JP3695530B2 - プリンタヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタヘッドの製造方法に関し、特にヒーターの加熱によりインク液滴を飛び出させる方式のプリンタに適用することができる。本発明は、接続を安定化する熱処理の後に、耐キャビティーション層を形成することにより、保護層の損傷による信頼性の劣化を有効に回避することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
近年、画像処理等の分野においては、ハードコピーのカラー化に対するニーズが高まっている。このようなニーズに対して、従来、昇華型熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式、熱現像銀塩方式等のカラーハードコピー方式が提案されている。
【0003】
これらの方式のうちインクジェット方式は、記録ヘッドに設けられたノズルから記録液(インク)の小滴を飛翔させ、記録対象に付着してドットを形成するのもであり、簡単な構成により高画質の画像を出力することができる。このインクジェット方式は、インクを飛翔させる方式の相違により、静電引力方式、連続振動発生方式(ピエゾ方式)、サーマル方式等に分類される。
【0004】
これらの方式のうちサーマル方式は、インクの局所的な加熱により気泡を発生し、この気泡によりインクをノズルから押し出して印刷対象に飛翔させる方式であり、簡易な構成によりカラー画像を印刷することができるようになされている。
【0005】
すなわちこのサーマル方式によるプリンタは、いわゆるプリンタヘッドを用いて構成され、このプリンタヘッドには、インクを加熱する発熱素子、発熱素子を駆動するロジック集積回路による駆動回路等が半導体基板上に搭載される。これにより発熱素子を高密度に配置して確実に駆動できるようになされている。
【0006】
すなわちこのサーマル方式によるプリンタプリンタにおいて、高画質の印刷結果を得るためには、発熱素子を高密度で配置することが必要となる。具体的に、例えば600〔DPI〕相当の印刷結果を得るためには、発熱素子を42.333〔μm〕間隔で配置することが必要になるが、このように高密度で配置した発熱素子に個別の駆動素子を配置することは極めて困難である。これによりプリンタヘッドでは、半導体基板上にスイッチングトランジスタ等を作成して集積回路技術により対応する発熱素子を接続し、さらには同様に半導体基板上に作成した駆動回路で各スイッチングトランジスタを駆動することにより、簡易かつ確実に各発熱素子を駆動できるようになされている。
【0007】
またサーマル方式によるプリンタにおいては、発熱素子による加熱によりインクに気泡が発生し、この気泡によりノズルからインクが飛び出すと、この気泡が消滅する。これにより発泡、消泡が繰り返され、キャビティーションによる機械的な衝撃を受ける。また発熱素子の発熱による温度上昇と温度降下とが、短時間(数μ秒)で繰り返され、これにより温度による大きなストレスも受ける。
【0008】
このためプリンタヘッドにおいては、タンタル、窒化タンタル、タンタルアルミ等により発熱素子が形成され、この発熱素子上に窒化シリコンによる保護層が形成され、この保護層により耐熱性、絶縁性を向上し、また発熱素子とインクとの直接の接触を防止するようになされている。またこの保護層の上層に、キャビティーションによる機械的な衝撃を緩和する耐キャビティーション層が形成される。ここで耐キャビティーション層は、耐酸性に優れ、表面に酸化物からなる不動態皮膜が形成されやすく、かつ耐熱性にも優れているタンタル等により形成されるようになされている。
【0009】
すなわち図7は、この種のプリンタヘッドにおける発熱素子近傍の構成を示す断面図である。プリンタヘッド1は、半導体素子が作成されてなる半導体基板2上に絶縁層(SiO2 )等が積層された後、タンタル膜による発熱素子3が形成される。さらに窒化シリコン(Si3 N4 )による保護層4が積層される。さらに配線パターン(Al配線)5により発熱素子3が半導体基板に形成されてなる半導体等に接続され、さらに窒化シリコン(Si3 N4 )による保護層6が積層され、この上層に、タンタルによる耐キャビティーション層7が形成される。
【0010】
さらにプリンタヘッド1は、水素(H2 )ガスを4〔%〕添加した窒素ガス(N2 )による雰囲気により400度、60分間の熱処理(シンタリングである)を実行し、発熱素子と配線パターン、配線パターン間の接続を安定化し、さらに添加した水素によりシリコンの欠損を補う。なおこのような雰囲気による熱処理に代えて、水素雰囲気により熱処理する方法も提案されるようになされている(特開平7−76080号公報、特開平9−70973号公報)。また特許2971473号においては、バイアススパッタ法で形成した酸化シリコンによる保護層を熱処理し、これにより保護層中の残留応力を低減する方法が提案されるようになされている。
