JP2004276717A - フードヒンジ - Google Patents

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Tetsuya Nagasaki
哲也 長崎
Hiroaki Iwamoto
宏明 岩本
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Abstract

【課題】小型かつ安価な構成で、フード前方からの衝撃によるフードの後方への移動を阻止すると共に、フード上方からの衝撃を吸収することができるフードヒンジを得る。
【解決手段】フード14を車体Sに対し開閉可能に連結するフードヒンジ10は、フード14に取り付けられるヒンジアーム20と、車体Sに取り付けられヒンジアーム20を回動可能に支持するヒンジブラケット18とを備えている。ヒンジアーム20に一体に設けられてたフック部50は、フード14を閉じているときにヒンジブラケット18のヒンジプレート24に前方から係合可能に位置し、かつ上方から衝撃が作用するとヒンジブラケット18のベースプレート22に上側から係合しつつ変形して該衝撃を吸収するようになっている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車等の車両の車体構造部材にフードを開閉可能に取り付けるためのフードヒンジに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両では、その車体の構造部材にフードを開閉可能に取り付けるために、フードヒンジが用いられている。フードヒンジは、フードに固定されるヒンジアームと、ピン結合等によってヒンジアームを回動可能に支持し車体の構造部材に固定されるヒンジブラケットとを備えて構成されている。
【0003】
このようなフードヒンジにおいて、車両衝突時の乗員または歩行者保護のために、従来から種々の工夫が為されている(例えば、特許文献1乃至特許文献6参照)。
【0004】
特許文献1には、前方からの衝突によってフードに後方への荷重が作用した際に、ヒンジアームとヒンジブラケットとが分離してフードが車室内に侵入するのを防止するために、ヒンジアームにフック部を設けると共に該フック部が係合可能な段差部をヒンジブラケットにおけるフック部の後方に設けた構成が記載されている。この構成により、フードに後方への荷重が作用しても、フックが段差部に係合することで、フードが車室に侵入することが防止され、車両乗員が保護される。
【0005】
また、特許文献2には、上記フックに代えて突起をヒンジアームに設け、該突起が係合可能なストッパをヒンジブラケットに設けた構成が記載されており、フードに後方への荷重が作用した場合について、上記特許文献1の構成と同様の作用効果が得られる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1または特許文献2では、例えば、衝突によってフード上に乗り上げた歩行者の頭部がフードに2次衝突し該フードに上方からの衝撃が作用する場合については何ら考慮されていなかった。すなわち、フードに上方から作用する衝撃については、フード自体の変形によって吸収しなければらず、上記歩行者に対する2次傷害防止の対策として十分ではなかった。
【0007】
これに対し、特許文献3乃至特許文献6には、フードに上方から作用する衝撃を吸収する構成が記載されている。
【0008】
特許文献3には、ヒンジブラケットにおける上下方向に沿うアーム部(立上部)の中間部に屈曲部を設け、屈曲部が座屈することでフード上方からの衝撃を吸収する構成が記載されている。しかしながら、この構成では、通常はヒンジアームを回動可能に支持するヒンジブラケット(屈曲部)自体が座屈して衝撃を吸収するため、該衝撃吸収ストロークに応じてヒンジブラケットを大型化しなければらず、フードヒンジが全体として大型であった。すなわち、ヒンジブラケットは、変形して衝撃吸収する機能を果たす部分を、ヒンジアームを回動可能に支持する機能とは上下方向の別の部分で構成しているため、上下方向に大型であると共に剛性の確保が困難となる。また、上記屈曲部をヒンジアーム側に設けた場合にも、上記と同様の問題(この場合、フードヒンジはヒンジ結合部に対し上側に大きくなる)が生じる。
【0009】
特許文献4には、ヒンジアーム(第2の支持体)と、ヒンジブラケット(第1の支持体)に支持されヒンジアームに係脱着可能に係合するアーム部とを、共に可撓性の形状に形成した構成が記載されている。この構成では、ヒンジアームとアーム部とが共に下方へ撓むことでフード上方からの衝撃を吸収するようになっている。しかしながら、この構成では、ヒンジアームと前方からの衝突対策構造であるアーム部とに、形状によって可撓性を与えるために、それぞれの先端からヒンジ結合部位までの距離(車幅方向の距離)が大きく、フードヒンジが全体として車幅方向に大型であった。
