JP2004276380A - 液体吐出ヘッドの作成方法及び成膜方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、液体吐出ヘッドの作成方法及び成膜方法に関し、例えばサーマル方式によるインクジェットプリンタに適用して、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、プリンタヘッドの発熱素子、耐キャビテーション層のように、構成材料が同一であって組成比が異なる薄膜を成膜することができるようにする。
【解決手段】本発明は、基板及びターゲットの間隔Lを異ならせて構成材料の組成比を変化させる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、基板及びターゲットの間隔Lを異ならせて構成材料の組成比を変化させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吐出ヘッドの作成方法及び成膜方法に関し、例えばサーマル方式によるインクジェットプリンタに適用することができる。本発明は、基板及びターゲットの間隔を異ならせて構成材料の組成比を変化させることにより、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、プリンタヘッドの発熱素子、耐キャビテーション層のように、構成材料が同一であって組成比が異なる薄膜を成膜することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野において、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まってきている。このニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式及び熱現像銀塩方式等のカラーコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の液滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するものであり、簡易な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、ノズルからインク液滴を飛翔させる方法の相違により、静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)及びサーマル方式に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、インクの局所的な加熱により気泡を発生し、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができるようになされている。
【0005】
このようなサーマル方式によるプリンタヘッドは、インクを加熱する発熱素子が発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路と共に一体に半導体基板上に形成され、これにより発熱素子を高密度に配置して確実に駆動できるようになされている。このためこの種のプリンタヘッドは、半導体製造プロセスを利用して作成され、この発熱素子がタンタル(Ta)(170〜180〔μΩ−cm〕)、タンタルアルミニウム(TaAl)(270〜280〔μΩ−cm〕)又は窒化タンタル(TaNx)(270〜280〔μΩ−cm〕)による抵抗体膜により作成されるようになされている。またこの発熱素子の上層に、窒化シリコンSi3 N4 による保護層、β−タンタル層(正方晶構造のタンタル層)による耐キャビテーション層が順次作成されて、インクを保持するインク液室が設けられるようになされている。
【0006】
ここで窒化シリコンSi3 N4 による保護層は、発熱素子を電源、駆動回路に接続する配線層の絶縁層間膜としても機能するようになされている。これに対して耐キャビテーション層は、発熱素子の駆動によりインク液室で発生した気泡が消泡する際の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和し、さらにはインク液室に保持したインクと発熱素子との直接の接触を防止して、インク成分による抵抗体膜の化学変化を防止するようになされている。
【0007】
これら窒化シリコンSi3 N4 による保護層、β−タンタル層による耐キャビテーション層は、厚みを厚くした方が、プリンタヘッドとしての信頼性を向上し得るものの、厚みを厚くすると発熱素子の熱を効率良くインク液室に伝導し得なくなる。このため一般に、窒化シリコンSi3 N4 による保護層は、0.15〜0.16〔μm〕の膜厚により作成され、β−タンタル層による耐キャビテーション層は、0.2〔μm〕程度の膜厚により作成されるようになされている。
【0008】
またβ−タンタル層においては、圧縮応力が1.0〜2.0×1010〔dynes/cm2 〕である高い圧縮応力(compressive stress)を有する膜であることにより、窒化シリコンSi3 N4 による保護層、β−タンタル層による耐キャビテーション層においては、下層の窒化シリコンSi3 N4 による保護層に強い応力が加わり、この保護層にクラック(亀裂)が発生する場合がある。このようなクラックが発生すると、プリンタヘッドでは、このクラックからインク液室のインクが侵入し、このようにして侵入したインクを介して配線パターンがショートしたり、発熱素子が腐食断線する。
【0009】
このため特開平6−27713号公報においては、β−タンタル層による耐キャビテーション層を膜厚0.7〜2.0〔μm〕により作成する場合に、耐キャビテーション層の応力を1.0×108 〜1.0×1010〔dynes/cm2 〕に設定して、このようなクラックの発生を防止する方法が開示されるようになされている。
【0010】
これに対して特許第2810759号、特開2001−80077号公報においては、発熱素子をタンタルアルミニウムにより作成する場合に、アルミニウムの含有量を40〜60〔at%〕として、アモルファス状態により作成することが提案されるようになされている。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−27713号公報
【特許文献2】
特許第2810759号
【特許文献3】
特開2001−80077号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこの種の耐キャビテーション層においては、発熱素子の抵抗体膜と同様に、スパッタリングにより作成され、スパッタリングにより作成するβ−タンタル層においては、直流パワー、圧力、アルゴンガス流量等の成膜条件を種々に設定しても、応力を変化させることが困難であり、これにより所望する膜厚によっては、クラックの発生を完全に防止し得ないことが判った。
【0013】
これにより種々に検討した結果、アルミニウムの含有量を30〔at%〕以下として、β−タンタルによる結晶粒界の間に、アルミニウムが存在する構造のタンタルアルミニウムにより耐キャビテーション層を作成すれば、下層の保護層への応力を小さくし得、クラックの発生を防止し得ることが判った。
【0014】
これにより発熱素子及び耐キャビテーション層の双方をタンタルアルミニウムにより作成すれば、その分、プリンタヘッドの製造工程を簡略化し得ると考えられる。
【0015】
しかしながらこの場合、耐キャビテーション層においては、アルミニウムの含有量を30〔at%〕以下としてβ−タンタルによる結晶粒界の間にアルミニウムが存在する構造により作成することが必要なのに対し、発熱素子においては、アルミニウムの含有量を30〜60〔at%〕としてアモルファス状態により作成することが必要になる。
【0016】
これにより結局、発熱素子及び耐キャビテーション層の双方をタンタルアルミニウムにより作成するようにしても、スパッタリングによりこれらを作成する場合には、それぞれ発熱素子及び耐キャビテーション層の組成に対応するターゲットを用意しなければならない問題がある。すなわちスパッタリングのターゲットにおいては、成膜目標の組成比に応じた組成比により各材料の粉体を混合、焼結して作成されることにより、このように成膜目標の組成比が異なる場合、それぞれ発熱素子及び耐キャビテーション層の成膜に、専用のターゲットが必要になる。
【0017】
この問題を解決する1つの方法として、いわゆるコスパッタ法を適用することが考えられる。すなわちこの場合、タンタルとアルミニウムとの2つのターゲットを用意し、各ターゲットによるスパッタ量を可変することにより、それぞれ発熱素子及び耐キャビテーション層に求められる組成比によりタンタルアルミニウムを成膜し、これにより発熱素子及び耐キャビテーション層の2つの成膜に共通のターゲットを使用できると考えられる。
【0018】