【0011】
プリンタヘッド1は、続いて所定の部材の配置により、インク液室、インク流路、ノズルが作成される。プリンタヘッド1は、このようにして作成されたインク流路によりインク液室にインクが導かれ、半導体素子の駆動により発熱素子3が発熱し、インク液室のインクを局所的に加熱する。プリンタヘッド1は、この加熱により、このインク液室に気泡を発生してインク液室の圧力を増大させ、ノズルよりインクを押し出して印刷対象に飛翔させるようになされている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで保護層6は、比較的、熱伝導率が低いことにより、膜厚を薄くすることにより、インク液室への熱伝導を向上し、その分、効率良くインク液滴を飛び出させることができる。しかしながら膜厚を薄くすると、ピンホールが発生することにより、さらには配線パターン5との境界における段差の部分でステップカバレッジが不足することにより、発熱素子3をインクより完全に隔離することが困難になり、その結果、配線パターン5、発熱素子3がインクにより腐食し、信頼性が劣化し、さらには発熱素子3の寿命が短くなる。
【0013】
これにより保護層6を300〔nm〕の膜厚により作成すれば、充分に確実に、ピンホールの発生を防止することができ、さらには配線パターン5との境界における段差の部分で充分なステップカバレッジを確保することができ、充分な信頼性を確保することができると考えられる。
【0014】
しかしながら実験した結果によれば、300〔nm〕の膜厚により保護層6を作成するとピンホールの発生を防止し、さらには充分なステップカバレッジを確保することができるものの、図7において矢印Aにより部分的に拡大して示すように、保護層6にクラックBが発見された。このようなクラックBにおいては、ピンホールの場合と同様に、発熱素子3側へのインクの進入を許すことにより、プリンタヘッド1の信頼性を著しく損ねることになる。
【0015】
このようなクラックの発生を防止する方法として、例えばHewllet-packard journal 1985 年 5月p.27〜32には、図8(A)及び(B)に示すように、アルミ配線材より配線パターン5を形成する際に、ウエットエッチングにより配線パターン5の端面にテーパーを形成する方法が提案されるようになされている。すなわち配線パターン5の端面にテーパーを形成すれば、この上層に形成される保護層6においては、段差の発生を少なくすることができ、その分、応力集中を防止してクラックの発生を防止することができる。
【0016】
しかしながら今日の配線パターンにおいては、配線パターンの特性、寿命の向上のために、アルミニュームにシリコン、銅等が添加されて配線パターン材料が構成されることにより、このようなウエットエッチングにより配線パターン5の端面にテーパーを形成すると、添加したシリコン、銅等がエッチングされないでシリコン、銅等の残渣がダストとしてエッチングした個所に残る問題がある。
【0017】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、保護層の損傷による信頼性の劣化を有効に回避することができるプリンタヘッドの製造方法を提案しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1の発明においては、プリンタヘッドの製造方法に適用して、発熱素子の上層に、発熱素子をインクより保護する保護層を膜厚300〜500〔nm〕により形成した後、熱処理により、少なくとも発熱素子と配線パターンとの間の接続、配線パターンと半導体素子との接続を安定化し、その後、発熱素子をキャビティーションより保護する耐キャビティーション層を形成する。
【0021】
