JP2004275863A - 塗布方法及び定着部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、光沢性に優れたプリントを得るための曲率を有する定着部材と、塗膜故障(はじき故障)及び膜剥がれが無く製造でき、かつ繰り返し使用による定着部材のはがれを抑制する塗布方法及びその塗布方法による定着部材を提供することにある。
【解決手段】水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する基材へ塗布する塗布方法において、該基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上であることを特徴とする塗布方法。
【選択図】 なし
【解決手段】水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する基材へ塗布する塗布方法において、該基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上であることを特徴とする塗布方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の定着部材の塗布方法及びその塗布方法により得られる定着部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット技術の進歩は目覚ましく、プリンター技術、インク技術、専用のインクジェット記録媒体技術の向上と相まって写真画質と呼ばれる様な高画質になっている。この画質向上に伴い、インクジェット画像の保存性が、従来の銀塩写真画質と比較されるようになり、多くの染料インクにおいて、インクジェット画像の耐水性、耐にじみ性の弱さといった色剤の移動を伴う劣化や、耐光性や酸化ガス耐性に対する弱さといった色剤特有の化学反応を伴う劣化が指摘されている。
【0003】
一方、上記染料インク画像の課題に対し、顔料インクを用いる方法が多く提案されている。しかし、顔料インクを用いた場合、銀塩写真画像のような光沢感が得られなかったり、ブロンジングと呼ばれる金属光沢が見られる場合もあり、多くの問題点を抱えている。また、単に顔料インクを用いるだけでは、銀塩写真画像に匹敵する充分な画像保存性が得られていないのが現状である。
【0004】
上記課題の中で、インクジェット記録画像の画像保存性を向上する目的で、様々な方法が現在まで多くなされている。インクジェット記録媒体としては、インクジェット記録媒体の最表層に、熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設け、画像記録後に、熱可塑性有機高分子粒子を、加熱定着処理を施すことにより、溶融、皮膜化し、結果として、高分子の保護膜を形成することにより、高い光沢性を有し写真画像に匹敵する画像を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0005】
しかしながら、上記加熱加圧処理で用いる定着部材は、加熱された状態で、顔料インク溶媒により湿潤した画像面に対し繰り返し圧着されるため、耐久性、特に、基材と離型性層との接着性に問題があった。この課題に対しては、基材と離型層の間に接着層を設ける方法、基材の表面を改質する方法が提案されているが、塗布の均一性及び接着の均一性に問題があった。
【0006】
一方、基材への均一塗布の観点で、塗布液の表面エネルギーを基材の表面エネルギー以下にするという方法が提案されているが、曲率を設けた部材への塗布には言及していない(例えば、特許文献6参照)。
【0007】
一方、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHを、8mN/m以上にすることで塗布性を向上させる方法が提案されているが、曲率を設けた部材への塗布には言及していない(例えば、特許文献7参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭59−222381号公報 (特許請求の範囲)
【0009】
【特許文献2】
特開平4−21446号公報 (特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献3】
特開平10−315448号公報 (特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献4】
特開平11−5362号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献5】
特開平11−192775号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献6】
特開平9−295836号公報 (特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献7】
特開平11−286561号公報 (特許請求の範囲)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、その目的は、光沢性に優れたプリントを得るための曲率を有する定着部材と、塗膜故障(はじき故障)及び膜剥がれが無く製造でき、かつ繰り返し使用による定着部材のはがれを抑制する塗布方法及びその塗布方法による定着部材を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0017】
1.水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する基材へ塗布する塗布方法において、該基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上であることを特徴とする塗布方法。
【0018】
2.前記基材の曲率が、曲率半径10mm以上、300mm以下であることを特徴とする前記1項に記載の塗布方法。
【0019】
3.前記基材の表面粗さRaが、0.1μm未満であることを特徴とする前記1または2項に記載の塗布方法。
【0020】
4.前記基材が、金属であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の塗布方法。
【0021】
5.前記塗布物が、カップリング剤であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の塗布方法。
【0022】
6.前記1〜5項のいずれか1項に記載の塗布方法により製造されることを特徴とする定着部材。
【0023】
7.溶媒により湿潤した画像の定着に用いられることを特徴とする前記6項に記載の定着部材。
【0024】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、定着部材、特にはインクジェット画像形成方法の加熱定着工程で用いる定着部材の塗布方法として、水酸基を有し、架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上である基材上に塗布して得られる定着部材の塗布方法により、光沢性に優れたプリントを得るための曲率を有する定着部材と、塗膜故障(はじき故障)及び膜剥がれが無く製造でき、かつ繰り返し使用による定着部材のはがれを抑制する塗布方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0025】
また、上記構成に加えて、塗布方法として、基材の曲率が曲率半径10mm以上、300mm以下であること、基材の表面粗さRaが0.1μm未満であること、基材が金属であること、塗布物がカップリング剤であることにより、上記効果がより一層発揮されるものである。
【0026】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明の定着部材及びそれを用いるインクジェット記録装置の概要について説明する。
【0027】
本発明に係るインクジェット記録装置においては、市販されているプリンターのように記録媒体収納部、搬送部、インクカートリッジ、インクジェットプリントヘッドを有するものであれば特に制約はないが、少なくともロール状の記録媒体収納部、搬送部、インクジェットプリントヘッド、切断部、乾燥部及び加熱加圧部、記録プリント収納部から構成される一連のプリンターセットであると、インクジェット写真を商用利用する場合に有用である。
【0028】
記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式のいずれでもよいが、特に、顔料インクでの安定性の観点からピエゾ方式が好ましい。
【0029】
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置の一例を、図1、図2に示す。
【0030】
図1は、乾燥部及び加熱加圧ローラーを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【0031】
図1において、記録媒体の元巻ロールAから搬送ローラ対21により送り出された記録媒体1は、記録ヘッド3によりインクを吐出してインクジェット記録が行われ、カッタ61、62により適宜切断され、第1のローラ対71と第2のローラ対72まで、たわみを有する状態で搬送される。
【0032】
次いで、印字したインク中の溶媒(例えば、水分あるいは有機溶媒)を規定の条件まで蒸発させる乾燥ゾーン8に搬送され、最大打ち込みインク量の10質量%以上、50質量%以下相当量を乾燥させた後、加熱加圧手段4に送られ、内部に発熱体43を有する加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過して、加熱定着処理が行われる。
【0033】
図2は、乾燥部及び加熱加圧ベルトを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【0034】
図1と同様にして印字及び乾燥された記録媒体を、加熱加圧手段4に送り、内部に発熱体43を有する加熱ローラ41と加圧ローラ42との間に定着ベルト44と共に通過することにより、加熱定着処理が行われる。
【0035】
本発明の塗布方法においては、上記加熱ローラ41、加圧ローラ42、あるいは定着ベルト44等の定着部材の製造方法であって、水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上の基材に塗布することで、定着部材を製造することが特徴である。
【0036】
本発明に係る定着部材において、基材としては、曲率を有する基材であれば特に制限はないが、好ましくは曲率半径が10mm以上、300mm以下の基材である。本発明に係る基材の材質としては、特に制限はないが、金属であることが好ましく、例えば、加熱ローラあるいは加圧ローラである場合には、パイプ状の中空芯金から構成され、その内径は10〜70mmであることが好ましい。芯金を構成する金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。芯金の肉厚は0.1〜15mmが好ましく、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0037】
また、定着部材が定着ベルトである場合には、ベルト基材としては、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10〜100μmが好ましい。また、基材の材質としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、等を用いることができる。
【0038】
本発明に係る曲率を有する基材においては、表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上であることが特徴であるが、好ましくは8〜20mN/mである。
【0039】
基材の表面エネルギーの水素結合成分γHは、下記の方法に従って求めることができる。
【0040】
3種の標準液体:水、ニトロメタン、ヨウ化メチレンと、被測定固体(基材)との接触角を、協和界面科学株式会社製:接触角計CA−Vにより5回測定し、測定値を平均し、平均接触角を得た。次に、Young−Dupreの式及び拡張Fowkesの式に基づき、固体の表面自由エネルギーの3成分を算出した。
【0041】
Young−Dupreの式 WSL=γL(1+cosθ)
WSL:液体/固体間の付着エネルギー
γL:液体の表面自由エネルギー
θ :液体/固体の接触角
拡張Fowkesの式
WSL=2{(γSDγLD)1/2+(γSPγLP)1/2+(γSHγLH)1/2}
γL=γLD+γLP+γLH:液体の表面自由エネルギー
γS=γSD+γSP+γSH:固体の表面自由エネルギー
γD、γP、γH:表面自由エネルギーの分散、双極子、水素結合成分
また、本発明に係る基材表面の表面粗さとしては、0.1μm未満であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上、0.1μm未満である。
【0042】
本発明において、加熱ローラ、定着ローラの基材の表面粗さの測定について説明する。
【0043】
本発明においては、以下の方法に従い平均面粗さRaを測定した。
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)として、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえた。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用した。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定した。測定領域2μm角を、1(or2)視野、走査周波数1Hzで測定した。また、得られた三次元データを最小二乗近似することにより、試料のわずかの傾きを補正し、基準面を求めた。
【0044】
表面粗さの解析は、解析ソフトSPIwin(ver.2.05D2、セイコーインスツルメンツ社製)の「解析」メニューより表面粗さ解析を呼び出し、得られた三次元データより平均面粗さを求めた。
【0045】
測定により表された測定面はZ=F(X,Y)で表す。(X,Y)の範囲は(0,0)〜(Xmax,Ymax)となる。それを粗さ解析の対象となる指定面*とすると、表面積S0は次式で求められる。
【0046】
S0=Xmax・Ymax
指定面内のZデータの平均値をZ0とするとき、Z=Z0となる平面を基準面とするときZ0は次式で求められる。
【0047】
【数1】
【0048】
別途JIS B601で中心線平均粗さ(Ra)は粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線の方向をX軸、縦倍率の方向(X軸に垂直)をY軸とし、粗さ曲線をY=F(X)とした時、
【0049】
【数2】
【0050】
で与えられる値と定義される。
本発明においては、この中心線平均粗さRaを、測定面に対して適応できるように三次元に拡張したものを本発明に係る表面粗さ(平均粗さRaともいう)と定義し、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値として表現し、次式を適用して得られた値を用いた。
【0051】
【数3】
【0052】
本発明の塗布方法においては、上記構成からなる曲率を有する基材上に、水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を塗布してプライマリー層を設けることが特徴であり、水酸基を有し架橋により成膜する化合物として、特に制限はないが、シランカップリング剤(例えば、X−92−185(信越化学工業社製)、ハードコート用シリコーン用プライマー液等)、ポリビニルアルコール樹脂(例えば、PVA−124、224,424(いずれも、クラレ製))、ブチラール樹脂(例えば、3000K(電気化学工業社製))、チタンアルコキサイドやジルコニウムアルコキサイドなどの金属アルコキサイド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデンおよびポリブタジエン系などのオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂などが好ましい構成成分として挙げられるが、好ましくはシランカップリング剤である。
【0053】
更に、これらの樹脂を、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物などの硬化剤などを用いて熱硬化させたり、紫外線などの電子線を用いて硬化させても良い。