【0010】
特許文献5には、ヒンジアームの下方に、車体に固定された別部材のヒンジキャッチャを配設し、該ヒンジキャッチャを変形させることでフード上方からの衝撃を吸収する構成が記載されている。しかしながら、この構成では、フードヒンジとは別部材のヒンジキャッチャを設ける必要があり、部品点数及び組付工数が増加し高コストの原因となると共に、フードヒンジを含む衝撃吸収構造が全体として大型であった。また、特許文献5には、別例として、上記ヒンジキャッチャに相当する衝撃吸収部をヒンジブラケットに一体化した構成が記載されているが、この場合、上記特許文献3の構成と同様に、ヒンジブラケット自体が上下方向に大型であった。換言すれば、特許文献5記載の各構成では、ヒンジアームの下方に位置するヒンジキャッチャまたは衝撃吸収部が、自らの変形によってヒンジアームが下方に移動する空間を創出する構成であるため、該ヒンジアームの下方には変形後の衝撃吸収部が存在する空間が必要であり、フードヒンジを含む衝撃吸収構造の設置スペースが大きいという問題があった。
【0011】
特許文献6には、リインフォースメントを介してヒンジアームをフードに固定し、該リインフォースメントを変形させることでフード上方からの衝撃を吸収する構成が記載されている。この場合も、別部材であるリインフォースメントを設けるため、部品点数及び組付工数が増加し高コストの原因となる。また、フードヒンジを含む衝撃吸収構造が全体として大型であった。
【0012】
【特許文献1】
実開昭60−96176号公報
【特許文献2】
実公平5−1501号公報
【特許文献3】
特開平11−291948号公報
【特許文献4】
特開2001−354164号公報
【特許文献5】
特開2002−145121号公報
【特許文献6】
特開2002−316668号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事実を考慮して、小型かつ安価な構成で、フード前方からの衝撃によるフードの後方への移動を阻止すると共に、フード上方からの衝撃を吸収することができるフードヒンジを得ることが目的である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係るフードヒンジは、フードを車体に対し開閉可能に連結するフードヒンジであって、前記フードに取り付けられるヒンジアームと、前記車体に取り付けられ、前記ヒンジアームを回動可能に支持するヒンジブラケットと、前記ヒンジアームに一体に設けられ、前記フードを閉じているときに前記ヒンジブラケットに前方から係合可能に位置し、かつ上方から衝撃が作用すると前記ヒンジブラケットに上側から係合しつつ変形して該衝撃を吸収するフック部と、を備えている。
【0015】
請求項1記載のフードヒンジでは、ヒンジブラケットが車体に取り付けられると共に、ヒンジアームがフードに取り付けられる。そして、ヒンジブラケットに対しヒンジアームが回動することで、フードが車体に対し開閉される。
【0016】
フードに前方から衝撃が作用すると、該フードがヒンジアームと共に後方へ移動しようとするが、該移動はヒンジアームに設けられたフック部がヒンジブラケットに前方から係合することで阻止される。一方、フードに上方から衝撃が作用すると、ヒンジアームに設けられたフック部がヒンジブラケットに上側から係合しつつ変形して該衝撃を吸収する。これにより、フード上方からの衝撃がフードヒンジによって吸収される。
【0017】
ここで、フック部がヒンジアームに一体に設けられているため、フードヒンジの部品点数及び組付工数を増加させることがなく、上記の如くフードの後方への移動を阻止する機能とフード上方からの衝撃力を吸収する機能とを果たすことができる。また、フック部は、ヒンジアームに一体に設けられてその近傍に位置するヒンジブラケットに前方及び上方から係合可能に配置されるため、小型である。すなわち、ヒンジブラケットに対し前方及び上方から係合可能であるフック部は、ヒンジブラケットの高さ方向及び幅方向に突出する部分がないか、または該部分が極めて小さく構成され、上記各機能を果たすフードヒンジが全体として小型化される。以上により、フードヒンジは、全体として小型で、かつ安価に製造することができる。
【0018】
このように、請求項1記載のフードヒンジでは、小型かつ安価な構成で、フード前方からの衝撃によるフードの後方への移動を阻止すると共に、フード上方からの衝撃を吸収することができる。
【0019】