耐キャビティーション層には、キャビティーションを緩和して発熱素子を保護することが求められることにより、タンタル(Ta)等の高い応力を有する材料が適用される。ここでタンタル膜の圧縮応力は、1.0〜2.0E10〔dyne/cm2 〕である。しかしながらタンタルは、線膨張係数6.5〔ppm/度〕であり、配線パターンに一般的に適用されるアルミニュームは、線膨張係数が23.6〔ppm/度〕であり、この両者に挟まれる保護層は、Si3 N4 により構成した場合、線膨張係数が2.5〔ppm/度〕である。これにより従来のように耐キャビティーション層を作成した後に熱処理したのでは、これらの線膨張係数の相違により、大きな熱応力がこれらの層間で発生し、この熱応力により保護層にクラックが発生することが判った。これにより請求項1の構成によれば、プリンタヘッドの製造方法に適用して、発熱素子の上層に、発熱素子をインクより保護する保護層を膜厚300〜500〔nm〕により形成した後、熱処理により、少なくとも発熱素子と配線パターンとの間の接続、配線パターンと半導体素子との接続を安定化し、その後、発熱素子をキャビティーションより保護する耐キャビティーション層を形成することにより、熱処理における保護層への熱応力集中を緩和することができ、これにより保護層の損傷による信頼性の劣化を有効に回避することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0024】
(1)実施の形態の構成
図1〜図6は、本発明の実施の形態に係るプリンタヘッドの製造工程の説明に供する断面図である。この製造工程は(図2(A))、P型シリコン基板22を洗浄した後、シリコン窒化膜を堆積する。この製造工程は、続いてリソグラフィー工程、リアクティブイオンエッチング工程によりシリコン基板22を処理し、これによりトランジスタを形成する所定領域以外の領域よりシリコン窒化膜(Si 3 N4 )を取り除く。これらによりこの製造工程は、シリコン基板22上のトランジスタを形成する領域にシリコン窒化膜を形成する。
【0025】
この製造工程は、続いて熱酸化工程により、シリコン窒化膜が除去されている領域に熱シリコン酸化膜を形成し、この熱シリコン酸化膜によりトランジスタを分離するための素子分離領域(LOCOS)23を所定膜厚により形成する。この工程は、続いてシリコン基板22を洗浄した後、トランジスタ形成領域にタングステンシリサイド/ポリシリコン/熱酸化膜構造のゲートを形成する。さらにソース・ドレイン領域を形成するためのイオン注入工程、熱処理工程によりシリコン基板22を処理し、MOS型によるスイッチングトランジスタ24、25等を形成する。なおここでスイッチングトランジスタ24は、25〔V〕程度の耐圧を有するMOS型ドライバートランジスタであり、発熱素子の駆動に供するものである。これに対してトランジスタ25は、このドライバートランジスタを制御する集積回路を構成するトランジスタであり、5〔V〕の電圧により動作するものである。なおこの実施の形態においては、ゲート/ドレイン間に低濃度の拡散層を形成し、加速される電子の電界をこの拡散層で緩和することにより耐圧を確保してスイッチングトランジスタ24を形成するようになされている。
【0026】
このようにして半導体基板22上に、半導体素子であるトランジスタ24、25を作成すると、この工程は、続いてCVD(Chemical Vapor Deposition )法によりBPSG(BoroPhosepho Silicate Glass )膜26を作成し、C4 F8 /CO/O2 /Ar系ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法により、シリコン半導体拡散層(ソース・ドレイン)上にコンタクトホール27を作成する。
【0027】
さらにこの工程は、半導体基板22を希フッ酸により洗浄し、スパッタリング法により、膜厚20〔nm〕によるチタン、膜厚50〔nm〕による窒化チタンバリアメタル、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム、又は銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームを膜厚400〜600〔nm〕により順次堆積する。これらによりこの工程は、配線パターン材料を成膜し、続いてフォトリソグラフィー工程、ドライエッチング工程により成膜した配線パターン材料を選択的に除去し、1層目の配線パターン28を作成する。この工程は、この1層目の配線パターン28により、駆動回路を構成するMOS型トランジスタ25を接続してロジック集積回路を形成する。
【0028】
続いてこの工程は、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2 H5 )4)を原料ガスとしたCVD法により層間絶縁膜であるシリコン酸化膜29を堆積する。続いてこの工程は、CMP(Chemical Mechanical Polishing )工程により、又はSOG(Spin On Glass )塗布とエッチバックとにより、シリコン酸化膜29を平坦化し、これらにより1層目の配線パターン28と続く2層目の配線パターンとの層間絶縁膜29を形成する。
【0029】
