JP2004276530A - 中空成形品の成形方法およびそれに用いられる成形用金型 - Google Patents

中空成形品の成形方法およびそれに用いられる成形用金型 Download PDF

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Abstract

【課題】溶着のための溶融樹脂が分割体を突き破って内部に漏れることを防止することが可能な中空成形品の成形方法および成形用金型を提供すること。
【解決手段】中空成形品を分割成形した分割体31、32相互を当接して金型内に配置し、当接部位の周縁に、2次スプルー133からの導入流路252aおよびオーバーフロー流路252bと連通する周縁部流路331、332を形成する。周縁部流路331、332の断面積の総和は、導入流路252aの断面積より大きく、オーバーフロー流路252bの断面積と同等である。したがって、樹脂充填時に分岐点や合流点で内圧が上昇し難い。
【選択図】 図14

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の分割体を溶着して中空成形品を成形する中空成形品の成形方法およびそれに用いる成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の中空成形品の成形方法として、下記特許文献1に開示された成形方法がある。この成形方法では、中空成形品を分割体としてそれぞれ成形した後、金型内で各分割体を互いに当接させ、その当接部位の周縁に溶融樹脂を射出して各分割体を互いに溶着して、中空成形品を形成するようになっている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−87315号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1では、分割体の当接部位の周縁に充填する溶融樹脂の樹脂流路の形状等に関して具体的に開示されていない。そこで、本発明者らが、樹脂流路の断面積を略一定とする一般的な形状等を採用し、前記当接部位の周縁に分岐構造や合流構造を有する樹脂流路に溶融樹脂を充填して、中空成形品を成形したところ、溶融樹脂が分割体を突き破って中空体内部に漏れるという不具合を発生する場合があることが明らかとなった。
【0005】
そして、本発明者らが不具合の原因について精査したところ、樹脂流路に分岐点や合流点があるときには、樹脂流路の圧力損失により分岐点や合流点において充填される溶融樹脂の内圧が上昇する場合がある。この上昇した圧力により、溶融樹脂が分割体を突き破ることが解った。換言すれば、溶融樹脂の内圧上昇を抑制すれば溶融樹脂が中空体内部に漏れることを防止できることを見出した。
【0006】
本発明は、上記点を鑑みてなされたものであって、分割体を溶着するための溶融樹脂が分割体を突き破って内部に漏れることを防止することが可能な中空成形品の成形方法およびそれに用いられる成形用金型を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の成形方法では、
中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)内に配置し、複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に樹脂流路(252a、330、252b)を形成する流路形成工程と、
流路形成工程の後、樹脂流路(252a、330、252b)内に溶融樹脂を充填する充填工程と、
充填工程で樹脂流路(252a、330、252b)内に充填した溶融樹脂を冷却固化して、複数の分割体(31、32)相互を溶着する溶着工程とを備える中空成形品の成形方法において、
流路形成工程で形成する樹脂流路(252a、330、252b)は、分岐構造を有し、分岐点より上流側の分岐点上流側流路(252a)と、分岐点より下流側の分岐点下流側流路(331、332)とからなり、
分岐点下流側流路(331、332)の断面積の総和は、分岐点上流側流路(252a)の断面積以上であることを特徴としている。
【0008】
これによると、分岐点において溶融樹脂の内圧上昇を抑制することができる。したがって、溶融樹脂が分割体(31、32)を突き破って内部に漏れることを防止することが可能である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明の成形方法では、流路形成工程では、分岐点の分岐点上流側流路(252a)の延設方向に、分割体(31、32)を配置することを特徴としている。
【0010】
分岐点上流側流路(252a)を流れる溶融樹脂の慣性圧力により、分岐点では分岐点上流側流路(252a)の延設方向において溶融樹脂の内圧が上昇しやすい。したがって本発明によると、溶融樹脂が分割体(31、32)を突き破って内部に漏れることを防止できる効果は大きい。
【0011】
また、請求項3に記載の発明の成形方法では、請求項1または請求項2に記載の発明において、
流路形成工程で形成する樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
合流点下流側流路(252b)の断面積は、合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴としている。
【0012】
また、請求項4に記載の発明の成形方法では、
中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)内に配置し、複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に樹脂流路(252a、330、252b)を形成する流路形成工程と、
流路形成工程の後、樹脂流路(252a、330、252b)内に溶融樹脂を充填する充填工程と、
充填工程で樹脂流路(252a、330、252b)内に充填した溶融樹脂を冷却固化して、複数の分割体(31、32)相互を溶着する溶着工程とを備える中空成形品の成形方法において、
流路形成工程で形成する樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
合流点下流側流路(252b)の断面積は、合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴としている。
【0013】
これらのいずれかによると、合流点において溶融樹脂の内圧上昇を抑制することができる。したがって、溶融樹脂が分割体(31、32)を突き破って内部に漏れることを防止することが可能である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明の成形方法では、流路形成工程では、合流点の合流点上流側流路(I1)の延設方向に、分割体(310)を配置することを特徴としている。
【0015】
合流点上流側流路(I1)を流れる溶融樹脂の慣性圧力により、合流点では合流点上流側流路(I1)の延設方向において溶融樹脂の内圧が上昇しやすい。したがって本発明によると、溶融樹脂が分割体(310)を突き破って内部に漏れることを防止できる効果は大きい。
【0016】
また、請求項6に記載の発明の成形方法では、請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の発明において、溶着工程を開始するときに、充填工程で充填された溶融樹脂を圧縮するように、合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小することを特徴としている。
【0017】
また、請求項7に記載の発明の成形方法では、
