JP2004076139A - 成膜方法、液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、成膜方法、液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法に関し、例えばインクジェット方式によるプリンタに適用して、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができるようにする。
【解決手段】本発明は、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させ、又はタンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明は、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させ、又はタンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜方法、液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法に関し、例えばインクジェット方式によるプリンタに適用することができる。本発明は、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、さらにはタンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野において、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まってきている。このニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式及び熱現像銀塩方式等のカラーコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の液滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するものであり、簡易な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、ノズルからインク液滴を飛翔させる方法の相違により、静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)及びサーマル方式に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、インクの局所的な加熱により気泡を発生させ、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができるようになされている。
【0005】
すなわちこのサーマル方式によるプリンタは、プリンタヘッドは、インクを加熱する発熱素子が、発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路等と共に一体に半導体基板上に搭載される。これによりこの種のプリンタヘッドにおいては、発熱素子を高密度に配置して確実に駆動できるようになされている。
【0006】
すなわちこのサーマル方式のプリンタにおいて、高画質の印刷結果を得るためには、発熱素子を高密度で配置する必要がある。具体的に、例えば600〔DPI〕相当の印刷結果を得るためには、発熱素子を42.333〔μm〕間隔で配置することが必要になるが、このように高密度で配置した発熱素子に個別の駆動素子を配置することは極めて困難である。これによりプリンタヘッドでは、半導体基板上にスイッチングトランジスタ等を作成して集積回路技術により対応する発熱素子を接続し、さらにはこの半導体基板上に作成した駆動回路により各スイッチングトランジスタを駆動することにより、簡易かつ確実に各発熱素子を駆動できるようになされている。
【0007】
またサーマル方式によるプリンタにおいては、発熱素子による加熱によりインクに気泡が発生し、ノズルからインクが飛び出すと、この気泡が消滅する。これにより発砲、消砲を繰り返す毎にキャビテーションによる機械的な衝撃を受ける。さらにプリンタヘッドは、発熱素子の発熱による温度上昇と温度下降とが、短時間〔数μ秒〕で繰り返され、これにより温度による大きなストレスを受ける。
【0008】
このためプリンタヘッドは、例えばタンタルアルミにより発熱素子が形成され、この発熱素子上に窒化シリコン、炭化シリコン等による保護層が形成され、この保護層により耐熱性、絶縁性が向上され、また発熱素子とインクとの直接の接触を防止するようになされている。またこの保護層の上層に、キャビテーションによる機械的な衝撃を緩和する耐キャビテーション層が形成される。ここで耐キャビテーション層は、インクによる腐食に対する耐久性に優れ、かつ耐熱性にも優れているタンタル等により形成されるようになされている。
【0009】
従来、プリンタヘッドにおいては、このような耐キャビテーション層にβ−タンタルが適用され、この耐キャビテーション層が、スパッタリングにより作成されるようになされている。すなわちβ−タンタルにおいては、正方晶構造であり、発熱素子により加熱してもインク中の含有物との間で化学反応を起こし難く、これにより酸化され難いことが知られている(IS&T 9th International congress on advance in non−impact printing techonologies,October4−8,1993 Yokohama)。これによりプリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層の酸化による熱伝導率の低下を防止し、発熱素子からインクへの熱伝導率が使用により変化しないようになされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところでβ−タンタルによる耐キャビテーション層に代えて、β−タンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在する構造であるタンタルアルミ膜(アルミ含有量30〔at%〕以下)により耐キャビテーション層を形成すれば、プリンタヘッドの信頼性を一段と向上できると考えられる。
【0011】
すなわちβ−タンタルによる耐キャビテーション層の場合、1.0×1010〜2.0×1010〔dyns/cm2 〕の高い圧縮応力を有することにより、プリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層の下層である保護層に強い圧縮応力が加わり、保護層にクラックが発生する恐れがある。このように保護層にクラックが発生すると、プリンタヘッドにおいては、クラックからインクが浸入し、配線パターン、発熱素子がインクにより腐食し、ついにはインクを介して配線パターンが短絡し、また発熱素子が断線して信頼性が低下する。
【0012】
β−タンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在する構造であるタンタルアルミ膜においては、膜応力がほぼ3.5×109 〔dyns/cm2 〕程度の圧縮応力であり、これにより下層の保護層への応力が低減され、クラックの発生を未然に防止できると考えられる。因みに、このように耐キャビテーション層の圧縮応力を低減することに関して、特開平06−297713号公報には、耐キャビテーション層が厚さ0.7〜2.0〔μm〕のとき、圧縮応力を1.0×108 〜1.0×1010〔dyns/cm2 〕に設定することにより、保護層の損傷を防止できることが開示されている。
【0013】
なおこのような構成に係るプリンタヘッドにおいては、このような保護層の損傷を防止する1つの方法として、タンタルアルミによる耐キャビテーション層の採用に代えて、保護層の厚みを厚くする方法が考えられる。しかしながら保護層の厚みを厚くすると、その分、インク液室への熱伝導率が低下することにより、インクを吐出させるために必要な熱エネルギーが増大し、これにより消費電力が増大する欠点がある。因みに、従来のプリンタヘッドにおいては、少ない消費電力により発熱素子を駆動してインク液滴を安定に飛び出させるように保護層が厚さ0.2〜0.6〔μm〕により作成され、また耐キャビテーション層が厚さ0.2〔μm〕程度に作成されるようになされている。
【0014】
しかしながらこのような所望の結晶構造によりタンタルアルミ膜を作成する場合には、この結晶構造に対応する組成比にタンタルとアルミニュームとの組成比を設定することが必要なのに対し、一般的な生成方法であるスパッタリングによりこのようなタンタルアルミ膜を作成する場合、組成比の制御が困難な問題がある。
【0015】
すなわちタンタルアルミのスパッタリングにおいては、一般に、タンタルの粉体とアルミニュームの粉体とを所望の組成比で混合、焼結させて形成したタンタルアルミの合金ターゲットを用いて、アルゴンプラズマによりスパッタリングするようになされている。
【0016】
しかしながらタンタルとアルミニュームとでは質量が異なることにより、このような成膜においては、タンタルとアルミニュームとでスパッタリング率が異なり、成膜されたタンタルアルミ膜においては、ターゲットの組成比に比してアルミニュームの組成比が小さくなる。
【0017】
具体的に、タンタルとアルミニュームとの組成比が6:4による合金ターゲットを用いて耐キャビテーション層を作成した場合、耐キャビテーション層においては、アルミニュームの含有量が15〔at%〕程度となった。またタンタルとアルミニュームとの組成比が5:5による合金ターゲットを用いてスパッタリングにより発熱素子の抵抗膜を作成した場合、抵抗膜においては、アルミニュームの含有量が40〔at%〕程度となり、スパッタリング装置のコンディションによって、アルミニュームの含有量が27〔at%〕程度となる場合もあった。
【0018】
これに対してタンタルアルミ膜においては、アルミニュームの含有量が少ない範囲では、タンタルの結晶粒界をアルミニュームが埋めている構造であり、アルミニュームの含有量が増大すると、徐々に、アモルファス構造、タンタルとアルミニュームとの合金の微結晶粒による構造に変化する。タンタルアルミにおいては、アルミニュームの含有量が27〔at%〕程度の場合、β−タンタルによる結晶構造がアモルファス構造に変化する遷移過程状態の結晶構造となっており、このような結晶構造においては、発熱素子に適用した場合、アモルファス構造による場合に比して、通電により断線し易くなる。
【0019】
これらの問題を解決する1つの方法として、いわゆるコスパッタ法の適用が考えられる。すなわちこの場合、コスパッタ法においては、タンタルによるターゲットとアルミニュームによるターゲットとを2つ用意し、これら2つのターゲットを同時に用いてスパッタリングすることにより、タンタルアルミ膜を作成することができる。またこのとき、各ターゲットのスパッタリング量を可変させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜を作成することができる。
【0020】
しかしながらコスパッタ法においては、合金ターゲットを用いる場合に比して、著しくダストが発生し、これによりダストを非常に嫌う半導体プロセスによるインクジェットプリントヘッド製造プロセスにおいては、容易に適用できない問題がある。
【0021】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる成膜方法、この成膜方法による液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法を提案しようとするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させる。
【0023】
また請求項4の発明においては、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させる。
【0024】
また請求項7の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元したタンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長によるタンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0025】
また請求項8の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子を保護する耐キャビテーション層が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元したタンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長によるタンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0026】
また請求項9の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させた窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長による窒化タンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0027】
また請求項10の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子を保護する耐キャビテーション層が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させた窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長による窒化タンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0028】
