JP2004274070A - 磁石粉末の製造方法、等方性ボンド磁石の製造方法、磁石粉末および等方性ボンド磁石 - Google Patents

磁石粉末の製造方法、等方性ボンド磁石の製造方法、磁石粉末および等方性ボンド磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】磁束密度が高く、着磁性に優れ、信頼性、特に耐熱性、耐食性の高い磁石を提供すること。
【解決手段】本発明のボンド磁石は、1〜60[m/秒]で回転する冷却ロールの周面に溶融合金を衝突させ、冷却固化して急冷薄帯を得る工程と、真空、減圧状態下、あるいは非酸化性雰囲気中で急冷薄帯を粉砕して、平均粒径が0.5〜150μmの粉末を得る粉砕工程と、前記粉末に対し、350〜850℃、0.5〜300分の熱処理を施し磁石粉末を得る工程と、磁石粉末を結合樹脂と混合し成形する工程とを有する方法により製造され、室温での磁気特性を表すJ−H図での減磁曲線において、J−H図中の原点を通り、かつ傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mである直線との交点を出発点として測定した場合の不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/m以下であり、さらに、室温での固有保磁力(HcJ)が406〜717kA/mである。
【選択図】 図6

Description

本発明は、磁石粉末の製造方法、等方性ボンド磁石の製造方法、磁石粉末および等方性ボンド磁石に関する。
モータ等の小型化を図るためには、そのモータに使用される際の(実質的なパーミアンスにおいての)磁石の磁束密度が高いことが望まれる。ボンド磁石における磁束密度を決定する要因は、磁石粉末の磁気性能(磁化)と、ボンド磁石中における磁石粉末の含有量(含有率)とがある。従って、磁石粉末自体の磁気性能(磁化)がそれほど高くない場合には、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を極端に多くしないと十分な磁束密度が得られない。
ところで、現在、高性能な希土類ボンド磁石として使用されているものとしては、希土類磁石粉末として、MQI社製のMQP−B粉末を用いた等方性ボンド磁石が大半を占めている。等方性ボンド磁石は、異方性ボンド磁石に比べ次のような利点がある。すなわち、ボンド磁石の製造に際し、磁場配向が不要であるため、製造プロセスが簡単で、その結果製造コストが安価となることである。しかしこのMQP−B粉末に代表される従来の等方性ボンド磁石には、次のような問題点がある。
1) 従来の等方性ボンド磁石では、磁束密度が不十分であった。すなわち用いられる磁石粉末の磁気性能(磁化)が低いため、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量(含有率)を高めなければならないが、磁石粉末の含有量を高くすると、ボンド磁石の成形性が悪くなるため、限界がある。また、成形条件の工夫等により磁石粉末の含有量を多くしたとしても、やはり、得られる磁束密度には限界があり、このためモータの小型化を図ることはできない。
2) 保磁力が高いため、着磁性が悪く、比較的高い着磁磁場が必要であった。
3) ナノコンポジット磁石で残留磁束密度の高い磁石も報告されているが、その場合は逆に保磁力が小さすぎて、実用上モータとして得られる磁束密度(実際に使用される際のパーミアンスでの)は非常に低いものであった。また、保磁力が小さいため、熱的安定性も劣る。
4) 温度特性が低く、特に不可逆減磁率については、磁石の固有保磁力(HcJ)が低くなると、極端に低下した。
5) ボンド磁石の耐食性、耐熱性が低い。特に、磁石粉末の磁気特性の低さを補うために、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を多くすると(すなわちボンド磁石の密度を極端に高密度化すると)、耐食性、耐熱性の低下が著しい。
そのため、磁石表面を樹脂層、特に高耐食性が得られるような樹脂層で被覆する必要が生じ、製造工程の増大を招くとともに、樹脂層の存在が磁気性能の低下の原因(モータの高トルク発生の妨げ)ともなる。
本発明の目的は、磁束密度が高く、着磁性に優れ、信頼性、特に耐食性および温度特性に優れた磁石を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1) 溶融合金を、1〜60[m/秒]の周速度で回転する冷却ロールの周面に衝突させ、冷却固化して、薄帯状磁石材料を得る工程と、
前記薄帯状磁石材料を、真空または減圧状態下、あるいは非酸化性雰囲気中で粉砕して、平均粒径が0.5〜150μmの粉末を得る粉砕工程と、
前記粉末に対して、350〜850℃、0.5〜300分の熱処理を施す工程とを有することを特徴とする磁石粉末の製造方法。
(2) 前記磁石粉末は、結合樹脂と混合し成形して等方性ボンド磁石としたときに、室温での磁気特性を表すJ−H図での減磁曲線において、前記J−H図中の原点を通り、かつ傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mである直線との交点を出発点として測定した場合の不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/m以下であり、さらに、室温での固有保磁力(HcJ)が406〜717kA/mである上記(1)に記載の磁石粉末の製造方法。
(3) 前記粉末に対して熱処理を施す工程に先立ち、前記薄帯状磁石材料に熱処理を施す工程を有する上記(1)または(2)に記載の磁石粉末の製造方法。
(4) 前記磁石粉末は、ハード磁性相とソフト磁性相とを有する複合組織で構成されたものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の磁石粉末の製造方法。
(5) 溶融合金を、1〜60[m/秒]の周速度で回転する冷却ロールの周面に衝突させ、冷却固化して、薄帯状磁石材料を得る工程と、