しかしながらこのコスパッタ法においては、同時に2つのターゲットをスパッタリングするためにダストが発生し易く、このようなダストにあっては、半導体製造プロセスを利用したプリンタヘッドの製造工程において、極力、発生を防止しなければならない。
【0019】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、プリンタヘッドの発熱素子、耐キャビテーション層のように、構成材料が同一であって組成比が異なる薄膜を成膜することができる成膜方法、この成膜方法を用いた液体吐出ヘッドの作成方法を提案しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、発熱素子の駆動により液室に保持した液体を加熱して所定のノズルから液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの作成方法に適用して、構成材料及び構成材料の組成比が同一のターゲットを用いた、ターゲットまでの距離を異ならせたスパッタリングにより、発熱素子と、液室の発熱素子側の面に設けられて発熱素子を保護する保護層とを、構成材料が同一で、構成材料の組成比が異なる所望の組成比により作成する。
【0021】
また請求項5の発明においては、成膜方法に適用して、所定のターゲットを用いたスパッタリングにより所定の基板に第1の組成比による第1の薄膜を成膜し、ターゲットと構成材料及び構成材料の組成比が同一のターゲットを用いたスパッタリングであって、第1の薄膜におけるスパッタリングに比して基板及びターゲット間の間隔に異ならせたスパッタリングにより、第1の組成比と異なる第2の組成比による第2の薄膜を成膜する。
【0022】
スパッタリングによる成膜においては、一定の範囲以上、ターゲットと基板との間隔を大きくすると、この間隔の増大により質量の小さな構成材料の含有量が小さくなって成膜される。これにより請求項1の構成により、液体吐出ヘッドの作成方法に適用して、構成材料及び構成材料の組成比が同一のターゲットを用いた、ターゲットまでの距離を異ならせたスパッタリングにより、発熱素子と、液室の発熱素子側の面に設けられて発熱素子を保護する保護層とを、構成材料が同一で、構成材料の組成比が異なる所望の組成比により作成すれば、一種類のターゲットを用いて、構成材料が同一であって組成比が異ってなる発熱素子、保護層を作成することができる。
【0023】
またこれにより請求項5の構成によれば、一種類のターゲットを用いて、構成材料が同一であって組成比が異ってなる第1及び第2の薄膜を成膜することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0025】
(1)実施の形態の構成
図2は、本発明の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドを示す断面図である。プリンタヘッド11は、N型シリコン基板による半導体ウエハに複数ヘッド分の駆動回路、発熱素子等が作成された後、各ヘッドチップにスクライビング処理され、各ヘッドチップにインク液室等を作成して形成される。
【0026】
すなわちプリンタヘッド11においては、図3(A)に示すように、シリコン基板12を洗浄した後、シリコン窒化膜を堆積し、リソグラフィー工程、リアクティブイオンエッチング工程により余分なシリコン窒化膜が除去され、これにより半導体素子13、14の作成領域にシリコン窒化膜によるマスクが作成される。また続く熱酸化処理により、半導体素子13、14の作成領域以外の部位に、素子分離領域(LOCOS: Local Oxidation Of Silicon )15が形成される。なお素子分離領域は、膜厚500〔nm〕により熱シリコン酸化膜が作成され、後のエッチング処理により膜厚が薄くなり、最終的に膜厚260〔nm〕により作成される。
【0027】
このようにして素子分離領域15が作成されると、続いてプリンタヘッド11は、シリコン基板12が洗浄された後、トランジスタの作成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートが作成される。さらにソースドレインの作成領域がイオン注入工程、熱処理工程により処理され、これによりMOS(Metal−Oxide−Semiconductor )型によるトランジスタ13、14等が作成される。なおここでトランジスタ13は、18〔V〕程度の耐圧を有するMOS型ドライバートランジスタであり、発熱素子の駆動に供するものである。これに対してトランジスタ14は、このトランジスタ13を制御する集積回路を構成するトランジスタであり、5〔V〕の電圧により動作するものである。なおこの実施の形態においては、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層が形成され、その部分で加速される電子の電界を緩和することで耐圧を確保してトランジスタ13が形成されるようになされている。
【0028】
続いてプリンタヘッド11は、CVD法によりリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG(Phosphorus Silicate Glass )膜、ボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass )膜が順次膜厚100〔nm〕、500〔nm〕により堆積され、これらにより1層目の層間絶縁膜16が膜厚600〔nm〕により形成される。
【0029】
続いてフォトリソグラフィー工程の後、C4 F8 /CO/O2 /Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチングによりシリコン半導体拡散層(ソースドレイン)上にコンタクトホール17が作成される。続いてプリンタヘッド11は、希フッ酸により洗浄された後、スパッタリング法により、膜厚30〔nm〕によるチタンコンタクトメタル膜(Ti)、膜厚70〔nm〕による窒化酸化バリアメタル膜(TiON)、膜厚30〔nm〕によるチタンコンタクトメタル膜(Ti)が順次堆積される。さらにシリコンを1〔at%〕添加したアルミニウム又は銅を0.5〔at%〕添加したアルミニウムが膜厚500〔nm〕により堆積され、反射防止膜としての窒化酸化チタン膜(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積される。プリンタヘッド11は、これらにより第1層目の配線パターン層が作成され、続くフォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程により、この配線パターン層がパターニング処理されて1層目の配線パターン18が作成される。プリンタヘッド11は、このようにして作成された1層目の配線パターン18により駆動回路を構成するMOS型トランジスタ13、14を接続してロジック集積回路が形成される。
【0030】
続いてプリンタヘッド11は、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2 H5 )4 )を原料ガスとしたCVD法により層間絶縁膜であるシリコン酸化膜が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、有機溶媒であるSOG(Spin On Glass )を含む塗布型シリコン酸化膜を塗布した後、フッ素系ガスを用いたエッチバック処理により、シリコン酸化膜が平坦化され、これらの処理が2回繰り返されて1層目の配線パターン18と続く2層目の配線パターンとを絶縁する2層目の層間絶縁膜19が膜厚440〔nm〕のシリコン酸化膜により形成される。
【0031】
続いてプリンタヘッド11は、図3(B)に示すように、抵抗体膜が作成された後、この抵抗体膜のパターニングにより発熱素子20が作成される。この実施の形態において、この抵抗体膜は、タンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングによりタンタルとアルミニウムとの組成比が7:3のアモルファス状態により作成される。この実施の形態では、このターゲットが、後述する耐キャビテーション層を作成する際に使用されるターゲットと同一のターゲットであるタンタルとアルミニウムとの組成比が6:4であるターゲットが適用される。また図1(A)の及び(B)に示すように、ターゲットTと基板12との間隔Lを60〔mm〕以下に設定したスパッタリングにより抵抗体膜を成膜する。なお図1(A)は、スパッタリング装置における基板とターゲットとの関係を示す概略断面図である。
【0032】
すなわちこのようなタンタルアルミニウムによる合金ターゲットを用いたスパッタリングにおいては、タンタルとアルミニウムとで質量が異なることにより、タンタルとアルミニウムとでスパッタリング率が異なり、実際に成膜されるタンタルアルミニウムにおいては、アルミニウムの含有量がターゲットに比して少なくなる。具体的に、組成比5:5によるタンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングにおいては、通常、アルミニウムの含有量が40〔at%〕程度のタンタルアルミニウム膜が成膜される。