また、上記目的を達成するために請求項2記載の発明に係るフードヒンジは、フードを車体に対し開閉可能に連結するフードヒンジであって、前記フードに取り付けられ、車体前後方向に長手のヒンジアームと、前記車体に略水平に取り付けられるベースプレートと、前記ベースプレートから立設され前記ヒンジアームを回動可能に支持するヒンジプレートとを有するヒンジブラケットと、平板状に形成されて前記ヒンジアームに一体に設けられ、前記フードを閉じているときに前記ヒンジプレートに前方から係合可能に位置し、かつ上方から衝撃が作用すると前記ベースプレートに上側から係合しつつ板厚方向に変形して該衝撃を吸収するフック部と、を備えている。
【0020】
請求項2記載のフードヒンジでは、ヒンジブラケットのベースプレートが車体に取り付けられると共に、ヒンジアームがフードに取り付けられる。そして、ヒンジブラケットから立設されたヒンジプレートに回動可能に支持されたヒンジアームが回動することで、フードが車体に対し開閉される。
【0021】
フードに前方からの衝撃力が作用すると、該フードがヒンジアームと共に後方へ移動しようとするが、該移動はヒンジアームに設けられたフック部の端部(板厚部分)がヒンジプレートに前方から係合することで阻止される。一方、フードに上方からの衝撃が作用すると、ヒンジアームに設けられた平板状のフック部がベースプレートに上側から係合しつつ板厚方向に確実に変形して該衝撃を吸収する。これにより、フード上方からの衝撃力がフードヒンジによって吸収される。
【0022】
ここで、フック部がヒンジアームに一体に設けられているため、フードヒンジの部品点数及び組付工数を増加させることがなく、上記の如くフードの後方への移動を阻止する機能とフード上方からの衝撃力を吸収する機能とを果たすことができる。さらに、フック部は、ヒンジアームに一体に設けられてその近傍に位置するヒンジプレート、ベースプレートにそれぞれ前方、上方から係合可能に配置されるため、小型である。すなわち、ヒンジブラケットに対し前方及び上方から係合可能であるフック部は、ヒンジプレートの高さ方向及びベースプレートの幅方向に突出する部分がないか、または該部分が極めて小さく構成され、上記各機能を果たすフードヒンジが全体として小型化される。以上により、フードヒンジは、全体として小型で、かつ安価に製造することができる。
【0023】
また、フック部の上記各係合部位が、ヒンジアームを支持するヒンジプレート及び車体へ取り付けられるベースプレートであり、ヒンジブラケットにおけるフードの開閉機能に必要な部位であるため、該ヒンジブラケットの構造が簡単である。このため、上記各機能を果たすフードヒンジは、その構造が全体として簡単であり、一層安価に製造することが可能である。
【0024】
このように、請求項2記載のフードヒンジでは、小型かつ安価な構成で、フード前方からの衝撃によるフードの後方への移動を阻止すると共に、フード上方からの衝撃を吸収することができる。
【0025】
請求項3記載の発明に係るフードヒンジは、請求項2記載のフードヒンジにおいて、前記フック部を、前記ヒンジアームにおける前記ヒンジブラケットよりも車体前方側に突出した部分から側方に延設され、前記ヒンジプレートの前端に係合可能に位置する前突対応部と、前記前突対応部の先端から車体後方側に延設され、前記フードの上方からの衝撃力が作用した場合に前記ベースプレートの前端近傍に上方から係合しつつ変形する衝撃吸収部と、で構成したことを特徴としている。
【0026】
請求項3記載のフードヒンジでは、フック部が、ヒンジブラケットよりも前方でヒンジアームから側方に延設されヒンジプレートの前端に係合可能な前突対応部と、前突対応部の先端から後方に延設された衝撃吸収部とで構成されている。すなわち、衝撃吸収部は、ヒンジプレートに対しヒンジアーム(の本体)とは反対側に位置し、その自由端である後端側においてベースプレートに上方から係合可能とされている。
【0027】
そして、フック部は、主に衝撃吸収部がベースプレートに係合しつつ板厚方向に変形して衝撃を吸収することとなり、ヒンジプレートに係合してフードの移動を規制する前突対応部の強度を確保しつつ、変形によって衝撃を吸収する衝撃吸収部の寸法形状によって衝撃吸収特性を車種に応じて容易に調整することが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係るフードヒンジ10を適用した自動車車体(以下、短に車体という)Sの前部構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。なお、図中矢印FRは車体前方向を、矢印UPは車体上方向を、矢印INは車幅内側方向をそれぞれ示す。
【0029】
