JP2001176710A - 薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石 - Google Patents

薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石

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JP2001176710A
JP2001176710A JP35795499A JP35795499A JP2001176710A JP 2001176710 A JP2001176710 A JP 2001176710A JP 35795499 A JP35795499 A JP 35795499A JP 35795499 A JP35795499 A JP 35795499A JP 2001176710 A JP2001176710 A JP 2001176710A
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聖 新井
Hiroshi Kato
洋 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】磁気特性が優れ、信頼性の高い磁石、特に熱的
安定性に優れた磁石を提供すること。 【解決手段】本発明の薄帯状磁石材料は、Rx(Fe1-y
Coy100-x-z-wzAlw(ただし、Rは、少なくとも
1種の希土類元素、x:7.1〜9.9原子%、y:0
〜0.30原子%、z:4.6〜6.9原子%、w:
0.02〜1.5原子%)で表される合金組成からな
り、急冷したままの状態での室温での磁気特性を表すJ
−H図のヒステリシス曲線で、磁界が80kA/mのと
きの第一象現における磁化の値をI1、磁界が−80k
A/mのときの第二象現における磁化の値をI2とした
とき、0.2≦I2/I1≦0.95の関係を満足し、か
つヒステリシス曲線の微分曲線を描いたとき、−80〜
80kA/mの範囲において極大値を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄帯状磁石材料、
磁石粉末およびボンド磁石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁石粉末を結合樹脂で結合してなるボン
ド磁石は、形状の自由度が広いという利点を有し、モー
タや各種アクチュエータに用いられている。
【0003】このようなボンド磁石を構成する磁石材料
は、例えば急冷薄帯製造装置を用いた急冷法により製造
される。急冷薄帯製造装置が単一の冷却ロールを備える
ものである場合は、単ロール法と呼ばれる。
【0004】この単ロール法では、所定の合金組成の磁
石材料を加熱、溶融し、その溶湯をノズルから射出し、
ノズルに対して回転している冷却ロールの周面に衝突さ
せ、該周面と接触させることにより急冷、凝固し、薄帯
状(リボン状)の磁石材料、すなわち急冷薄帯を連続的
に形成する。そして、この急冷薄帯を粉砕して磁石粉末
とし、この磁石粉末よりボンド磁石を製造する。
【0005】冷却ロールは、一般に、銅または銅系合金
等で構成されている。また、主に耐久性の向上を目的と
して、冷却ロールの周面にCrメッキ等の表面層が設け
られたものも知られている。
【0006】ところで、このような冷却ロールは、その
周面が熱伝導性の高い金属等で構成されているため、冷
却ロールの周速度が速すぎると、冷却速度が速くなり、
得られる急冷薄帯の大部分が非晶質組織となる。
【0007】一方、これを防止するために、冷却ロール
の周速度を遅くすると、冷却速度が遅くなり、結晶粒径
の粗大化が起こることがある。
【0008】そのため、いずれの場合においても、これ
らを粉砕して得られる磁石粉末からボンド磁石を製造し
たときに、満足な磁気特性が得られない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、磁気
特性が優れ、信頼性の高い磁石を提供することができる
薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(16)の本発明により達成される。
【0011】(1) Rx(Fe1-yCoy100-x-z-w
zAlw(ただし、Rは、少なくとも1種の希土類元素、
x:7.1〜9.9原子%、y:0〜0.30、z:
4.6〜6.9原子%、w:0.02〜1.5原子%)
で表される合金組成からなり、合金溶湯を急冷すること
によって得られる薄帯状磁石材料であって、ソフト磁性
相とハード磁性相とが存在する複合組織を構成し、か
つ、急冷したままの状態での室温での磁気特性を表すJ
−H図のヒステリシス曲線で、磁界が80kA/mのと
きの第一象現における磁化の値をI1、磁界が−80k
A/mのときの第二象現における磁化の値をI2とした
とき、0.2≦I2/I1≦0.95の関係を満足し、か
つ、前記ヒステリシス曲線の微分曲線を描いたとき、磁
界が−80〜80kA/mの範囲に極大値を有すること
を特徴とする薄帯状磁石材料。
【0012】(2) Rx(Fe1-yCoy100-x-z-w
zAlw(ただし、Rは、少なくとも1種の希土類元素、
x:7.1〜9.9原子%、y:0〜0.30、z:
4.6〜6.9原子%、w:0.02〜1.5原子%)
で表される合金組成からなり、合金溶湯を急冷すること
によって得られる薄帯状磁石材料であって、ソフト磁性
相とハード磁性相とが存在する複合組織を構成し、か
つ、急冷したままの状態での室温での磁気特性を表すJ
−H図のヒステリシス曲線で、磁界が80kA/mのと
きの第一象現における磁化の値をI1、磁界が−80k
A/mのときの第二象現における磁化の値をI2とした
とき、0.7≦I2/I1≦0.95の関係を満足し、か
つ残留磁束密度Brが0.9T以上であることを特徴と
する薄帯状磁石材料。
【0013】(3) 前記Rは、Ndおよび/またはP