また請求項11の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を作成する。
【0029】
また請求項12の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を保護する耐キャビテーション層を作成する。
【0030】
また請求項13の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を作成する。
【0031】
また請求項14の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を保護する耐キャビテーション層を作成する。
【0032】
請求項1の構成によれば、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、TaCl5 、TaBr5 で代表されるタンタルハロゲン化物ガスによりタンタルの成膜種が供給される一方で、DMAHの熱分解によりアルミニュームの成膜種が供給され、これらの成膜種が反応してタンタルアルミ膜が成膜する。これによりタンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによるタンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これらタンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。これによりこれらタンタルハロゲン化物ガス、DMAHの流量の制御により、所望の組成比によるタンタルアルミ膜を簡易に作成することができる。
【0033】
また請求項4の構成によれば、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、TaCl5 、TaBr5 で代表されるタンタルハロゲン化物ガスにより窒化タンタルの成膜種が供給される一方で、DMAHの熱分解によりアルミニュームの成膜種が供給され、これらの成膜種が反応して窒化タンタルアルミ膜が成膜される。これにより窒化タンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによる窒化タンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これら窒化タンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。これによりこれらタンタルハロゲン化物ガス、DMAHの流量の制御により、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜を簡易に作成することができる。
【0034】
また請求項7、請求項9の構成によれば、液体吐出ヘッドに適用することにより、例えばこの液滴がインク液滴、各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等である液体吐出ヘッド、この液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、この液滴がエッチングより部材を保護する薬剤であるパターン描画装置等に適用して、所望の組成比によるタンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。また気相成長により発熱素子、耐キャビテーション層が作成されることにより、スパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0035】
また請求項9、請求項10の構成によれば、液滴がインク液滴、各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等である液体吐出ヘッド、この液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、この液滴がエッチングより部材を保護する薬剤であるパターン描画装置等に適用して、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。また気相成長により発熱素子、耐キャビテーション層が作成されることにより、スパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0036】
また請求項11、請求項12の構成によれば、液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、所望の組成比によるタンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。
【0037】
また請求項13、請求項14の構成によれば、液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0039】
(1)第1の実施の形態
(1−1)実施の形態の構成
図2は、本発明の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドを示す断面図である。プリンタヘッド11は、発熱素子12の上層にシリコン窒化膜による保護層13、14が形成された後、タンタルとアルミニュームとによる合金層により耐キャビテーション層15が形成される。
【0040】
すなわち図3(A)に示すように、プリンタヘッド11は、ウエハによるN型シリコン基板16が洗浄された後、シリコン窒化膜(Si3 N4 )が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、リソグラフィー工程、リアクティブエッチング工程によりシリコン基板16が処理され、これによりトランジスタを形成する所定領域以外の領域よりシリコン窒化膜が取り除かれる。これらによりプリンタヘッド11には、シリコン基板16上のトランジスタを形成する領域にシリコン窒化膜が形成される。
【0041】
続いてプリンタヘッド11は、熱酸化工程によりシリコン窒化膜が除去されている領域に熱シリコン酸化膜が形成され、この熱シリコン酸化膜によりトランジスタを分離するための素子分離領域(LOCOS:Local Oxidation Of Silicon)17が膜厚500〔nm〕により形成される。なおこの素子分離領域17は、その後の処理により最終的に膜厚260〔nm〕に形成される。さらに続いてプリンタヘッド11は、シリコン基板16が洗浄された後、トランジスタ形成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートが作成される。さらにソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入工程、酸化工程によりシリコン基板16が処理され、MOS(Metal−Oxide−Semiconductor )型によるトランジスタ18、19等が作成される。なおここでスイッチングトランジスタ18は、25〔V〕程度の耐圧を有するMOS型ドライバートランジスタであり、発熱素子の駆動に供するものである。これに対してスイッチングトランジスタ19は、このドライバートランジスタを制御する集積回路を構成するトランジスタであり、5〔V〕の電圧により動作するものである。なおこの実施の形態においては、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層が形成され、その部分で加速される電子の電界を緩和することで耐圧を確保してドライバートランジスタ18が形成されるようになされている。
【0042】
このようにしてシリコン基板16上に、半導体素子であるトランジスタ18、19が作成されると、プリンタヘッド11は、続いてCVD(Chemical Vapor Deposition )法によりリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG(Phosphorus Silicate Glass )膜、ボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass )膜20が順次膜厚100〔nm〕、500〔nm〕により作成され、これにより全体として膜厚が600〔nm〕による1層目の層間絶縁膜が作成される。
【0043】
続いてフォトリソグラフィー工程の後、C4 F8 /CO/O2 /Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によりシリコン半導体拡散層(ソース・ドレイン)上にコンタクトホール21が作成される。
【0044】
さらにプリンタヘッド11は、希フッ酸により洗浄された後、スパッタリング法により、膜厚30〔nm〕によるチタン、膜厚70〔nm〕による窒化チタンバリアメタル、膜厚30〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚500〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、反射防止膜である窒化酸化チタン(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積され、これらにより配線パターン材料が成膜される。さらに続いてプリンタヘッド11は、フォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程により、成膜された配線パターン材料が選択的に除去され、1層目の配線パターン22が作成される。プリンタヘッド11は、このようにして作成された1層目の配線パターン22により、駆動回路を構成するMOS型トランジスタ19を接続してロジック集積回路が形成される。
【0045】
続いてプリンタヘッド11は、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2 H5 )4 )を原料ガスとしたCVD法により層間絶縁膜であるシリコン酸化膜が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、SOG(Spin On Glass )を含む塗布型シリコン酸化膜の塗布とフッ素系ガスを用いたエッチバックとにより、シリコン酸化膜が平坦化され、これらの工程が2回繰り返されて1層目の配線パターン22と続く2層目の配線パターンとの層間絶縁膜23が膜厚440〔nm〕のシリコン酸化膜により形成される。
【0046】
続いて図3(B)に示すように、プリンタヘッド11は、タンタルアルミ膜が堆積され、これによりシリコン基板16上に抵抗体膜が形成される。ここでこの実施の形態においては、この抵抗体膜をエッチングして発熱素子が形成される。このタンタルアルミ膜は、アルミニュームの含有量が40〜60〔at%〕であるように作成され、これによりアモルファス構造により作成されて、発熱素子においては、通電を繰り返しても特性が劣化しないようになされている。
【0047】
この実施の形態においては、このタンタルアルミ膜がプラズマCVDにより形成される。すなわちこのプラズマCVDでは、タンタルハロゲン化物ガス(TaCl5 又はTaBr5 )によるタンタル源ガスを水素活性種で還元することによりタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、DMAH(dimethylaluminumhydride 〔(CH3 )2 AlH〕)によるアルミ源ガスとこのタンタルの成膜種を含むプラズマ流とによりシリコン基板16にタンタルアルミ膜を気相成長させる。
【0048】
具体的に、プリンタヘッド11は、ECR(electron cyclotron resonace :電子サイクロトロン共鳴)プラズマCVD装置に搭載されてタンタルアルミ膜が成膜される。ここで図1は、ECRプラズマCVD装置1を示す断面図であり、ECRプラズマCVD装置1は、ECRプラズマ室2とCVD成膜室3とにより構成される。ECRプラズマ室2は、マイクロ波放射源4が設けられ、このマイクロ波放射源4からのマイクロ波(2.45〔GHz〕)がマイクロ波導入石英窓より導入されるようになされている。さらにECRプラズマ室2は、アルゴンガス、水素ガスが導入されるようになされ、これによりこれらアルゴンガス、水素ガスがマイクロ波により励起されてプラズマを形成し、水素活性種を生成するようになされている。すなわち水素ガスにおいては、マイクロ波によるプラズマ放電によりH2 →H2 +e− →2H+e− で表されるように水素活性種を生成する。
【0049】
ECRプラズマ室2は、周囲に電磁コイルが設けられ、この電磁コイルによる磁場をプラズマに作用させて、電子をサイクロトロン運動させるようになされている。ECRプラズマCVD装置1は、このサイクロトロン運動の周波数がマイクロ波の周波数と一致するように保持され、これによりサイクロトロン運動をマイクロ波に共鳴させ、高密度(1×1011〔cm−3〕程度)のプラズマを形成するようになされている。かくするにつきECRプラズマCVD装置1では、この場合、アルゴンガス、水素ガスにより高密度のアルゴン水素プラズマが形成されるようになされている。
【0050】
ECRプラズマCVD装置1では、このアルゴン水素プラズマ流が発散磁場の勾配により、CVD成膜室3に導入される。CVD成膜室3は、加熱試料台が設けられ、この加熱試料台にウエハによるシリコン基板16が配置され、さらにこの加熱試料台の下方に設けられた電磁コイルによりECRプラズマ室2からのプラズマ流がシリコン基板16に収束される。
【0051】