図1には、車体Sの前部の概略構成が斜視図にて示されており、図2には、車体Sにおけるフードヒンジ10の設置状態が側断面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体SのAピラー11よりも前部で左右のフロントフェンダ13間に形成されたエンジンルーム12を覆うフード14は、その後端部における車幅方向両端部近傍14Aが、それぞれ車体前部の骨格部材である左右のエプロンアッパメンバ16にフードヒンジ10を介して取り付けられている。なお、図1は、車体Sの左部を図示している。
【0030】
フードヒンジ10は、ヒンジブラケット18とヒンジアーム20とを備えている。ヒンジブラケット18は、平板状のベースプレート22と、ベースプレート22における車体S内方側の端部から上方に立設された平板状のヒンジプレート24と、ベースプレート22の後端から上方に立設されヒンジプレート24に連続する補強プレート26とを有している。
【0031】
ベースプレート22は、前後一対の取付孔22Aを有しており、該取付孔22A廻りの部分が側方に張り出した形状とされている。また、ヒンジプレート24は、その後端が所定高さの前端24Aよりも高くなるように上縁部が連続的に傾斜して形成されており、その後端における上端近傍に形成されたヒンジ孔24Bを有している。
【0032】
このヒンジブラケット18は、そのベースプレート22をエプロンアッパメンバ16の上部壁16Aの上面に当接(載置)した状態で、ボルト28によって該上部壁16Aに固定的に取り付けられている。具体的には、図2に示される如く、ベースプレート22の取付孔22A及び上部壁16Aを貫通したボルト28を、該上部壁16Aの下面に固着したウェルドナット30に螺合することで、ヒンジブラケット18がエプロンアッパメンバ16すなわち車体Sに固定されている。この状態で、ヒンジプレート24が車体Sの前後方向に沿って配置される。
【0033】
一方、ヒンジアーム20は、平板状に形成され車体Sの略前後方向に長手のアーム本体32を有している。アーム本体32の後端部は、ヒンジ孔34Aが形成されてヒンジ連結部34とされている。また、アーム本体32の前部は、前後一対の取付孔36Aが形成されてフード取付部36とされている。フード取付部36における車体Sの内方を向く面には、それぞれの取付孔36Aに対応してウェルドナット38が固着されている(図3参照)。このアーム本体32におけるヒンジ連結部34とフード取付部36との間の部分は、下方に向けて凸となるように湾曲している。
【0034】
このヒンジアーム20は、車体Sに固定されたヒンジブラケット18に回動可能に支持されている。具体的には、ヒンジ孔34Aとヒンジブラケット18のヒンジ孔24Bとには、軸線が車幅方向に沿うヒンジピン40が抜け止め状態で挿通されており、ヒンジアーム20がヒンジブラケット18に対しヒンジピン40廻りの回動可能とされている。アーム本体32は、ヒンジブラケット18に対し車体Sの内方、すなわち、ヒンジプレート24におけるベースプレート22とは反対側に配置されている。
【0035】
また、ヒンジアーム20は、アーム本体32のフード取付部36において、フード14の車幅方向端部に固定されている。具体的には、図2及び図3に示される如く、フード取付部36は、フード14を構成するアッパパネル42とインナパネル44との間に該インナパネル44に形成された挿入孔44Aから入り込んで、該インナパネル44の立上部44Bの内面に当接している。そして、立上部44Bを外側から貫通したボルト46が取付孔36Aを挿通してウェルドナット38に螺合することで、ヒンジアーム20がフード14に固定されている。
【0036】
以上により、フードヒンジ10を介して車体Sに連結されたフード14は、該フードヒンジ10のヒンジピン40廻りに回動してエンジンルーム12の開閉が可能とされる。フード14は、エンジンルーム12を閉塞した状態で、左右のフロントフェンダ13間に位置する構成である。
【0037】
また、フードヒンジ10は、ヒンジアーム20に一体に設けられたフック部50を備えている。アーム本体32は、そのヒンジブラケット18よりも前方に突出した部分(本実施の形態では、フード取付部36)において下方に延設された連結部52を有しており、フック部50は、連結部52から車幅方向外側に張り出した平板状の前突対応部54と、前突対応部54の先端から後方へ延設された平板状の衝撃吸収部56とで構成されている。
【0038】
すなわち、前突対応部54は、連結部52とで正面視略L(逆L)字状を為しており、衝撃吸収部56は、前突対応部54よりも車幅方向に細幅とされてヒンジプレート24に対しベースプレート22側に位置している。そして、前突対応部54は、フード14の閉状態で、ヒンジプレート24の前端24Aの前方を横切って位置しており、ヒンジアーム20に前方からの衝撃力が作用すると前端24Aと係合するようになっている。また、前突対応部54は、フード14の開閉によってヒンジプレート24と干渉しないようになっている。