【0054】
また、「新ラミネート加工便覧」加工技術協会編、第33〜36章記載のものも本発明に必要に応じて用いることができる。
【0055】
尚、前記プライマー層の厚みは、通常0.1μm〜50μmの範囲になるように設けるのが好ましい。
【0056】
また、基材上に設けたプライマリー層上に、表面層(剥離層)を設けることができる。
【0057】
表面層で用いる化合物としては、例えば、付加硬化型シリコーンまたは縮合硬化型のシリコーン等のような硬化型シリコーンを用いて作製されたシリコーン樹脂が好ましく、中でも付加硬化型シリコーンを用いて作製されたシリコーン樹脂が好ましい。
【0058】
また、画像形成時の光沢度の変動を低減し、且つ、定着時、表面層の膜剥がれ防止効果を得る観点で、本発明に係るシリコーン樹脂は、表面層の鉛筆硬度がHB以上であることを満たすことが好ましく、更に好ましくは鉛筆硬度がH〜5Hの範囲であり、特に好ましくは2H〜5Hの範囲である。
【0059】
上記記載の付加硬化型シリコーンは、両末端、あるいは、両末端及び鎖中に、ビニル基を有する直鎖状メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させて得られる。
【0060】
付加硬化型シリコーンの具体例としては、例えば、信越シリコーン社製のKS−887、KS−779H、KS−778、KS−835、X−62−2456、X−62−2494、X−62−2461、KS−3650、KS−3655、KS−3600、KS−847、KS−770、KS−770L、KS−776A、KS−856、KS−775、KS−830、KS−830E、KS−839、X−62−2404、X−62−2405、KS−3702、X−62−2232、KS−3503、KS−3502、KS−3703、KS−5508等が挙げられる。
【0061】
縮合硬化型シリコーンの具体例としては、例えば、信越シリコーン社製のKS−881、KS−882、KS−883、X−62−9490、X−62−9028等のシリコーンを用いることが好ましいが、中でも、KS−881、KS−882、KS−883、X−62−9490、X−62−9028等の剥離紙用重剥離シリコーンが好ましく用いられる。
【0062】
また、本発明に係る加熱ローラあるいは加熱ベルトにおいては、プライマリー層と表面層(剥離層)との間に、各構成層の接着性を高める目的で、必要に応じて接着層を適宜設けても良い。
【0063】
本発明に係る表面層あるいはプライマー層を設ける方法としては、直接あるいは適当な溶媒に溶解して塗布・乾燥する塗工法、層形成成分を溶融してコーティングする溶融コーティング法、大気圧プラズマ処理方法により薄膜を形成する方法などによって設けることができる。
【0064】
上記大気圧プラズマ処理方法を除く塗工法に用いる溶媒としては、例えば、水、アルコール類、セロソルブ類、芳香族類、ケトン類、エステル系溶剤、エーテル類、塩素系溶剤などが挙げられる。前記塗工には、従来から公知のディップ塗布法、グラビアローラによる塗布法、押し出し塗布法、ワイヤーバー塗布法、ローラ塗布法等を採用することができる。
【0065】
以上のようにして作製させる本発明に係る加熱ローラには、芯金内部に発熱体が内蔵されており、ローラ間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、あるいは必要に応じて、2つの加熱ローラを用いて記録媒体を挟んで加熱してもよい。加熱ローラ内には熱源として、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等からなる発熱体が内蔵されている。
【0066】
本発明において、加熱加圧条件としては、0.5〜10MPaの圧力と、50〜150℃の温度条件で加熱加圧処理を施すことが好ましく、更に好ましくは0.5〜5MPaの圧力と、70〜130℃の温度条件である。この際、加熱温度としては、記録媒体を構成する支持体の紙の両面を被覆する樹脂の溶融点以下とすることが、平滑性が高く、ブリスター(支持体の熱変形)の発生を抑えることができるため、好ましい。
【0067】
本発明において、上記で規定する圧力(ニップ圧)を達成するには、例えば、加圧ローラー両端に、ニップ間隙を考慮して、所望のニップ圧が得られるように特定の張力を有するバネを選択して設置すればよい。この時のバネとしては、例えば、張力が0.2〜10MPaのものをローラー長さに応じて選択し使用することができる。
【0068】
ニップ圧の測定方法は、例えば、加圧ローラにかけている力を、感圧紙等で測定したニップ面積で除することにより求めることができ、あるいは加圧ローラ間に感圧紙からなる圧力測定紙をはさみ加圧して、その圧力測定紙の濃度よりニップ圧を求めることもできる。圧力測定紙としては、例えば、FPD301(富士フィルム社製)極超低圧用感圧紙を挙げることができる。
【0069】
加熱加圧ローラ、あるいは加熱加圧ベルトを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、1〜15mm/秒の範囲が好ましい。これは、高速処理性の観点以外に、画質の観点からも好ましい。
【0070】
次いで、本発明で用いることのできるインクジェット記録媒体について説明する。
【0071】
本発明の定着部材を有するインクジェット記録装置で用いることのできるインクジェット記録媒体としては、支持体上に少なくとも1層のインク吸収層を有し、支持体から最も離れた位置にあるインク吸収層である表層が熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
【0072】
一般に、インク吸収層としては、大きく別けて膨潤型と空隙型がある。
膨潤型としては、水溶性バインダーを用い、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布し、これをインク吸収層としたものである。
【0073】
空隙型としては、微粒子及び水溶性バインダーを混合して塗布したもので、特に光沢性のあるものが好ましい。微粒子としては、アルミナもしくはシリカが好ましく、特に粒径0.1μm以下のシリカを用いたものが好ましい。水溶性バインダーとしては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用したものが好ましい。
【0074】
上記の2タイプの内、連続高速プリントに適応するには、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、本発明においては、空隙型を特に好ましく用いることができる。
【0075】
以下、空隙型インク吸収層について、更に詳しく説明する。
空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性樹脂を含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。本発明においては、空隙層に、平均粒径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが、特に好ましい。
【0076】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0077】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0078】
無機微粒子としては、シリカ、及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
【0079】
本発明で用いることのできるシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、高い空隙率が得られるだけでなく、染料を固定化する目的で用いられるカチオン性ポリマーに添加したときに、粗大凝集体が形成されにくいので好ましい。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0080】
無機微粒子は、カチオン性ポリマーと混合する前の微粒子分散液が一次粒子まで分散された状態であるのが好ましい。
【0081】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0082】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0083】
本発明においては、インク吸収層に水溶性バインダーを用いることができる。本発明で用いることのできる水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性バインダーは、二種以上併用することも可能である。
【0084】
本発明で好ましく用いられる水溶性バインダーは、ポリビニルアルコールである。
【0085】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0086】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0087】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0088】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0089】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0090】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0091】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0092】
インク吸収層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機顔料の種類、水溶性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0093】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性バインダーの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0094】
また、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有しても良く、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0095】
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は記録媒体1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0096】
インク保持能を有する空隙層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0097】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。上記ポリウレタン樹脂を用いたインク吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0098】
本発明においては、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤は、インクジェット記録媒体作製の任意の時期に添加することができ、例えば、インク吸収層形成用の塗布液中に添加しても良い。
【0099】
本発明に係るインク吸収層においては、その表層が熱可塑性樹脂を含有することが特徴であるが、熱可塑性樹脂と共に無機微粒子を含有していることが好ましい。
【0100】
本発明でいう表層とは、最表層に限定されることはなく、本発明の効果が発現する構成であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る記録媒体は、画像記録後、例えば、加熱加圧処理により表層に含まれる熱可塑性樹脂を溶融、皮膜化することで、本発明の効果の多くが発現されるものである、熱可塑性樹脂、あるいは無機顔料及び熱可塑性樹脂が含まれている層が最表層でなくとも、その構成は本発明に該当するものであり、特に、顔料インクでプリントする場合、画像記録後の加熱加圧処理の有無で画質、例えば、光沢性、平面性が改良されていれば、熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層が最表層でなくとも、その構成は本発明に該当するものである。
【0101】
本発明でいう表層を明示するための好ましい構成例を以下に列挙するが、本発明に係る層構成は、これらにのみ限定されるものではない。
【0102】
1:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層が最表層である構成
2:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、表面物性の改良を目的とした薄層を設けた構成
3:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、有害光をカットする目的で、紫外線吸収機能を有する薄層を設けた構成
4:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、マット剤を含む層を設けた構成
5:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、剥離可能な層を設けた構成。
【0103】
上記に記載の構成例の内で最も好ましい構成は、本発明の効果を最も発揮できる1項に係る無機微粒子及び熱可塑性樹脂の含有層が最表層である場合である。
【0104】
本発明に係る熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂を含む表層は、無機微粒子、熱可塑性樹脂の他に、必要によりバインダー成分等を含んでも良い。
【0105】
本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられる。中でも、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。また、熱可塑性樹脂は、モノマー組成及び粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いても良い。
【0106】
熱可塑性樹脂を選択するに際しては、インク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮すべきである。
【0107】
インク受容性については、熱可塑性樹脂の粒径が0.05μm未満の場合は、顔料インク中の顔料粒子とインク溶媒の分離が遅くなり、インク吸収速度の低下を招くことになる。また、10μmを越えると、塗設乾燥後のインクジェット記録媒体の皮膜強度の点及び光沢劣化の点から好ましくない。このために好ましい熱可塑性樹脂径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。さらに好ましくは、0.1〜1μmである。
【0108】
また、熱可塑性樹脂の選択の基準としては、ガラス転移点(Tg)が挙げられる。Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば、記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するため、熱可塑性樹脂による空隙が消失してしまう。またTgが、支持体の熱による変性を起こす温度以上の場合は、顔料インクによるインクジェット記録後、溶融、成膜するためには、高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。熱可塑性樹脂の好ましいTgは50〜150℃である。
【0109】
また、最低造膜温度(MFT)としては、50〜150℃のものが好ましい。熱可塑性樹脂は、環境適性の観点からは水系に分散されたものが好ましく、特に、乳化重合により得られた水系ラテックスが好ましい。この際、ノニオン系分散剤を乳化剤として用いて乳化重合したタイプは、好ましく用いることができる形態である。また、用いる熱可塑性樹脂は、臭気および安全性の観点から、残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分に対して3質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下が好ましい、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0110】