前記薄帯状磁石材料を、真空または減圧状態下、あるいは非酸化性雰囲気中で粉砕して、平均粒径が0.5〜150μmの粉末を得る粉砕工程と、
前記粉末に対して、350〜850℃、0.5〜300分の熱処理を施し磁石粉末を得る工程と、
前記磁石粉末を結合樹脂と混合し成形して等方性ボンド磁石とする工程とを有する等方性ボンド磁石の製造方法であって、
前記等方性ボンド磁石は、室温での磁気特性を表すJ−H図での減磁曲線において、前記J−H図中の原点を通り、かつ傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mである直線との交点を出発点として測定した場合の不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/m以下であり、さらに、室温での固有保磁力(HcJ)が406〜717kA/mであることを特徴とする等方性ボンド磁石の製造方法。
(6) 前記粉末に対して熱処理を施す工程に先立ち、前記薄帯状磁石材料に熱処理を施す工程を有する上記(5)に記載の等方性ボンド磁石の製造方法。
(7) 前記等方性ボンド磁石の密度が5.3〜6.6g/cmとなるように、前記磁石粉末と前記結合樹脂と混合、成形する上記(5)または(6)に記載の等方性ボンド磁石の製造方法。
(8) 前記磁石粉末は、ハード磁性相とソフト磁性相とを有する複合組織で構成されたものである請求項5ないし7のいずれかに記載の等方性ボンド磁石の製造方法。
(9) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする磁石粉末。
(10) 上記(9)に記載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを特徴とする等方性ボンド磁石。
(11) 上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする等方性ボンド磁石。
本発明によれば、磁束密度が高く、着磁性に優れ、信頼性、特に耐食性および温度特性に優れた磁石を提供することができる。
以下、本発明の磁石粉末の製造方法、等方性ボンド磁石の製造方法、磁石粉末および等方性ボンド磁石の実施の形態について、詳細に説明する。
[本発明の概要]
モータなどの小型化を図るために、磁束密度が高い磁石を得ることが課題となっている。ボンド磁石における磁束密度を決定する要因は、磁石粉末の磁気性能(磁化)と、ボンド磁石中における磁石粉末の含有量(含有率)とがあるが、磁石粉末自体の磁気性能(磁化)がそれほど高くない場合には、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を極端に多くしないと十分な磁束密度が得られない。
現在普及している前述のMQI社製のMQP−B粉末は、前述したように、磁束密度が不十分であり、よって、ボンド磁石の製造に際し、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を高めること、すなわち高密度化を余儀なくされ、耐食性や機械的強度等の面で信頼性に欠けるとともに、保磁力が高いため、着磁性が悪いという欠点を有している。
これに対し、本発明の磁石粉末および等方性ボンド磁石(等方性希土類ボンド磁石)は、十分な磁束密度と適度な保磁力が得られ、これにより、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量(含有率)をそれほど高める必要がなく、その結果、高強度で、成形性、耐食性、耐久性、着磁性等に優れた信頼性の高いボンド磁石を提供することができ、また、ボンド磁石の小型化、高性能化により、モータ等の磁石搭載機器の小型化にも大きく貢献することができる。
さらに、本発明の磁石粉末は、ハード磁性相とソフト磁性相とを有する複合組織を構成するものとすることができる。
前述のMQI社製のMQP−B粉末は、ハード磁性相の単相組織であるが、このようなナノコンポジット組織では磁化の高いソフト磁性相が存在するため、トータルの磁化が高くなるという利点があり、さらにリコイル透磁率が高くなるため、一旦逆磁場を加えてもその後の減磁率が小さいという利点を有する。
[磁石粉末の合金組成]
本発明の磁石粉末は、Rx(Fe1-yCoy100-x-z-wzSiw(ただし、Rは少なくとも1種の希土類元素、x:8.1〜9.4原子%、y:0.05〜0.20、z:4.6〜6.8原子%、w:0.2〜3原子%)で表される合金組成からなる。
R(希土類元素)としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができる。
Rの含有量(含有率)は、8.1〜9.4原子%とされる。Rが8.1原子%未満では、十分な保磁力が得られず、Siを添加しても保磁力の向上が少ない。一方、Rが9.4原子%を超えると、磁化のポテンシャルが下がるため、十分な磁束密度が得られなくなる。
ここで、RはNdおよび/またはPrを主とする希土類元素であるのが好ましい。その理由は、これらの希土類元素は、複合組織(特にナノコンポジット組織)を構成するハード磁性相の飽和磁化を高め、また磁石として良好な保磁力を実現するために有効だからである。
また、Rは、Prを含み、その割合がR全体に対し5〜75%であるのが好ましく、10〜60%であるのがより好ましい。この範囲であると、残留磁束密度の低下をほとんど生じることなく、保磁力および角型性を向上させることができるためである。
また、Rは、Dyを含み、その割合がR全体に対し14%以下であるのが好ましい。この範囲であると、残留磁束密度の著しい低下を生じることなく、保磁力を向上させることができると共に、耐熱性の大幅な向上も可能となるからである。
Coは、Feと同様の特性を有する遷移金属である。このCoを添加すること(Feの一部を置換すること)により、キュリー温度が高くなり、温度特性が向上するが、Feに対するCoの置換比率が0.20を超えると、保磁力、磁束密度とともに低下する傾向を示す。また、Feに対するCoの置換比率が0.05〜0.20の範囲では、温度特性の向上のみならず、磁束密度自体も向上する。また、さらに、FeまたはCoの一部をNiに置換してもよい。