【0033】
図1(B)に示す測定結果は、組成比6:4(アルミニウム含有量が40〔at%〕)によるタンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングにおいて、成膜されたタンタルアルミニウム膜における組成比を示すものであり、基板とターゲットの間隔Lが一定値以下の場合、間隔Lを変化させても組成比が一定の値となるのに対し、この間隔Lを一定値以上に広げると、質量の軽い側であるアルミニウムの含有量が距離Lに応じて少なくなることが判った。すなわち距離Lが60〔mm〕、45〔mm〕の場合では、タンタルとアルミニウムの組成比が7:3(アルミニウム含有量が30〔at%〕)によりタンタルアルミニウム膜が成膜されるのに対し、距離Lが80〔mm〕の場合、タンタルとアルミニウムの組成比が9:1(アルミニウム含有量が10〔at%〕)によりタンタルアルミニウム膜が成膜される。
【0034】
これにより距離Lを60〔mm〕以下に設定した組成比6:4によるタンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングにより、発熱素子に好適な組成比によりタンタルアルミニウム膜を成膜し得るのに対し、同一のターゲットを用いた距離80〔mm〕によるスパッタリングにより、耐キャビテーション層に好適な組成比によるタンタルアルミニウム膜を成膜することができる。なお、図1(B)に示す組成比の測定は、電子プローブ微小検出法(EPMA)により、電子ビームを試料に照射して発生する特性X線を検出して実行した。
【0035】
この実施の形態では、これらにより基板12及びターゲットの間隔Lを60〔mm〕以下に設定し、上述したターゲットを用いたスパッタリングにより、膜厚50〜100〔nm〕により抵抗体膜を成膜した。なおこの場合、直流パワーは、1〜4〔kW〕、基板温度は、150〜250度、アルゴンガス流量は、30〜60〔sccm〕であり、成膜された抵抗体膜においては、比抵抗が250〜280〔μΩ−cm〕であった。またフォトリソグラフィー、BCl3 /Cl2 系ガスを用いたドライエッチングにより、正方形形状に、又は一端を配線パターンにより接続するとした折り返し形状により、このようにして作成した抵抗体膜をパターニングし、発熱素子20を作成する。なお抵抗体膜を膜厚50〔nm〕により作成した場合、正方形形状による発熱素子20においては、抵抗値が60〔Ω〕となり、また一端を配線パターンにより接続するとした折り返し形状による場合には、膜厚を80〔nm〕により作成して抵抗値は140〔Ω〕となった。
【0036】
続いてプリンタヘッド11は、図4(C)に示すように、CVD法により膜厚300〔nm〕による窒化シリコンが堆積されて、発熱素子20を保護する保護層21が形成される。
【0037】
また続いて図4(D)に示すように、フォトリソグラフィー処理、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング処理により保護層21に接続孔を開口してビアホール22が作成される。このときプリンタヘッド11において、発熱素子20は、配線パターンを接続する部位については保護層21が取り除かれる。
【0038】
続いてプリンタヘッド11は、図5(E)に示すように、スパッタリング法により、膜厚200〔nm〕によるチタン膜(Ti)を堆積した後、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニウム又は銅を0.5〔at%〕添加したアルミニウムが膜厚600〔nm〕により堆積され、反射防止膜としての窒化酸化チタン膜(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積される。プリンタヘッド11は、これらにより第2層目の配線パターン層23が作成され、続くフォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 系ガスを用いたドライエッチング工程により、図5(F)に示すように、この配線パターン層23がパターニング処理されて2層目の配線パターン24が作成される。プリンタヘッド11では、この2層目の配線パターン24により発熱素子20を電源に接続し、さらに発熱素子20を駆動回路に接続するようになされている。また発熱素子20上に取り残された窒化シリコンによる保護層21においては、これら配線パターンを作成する際の保護層としても機能することになる。
【0039】
続いてプリンタヘッド11は、図6(G)に示すように、CVD法により膜厚400〔nm〕により窒化シリコンが堆積され、これにより発熱素子20の上層にオーバーコート層としての保護層25がさらに堆積される。
【0040】
続いてプリンタヘッド11は、ウエハ熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガス(フォーミングガス)の雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド11は、トランジスタ13、14の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン18と2層目の配線パターン24との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。
【0041】
続いてプリンタヘッド11は、図7(H)に示すように、スパッタリングにより耐キャビテーション層が作成される。ここでこの実施の形態においては、発熱素子の作成に供したタンタルとアルミニウムの組成比が6:4の合金ターゲットを用いて、基板12とターゲットとの間隔Lを80〔mm〕に設定し、これによりタンタルとアルミニウムの組成比が9:1であって、かつβ−タンタルによる結晶粒界の間にアルミニウムが存在する構造により、耐キャビテーション層の材料層を成膜する。なおこのようなターゲットと基板12との間隔L以外については、上述した発熱素子作成時のスパッタリングと同一の条件に設定される。これによりこの実施の形態では、同一のターゲットを用いたスパッタリングにより、材料が同一であって組成比が異なる発熱素子、耐キャビテーション層を成膜して、その分、工程管理の簡略化等、種々の利便を図るようになされている。
【0042】
なおこの実施の形態では、この耐キャビテーション層の材料層を膜厚100〜200〔nm〕により成膜した。また、図8に基板12とターゲットとの間隔Lをそれぞれ45〔mm〕、60〔mm〕の場合との対比により示すように、この材料膜においては、膜応力が630〔MPa〕の圧縮応力であった。なおβ−タンタルの場合、膜応力は、980〔MPa〕の圧縮応力である。因みに、比抵抗は、170〜180〔μΩ−cm〕であった。
【0043】
プリンタヘッド11は、フォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 系ガスを用いたドライエッチング工程により、このようにして成膜した耐キャビテーション層の材料層がパターニングされて耐キャビテーション層26が作成される。
【0044】
プリンタヘッド11は、続いて図2に示すように、有機系樹脂によるドライフィルム31が圧着により配置された後、インク液室34、インク流路に対応する部位が取り除かれ、その後硬化され、これによりインク液室34の隔壁、インク流路の隔壁等が作成される。
【0045】
また続いて各チップにスクライビングされた後、ノズルプレート35が積層される。ここでノズルプレート35は、発熱素子20の上に微小なインク吐出口であるノズル36を形成するように所定形状に加工された板状部材であり、ドライフィルム31上に接着により保持される。これによりプリンタヘッド11は、ノズル36、インク液室34、このインク液室34にインクを導くインク流路等が形成されて作成される。
【0046】
(2)実施の形態の動作
以上の構成において、プリンタヘッド11は、半導体基板であるN型シリコン基板12に素子分離領域15が作成されて半導体素子であるトランジスタ13、14が作成され、絶縁層16により絶縁されてこれらトランジスタ13、14が配線パターン18により接続されて駆動回路が作成される。また絶縁層19を介して発熱素子20が作成され、この発熱素子20が配線パターン24により駆動回路に接続された後、保護層25、耐キャビテーション層26、インク液室34、ノズル36が順次形成されて作成される(図2〜図7)。
【0047】