CVD成膜室3は、ECRプラズマ室2に近い側からタンタルハロゲン化物ガスによるタンタル源ガスが導入され、シリコン基板16に近い側からDMAHによるアルミ源ガスが導入される。ここでTaCl5 又はTaBr5 は、常温で固体であるため、昇華装置を用いて気化させて導入される。またDMAHは、常温で液体であるため、液体気化装置を用いて導入される。
【0052】
これによりCVD成膜室3では、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種により還元してタンタルの成膜種を形成するようになされている。なおこの還元反応においては、タンタルハロゲン化物ガスがTaCl5 の場合、TaCl5 +5H→Ta+5HClにより表され、タンタルハロゲン化物ガスがTaBr5 の場合、TaBr5 +5H→Ta+5HBrにより表される。なおこのときプラズマ中の電子、アルゴンがタンタルハロゲン化物ガス分子と衝突することにより、タンタルハロゲン化物ガス分子の乖離が促進され、タンタル成膜種の生成が促進される。
【0053】
CVD成膜室3では、このようにして生成されたタンタル成膜種が、DMAHによるアルミ源ガスと共に、プラズマ流によりシリコン基板16に導かれる。ここでシリコン基板16は、加熱試料台により300〜500度に加熱されて保持される。これによりCVD成膜室3では、シリコン基板16において、1/2〔(CH3 )2 AlH〕→Al+1/2〔(CH3 )3 Al〕+3/2CH4 により表されるように、アルミ源ガスが熱分解し、アルミ成膜種が生成される。さらにこのようにして生成されたアルミ成膜種がタンタル成膜種と反応してシリコン基板16に堆積し、タンタルアルミ膜が生成される。
【0054】
なおこの実施の形態では、マイクロ波放射源4より1.0〜2.8〔kw〕によりマイクロ波を放射し、水素ガス流量、アルゴンガス流量は、それぞれ100〜200〔sccm〕、100〜250〔sccm〕に設定した。またタンタルハロゲン化物ガスの流量は、3〜10〔sccm〕、アルミ源ガスの流量は、5〜20〔sccm〕に設定した。これらの条件で、この実施の形態では、目的とするタンタルアルミ膜の組成比に対応する流量により、タンタルハロゲン化物ガス、アルミ源ガスを導入してタンタルアルミ膜を生成する。
【0055】
このようにして発熱素子の材料膜を形成すると、プリンタヘッド11は、続いてフォトリゾグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、余剰なタンタルアルミ膜が除去され、発熱素子12が作成される。なおこの実施の形態においては、膜厚83〔nm〕によるタンタルアルミ膜が堆積され、また折り返し形状により発熱素子12が形成され、これにより発熱素子12の抵抗値が140〔Ω〕となるようになされている。なお発熱素子12においては、正方形形状により形成することも可能であり、この場合は、膜厚50〔nm〕によるタンタルアルミ膜を堆積して形成することにより抵抗値は60〔Ω〕となる。
【0056】
続いて図4(C)に示すように、プリンタヘッド11は、CVD法により膜厚300〔nm〕によるシリコン窒化膜が堆積され、発熱素子12の保護層13が形成される。続いて図4(D)に示すように、フォトリゾグラフィー工程、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、所定箇所のシリコン窒化膜が除去され、これにより発熱素子12を配線パターンに接続する部位が露出される。さらにCHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、層間絶縁膜23に開口を形成してビアホール24が作成される。
【0057】
さらに図5(E)に示すように、プリンタヘッド11は、スパッタリング法により、膜厚200〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚600〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、膜厚25〔nm〕による窒化酸化チタンが堆積され、これにより反射防止膜が形成される。これらによりプリンタヘッド11は、配線パターン材料25が成膜される。
【0058】
続いて図5(F)に示すように、フォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、成膜した配線パターン材料25が選択的に除去され、2層目の配線パターン26が作成される。プリンタヘッド11は、この2層目の配線パターン26により、電源用の配線パターン、アース用の配線パターンが作成され、またドライバートランジスタ18を発熱素子12に接続する配線パターンが作成される。なお発熱素子12の上層に取り残されたシリコン窒化膜13にあっては、この配線パターン作成の際のエッチング工程において、発熱素子12の保護層として機能する。
【0059】
続いて図6(G)に示すように、プリンタヘッド11は、CVD法によりインク保護層、絶縁層として機能するシリコン窒化膜14が膜厚400〔nm〕により堆積される。さらに熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガスの雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド11は、トランジスタ18、19の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン22と2層目の配線パターン26との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。
【0060】
続いてプリンタヘッド11は、発熱素子の抵抗体膜を作成したと同様に、ECRプラズマCVD装置によるプラズマCVDによりタンタルアルミ膜を膜厚200〔nm〕により堆積する。ここでこのタンタルアルミ膜においては、所望する組成比に対応する流量により、タンタルハロゲン化物ガス、アルミ源ガスの流量を設定して成膜され、これによりβ−タンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在する構造により作成される。プリンタヘッド11は、このタンタルアルミ膜をエッチングして耐キャビテーション層15が形成され、これにより下層の保護層の損傷を有効に回避し、信頼性を向上するようになされている。
【0061】
すなわちプリンタヘッド11は、続いてフォトレジスト処理、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング処理により、この材料膜が所定形状によりエッチング処理され、これにより図7(H)に示すように、耐キャビテーション層15が形成される。
【0062】
このようにして耐キャビテーション層15が形成されると、プリンタヘッド11は、各チップ毎にスクライビングされた後、図2に示すように、ドライフィルム31、オリフィスプレート32が順次積層される。ここで例えばドライフィルム31は、有機系樹脂により構成され、圧着により配置された後、インク液室、インク流路に対応する部位が取り除かれ、その後硬化される。これに対してオリフィスプレート32は、発熱素子12の上に微小なインク吐出口であるノズル34を形成するように所定形状に加工された板状部材であり、接着によりドライフィルム31上に保持される。これによりプリンタヘッド11は、ノズル34、インク液室35、このインク液室にインクを導くインク流路等が形成されて作成される。
【0063】
プリンタヘッド11は、このようなインク液室35が紙面の奥行き方向に連続するように形成され、これによりラインヘッドを構成するようになされている。
【0064】
(1−2)第1の実施の形態の動作
以上の構成において、プリンタヘッド11は、半導体基板であるN型シリコン基板16に素子分離領域17が作成されて半導体素子であるトランジスタ18、19が作成され、絶縁層20により絶縁されて1層目の配線パターン22が作成される。また続いて絶縁層23、発熱素子12が作成された後、保護層13、2層目の配線パターン26が作成される。さらに保護層14が作成された後、熱処理により配線パターン間、配線パターンと発熱素子等の間の接続が安定化された後、耐キャビテーション層15、インク液室35、ノズル34が順次形成されて作成される(図2〜図7)。
【0065】
このプリンタは、このようにして作成されたプリンタヘッド11のインク液室35にインクが導かれ、トランジスタ18、19による発熱素子12の駆動により、インク液室35に保持したインクが加熱されて気泡が発生し、この気泡によりインク液室35内の圧力が急激に増大する。プリンタでは、この圧力の増大によりインク液室35のインクがインク液滴としてノズル34から飛び出し、このインク液滴が印刷対象である用紙等に付着する。
【0066】
プリンタでは、このような発熱素子12の駆動が間欠的に繰り返され、これにより所望の画像等が印刷対象に印刷される。またプリンタヘッド11においては、この発熱素子の間欠的な駆動により、インク液室35内において、気泡の発生、気泡の消滅が繰り返され、これにより機械的な衝撃であるキャビテーションが発生する。プリンタヘッド11では、このキャビテーションによる機械的な衝撃が耐キャビテーション層15により緩和され、これにより保護層である耐キャビテーション層15により発熱素子12が保護される。またこの耐キャビテーション層15と保護層13、14とにより発熱素子12へのインクの直接の接触が防止され、これによっても発熱素子12が保護される。
【0067】
しかして発熱素子12においては、このように間欠的な駆動により発熱して、この発熱による熱が保護層13、14、耐キャビテーション層15を介してインク液室35のインクに伝搬し、インクの温度上昇によりインク液室35内に気泡が発生する。この実施の形態に係るプリンタヘッド11においては、このような発熱素子12の熱の熱伝導経路である耐キャビテーション層15がタンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在するように作成されており、アルミニュームにおいては、塑性に富むことにより、発熱素子12の熱により増大するタンタルの結晶粒による圧縮応力を粒界中のアルミニュームにより緩和することができ、これにより下層の保護層13、14に加わる圧縮応力を低減することができる。これによりプリンタヘッド11は、タンタルの結晶粒界にアルミニュームを有するタンタルとアルミニュームとの合金により耐キャビテーション層15を作成して、保護層13、14の損傷を防止し、信頼性の劣化を有効に回避することができるようになされている。
【0068】
またこのようなタンタルとアルミニュームとの合金においては、鉄等の半導体製造工程に有害な物質を含んでいないことにより、半導体製造工程によりプリンタヘッドを作成する場合でも、種々の障害の発生を有効に回避することができる。
【0069】
またタンタルとアルミニュームとの合金においては、タンタル、アルミニュームが半導体製造プロセスで十分に加工実績のある材料であり、その分、製造プロセスにおいて、十分な信頼性を確保することができる。また塩素系(BCl3 /Cl2 )ガスを用いてRIE加工することができ、これにより簡易に保護層である耐キャビテーション層15を作成することができる。
【0070】
これに対して発熱素子12においては、耐キャビテーション層15に比してアルミニュームの含有率が高く設定されてなる、アルミニュームの含有率が40〜60〔at%〕のタンタルアルミ膜により形成され、これによりアモルファス構造により形成され、繰り返し通電する場合でも、断線等の事故を有効に回避することができる。
【0071】
プリンタヘッド11においては、これら耐キャビテーション層15、発熱素子12を構成するタンタルアルミ膜が、タンタルハロゲン化物ガス(TaCl5 又はTaBr5 )を水素活性種で還元することによりタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、DMAHによるアルミ源ガスとこのタンタルの成膜種を含むプラズマ流とによりシリコン基板16にタンタルアルミ膜を気相成長させて作成することにより、これら2種類のガスの流量を種々に調整するだけで、流量に対応する組成比により簡易にタンタルアルミ膜を作成することができる。これによりこの実施の形態においては、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる。
【0072】
すなわちこのCVD法による成膜においては、TaCl5 、TaBr5 によりタンタルハロゲン化物ガスによりタンタルの成膜種が供給される一方で、DMAHの熱分解によりアルミニュームの成膜種が供給され、これらの成膜種が反応してタンタルアルミ膜が成膜される。これによりタンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによるタンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これらタンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。
【0073】
すなわちこれら2種類のガスの流量は一般にマスフローコントローラーにより制御され、このマスフローコントローラーは、近年、デジタル化も進んでおり、その流量制御は正確なものである。これによりこの実施の形態においては、原料ガスの流量を可変させて、タンタルアルミ膜の組成比を細かく制御することができ、スパッタリングによる場合に比べ容易かつ正確に所望する組成比によりタンタルアルミ膜を成膜することができる。
【0074】
なお特許第3254997号に開示されているように、プラズマCVDにおいては、金属ハロゲン化物ガスとプラズマとが反応してプラズマ中の水素分子が乖離し、その結果発生する水素原子の発光をモニタすることにより、金属ハロゲン化物ガスの含有量が低い場合でも、平滑性に優れた金属膜の生成条件を簡易に設定することができる特徴がある。