B(ボロン)は、高い磁気特性を得るのに重要な元素であり、その含有量は、4.6〜6.8原子%とされる。Bが4.6%未満であると、J−H図における角型性が悪くなる。一方、Bが6.8%を超えると、非磁性相が多くなり、磁束密度が急減する。
Siは、磁石粉末およびボンド磁石の耐食性の向上にとって有利な元素であり、0.2〜3原子%の範囲でその効果が顕著に現れる。また、この範囲では、保磁力の向上が図れ、それに追従して角型性および最大磁気エネルギー積の向上も図れる。そして、Siを0.2〜3原子%含むことによるもう一つの重要な効果は、不可逆減磁率が改善されることである。Siが0.2原子%未満では、上述した耐食性の向上等の効果が少なく、また、Siが3原子%を超えると、磁化の低下が顕著となり、好ましくない。なお、Siの含有量のさらに好適な範囲は、0.5〜2.0原子%である。
なお、Si自体は新規な物質ではないが、本発明では、実験、研究を重ねた結果、ソフト磁性相とハード磁性相とを有する複合組織で構成される磁石粉末において、Siを0.2〜3原子%の範囲で含有せしめることにより、<1>耐食性の向上が図れる、<2>優れた角型性(最大磁気エネルギー積)を確保しつつ保磁力の向上が図れる、<3>不可逆減磁率の改善(絶対値の低減)が図れる、という3つの効果が得られること、特にこれらの効果が同時に得られることを見出したものであり、この点に本発明の意義がある。
このように、本発明では、Siを微量または少量含有せしめることにその特徴を見出したものであり、3原子%を超える量を添加することは、むしろ逆効果であり、本発明の意図するところではない。
また、磁気特性をさらに向上させる等の目的で、磁石粉末を構成する合金中には、必要に応じ、Cu、Al、Ga、Ti、V、Ta、Zr、Nb、Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge等の他の元素を含有することもできる。
[複合組織]
また、磁石材料は、ソフト磁性相とハード磁性相とを有する複合組織となっている。
この複合組織(ナノコンポジット組織)は、ソフト磁性相10とハード磁性相11とが、例えば図1、図2または図3に示すようなパターン(モデル)で存在しており、各相の厚さや粒径がナノメーターレベルで存在している。そして、ソフト磁性相10とハード磁性相11とが相隣接し(粒界相を介して隣接する場合も含む)、磁気的な交換相互作用を生じる。
平均結晶粒径は、5〜50nmであるのが好ましく、10〜40nmであるのがより好ましい。平均結晶粒径が下限値未満であると、結晶粒間の交換相互作用の影響が強くなり過ぎて、磁化反転が容易となり、保磁力が劣化する場合がある。
一方、平均結晶粒径が上限値を超えると、結晶粒径の粗大化と、結晶粒間の交換相互作用の影響が弱くなることから、磁束密度、保磁力、角型性、最大エネルギー積が劣化する場合がある。
なお、図1〜図3に示すパターンは、一例であって、これらに限られるものではなく、例えば図2に示すパターンにおいて、ソフト磁性相10とハード磁性相11とが逆になっているものでもよい。
ソフト磁性相の磁化は、外部磁界の作用により容易にその向きを変えるので、通常はハード磁性相に混在すると、系全体の磁化曲線はJ−H図の第二象現で段のある「へび型曲線」となる。しかし、ソフト磁性相のサイズが数10nm以下と十分小さい場合には、ソフト磁性体の磁化が周囲のハード磁性体の磁化との結合によって十分強く拘束され、系全体がハード磁性体として振舞うようになる。
このような複合組織(ナノコンポジット組織)を持つ磁石は、主に、以下に挙げる特徴1)〜5)を有している。
1)J−H図(縦軸に磁化(J)、横軸に磁界(H)をとった図)の第二象現で、磁化が可逆的にスプリングバックする(この意味で「スプリング磁石」とも言う)。
2)着磁性が良く、比較的低い磁場で着磁できる。
3)磁気特性の温度依存性がハード磁性相単独の場合に比べて小さい。
4)磁気特性の経時変化が小さい。
5)微粉砕しても磁気特性が劣化しない。
前述した合金組成において、ハード磁性相およびソフト磁性相は、例えば次のようなものとなる。
ハード磁性相:R2TM14B系(ただし、TMはFeまたはFeとCo)、またはR2TM14BSi系
ソフト磁性相:TM(特にα−Fe,α−(Fe,Co))、またはTMとSiとの化合物
[磁石粉末の製造]
本発明の磁石粉末は、合金の溶湯を急冷、固化して得られた急冷薄帯(リボン)を粉砕して製造されたものである。以下、その方法の一例について説明する。
図4は、単ロールを用いた急冷法により磁石材料を製造する装置(急冷薄帯製造装置)の構成例を示す斜視図、図5は、図4に示す装置における溶湯の冷却ロールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図である。
図4に示すように、急冷薄帯製造装置1は、磁石材料を収納し得る筒体2と、該筒体2に対し図中矢印9A方向に回転する冷却ロール5とを備えている。筒体2の下端には、磁石材料(合金)の溶湯を射出するノズル(オリフィス)3が形成されている。
また、筒体2のノズル3近傍の外周には、加熱用のコイル4が配置され、このコイル4に例えば高周波を印加することにより、筒体2内を加熱(誘導加熱)し、筒体2内の磁石材料を溶融状態にする。
冷却ロール5は、基部51と、冷却ロール5の周面53を形成する表面層52とで構成されている。
基部51の構成材料は、表面層52と同じ材質で一体構成されていてもよく、また、表面層52とは異なる材質で構成されていてもよい。
基部51の構成材料は、特に限定されないが、表面層52の熱をより速く放散できるように、例えば銅または銅系合金のような熱伝導率の高い金属材料で構成されているのが好ましい。
また、表面層52は、熱伝導率が基部51と同等かまたは基部51より若干低い材料で構成されているのが好ましい。