このプリンタヘッド11は、このようにして作成されたインク液室34にインクが導かれ、トランジスタ13、14による発熱素子20の駆動により、インク液室34に保持したインクが加熱されて気泡が発生し、この気泡によりインク液室34内の圧力が急激に増大する。プリンタでは、この圧力の増大によりインク液室34のインクがインク液滴としてノズル36から飛び出し、このインク液滴が対象物である用紙等に付着する。またこのような気泡の発生、消滅の繰り返しにより機械的な衝撃が発生し、インク液室34の発熱素子20側面に設けられた保護層である耐キャビテーション層26により、発熱素子20がこの衝撃から、さらにはインクから保護される。
【0048】
プリンタヘッド11は、この耐キャビテーション層26が、アルミニウムの含有量を30〔at%〕以下としてβ−タンタルによる結晶粒界の間にアルミニウムが存在する構造により作成され、これにより発熱素子20の駆動の繰り返す場合にあってもインクに対する耐性を十分に確保することができるようになされ、また発熱素子20との間に設けられた窒化シリコンによる保護層21、25においてクラックの発生を防止し得るようになされている。
【0049】
また発熱素子20においては、アルミニウムの含有量を30〜60〔at%〕としたアモルファス状態のタンタルアルミニウム膜により作成され、これにより駆動の繰り返しによっても十分な信頼性を確保し得るようになされている。なおこのようにして発熱素子を作成する場合、アルムニウムの含有量を多くした方が比抵抗を高くでき、発熱素子として望ましい。
【0050】
またこのようにして発熱素子20及び耐キャビテーション層26を、構成材料が同一で、組成比が異なる薄膜により作成するようにして、構成材料及び組成比が同一のターゲットを用いたスパッタリングにより、ターゲットまでの距離を異ならせてこれら薄膜が成膜される。すなわちスパッタリングにおいては、この距離が一定以下の範囲においては、距離を可変してもターゲットの組成比に依存した一定の組成比により成膜されるのに対し、一定値以上距離を大きくすると、距離の増大に伴い質量の軽い構成材料の含有量が低下して成膜される。これによりこの実施の形態においては、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、構成材料が同一であって組成比が異なる発熱素子、耐キャビテーション層を成膜し得るようになされ、その分、工程管理の利便等を図ることができるようになされている。
【0051】
(3)実施の形態の効果
以上の構成によれば、基板及びターゲットの間隔を異ならせて構成材料の組成比を変化させることにより、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、構成材料が同一であって組成比が異なる発熱素子、耐キャビテーション層を作成することができる。
【0052】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、それぞれ組成比7:3及び9:1により発熱素子及び耐キャビテーション層を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら以外の組成比により作成する場合にも広く適用することができる。
【0053】
また上述の実施の形態においては、組成比6:4による合金ターゲットを用いて発熱素子及び耐キャビテーション層を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この組成比以外の組成比によるターゲットを用いて発熱素子及び耐キャビテーション層を作成する場合にも広く適用することができる。因みに、タンタルとアルミニウムの組成比を5:5としたターゲットにより、ターゲットと基板との間隔を60〔mm〕以下に設定すれば、さらにアルミニウムの含有量を増大させて発熱素子を作成することができる。
【0054】
また上述の実施の形態においては、ターゲットと基板との間隔に対して組成比が変化する点に鑑み、単に、所望の組成比により成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図8にターゲットと基板との間隔に対する膜応力の変化を示すように、間隔により膜応力も変化することにより、この関係を利用して膜応力の小さな耐キャビテーション層を作成することもできる。すなわちタンタルアルミニウム膜においては、間隔を80〔mm〕から45〔mm〕に変化させると、膜応力においては630〔MPs〕から90.5〔MPs〕に急激に変化する。これにより耐キャビテーション層を、間隔45〔mm〕によるスパッタリングで成膜した第1のタンタルアルミニウム膜と、間隔80〔mm〕によるスパッタリングで成膜した第2のタンタルアルミニウム膜との積層構造として、第1のタンタルアルミニウム膜を応力緩和層として利用することができる。
【0055】
また上述の実施の形態においては、発熱素子については、距離を変化させても組成比が変化しない範囲でスパッタリングする場合について述べたが、本発明はこれに限らず、さらにアルミニウムの含有量を増大させたターゲットを用いて、発熱素子及び耐キャビテーション層の双方を、距離の変化により組成比が変化する範囲でスパッタリングするようにしてもよい。
【0056】
また上述の実施の形態においては、タンタルアルミニウム膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、タンタルアルミニウム膜以外の薄膜を作成する場合にも広く適用することができる。
【0057】
また上述の実施の形態においては、タンタル及びアルミニウムによる2種類の構成材料により薄膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、3種類以上の構成材料により薄膜を作成する場合にも広く適用することができる。
【0058】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してインク液滴を飛び出させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク液滴に代えて各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等を飛び出させる液体吐出ヘッド、さらには液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、液滴がエッチングより部材を保護する薬剤である各種のパターン描画装置等に広く適用することができる。
【0059】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してタンタルアルミニウム膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の部品等において、構成材料が同一で組成比の異なる第1及び第2の薄膜を作成する場合に広く適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、基板及びターゲットの間隔を異ならせて構成材料の組成比を変化させることにより、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、プリンタヘッドの発熱素子、耐キャビテーション層のように、構成材料が同一であって組成比が異なる薄膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタヘッドの発熱素子及び耐キャビテーション層の作成の説明に供する略線図である。
【図2】図1のプリンタヘッドを示す断面図である。
【図3】図2のプリンタヘッドの製造手順を示す断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図4の続きを示す断面図である。
【図6】図5の続きを示す断面図である。
【図7】図6の続きを示す断面図である。
【図8】基板及びターゲット間の間隔と膜応力との関係を示す図表である。
【符号の説明】
11……プリンタヘッド、12……基板、20……発熱素子、26……耐キャビテーション層