中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)内に配置し、複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に樹脂流路(252a、330、252b)を形成する流路形成工程と、
流路形成工程の後、樹脂流路(252a、330、252b)内に溶融樹脂を充填する充填工程と、
充填工程で樹脂流路(252a、330、252b)内に充填した溶融樹脂を冷却固化して、複数の分割体(31、32)相互を溶着する溶着工程とを備える中空成形品の成形方法において、
流路形成工程で形成する樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
溶着工程を開始するときに、充填工程で充填された溶融樹脂を圧縮するように、合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小することを特徴としている。
【0018】
これらのいずれかによると、溶融樹脂を冷却固化する溶着工程を開始するときに、合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小して充填されている溶融樹脂を圧縮することができる。すなわち、溶融樹脂が合流点に充填されるときには、合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小していない。したがって、合流点において溶融樹脂の内圧上昇を抑制することができる。したがって、溶融樹脂が分割体(31、32)を突き破って内部に漏れることを防止することが可能である。
【0019】
また、溶着工程を行なうときには、合流点下流側流路(232b)の断面積を縮小して溶融樹脂を圧縮するので、合流点における圧力不足により固化する樹脂中にボイドが発生し溶着強度が低下することを防止することが可能である。
【0020】
また、請求項8に記載の発明の成形方法では、溶着工程を開始するときに、合流点下流側流路(252b)の断面積を、合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和より小さくなるように縮小することを特徴としている。
【0021】
これによると、溶着工程時の合流点における圧力不足を確実に防止することができる。したがって、固化する樹脂中にボイドが発生し溶着強度が低下することを確実に防止することが可能である。
【0022】
また、請求項9に記載の発明の成形方法では、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の発明において、
流路形成工程の前に、複数の分割体(31、32)を、金型(A)内の異なる位置にそれぞれ形成した雄型部(254、151)と雌型部(153、252)との間にて成形する成形工程を備え、
流路形成工程では、成形工程で成形した複数の分割体(31、32)を残置したままの雌型部(153、252)同士を組み合わせ、金型(A)内に複数の分割体(31、32)相互を当接して配置することを特徴としている。
【0023】
これによると、複数の分割体(31、32)の成形と分割体(31、32)相互の溶着とを同一の金型内で行なう生産性に優れる成形方法において、溶融樹脂が分割体(31、32)を突き破って内部に漏れることを防止することが可能である。
【0024】
また、請求項10に記載の発明の成形用金型では、
中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)の製品部(3a)内に配置することで、複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に、複数の分割体(31、32)相互を溶着するための溶融樹脂の樹脂流路(252a、330、252b)が形成される中空成形品の成形用金型であって、
樹脂流路(252a、330、252b)は、分岐構造を有し、分岐点より上流側の分岐点上流側流路(252a)と、分岐点より下流側の分岐点下流側流路(331、332)とからなり、
分岐点下流側流路(331、332)の断面積の総和は、分岐点上流側流路(252a)の断面積以上であることを特徴としている。
【0025】
これによると、請求項1に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0026】
また、請求項11に記載の発明の成形用金型では、複数の分割体(31、32)相互を当接して製品部(3a)内に配置したときには、分岐点の分岐点上流側流路(252a)の延設方向に、分割体(31、32)が配置されることを特徴としている。
【0027】
これによると、請求項2に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0028】
また、請求項12に記載の発明の成形用金型では、
樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
合流点下流側流路(252b)の断面積は、合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴としている。
【0029】
これによると、請求項3に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0030】
また、請求項13に記載の発明の成形用金型では、
中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)の製品部(3a)内に配置することで、複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に、複数の分割体(31、32)相互を溶着するための溶融樹脂の樹脂流路(252a、330、252b)が形成される中空成形品の成形用金型であって、
樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
合流点下流側流路(252b)の断面積は、合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴としている。
【0031】
これによると、請求項4に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0032】
また、請求項14に記載の発明の成形用金型では、複数の分割体相互を当接して製品部内に配置したときには、合流点の合流点上流側流路(I1)の延設方向に、分割体(310)が配置されることを特徴としている。
【0033】
これによると、請求項5に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0034】
また、請求項15に記載の発明の成形用金型では、合流点の下流側には、樹脂流路(252a、330、252b)内の溶融樹脂を圧縮するように、合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小する流路縮小手段(245)を備えることを特徴としている。
【0035】
これによると、請求項6に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0036】
また、請求項16に記載の発明の成形用金型では、
中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)の製品部(3a)内に配置することで、複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に、複数の分割体(31、32)相互を溶着するための溶融樹脂の樹脂流路(252a、330、252b)が形成される中空成形品の成形用金型であって、
樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
合流点の下流側には、樹脂流路(252a、330、252b)内の溶融樹脂を圧縮するように、合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小する流路縮小手段(245)を備えることを特徴としている。
【0037】
これによると、請求項7に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0038】
また、請求項17に記載の発明の成形用金型では、流路縮小手段(245)は、樹脂流路(252a、330、252b)内の溶融樹脂を圧縮するときには、合流点下流側流路(252b)の断面積を、合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和より小さくなるように縮小することを特徴としている。
【0039】
これによると、請求項8に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0040】
また、請求項18に記載の発明の成形用金型では、
複数の分割体(31、32)を異なる位置で成形するための雄型部(254、151)と雌型部(153、252)とを、分割体(31、32)に対応してそれぞれ備え、
製品部(3a)は、雌型部(153、252)同士を組み合わせて形成されることを特徴としている。
【0041】
これによると、請求項9に記載の発明の成形方法を行なうことができる。
【0042】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0044】
図1は、本実施形態の中空成形品3の製造に用いる金型Aの概略構造を示す断面図であり、図2は、中空成形品3の概略構造を示す断面図である。また、図3〜図12は、中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの工程別断面図である。
【0045】
図2に示すように、本実施形態の中空成形品3は、複数の開口部を有する中空構造の成形品であり、開口311を有する分割体31と、開口321、322を有する分割体32とを、環状の当接面313、323相互を当接した当接部位周縁の溝314、324内に充填された周縁部樹脂33により溶着して形成されている。そして、分割体31は、中空空間に開口322方向へ突出するノズル部312を有し、一端部が開口311である空間は、両端部が開口321、322である空間に、ノズル部312でのみ連通している。
【0046】
中空成形品3は、車両等の燃料タンク内に配設されるものであり、燃料ポンプが圧送する燃料の一部を開口部311から導入してノズル部312から噴出し、これにより発生する負圧を利用して、開口部321から吸入した燃料を開口部322から吐出するようになっている。中空成形品3は、上述のように作動することにより、燃料タンク内において燃料を移送するポンプ(所謂アスピレータ)として用いられる。
【0047】
図1に示すように、金型Aは、固定型1と可動型2とにより構成されている。なお、金型Aの図示においては、中空成形品3の開口等に対応する図示を省略し、模式的に示している。
【0048】
固定型1は、固定盤11、ランナプレート12、ガイドプレート13、スライド型14およびエアシリンダ15により主要部が構成されている。固定型1を図示しない射出成形機の固定プラテンに取り付けるための固定盤11と、固定盤11に並設されたランナプレート12とには、図示しない射出成形機のノズル部から射出される溶融樹脂を導入するための1次スプルー121が形成されている。
【0049】
ランナプレート12の固定盤11側の面に対向する面に並設されたガイドプレート13には、溶融樹脂を後述するキャビティ3a、31a、32aに供給するための2次スプルー132、133、134の上流側部132a、133a、134aが形成されている。そして、ランナプレート12とガイドプレート13との間には、ランナ131が延設され、1次スプルー121の下流端と2次スプルー132、133、134の上流側部132a、133a、134aの上流端とを連通している。
【0050】
ガイドプレート13のランナプレート12側の面に対向する面には凹部135が形成されている。この凹部135内に、スライド型14が図中上下方向に移動自在に配設され、スライド型14には、ガイドプレート13に固定されたエアシリンダ15のロッド15aが連結している。
【0051】
そして、スライド型14は、ガイドプレート13の凹部135内に密着した状態を保ちながら、エアシリンダ15がロッド15aを最も伸長した下方位置と、エアシリンダ15がロッド15aを最も収縮した上方位置との間をスライドするようになっている。
【0052】
可動型2は、可動盤21、中間部材22、ガイドプレート23、スライド型24およびエアシリンダ25により主要部が構成されている。可動型2を固定プラテンに対し進退可能な図示しない可動プラテンに取り付けるための可動盤21には、射出成形機のエジェクタ212を遊挿するための開口211が開口している。
【0053】
可動盤21には中間部材22が並設され、中間部材22の可動盤21側の面に対向する面にはガイドプレート23が並設されている。可動盤21、中間部材22およびガイドプレート23に囲まれた空間には、エジェクタ212の突き出し力を伝達し、後述するスライド型24に内蔵されたエジェクタピン241、242に突き出し動作をさせるためのエジェクタプレート221およびエジェクタピン222が配設されている。
【0054】
ガイドプレート23の中間部材22側の面に対向する面には凹部235が形成されている。この凹部235内に、スライド型24が図中上下方向に移動自在に配設され、スライド型24には、ガイドプレート23に固定されたエアシリンダ25のロッド25aが連結している。
【0055】
そして、スライド型24は、ガイドプレート23の凹部235内に密着した状態を保ちながら、エアシリンダ25がロッド25aを最も伸長した下方位置と、エアシリンダ25がロッド25aを最も収縮した上方位置との間をスライドするようになっている。
【0056】
スライド型14の可動型2との型合わせ面には、上方側より順に、雄型部151、雌型部152、雌型部153、雄型部154が形成されている。また、スライド型14内には、上方側より順に、2次スプルー132、133、134の下流側を構成する下流側部141、142、143、144、145、146が形成されている。
【0057】
これに対し、スライド型24の固定型1との型合わせ面には、上方側より順に、雄型部251、雌型部252、雌型部253、雄型部254が形成されている。また、スライド型24には、雌型部252、253の図中左方側に、それぞれエジェクタピン241、242が内蔵され、図中左方側から押圧されると、雌型部252、253内に突出するようになっている。
【0058】
そして、スライド型14が上方位置にあり、スライド型24が下方位置にあるときに、型締めが行なわれると(図1に示す状態になると)、以下に記す状態が形成される。
【0059】
雌型部152と雄型部251とが組み合わされ、雌型部152と雄型部251との間に分割体31の形状に対応したキャビティ31aが形成され、キャビティ31aは下流側部142を介して上流側部132aと連通する。すなわち、上流側部132aと下流側部142とでキャビティ31aに溶融樹脂を供給するための2次スプルー132が構成される。
【0060】
また、雄型部154と雌型部253とが組み合わされ、雄型部154と雌型部253との間に分割体32の形状に対応したキャビティ32aが形成され、キャビティ32aは下流側部146を介して上流側部134aと連通する。すなわち、上流側部134aと下流側部146とでキャビティ32aに溶融樹脂を供給するための2次スプルー134が構成される。