このような急冷薄帯製造装置1は、チャンバー(図示せず)内に設置され、該チャンバー内に、好ましくは不活性ガスやその他の雰囲気ガスが充填された状態で作動する。特に、急冷薄帯8の酸化を防止するために、雰囲気ガスは、例えばアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスであるのが好ましい。
急冷薄帯製造装置1では、筒体2内に磁石材料(合金)を入れ、コイル4により加熱して溶融し、その溶湯6をノズル3から射出すると、図5に示すように、溶湯6は、冷却ロール5の周面53に衝突し、パドル(湯溜り)7を形成した後、回転する冷却ロール5の周面53に引きずられつつ急速に冷却されて凝固し、急冷薄帯8が連続的または断続的に形成される。このようにして形成された急冷薄帯8は、やがて、そのロール面81が周面53から離れ、図4中の矢印9B方向に進行する。なお、図5中、溶湯の凝固界面71を点線で示す。
冷却ロール5の周速度は、合金溶湯の組成、周面53の溶湯6に対する濡れ性等によりその好適な範囲が異なるが、磁気特性向上のために、1〜60m/秒とされ、特に、5〜40m/秒であるのが好ましい。冷却ロール5の周速度が遅すぎると、急冷薄帯8の体積流量(単位時間当たりに吐出される溶湯の体積)によっては、急冷薄帯8の厚さtが厚くなり、結晶粒径が増大する傾向を示し、逆に冷却ロール5の周速度が速すぎると、大部分が非晶質組織となり、いずれの場合にも、その後に熱処理を加えたとしても磁気特性の向上が望めなくなる。
なお、得られた急冷薄帯8に対しては、例えば、非晶質組織の再結晶化の促進、組織の均質化のために、熱処理を施すこともできる。この熱処理の条件としては、例えば、400〜900℃で、0.5〜300分程度とすることができる。
また、この熱処理は、酸化を防止するために、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×10-6 Torr )、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。
以上のような製造方法により得られた急冷薄帯(薄帯状の磁石材料)8は、微細結晶組織、もしくは微細結晶がアモルファス組織中に含まれるような組織となり、優れた磁気特性が得られる。そして、この急冷薄帯8を粉砕することにより、本発明の磁石粉末が得られる。
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。この場合、粉砕は、酸化を防止するために、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×10-6 Torr )、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うこともできる。
磁石粉末の平均粒径は、磁石粉末の酸化防止と、粉砕による磁気特性劣化の防止とを考慮して、0.5〜150μmとされ、特に、0.5〜100μm程度であるのが好ましく、1〜65μm程度であるのがより好ましく、5〜55μm程度であるのがさらに好ましい。
また、ボンド磁石の成形時のより良好な成形性を得るために、磁石粉末の粒径分布は、ある程度分散されている(バラツキがある)のが好ましい。これにより、得られたボンド磁石の空孔率を低減することができ、その結果、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を同じとしたときに、ボンド磁石の密度や機械的強度をより高めることができ、磁気特性をさらに向上することができる。
なお、得られた磁石粉末に対しては、例えば、粉砕により導入されたひずみの影響の除去、結晶粒径の制御を目的として、熱処理を施す。この熱処理の条件は、350〜850℃で、0.5〜300分である。
また、この熱処理は、酸化を防止するために、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×10-6 Torr )、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うこともできる。
以上のような磁石粉末を用いてボンド磁石を製造した場合、そのような磁石粉末は、結合樹脂との結合性(結合樹脂の濡れ性)が良く、そのため、このボンド磁石は、機械的強度が高く、熱安定性(耐熱性)、耐食性が優れたものとなる。従って、当該磁石粉末は、ボンド磁石の製造に適している。
なお、以上では、急冷法として、単ロール法を例に説明したが、双ロール法を採用してもよい。このような急冷法は、金属組織(結晶粒)を微細化することができるので、ボンド磁石の磁石特性、特に保磁力等を向上させるのに有効である。
[ボンド磁石およびその製造]
次に、本発明の等方性希土類ボンド磁石(以下単に「ボンド磁石」とも言う)について説明する。
本発明のボンド磁石は、前述の磁石粉末を結合樹脂で結合してなるものである。
結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、ナイロン6T、ナイロン9T)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
これらのうちでも、成形性が特に優れており、機械的強度が高いことから、ポリアミド、耐熱性向上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイドを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
このような熱可塑性樹脂は、その種類、共重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の選択が可能となるという利点がある。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
これらのうちでも、成形性が特に優れており、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、混練の均一性にも優れている。
なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでもよい。