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体吐出ヘッドの作成方法及び成膜方法に関し、例えばサーマル方式によるインクジェットプリンタに適用することができる。本発明は、基板及びターゲットの間隔を異ならせて構成材料の組成比を変化させることにより、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、プリンタヘッドの発熱素子、耐キャビテーション層のように、構成材料が同一であって組成比が異なる薄膜を成膜することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野において、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まってきている。このニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式及び熱現像銀塩方式等のカラーコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の液滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するものであり、簡易な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、ノズルからインク液滴を飛翔させる方法の相違により、静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)及びサーマル方式に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、インクの局所的な加熱により気泡を発生し、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができるようになされている。
【0005】
このようなサーマル方式によるプリンタヘッドは、インクを加熱する発熱素子が発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路と共に一体に半導体基板上に形成され、これにより発熱素子を高密度に配置して確実に駆動できるようになされている。このためこの種のプリンタヘッドは、半導体製造プロセスを利用して作成され、この発熱素子がタンタル(Ta)(170〜180〔μΩ−cm〕)、タンタルアルミニウム(TaAl)(270〜280〔μΩ−cm〕)又は窒化タンタル(TaNx)(270〜280〔μΩ−cm〕)による抵抗体膜により作成されるようになされている。またこの発熱素子の上層に、窒化シリコンSi3 N4 による保護層、β−タンタル層(正方晶構造のタンタル層)による耐キャビテーション層が順次作成されて、インクを保持するインク液室が設けられるようになされている。
【0006】
ここで窒化シリコンSi3 N4 による保護層は、発熱素子を電源、駆動回路に接続する配線層の絶縁層間膜としても機能するようになされている。これに対して耐キャビテーション層は、発熱素子の駆動によりインク液室で発生した気泡が消泡する際の機械的衝撃(キャビテーション)を吸収緩和し、さらにはインク液室に保持したインクと発熱素子との直接の接触を防止して、インク成分による抵抗体膜の化学変化を防止するようになされている。
【0007】
これら窒化シリコンSi3 N4 による保護層、β−タンタル層による耐キャビテーション層は、厚みを厚くした方が、プリンタヘッドとしての信頼性を向上し得るものの、厚みを厚くすると発熱素子の熱を効率良くインク液室に伝導し得なくなる。このため一般に、窒化シリコンSi3 N4 による保護層は、0.15〜0.16〔μm〕の膜厚により作成され、β−タンタル層による耐キャビテーション層は、0.2〔μm〕程度の膜厚により作成されるようになされている。
【0008】
またβ−タンタル層においては、圧縮応力が1.0〜2.0×1010〔dynes/cm2 〕である高い圧縮応力(compressive stress)を有する膜であることにより、窒化シリコンSi3 N4 による保護層、β−タンタル層による耐キャビテーション層においては、下層の窒化シリコンSi3 N4 による保護層に強い応力が加わり、この保護層にクラック(亀裂)が発生する場合がある。このようなクラックが発生すると、プリンタヘッドでは、このクラックからインク液室のインクが侵入し、このようにして侵入したインクを介して配線パターンがショートしたり、発熱素子が腐食断線する。
【0009】
このため特開平6−27713号公報においては、β−タンタル層による耐キャビテーション層を膜厚0.7〜2.0〔μm〕により作成する場合に、耐キャビテーション層の応力を1.0×108 〜1.0×1010〔dynes/cm2 〕に設定して、このようなクラックの発生を防止する方法が開示されるようになされている。
【0010】
これに対して特許第2810759号、特開2001−80077号公報においては、発熱素子をタンタルアルミニウムにより作成する場合に、アルミニウムの含有量を40〜60〔at%〕として、アモルファス状態により作成することが提案されるようになされている。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−27713号公報
【特許文献2】
特許第2810759号
【特許文献3】
特開2001−80077号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこの種の耐キャビテーション層においては、発熱素子の抵抗体膜と同様に、スパッタリングにより作成され、スパッタリングにより作成するβ−タンタル層においては、直流パワー、圧力、アルゴンガス流量等の成膜条件を種々に設定しても、応力を変化させることが困難であり、これにより所望する膜厚によっては、クラックの発生を完全に防止し得ないことが判った。
【0013】
これにより種々に検討した結果、アルミニウムの含有量を30〔at%〕以下として、β−タンタルによる結晶粒界の間に、アルミニウムが存在する構造のタンタルアルミニウムにより耐キャビテーション層を作成すれば、下層の保護層への応力を小さくし得、クラックの発生を防止し得ることが判った。
【0014】
これにより発熱素子及び耐キャビテーション層の双方をタンタルアルミニウムにより作成すれば、その分、プリンタヘッドの製造工程を簡略化し得ると考えられる。
【0015】
しかしながらこの場合、耐キャビテーション層においては、アルミニウムの含有量を30〔at%〕以下としてβ−タンタルによる結晶粒界の間にアルミニウムが存在する構造により作成することが必要なのに対し、発熱素子においては、アルミニウムの含有量を30〜60〔at%〕としてアモルファス状態により作成することが必要になる。
【0016】
これにより結局、発熱素子及び耐キャビテーション層の双方をタンタルアルミニウムにより作成するようにしても、スパッタリングによりこれらを作成する場合には、それぞれ発熱素子及び耐キャビテーション層の組成に対応するターゲットを用意しなければならない問題がある。すなわちスパッタリングのターゲットにおいては、成膜目標の組成比に応じた組成比により各材料の粉体を混合、焼結して作成されることにより、このように成膜目標の組成比が異なる場合、それぞれ発熱素子及び耐キャビテーション層の成膜に、専用のターゲットが必要になる。
【0017】
この問題を解決する1つの方法として、いわゆるコスパッタ法を適用することが考えられる。すなわちこの場合、タンタルとアルミニウムとの2つのターゲットを用意し、各ターゲットによるスパッタ量を可変することにより、それぞれ発熱素子及び耐キャビテーション層に求められる組成比によりタンタルアルミニウムを成膜し、これにより発熱素子及び耐キャビテーション層の2つの成膜に共通のターゲットを使用できると考えられる。
【0018】
しかしながらこのコスパッタ法においては、同時に2つのターゲットをスパッタリングするためにダストが発生し易く、このようなダストにあっては、半導体製造プロセスを利用したプリンタヘッドの製造工程において、極力、発生を防止しなければならない。
【0019】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、プリンタヘッドの発熱素子、耐キャビテーション層のように、構成材料が同一であって組成比が異なる薄膜を成膜することができる成膜方法、この成膜方法を用いた液体吐出ヘッドの作成方法を提案しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、発熱素子の駆動により液室に保持した液体を加熱して所定のノズルから液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの作成方法に適用して、構成材料及び構成材料の組成比が同一のターゲットを用いた、ターゲットまでの距離を異ならせたスパッタリングにより、発熱素子と、液室の発熱素子側の面に設けられて発熱素子を保護する保護層とを、構成材料が同一で、構成材料の組成比が異なる所望の組成比により作成する。
【0021】
また請求項5の発明においては、成膜方法に適用して、所定のターゲットを用いたスパッタリングにより所定の基板に第1の組成比による第1の薄膜を成膜し、ターゲットと構成材料及び構成材料の組成比が同一のターゲットを用いたスパッタリングであって、第1の薄膜におけるスパッタリングに比して基板及びターゲット間の間隔に異ならせたスパッタリングにより、第1の組成比と異なる第2の組成比による第2の薄膜を成膜する。
【0022】