続いてこの工程は、図2(B)に示すように、スパッタリング法により膜厚80〜100〔nm〕によりタンタル膜を堆積する。この工程は、これにより半導体基板22上に抵抗体膜を堆積する。さらに続くフォトリソグラフィー工程、BCl3 /Cl2 系ガスを用いたドライエッチング工程により、余剰なチタン膜等を除去し、折り返し形状による発熱素子30を作成する。
【0030】
続いてこの工程は、図3(C)に示すように、シランガスを用いたCVD法により膜厚300〔nm〕によりシリコン窒化膜を堆積し、発熱素子30の保護層31を形成する。続いて図3(D)に示すように、フォトリソグラフィー工程、CHF3 /CF4 /Ar系ガスを用いたドライエッチング工程により、所定個所のシリコン窒化膜を除去し、これにより発熱素子30を配線パターンに接続する部位を露出させ、さらには層間絶縁膜29に開口を形成してビアホール33を作成する。
【0031】
さらにこの工程は、図4(E)に示すように、スパッタリング法により、シリコンを1〔at%〕添加したアルミニューム又は銅を0.5〔at%〕添加したアルミニュームを膜厚400〜1000〔nm〕により堆積する。
【0032】
このようにしてこの工程は、配線パターン材料32を成膜し、続いて図4(F)に示すように、フォトリソグラフィー工程、塩素系ガスであるBCl3 /Cl2 ガスを用いたドライエッチングにより、成膜した配線パターン材料を選択的に除去し、これにより2層目の配線パターン35を作成する。この工程は、この2層目の配線パターン35により、電源用の配線パターン、アース用の配線パターンを作成し、またドライブトランジスタ24を発熱素子30に接続する配線パターンを作成する。
【0033】
この工程は、続いて図5(G)に示すように、CVD法によりインク保護層として機能するシリコン窒化膜36(Si3 N4 )を300〜500〔nm〕堆積する。
【0034】
さらに図5(H)に示すように、熱処理炉において、4%の水素を添加した窒素ガスの雰囲気中で、400度、60分間の熱処理を実施し、これによりトランジスタ24、25の動作を安定化し、さらに1層目の配線パターン28と2層目の配線パターン35との接続、各配線パターン28、35とトランジスタ24、25等の接続を安定化してコンタクト抵抗を低減する。
【0035】
この工程は、続いて図1に示すように、スパッタリング法により膜厚200〔nm〕のタンタル膜を堆積し、このタンタル膜により耐キャビティーション層40を形成する。続いてこの工程は、ドライフィルム41、オリフィスプレート42が順次積層される。ここでドライフィルム41は、例えば有機系樹脂により構成され、圧着により配置された後、インク液室、インク流路に対応する部位が取り除かれ、その後、硬化される。これに対してオリフィスプレート42は、発熱素子30の上に微小なインク吐出口であるノズル44を形成するように、所定形状に加工された板状部材であり、接着によりドライフィルム41上に保持される。これによりプリンタヘッド21は、ノズル44、インク液室45、このインク液室45にインクを導く流路等が作成される。
【0036】
(2)実施の形態の動作
以上の構成において、プリンタヘッド21は、半導体基板であるP型シリコン基板22に素子分離領域23が作成されて半導体素子であるトランジスタ24、25が作成され、絶縁層26により絶縁されて1層目の配線パターン28が作成される。また続いて絶縁層29、発熱素子30が作成された後、保護層31、2層目の配線パターン35が作成される。さらに保護層36が作成された後、熱処理により配線パターン間、配線パターンと発熱素子等の間の接続が安定化された後、耐キャビティーション層40、インク液室45、ノズル44が順次形成されて作成される。
【0037】
プリンタヘッド21は、これにより従来工程とは逆に、シンタリングである熱処理工程後、耐キャビティーション層40が作成されるようになされ、これにより熱処理による耐キャビティーション層40による熱応力が保護層36に与えられないようにして、クラックの発生を防止するようになされている。
【0038】
すなわち耐キャビティーション層40には、キャビティーションを緩和して発熱素子を保護することが求められることにより、タンタル(Ta)等の高い応力を有する材料が適用される。ここでタンタル膜の圧縮応力は、1.0〜2.0E10〔dyne/cm2 〕である。このタンタルは、線膨張係数6.5〔ppm/度〕であり、配線パターンに一般的に適用されるアルミニュームは、線膨張係数が23.6〔ppm/度〕であり、この両者に挟まれる保護層36は、Si3 N4 により構成した場合、線膨張係数が2.5〔ppm/度〕である。
【0039】
これにより従来のように耐キャビティーション層40を作成した後に、熱処理したのでは、これらの線膨張係数の相違により、大きな熱応力がこれらの層間で発生し、間に挟まれた保護層36に集中してこの熱応力が保護層36にクラックが発生することが判った。