【0061】
さらに、雌型部153と雌型部252とが組み合わされ、雌型部153と雌型部252との間に中空成形品3の外側形状に対応したキャビティ(製品部)3aが形成され、キャビティ3aは下流側部145を介して上流側部133aと連通する。すなわち、上流側部133aと下流側部145とでキャビティ3aに溶融樹脂を供給するための2次スプルー133が構成される。
【0062】
雌型部252には、これに連通する導入流路252aおよびオーバーフロー流路252bが設けられ、雌型部253には、これに連通する導入流路253aおよびオーバーフロー流路253bが設けられている。そして、キャビティ3aと2次スプルー133とは導入流路252aを介して連通する。
【0063】
また、雄型部151、154の周縁部には、分割体32の溝324の形状に対応し、雌型部252、253の周端縁部に嵌め合わされる環状の突起151a、154aが形成され、雄型部251、254の周縁部には、分割体31の溝314の形状に対応し、雌型部152、153の周端縁部に嵌め合わされる環状の突起251a、254aが形成されている。そして、キャビティ32aと導入流路253a、およびキャビティ32aとオーバーフロー流路253bは、突起154aにより遮断される。
【0064】
一方、スライド型14が下方位置にあり、スライド型24が上方位置にあるときに、型締めが行なわれると、以下に記す状態が形成される。
【0065】
雌型部153と雄型部254とが組み合わされ、雌型部153と雄型部254との間に分割体31の形状に対応したキャビティ31aが形成され、キャビティ31aは下流側部144を介して上流側部134aと連通する。すなわち、上流側部134aと下流側部144とでキャビティ31aに溶融樹脂を供給するための2次スプルー134が構成される。
【0066】
また、雄型部151と雌型部252とが組み合わされ、雄型部151と雌型部252との間に分割体32の形状に対応したキャビティ32aが形成され、キャビティ32aは下流側部141を介して上流側部132aと連通する。すなわち、上流側部132aと下流側部141とでキャビティ32aに溶融樹脂を供給するための2次スプルー132が構成される。
【0067】
さらに、雌型部152と雌型部253とが組み合わされ、雌型部152と雌型部253との間に中空成形品3の外側形状に対応したキャビティ(製品部)3aが形成され、キャビティ3aは下流側部143を介して上流側部133aと連通する。すなわち、上流側部133aと下流側部143とでキャビティ3aに溶融樹脂を供給するための2次スプルー133が構成される。
【0068】
なお、キャビティ3aと2次スプルー133とは導入流路253aを介して連通する。また、キャビティ32aと導入流路252a、およびキャビティ32aとオーバーフロー流路252bは、突起151aにより遮断される。
【0069】
次に、上記構成の金型Aを用いた中空成形品3の成形方法について説明する。
【0070】
中空成形品3を製造する場合には、まず、図3に示すように、エアシリンダ15、25を作動させ、スライド型14を上方位置、スライド型24を下方位置とした後型締めし、1次スプルー121の上流側端部に図示しない射出成形機のノズル部を当接して、溶融した液状の樹脂(本例では、約200℃のポリアセタール樹脂)を射出する。
【0071】
これにより、溶融樹脂は、1次スプルー121、ランナ131、上流側部132aと下流側部142とからなる2次スプル132、および上流側部134aと下流側部146とからなる2次スプル134を介して、雌型部152と雄型部251との間のキャビティ31a内、および雄型部154と雌型部253との間のキャビティ32a内に充填される。
【0072】
このとき、ランナ131のうち、2次スプルー133に繋がる経路を、図示しないランナカット機構を作動させて遮断し、雌型部153と雌型部252とにより形成されたキャビティ3a内に溶融樹脂を供給しないようにしている。こうして、キャビティ31a、32aにおいて、中空成形品3の分割体31、32がそれぞれ成形される。
【0073】
分割体31、32が冷却固化したら、図4に示すように、固定型1と可動型2とを型開きするとともに、固定型1のランナプレート12、ガイドプレート13間を離隔する。このようにして、雄型部251、154を分割体31、32から離脱させ、各分割体31、32をそれぞれ雌型部152、253内に残置するとともに、1次スプルー121、ランナ131、2次スプルー132、134内で固化した樹脂スプルーランナ41を固定型1内から取り除く。
【0074】
次に、図5に示すように、エアシリンダ15、25を作動させて、スライド型14を下方位置、スライド型24を上方位置にスライドさせる。その後、図6に示すように、ランナプレート12、ガイドプレート13間を合わせるとともに、固定型1と可動型2とを型締めする。
【0075】
これにより、雌型部152、253内に残置された分割体31、32が、当接面313、323(図2参照)を相互に当接した状態となる。さらに、当接部位の周縁には、溝314、324(図2参照)により、導入流路253aおよびオーバーフロー流路253bと連通した樹脂流路である周縁部流路330が形成される。
【0076】
このように型締めを行なったら、図7に示すように、1次スプルー121の上流側端部に図示しない射出成形機のノズル部を当接して、溶融した液状の樹脂(本例では、1回目の射出と同様に約200℃のポリアセタール樹脂)を射出する。
【0077】
これにより、溶融樹脂は、1次スプルー121、ランナ131、上流側部132aと下流側部141とからなる2次スプル132、上流側部133aと下流側部143とからなる2次スプル133、および上流側部134aと下流側部144とからなる2次スプル134を介して、雄型部151と雌型部252との間のキャビティ32a内、雌型部152と雌型部253との間のキャビティ3a内、および雌型部153と雄型部254との間のキャビティ31a内に充填される。
【0078】
このとき、前述の図示しないランナカット機構は2次スプルー133に繋がる経路を連通するようになっている。
【0079】
2次スプルー133を流通する溶融樹脂は、導入流路253aからキャビティ3a内に導入され、キャビティ3a内に形成された周縁部流路330からオーバーフロー流路253bにまで充填される。周縁部流路330内において、溶融樹脂は、その熱により分割体31、32の溝314、324(図2参照)内面の樹脂表面を溶融させ、これらが冷却固化することにより、分割体31、32相互が融着される。
【0080】
上記キャビティ3a内への樹脂の充填については後で詳述する。
【0081】
このようにして、キャビティ3a内において中空成形品3が形成されるとともに、キャビティ31a、32a内において、中空成形品3の分割体31、32がそれぞれ成形される。
【0082】
中空成形品3の当接部位周縁部および分割体31、32が冷却固化したら、図8に示すように、固定型1と可動型2とを型開きするとともに、固定型1のランナプレート12、ガイドプレート13間を離隔する。そして、エジェクタ212を図中右方向に前進させ、エジェクタプレート221、エジェクタピン222を介して、エジェクタピン242を突出させ、中空成形品3を離型する。
【0083】
また、雄型部254、151を分割体31、32から離脱させ、各分割体31、32をそれぞれ雌型部153、252内に残置するとともに、1次スプルー121、ランナ131、2次スプルー132、133、134内で固化した樹脂スプルーランナ42を固定型1内から取り除く。
【0084】