【0075】
なおこの実施の形態においては、反応過程において、DMAHの熱分解で発生したCH4 が乖離し、その結果発生する炭素がタンタルアルミ膜中に取り込まれることが懸念されるが、水素ガスの流量を多くすることにより、このようにして生成された炭素を水素活性種と再反応させることができ、これによりタンタルアルミ膜中への炭素の取り込みを防止することができる。
【0076】
またこのようにして生成されるタンタルアルミ膜においては、スパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても耐キャビテーション層、発熱素子に適用してプリンタヘッドの信頼性が向上される。
【0077】
(1−3)第1の実施の形態の効果
以上の構成によれば、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができるようにする。これによりプリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層に適用して耐キャビテーション層の圧縮応力による保護層の劣化を防止し、これにより信頼性の劣化を防止することができる。また発熱素子に適用して、通電による特性の劣化を防止し、これにより信頼性の劣化を防止することができる。またスパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0078】
(2)第2の実施の形態
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマCVD装置を示す断面図である。この実施の形態においては、このプラズマCVD装置により発熱素子、耐キャビテーション層を窒化タンタルアルミにより作成する。なおこの実施の形態に係るプリンタヘッドにおいては、このように発熱素子、耐キャビテーション層がこのプラズマCVD装置を用いて窒化タンタルアルミにより作成される点を除いて、第1の実施の形態に係るプリンタヘッドと同一に構成される。
【0079】
ここでこのプラズマCVD装置では、アルゴンガス、水素ガスに加えて、窒素源ガスが導入される点を除いて、第1の実施の形態に係るプラズマCVD装置1と同一に構成される。このプラズマCVD装置では、この窒素源ガスに窒素(N2 )ガス又はアンモニア(NH3 )ガスが適用されるようになされている。
【0080】
これによりこの実施の形態においては、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させるようになされている。
【0081】
すなわちこのプラズマCVD装置では、マイクロ波による水素ガスが励起されて水素活性種が生成され、この水素活性種がタンタルハロゲン化物ガスを還元する。これによりタンタルの成膜種を含むプラズマ流が生成される。プラズマCVD装置では、水素ガスと共にアルゴンガス、窒素源ガスが導入されていることにより、これらのガスもマイクロ波により励起され、窒素源ガスに窒素ガスを適用した場合には、N2 +e− →2N+e− により示されるように、窒素活性種が生成される。また窒素源ガスにアンモニアガスを適用した場合には、窒素が乖離して窒素活性種が生成される。これによりプラズマCVD装置では、水素活性種による還元作用により生成されたタンタルが、この窒素活性種と反応して窒化タンタル(TaN)が生成される。なおこれら全体の反応は、タンタルハロゲン化物ガスがTaCl5 の場合、TaCl5 +5H+N→TaN+5HClにより表され、タンタルハロゲン化物ガスがTaBr5 の場合、TaBr5 +5H+N→TaN+5HBrにより表される。
【0082】
またプラズマCVD装置では、このようにな窒化タンタルの成膜種を有するプラズマ流がDMAHと共にシリコン基板16に導かれ、DMAHにおいては、第1の実施の形態について上述したように、熱分解してアルミニュームの成膜種を生成する。これによりこのプラズマCVD装置では、これら窒化タンタルの成膜種、アルミニュームの成膜種が反応してシリコン基板に窒化タンタルアルミ膜が成膜される。
【0083】
なおこの実施の形態では、マイクロ波放射源4より周波数2.45〔GHz〕、1.0〜2.8〔kw〕によりマイクロ波を放射し、加熱試料台によりシリコン基板16を300〜500度に加熱して保持した。また水素ガス流量、アルゴンガス流量は、それぞれ100〜200〔sccm〕、100〜250〔sccm〕に設定した。また窒素源ガス流量は、2〜5〔sccm〕に設定し、タンタルハロゲン化物ガスの流量は、3〜10〔sccm〕、アルミ源ガスの流量は、5〜20〔sccm〕に設定した。これらの条件で、この実施の形態では、目的とするタンタルアルミ膜の組成比に対応する流量により、タンタルハロゲン化物ガス、アルミ源ガスを導入して窒化タンタルアルミ膜を生成した。
【0084】
すなわちこのようにして窒化タンタルアルミ膜を生成する場合でも、窒化タンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによる窒化タンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これら窒化タンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。これによりこれらタンタルハロゲン化物ガス、DMAHの流量の制御により、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜を簡易に作成することができる。
【0085】
またこのようにして窒化タンタルアルミ膜にあっては、発熱素子に適用して、タンタルアルミ膜による場合に比して、抵抗値を増大させることができ、その分発熱素子に流す電流値を小さくすることができる。因みに、第1の実施の形態と同一形状による折り返し形状により膜厚100〔nm〕で発熱素子を作成した場合、120〜320〔Ω〕の抵抗値を確保することができ、また正方形形状による場合には、膜厚50〔nm〕により発熱素子を作成して80〜160〔Ω〕の抵抗値を確保することができた。
【0086】
第2の実施の形態によれば、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる。
【0087】
これによりプリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層に適用して耐キャビテーション層の圧縮応力による保護層の劣化を防止し、信頼性の劣化を防止することができる。また発熱素子に適用して、通電による特性の劣化を防止し、これにより信頼性の劣化を防止することができる。またスパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0088】
(3)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、ECRプラズマCVD装置によりタンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ECRプラズマCVD装置に代えて、ICP(inductive coupled plasma:誘導結合)型プラズマCVD装置、ヘリコン波プラズマCVD装置等を広く適用することができる。
【0089】
また上述の実施の形態においては、発熱素子、耐キャビテーション層の双方をタンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜により成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば発熱素子においては、窒化チタン等の適用も考えられることにより、何れか一方のみタンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜により成膜する場合にも広く適用することができる。
【0090】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドの作成工程に適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば種々の集積回路の作成工程において、配線パターンの下地材としてタンタルアルミ膜を成膜する場合等、種々の工程において、タンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜を成膜する場合に広く適用することができる。
【0091】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してインク液滴を飛び出させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク液滴に代えて各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等であるプリンタヘッド、さらには液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、液滴がエッチングより部材を保護する薬剤である各種のパターン描画装置等に広く適用することができる。
【0092】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、さらにはタンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドの製造工程に適用されるプラズマCVD装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す断面図である。
【図3】図2のプリンタヘッドの作成工程の説明に供する断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図4の続きを示す断面図である。
【図6】図5の続きを示す断面図である。
【図7】図6の続きを示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタヘッドの製造工程に適用されるプラズマCVD装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1……プラズマCVD装置、11……プリンタヘッド、16……シリコン基板、12……発熱素子、13、14……保護層、15……耐キャビテーション層、18、19……トランジスタ、22、26……配線パターン
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜方法、液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法に関し、例えばインクジェット方式によるプリンタに適用することができる。本発明は、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、さらにはタンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野において、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まってきている。このニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式及び熱現像銀塩方式等のカラーコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、液体吐出ヘッドであるプリンタヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の液滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するものであり、簡易な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、ノズルからインク液滴を飛翔させる方法の相違により、静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)及びサーマル方式に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、インクの局所的な加熱により気泡を発生させ、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができるようになされている。
【0005】
すなわちこのサーマル方式によるプリンタは、プリンタヘッドは、インクを加熱する発熱素子が、発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路等と共に一体に半導体基板上に搭載される。これによりこの種のプリンタヘッドにおいては、発熱素子を高密度に配置して確実に駆動できるようになされている。
【0006】
すなわちこのサーマル方式のプリンタにおいて、高画質の印刷結果を得るためには、発熱素子を高密度で配置する必要がある。具体的に、例えば600〔DPI〕相当の印刷結果を得るためには、発熱素子を42.333〔μm〕間隔で配置することが必要になるが、このように高密度で配置した発熱素子に個別の駆動素子を配置することは極めて困難である。これによりプリンタヘッドでは、半導体基板上にスイッチングトランジスタ等を作成して集積回路技術により対応する発熱素子を接続し、さらにはこの半導体基板上に作成した駆動回路により各スイッチングトランジスタを駆動することにより、簡易かつ確実に各発熱素子を駆動できるようになされている。
【0007】