無機微粒子としては、前述の空隙層に記載の無機微粒子から選択することができ、好ましくは、シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0111】
無機微粒子は、カチオン性ポリマーと混合する前の微粒子分散液が一次粒子まで分散された状態であるのが好ましい。
【0112】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0113】
本発明においては、表層における上記熱可塑性樹脂の含有比率が、40質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。更には、表層に含有される熱可塑性樹脂の固形分量としては、2g/m2以上、20g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは2〜15g/m2の範囲、さらに好ましくは2.5〜10g/m2の範囲である。熱可塑性樹脂の含有比率あるいは固形分量が少なすぎると、充分な皮膜が形成されず、顔料を充分に皮膜中に分散することができない。このため、画質、光沢が充分に向上しない。また、熱可塑性樹脂の含有比率あるいは固形分量が多すぎると、短時間の加熱工程で熱可塑性樹脂を完全に皮膜化できず、微粒子のまま残り不透明性がありかえって画質が低下し、更に、インク吸収速度も低下させてしまい境界にじみが発生し問題となる。
【0114】
本発明において、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含む表層の場合、熱可塑性樹脂/無機微粒子の固形分質量比としては、90/10〜10/90の範囲から選択でき、好ましくは70/30〜30/70の範囲であり、より好ましくは60/40〜40/60の範囲である。
【0115】
本発明においては、表層のインク吸収容量が、20ml/m2以上であることが好ましく、24ml/m2以上、40ml/m2以下であり、より好ましくは24ml/m2以上、35ml/m2以下である。
【0116】
無機微粒子および熱可塑性樹脂を含む表層用塗布液は、無機微粒子および熱可塑性樹脂を同時に分散しても良いし、各々分散調製したものを、塗布液調製時に混合する方法でもよい。
【0117】
本発明で用いることのできる支持体としては、従来からインクジェット記録媒体に用いられている支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙およびキャストコート紙などの吸収性の紙支持体、プラスティック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体等の非吸収性支持体、あるいはこれらを張り合わせた複合支持体等を、適宜選択して用いることができるが、本発明においては、支持体が紙の両面を樹脂で被覆したレジンコート紙であることが好ましく、更に、紙の両面を被覆する樹脂の少なくとも1種が、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0118】
以下、本発明で好ましく用いることのできる紙支持体の両面をポリエチレン等でラミネートした紙支持体について説明する。
【0119】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて、木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSPおよびまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0120】
上記パルプには、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、四級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0121】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。原紙の坪量は、30〜250g/m2が好ましく、特に50〜200g/m2が好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して、高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0122】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他にLLDPE(リニアローデンシティーポリエチレン)やポリプロピレン等も一部使用することができるが、本発明においては少なくとも1種が、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0123】
インク吸収層側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0124】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って、通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した物も本発明で使用できる。
【0125】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量は、空隙層やバック層を設けた後、低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常、空隙層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0126】
更に、上記ポリエチレンで被覆紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0127】
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい
2.引き裂き強度:JIS−P−8116に規定される方法で、縦方向が0.1〜20N、横方向が2〜20Nが好ましい
3.圧縮弾性率≧98.1MPa
4.表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
5.表面粗さ:JIS−B−0601に規定される表面粗さが、基準長さ2.5mm当たり、最大高さは10μm以下であることが好ましい
6.不透明度:JIS−P−8138に規定された方法で測定したとき、80%以上、特に85〜98%が好ましい
7.白さ:JIS−Z−8729で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい
8.表面光沢度:JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が、10〜95%であることが好ましい
9.クラーク剛直度:記録媒体の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm2/100である支持体が好ましい
10.中紙の含水率:中紙に対して、通常2〜100質量%、好ましくは2〜6質量%
次いで、本発明の曲率を有する定着部材を装備したインクジェット記録装置で用いるインクについて説明する。
【0128】
本発明に係るインクに用いられる着色剤としては、水溶性染料、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、あるいは分散染料、顔料等を用いることができるが、その中でも着色剤として顔料を用いた顔料インクを用いることが好ましい。
【0129】
顔料インク中の顔料としては、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料および、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
【0130】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0131】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0132】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0133】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0134】
これらの顔料は、必要に応じて顔料分散剤を使用してもよく、使用できる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩をあげることができる。
【0135】
顔料の分散方法としては、その方法に特に制限はないが、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0136】
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい方法である。
【0137】
顔料インク中の顔料の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性などを考慮して選択するが、加えて本発明のインクジェット顔料画像の記録方法では、光沢向上、質感向上の観点からも粒径を選択するのが好ましい。本発明において、光沢向上、質感向上する理由は定かでは無いが、画像において顔料は熱可塑性微粒子が溶融した皮膜中に分散された状態にあることと関連していると推測している。高速処理を目的とすると、短時間で熱可塑性微粒子を溶融皮膜化し、更に顔料を充分に皮膜中に分散しなければならない。このとき顔料の表面積は大きく影響し、それゆえ平均粒径に最適領域が存在すると推測している。
【0138】
本発明に用いる顔料インクに含まれる顔料粒子の平均粒径は、300nm以下が好ましく、更に好ましくは30〜200nmであり、特に好ましくは30〜150nmである。
【0139】
顔料インクとして好ましい形態である水系インク組成物は、水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0140】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類が挙げられる。さらに、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが特に好ましい。
【0141】
水溶性有機溶媒は、単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0142】
本発明に用いる顔料インクは、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。該アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0143】
また、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物としては、Air Products社製サーフィノール82、サーフィノール104、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等を好ましく用いられる。
【0144】
インク組成物は、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、熱可塑性微粒子、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜添加することもできる。
【0145】
インク組成物は、その飛翔時の粘度として40mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。
【0146】
インク組成物は、その飛翔時の表面張力として20mN/m以上が好ましく、30〜45mN/mであることが、より好ましい。
【0147】
インク中の顔料固形分濃度は、0.1〜10%の範囲で選択でき、写真画像を得るには、顔料固形分濃度を各々変化した、いわゆる濃淡インクを用いることが好ましく、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの濃淡インクを各々用いることは特に好ましい。また、必要に応じて、赤、緑、青等の特色インクを用いることも、色再現性上好ましい。
【0148】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
実施例1
《定着ベルトの製造》
〔定着ベルト1の製造〕
曲率を有していないベルト基材(シームレスニッケル電鍮ベルト、表面粗さ0.03μm)上に、下記の基材改質用塗布液1を用いて基材改質層(プライマリー層)を塗設した後、下記の接着層用塗布液を用いて接着層を塗設し、次いで表面層(離型層)を塗設して、定着ベルト1を作製した。この定着ベルト1で用いた基材の表面エネルギーの水素結合成分γHは、前述の方法で測定した結果、2mN/mであった。
【0150】
(基材改質用塗布液1の調製:1920ml分)
アルミニウムカップリング剤 プレンアクトAL−M
(川研ファインケミカル(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液を調製した。
【0151】
(基材改質層の塗設)
上記の基材改質用塗布液1を、内径15cm×高さ50cmの円筒形ビーカーに入れ、市販のディップ型塗布機にシームレスニッケル電鍮ベルト(Ra:0.06μm、表面C値98、直径65mm、長さ240mm、肉厚40μm:日東工業(株)製)をセットし、ベルトを降下させてビーカー中に浸した。次に引き上げ速度を毎秒4mmに設定して塗布を行ない、室温で3分放置した後、140℃のオーブンで1時間加熱し、基材改質層を塗設した。
【0152】
(接着層用塗布液の調製:2リットル分)
デンカブチラール6000C(電気化学工業(株)製) 10g
酢酸エチル 1790ml
n−ブタノール 200ml
シランカップリング剤KBM503(信越化学工業社製) 1.6ml
上記の素材を混合、3時間撹拌し、デンカブチラールを完全溶解させ、接着層用塗布液を調製した。
【0153】
(基材改質層上への接着層の塗設)
得られた接着層用塗布液を、内径15cm×高さ50cmの円筒形ビーカーに接着層塗布液2リットル分を入れ、市販のディップ型塗布機に前記基材改質層を有するシームレスニッケル電鍮ベルトをセットし、ベルトを降下させてビーカー中に浸した。次に、引き上げ速度を毎秒4mmに設定して塗布を行った。室温で3分間放置した後、100℃オーブン内で30分加熱して、接着層を塗設した。
【0154】
(離型層用塗布液の調製:2リットル分)
剥離紙用離型剤KS830E(信越化学工業(株)製) 500g
硬化用触媒CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製) 5ml
トルエン 1500ml
上記の素材を混合、撹拌し、離型層用塗布液を調製した。
【0155】
(接着層上への離型層の塗設)
上記調製した離型層用塗布液を、内径15cm×高さ50cmの円筒形ビーカーに2リットル分を入れ、市販のディップ型塗布機に前記接着層を有するシームレスニッケル電鍮ベルトをセットし、ベルトを降下させてビーカー中に浸し、次に、引き上げ速度を毎秒15mmに設定して塗布を行った。室温で5分間放置した後、100℃オーブン内で1時間加熱し、離型層を塗設した。
【0156】
(加水分解・縮合工程)
上記離型層を塗設したベルトを、40℃、80%の雰囲気下で12時間経時した後、更に、140℃で15時間加熱させ、定着ベルト1を製造した。
【0157】
〔定着ベルト2の製造〕
上記定着ベルト1の作製において、曲率50mmのニッケル電鍮ベルトを用いた以外は同様にして、定着ベルト2を作製した。この定着ベルト2で用いた基材の表面エネルギーの水素結合成分γHは、前述の方法で測定した結果、2mN/mであった。
【0158】
〔定着ベルト3〜12の製造〕
上記定着ベルト1、2の作製において、表面の酸化皮膜形成度を変えて、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHを表1に記載のように変更した以外は同様にして、定着ベルト3〜12を作製した。
【0159】
《定着ベルトの評価》
(塗布はじきの評価)
各基材上に基材改質層塗布液をディップ塗布し、25℃、55%RHの環境下で5分間乾燥させた後の基材表面100cm2を目視観察し、下記の基準に則り塗布はじきの評価を行った。
【0160】
○:はじき故障の発生が全く認められない