次に、図9に示すように、エアシリンダ15、25を作動させて、スライド型14を上方位置、スライド型24を下方位置にスライドさせる。その後、図10に示すように、ランナプレート12、ガイドプレート13間を合わせるとともに、固定型1と可動型2とを型締めする。
【0085】
これにより、雌型部153、252内に残置された分割体31、32が、当接面313、323(図2参照)を相互に当接した状態となる。さらに、当接部位の周縁には、溝314、324(図2参照)により、導入流路252aおよびオーバーフロー流路252bと連通した樹脂流路である周縁部流路330が形成される。
【0086】
このように型締めを行なったら、図11に示すように、1次スプルー121の上流側端部に図示しない射出成形機のノズル部を当接して、溶融した液状の樹脂(本例では、1回目、2回目の射出と同様に約200℃のポリアセタール樹脂)を射出する。
【0087】
これにより、溶融樹脂は、1次スプルー121、ランナ131、上流側部132aと下流側部142とからなる2次スプル132、上流側部133aと下流側部145とからなる2次スプル133、および上流側部134aと下流側部146とからなる2次スプル134を介して、雌型部152と雄型部251との間のキャビティ31a内、雌型部153と雌型部252との間のキャビティ3a内、および雄型部154と雌型部253との間のキャビティ32a内に充填される。
【0088】
このときも、図7に示す工程と同様に、前述の図示しないランナカット機構は2次スプルー133に繋がる経路を連通するようになっている。
【0089】
2次スプルー133を流通する溶融樹脂は、導入流路252aからキャビティ3a内に導入され、キャビティ3a内に形成された周縁部流路330からオーバーフロー流路252bにまで充填される。周縁部流路330内において、溶融樹脂は、その熱により分割体31、32の溝314、324(図2参照)内面の樹脂表面を溶融させ、これらが冷却固化することにより、分割体31、32相互が融着される。
【0090】
このようにして、キャビティ3a内において中空成形品3が形成されるとともに、キャビティ31a、32a内において、中空成形品3の分割体31、32がそれぞれ成形される。
【0091】
中空成形品3の当接部位周縁部および分割体31、32が冷却固化したら、図12に示すように、固定型1と可動型2とを型開きするとともに、固定型1のランナプレート12、ガイドプレート13間を離隔する。そして、エジェクタ212を図中右方向に前進させ、エジェクタプレート221、エジェクタピン222を介して、エジェクタピン241を突出させ、中空成形品3を離型する。
【0092】
また、雄型部251、154を分割体31、32から離脱させ、各分割体31、32をそれぞれ雌型部152、253内に残置するとともに、1次スプルー121、ランナ131、2次スプルー132、133、134内で固化した樹脂スプルーランナ43を固定型1内から取り除く。
【0093】
そして、次に、エアシリンダ15、25を作動させて、スライド型14を下方位置、スライド型24を上方位置にスライドさせる。これは、前述した図5に示す工程であり、図5〜図12に示す工程を繰り返すことにより、中空成形品3を連続して成形することができる。
【0094】
図5〜図12に示す工程では、分割体31、32の成形(所謂、1次成形)と、周縁部流路330内に樹脂(図2に示す周辺部樹脂33)を充填固化し中空成形品3を形成する成形(所謂、2次成形)とを同時に行なうので、固定型1と可動型2との型開き1回毎に中空成形品3を得ることができる。
【0095】
なお、図3、図7、図11において分割体31、32を成形する工程が本実施形態における成形工程であり、図6および図10に示す工程が分割体31、32の当接部位周縁に樹脂流路を形成する本実施形態における流路形成工程である。また、図7および図11において前記当接部周縁の樹脂流路に溶融樹脂を充填する工程が本実施形態における充填工程であり、この充填した溶融樹脂を冷却固化して分割体31、32相互を融着する工程が本実施形態における融着工程である。
【0096】
次に、本発明の要部である流路形成工程において形成される2次成形時の樹脂流路について説明する。
【0097】
図13は、樹脂を射出充填したときの樹脂圧力の経時変化を示すグラフであり、図14は、分割体31、32と、その当接部位周縁に形成された周縁部流路、およびこれに連通する導入流路、オーバーフロー流路を示す斜視図、図15は、周縁部流路、導入流路、オーバーフロー流路のみを示す斜視図である。また、図16は、流路断面積の縮小について説明するための斜視図である。
【0098】
なお、上述した中空成形品3の形成方法では、図6および図10に示す工程において分割体31、32の当接部位周縁に周縁部流路を形成しているが、両者の構成は同一であるので、以下、図10に示す工程で形成する樹脂流路について説明する。
【0099】
図10に示すように、分割体31、32を残置した雌型部153、252同士を組み合わせると、図14に示すように、2次成形時に(充填工程において)溶融樹脂が充填される樹脂流路が形成される。樹脂流路は、導入流路252a、周縁部流路330、およびオーバーフロー流路252bからなる。なお、図14では、分割体31、32を模式的に示している。
【0100】
導入流路252aは、一端を2次スプルー133の下流端に接続しており、他端を分割体31の溝314と分割体32の溝324とにより形成される周縁部流路330に接続している。図15にも示すように、周縁部流路330は、導入流路252aとの接続点より下流側に向かって2つに分岐した流路であり、紙面手前側の周縁部流路331と紙面奥側の周縁部流路332とからなる。そして、オーバーフロー流路252bは周縁部流路331と周縁部流路332との合流点に接続している。
【0101】
すなわち、導入流路252aと周縁部流路331、332との接続点において、樹脂流路は分岐構造を有しており、導入流路252aは本実施形態における分岐点上流側流路、周縁部流路331、332は本実施形態における分岐点下流側流路である。また、周縁部流路331、332とオーバーフロー流路252bとの接続点において、樹脂流路は合流構造を有しており、周縁部流路331、332は本実施形態における合流点上流側流路、オーバーフロー流路252bは本実施形態における合流点下流側流路である。
【0102】
本実施形態では、各流路断面積を、導入流路252a、周縁部流路331、332ではそれぞれ4mm、オーバーフロー流路252bでは8mmとしている。したがって、周縁部流路331、332の断面積の総和は、導入流路252aの断面積より大きくなっている。また、オーバーフロー流路252bの断面積は、周縁部流路331、332の断面積の総和と同等となっている。
【0103】
また、図1では図示を省略しているが、スライド型24内には、オーバーフロー流路252bの合流点直近部位に対応する位置に、図16に示すように、オーバーフロー流路252b内に進出してオーバーフロー流路252bの断面積を縮小する圧縮ピン245が設けられている。圧縮ピン245は、図示しない油圧シリンダの動作により、オーバーフロー流路252b内に進退するようになっている。圧縮ピン245は、本実施形態における流路縮小手段である。
【0104】
そして、図示しない射出成形機のノズル部から溶融樹脂が射出され、2次スプルー133から導入流路252aへ溶融樹脂が流入すると、導入流路252aを流通した溶融樹脂は分岐点より周縁部流路331と周縁部流路332とに分流する。溶融樹脂が周縁部流路331、332を流れるときには、溶融樹脂の熱により、これに接している分割体31、32の表層が溶融する。
【0105】