またサーマル方式によるプリンタにおいては、発熱素子による加熱によりインクに気泡が発生し、ノズルからインクが飛び出すと、この気泡が消滅する。これにより発砲、消砲を繰り返す毎にキャビテーションによる機械的な衝撃を受ける。さらにプリンタヘッドは、発熱素子の発熱による温度上昇と温度下降とが、短時間〔数μ秒〕で繰り返され、これにより温度による大きなストレスを受ける。
【0008】
このためプリンタヘッドは、例えばタンタルアルミにより発熱素子が形成され、この発熱素子上に窒化シリコン、炭化シリコン等による保護層が形成され、この保護層により耐熱性、絶縁性が向上され、また発熱素子とインクとの直接の接触を防止するようになされている。またこの保護層の上層に、キャビテーションによる機械的な衝撃を緩和する耐キャビテーション層が形成される。ここで耐キャビテーション層は、インクによる腐食に対する耐久性に優れ、かつ耐熱性にも優れているタンタル等により形成されるようになされている。
【0009】
従来、プリンタヘッドにおいては、このような耐キャビテーション層にβ−タンタルが適用され、この耐キャビテーション層が、スパッタリングにより作成されるようになされている。すなわちβ−タンタルにおいては、正方晶構造であり、発熱素子により加熱してもインク中の含有物との間で化学反応を起こし難く、これにより酸化され難いことが知られている(IS&T 9th International congress on advance in non−impact printing techonologies,October4−8,1993 Yokohama)。これによりプリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層の酸化による熱伝導率の低下を防止し、発熱素子からインクへの熱伝導率が使用により変化しないようになされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところでβ−タンタルによる耐キャビテーション層に代えて、β−タンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在する構造であるタンタルアルミ膜(アルミ含有量30〔at%〕以下)により耐キャビテーション層を形成すれば、プリンタヘッドの信頼性を一段と向上できると考えられる。
【0011】
すなわちβ−タンタルによる耐キャビテーション層の場合、1.0×1010〜2.0×1010〔dyns/cm2 〕の高い圧縮応力を有することにより、プリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層の下層である保護層に強い圧縮応力が加わり、保護層にクラックが発生する恐れがある。このように保護層にクラックが発生すると、プリンタヘッドにおいては、クラックからインクが浸入し、配線パターン、発熱素子がインクにより腐食し、ついにはインクを介して配線パターンが短絡し、また発熱素子が断線して信頼性が低下する。
【0012】
β−タンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在する構造であるタンタルアルミ膜においては、膜応力がほぼ3.5×109 〔dyns/cm2 〕程度の圧縮応力であり、これにより下層の保護層への応力が低減され、クラックの発生を未然に防止できると考えられる。因みに、このように耐キャビテーション層の圧縮応力を低減することに関して、特開平06−297713号公報には、耐キャビテーション層が厚さ0.7〜2.0〔μm〕のとき、圧縮応力を1.0×108 〜1.0×1010〔dyns/cm2 〕に設定することにより、保護層の損傷を防止できることが開示されている。
【0013】
なおこのような構成に係るプリンタヘッドにおいては、このような保護層の損傷を防止する1つの方法として、タンタルアルミによる耐キャビテーション層の採用に代えて、保護層の厚みを厚くする方法が考えられる。しかしながら保護層の厚みを厚くすると、その分、インク液室への熱伝導率が低下することにより、インクを吐出させるために必要な熱エネルギーが増大し、これにより消費電力が増大する欠点がある。因みに、従来のプリンタヘッドにおいては、少ない消費電力により発熱素子を駆動してインク液滴を安定に飛び出させるように保護層が厚さ0.2〜0.6〔μm〕により作成され、また耐キャビテーション層が厚さ0.2〔μm〕程度に作成されるようになされている。
【0014】
しかしながらこのような所望の結晶構造によりタンタルアルミ膜を作成する場合には、この結晶構造に対応する組成比にタンタルとアルミニュームとの組成比を設定することが必要なのに対し、一般的な生成方法であるスパッタリングによりこのようなタンタルアルミ膜を作成する場合、組成比の制御が困難な問題がある。
【0015】
すなわちタンタルアルミのスパッタリングにおいては、一般に、タンタルの粉体とアルミニュームの粉体とを所望の組成比で混合、焼結させて形成したタンタルアルミの合金ターゲットを用いて、アルゴンプラズマによりスパッタリングするようになされている。
【0016】
しかしながらタンタルとアルミニュームとでは質量が異なることにより、このような成膜においては、タンタルとアルミニュームとでスパッタリング率が異なり、成膜されたタンタルアルミ膜においては、ターゲットの組成比に比してアルミニュームの組成比が小さくなる。
【0017】
具体的に、タンタルとアルミニュームとの組成比が6:4による合金ターゲットを用いて耐キャビテーション層を作成した場合、耐キャビテーション層においては、アルミニュームの含有量が15〔at%〕程度となった。またタンタルとアルミニュームとの組成比が5:5による合金ターゲットを用いてスパッタリングにより発熱素子の抵抗膜を作成した場合、抵抗膜においては、アルミニュームの含有量が40〔at%〕程度となり、スパッタリング装置のコンディションによって、アルミニュームの含有量が27〔at%〕程度となる場合もあった。
【0018】
これに対してタンタルアルミ膜においては、アルミニュームの含有量が少ない範囲では、タンタルの結晶粒界をアルミニュームが埋めている構造であり、アルミニュームの含有量が増大すると、徐々に、アモルファス構造、タンタルとアルミニュームとの合金の微結晶粒による構造に変化する。タンタルアルミにおいては、アルミニュームの含有量が27〔at%〕程度の場合、β−タンタルによる結晶構造がアモルファス構造に変化する遷移過程状態の結晶構造となっており、このような結晶構造においては、発熱素子に適用した場合、アモルファス構造による場合に比して、通電により断線し易くなる。
【0019】
これらの問題を解決する1つの方法として、いわゆるコスパッタ法の適用が考えられる。すなわちこの場合、コスパッタ法においては、タンタルによるターゲットとアルミニュームによるターゲットとを2つ用意し、これら2つのターゲットを同時に用いてスパッタリングすることにより、タンタルアルミ膜を作成することができる。またこのとき、各ターゲットのスパッタリング量を可変させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜を作成することができる。
【0020】
しかしながらコスパッタ法においては、合金ターゲットを用いる場合に比して、著しくダストが発生し、これによりダストを非常に嫌う半導体プロセスによるインクジェットプリントヘッド製造プロセスにおいては、容易に適用できない問題がある。
【0021】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる成膜方法、この成膜方法による液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法を提案しようとするものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させる。
【0023】
また請求項4の発明においては、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させる。
【0024】
また請求項7の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元したタンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長によるタンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0025】
また請求項8の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子を保護する耐キャビテーション層が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元したタンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長によるタンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0026】
また請求項9の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させた窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長による窒化タンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0027】
また請求項10の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドに適用して、発熱素子を保護する耐キャビテーション層が、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させた窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長による窒化タンタルアルミ膜により作成されてなるようにする。
【0028】
また請求項11の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を作成する。
【0029】
また請求項12の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を保護する耐キャビテーション層を作成する。
【0030】
また請求項13の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を作成する。
【0031】
また請求項14の発明においては、発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させて、発熱素子を保護する耐キャビテーション層を作成する。
【0032】
請求項1の構成によれば、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、このタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、TaCl5 、TaBr5 で代表されるタンタルハロゲン化物ガスによりタンタルの成膜種が供給される一方で、DMAHの熱分解によりアルミニュームの成膜種が供給され、これらの成膜種が反応してタンタルアルミ膜が成膜する。これによりタンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによるタンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これらタンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。これによりこれらタンタルハロゲン化物ガス、DMAHの流量の制御により、所望の組成比によるタンタルアルミ膜を簡易に作成することができる。
【0033】
また請求項4の構成によれば、成膜方法に適用して、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、この窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、TaCl5 、TaBr5 で代表されるタンタルハロゲン化物ガスにより窒化タンタルの成膜種が供給される一方で、DMAHの熱分解によりアルミニュームの成膜種が供給され、これらの成膜種が反応して窒化タンタルアルミ膜が成膜される。これにより窒化タンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによる窒化タンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これら窒化タンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。これによりこれらタンタルハロゲン化物ガス、DMAHの流量の制御により、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜を簡易に作成することができる。
【0034】
また請求項7、請求項9の構成によれば、液体吐出ヘッドに適用することにより、例えばこの液滴がインク液滴、各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等である液体吐出ヘッド、この液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、この液滴がエッチングより部材を保護する薬剤であるパターン描画装置等に適用して、所望の組成比によるタンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。また気相成長により発熱素子、耐キャビテーション層が作成されることにより、スパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0035】