△:3mm以上のはじき故障が5個以下発生しており、実用上問題がある
×:全面に、はじき故障が多発しており、実用上問題が大きい
(硬化後のはじき耐性の評価)
各基材上に基材改質用塗布液をディップ塗布し、25℃、55%RHの環境下で5分間乾燥させた後、140℃のオーブンに入れ、1時間の加熱を行った後、基材表面100cm2を目視観察し、下記の基準に則り硬化後のはじき耐性の評価を行った。
【0161】
○:はじき故障の発生が全く認められない
△:3mm以上のはじき故障が5個以下発生しており、実用上問題がある
×:全面に、はじき故障が多発しており、実用上問題が大きい
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
表1より明らかなように、曲率を有する基材上への基材改質用塗布液の塗布において、曲率を有さない基材に対しては、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが6mN/mであれは、安定した塗布を行うことができるが、曲面を有する基材に対しては、6mN/mでははじき故障の防止効果が決して充分ではなく、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHとして8mN/m以上であれば、塗布故障の発生もなく、安定した塗膜を曲面に対し形成できることが分かる。
【0164】
実施例2
《インクジェット記録材料の作製》
下記の処方で各々の分散液を調製した後、それら分散液を用いてインクジェット記録材料を作製した。
【0165】
〈シリカ分散液−1の調製〉
1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製:QS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpH=2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、全量を694Lに純水で仕上げてシリカ分散液−1を調製した。
【0166】
〈シリカ分散液−2の調製〉
カチオンポリマー(P−1)を1.14kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する水溶液(pH=2.3)18Lに、シリカ分散液−1の69.4Lを攪拌しながら添加し、ついで、ホウ酸260gとホウ砂230gを含有する水溶液7.0Lを添加し、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。
【0167】
この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げてシリカ分散液−2を調製した。
【0168】
【化1】
【0169】
〈シリカ塗布液の調製〉
ついで上記のようにして得られたシリカ分散液−2を使用して、下記のシリカ塗布液を調製した。
【0170】
シリカ分散液−2の600mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0171】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0172】
〈熱可塑性微粒子塗布液の調製〉
ポリビニルアルコールをノニオン系乳化剤として用いて乳化重合したスチレン−アクリル系ラテックスポリマー(Tg78℃、平均粒径250nm、固形分濃度40%)を、6%硝酸水溶液でpH4.7に調整し、スチレン−アクリル系の熱可塑性微粒子塗布液を調製した。
【0173】
〈複合微粒子塗布液の調製〉
熱可塑性微粒子塗布液とシリカ塗布液を、固形分質量比率が1/1になるように混合して複合微粒子塗布液を調製した。
【0174】
(インクジェット記録材料1の作製)
厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(インク受容層側のポリエチレン中に8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有;インク受容層面側に0.05g/m2のゼラチン下引き層、反対側にTgが約80℃のラテックスポリマーをバック層0.2g/m2として有する)に、ポリエチレンコート紙側からシリカ塗布液、複合微粒子塗布液を、湿潤膜厚がそれぞれ120μm、120μmに成るように同時塗布し、約7℃に一度冷却した後、20℃〜65℃の風を吹き付けて乾燥し、インクジェット記録材料1を作製した。
【0175】
《インクジェット用インクの調製》
以下の様にしてインク組成物を調製した。
【0176】
(イエロー顔料分散液)
C.I.ピグメントイエロー74 95g
デモールC(花王(株)製) 65g
エチレングリコール 100g
イオン交換水 120g
を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、イエロー顔料分散液を得た。得られた顔料分散物の平均粒径は122nmであった。尚、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000により行った。
【0177】
(マゼンタ顔料分散液)
C.I.ピグメントレッド122 105g
ジョンクリル61(アクリル−スチレン系樹脂、ジョンソン社製)60g
グリセリン 100g
イオン交換水 130g
を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、マゼンタ顔料分散液を得た。得られた顔料分散物の平均粒径は85nmであった。
【0178】
(シアン顔料分散液)
C.I.ピグメントブルー15:3 100g
デモールC 68g
ジエチレングリコール 100g
イオン交換水 125g
を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、シアン顔料分散液を得た。得られた顔料分散物の平均粒径は105nmであった。
【0179】
〈イエローインクの調製〉
イエロー顔料分散液 113g
エチレングリコール 100g
グリセリン 72g
ペレックスOT−P(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させイエローインクを調製した。pHは8.2であった。
【0180】
〈シアンインクの調製〉
シアン顔料分散液 113g
エチレングリコール 100g
グリセリン 72g
ペレックスOT−P(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させシアンインクを調製した。pHは8.3であった。
【0181】
〈マゼンタインクの調製〉
マゼンタ顔料分散液 113g
エチレングリコール 100g
1,2−ヘキサンジオール 100g
ペレックスOT−P(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させマゼンタインクを調製した。pHは8.5であった。
【0182】
〈ブラックインクの調製〉
Hostfine Black T 167g
(クラリアント(株)製、平均粒子径50nm)
1,2−ヘキサンジオール 150g
エチレングリコール 220g
ジエチレングリコール 90g
レベノールWX(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させブラックインクを調製した。pHは8.6であった。
【0183】
《インクジェット画像の形成》
〔定着ベルト21〜29の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10(曲率半径50mm)において、表2に記載のように記載の曲率半径を変更した以外は同様にして、定着ベルト21〜29を作製した。
【0184】
〔インクジェット画像の形成〕
上記作製した定着ベルト21〜29と実施例1で作製した定着ベルト10とを、それぞれ図2に記載の加熱定着装置を有するインクジェット記録装置の定着ベルトとしてセットし、上記調製したインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録材料1に黒ベタ画像の印字を行った後、インクジェット記録装置内の定着装置により加熱定着処理を行い、各画像を得た。ここで、定着ベルトに熱を付与する加熱ローラの温度は、120℃に設定した。
【0185】
〔画像の光沢(C値)評価〕
各黒ベタ画像について、像鮮明度測定機ICM−IDP(スガ試験機械(株)製)を用いて、反射60度、光学くし2mmでの鏡面光沢度(C値)を測定し、これを光沢の尺度とした。測定は、同一試料で5回行い、5回測定の平均値をとった。C値としては、85以上がより好ましく、90以上であることが特に好ましい。
【0186】
〔剥離耐性の評価〕
上記の画像印字及び加熱定着処理をA4サイズで連続1000枚の印字を行った後、定着ベルト表面における構成層の剥離状態を目視観察し、下記の基準に則り剥離耐性(接着性)の評価を行った。
【0187】
○:定着ベルト上に、剥離は全く認められない
△:定着ベルト表面で、剥離している箇所が散発している
×:定着ベルト表面で、剥離している箇所が多発している
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2より明らかなように、本発明の曲率を有する基材においても、特に曲率半径が10mm以上、300mm以下である基材を用いた定着ベルトは、光沢及び定着ベルトの接着性がより一層向上していることが分かる。
【0190】
実施例3
《定着ベルト31〜41の作製》
実施例1に記載の定着ベルト10(基材:シームレスニッケル電鍮ベルト、表面エネルギーの水素結合成分γH 8mN/m、表面粗さ0.03μm)において、用いる基材の種類、基材の表面粗さ(μm)、表面エネルギーの水素結合成分γHを表3に記載のように変更した以外は同様にして、定着ベルト31〜41を作製した。
【0191】
《インクジェット画像の形成》
上記作製した定着ベルト31〜41と実施例1で作製した定着ベルト10とを、それぞれ図2に記載の加熱定着装置を有するインクジェット記録装置の定着ベルトとしてセットして、実施例2に記載の方法と同様にして、インクジェット画像を印字し、実施例2に記載の方法と同様にして光沢の評価と、下記の方法に従って、膜剥がれ耐性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0192】
(膜剥がれ耐性の評価)
上記の画像印字及び加熱定着処理をA4サイズで連続1000枚の印字を行った後、定着ベルト表面における構成層の膜剥がれ状態を目視観察し、下記の基準に則り膜剥がれ耐性の評価を行った。
【0193】
○:膜剥がれが全く発生していない
△:5mm角以下の膜剥がれが散発している
×:5mm角以上の膜剥がれが多発している
【0194】
【表3】
【0195】
表3より明らかなように、本発明の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/mである基材を用いた定着ベルトにおいて、更に、基材の表面粗さが0.1μm未満であること、あるいは金属(ニッケル電鍮)である試料が、より一層光沢及び膜剥剥がれ耐性に優れていることが分かる。
【0196】
実施例4
《定着ベルト51〜57の作製》
〔定着ベルト51の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液2を用いた以外は同様にして、定着ベルト51を作製した。
【0197】
(基材改質用塗布液2の調製:1920ml分)
シランカップリング剤 KBM503(信越化学工業(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液2を調製した。
【0198】
〔定着ベルト52の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液3を用いた以外は同様にして、定着ベルト52を作製した。
【0199】
(基材改質用塗布液3の調製:1920ml分)
シランカップリング剤 KBM502(信越化学工業(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液3を調製した。
【0200】
〔定着ベルト53の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液4を用いた以外は同様にして、定着ベルト53を作製した。
【0201】
(基材改質用塗布液4の調製:1920ml分)
シランカップリング剤 KBM602(信越化学工業(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液4を調製した。
【0202】
〔定着ベルト54の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液5を用いた以外は同様にして、定着ベルト54を作製した。
【0203】
(基材改質用塗布液5の調製:1920ml分)
コロネート2030(日本ポリウレタン(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液5を調製した。
【0204】
〔定着ベルト55の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液6を用いた以外は同様にして、定着ベルト55を作製した。
【0205】
(基材改質用塗布液6の調製:1920ml分)
コロネートMX(日本ポリウレタン(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液6を調製した。
【0206】
〔定着ベルト56の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液7を用いた以外は同様にして、定着ベルト56を作製した。
【0207】
(基材改質用塗布液7の調製:1920ml分)
タケネートD−172N(武田薬品(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液7を調製した。
【0208】
〔定着ベルト57の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液8を用いた以外は同様にして、定着ベルト57を作製した。
【0209】
(基材改質用塗布液8の調製:1920ml分)
スミジュール 44V−20(住友バイエルウレタン(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液8を調製した。
【0210】
《インクジェット画像の形成及び評価》
上記作製した定着ベルト51〜57と実施例1で作製した定着ベルト10とを、それぞれ図2に記載の加熱定着装置を有するインクジェット記録装置の定着ベルトとしてセットして、実施例2に記載の方法で画像印字して、実施例3に記載の方法に従って、膜剥がれ耐性の評価を行った。また、各定着ベルトの作製において、実施例1に記載の方法に従って、塗布はじき及び硬化後のはじき耐性の評価を行い、得られた結果を表4に示す。
【0211】
【表4】
【0212】
表4より明らかなように、基体上に設ける基材改質層の組成として、水酸基を有する化合物を用いることにより、基材上への基材改質剤塗布における塗布故障の発生がなく、かつそれを用いて作製した定着ベルトの塗膜耐久性に優れていることが分かる。
【0213】
【発明の効果】
本発明により、光沢性に優れたプリントを得るための曲率を有する定着部材と、塗膜故障(はじき故障)及び膜剥がれが無く製造でき、かつ繰り返し使用による定着部材のはがれを抑制する塗布方法及びその塗布方法による定着部材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いることのできる乾燥部及び加熱加圧ローラを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明で用いることのできる乾燥部及び加熱加圧ベルトを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1、1a 記録媒体
2 記録媒体の搬送手段
21 搬送ローラ対
3 記録ヘッド
34 記録媒体保持部
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラ
42 加圧ローラ
43 発熱体
44 定着ベルト
45 下部圧着ベルト
46 従動ローラ
5 温度センサ
6 記録媒体の切断手段
61、62 カッタ
7 たるみ形成手段
71 第1のローラ対
72 第2のローラ対
8 乾燥ゾーン