周縁部流路331を流れた溶融樹脂と周縁部流路332を流れた溶融樹脂とは、合流点で合流してオーバーフロー流路252bへ流入する。そして、オーバーフロー流路252bへの溶融樹脂の充填がほぼ完了した時点で、圧縮ピン245がオーバーフロー流路252b内へ進出し、この部位の流路断面積を約半分(4mm)とする。
【0106】
導入流路252a、周縁部流路331、332、およびオーバーフロー流路252bに充填された溶融樹脂は、金型Aに吸熱されて冷却され凝固し、図2に示した周縁部樹脂33となる。このとき、分割体31、32の溶融していた表層樹脂も凝固し、周縁部樹脂33と一体化し、分割体31と分割体32とが融着する。
【0107】
溶融樹脂が導入流路252a、周縁部流路331、332、およびオーバーフロー流路252bに充填されるときには、キャビティ31a、32a内にも溶融樹脂が充填される。本実施形態では、導入流路252a、周縁部流路331、332、およびオーバーフロー流路252bからなる構成の内容積が、キャビティ31aの内容積や、キャビティ32aの内容積に比較して小さい。
【0108】
そこで、図示しない射出成形機から溶融樹脂の射出が継続しているときに、樹脂導入流路252a、周縁部流路331、332、およびオーバーフロー流路252b内に溶融樹脂の充填が完了した時点で、前述した図示しないランナカット機構を作動させて、ランナ131のうち、2次スプルー133に繋がる経路を遮断している。
【0109】
これにより、キャビティ3a(導入流路252a、周縁部流路331、332、およびオーバーフロー流路252b)内の樹脂圧力、およびキャビティ31a、32a内の樹脂圧力は、図13に示すように変化する。キャビティ3a内には、分割体31、32からなる中空形状を破壊せずに(溶融樹脂が中空体内部に漏れずに)、分割体31、32相互を溶着できる圧力の溶融樹脂が充填され、キャビティ31a、32a内には、分割体31、32を精度よく成形できる圧力の溶融樹脂が供給される。
【0110】
前述したオーバーフロー流路252b内への圧縮ピン245の進出は、本実施形態では、図13に示すように、上記ランナカットとともに行なわれ、溶融樹脂の冷却凝固に伴ない樹脂圧力が低下するまで継続される。圧縮ピン245および図示しないランナカット機構の作動は、射出開始信号を基準に動作するタイマにより所定時間経過した時点で行なわれる。
【0111】
このように、本実施形態では、圧縮ピン245を、ランナカット機構の作動、すなわち導入流路252a、周縁部流路331、332、およびオーバーフロー流路252b内への樹脂充填完了と同時に前進させて、オーバーフロー流路252a内の溶融樹脂を圧縮していたが、圧縮ピン245による溶融樹脂の圧縮は、溶融樹脂の固化が開始されるときに(溶着工程を開始するときに)行なうことが好ましい。
【0112】
金型温度等により、充填工程が完了する前に溶融樹脂の固化が始まる(溶着工程を開始する)場合には、充填が継続されていたとしても、圧縮ピン245により溶融樹脂を圧縮することが好ましい。
【0113】
上述の構成および成形方法によれば、周縁部流路331、332の断面積の総和は、導入流路252aの断面積より大きく、オーバーフロー流路252bの断面積は、周縁部流路331、332の断面積の総和と同等である。これにより、分岐点や合流点において溶融樹脂の内圧上昇を抑制することができる。したがって、溶融樹脂が分割体31、32を突き破って内部に漏れることを防止することができる。
【0114】
分割体31、32相互を溶着するときには、樹脂流路に充填される溶融樹脂の温度と圧力とは共に高い方が融着性に優れる。ところが、分割体31、32を当接した構成は中空構造であるため、本実施形態では樹脂圧力が20MPaを超えると溶融樹脂が内部に漏れる場合がある。
【0115】
これに対し、本実施形態では、上述のように樹脂流路を形成することで、図17に実線で示すように、分岐点や合流点での内圧上昇を20MPa以下に抑制している。
【0116】
従来から一般的である樹脂流路を同一断面積で形成した場合には(例えば、図15に示すオーバーフロー流路252bの断面積を他の流路と同様に4mmとした場合には)、充填工程において溶融樹脂が合流点を通過した直後から図17に示す破線のような圧力カーブで内圧が急激に上昇し、溶融樹脂が分割体31、32を突き破ってしまうことがある。
【0117】
また、図14からも構造が明らかなように、分岐点において導入流路252aの延設方向に分割体が配置される場合には、導入流路252aを流れる溶融樹脂の慣性圧力により、分割体の表面で溶融樹脂の内圧が上昇しやすい。したがって上述の樹脂流路構成を採用することにより、溶融樹脂が分割体31、32を突き破って内部に漏れることを防止できる効果は大きい。
【0118】
本発明者らは、樹脂流路の分岐点や合流点では、下流側流路の断面積の総和が上流側流路の断面積の総和以上であれば、分岐点や合流点での内圧上昇を抑制できることを確認している。
【0119】
また、樹脂流路に充填された溶融樹脂の固化が開始されるときに、圧縮ピン245により合流点直近のオーバーフロー流路252bの断面積を半分に縮小して溶融樹脂を圧縮している。溶融樹脂の圧縮を行なわない場合には、下流側に向かって流路断面積が拡大する合流点において、圧力不足により固化する樹脂中に空気や分解ガス等のボイドが発生し溶着強度が低下することがある。固化開始時に溶融樹脂を圧縮することでボイドの発生を防止することができる。
【0120】
本実施形態では、圧縮ピン245の動作により、オーバーフロー流路252bの断面積を、周縁部流路331、332の断面積の総和の半分としたが、本発明者らは、合流点の上流側流路の断面積の総和より下流側流路の断面積が小さくなるように圧縮すれば、ボイドの発生を防止できることを確認している。
【0121】
なお、ここでは、図10に示す工程における効果について述べたが、図6に示す工程においても同様の効果が得られる。
【0122】
(他の実施形態)
上記一実施形態では、分岐点下流側流路は2つの周縁部流路331、332であったが、分岐点下流側流路が3つ以上である分岐構造においても本発明を適用することができる。例えば、図18に示すような分岐構造では、下流側流路O1、O2、O3の断面積の総和が上流側流路Iの断面積以上であれば、2次成形時に分岐点における溶融樹脂の内圧上昇を抑制することができる。
【0123】
また、上記一実施形態では、合流点上流側流路は2つの周縁部流路331、332であったが、合流点下流側流路が3つ以上である合流構造においても本発明を適用することができる。例えば、図19に示すような合流構造では、下流側流路Oの断面積が上流側流路I1、I2、I3の断面積の総和以上であれば、2次成形時に合流点における溶融樹脂の内圧上昇を抑制することができる。
【0124】
また、図19に示すように、合流点において上流側流路I1の延設方向に分割体310が配置される場合には、上流側流路I1を流れる溶融樹脂の慣性圧力により、分割体310の表面で溶融樹脂の内圧が上昇しやすい。したがって上述の樹脂流路構成を採用することにより、溶融樹脂が分割体310を突き破って内部に漏れることを防止できる効果は大きい。
【0125】
また、図20に示すように、樹脂流路に合流および分岐がある構成においては、上流側流路I4、I5、I6を合流点上流側流路とし、下流側流路O4、O5を分岐点下流側流路とし、この間で流路が1つになる部位Jを合流点下流側流路かつ分岐点上流側流路として、本発明を適用することにより、合流分岐点における溶融樹脂の内圧上昇を抑制することができる。
【0126】
また、上記一実施形態では、圧縮ピン245を合流点直近のオーバーフロー流路252bに設け、流路断面積を縮小して溶融樹脂を圧縮していたが、合流点の溶融樹脂が加圧できるものであれば、圧縮ピン245の配設位置はこれに限定されるものではない。オーバーフロー流路252bの中間部等に設けるものであってもよいし、オーバーフロー流路245の最上流部である合流点に設けるものであってもよい。