また請求項9、請求項10の構成によれば、液滴がインク液滴、各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等である液体吐出ヘッド、この液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、この液滴がエッチングより部材を保護する薬剤であるパターン描画装置等に適用して、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。また気相成長により発熱素子、耐キャビテーション層が作成されることにより、スパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0036】
また請求項11、請求項12の構成によれば、液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、所望の組成比によるタンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。
【0037】
また請求項13、請求項14の構成によれば、液体吐出ヘッドの製造方法に適用して、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜により発熱素子、耐キャビテーション層を作成し、組成のばらつきによる信頼性の劣化を防止することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0039】
(1)第1の実施の形態
(1−1)実施の形態の構成
図2は、本発明の実施の形態に係るプリンタに適用されるプリンタヘッドを示す断面図である。プリンタヘッド11は、発熱素子12の上層にシリコン窒化膜による保護層13、14が形成された後、タンタルとアルミニュームとによる合金層により耐キャビテーション層15が形成される。
【0040】
すなわち図3(A)に示すように、プリンタヘッド11は、ウエハによるN型シリコン基板16が洗浄された後、シリコン窒化膜(Si3 N4 )が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、リソグラフィー工程、リアクティブエッチング工程によりシリコン基板16が処理され、これによりトランジスタを形成する所定領域以外の領域よりシリコン窒化膜が取り除かれる。これらによりプリンタヘッド11には、シリコン基板16上のトランジスタを形成する領域にシリコン窒化膜が形成される。
【0041】
続いてプリンタヘッド11は、熱酸化工程によりシリコン窒化膜が除去されている領域に熱シリコン酸化膜が形成され、この熱シリコン酸化膜によりトランジスタを分離するための素子分離領域(LOCOS:Local Oxidation Of Silicon)17が膜厚500〔nm〕により形成される。なおこの素子分離領域17は、その後の処理により最終的に膜厚260〔nm〕に形成される。さらに続いてプリンタヘッド11は、シリコン基板16が洗浄された後、トランジスタ形成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートが作成される。さらにソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入工程、酸化工程によりシリコン基板16が処理され、MOS(Metal−Oxide−Semiconductor )型によるトランジスタ18、19等が作成される。なおここでスイッチングトランジスタ18は、25〔V〕程度の耐圧を有するMOS型ドライバートランジスタであり、発熱素子の駆動に供するものである。これに対してスイッチングトランジスタ19は、このドライバートランジスタを制御する集積回路を構成するトランジスタであり、5〔V〕の電圧により動作するものである。なおこの実施の形態においては、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層が形成され、その部分で加速される電子の電界を緩和することで耐圧を確保してドライバートランジスタ18が形成されるようになされている。
【0042】
このようにしてシリコン基板16上に、半導体素子であるトランジスタ18、19が作成されると、プリンタヘッド11は、続いてCVD(Chemical Vapor Deposition )法によりリンが添加されたシリコン酸化膜であるPSG(Phosphorus Silicate Glass )膜、ボロンとリンが添加されたシリコン酸化膜であるBPSG(Boron Phosphorus Silicate Glass )膜20が順次膜厚100〔nm〕、500〔nm〕により作成され、これにより全体として膜厚が600〔nm〕による1層目の層間絶縁膜が作成される。
【0043】
続いてフォトリソグラフィー工程の後、C4 F8 /CO/O2 /Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によりシリコン半導体拡散層(ソース・ドレイン)上にコンタクトホール21が作成される。
【0044】
さらにプリンタヘッド11は、希フッ酸により洗浄された後、スパッタリング法により、膜厚30〔nm〕によるチタン、膜厚70〔nm〕による窒化チタンバリアメタル、膜厚30〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚500〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、反射防止膜である窒化酸化チタン(TiON)が膜厚25〔nm〕により堆積され、これらにより配線パターン材料が成膜される。さらに続いてプリンタヘッド11は、フォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程により、成膜された配線パターン材料が選択的に除去され、1層目の配線パターン22が作成される。プリンタヘッド11は、このようにして作成された1層目の配線パターン22により、駆動回路を構成するMOS型トランジスタ19を接続してロジック集積回路が形成される。
【0045】
続いてプリンタヘッド11は、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2 H5 )4 )を原料ガスとしたCVD法により層間絶縁膜であるシリコン酸化膜が堆積される。続いてプリンタヘッド11は、SOG(Spin On Glass )を含む塗布型シリコン酸化膜の塗布とフッ素系ガスを用いたエッチバックとにより、シリコン酸化膜が平坦化され、これらの工程が2回繰り返されて1層目の配線パターン22と続く2層目の配線パターンとの層間絶縁膜23が膜厚440〔nm〕のシリコン酸化膜により形成される。
【0046】
続いて図3(B)に示すように、プリンタヘッド11は、タンタルアルミ膜が堆積され、これによりシリコン基板16上に抵抗体膜が形成される。ここでこの実施の形態においては、この抵抗体膜をエッチングして発熱素子が形成される。このタンタルアルミ膜は、アルミニュームの含有量が40〜60〔at%〕であるように作成され、これによりアモルファス構造により作成されて、発熱素子においては、通電を繰り返しても特性が劣化しないようになされている。
【0047】
この実施の形態においては、このタンタルアルミ膜がプラズマCVDにより形成される。すなわちこのプラズマCVDでは、タンタルハロゲン化物ガス(TaCl5 又はTaBr5 )によるタンタル源ガスを水素活性種で還元することによりタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、DMAH(dimethylaluminumhydride 〔(CH3 )2 AlH〕)によるアルミ源ガスとこのタンタルの成膜種を含むプラズマ流とによりシリコン基板16にタンタルアルミ膜を気相成長させる。
【0048】
具体的に、プリンタヘッド11は、ECR(electron cyclotron resonace :電子サイクロトロン共鳴)プラズマCVD装置に搭載されてタンタルアルミ膜が成膜される。ここで図1は、ECRプラズマCVD装置1を示す断面図であり、ECRプラズマCVD装置1は、ECRプラズマ室2とCVD成膜室3とにより構成される。ECRプラズマ室2は、マイクロ波放射源4が設けられ、このマイクロ波放射源4からのマイクロ波(2.45〔GHz〕)がマイクロ波導入石英窓より導入されるようになされている。さらにECRプラズマ室2は、アルゴンガス、水素ガスが導入されるようになされ、これによりこれらアルゴンガス、水素ガスがマイクロ波により励起されてプラズマを形成し、水素活性種を生成するようになされている。すなわち水素ガスにおいては、マイクロ波によるプラズマ放電によりH2 →H2 +e− →2H+e− で表されるように水素活性種を生成する。
【0049】
ECRプラズマ室2は、周囲に電磁コイルが設けられ、この電磁コイルによる磁場をプラズマに作用させて、電子をサイクロトロン運動させるようになされている。ECRプラズマCVD装置1は、このサイクロトロン運動の周波数がマイクロ波の周波数と一致するように保持され、これによりサイクロトロン運動をマイクロ波に共鳴させ、高密度(1×1011〔cm−3〕程度)のプラズマを形成するようになされている。かくするにつきECRプラズマCVD装置1では、この場合、アルゴンガス、水素ガスにより高密度のアルゴン水素プラズマが形成されるようになされている。
【0050】
ECRプラズマCVD装置1では、このアルゴン水素プラズマ流が発散磁場の勾配により、CVD成膜室3に導入される。CVD成膜室3は、加熱試料台が設けられ、この加熱試料台にウエハによるシリコン基板16が配置され、さらにこの加熱試料台の下方に設けられた電磁コイルによりECRプラズマ室2からのプラズマ流がシリコン基板16に収束される。
【0051】
CVD成膜室3は、ECRプラズマ室2に近い側からタンタルハロゲン化物ガスによるタンタル源ガスが導入され、シリコン基板16に近い側からDMAHによるアルミ源ガスが導入される。ここでTaCl5 又はTaBr5 は、常温で固体であるため、昇華装置を用いて気化させて導入される。またDMAHは、常温で液体であるため、液体気化装置を用いて導入される。
【0052】
これによりCVD成膜室3では、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種により還元してタンタルの成膜種を形成するようになされている。なおこの還元反応においては、タンタルハロゲン化物ガスがTaCl5 の場合、TaCl5 +5H→Ta+5HClにより表され、タンタルハロゲン化物ガスがTaBr5 の場合、TaBr5 +5H→Ta+5HBrにより表される。なおこのときプラズマ中の電子、アルゴンがタンタルハロゲン化物ガス分子と衝突することにより、タンタルハロゲン化物ガス分子の乖離が促進され、タンタル成膜種の生成が促進される。
【0053】
CVD成膜室3では、このようにして生成されたタンタル成膜種が、DMAHによるアルミ源ガスと共に、プラズマ流によりシリコン基板16に導かれる。ここでシリコン基板16は、加熱試料台により300〜500度に加熱されて保持される。これによりCVD成膜室3では、シリコン基板16において、1/2〔(CH3 )2 AlH〕→Al+1/2〔(CH3 )3 Al〕+3/2CH4 により表されるように、アルミ源ガスが熱分解し、アルミ成膜種が生成される。さらにこのようにして生成されたアルミ成膜種がタンタル成膜種と反応してシリコン基板16に堆積し、タンタルアルミ膜が生成される。
【0054】
なおこの実施の形態では、マイクロ波放射源4より1.0〜2.8〔kw〕によりマイクロ波を放射し、水素ガス流量、アルゴンガス流量は、それぞれ100〜200〔sccm〕、100〜250〔sccm〕に設定した。またタンタルハロゲン化物ガスの流量は、3〜10〔sccm〕、アルミ源ガスの流量は、5〜20〔sccm〕に設定した。これらの条件で、この実施の形態では、目的とするタンタルアルミ膜の組成比に対応する流量により、タンタルハロゲン化物ガス、アルミ源ガスを導入してタンタルアルミ膜を生成する。
【0055】
このようにして発熱素子の材料膜を形成すると、プリンタヘッド11は、続いてフォトリゾグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、余剰なタンタルアルミ膜が除去され、発熱素子12が作成される。なおこの実施の形態においては、膜厚83〔nm〕によるタンタルアルミ膜が堆積され、また折り返し形状により発熱素子12が形成され、これにより発熱素子12の抵抗値が140〔Ω〕となるようになされている。なお発熱素子12においては、正方形形状により形成することも可能であり、この場合は、膜厚50〔nm〕によるタンタルアルミ膜を堆積して形成することにより抵抗値は60〔Ω〕となる。
【0056】
続いて図4(C)に示すように、プリンタヘッド11は、CVD法により膜厚300〔nm〕によるシリコン窒化膜が堆積され、発熱素子12の保護層13が形成される。続いて図4(D)に示すように、フォトリゾグラフィー工程、CHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、所定箇所のシリコン窒化膜が除去され、これにより発熱素子12を配線パターンに接続する部位が露出される。さらにCHF3 /CF4 /Arガスを用いたドライエッチング工程により、層間絶縁膜23に開口を形成してビアホール24が作成される。
【0057】