このような本発明のボンド磁石は、例えば次のようにして製造される。磁石粉末と、結合樹脂と、必要に応じ添加剤(酸化防止剤、潤滑剤等)とを含むボンド磁石用組成物(コンパウンド)を製造し、このボンド磁石用組成物を用いて、圧縮成形(プレス成形)、押出成形、射出成形等の成形方法により、無磁場中で所望の磁石形状に成形する。結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、成形後、加熱等によりそれを硬化する。
ここで、前記3種の成形方法のうち、押出成形および射出成形(特に、射出成形)は、形状選択の自由度が広く、生産性が高い等の利点があるが、これらの成形方法では、良好な成形性を得るために、成形機内におけるコンパウンドの十分な流動性を確保しなければならないため、圧縮成形に比べて、磁石粉末の含有量を多くすること、すなわちボンド磁石を高密度化することができない。しかしながら、本発明では、後述するように、高い磁束密度が得られ、そのため、ボンド磁石を高密度化しなくても優れた磁気特性が得られるので、押出成形、射出成形により製造されるボンド磁石にもその利点を享受することができる。
ボンド磁石中の磁石粉末の含有量(含有率)は、特に限定されず、通常は、成形方法や、成形性と高磁気特性との両立を考慮して決定される。具体的には、75〜99wt%程度であるのが好ましく、85〜97.5wt%程度であるのがより好ましい。
特に、ボンド磁石が圧縮成形により製造されたものの場合には、磁石粉末の含有量は、90〜99wt%程度であるのが好ましく、93〜98.5wt%程度であるのがより好ましい。
また、ボンド磁石が押出成形または射出成形により製造されたものの場合には、磁石粉末の含有量は、75〜98wt%程度であるのが好ましく、85〜97wt%程度であるのがより好ましい。
ボンド磁石の密度ρは、それに含まれる磁石粉末の比重、磁石粉末の含有量、空孔率等の要因により決定される。本発明のボンド磁石において、その密度ρは特に限定されないが、5.3〜6.6g/cm3程度であるのが好ましく、5.5〜6.4g/cm3程度であるのがより好ましい。
本発明では、磁石粉末の磁束密度が高く、また保磁力もある程度大きいので、ボンド磁石に成形した場合に、磁石粉末の含有量が多い場合はもちろんのこと、含有量が比較的少ない場合でも、優れた磁気特性(特に、高い最大磁気エネルギー積)が得られる。
本発明のボンド磁石の形状、寸法等は特に限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板状、湾曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大きさも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさのものが可能である。特に、小型化、超小型化された磁石に有利であることは、本明細書中で度々述べている通りである。
以上のような本発明のボンド磁石は、室温での磁気特性を表すJ−H図(縦軸に磁化(J)、横軸に磁界(H)をとった図)での減磁曲線において、J−H図中の原点を通り、かつ傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mである直線との交点を出発点として測定した場合の不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/m以下であり、さらに、室温での固有保磁力(HcJ)が406〜717kA/mであるという磁気特性(磁気性能)を有している。以下、不可逆帯磁率(χirr)および固有保磁力(HcJ)について順次説明する。
[不可逆帯磁率について]
不可逆帯磁率(χirr)とは、図6に示すように、J−H図での減磁曲線において、ある点Pにおける当該減磁曲線の接線の傾きを微分帯磁率(χdif)とし、前記点Pから一旦減磁界の大きさを減らしてリコイル曲線を描かせたときの当該リコイル曲線の傾き(リコイル曲線の両端を結ぶ直線の傾き)を可逆帯磁率(χrev)としたとき、次式で表されるもの(単位:ヘンリー/m)を言う。
不可逆帯磁率(χirr)=微分帯磁率(χdif)−可逆帯磁率(χrev
なお、本発明では、J−H図での減磁曲線において、J−H図中の原点を通りかつ傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mである直線yとの交点を前記点Pとした。
本発明において、室温での不可逆帯磁率(χirr)の上限値を5.0×10-7ヘンリー/mと定めた理由は、次の通りである。
前述したように、不可逆帯磁率(χirr)は、一旦減磁界をかけた後、その絶対値を減少させても戻らない磁化の磁界に対する変化率を示すものであるため、この不可逆帯磁率(χirr)をある程度小さい値に抑えることにより、ボンド磁石の熱的安定性の向上、特に不可逆減磁率の絶対値の低減が図れる。実際に、本発明における不可逆帯磁率(χirr)の範囲では、ボンド磁石を例えば100℃×1時間の環境下に放置後、室温まで戻したときの不可逆減磁率はその絶対値が約5%以下となり、実用上(特にモータ等の使用において)十分な耐熱性すなわち熱的安定性が得られる。
これに対し、不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/mを超えると、不可逆減磁率の絶対値が増大し、十分な熱的安定性が得られない。また、固有保磁力が低くなるとともに角型性が悪くなるので、ボンド磁石の実際の使用において、パーミアンス係数(Pc)が大きくなる(例えばPc≧5)ような用途での使用に制限されてしまう。また、保磁力の低下は、熱的安定性の低下をもたらすことにもなる。
室温での不可逆帯磁率(χirr)を5.0×10-7ヘンリー/m以下と定めた理由は以上のとおりであるが、不可逆帯磁率(χirr)はできるだけ小さい値が好ましく、従って、本発明では、不可逆帯磁率(χirr)が4.5×10-7ヘンリー/m以下であるのがより好ましく、4.0×10-7ヘンリー/m以下であるのがさらに好ましい。
[固有保磁力について]