9 乾燥部
10 乾燥風
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の定着部材の塗布方法及びその塗布方法により得られる定着部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット技術の進歩は目覚ましく、プリンター技術、インク技術、専用のインクジェット記録媒体技術の向上と相まって写真画質と呼ばれる様な高画質になっている。この画質向上に伴い、インクジェット画像の保存性が、従来の銀塩写真画質と比較されるようになり、多くの染料インクにおいて、インクジェット画像の耐水性、耐にじみ性の弱さといった色剤の移動を伴う劣化や、耐光性や酸化ガス耐性に対する弱さといった色剤特有の化学反応を伴う劣化が指摘されている。
【0003】
一方、上記染料インク画像の課題に対し、顔料インクを用いる方法が多く提案されている。しかし、顔料インクを用いた場合、銀塩写真画像のような光沢感が得られなかったり、ブロンジングと呼ばれる金属光沢が見られる場合もあり、多くの問題点を抱えている。また、単に顔料インクを用いるだけでは、銀塩写真画像に匹敵する充分な画像保存性が得られていないのが現状である。
【0004】
上記課題の中で、インクジェット記録画像の画像保存性を向上する目的で、様々な方法が現在まで多くなされている。インクジェット記録媒体としては、インクジェット記録媒体の最表層に、熱可塑性有機高分子粒子からなる層を設け、画像記録後に、熱可塑性有機高分子粒子を、加熱定着処理を施すことにより、溶融、皮膜化し、結果として、高分子の保護膜を形成することにより、高い光沢性を有し写真画像に匹敵する画像を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0005】
しかしながら、上記加熱加圧処理で用いる定着部材は、加熱された状態で、顔料インク溶媒により湿潤した画像面に対し繰り返し圧着されるため、耐久性、特に、基材と離型性層との接着性に問題があった。この課題に対しては、基材と離型層の間に接着層を設ける方法、基材の表面を改質する方法が提案されているが、塗布の均一性及び接着の均一性に問題があった。
【0006】
一方、基材への均一塗布の観点で、塗布液の表面エネルギーを基材の表面エネルギー以下にするという方法が提案されているが、曲率を設けた部材への塗布には言及していない(例えば、特許文献6参照)。
【0007】
一方、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHを、8mN/m以上にすることで塗布性を向上させる方法が提案されているが、曲率を設けた部材への塗布には言及していない(例えば、特許文献7参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭59−222381号公報 (特許請求の範囲)
【0009】
【特許文献2】
特開平4−21446号公報 (特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献3】
特開平10−315448号公報 (特許請求の範囲)
【0011】
【特許文献4】
特開平11−5362号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献5】
特開平11−192775号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献6】
特開平9−295836号公報 (特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献7】
特開平11−286561号公報 (特許請求の範囲)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、その目的は、光沢性に優れたプリントを得るための曲率を有する定着部材と、塗膜故障(はじき故障)及び膜剥がれが無く製造でき、かつ繰り返し使用による定着部材のはがれを抑制する塗布方法及びその塗布方法による定着部材を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0017】
1.水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する基材へ塗布する塗布方法において、該基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上であることを特徴とする塗布方法。
【0018】
2.前記基材の曲率が、曲率半径10mm以上、300mm以下であることを特徴とする前記1項に記載の塗布方法。
【0019】
3.前記基材の表面粗さRaが、0.1μm未満であることを特徴とする前記1または2項に記載の塗布方法。
【0020】
4.前記基材が、金属であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の塗布方法。
【0021】
5.前記塗布物が、カップリング剤であることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の塗布方法。
【0022】
6.前記1〜5項のいずれか1項に記載の塗布方法により製造されることを特徴とする定着部材。
【0023】
7.溶媒により湿潤した画像の定着に用いられることを特徴とする前記6項に記載の定着部材。
【0024】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、定着部材、特にはインクジェット画像形成方法の加熱定着工程で用いる定着部材の塗布方法として、水酸基を有し、架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上である基材上に塗布して得られる定着部材の塗布方法により、光沢性に優れたプリントを得るための曲率を有する定着部材と、塗膜故障(はじき故障)及び膜剥がれが無く製造でき、かつ繰り返し使用による定着部材のはがれを抑制する塗布方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0025】
また、上記構成に加えて、塗布方法として、基材の曲率が曲率半径10mm以上、300mm以下であること、基材の表面粗さRaが0.1μm未満であること、基材が金属であること、塗布物がカップリング剤であることにより、上記効果がより一層発揮されるものである。
【0026】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明の定着部材及びそれを用いるインクジェット記録装置の概要について説明する。
【0027】
本発明に係るインクジェット記録装置においては、市販されているプリンターのように記録媒体収納部、搬送部、インクカートリッジ、インクジェットプリントヘッドを有するものであれば特に制約はないが、少なくともロール状の記録媒体収納部、搬送部、インクジェットプリントヘッド、切断部、乾燥部及び加熱加圧部、記録プリント収納部から構成される一連のプリンターセットであると、インクジェット写真を商用利用する場合に有用である。
【0028】
記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式のいずれでもよいが、特に、顔料インクでの安定性の観点からピエゾ方式が好ましい。
【0029】
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置の一例を、図1、図2に示す。
【0030】
図1は、乾燥部及び加熱加圧ローラーを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【0031】
図1において、記録媒体の元巻ロールAから搬送ローラ対21により送り出された記録媒体1は、記録ヘッド3によりインクを吐出してインクジェット記録が行われ、カッタ61、62により適宜切断され、第1のローラ対71と第2のローラ対72まで、たわみを有する状態で搬送される。
【0032】
次いで、印字したインク中の溶媒(例えば、水分あるいは有機溶媒)を規定の条件まで蒸発させる乾燥ゾーン8に搬送され、最大打ち込みインク量の10質量%以上、50質量%以下相当量を乾燥させた後、加熱加圧手段4に送られ、内部に発熱体43を有する加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過して、加熱定着処理が行われる。
【0033】
図2は、乾燥部及び加熱加圧ベルトを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【0034】
図1と同様にして印字及び乾燥された記録媒体を、加熱加圧手段4に送り、内部に発熱体43を有する加熱ローラ41と加圧ローラ42との間に定着ベルト44と共に通過することにより、加熱定着処理が行われる。
【0035】
本発明の塗布方法においては、上記加熱ローラ41、加圧ローラ42、あるいは定着ベルト44等の定着部材の製造方法であって、水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上の基材に塗布することで、定着部材を製造することが特徴である。
【0036】
本発明に係る定着部材において、基材としては、曲率を有する基材であれば特に制限はないが、好ましくは曲率半径が10mm以上、300mm以下の基材である。本発明に係る基材の材質としては、特に制限はないが、金属であることが好ましく、例えば、加熱ローラあるいは加圧ローラである場合には、パイプ状の中空芯金から構成され、その内径は10〜70mmであることが好ましい。芯金を構成する金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。芯金の肉厚は0.1〜15mmが好ましく、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0037】
また、定着部材が定着ベルトである場合には、ベルト基材としては、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10〜100μmが好ましい。また、基材の材質としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、等を用いることができる。
【0038】
本発明に係る曲率を有する基材においては、表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上であることが特徴であるが、好ましくは8〜20mN/mである。
【0039】
基材の表面エネルギーの水素結合成分γHは、下記の方法に従って求めることができる。
【0040】
3種の標準液体:水、ニトロメタン、ヨウ化メチレンと、被測定固体(基材)との接触角を、協和界面科学株式会社製:接触角計CA−Vにより5回測定し、測定値を平均し、平均接触角を得た。次に、Young−Dupreの式及び拡張Fowkesの式に基づき、固体の表面自由エネルギーの3成分を算出した。
【0041】
Young−Dupreの式 WSL=γL(1+cosθ)
WSL:液体/固体間の付着エネルギー
γL:液体の表面自由エネルギー
θ :液体/固体の接触角
拡張Fowkesの式
WSL=2{(γSDγLD)1/2+(γSPγLP)1/2+(γSHγLH)1/2}
γL=γLD+γLP+γLH:液体の表面自由エネルギー
γS=γSD+γSP+γSH:固体の表面自由エネルギー
γD、γP、γH:表面自由エネルギーの分散、双極子、水素結合成分
また、本発明に係る基材表面の表面粗さとしては、0.1μm未満であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上、0.1μm未満である。
【0042】
本発明において、加熱ローラ、定着ローラの基材の表面粗さの測定について説明する。
【0043】
本発明においては、以下の方法に従い平均面粗さRaを測定した。
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)として、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえた。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用した。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定した。測定領域2μm角を、1(or2)視野、走査周波数1Hzで測定した。また、得られた三次元データを最小二乗近似することにより、試料のわずかの傾きを補正し、基準面を求めた。
【0044】
表面粗さの解析は、解析ソフトSPIwin(ver.2.05D2、セイコーインスツルメンツ社製)の「解析」メニューより表面粗さ解析を呼び出し、得られた三次元データより平均面粗さを求めた。
【0045】
測定により表された測定面はZ=F(X,Y)で表す。(X,Y)の範囲は(0,0)〜(Xmax,Ymax)となる。それを粗さ解析の対象となる指定面*とすると、表面積S0は次式で求められる。
【0046】
S0=Xmax・Ymax
指定面内のZデータの平均値をZ0とするとき、Z=Z0となる平面を基準面とするときZ0は次式で求められる。
【0047】
【数1】
【0048】
別途JIS B601で中心線平均粗さ(Ra)は粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線の方向をX軸、縦倍率の方向(X軸に垂直)をY軸とし、粗さ曲線をY=F(X)とした時、
【0049】
【数2】
【0050】
で与えられる値と定義される。
本発明においては、この中心線平均粗さRaを、測定面に対して適応できるように三次元に拡張したものを本発明に係る表面粗さ(平均粗さRaともいう)と定義し、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値として表現し、次式を適用して得られた値を用いた。
【0051】
【数3】
【0052】
本発明の塗布方法においては、上記構成からなる曲率を有する基材上に、水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を塗布してプライマリー層を設けることが特徴であり、水酸基を有し架橋により成膜する化合物として、特に制限はないが、シランカップリング剤(例えば、X−92−185(信越化学工業社製)、ハードコート用シリコーン用プライマー液等)、ポリビニルアルコール樹脂(例えば、PVA−124、224,424(いずれも、クラレ製))、ブチラール樹脂(例えば、3000K(電気化学工業社製))、チタンアルコキサイドやジルコニウムアルコキサイドなどの金属アルコキサイド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデンおよびポリブタジエン系などのオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂などが好ましい構成成分として挙げられるが、好ましくはシランカップリング剤である。
【0053】
更に、これらの樹脂を、イソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物などの硬化剤などを用いて熱硬化させたり、紫外線などの電子線を用いて硬化させても良い。
【0054】
また、「新ラミネート加工便覧」加工技術協会編、第33〜36章記載のものも本発明に必要に応じて用いることができる。
【0055】
尚、前記プライマー層の厚みは、通常0.1μm〜50μmの範囲になるように設けるのが好ましい。
【0056】
また、基材上に設けたプライマリー層上に、表面層(剥離層)を設けることができる。
【0057】
表面層で用いる化合物としては、例えば、付加硬化型シリコーンまたは縮合硬化型のシリコーン等のような硬化型シリコーンを用いて作製されたシリコーン樹脂が好ましく、中でも付加硬化型シリコーンを用いて作製されたシリコーン樹脂が好ましい。
【0058】
また、画像形成時の光沢度の変動を低減し、且つ、定着時、表面層の膜剥がれ防止効果を得る観点で、本発明に係るシリコーン樹脂は、表面層の鉛筆硬度がHB以上であることを満たすことが好ましく、更に好ましくは鉛筆硬度がH〜5Hの範囲であり、特に好ましくは2H〜5Hの範囲である。
【0059】
上記記載の付加硬化型シリコーンは、両末端、あるいは、両末端及び鎖中に、ビニル基を有する直鎖状メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させて得られる。