スパッタリングによる成膜においては、一定の範囲以上、ターゲットと基板との間隔を大きくすると、この間隔の増大により質量の小さな構成材料の含有量が小さくなって成膜される。これにより請求項1の構成により、液体吐出ヘッドの作成方法に適用して、構成材料及び構成材料の組成比が同一のターゲットを用いた、ターゲットまでの距離を異ならせたスパッタリングにより、発熱素子と、液室の発熱素子側の面に設けられて発熱素子を保護する保護層とを、構成材料が同一で、構成材料の組成比が異なる所望の組成比により作成すれば、一種類のターゲットを用いて、構成材料が同一であって組成比が異ってなる発熱素子、保護層を作成することができる。
【0023】
またこれにより請求項5の構成によれば、一種類のターゲットを用いて、構成材料が同一であって組成比が異ってなる第1及び第2の薄膜を成膜することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0025】
(1)実施の形態の構成
図2は、本発明の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドを示す断面図である。プリンタヘッド11は、N型シリコン基板による半導体ウエハに複数ヘッド分の駆動回路、発熱素子等が作成された後、各ヘッドチップにスクライビング処理され、各ヘッドチップにインク液室等を作成して形成される。
【0026】
すなわちプリンタヘッド11においては、図3(A)に示すように、シリコン基板12を洗浄した後、シリコン窒化膜を堆積し、リソグラフィー工程、リアクティブイオンエッチング工程により余分なシリコン窒化膜が除去され、これにより半導体素子13、14の作成領域にシリコン窒化膜によるマスクが作成される。また続く熱酸化処理により、半導体素子13、14の作成領域以外の部位に、素子分離領域(LOCOS: Local Oxidation Of Silicon )15が形成される。なお素子分離領域は、膜厚500〔nm〕により熱シリコン酸化膜が作成され、後のエッチング処理により膜厚が薄くなり、最終的に膜厚260〔nm〕により作成される。
【0027】
このようにして素子分離領域15が作成されると、続いてプリンタヘッド11は、シリコン基板12が洗浄された後、トランジスタの作成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートが作成される。さらにソースドレインの作成領域がイオン注入工程、熱処理工程により処理され、これによりMOS(Metal−Oxide−Semiconductor )型によるトランジスタ13、14等が作成される。なおここでトランジスタ13は、18〔V〕程度の耐圧を有するMOS型ドライバートランジスタであり、発熱素子の駆動に供するものである。これに対してトランジスタ14は、このトランジスタ13を制御する集積回路を構成するトランジスタであり、5〔V〕の電圧により動作するものである。なおこの実施の形態においては、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層が形成され、その部分で加速される電子の電界を緩和することで耐圧を確保してトランジスタ13が形成されるようになされている。
【0028】
続いてプリンタヘッド11は、CVD法によりリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG(Phosphorus Silicate Glass )膜、ボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass )膜が順次膜厚100〔nm〕、500〔nm〕により堆積され、これらにより1層目の層間絶縁膜16が膜厚600〔nm〕により形成される。
【0029】
続いてフォトリソグラフィー工程の後、C4 F8 /CO/O2 /Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチングによりシリコン半導体拡散層(ソースドレイン)上にコンタクトホール17が作成される。続いてプリンタヘッド11は、希フッ酸により洗浄された後、スパッタリング法により、膜厚30〔nm〕によるチタンコンタクトメタル膜(Ti)、膜厚70〔nm〕による窒化酸化バリアメタル膜(TiON)、膜厚30〔nm〕によるチタンコンタクトメタル膜(Ti)が順次堆積される。さらにシリコンを1〔at%〕添加したアルミニウム又は銅を0.5〔at%〕添加したアルミニウムが膜厚500〔nm〕により堆積され、反射防止膜としての窒化酸化チタン膜(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積される。プリンタヘッド11は、これらにより第1層目の配線パターン層が作成され、続くフォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程により、この配線パターン層がパターニング処理されて1層目の配線パターン18が作成される。プリンタヘッド11は、このようにして作成された1層目の配線パターン18により駆動回路を構成するMOS型トランジスタ13、14を接続してロジック集積回路が形成される。
【0030】
続いてプリンタヘッド11は、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2 H5 )4 )を原料ガスとしたCVD法により層間絶縁膜であるシリコン酸化膜が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、有機溶媒であるSOG(Spin On Glass )を含む塗布型シリコン酸化膜を塗布した後、フッ素系ガスを用いたエッチバック処理により、シリコン酸化膜が平坦化され、これらの処理が2回繰り返されて1層目の配線パターン18と続く2層目の配線パターンとを絶縁する2層目の層間絶縁膜19が膜厚440〔nm〕のシリコン酸化膜により形成される。
【0031】
続いてプリンタヘッド11は、図3(B)に示すように、抵抗体膜が作成された後、この抵抗体膜のパターニングにより発熱素子20が作成される。この実施の形態において、この抵抗体膜は、タンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングによりタンタルとアルミニウムとの組成比が7:3のアモルファス状態により作成される。この実施の形態では、このターゲットが、後述する耐キャビテーション層を作成する際に使用されるターゲットと同一のターゲットであるタンタルとアルミニウムとの組成比が6:4であるターゲットが適用される。また図1(A)の及び(B)に示すように、ターゲットTと基板12との間隔Lを60〔mm〕以下に設定したスパッタリングにより抵抗体膜を成膜する。なお図1(A)は、スパッタリング装置における基板とターゲットとの関係を示す概略断面図である。
【0032】
すなわちこのようなタンタルアルミニウムによる合金ターゲットを用いたスパッタリングにおいては、タンタルとアルミニウムとで質量が異なることにより、タンタルとアルミニウムとでスパッタリング率が異なり、実際に成膜されるタンタルアルミニウムにおいては、アルミニウムの含有量がターゲットに比して少なくなる。具体的に、組成比5:5によるタンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングにおいては、通常、アルミニウムの含有量が40〔at%〕程度のタンタルアルミニウム膜が成膜される。
【0033】
図1(B)に示す測定結果は、組成比6:4(アルミニウム含有量が40〔at%〕)によるタンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングにおいて、成膜されたタンタルアルミニウム膜における組成比を示すものであり、基板とターゲットの間隔Lが一定値以下の場合、間隔Lを変化させても組成比が一定の値となるのに対し、この間隔Lを一定値以上に広げると、質量の軽い側であるアルミニウムの含有量が距離Lに応じて少なくなることが判った。すなわち距離Lが60〔mm〕、45〔mm〕の場合では、タンタルとアルミニウムの組成比が7:3(アルミニウム含有量が30〔at%〕)によりタンタルアルミニウム膜が成膜されるのに対し、距離Lが80〔mm〕の場合、タンタルとアルミニウムの組成比が9:1(アルミニウム含有量が10〔at%〕)によりタンタルアルミニウム膜が成膜される。
【0034】
これにより距離Lを60〔mm〕以下に設定した組成比6:4によるタンタルアルミニウムのターゲットを用いたスパッタリングにより、発熱素子に好適な組成比によりタンタルアルミニウム膜を成膜し得るのに対し、同一のターゲットを用いた距離80〔mm〕によるスパッタリングにより、耐キャビテーション層に好適な組成比によるタンタルアルミニウム膜を成膜することができる。なお、図1(B)に示す組成比の測定は、電子プローブ微小検出法(EPMA)により、電子ビームを試料に照射して発生する特性X線を検出して実行した。
【0035】