【0039】
また、衝撃吸収部56は、フード14の閉状態で、ベースプレート22の前端部の上方に位置し、上方からの衝撃力によってヒンジアーム20がヒンジピン40廻りの下向きに回動すると、該ベースプレート22に係合するようになっている。そして、衝撃吸収部56は、ベースプレート22に係合しつつ、上記衝撃力によって前突対応部54との境界部分から板厚方向に屈曲(変形)するようになっている(図4参照)。すなわち、衝撃吸収部56(と前突対応部54との境界部分)がフック部50における脆弱部を構成している。なお、衝撃吸収部56は、フード14の閉状態でベースプレート22から離間しており、フード14の閉動作に伴って異音を発生させないようになっている。
【0040】
このヒンジアーム20のフード14の閉状態からさらに下向きの回動を許容するために、エプロンアッパメンバ16の上部壁16Aは、そのベースプレート22固定部位よりも前側部分が、上部壁16Aよりも低位の逃し部16Bとされている。
【0041】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0042】
上記構成のフードヒンジ10が適用された車体Sでは、エンジンルーム12を開放する際には、フード14をフードヒンジ10のヒンジピン40廻りの上向きに回動する。また、開放したエンジンルーム12をフード14によって閉塞する際には、フード14をヒンジピン40廻りの下向きに回動する。
【0043】
フードヒンジ10は、フード14がエンジンルーム12を閉塞した状態で、ヒンジアーム20に設けられたフック部50の前突対応部54が、ヒンジブラケット18を構成するヒンジプレート24の前端24Aの前方に係合可能に位置している。またこの状態で、フック部50の衝撃吸収部56がベースプレート22の前端部の上方に係合可能に位置している。
【0044】
そして、車体Sの前方からの衝突によって、フード14に前方からの衝撃力が作用すると、フック部50の前突対応部54がヒンジプレート24の前端24Aに係合する。このため、上記衝撃力によって、ヒンジピン40がせん断方向に破断してフード14がヒンジアーム20と共に後方へ移動しようとしても、該移動が上記前突対応部54とヒンジプレート24との係合によって阻止(規制)される。また、ヒンジアーム20は、上記係合状態でアーム本体32とフック部50の衝撃吸収部56との間にヒンジプレート24を挟むように位置するため、フード14が車幅方向にずれながら後方へ移動することも防止される。これにより、フード14が車室内に侵入することが防止され、車体Sの乗員が保護される。
【0045】
また、車体Sが歩行者等に衝突して該歩行者をフード14上に乗り上げさせて1次傷害を防止した後において、該方向者の頭部Hがフード14の後端部における車幅方向端部近傍14Aに上方から衝突した場合、該フード14には上方からの衝撃力が作用する。このとき、図4に示される如く、上記衝撃力によって、フード14は自ら変形して衝撃エネルギを吸収しつつヒンジアーム20をヒンジピン40廻りの下向きに回動させる。
【0046】
すると、ヒンジアーム20に一体に設けられたフック部50の衝撃吸収部56は、ヒンジブラケット18のベースプレート22に係合しつつ変形して衝撃エネルギを吸収する。この衝撃吸収部56及び上記フード14の変形によるエネルギ吸収によって、歩行者の頭部Hに作用する反力が緩和され、該歩行者が2次傷害に対し保護される。そして、ヒンジアーム20がエプロンアッパメンバ16に当接して底付きすると、該ヒンジアーム20またはエプロンアッパメンバ16がわずかに変形してエネルギ吸収が終了する。
【0047】
具体的には、本実施の形態における頭部HのストロークとHIC値(頭部障害基準値であり、衝突エネルギに相当する値)との関係(HIC特性)は、図5に実線にて示される如くなる。すなわち、ストロークの初期から中期にかけて現れる第1の山Y1(HIC値の第1の極大値)が衝撃吸収部56の変形によるエネルギ吸収に対応しており、ストロークの末期に現れる山Y2がヒンジアーム20の底付きによるエネルギ吸収に対応している。一方、図5に一点鎖線にて示される線図は、比較のために示したフード14の変形のみで同じ衝撃エネルギを同じストロークで吸収する場合のHIC特性である。この図5から明らかなように、本実施の形態におけるHIC値の最大値は、フード14の変形のみで衝撃エネルギを同じストロークで吸収する場合のHIC値の最大値に対し、著しく低減されている。
【0048】
なお、図5は、人の頭部Hに相当する衝突体であるヘッドフォームを、フード14におけるフードヒンジ10またはエネルギ吸収機能を備えないフードヒンジの上方から衝突させた場合の試験結果であり、該ヘッドフォームのストロークに対するHIC値の関係を示すものである。