ボンド磁石の室温での固有保磁力(HcJ)は、406〜717kA/mである。特に、435〜677kA/mがより好ましい。
固有保磁力(HcJ)が前記上限値を超えると、着磁性が劣り、前記下限値未満であると、モータの用途によっては逆磁場がかかったときの減磁が顕著になり、また、高温における耐熱性が劣る。従って、固有保磁力(HcJ)を上記範囲とすることにより、ボンド磁石(特に、円筒状磁石)に多極着磁等をするような場合に、十分な着磁磁場が得られないときでも、良好な着磁が可能となり、十分な磁束密度が得られ、高性能なボンド磁石、特にモータ用ボンド磁石を提供することができる。
本発明のボンド磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxは、特に限定されないが、87〜125kJ/m3程度が好ましく、100〜125kJ/m3程度がより好ましい。
(実施例1)
以下に述べるような方法で合金組成がNd8.7Fe77.2-wCo8.55.6Siwの磁石粉末(Si含有量wを種々変化させた複数種の磁石粉末)を得た。
まず、Nd,Fe,Co,B,Siの各原料を秤量して母合金インゴットを鋳造し、このインゴットから約15gのサンプルを切り出した。
図4および図5に示す構成の急冷薄帯製造装置を用意し、底部にノズル(円孔オリフィス)を設けた石英管内に前記サンプルを入れた。急冷薄帯製造装置1が収納されているチャンバー内を脱気した後、不活性ガス(アルゴンガスおよびヘリウムガス)を導入し、所望の温度および圧力の雰囲気とした。
その後、石英管内のインゴットサンプルを高周波誘導加熱により溶解し、さらに、冷却ロールの周速度および噴射圧(石英管の内圧と雰囲気圧との差圧)をそれぞれに20m/秒、40kPaに調整して、溶湯を冷却ロールの周面に向けて噴射し、急冷薄帯(平均厚さ:約30μm、平均幅:約1.6mm)を得た。
この急冷薄帯を粗粉砕した後、アルゴンガス雰囲気中で680℃×300秒間の熱処理を施して、Si含有量wが異なる複数種の磁石粉末を得た。
得られた各磁石粉末について、その相構成を分析するため、Cu−Kαを用い回折角20°〜60°にてX線回折を行った。回折パターンからハード磁性相であるNd2(Fe・Co)141相と、ソフト磁性相であるα−(Fe,Co)相の回折ピークが確認でき、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から、ナノコンポジット組織を形成していることが確認された。
次に、粒度調整のために、各磁石粉末をさらに粉砕機(ライカイ機)を用いてアルゴンガス中で粉砕し、平均粒径60μmの磁石粉末とした。
この磁石粉末と、エポキシ樹脂(結合樹脂)と、少量のヒドラジン系酸化防止剤とを混合し、混練してボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作製した。
次いで、このコンパウンドを粉砕して粒状とし、この粒状物を秤量してプレス装置の金型内に充填し、圧力7ton/cm2で圧縮成形(無磁場中)して、成形体を得た。
離型後、150℃の加熱によりエポキシ樹脂を硬化させて(キュア処理)、直径10mmφ×高さ7mmの円柱状の等方性ボンド磁石を得た。各ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、約97wt%であった。また、各ボンド磁石の密度は、約6.21g/cm3であった。
<磁気特性、不可逆帯磁率の評価>
各ボンド磁石について、磁場強度3.2MA/mでパルス着磁を施した後、直流自記磁束計にて最大印加磁場2.0MA/mで磁気特性(残留磁束密度Br、固有保磁力HcJ、最大磁気エネルギー積(BH)max)を測定した。測定時の温度は、23℃(室温)であった。
図7に示すように、得られたJ−H図の減磁曲線において、原点を通り傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mの直線との交点(動作点)Pを出発点とし、ここから磁界を一旦0まで変化させてから再び元に戻してリコイル曲線を描き、このリコイル曲線の傾き(リコイル曲線の両端を結ぶ直線の傾き)を可逆帯磁率(χrev)として求めた。また、前記交点Pにおける減磁曲線の接線の傾きを微分帯磁率(χdif)として求めた。室温での不可逆帯磁率(χirr)は、χirr=χdif−χrevとして求めた。これらの結果を下記表1に示す。
<耐熱性の評価>
次に、前記各ボンド磁石(直径10mmφ×高さ7mmの円柱状)の耐熱性(熱的安定性)を調べた。この耐熱性は、ボンド磁石を100℃×1時間の環境下に保持した後、室温まで戻した際の不可逆減磁率(初期減磁率)を測定し、評価した。その結果を下記表1に示す。不可逆減磁率(初期減磁率)の絶対値が小さいほど、耐熱性(熱的安定性)に優れる。
<着磁性の評価>
次に、ボンド磁石の着磁性を評価するために、前記各ボンド磁石(直径10mmφ×高さ7mmの円柱状)について、着磁磁界(着磁磁場)を種々変更したときの着磁率を調べた。着磁率は、着磁磁界を4.8MA/mとしたときの残留磁束密度の値を100%とし、これに対する比率で示した。着磁率が90%となるときの着磁磁界の大きさを下記表1に示す。この値が小さいほど、着磁性に優れる。
<磁石粉末の耐食性>
次に、前記各磁石粉末およびこれらより製造された前記各ボンド磁石(直径10mmφ×高さ7mmの円柱状)について、耐食性を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
1.磁石粉末の耐食性
磁石粉末の耐食性は、発露試験により評価した。この発露試験は、磁石粉末を30℃×50%RH×15分の環境下と、80℃×95%RH×15分の環境下に交互におき、これを24回繰り返した後、磁石粉末の表面を顕微鏡観察して、錆の発生状況を次の4段階で評価した。
A:錆の発生全く無し
B:錆の発生わずかに有り
C:錆の発生有り
D:錆の発生顕著
2.ボンド磁石の耐食性
ボンド磁石(各10個)を60℃×95%RHの恒温恒湿槽に入れ、表面に発錆するまでの平均時間を調べた。発錆するまでの時間の長さにより、次の4段階で評価した。