【0127】
また、上記一実施形態では、圧縮ピン245や図示しないランナカット機構の作動は、射出開始信号を基準に動作するタイマに基づいて行なっていたが、金型A内に設置した圧力センサ、温度センサ、赤外線センサ、光電管センサ、接触センサ、超音波センサ等により、溶融樹脂の充填状態を検出し、この検出結果に基づいて圧縮ピン245や図示しないランナカット機構を作動させるものであってもよい。また、図示しない射出成形機のスクリュ位置(前進状態)に基づいて作動させてもよい。
【0128】
また、上記一実施形態では、中空成形品3は、図2に示したポンプであったが、これに限定されるものではない。例えば、開口を有しない密封構造の中空成形品であってもよい。
【0129】
また、上記一実施形態では、分割体は、中空成形品3を2つに分割成形したものであったが、3つ以上に分割成形したものであってもよい。
【0130】
また、上記一実施形態では、分割体31、32、および周縁部樹脂33は、ポリアセタール樹脂であったが、これに限定されるものではない。また、分割体31、32、および周縁部樹脂33を異なる樹脂材により形成したものであってもよい。異なる樹脂材であっても相溶性を有するものであれば、融着して中空成形品を形成することが可能である。ただし、同一樹脂材による方が、射出ユニットが共用でき好ましい。
【0131】
また、上記一実施形態では、分割体31、32の成形(1次成形)と分割体31、32相互の融着(2次成形)とを同時に行なうものであったが、1次成形と2次成形とを別の金型内で行なう場合であっても、2次成形に本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における中空成形品3の製造に用いる金型Aの概略構造を示す断面図である。
【図2】中空成形品3の概略構造を示す断面図である。
【図3】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図4】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図5】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図6】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図7】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図8】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図9】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図10】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図11】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図12】中空成形品の成形方法を説明するための金型Aの断面図である。
【図13】射出充填された樹脂の圧力変化を示すグラフである。
【図14】分割体と樹脂流路を示す斜視図である。
【図15】樹脂流路を示す斜視図である。
【図16】流路断面積の縮小について説明するための斜視図である。
【図17】本発明と樹脂流路と従来の樹脂流路とにおける樹脂圧力変化を比較表示したグラフである。
【図18】他の実施形態における樹脂流路の一例を示す図である。
【図19】他の実施形態における樹脂流路の一例を示す図である。
【図20】他の実施形態における樹脂流路の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 固定型
2 可動型
3 中空成形品
3a キャビティ(製品部)
14、24 スライド型
31、32 分割体
151、154、251、254 雄型部
152、153、252、253 雌型部
245 圧縮ピン(流路縮小手段)
252a、253a 導入流路(樹脂流路の一部、分岐点上流側流路)
252b、253b オーバーフロー流路(樹脂流路の一部、合流点下流側流路)
310 分割体
330 周縁部流路(樹脂流路の一部)
331、332 周縁部流路(樹脂流路の一部、分岐点下流側流路、合流点上流側流路)
A 金型
I1、I2、I3 上流側流路(合流点上流側流路)
O 下流側流路(合流点下流側流路)

Claims (18)

  1. 中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)内に配置し、前記複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に樹脂流路(252a、330、252b)を形成する流路形成工程と、
    前記流路形成工程の後、前記樹脂流路(252a、330、252b)内に溶融樹脂を充填する充填工程と、
    前記充填工程で前記樹脂流路(252a、330、252b)内に充填した前記溶融樹脂を冷却固化して、前記複数の分割体(31、32)相互を溶着する溶着工程とを備える中空成形品の成形方法において、
    前記流路形成工程で形成する前記樹脂流路(252a、330、252b)は、分岐構造を有し、分岐点より上流側の分岐点上流側流路(252a)と、前記分岐点より下流側の分岐点下流側流路(331、332)とからなり、
    前記分岐点下流側流路(331、332)の断面積の総和は、前記分岐点上流側流路(252a)の断面積以上であることを特徴とする中空成形品の成形方法。
  2. 前記流路形成工程では、前記分岐点の前記分岐点上流側流路(252a)の延設方向に、前記分割体(31、32)を配置することを特徴とする請求項1に記載の中空成形品の成形方法。
  3. 前記流路形成工程で形成する前記樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、前記合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
    前記合流点下流側流路(252b)の断面積は、前記合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中空成形品の成形方法。
  4. 中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)内に配置し、前記複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に樹脂流路(252a、330、252b)を形成する流路形成工程と、
    前記流路形成工程の後、前記樹脂流路(252a、330、252b)内に溶融樹脂を充填する充填工程と、
    前記充填工程で前記樹脂流路(252a、330、252b)内に充填した前記溶融樹脂を冷却固化して、前記複数の分割体(31、32)相互を溶着する溶着工程とを備える中空成形品の成形方法において、
    前記流路形成工程で形成する前記樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、前記合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
    前記合流点下流側流路(252b)の断面積は、前記合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴とする中空成形品の成形方法。
  5. 前記流路形成工程では、前記合流点の前記合流点上流側流路(I1)の延設方向に、前記分割体(310)を配置することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の中空成形品の成形方法。