【0049】
ここで、フードヒンジ10では、フック部50がヒンジアームに一体に設けられているため、部品点及び組付工数を増やすことなく、前方からの衝撃力によるフード14の移動規制機能及び上方からの衝撃エネルギの吸収機能が実現されている。また、フードヒンジ10は、フック部50が上記2つの機能を果たすため、これらの機能を別個の部分で果たす構成と比較して構造が簡単である。
【0050】
さらに、フック部50は、ヒンジアーム20に一体に設けられてその近傍に位置するヒンジプレート24、ベースプレート22にそれぞれ前方、上方から係合可能に配置されるため、小型でありながら上記各機能を果たすことができる。そして、このフック部50が、ヒンジブラケット18におけるヒンジアーム20を支持するために必要なヒンジプレート24の高さ範囲内で、かつベースプレート22の幅とヒンジアーム20の厚みとを合わせた範囲内に配置されているため、換言すれば、フック部50がフードヒンジ10における車体Sに固定されてフード14の開閉を可能とする機能を果たす部分から突出しないため、フードヒンジ10が全体として小型化されている。
【0051】
しかも、フック部50が、フードヒンジ10の可動側部材であるヒンジアーム20に設けられ、フード14の下方へのストローク(変形)に追従して移動しつつ相対的に上側に変形してエネルギ吸収を果たすため、換言すれば、フック部50が変形によってフード14のストロークを創出する構成ではないため、例えばヒンジアーム20の下方にこれに押圧されて変形する衝撃吸収部材を配置する構成やヒンジブラケット18に衝撃吸収部を形成した構成等と比較して、フードヒンジ10自体及び車体Sにおける衝撃吸収ストロークを確保するための空間を小さくすることができる。
【0052】
以上により、フードヒンジ10の小型化及び低コスト化が図られる。
【0053】
このように、本実施の形態に係るフードヒンジ10では、小型かつ安価な構成で、フード14の前方からの衝撃によるフード14の後方への移動を阻止すると共に、フード14の上方からの衝撃を吸収することができる。
【0054】
また、フードヒンジ10側では、フック部50の衝撃吸収部56の変形によって衝撃エネルギの吸収を果たし、他の部分が殆ど変形しないため、安定したエネルギ吸収が果たされる。具体的には、衝撃吸収部56(と前突対応部54との境界部分)がフック部50における脆弱部とされて他の部分よりも変形しやすいため、該衝撃吸収過程でヒンジピン40に曲げ力を作用させるようなモーメントの発生が抑制される。このため、衝撃吸収過程における衝撃吸収部56の変形以外のエネルギ吸収(ヒンジピン40の曲げに要する力や、ヒンジピン40とヒンジアーム20とのかじりに基づく過大な摩擦力等)が防止され、安定したエネルギ吸収が果たされる。
【0055】
さらに、フック部50は、主にその衝撃吸収部56がベースプレート22に係合しつつ板厚方向に変形して衝撃を吸収するため、ヒンジプレート24に係合してフード14の後方への移動を規制する前突対応部54の強度を確保しつつ、変形によって衝撃を吸収する衝撃吸収部56の寸法形状によってHIC特性を車種に応じて容易に調整することが可能となる。これにより、HIC特性を衝撃吸収ストロークに対しフラットな特性とすることが容易となり、HIC値の最大値を一層抑制することが可能である。なお、このHIC特性の調整のために、衝撃吸収部56または衝撃吸収部56と前突対応部54との境界部分に貫通孔、板厚方向の切欠き、または幅方向の切欠き等を設けても良いことは言うまでもない。
【0056】
さらにまた、上記の通り、衝撃吸収過程でフック部50(衝撃吸収部56)以外の部分の変形が要求されないため、ヒンジブラケット18及びヒンジアーム20は、フード14を開閉方向に移動させる機能に必要な十分な剛性を確保することができる。
【0057】
なお、上記の実施の形態では、フック部50が前突対応部54から後方に延設された衝撃吸収部56とを有する好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベースプレート22を前突対応部54の先端に係合可能に前方へ延設して構成しても良い。また、本発明は、フック部50(衝撃吸収部56)がベースプレート22に係合しつつ変形する構成に限定されることはなく、例えば、フック部50がベースプレート22の先端に立設したリブ等に係合しつつ変形する構成としても良い。
【0058】
また、上記の実施の形態では、上記の実施の形態では、フック部50がヒンジアーム20の長手方向中間部(フード取付部36)から延設された構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヒンジアーム20の前端部にフック部50を設けた構成としても良い。