A:500時間経過後も発錆無し
B:400時間以上、500時間未満で発錆
C:300時間以上、400時間未満で発錆
D:300時間未満で発錆
Figure 2004274070
<総合評価>
表1からわかるように、磁石粉末中のSi含有量wが0.2〜3.0原子%で不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/m以下の等方性ボンド磁石は、いずれも優れた磁気特性(残留磁束密度、固有保磁力、最大磁気エネルギー積)を有し、不可逆減磁率の絶対値も小さいことから耐熱性(熱的安定性)が高く、着磁性も良好である。また、磁石粉末自体の耐食性およびボンド磁石の耐食性が共に高いので、実際の使用に際し、ボンド磁石の表面に防食用コーティングを施す等の防食処理を省略または緩和することができる。
以上のようなことから、本発明によれば、高性能で信頼性(特に、耐熱性、耐食性)の高いボンド磁石を提供することができる。特に、ボンド磁石をモータとして使用した場合に、高い性能が発揮される。
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、合金組成が(Nd1-yPry8.7FebalCo7.55.6Si1.4の急冷薄帯(Pr置換量yを種々変化させた複数種の急冷薄帯)を製造し、アルゴンガス雰囲気中で、680℃×10分間の熱処理を行った。前記と同様の分析方法から、この急冷薄帯の組織は、ナノコンポジット組織を形成していることが確認された。
次に、実施例1と同様にして、前記急冷薄帯から磁石粉末を得、この磁石粉末から外径20mmφ、内径18mmφ×高さ7mmの円筒状(リング状)の等方性ボンド磁石を製造した。各ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、約96.8wt%であった。また、各ボンド磁石の密度は、約6.18g/cm3であった。
これらについて、実施例1と同様の方法で、磁気特性(残留磁束密度Br、固有保磁力HcJ、最大磁気エネルギー積(BH)max)および不可逆帯磁率(χirr)を測定、評価した。その結果を下記表2に示す。
また、これらのボンド磁石をそれぞれ12極に多極着磁し、これをロータ磁石として用いてDCブラシレスモータを組み立てた。このDCブラシレスモータにおいて、ロータを4000rpmで回転させたときの巻線コイルに発生した逆起電圧を測定したところ、いずれのものも十分に高い電圧が得られ、高性能のモータであることが確認された。
次に、前述したPr置換量yの異なる複数種の磁石粉末を用い、ボンド磁石のサイズをそれぞれ直径10mmφ×高さ7mmの円柱状とした以外は実施例1と同様にしてボンド磁石を製造した。
これらについて、実施例1と同様の方法で、耐熱性(熱的安定性)、着磁性、磁石粉末の耐食性およびボンド磁石の耐食性を測定、評価した。その結果を下記表2に示す。
Figure 2004274070
表2からわかるように、各等方性ボンド磁石は、いずれも優れた磁気特性(残留磁束密度、固有保磁力、最大磁気エネルギー積)を有し、特に、Ndの一部をPrに置換したことにより、固有保磁力のさらなる向上が見られる。また、各ボンド磁石は、不可逆減磁率の絶対値が小さいことから耐熱性(熱的安定性)が高く、着磁性も良好である。また、磁石粉末自体の耐食性およびボンド磁石の耐食性が共に高い。
以上のようなことから、本発明によれば、高性能で信頼性(特に、耐熱性、耐食性)の高いボンド磁石を提供することができる。特に、ボンド磁石をモータとして使用した場合に、高い性能が発揮される。
(実施例3)
実施例1と同様の方法により、合金組成が((Nd0.5Pr0.5zDy1-z9.0FebalCo7.75.7Si1.8の急冷薄帯(Dy置換量(1−z)を種々変化させた複数種の急冷薄帯)を製造し、アルゴンガス雰囲気中で、680℃×12分間の熱処理を行った。前記と同様の分析方法から、この急冷薄帯の組織は、ナノコンポジット組織を形成していることが確認された。
次に、実施例1と同様にして、前記急冷薄帯から磁石粉末を得、この磁石粉末から外径20mmφ、内径18mmφ×高さ7mmの円筒状(リング状)の等方性ボンド磁石を製造した。各ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、約96.8wt%であった。また、各ボンド磁石の密度は、約6.20g/cm3であった。
これらについて、実施例1と同様の方法で、磁気特性(残留磁束密度Br、固有保磁力HcJ、最大磁気エネルギー積(BH)max)および不可逆帯磁率(χirr)を測定、評価した。その結果を下記表3に示す。
また、これらのボンド磁石をそれぞれ12極に多極着磁し、これをロータ磁石として用いてDCブラシレスモータを組み立てた。このDCブラシレスモータにおいて、ロータを4000rpmで回転させたときの巻線コイルに発生した逆起電圧を測定したところ、いずれのものも十分に高い電圧が得られ、高性能のモータであることが確認された。
次に、前述したDy置換量1−zの異なる複数種の磁石粉末を用い、ボンド磁石のサイズをそれぞれ直径10mmφ×高さ7mmの円柱状とした以外は実施例1と同様にしてボンド磁石を製造した。
これらについて、実施例1と同様の方法で、耐熱性(熱的安定性)、着磁性、磁石粉末の耐食性およびボンド磁石の耐食性を測定、評価した。その結果を下記表3に示す。
Figure 2004274070
表3からわかるように、各等方性ボンド磁石は、いずれも優れた磁気特性(残留磁束密度、固有保磁力、最大磁気エネルギー積)を有し、特に、Dyを添加することにより固有保磁力が向上し、Dyの置換量が0.1(R全体に対し10%)以下で、適度な保磁力の向上が図れることが確認された。また、各ボンド磁石は、不可逆減磁率の絶対値が小さいことから耐熱性(熱的安定性)が高く、着磁性も良好である。また、磁石粉末自体の耐食性およびボンド磁石の耐食性が共に高い。
以上のようなことから、本発明によれば、高性能で信頼性(特に、耐熱性、耐食性)の高いボンド磁石を提供することができる。特に、ボンド磁石をモータとして使用した場合に、高い性能が発揮される。