この実施の形態では、これらにより基板12及びターゲットの間隔Lを60〔mm〕以下に設定し、上述したターゲットを用いたスパッタリングにより、膜厚50〜100〔nm〕により抵抗体膜を成膜した。なおこの場合、直流パワーは、1〜4〔kW〕、基板温度は、150〜250度、アルゴンガス流量は、30〜60〔sccm〕であり、成膜された抵抗体膜においては、比抵抗が250〜280〔μΩ−cm〕であった。またフォトリソグラフィー、BCl3 /Cl2 系ガスを用いたドライエッチングにより、正方形形状に、又は一端を配線パターンにより接続するとした折り返し形状により、このようにして作成した抵抗体膜をパターニングし、発熱素子20を作成する。なお抵抗体膜を膜厚50〔nm〕により作成した場合、正方形形状による発熱素子20においては、抵抗値が60〔Ω〕となり、また一端を配線パターンにより接続するとした折り返し形状による場合には、膜厚を80〔nm〕により作成して抵抗値は140〔Ω〕となった。
【0036】
続いてプリンタヘッド11は、図4(C)に示すように、CVD法により膜厚300〔nm〕による窒化シリコンが堆積されて、発熱素子20を保護する保護層21が形成される。
【0037】
また続いて図4(D)に示すように、フォトリソグラフィー処理、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング処理により保護層21に接続孔を開口してビアホール22が作成される。このときプリンタヘッド11において、発熱素子20は、配線パターンを接続する部位については保護層21が取り除かれる。
【0038】
続いてプリンタヘッド11は、図5(E)に示すように、スパッタリング法により、膜厚200〔nm〕によるチタン膜(Ti)を堆積した後、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニウム又は銅を0.5〔at%〕添加したアルミニウムが膜厚600〔nm〕により堆積され、反射防止膜としての窒化酸化チタン膜(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積される。プリンタヘッド11は、これらにより第2層目の配線パターン層23が作成され、続くフォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 系ガスを用いたドライエッチング工程により、図5(F)に示すように、この配線パターン層23がパターニング処理されて2層目の配線パターン24が作成される。プリンタヘッド11では、この2層目の配線パターン24により発熱素子20を電源に接続し、さらに発熱素子20を駆動回路に接続するようになされている。また発熱素子20上に取り残された窒化シリコンによる保護層21においては、これら配線パターンを作成する際の保護層としても機能することになる。
【0039】
続いてプリンタヘッド11は、図6(G)に示すように、CVD法により膜厚400〔nm〕により窒化シリコンが堆積され、これにより発熱素子20の上層にオーバーコート層としての保護層25がさらに堆積される。
【0040】
続いてプリンタヘッド11は、ウエハ熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガス(フォーミングガス)の雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド11は、トランジスタ13、14の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン18と2層目の配線パターン24との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。
【0041】
続いてプリンタヘッド11は、図7(H)に示すように、スパッタリングにより耐キャビテーション層が作成される。ここでこの実施の形態においては、発熱素子の作成に供したタンタルとアルミニウムの組成比が6:4の合金ターゲットを用いて、基板12とターゲットとの間隔Lを80〔mm〕に設定し、これによりタンタルとアルミニウムの組成比が9:1であって、かつβ−タンタルによる結晶粒界の間にアルミニウムが存在する構造により、耐キャビテーション層の材料層を成膜する。なおこのようなターゲットと基板12との間隔L以外については、上述した発熱素子作成時のスパッタリングと同一の条件に設定される。これによりこの実施の形態では、同一のターゲットを用いたスパッタリングにより、材料が同一であって組成比が異なる発熱素子、耐キャビテーション層を成膜して、その分、工程管理の簡略化等、種々の利便を図るようになされている。
【0042】
なおこの実施の形態では、この耐キャビテーション層の材料層を膜厚100〜200〔nm〕により成膜した。また、図8に基板12とターゲットとの間隔Lをそれぞれ45〔mm〕、60〔mm〕の場合との対比により示すように、この材料膜においては、膜応力が630〔MPa〕の圧縮応力であった。なおβ−タンタルの場合、膜応力は、980〔MPa〕の圧縮応力である。因みに、比抵抗は、170〜180〔μΩ−cm〕であった。
【0043】
プリンタヘッド11は、フォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 系ガスを用いたドライエッチング工程により、このようにして成膜した耐キャビテーション層の材料層がパターニングされて耐キャビテーション層26が作成される。
【0044】
プリンタヘッド11は、続いて図2に示すように、有機系樹脂によるドライフィルム31が圧着により配置された後、インク液室34、インク流路に対応する部位が取り除かれ、その後硬化され、これによりインク液室34の隔壁、インク流路の隔壁等が作成される。
【0045】
また続いて各チップにスクライビングされた後、ノズルプレート35が積層される。ここでノズルプレート35は、発熱素子20の上に微小なインク吐出口であるノズル36を形成するように所定形状に加工された板状部材であり、ドライフィルム31上に接着により保持される。これによりプリンタヘッド11は、ノズル36、インク液室34、このインク液室34にインクを導くインク流路等が形成されて作成される。
【0046】
(2)実施の形態の動作
以上の構成において、プリンタヘッド11は、半導体基板であるN型シリコン基板12に素子分離領域15が作成されて半導体素子であるトランジスタ13、14が作成され、絶縁層16により絶縁されてこれらトランジスタ13、14が配線パターン18により接続されて駆動回路が作成される。また絶縁層19を介して発熱素子20が作成され、この発熱素子20が配線パターン24により駆動回路に接続された後、保護層25、耐キャビテーション層26、インク液室34、ノズル36が順次形成されて作成される(図2〜図7)。
【0047】
このプリンタヘッド11は、このようにして作成されたインク液室34にインクが導かれ、トランジスタ13、14による発熱素子20の駆動により、インク液室34に保持したインクが加熱されて気泡が発生し、この気泡によりインク液室34内の圧力が急激に増大する。プリンタでは、この圧力の増大によりインク液室34のインクがインク液滴としてノズル36から飛び出し、このインク液滴が対象物である用紙等に付着する。またこのような気泡の発生、消滅の繰り返しにより機械的な衝撃が発生し、インク液室34の発熱素子20側面に設けられた保護層である耐キャビテーション層26により、発熱素子20がこの衝撃から、さらにはインクから保護される。
【0048】
プリンタヘッド11は、この耐キャビテーション層26が、アルミニウムの含有量を30〔at%〕以下としてβ−タンタルによる結晶粒界の間にアルミニウムが存在する構造により作成され、これにより発熱素子20の駆動の繰り返す場合にあってもインクに対する耐性を十分に確保することができるようになされ、また発熱素子20との間に設けられた窒化シリコンによる保護層21、25においてクラックの発生を防止し得るようになされている。
【0049】
また発熱素子20においては、アルミニウムの含有量を30〜60〔at%〕としたアモルファス状態のタンタルアルミニウム膜により作成され、これにより駆動の繰り返しによっても十分な信頼性を確保し得るようになされている。なおこのようにして発熱素子を作成する場合、アルムニウムの含有量を多くした方が比抵抗を高くでき、発熱素子として望ましい。
【0050】
またこのようにして発熱素子20及び耐キャビテーション層26を、構成材料が同一で、組成比が異なる薄膜により作成するようにして、構成材料及び組成比が同一のターゲットを用いたスパッタリングにより、ターゲットまでの距離を異ならせてこれら薄膜が成膜される。すなわちスパッタリングにおいては、この距離が一定以下の範囲においては、距離を可変してもターゲットの組成比に依存した一定の組成比により成膜されるのに対し、一定値以上距離を大きくすると、距離の増大に伴い質量の軽い構成材料の含有量が低下して成膜される。これによりこの実施の形態においては、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、構成材料が同一であって組成比が異なる発熱素子、耐キャビテーション層を成膜し得るようになされ、その分、工程管理の利便等を図ることができるようになされている。