【0059】
さらに、上記の実施の形態では、ヒンジアーム20がインナパネル44の立上部44Bに固定される構成としたが、本発明はヒンジアームとフード14との皇帝構造には限定されず、例えば、ヒンジアーム20がインナパネル44の下面に当接した状態でフード14に固定される構成であっても良い。
【0060】
さらにまた、上記の実施の形態では、フード14への上方からの衝撃に対するヒンジアーム20(フック部50)のストロークを確保するために、エプロンアッパメンバ16に逃し部16Bを設けた構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、エプロンアッパメンバ16の上部壁16Aに逃し孔を設けて上記ストロークを確保しても良い。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るフードヒンジは、小型かつ安価な構成で、フード前方からの衝撃によるフードの後方への移動を阻止すると共に、フード上方からの衝撃を吸収することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るフードヒンジが車体に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るフードヒンジが車体に取り付けられた状態を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るフードヒンジが車体に取り付けられた状態を図2の矢印3方向から見た正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフードヒンジにおけるフック部の変形状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るフードヒンジによる衝撃吸収過程のストロークとHIC値との関係を示す線図である。
【符号の説明】
10 フードヒンジ
14 フード
16 エプロンアッパメンバ(車体)
18 ヒンジブラケット
20 ヒンジアーム
22 ベースプレート(ヒンジブラケット)
24 ヒンジプレート(ヒンジブラケット)
50 フック部
54 前突対応部(フック部)
56 衝撃吸収部(フック部)
S 自動車車体(車体)

Claims (3)

  1. フードを車体に対し開閉可能に連結するフードヒンジであって、
    前記フードに取り付けられるヒンジアームと、
    前記車体に取り付けられ、前記ヒンジアームを回動可能に支持するヒンジブラケットと、
    前記ヒンジアームに一体に設けられ、前記フードを閉じているときに前記ヒンジブラケットに前方から係合可能に位置し、かつ上方から衝撃が作用すると前記ヒンジブラケットに上側から係合しつつ変形して該衝撃を吸収するフック部と、
    を備えたフードヒンジ。
  2. フードを車体に対し開閉可能に連結するフードヒンジであって、
    前記フードに取り付けられ、車体前後方向に長手のヒンジアームと、
    前記車体に略水平に取り付けられるベースプレートと、前記ベースプレートから立設され前記ヒンジアームを後端近傍で回動可能に支持するヒンジプレートとを有するヒンジブラケットと、
    平板状に形成されて前記ヒンジアームに一体に設けられ、前記フードを閉じているときに前記ヒンジプレートに前方から係合可能に位置し、かつ上方から衝撃が作用すると前記ベースプレートに上側から係合しつつ板厚方向に変形して該衝撃を吸収するフック部と、
    を備えたフードヒンジ。
  3. 前記フック部を、
    前記ヒンジアームにおける前記ヒンジブラケットよりも車体前方側に突出した部分から側方に延設され、前記ヒンジプレートの前端に係合可能に位置する前突対応部と、
    前記前突対応部の先端から車体後方側に延設され、前記フードの上方からの衝撃力が作用した場合に前記ベースプレートの前端近傍に上方から係合しつつ変形する衝撃吸収部と、
    で構成したことを特徴とする請求項2記載にフードヒンジ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010179908A (ja) * 2009-01-08 2010-08-19 Mitsubishi Motors Corp フードヒンジ構造
EP2380787A1 (en) 2010-04-21 2011-10-26 Volvo Car Corporation Hinge Mechanism
JP2015140126A (ja) * 2014-01-30 2015-08-03 マツダ株式会社 車両の前部車体構造

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