  6. 前記溶着工程を開始するときに、前記充填工程で充填された前記溶融樹脂を圧縮するように、前記合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1つに記載の中空成形品の成形方法。
  7. 中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)内に配置し、前記複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に樹脂流路(252a、330、252b)を形成する流路形成工程と、
    前記流路形成工程の後、前記樹脂流路(252a、330、252b)内に溶融樹脂を充填する充填工程と、
    前記充填工程で前記樹脂流路(252a、330、252b)内に充填した前記溶融樹脂を冷却固化して、前記複数の分割体(31、32)相互を溶着する溶着工程とを備える中空成形品の成形方法において、
    前記流路形成工程で形成する前記樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、前記合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
    前記溶着工程を開始するときに、前記充填工程で充填された前記溶融樹脂を圧縮するように、前記合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小することを特徴とする中空成形品の成形方法。
  8. 前記溶着工程を開始するときに、前記合流点下流側流路(252b)の断面積を、前記合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和より小さくなるように縮小することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の中空成形品の成形方法。
  9. 前記流路形成工程の前に、前記複数の分割体(31、32)を、前記金型(A)内の異なる位置にそれぞれ形成した雄型部(254、151)と雌型部(153、252)との間にて成形する成形工程を備え、
    前記流路形成工程では、前記成形工程で成形した前記複数の分割体(31、32)を残置したままの前記雌型部(153、252)同士を組み合わせ、前記金型(A)内に前記複数の分割体(31、32)相互を当接して配置することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の中空成形品の成形方法。
  10. 中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)の製品部(3a)内に配置することで、前記複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に、前記複数の分割体(31、32)相互を溶着するための溶融樹脂の樹脂流路(252a、330、252b)が形成される中空成形品の成形用金型であって、
    前記樹脂流路(252a、330、252b)は、分岐構造を有し、分岐点より上流側の分岐点上流側流路(252a)と、前記分岐点より下流側の分岐点下流側流路(331、332)とからなり、
    前記分岐点下流側流路(331、332)の断面積の総和は、前記分岐点上流側流路(252a)の断面積以上であることを特徴とする中空成形品の成形用金型。
  11. 前記複数の分割体(31、32)相互を当接して前記製品部(3a)内に配置したときには、前記分岐点の前記分岐点上流側流路(252a)の延設方向に、前記分割体(31、32)が配置されることを特徴とする請求項10に記載の中空成形品の成形用金型。
  12. 前記樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、前記合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
    前記合流点下流側流路(252b)の断面積は、前記合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の中空成形品の成形用金型。
  13. 中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)の製品部(3a)内に配置することで、前記複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に、前記複数の分割体(31、32)相互を溶着するための溶融樹脂の樹脂流路(252a、330、252b)が形成される中空成形品の成形用金型であって、
    前記樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、前記合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
    前記合流点下流側流路(252b)の断面積は、前記合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和以上であることを特徴とする中空成形品の成形用金型。
  14. 前記複数の分割体相互を当接して前記製品部内に配置したときには、前記合流点の前記合流点上流側流路(I1)の延設方向に、前記分割体(310)が配置されることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の中空成形品の成形用金型。
  15. 前記合流点の下流側には、前記樹脂流路(252a、330、252b)内の前記溶融樹脂を圧縮するように、前記合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小する流路縮小手段(245)を備えることを特徴とする請求項12ないし請求項14のいずれか1つに記載の中空成形品の成形用金型。
  16. 中空成形品(3)を分割成形した複数の分割体(31、32)相互を当接して金型(A)の製品部(3a)内に配置することで、前記複数の分割体(31、32)の当接部位の周縁に、前記複数の分割体(31、32)相互を溶着するための溶融樹脂の樹脂流路(252a、330、252b)が形成される中空成形品の成形用金型であって、
    前記樹脂流路(252a、330、252b)は、合流構造を有し、合流点より上流側の合流点上流側流路(331、332)と、前記合流点より下流側の合流点下流側流路(252b)とからなり、
    前記合流点の下流側には、前記樹脂流路(252a、330、252b)内の前記溶融樹脂を圧縮するように、前記合流点下流側流路(252b)の断面積を縮小する流路縮小手段(245)を備えることを特徴とする中空成形品の成形用金型。
  17. 前記流路縮小手段(245)は、前記樹脂流路(252a、330、252b)内の前記溶融樹脂を圧縮するときには、前記合流点下流側流路(252b)の断面積を、前記合流点上流側流路(331、332)の断面積の総和より小さくなるように縮小することを特徴とする請求項15または請求項16に記載の中空成形品の成形用金型。
  18. 前記複数の分割体(31、32)を異なる位置で成形するための雄型部(254、151)と雌型部(153、252)とを、前記分割体(31、32)に対応してそれぞれ備え、
    前記製品部(3a)は、前記雌型部(153、252)同士を組み合わせて形成されることを特徴とする請求項10ないし請求項17のいずれか1つに記載の中空成形品の成形用金型。
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