さらに図5(E)に示すように、プリンタヘッド11は、スパッタリング法により、膜厚200〔nm〕によるチタン、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、または銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームが膜厚600〔nm〕により順次堆積される。続いてプリンタヘッド11は、膜厚25〔nm〕による窒化酸化チタンが堆積され、これにより反射防止膜が形成される。これらによりプリンタヘッド11は、配線パターン材料25が成膜される。
【0058】
続いて図5(F)に示すように、フォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング工程により、成膜した配線パターン材料25が選択的に除去され、2層目の配線パターン26が作成される。プリンタヘッド11は、この2層目の配線パターン26により、電源用の配線パターン、アース用の配線パターンが作成され、またドライバートランジスタ18を発熱素子12に接続する配線パターンが作成される。なお発熱素子12の上層に取り残されたシリコン窒化膜13にあっては、この配線パターン作成の際のエッチング工程において、発熱素子12の保護層として機能する。
【0059】
続いて図6(G)に示すように、プリンタヘッド11は、CVD法によりインク保護層、絶縁層として機能するシリコン窒化膜14が膜厚400〔nm〕により堆積される。さらに熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガスの雰囲気中で、又は100%の窒素ガス雰囲気中で、400度、60分間の熱処理が実施される。これによりプリンタヘッド11は、トランジスタ18、19の動作が安定化され、さらに1層目の配線パターン22と2層目の配線パターン26との接続が安定化されてコンタクト抵抗が低減される。
【0060】
続いてプリンタヘッド11は、発熱素子の抵抗体膜を作成したと同様に、ECRプラズマCVD装置によるプラズマCVDによりタンタルアルミ膜を膜厚200〔nm〕により堆積する。ここでこのタンタルアルミ膜においては、所望する組成比に対応する流量により、タンタルハロゲン化物ガス、アルミ源ガスの流量を設定して成膜され、これによりβ−タンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在する構造により作成される。プリンタヘッド11は、このタンタルアルミ膜をエッチングして耐キャビテーション層15が形成され、これにより下層の保護層の損傷を有効に回避し、信頼性を向上するようになされている。
【0061】
すなわちプリンタヘッド11は、続いてフォトレジスト処理、BCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチング処理により、この材料膜が所定形状によりエッチング処理され、これにより図7(H)に示すように、耐キャビテーション層15が形成される。
【0062】
このようにして耐キャビテーション層15が形成されると、プリンタヘッド11は、各チップ毎にスクライビングされた後、図2に示すように、ドライフィルム31、オリフィスプレート32が順次積層される。ここで例えばドライフィルム31は、有機系樹脂により構成され、圧着により配置された後、インク液室、インク流路に対応する部位が取り除かれ、その後硬化される。これに対してオリフィスプレート32は、発熱素子12の上に微小なインク吐出口であるノズル34を形成するように所定形状に加工された板状部材であり、接着によりドライフィルム31上に保持される。これによりプリンタヘッド11は、ノズル34、インク液室35、このインク液室にインクを導くインク流路等が形成されて作成される。
【0063】
プリンタヘッド11は、このようなインク液室35が紙面の奥行き方向に連続するように形成され、これによりラインヘッドを構成するようになされている。
【0064】
(1−2)第1の実施の形態の動作
以上の構成において、プリンタヘッド11は、半導体基板であるN型シリコン基板16に素子分離領域17が作成されて半導体素子であるトランジスタ18、19が作成され、絶縁層20により絶縁されて1層目の配線パターン22が作成される。また続いて絶縁層23、発熱素子12が作成された後、保護層13、2層目の配線パターン26が作成される。さらに保護層14が作成された後、熱処理により配線パターン間、配線パターンと発熱素子等の間の接続が安定化された後、耐キャビテーション層15、インク液室35、ノズル34が順次形成されて作成される(図2〜図7)。
【0065】
このプリンタは、このようにして作成されたプリンタヘッド11のインク液室35にインクが導かれ、トランジスタ18、19による発熱素子12の駆動により、インク液室35に保持したインクが加熱されて気泡が発生し、この気泡によりインク液室35内の圧力が急激に増大する。プリンタでは、この圧力の増大によりインク液室35のインクがインク液滴としてノズル34から飛び出し、このインク液滴が印刷対象である用紙等に付着する。
【0066】
プリンタでは、このような発熱素子12の駆動が間欠的に繰り返され、これにより所望の画像等が印刷対象に印刷される。またプリンタヘッド11においては、この発熱素子の間欠的な駆動により、インク液室35内において、気泡の発生、気泡の消滅が繰り返され、これにより機械的な衝撃であるキャビテーションが発生する。プリンタヘッド11では、このキャビテーションによる機械的な衝撃が耐キャビテーション層15により緩和され、これにより保護層である耐キャビテーション層15により発熱素子12が保護される。またこの耐キャビテーション層15と保護層13、14とにより発熱素子12へのインクの直接の接触が防止され、これによっても発熱素子12が保護される。
【0067】
しかして発熱素子12においては、このように間欠的な駆動により発熱して、この発熱による熱が保護層13、14、耐キャビテーション層15を介してインク液室35のインクに伝搬し、インクの温度上昇によりインク液室35内に気泡が発生する。この実施の形態に係るプリンタヘッド11においては、このような発熱素子12の熱の熱伝導経路である耐キャビテーション層15がタンタルの結晶粒界にアルミニュームが存在するように作成されており、アルミニュームにおいては、塑性に富むことにより、発熱素子12の熱により増大するタンタルの結晶粒による圧縮応力を粒界中のアルミニュームにより緩和することができ、これにより下層の保護層13、14に加わる圧縮応力を低減することができる。これによりプリンタヘッド11は、タンタルの結晶粒界にアルミニュームを有するタンタルとアルミニュームとの合金により耐キャビテーション層15を作成して、保護層13、14の損傷を防止し、信頼性の劣化を有効に回避することができるようになされている。
【0068】
またこのようなタンタルとアルミニュームとの合金においては、鉄等の半導体製造工程に有害な物質を含んでいないことにより、半導体製造工程によりプリンタヘッドを作成する場合でも、種々の障害の発生を有効に回避することができる。
【0069】
またタンタルとアルミニュームとの合金においては、タンタル、アルミニュームが半導体製造プロセスで十分に加工実績のある材料であり、その分、製造プロセスにおいて、十分な信頼性を確保することができる。また塩素系(BCl3 /Cl2 )ガスを用いてRIE加工することができ、これにより簡易に保護層である耐キャビテーション層15を作成することができる。
【0070】
これに対して発熱素子12においては、耐キャビテーション層15に比してアルミニュームの含有率が高く設定されてなる、アルミニュームの含有率が40〜60〔at%〕のタンタルアルミ膜により形成され、これによりアモルファス構造により形成され、繰り返し通電する場合でも、断線等の事故を有効に回避することができる。
【0071】
プリンタヘッド11においては、これら耐キャビテーション層15、発熱素子12を構成するタンタルアルミ膜が、タンタルハロゲン化物ガス(TaCl5 又はTaBr5 )を水素活性種で還元することによりタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、DMAHによるアルミ源ガスとこのタンタルの成膜種を含むプラズマ流とによりシリコン基板16にタンタルアルミ膜を気相成長させて作成することにより、これら2種類のガスの流量を種々に調整するだけで、流量に対応する組成比により簡易にタンタルアルミ膜を作成することができる。これによりこの実施の形態においては、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる。
【0072】
すなわちこのCVD法による成膜においては、TaCl5 、TaBr5 によりタンタルハロゲン化物ガスによりタンタルの成膜種が供給される一方で、DMAHの熱分解によりアルミニュームの成膜種が供給され、これらの成膜種が反応してタンタルアルミ膜が成膜される。これによりタンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによるタンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これらタンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。
【0073】
すなわちこれら2種類のガスの流量は一般にマスフローコントローラーにより制御され、このマスフローコントローラーは、近年、デジタル化も進んでおり、その流量制御は正確なものである。これによりこの実施の形態においては、原料ガスの流量を可変させて、タンタルアルミ膜の組成比を細かく制御することができ、スパッタリングによる場合に比べ容易かつ正確に所望する組成比によりタンタルアルミ膜を成膜することができる。
【0074】
なお特許第3254997号に開示されているように、プラズマCVDにおいては、金属ハロゲン化物ガスとプラズマとが反応してプラズマ中の水素分子が乖離し、その結果発生する水素原子の発光をモニタすることにより、金属ハロゲン化物ガスの含有量が低い場合でも、平滑性に優れた金属膜の生成条件を簡易に設定することができる特徴がある。
【0075】
なおこの実施の形態においては、反応過程において、DMAHの熱分解で発生したCH4 が乖離し、その結果発生する炭素がタンタルアルミ膜中に取り込まれることが懸念されるが、水素ガスの流量を多くすることにより、このようにして生成された炭素を水素活性種と再反応させることができ、これによりタンタルアルミ膜中への炭素の取り込みを防止することができる。
【0076】
またこのようにして生成されるタンタルアルミ膜においては、スパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても耐キャビテーション層、発熱素子に適用してプリンタヘッドの信頼性が向上される。
【0077】
(1−3)第1の実施の形態の効果
以上の構成によれば、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができるようにする。これによりプリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層に適用して耐キャビテーション層の圧縮応力による保護層の劣化を防止し、これにより信頼性の劣化を防止することができる。また発熱素子に適用して、通電による特性の劣化を防止し、これにより信頼性の劣化を防止することができる。またスパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0078】
(2)第2の実施の形態
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るプラズマCVD装置を示す断面図である。この実施の形態においては、このプラズマCVD装置により発熱素子、耐キャビテーション層を窒化タンタルアルミにより作成する。なおこの実施の形態に係るプリンタヘッドにおいては、このように発熱素子、耐キャビテーション層がこのプラズマCVD装置を用いて窒化タンタルアルミにより作成される点を除いて、第1の実施の形態に係るプリンタヘッドと同一に構成される。
【0079】
ここでこのプラズマCVD装置では、アルゴンガス、水素ガスに加えて、窒素源ガスが導入される点を除いて、第1の実施の形態に係るプラズマCVD装置1と同一に構成される。このプラズマCVD装置では、この窒素源ガスに窒素(N2 )ガス又はアンモニア(NH3 )ガスが適用されるようになされている。
【0080】
これによりこの実施の形態においては、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させるようになされている。
【0081】
すなわちこのプラズマCVD装置では、マイクロ波による水素ガスが励起されて水素活性種が生成され、この水素活性種がタンタルハロゲン化物ガスを還元する。これによりタンタルの成膜種を含むプラズマ流が生成される。プラズマCVD装置では、水素ガスと共にアルゴンガス、窒素源ガスが導入されていることにより、これらのガスもマイクロ波により励起され、窒素源ガスに窒素ガスを適用した場合には、N2 +e− →2N+e− により示されるように、窒素活性種が生成される。また窒素源ガスにアンモニアガスを適用した場合には、窒素が乖離して窒素活性種が生成される。これによりプラズマCVD装置では、水素活性種による還元作用により生成されたタンタルが、この窒素活性種と反応して窒化タンタル(TaN)が生成される。なおこれら全体の反応は、タンタルハロゲン化物ガスがTaCl5 の場合、TaCl5 +5H+N→TaN+5HClにより表され、タンタルハロゲン化物ガスがTaBr5 の場合、TaBr5 +5H+N→TaN+5HBrにより表される。
【0082】
またプラズマCVD装置では、このようにな窒化タンタルの成膜種を有するプラズマ流がDMAHと共にシリコン基板16に導かれ、DMAHにおいては、第1の実施の形態について上述したように、熱分解してアルミニュームの成膜種を生成する。これによりこのプラズマCVD装置では、これら窒化タンタルの成膜種、アルミニュームの成膜種が反応してシリコン基板に窒化タンタルアルミ膜が成膜される。
