解
1.2Lオートクレーブ(ハステロイC−276製)に、蒸留精製した1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分として含むニトリル混合物16.2g(0.101mol)、精製水522.0g(29.0mol)及びアンモニア水(和光純薬(株)製特級、25%)61.2g(0.9mol)を仕込み、密閉し、撹拌羽を用いて撹拌(500rpm)しつつ250℃に昇温し、当該温度下における自然発生圧力下において加水分解反応を行った。3.5時間反応後、LCを用いてニトリル基の転化率が100%となったことを確認した。その時、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の選択率は15%であった。
【0036】
更に1時間同一条件下で反応を続けたが、選択率に変化は無かった。また、予めオーブンを用いて350℃に加熱しておいたチューブリアクター(φ1/8インチ、長さ10m、SUS316製)に2つのポンプを用いて、それぞれのポンプからアジポニトリル及び精製水をチューブリアクターへフィードした。アジポニトリルと精製水の比率は1:9でフィードを行い、流通下においてチューブリアクター中でアジポニトリルの加水分解反応を行った。チューブリアクターの出口には背圧弁を設けリアクターの内圧を15〜20MPaにコントロールして反応後の水溶液を抜き出した。
【0037】
アジポニトリルと精製水のフィード速度を変化させることにより加熱時間を変化させたところ、加熱時間1時間でニトリル基の転化率が100%となり、反応中間体であるアミド化合物とアジピン酸の混合物が得られることが確認された。この時のアジピン酸の選択率は19%であった。フィード速度を変化させ加熱時間を2時間としても選択率に変化はなかった。
【0038】
【比較例2】
1,3,6−トリシアノヘキサンの高温での加水分解
チューブリアクター(ハステロイC−276製)に、蒸留精製した1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分として含むニトリル混合物0.411g(2.55×10−4mol)、精製水13.44g(0.747mol)及びアンモニア水(和光純薬(株)製特級、25%)1.562g(2.30×10−2mol)を仕込み、密閉し、予め460℃に加熱した溶融塩バスに入れ、当該温度下における自然発生圧力下において加水分解反応を行った。
【0039】
25分反応後、LCを用いてニトリル基の転化率が100%となったことを確認した。この時、加水分解反応液は1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、該カルボン酸への反応中間体であるアミド化合物、及びカルボン酸化合物と共に、水に難溶の沈殿物の存在が確認された。この沈殿物をテトラヒドロフランに溶解させてGPC測定を行ったところ、高分子量体であることが確認された。また、該反応溶液をGC−MSにより分析したところ、変性したモノカルボン酸が副生していることがわかった。
【0040】
【比較例3】
1,3,6−トリシアノヘキサンの低温での加水分解
1.2Lオートクレーブ(ハステロイC−276製)に、蒸留精製した1,3,6−トリシアノヘキサンを主成分として含むニトリル混合物16.2g(0.101mol)、精製水522.0g(29.0mol)及びアンモニア水(和光純薬(株)製特級、25%)61.2g(0.9mol)を仕込み、密閉し、撹拌羽を用いて撹拌(500rpm)しつつ90℃に昇温し、当該温度下における自然発生圧力下において加水分解反応を行った。
8時間反応後、LC測定を行ったところ、ニトリル基の転化率は55%であった。38時間反応後、LC測定を行ったところニトリル基の転化率が100%となったことを確認した。
【0041】
【実施例4】
アジポニトリルの加水分解
予めオーブンを用いて350℃に加熱しておいたチューブリアクター(φ1/8インチ、長さ10m、SUS316製)に、2つのポンプを用いて、それぞれのポンプからアジポニトリル及び精製水をチューブリアクターへフィードした。アジポニトリルと精製水の体積比率は1:9でフィードを行い、流通下においてチューブリアクター中でアジポニトリルの加水分解反応を行った。チューブリアクターの出口には背圧弁を設けリアクターの内圧を15〜20MPaにコントロールして反応後の水溶液を抜き出した。
【0042】
アジポニトリルと精製水のフィード速度を変化させることにより加熱時間を変化させたところ、加熱時間1時間でニトリル基の転化率が100%となり、反応中間体であるアミド化合物とアジピン酸の混合物が得られることが確認された。次に、得られた反応溶液をオートクレーブ中で200℃に加熱し、200〜300ml/hで気相部分からアンモニア及び水の抜き出しを行った。同時に200〜300ml/hで水を加え、反応器中の溶液量を一定に保ちつつ、抜き出し操作を25時間行ったところ、ニトリル基の転化率は100%、アジピン酸の選択率は98%であった。その後、反応溶液を取り出し、エバポレーターを用いて反応液から水を除去して乾固させアジピン酸の固体を取り出した。
【0043】
【発明の効果】
本発明において、脂肪族ニトリル化合物を、水、又はアンモニア又は/およびアミン水溶液を用いて加水分解することにより、触媒、無機塩の分離操作なしに、高収率で対応する脂肪族カルボン酸化合物を製造することができる。
更には、脂肪族多価ニトリル化合物から、重合、分解等の副反応を抑制しつつ、高収率で脂肪族多価カルボン酸化合物を製造することができる。

Claims (5)

  1. 脂肪族ニトリル化合物を、該ニトリル化合物のニトリル基のモル数の2当量以上の水又は、該ニトリル化合物のニトリル基のモル数の2当量以上の水を有するアンモニア及び/又はアミンの水溶液との共存下で、100〜450℃の範囲において加水分解反応を行うと共に、該反応の系内から100〜450℃の範囲においてアンモニア及び/又はアミンを水と共に除去することを特徴とする、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
  2. 脂肪族ニトリル化合物を、アンモニア水溶液との共存下において100〜450℃の範囲において加水分解反応を行うと共に、該反応の系内から100〜450℃の範囲においてアンモニアを水と共に除去することを特徴とする請求項1記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
  3. 加水分解工程の温度範囲が200〜390℃、かつ、アンモニア及び/又はアミンの除去工程の温度範囲が100〜390℃である請求項1又は2記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
  4. 脂肪族ニトリル化合物が脂肪族多価ニトリル化合物である請求項2又は3記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
  5. 脂肪族ニトリル化合物が1,3,6−トリシアノヘキサンである請求項2又は3記載の、対応する脂肪族カルボン酸化合物の製造方法。
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