【0060】
付加硬化型シリコーンの具体例としては、例えば、信越シリコーン社製のKS−887、KS−779H、KS−778、KS−835、X−62−2456、X−62−2494、X−62−2461、KS−3650、KS−3655、KS−3600、KS−847、KS−770、KS−770L、KS−776A、KS−856、KS−775、KS−830、KS−830E、KS−839、X−62−2404、X−62−2405、KS−3702、X−62−2232、KS−3503、KS−3502、KS−3703、KS−5508等が挙げられる。
【0061】
縮合硬化型シリコーンの具体例としては、例えば、信越シリコーン社製のKS−881、KS−882、KS−883、X−62−9490、X−62−9028等のシリコーンを用いることが好ましいが、中でも、KS−881、KS−882、KS−883、X−62−9490、X−62−9028等の剥離紙用重剥離シリコーンが好ましく用いられる。
【0062】
また、本発明に係る加熱ローラあるいは加熱ベルトにおいては、プライマリー層と表面層(剥離層)との間に、各構成層の接着性を高める目的で、必要に応じて接着層を適宜設けても良い。
【0063】
本発明に係る表面層あるいはプライマー層を設ける方法としては、直接あるいは適当な溶媒に溶解して塗布・乾燥する塗工法、層形成成分を溶融してコーティングする溶融コーティング法、大気圧プラズマ処理方法により薄膜を形成する方法などによって設けることができる。
【0064】
上記大気圧プラズマ処理方法を除く塗工法に用いる溶媒としては、例えば、水、アルコール類、セロソルブ類、芳香族類、ケトン類、エステル系溶剤、エーテル類、塩素系溶剤などが挙げられる。前記塗工には、従来から公知のディップ塗布法、グラビアローラによる塗布法、押し出し塗布法、ワイヤーバー塗布法、ローラ塗布法等を採用することができる。
【0065】
以上のようにして作製させる本発明に係る加熱ローラには、芯金内部に発熱体が内蔵されており、ローラ間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、あるいは必要に応じて、2つの加熱ローラを用いて記録媒体を挟んで加熱してもよい。加熱ローラ内には熱源として、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等からなる発熱体が内蔵されている。
【0066】
本発明において、加熱加圧条件としては、0.5〜10MPaの圧力と、50〜150℃の温度条件で加熱加圧処理を施すことが好ましく、更に好ましくは0.5〜5MPaの圧力と、70〜130℃の温度条件である。この際、加熱温度としては、記録媒体を構成する支持体の紙の両面を被覆する樹脂の溶融点以下とすることが、平滑性が高く、ブリスター(支持体の熱変形)の発生を抑えることができるため、好ましい。
【0067】
本発明において、上記で規定する圧力(ニップ圧)を達成するには、例えば、加圧ローラー両端に、ニップ間隙を考慮して、所望のニップ圧が得られるように特定の張力を有するバネを選択して設置すればよい。この時のバネとしては、例えば、張力が0.2〜10MPaのものをローラー長さに応じて選択し使用することができる。
【0068】
ニップ圧の測定方法は、例えば、加圧ローラにかけている力を、感圧紙等で測定したニップ面積で除することにより求めることができ、あるいは加圧ローラ間に感圧紙からなる圧力測定紙をはさみ加圧して、その圧力測定紙の濃度よりニップ圧を求めることもできる。圧力測定紙としては、例えば、FPD301(富士フィルム社製)極超低圧用感圧紙を挙げることができる。
【0069】
加熱加圧ローラ、あるいは加熱加圧ベルトを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、1〜15mm/秒の範囲が好ましい。これは、高速処理性の観点以外に、画質の観点からも好ましい。
【0070】
次いで、本発明で用いることのできるインクジェット記録媒体について説明する。
【0071】
本発明の定着部材を有するインクジェット記録装置で用いることのできるインクジェット記録媒体としては、支持体上に少なくとも1層のインク吸収層を有し、支持体から最も離れた位置にあるインク吸収層である表層が熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
【0072】
一般に、インク吸収層としては、大きく別けて膨潤型と空隙型がある。
膨潤型としては、水溶性バインダーを用い、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布し、これをインク吸収層としたものである。
【0073】
空隙型としては、微粒子及び水溶性バインダーを混合して塗布したもので、特に光沢性のあるものが好ましい。微粒子としては、アルミナもしくはシリカが好ましく、特に粒径0.1μm以下のシリカを用いたものが好ましい。水溶性バインダーとしては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用したものが好ましい。
【0074】
上記の2タイプの内、連続高速プリントに適応するには、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、本発明においては、空隙型を特に好ましく用いることができる。
【0075】
以下、空隙型インク吸収層について、更に詳しく説明する。
空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性樹脂を含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。本発明においては、空隙層に、平均粒径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが、特に好ましい。
【0076】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0077】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0078】
無機微粒子としては、シリカ、及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
【0079】
本発明で用いることのできるシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、高い空隙率が得られるだけでなく、染料を固定化する目的で用いられるカチオン性ポリマーに添加したときに、粗大凝集体が形成されにくいので好ましい。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0080】
無機微粒子は、カチオン性ポリマーと混合する前の微粒子分散液が一次粒子まで分散された状態であるのが好ましい。
【0081】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0082】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することができる。
【0083】
本発明においては、インク吸収層に水溶性バインダーを用いることができる。本発明で用いることのできる水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性バインダーは、二種以上併用することも可能である。
【0084】
本発明で好ましく用いられる水溶性バインダーは、ポリビニルアルコールである。
【0085】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0086】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0087】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0088】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0089】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0090】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0091】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0092】
インク吸収層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機顔料の種類、水溶性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0093】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性バインダーの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0094】
また、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有しても良く、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0095】
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は記録媒体1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0096】
インク保持能を有する空隙層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0097】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。上記ポリウレタン樹脂を用いたインク吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0098】
本発明においては、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤は、インクジェット記録媒体作製の任意の時期に添加することができ、例えば、インク吸収層形成用の塗布液中に添加しても良い。
【0099】
本発明に係るインク吸収層においては、その表層が熱可塑性樹脂を含有することが特徴であるが、熱可塑性樹脂と共に無機微粒子を含有していることが好ましい。
【0100】
本発明でいう表層とは、最表層に限定されることはなく、本発明の効果が発現する構成であれば、特に限定されるものではない。本発明に係る記録媒体は、画像記録後、例えば、加熱加圧処理により表層に含まれる熱可塑性樹脂を溶融、皮膜化することで、本発明の効果の多くが発現されるものである、熱可塑性樹脂、あるいは無機顔料及び熱可塑性樹脂が含まれている層が最表層でなくとも、その構成は本発明に該当するものであり、特に、顔料インクでプリントする場合、画像記録後の加熱加圧処理の有無で画質、例えば、光沢性、平面性が改良されていれば、熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層が最表層でなくとも、その構成は本発明に該当するものである。
【0101】
本発明でいう表層を明示するための好ましい構成例を以下に列挙するが、本発明に係る層構成は、これらにのみ限定されるものではない。
【0102】
1:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層が最表層である構成
2:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、表面物性の改良を目的とした薄層を設けた構成
3:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、有害光をカットする目的で、紫外線吸収機能を有する薄層を設けた構成
4:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、マット剤を含む層を設けた構成
5:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂が含まれている層の上に、剥離可能な層を設けた構成。
【0103】
上記に記載の構成例の内で最も好ましい構成は、本発明の効果を最も発揮できる1項に係る無機微粒子及び熱可塑性樹脂の含有層が最表層である場合である。
【0104】
本発明に係る熱可塑性樹脂、あるいは無機微粒子及び熱可塑性樹脂を含む表層は、無機微粒子、熱可塑性樹脂の他に、必要によりバインダー成分等を含んでも良い。
【0105】
本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられる。中でも、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、SBRラテックスが好ましい。また、熱可塑性樹脂は、モノマー組成及び粒径、重合度が違う複数の重合体を混合して用いても良い。
【0106】
熱可塑性樹脂を選択するに際しては、インク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮すべきである。
【0107】
インク受容性については、熱可塑性樹脂の粒径が0.05μm未満の場合は、顔料インク中の顔料粒子とインク溶媒の分離が遅くなり、インク吸収速度の低下を招くことになる。また、10μmを越えると、塗設乾燥後のインクジェット記録媒体の皮膜強度の点及び光沢劣化の点から好ましくない。このために好ましい熱可塑性樹脂径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。さらに好ましくは、0.1〜1μmである。
【0108】
また、熱可塑性樹脂の選択の基準としては、ガラス転移点(Tg)が挙げられる。Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば、記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するため、熱可塑性樹脂による空隙が消失してしまう。またTgが、支持体の熱による変性を起こす温度以上の場合は、顔料インクによるインクジェット記録後、溶融、成膜するためには、高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。熱可塑性樹脂の好ましいTgは50〜150℃である。
【0109】
また、最低造膜温度(MFT)としては、50〜150℃のものが好ましい。熱可塑性樹脂は、環境適性の観点からは水系に分散されたものが好ましく、特に、乳化重合により得られた水系ラテックスが好ましい。この際、ノニオン系分散剤を乳化剤として用いて乳化重合したタイプは、好ましく用いることができる形態である。また、用いる熱可塑性樹脂は、臭気および安全性の観点から、残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分に対して3質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下が好ましい、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0110】
無機微粒子としては、前述の空隙層に記載の無機微粒子から選択することができ、好ましくは、シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0111】
無機微粒子は、カチオン性ポリマーと混合する前の微粒子分散液が一次粒子まで分散された状態であるのが好ましい。
【0112】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0113】
本発明においては、表層における上記熱可塑性樹脂の含有比率が、40質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。更には、表層に含有される熱可塑性樹脂の固形分量としては、2g/m2以上、20g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは2〜15g/m2の範囲、さらに好ましくは2.5〜10g/m2の範囲である。熱可塑性樹脂の含有比率あるいは固形分量が少なすぎると、充分な皮膜が形成されず、顔料を充分に皮膜中に分散することができない。このため、画質、光沢が充分に向上しない。また、熱可塑性樹脂の含有比率あるいは固形分量が多すぎると、短時間の加熱工程で熱可塑性樹脂を完全に皮膜化できず、微粒子のまま残り不透明性がありかえって画質が低下し、更に、インク吸収速度も低下させてしまい境界にじみが発生し問題となる。