【0083】
なおこの実施の形態では、マイクロ波放射源4より周波数2.45〔GHz〕、1.0〜2.8〔kw〕によりマイクロ波を放射し、加熱試料台によりシリコン基板16を300〜500度に加熱して保持した。また水素ガス流量、アルゴンガス流量は、それぞれ100〜200〔sccm〕、100〜250〔sccm〕に設定した。また窒素源ガス流量は、2〜5〔sccm〕に設定し、タンタルハロゲン化物ガスの流量は、3〜10〔sccm〕、アルミ源ガスの流量は、5〜20〔sccm〕に設定した。これらの条件で、この実施の形態では、目的とするタンタルアルミ膜の組成比に対応する流量により、タンタルハロゲン化物ガス、アルミ源ガスを導入して窒化タンタルアルミ膜を生成した。
【0084】
すなわちこのようにして窒化タンタルアルミ膜を生成する場合でも、窒化タンタルアルミ膜においては、タンタルハロゲン化物ガスによる窒化タンタル成膜種の供給量と、DMAHによるアルミニューム成膜種の供給量とによる組成比により作成され、これら窒化タンタル成膜種及びアルミニューム成膜種の供給量にあっては、それぞれ各生成元であるタンタルハロゲン化物ガス及びDMAHの供給量により高い精度で制御することができる。これによりこれらタンタルハロゲン化物ガス、DMAHの流量の制御により、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜を簡易に作成することができる。
【0085】
またこのようにして窒化タンタルアルミ膜にあっては、発熱素子に適用して、タンタルアルミ膜による場合に比して、抵抗値を増大させることができ、その分発熱素子に流す電流値を小さくすることができる。因みに、第1の実施の形態と同一形状による折り返し形状により膜厚100〔nm〕で発熱素子を作成した場合、120〜320〔Ω〕の抵抗値を確保することができ、また正方形形状による場合には、膜厚50〔nm〕により発熱素子を作成して80〜160〔Ω〕の抵抗値を確保することができた。
【0086】
第2の実施の形態によれば、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比による窒化タンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる。
【0087】
これによりプリンタヘッドにおいては、耐キャビテーション層に適用して耐キャビテーション層の圧縮応力による保護層の劣化を防止し、信頼性の劣化を防止することができる。また発熱素子に適用して、通電による特性の劣化を防止し、これにより信頼性の劣化を防止することができる。またスパッタリングによる場合に比して、段差の部分でも十分なカバーレージを確保することができ、これによっても信頼性を向上することができる。
【0088】
(3)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、ECRプラズマCVD装置によりタンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜を作成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ECRプラズマCVD装置に代えて、ICP(inductive coupled plasma:誘導結合)型プラズマCVD装置、ヘリコン波プラズマCVD装置等を広く適用することができる。
【0089】
また上述の実施の形態においては、発熱素子、耐キャビテーション層の双方をタンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜により成膜する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば発熱素子においては、窒化チタン等の適用も考えられることにより、何れか一方のみタンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜により成膜する場合にも広く適用することができる。
【0090】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドの作成工程に適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば種々の集積回路の作成工程において、配線パターンの下地材としてタンタルアルミ膜を成膜する場合等、種々の工程において、タンタルアルミ膜、窒化タンタルアルミ膜を成膜する場合に広く適用することができる。
【0091】
また上述の実施の形態においては、本発明をプリンタヘッドに適用してインク液滴を飛び出させる場合について述べたが、本発明はこれに限らず、インク液滴に代えて各種染料の液滴、保護層形成用の液滴等であるプリンタヘッド、さらには液滴が試薬等であるマイクロディスペンサー、各種測定装置、各種試験装置、液滴がエッチングより部材を保護する薬剤である各種のパターン描画装置等に広く適用することができる。
【0092】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元して生成したタンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させることにより、さらにはタンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて生成した窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させることにより、所望の組成比によるタンタルアルミ膜等を簡易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドの製造工程に適用されるプラズマCVD装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す断面図である。
【図3】図2のプリンタヘッドの作成工程の説明に供する断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図4の続きを示す断面図である。
【図6】図5の続きを示す断面図である。
【図7】図6の続きを示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタヘッドの製造工程に適用されるプラズマCVD装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1……プラズマCVD装置、11……プリンタヘッド、16……シリコン基板、12……発熱素子、13、14……保護層、15……耐キャビテーション層、18、19……トランジスタ、22、26……配線パターン
Claims (14)
- タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、
前記タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させる
ことを特徴とする成膜方法。 - 前記タンタルハロゲン化物ガスが、TaCl5 である
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。 - 前記タンタルハロゲン化物ガスが、TaBr5 である
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。 - タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、
前記窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させる
ことを特徴とする成膜方法。 - 前記タンタルハロゲン化物ガスが、TaCl5 である
ことを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。 - 前記タンタルハロゲン化物ガスが、TaBr5 であることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。
- 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドにおいて、
前記発熱素子が、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元したタンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長によるタンタルアルミ膜により作成された
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドにおいて、
前記発熱素子を保護する耐キャビテーション層が、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元したタンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長によるタンタルアルミ膜により作成された
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドにおいて、
前記発熱素子が、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させた窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長による窒化タンタルアルミ膜により作成された
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドにおいて、
前記発熱素子を保護する耐キャビテーション層が、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させた窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流と、DMAHとによる気相成長による窒化タンタルアルミ膜により作成された
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法において、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、
前記タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させて、前記発熱素子を作成する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法において、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種で還元してタンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、
前記タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとによりタンタルアルミ膜を気相成長させて、前記発熱素子を保護する耐キャビテーション層を作成する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法において、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、
前記窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させて、前記発熱素子を作成する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。 - 発熱素子の駆動により、液室に保持した液体を加熱して所定のノズルより前記液体の液滴を飛び出させる液体吐出ヘッドの製造方法において、
タンタルハロゲン化物ガスを水素活性種、窒素活性種と反応させて窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流を生成し、
前記窒化タンタルの成膜種を含むプラズマ流とDMAHとにより窒化タンタルアルミ膜を気相成長させて、前記発熱素子を保護する耐キャビテーション層を作成する
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002241287A JP2004076139A (ja) | 2002-08-22 | 2002-08-22 | 成膜方法、液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法 |
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ID=32023813
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JP2002241287A Pending JP2004076139A (ja) | 2002-08-22 | 2002-08-22 | 成膜方法、液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113846307A (zh) * | 2021-07-30 | 2021-12-28 | 陕西宏大空天新材料研究院有限责任公司 | 一种在钴铬钼合金骨架上沉积钽金属涂层的制备方法 |
-
2002
- 2002-08-22 JP JP2002241287A patent/JP2004076139A/ja active Pending
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