(実施例4)
ボンド磁石を押出成形により製造した以外は、上記実施例1〜3と同様にして本発明の等方性ボンド磁石を製造した。なお、結合樹脂には、ポリアミド(ナイロン610)を用いた。また、各ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、約95.5wt%、各ボンド磁石の密度は、約5.85g/cm3であった。
各ボンド磁石に対し、前記と同様の測定、評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られ、特に、ボンド磁石の耐食性については、さらに良好な結果が得られた。
(実施例5)
ボンド磁石を射出成形により製造した以外は、上記実施例1〜3と同様にして本発明の等方性ボンド磁石を製造した。なお、結合樹脂には、ポリフェニレンサルファイドを用いた。また、各ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、約94.1wt%、各ボンド磁石の密度は、約5.63g/cm3であった。
各ボンド磁石に対し、前記と同様の測定、評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られ、特に、ボンド磁石の耐食性については、さらに良好な結果が得られた。
本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。 本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。 本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。 磁石材料を製造する装置(急冷薄帯製造装置)の構成例を示す斜視図である。 図4に示す装置における溶湯の冷却ロールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図である。 不可逆帯磁率を説明するための図(J−H図)である。 減磁曲線およびリコイル曲線を示すJ−H図である。
符号の説明
1…急冷薄帯製造装置 2…筒体 3…ノズル 4…コイル 5…冷却ロール 51…基部 52…表面層 53…周面 6…溶湯 7…パドル 71…凝固界面 8…急冷薄帯 81…ロール面 9A…矢印 9B…矢印 10…ソフト磁性相 11…ハード磁性相

Claims (11)

  1. 溶融合金を、1〜60[m/秒]の周速度で回転する冷却ロールの周面に衝突させ、冷却固化して、薄帯状磁石材料を得る工程と、
    前記薄帯状磁石材料を、真空または減圧状態下、あるいは非酸化性雰囲気中で粉砕して、平均粒径が0.5〜150μmの粉末を得る粉砕工程と、
    前記粉末に対して、350〜850℃、0.5〜300分の熱処理を施す工程とを有することを特徴とする磁石粉末の製造方法。
  2. 磁石粉末は、結合樹脂と混合し成形して等方性ボンド磁石としたときに、室温での磁気特性を表すJ−H図での減磁曲線において、前記J−H図中の原点を通り、かつ傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mである直線との交点を出発点として測定した場合の不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/m以下であり、さらに、室温での固有保磁力(HcJ)が406〜717kA/mである請求項1に記載の磁石粉末の製造方法。
  3. 前記粉末に対して熱処理を施す工程に先立ち、前記薄帯状磁石材料に熱処理を施す工程を有する請求項1または2に記載の磁石粉末の製造方法。
  4. 磁石粉末は、ハード磁性相とソフト磁性相とを有する複合組織で構成されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の磁石粉末の製造方法。
  5. 溶融合金を、1〜60[m/秒]の周速度で回転する冷却ロールの周面に衝突させ、冷却固化して、薄帯状磁石材料を得る工程と、
    前記薄帯状磁石材料を、真空または減圧状態下、あるいは非酸化性雰囲気中で粉砕して、平均粒径が0.5〜150μmの粉末を得る粉砕工程と、
    前記粉末に対して、350〜850℃、0.5〜300分の熱処理を施し磁石粉末を得る工程と、
    前記磁石粉末を結合樹脂と混合し成形して等方性ボンド磁石とする工程とを有する等方性ボンド磁石の製造方法であって、
    前記等方性ボンド磁石は、室温での磁気特性を表すJ−H図での減磁曲線において、前記J−H図中の原点を通り、かつ傾き(J/H)が−3.8×10-6ヘンリー/mである直線との交点を出発点として測定した場合の不可逆帯磁率(χirr)が5.0×10-7ヘンリー/m以下であり、さらに、室温での固有保磁力(HcJ)が406〜717kA/mであることを特徴とする等方性ボンド磁石の製造方法。
  6. 前記粉末に対して熱処理を施す工程に先立ち、前記薄帯状磁石材料に熱処理を施す工程を有する請求項5に記載の等方性ボンド磁石の製造方法。
  7. 前記等方性ボンド磁石の密度が5.3〜6.6g/cmとなるように、前記磁石粉末と前記結合樹脂とを混合、成形する請求項5または6に記載の等方性ボンド磁石の製造方法。
  8. 前記磁石粉末は、ハード磁性相とソフト磁性相とを有する複合組織で構成されたものである請求項5ないし7のいずれかに記載の等方性ボンド磁石の製造方法。
  9. 請求項1ないし4のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする磁石粉末。
  10. 請求項9に記載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを特徴とする等方性ボンド磁石。
  11. 請求項5ないし8のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする等方性ボンド磁石。
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