【0114】
本発明において、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含む表層の場合、熱可塑性樹脂/無機微粒子の固形分質量比としては、90/10〜10/90の範囲から選択でき、好ましくは70/30〜30/70の範囲であり、より好ましくは60/40〜40/60の範囲である。
【0115】
本発明においては、表層のインク吸収容量が、20ml/m2以上であることが好ましく、24ml/m2以上、40ml/m2以下であり、より好ましくは24ml/m2以上、35ml/m2以下である。
【0116】
無機微粒子および熱可塑性樹脂を含む表層用塗布液は、無機微粒子および熱可塑性樹脂を同時に分散しても良いし、各々分散調製したものを、塗布液調製時に混合する方法でもよい。
【0117】
本発明で用いることのできる支持体としては、従来からインクジェット記録媒体に用いられている支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙およびキャストコート紙などの吸収性の紙支持体、プラスティック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体等の非吸収性支持体、あるいはこれらを張り合わせた複合支持体等を、適宜選択して用いることができるが、本発明においては、支持体が紙の両面を樹脂で被覆したレジンコート紙であることが好ましく、更に、紙の両面を被覆する樹脂の少なくとも1種が、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0118】
以下、本発明で好ましく用いることのできる紙支持体の両面をポリエチレン等でラミネートした紙支持体について説明する。
【0119】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて、木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSPおよびまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0120】
上記パルプには、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、四級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0121】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。原紙の坪量は、30〜250g/m2が好ましく、特に50〜200g/m2が好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して、高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0122】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他にLLDPE(リニアローデンシティーポリエチレン)やポリプロピレン等も一部使用することができるが、本発明においては少なくとも1種が、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0123】
インク吸収層側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0124】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って、通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した物も本発明で使用できる。
【0125】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量は、空隙層やバック層を設けた後、低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常、空隙層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0126】
更に、上記ポリエチレンで被覆紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0127】
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい
2.引き裂き強度:JIS−P−8116に規定される方法で、縦方向が0.1〜20N、横方向が2〜20Nが好ましい
3.圧縮弾性率≧98.1MPa
4.表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
5.表面粗さ:JIS−B−0601に規定される表面粗さが、基準長さ2.5mm当たり、最大高さは10μm以下であることが好ましい
6.不透明度:JIS−P−8138に規定された方法で測定したとき、80%以上、特に85〜98%が好ましい
7.白さ:JIS−Z−8729で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい
8.表面光沢度:JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が、10〜95%であることが好ましい
9.クラーク剛直度:記録媒体の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm2/100である支持体が好ましい
10.中紙の含水率:中紙に対して、通常2〜100質量%、好ましくは2〜6質量%
次いで、本発明の曲率を有する定着部材を装備したインクジェット記録装置で用いるインクについて説明する。
【0128】
本発明に係るインクに用いられる着色剤としては、水溶性染料、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、あるいは分散染料、顔料等を用いることができるが、その中でも着色剤として顔料を用いた顔料インクを用いることが好ましい。
【0129】
顔料インク中の顔料としては、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料および、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
【0130】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0131】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0132】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0133】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0134】
これらの顔料は、必要に応じて顔料分散剤を使用してもよく、使用できる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩をあげることができる。
【0135】
顔料の分散方法としては、その方法に特に制限はないが、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0136】
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい方法である。
【0137】
顔料インク中の顔料の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性などを考慮して選択するが、加えて本発明のインクジェット顔料画像の記録方法では、光沢向上、質感向上の観点からも粒径を選択するのが好ましい。本発明において、光沢向上、質感向上する理由は定かでは無いが、画像において顔料は熱可塑性微粒子が溶融した皮膜中に分散された状態にあることと関連していると推測している。高速処理を目的とすると、短時間で熱可塑性微粒子を溶融皮膜化し、更に顔料を充分に皮膜中に分散しなければならない。このとき顔料の表面積は大きく影響し、それゆえ平均粒径に最適領域が存在すると推測している。
【0138】
本発明に用いる顔料インクに含まれる顔料粒子の平均粒径は、300nm以下が好ましく、更に好ましくは30〜200nmであり、特に好ましくは30〜150nmである。
【0139】
顔料インクとして好ましい形態である水系インク組成物は、水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0140】
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類が挙げられる。さらに、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが特に好ましい。
【0141】
水溶性有機溶媒は、単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5〜60質量%であり、好ましくは10〜35質量%である。
【0142】
本発明に用いる顔料インクは、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。該アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0143】
また、アセチレンジオール及びそのエチレンオキサイド付加物としては、Air Products社製サーフィノール82、サーフィノール104、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等を好ましく用いられる。
【0144】
インク組成物は、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、熱可塑性微粒子、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜添加することもできる。
【0145】
インク組成物は、その飛翔時の粘度として40mPa・s以下が好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。
【0146】
インク組成物は、その飛翔時の表面張力として20mN/m以上が好ましく、30〜45mN/mであることが、より好ましい。
【0147】
インク中の顔料固形分濃度は、0.1〜10%の範囲で選択でき、写真画像を得るには、顔料固形分濃度を各々変化した、いわゆる濃淡インクを用いることが好ましく、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの濃淡インクを各々用いることは特に好ましい。また、必要に応じて、赤、緑、青等の特色インクを用いることも、色再現性上好ましい。
【0148】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
実施例1
《定着ベルトの製造》
〔定着ベルト1の製造〕
曲率を有していないベルト基材(シームレスニッケル電鍮ベルト、表面粗さ0.03μm)上に、下記の基材改質用塗布液1を用いて基材改質層(プライマリー層)を塗設した後、下記の接着層用塗布液を用いて接着層を塗設し、次いで表面層(離型層)を塗設して、定着ベルト1を作製した。この定着ベルト1で用いた基材の表面エネルギーの水素結合成分γHは、前述の方法で測定した結果、2mN/mであった。
【0150】
(基材改質用塗布液1の調製:1920ml分)
アルミニウムカップリング剤 プレンアクトAL−M
(川研ファインケミカル(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液を調製した。
【0151】
(基材改質層の塗設)
上記の基材改質用塗布液1を、内径15cm×高さ50cmの円筒形ビーカーに入れ、市販のディップ型塗布機にシームレスニッケル電鍮ベルト(Ra:0.06μm、表面C値98、直径65mm、長さ240mm、肉厚40μm:日東工業(株)製)をセットし、ベルトを降下させてビーカー中に浸した。次に引き上げ速度を毎秒4mmに設定して塗布を行ない、室温で3分放置した後、140℃のオーブンで1時間加熱し、基材改質層を塗設した。
【0152】
(接着層用塗布液の調製:2リットル分)
デンカブチラール6000C(電気化学工業(株)製) 10g
酢酸エチル 1790ml
n−ブタノール 200ml
シランカップリング剤KBM503(信越化学工業社製) 1.6ml
上記の素材を混合、3時間撹拌し、デンカブチラールを完全溶解させ、接着層用塗布液を調製した。
【0153】
(基材改質層上への接着層の塗設)
得られた接着層用塗布液を、内径15cm×高さ50cmの円筒形ビーカーに接着層塗布液2リットル分を入れ、市販のディップ型塗布機に前記基材改質層を有するシームレスニッケル電鍮ベルトをセットし、ベルトを降下させてビーカー中に浸した。次に、引き上げ速度を毎秒4mmに設定して塗布を行った。室温で3分間放置した後、100℃オーブン内で30分加熱して、接着層を塗設した。
【0154】
(離型層用塗布液の調製:2リットル分)
剥離紙用離型剤KS830E(信越化学工業(株)製) 500g
硬化用触媒CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製) 5ml
トルエン 1500ml
上記の素材を混合、撹拌し、離型層用塗布液を調製した。
【0155】
(接着層上への離型層の塗設)
上記調製した離型層用塗布液を、内径15cm×高さ50cmの円筒形ビーカーに2リットル分を入れ、市販のディップ型塗布機に前記接着層を有するシームレスニッケル電鍮ベルトをセットし、ベルトを降下させてビーカー中に浸し、次に、引き上げ速度を毎秒15mmに設定して塗布を行った。室温で5分間放置した後、100℃オーブン内で1時間加熱し、離型層を塗設した。
【0156】
(加水分解・縮合工程)
上記離型層を塗設したベルトを、40℃、80%の雰囲気下で12時間経時した後、更に、140℃で15時間加熱させ、定着ベルト1を製造した。
【0157】
〔定着ベルト2の製造〕
上記定着ベルト1の作製において、曲率50mmのニッケル電鍮ベルトを用いた以外は同様にして、定着ベルト2を作製した。この定着ベルト2で用いた基材の表面エネルギーの水素結合成分γHは、前述の方法で測定した結果、2mN/mであった。
【0158】
〔定着ベルト3〜12の製造〕
上記定着ベルト1、2の作製において、表面の酸化皮膜形成度を変えて、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHを表1に記載のように変更した以外は同様にして、定着ベルト3〜12を作製した。
【0159】
《定着ベルトの評価》
(塗布はじきの評価)
各基材上に基材改質層塗布液をディップ塗布し、25℃、55%RHの環境下で5分間乾燥させた後の基材表面100cm2を目視観察し、下記の基準に則り塗布はじきの評価を行った。
【0160】
○:はじき故障の発生が全く認められない
△:3mm以上のはじき故障が5個以下発生しており、実用上問題がある
×:全面に、はじき故障が多発しており、実用上問題が大きい
(硬化後のはじき耐性の評価)
各基材上に基材改質用塗布液をディップ塗布し、25℃、55%RHの環境下で5分間乾燥させた後、140℃のオーブンに入れ、1時間の加熱を行った後、基材表面100cm2を目視観察し、下記の基準に則り硬化後のはじき耐性の評価を行った。
【0161】
○:はじき故障の発生が全く認められない
△:3mm以上のはじき故障が5個以下発生しており、実用上問題がある
×:全面に、はじき故障が多発しており、実用上問題が大きい
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
表1より明らかなように、曲率を有する基材上への基材改質用塗布液の塗布において、曲率を有さない基材に対しては、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが6mN/mであれは、安定した塗布を行うことができるが、曲面を有する基材に対しては、6mN/mでははじき故障の防止効果が決して充分ではなく、基材の表面エネルギーの水素結合成分γHとして8mN/m以上であれば、塗布故障の発生もなく、安定した塗膜を曲面に対し形成できることが分かる。
【0164】