【0040】
これに対してこの実施の形態においては、熱処理の後、耐キャビティーション層40を作成していることにより、熱処理の過程においては、耐キャビティーション層40と保護層36との線膨張係数の相違による熱応力の発生を避けることができ、保護層36は、下層との間の熱応力だけを受けることになる。これにより保護層36においては、クラックの発生が防止され、これにより保護層36の損傷による信頼性の劣化を有効に回避することができる。
【0041】
なおAl溶液侵漬テストにより、従来手法によりプリンタヘッドのクラックを検査したことろ、42サンプル中、20個のプリンタヘッドでクラックが確認され、クラックの発生確率は、約48〔%〕であった。ここでAl溶液侵漬テストは、アルミニューム配線材料の溶解液である燐酸、酢酸、硝酸の混合液にプリンタヘッドを侵漬させることにより、クラック部分より保護層36の下層に溶解液を進入させて配線パターン35を溶解させ、これによりクラックの有無を確実に目視可能にする試験である。なおこの従来手法によるプリンタヘッドは、耐キャビティーション層を作成した後、400度、60分間の熱処理を実行したものであり、膜厚300〔nm〕により保護層を作成した物である。
【0042】
これに対してこの実施の形態に係るプリンタヘッドにおいては、同様のAl溶液侵漬テストにより、膜厚300〔nm〕により保護層を作成した場合には、98サンプル中、2個のプリンタヘッドでクラックの発生が確認され(発生確率2〔%〕)、保護層の膜厚を500〔nm〕とした場合には、100サンプル中、クラックの発生は0個であった。
【0043】
またインクを供給しない状態で、発熱素子の駆動を繰り返して発熱素子の抵抗値の変化を観察したところ、図6に示すように、1億回、パルスを印加しても、発熱素子が断線せず、また抵抗値の変化も僅かであることが判った。なおこの試験における駆動の条件は、1回のパルスで0.85〔W〕の電力を消費するように抵抗値100〔Ω〕の発熱素子を駆動したものであり、繰り返しパルスを印加して、パルス数が1億回となった時点で、抵抗値の変化率は、4〔%〕であった。
【0044】
(3)実施の形態の効果
以上の構成によれば、接続を安定化する熱処理の後に、耐キャビティーション層を形成することにより、保護層の損傷による信頼性の劣化を有効に回避することができる。
【0045】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、タンタル膜により発熱素子を作成する場合等について述べたが、本発明はこれに限らず、各種積層材料については、必要に応じて種々の材料を適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、発熱素子と配線パターンとの間の接続等を安定化する熱処理の後に、耐キャビティーション層を形成することにより、保護層の損傷による信頼性の劣化を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリンタヘッドを示す断面図である。
【図2】図1のプリンタヘッドの作成工程の説明に供する断面図である。
【図3】図2の続きを示す断面図である。
【図4】図3の続きを示す断面図である。
【図5】図4の続きを示す断面図である。
【図6】図1のプリンタヘッドの信頼性試験結果を示す特性曲線図である。
【図7】従来のプリンタヘッドを示す断面図である。
【図8】従来手法によるクラックの発生防止方法の説明に供する断面図である。
【符号の説明】
1、21……プリンタヘッド、2、22……シリコン基板、3、30……発熱素子、4、6、31、32、36……保護層、7、40……耐キャビティーション層、24、25……トランジスタ、28、35……配線パターン
Claims (1)
- 半導体基板に、半導体素子、発熱素子、前記半導体素子を前記発熱素子に接続する配線パターンが作成され、前記半導体素子による前記発熱素子の駆動により、インク液室のインクを加熱して所定のノズルからインク液滴を飛び出させるプリンタヘッドの製造方法において、
前記発熱素子の上層に、前記発熱素子を前記インクより保護する保護層を膜厚300〜500〔nm〕により形成した後、
熱処理により、少なくとも前記発熱素子と前記配線パターンとの間の接続、前記配線パターンと前記半導体素子との接続を安定化し、
その後、前記発熱素子をキャビティーションより保護する耐キャビティーション層を形成する
ことを特徴とするプリンタヘッドの製造方法。
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