【0051】
(3)実施の形態の効果
以上の構成によれば、基板及びターゲットの間隔を異ならせて構成材料の組成比を変化させることにより、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、構成材料が同一であって組成比が異なる発熱素子、耐キャビテーション層を作成することができる。
【0052】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、それぞれ組成比7:3及び9:1により発熱素子及び耐キャビテーション層を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら以外の組成比により作成する場合にも広く適用することができる。
【0053】
また上述の実施の形態においては、組成比6:4による合金ターゲットを用いて発熱素子及び耐キャビテーション層を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この組成比以外の組成比によるターゲットを用いて発熱素子及び耐キャビテーション層を作成する場合にも広く適用することができる。因みに、タンタルとアルミニウムの組成比を5:5としたターゲットにより、ターゲットと基板との間隔を60〔mm〕以下に設定すれば、さらにアルミニウムの含有量を増大させて発熱素子を作成することができる。
【0054】
また上述の実施の形態においては、ターゲットと基板との間隔に対して組成比が変化する点に鑑み、単に、所望の組成比により成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図8にターゲットと基板との間隔に対する膜応力の変化を示すように、間隔により膜応力も変化することにより、この関係を利用して膜応力の小さな耐キャビテーション層を作成することもできる。すなわちタンタルアルミニウム膜においては、間隔を80〔mm〕から45〔mm〕に変化させると、膜応力においては630〔MPs〕から90.5〔MPs〕に急激に変化する。これにより耐キャビテーション層を、間隔45〔mm〕によるスパッタリングで成膜した第1のタンタルアルミニウム膜と、間隔80〔mm〕によるスパッタリングで成膜した第2のタンタルアルミニウム膜との積層構造として、第1のタンタルアルミニウム膜を応力緩和層として利用することができる。
【0055】
また上述の実施の形態においては、発熱素子については、距離を変化させても組成比が変化しない範囲でスパッタリングする場合について述べたが、本発明はこれに限らず、さらにアルミニウムの含有量を増大させたターゲットを用いて、発熱素子及び耐キャビテーション層の双方を、距離の変化により組成比が変化する範囲でスパッタリングするようにしてもよい。
【0056】
また上述の実施の形態においては、タンタルアルミニウム膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、タンタルアルミニウム膜以外の薄膜を作成する場合にも広く適用することができる。
【0057】
また上述の実施の形態においては、タンタル及びアルミニウムによる2種類の構成材料により薄膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、3種類以上の構成材料により薄膜を作成する場合にも広く適用することができる。
【0058】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してインク液滴を飛び出させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク液滴に代えて各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等を飛び出させる液体吐出ヘッド、さらには液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、液滴がエッチングより部材を保護する薬剤である各種のパターン描画装置等に広く適用することができる。
【0059】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してタンタルアルミニウム膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の部品等において、構成材料が同一で組成比の異なる第1及び第2の薄膜を作成する場合に広く適用することができる。
【0060】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、基板及びターゲットの間隔を異ならせて構成材料の組成比を変化させることにより、一種類のターゲットを用いたスパッタリングにより、プリンタヘッドの発熱素子、耐キャビテーション層のように、構成材料が同一であって組成比が異なる薄膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタヘッドの発熱素子及び耐キャビテーション層の作成の説明に供する略線図である。
【図2】図1のプリンタヘッドを示す断面図である。
【図3】図2のプリンタヘッドの製造手順を示す断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図4の続きを示す断面図である。
【図6】図5の続きを示す断面図である。
【図7】図6の続きを示す断面図である。
【図8】基板及びターゲット間の間隔と膜応力との関係を示す図表である。
【符号の説明】
11……プリンタヘッド、12……基板、20……発熱素子、26……耐キャビテーション層
Claims (5)
- 発熱素子の駆動により液室に保持した液体を加熱して所定のノズルから前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの作成方法において、
構成材料及び前記構成材料の組成比が同一のターゲットを用いた、前記ターゲットまでの距離を異ならせたスパッタリングにより、
前記発熱素子と、前記液室の前記発熱素子側の面に設けられて前記発熱素子を保護する保護層とを、
構成材料が同一で、前記構成材料の組成比が異なる所望の組成比により作成する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの作成方法。 - 前記発熱素子における前記ターゲットまでの距離に比して、前記保護層における前記ターゲットまでの距離を大きくすることにより、
前記発熱素子の構成材料の中で質量の軽い構成材料の含有率を少なくして前記保護層を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの作成方法。 - 前記発熱素子における前記ターゲットまでの距離が、前記距離を可変しても前記発熱素子における組成比が変化しない範囲に設定された
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッドの作成方法。 - 前記構成材料がタンタル及びアルミニウムであり、
前記発熱素子における前記組成比が、前記アルミニウムの含有量が30〜60〔at%〕の組成比であり、
前記保護層における前記組成比が、前記アルミニウムの含有量が30〔at%〕以下の組成比である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッドの作成方法。 - 所定のターゲットを用いたスパッタリングにより所定の基板に第1の組成比による第1の薄膜を成膜し、
前記ターゲットと構成材料及び前記構成材料の組成比が同一のターゲットを用いたスパッタリングであって、前記第1の薄膜におけるスパッタリングに比して前記基板及び前記ターゲット間の間隔に異ならせたスパッタリングにより、前記第1の組成比と異なる第2の組成比による第2の薄膜を成膜する
ことを特徴とする成膜方法。
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JP2003070085A JP2004276380A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 液体吐出ヘッドの作成方法及び成膜方法 |
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-
2003
- 2003-03-14 JP JP2003070085A patent/JP2004276380A/ja active Pending
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