実施例2
《インクジェット記録材料の作製》
下記の処方で各々の分散液を調製した後、それら分散液を用いてインクジェット記録材料を作製した。
【0165】
〈シリカ分散液−1の調製〉
1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製:QS−20)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpH=2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、全量を694Lに純水で仕上げてシリカ分散液−1を調製した。
【0166】
〈シリカ分散液−2の調製〉
カチオンポリマー(P−1)を1.14kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する水溶液(pH=2.3)18Lに、シリカ分散液−1の69.4Lを攪拌しながら添加し、ついで、ホウ酸260gとホウ砂230gを含有する水溶液7.0Lを添加し、消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。
【0167】
この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げてシリカ分散液−2を調製した。
【0168】
【化1】
【0169】
〈シリカ塗布液の調製〉
ついで上記のようにして得られたシリカ分散液−2を使用して、下記のシリカ塗布液を調製した。
【0170】
シリカ分散液−2の600mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0171】
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0172】
〈熱可塑性微粒子塗布液の調製〉
ポリビニルアルコールをノニオン系乳化剤として用いて乳化重合したスチレン−アクリル系ラテックスポリマー(Tg78℃、平均粒径250nm、固形分濃度40%)を、6%硝酸水溶液でpH4.7に調整し、スチレン−アクリル系の熱可塑性微粒子塗布液を調製した。
【0173】
〈複合微粒子塗布液の調製〉
熱可塑性微粒子塗布液とシリカ塗布液を、固形分質量比率が1/1になるように混合して複合微粒子塗布液を調製した。
【0174】
(インクジェット記録材料1の作製)
厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(インク受容層側のポリエチレン中に8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有;インク受容層面側に0.05g/m2のゼラチン下引き層、反対側にTgが約80℃のラテックスポリマーをバック層0.2g/m2として有する)に、ポリエチレンコート紙側からシリカ塗布液、複合微粒子塗布液を、湿潤膜厚がそれぞれ120μm、120μmに成るように同時塗布し、約7℃に一度冷却した後、20℃〜65℃の風を吹き付けて乾燥し、インクジェット記録材料1を作製した。
【0175】
《インクジェット用インクの調製》
以下の様にしてインク組成物を調製した。
【0176】
(イエロー顔料分散液)
C.I.ピグメントイエロー74 95g
デモールC(花王(株)製) 65g
エチレングリコール 100g
イオン交換水 120g
を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、イエロー顔料分散液を得た。得られた顔料分散物の平均粒径は122nmであった。尚、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000により行った。
【0177】
(マゼンタ顔料分散液)
C.I.ピグメントレッド122 105g
ジョンクリル61(アクリル−スチレン系樹脂、ジョンソン社製)60g
グリセリン 100g
イオン交換水 130g
を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、マゼンタ顔料分散液を得た。得られた顔料分散物の平均粒径は85nmであった。
【0178】
(シアン顔料分散液)
C.I.ピグメントブルー15:3 100g
デモールC 68g
ジエチレングリコール 100g
イオン交換水 125g
を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、シアン顔料分散液を得た。得られた顔料分散物の平均粒径は105nmであった。
【0179】
〈イエローインクの調製〉
イエロー顔料分散液 113g
エチレングリコール 100g
グリセリン 72g
ペレックスOT−P(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させイエローインクを調製した。pHは8.2であった。
【0180】
〈シアンインクの調製〉
シアン顔料分散液 113g
エチレングリコール 100g
グリセリン 72g
ペレックスOT−P(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させシアンインクを調製した。pHは8.3であった。
【0181】
〈マゼンタインクの調製〉
マゼンタ顔料分散液 113g
エチレングリコール 100g
1,2−ヘキサンジオール 100g
ペレックスOT−P(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させマゼンタインクを調製した。pHは8.5であった。
【0182】
〈ブラックインクの調製〉
Hostfine Black T 167g
(クラリアント(株)製、平均粒子径50nm)
1,2−ヘキサンジオール 150g
エチレングリコール 220g
ジエチレングリコール 90g
レベノールWX(花王(株)製) 3g
プロキセルGXL(ゼネカ社製) 0.2g
これをイオン交換水で1000gに仕上げ、十分に攪拌した後に、孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を二度通過させブラックインクを調製した。pHは8.6であった。
【0183】
《インクジェット画像の形成》
〔定着ベルト21〜29の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10(曲率半径50mm)において、表2に記載のように記載の曲率半径を変更した以外は同様にして、定着ベルト21〜29を作製した。
【0184】
〔インクジェット画像の形成〕
上記作製した定着ベルト21〜29と実施例1で作製した定着ベルト10とを、それぞれ図2に記載の加熱定着装置を有するインクジェット記録装置の定着ベルトとしてセットし、上記調製したインクジェット用インクを用いて、インクジェット記録材料1に黒ベタ画像の印字を行った後、インクジェット記録装置内の定着装置により加熱定着処理を行い、各画像を得た。ここで、定着ベルトに熱を付与する加熱ローラの温度は、120℃に設定した。
【0185】
〔画像の光沢(C値)評価〕
各黒ベタ画像について、像鮮明度測定機ICM−IDP(スガ試験機械(株)製)を用いて、反射60度、光学くし2mmでの鏡面光沢度(C値)を測定し、これを光沢の尺度とした。測定は、同一試料で5回行い、5回測定の平均値をとった。C値としては、85以上がより好ましく、90以上であることが特に好ましい。
【0186】
〔剥離耐性の評価〕
上記の画像印字及び加熱定着処理をA4サイズで連続1000枚の印字を行った後、定着ベルト表面における構成層の剥離状態を目視観察し、下記の基準に則り剥離耐性(接着性)の評価を行った。
【0187】
○:定着ベルト上に、剥離は全く認められない
△:定着ベルト表面で、剥離している箇所が散発している
×:定着ベルト表面で、剥離している箇所が多発している
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2より明らかなように、本発明の曲率を有する基材においても、特に曲率半径が10mm以上、300mm以下である基材を用いた定着ベルトは、光沢及び定着ベルトの接着性がより一層向上していることが分かる。
【0190】
実施例3
《定着ベルト31〜41の作製》
実施例1に記載の定着ベルト10(基材:シームレスニッケル電鍮ベルト、表面エネルギーの水素結合成分γH 8mN/m、表面粗さ0.03μm)において、用いる基材の種類、基材の表面粗さ(μm)、表面エネルギーの水素結合成分γHを表3に記載のように変更した以外は同様にして、定着ベルト31〜41を作製した。
【0191】
《インクジェット画像の形成》
上記作製した定着ベルト31〜41と実施例1で作製した定着ベルト10とを、それぞれ図2に記載の加熱定着装置を有するインクジェット記録装置の定着ベルトとしてセットして、実施例2に記載の方法と同様にして、インクジェット画像を印字し、実施例2に記載の方法と同様にして光沢の評価と、下記の方法に従って、膜剥がれ耐性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0192】
(膜剥がれ耐性の評価)
上記の画像印字及び加熱定着処理をA4サイズで連続1000枚の印字を行った後、定着ベルト表面における構成層の膜剥がれ状態を目視観察し、下記の基準に則り膜剥がれ耐性の評価を行った。
【0193】
○:膜剥がれが全く発生していない
△:5mm角以下の膜剥がれが散発している
×:5mm角以上の膜剥がれが多発している
【0194】
【表3】
【0195】
表3より明らかなように、本発明の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/mである基材を用いた定着ベルトにおいて、更に、基材の表面粗さが0.1μm未満であること、あるいは金属(ニッケル電鍮)である試料が、より一層光沢及び膜剥剥がれ耐性に優れていることが分かる。
【0196】
実施例4
《定着ベルト51〜57の作製》
〔定着ベルト51の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液2を用いた以外は同様にして、定着ベルト51を作製した。
【0197】
(基材改質用塗布液2の調製:1920ml分)
シランカップリング剤 KBM503(信越化学工業(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液2を調製した。
【0198】
〔定着ベルト52の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液3を用いた以外は同様にして、定着ベルト52を作製した。
【0199】
(基材改質用塗布液3の調製:1920ml分)
シランカップリング剤 KBM502(信越化学工業(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液3を調製した。
【0200】
〔定着ベルト53の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液4を用いた以外は同様にして、定着ベルト53を作製した。
【0201】
(基材改質用塗布液4の調製:1920ml分)
シランカップリング剤 KBM602(信越化学工業(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液4を調製した。
【0202】
〔定着ベルト54の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液5を用いた以外は同様にして、定着ベルト54を作製した。
【0203】
(基材改質用塗布液5の調製:1920ml分)
コロネート2030(日本ポリウレタン(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液5を調製した。
【0204】
〔定着ベルト55の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液6を用いた以外は同様にして、定着ベルト55を作製した。
【0205】
(基材改質用塗布液6の調製:1920ml分)
コロネートMX(日本ポリウレタン(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液6を調製した。
【0206】
〔定着ベルト56の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液7を用いた以外は同様にして、定着ベルト56を作製した。
【0207】
(基材改質用塗布液7の調製:1920ml分)
タケネートD−172N(武田薬品(株)製) 120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液7を調製した。
【0208】
〔定着ベルト57の作製〕
実施例1に記載の定着ベルト10の作製において、基材改質用塗布液1に代えて、下記基材改質用塗布液8を用いた以外は同様にして、定着ベルト57を作製した。
【0209】
(基材改質用塗布液8の調製:1920ml分)
スミジュール 44V−20(住友バイエルウレタン(株)製)120g
トルエン 1800ml
上記の素材を混合、攪拌し、基材改質用塗布液8を調製した。
【0210】
《インクジェット画像の形成及び評価》
上記作製した定着ベルト51〜57と実施例1で作製した定着ベルト10とを、それぞれ図2に記載の加熱定着装置を有するインクジェット記録装置の定着ベルトとしてセットして、実施例2に記載の方法で画像印字して、実施例3に記載の方法に従って、膜剥がれ耐性の評価を行った。また、各定着ベルトの作製において、実施例1に記載の方法に従って、塗布はじき及び硬化後のはじき耐性の評価を行い、得られた結果を表4に示す。
【0211】
【表4】
【0212】
表4より明らかなように、基体上に設ける基材改質層の組成として、水酸基を有する化合物を用いることにより、基材上への基材改質剤塗布における塗布故障の発生がなく、かつそれを用いて作製した定着ベルトの塗膜耐久性に優れていることが分かる。
【0213】
【発明の効果】
本発明により、光沢性に優れたプリントを得るための曲率を有する定着部材と、塗膜故障(はじき故障)及び膜剥がれが無く製造でき、かつ繰り返し使用による定着部材のはがれを抑制する塗布方法及びその塗布方法による定着部材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いることのできる乾燥部及び加熱加圧ローラを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明で用いることのできる乾燥部及び加熱加圧ベルトを有するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1、1a 記録媒体
2 記録媒体の搬送手段
21 搬送ローラ対
3 記録ヘッド
34 記録媒体保持部
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラ
42 加圧ローラ
43 発熱体
44 定着ベルト
45 下部圧着ベルト
46 従動ローラ
5 温度センサ
6 記録媒体の切断手段
61、62 カッタ
7 たるみ形成手段
71 第1のローラ対
72 第2のローラ対
8 乾燥ゾーン
9 乾燥部
10 乾燥風
Claims (7)
- 水酸基を有し架橋により成膜する塗布物を、曲率を有する基材へ塗布する塗布方法において、該基材の表面エネルギーの水素結合成分γHが8mN/m以上であることを特徴とする塗布方法。
- 前記基材の曲率が、曲率半径10mm以上、300mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
- 前記基材の表面粗さRaが、0.1μm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布方法。
- 前記基材が、金属であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布方法。
- 前記塗布物が、カップリング剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗布方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗布方法により製造されることを特徴とする定着部材。
- 溶媒により湿潤した画像の定着に用いられることを特徴とする請求項6に記載の定着部材。
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