rを主とする希土類元素である上記(1)または(2)
に記載の薄帯状磁石材料。
【0014】(4) 前記Rは、Prを含み、その割合
が前記R全体に対し5〜75%である上記(1)ないし
(3)のいずれかに記載の薄帯状磁石材料。
【0015】(5) 前記Rは、Dyを含み、その割合
が前記R全体に対し14%以下である上記(1)ないし
(4)のいずれかに記載の薄帯状磁石材料。
【0016】(6) 上記(1)ないし(5)のいずれ
かに記載の薄帯状磁石材料を粉砕して得られたことを特
徴とする磁石粉末。
【0017】(7) 磁石粉末は、その製造過程で、ま
たは製造後少なくとも1回熱処理が施されたものである
上記(6)に記載の磁石粉末。
【0018】(8) 残留磁束密度Brが0.9T以上
である上記(6)または(7)に記載の磁石粉末。
【0019】(9) 平均粒径が0.5〜150μmで
ある上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の磁石粉
末。
【0020】(10) 上記(6)ないし(9)のいず
れかに記載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを
特徴とするボンド磁石。
【0021】(11) 磁石粉末の含有量が75〜9
5.5%である上記(10)に記載のボンド磁石。
【0022】(12) 保磁力HcJが320〜720k
A/mである上記(10)または(11)に記載のボン
ド磁石。
【0023】(13) 最大磁気エネルギー積(BH)
maxが60kJ/m3以上である上記(10)ないし(1
2)のいずれかに記載のボンド磁石。
【0024】(14) 不可逆減磁率(初期減磁率)の
絶対値が5.7%以下である上記(10)ないし(1
3)のいずれかに記載のボンド磁石。
【0025】(15) 多極着磁に供される、または多
極着磁された上記(10)ないし(14)のいずれかに
記載のボンド磁石。
【0026】(16) モータに用いられる上記(1
0)ないし(15)のいずれかに記載のボンド磁石。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の薄帯状磁石材料、
磁石粉末およびこれを用いたボンド磁石の実施の形態に
ついて、詳細に説明する。
【0028】[磁石材料の合金組成]まず、本発明にお
ける磁石材料の合金組成について説明する。
【0029】本発明の磁石材料は、Rx(Fe1-y
y100-x-z-wzAlw(ただし、Rは少なくとも1種
の希土類元素、x:7.1〜9.9原子%、y:0〜
0.30、z:4.6〜6.9原子%、w:0.02〜
1.5原子%)で表される合金組成からなる。
【0030】R(希土類元素)としては、Y、La、C
e、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが
挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができ
る。
【0031】Rの含有量(含有率)は、7.1〜9.9
原子%とされるのが好ましい。Rが7.1原子%未満で
は、十分な保磁力が得られない。一方、Rが9.9原子
%を超えると、磁化のポテンシャルが下がるため、十分
な磁束密度が得られなくなる。
【0032】ここで、RはNdおよび/またはPrを主
とする希土類元素であるのが好ましい。その理由は、こ
れらの希土類元素は、複合組織(特にナノコンポジット
組織)を構成するハード磁性相の飽和磁化を高め、また
磁石として良好な保磁力を実現するために有効だからで
ある。
【0033】また、Rは、Prを含み、その割合がR全
体に対し5〜75%であるのが好ましく、20〜60%
であるのがより好ましい。この範囲であると、残留磁束
密度の低下をほとんど生じることなく、保磁力および角
型性を向上させることができるためである。
【0034】また、Rは、Dyを含み、その割合がR全
体に対し14%以下であるのが好ましい。この範囲であ
ると、残留磁束密度の著しい低下を生じることなく、保
磁力を向上させることができると共に、温度特性(熱的
安定性)の向上も可能となるからである。
【0035】Coは、Feと同様の特性を有する遷移金
属である。このCoを添加すること(Feの一部を置換
すること)により、キュリー温度が高くなり、温度特性
が向上するが、Feに対するCoの置換比率が0.30
を超えると、保磁力、磁束密度は共に低下する傾向を示
す。Feに対するCoの置換比率が0.05〜0.20
の範囲では、温度特性の向上のみならず、磁束密度自体
も向上するので、さらに好ましい。
【0036】B(ボロン)は、高い磁気特性を得るのに
有効な元素であり、その好ましい含有量は、4.6〜
6.9原子%とされる。Bが4.6原子%未満である
と、B−H(J−H)ループにおける角型性が悪くな
る。一方、Bが6.9原子%を超えると、非磁性相が多
くなり、磁束密度が減少する。
【0037】Alは、保磁力向上にとって有利な元素で
あり、特に、0.02〜1.5原子%の範囲で保磁力向
上の効果が顕著に現れる。また、この範囲では、保磁力
向上に追随して、角型性および磁気エネルギー積も向上
する。さらに、耐熱性および耐食性についても良好とな
る。ただし、上述したように、Rが7.1原子%未満で
は、Al添加によるこのような効果は非常に小さい。ま
た、Alが1.5原子%を超えると、磁化の低下が生じ
る。
【0038】本発明の磁石材料は、保磁力、磁気エネル
ギー積等の磁気特性を向上させるため、あるいは、耐熱
性、耐食性を向上させるために、磁石材料中には、必要
に応じ、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、N
b、Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge、Cr、Wから
なる群(以下この群を「Q」で表す)から選択される少
なくとも1種の元素を含有することもできる。Qに属す
る元素を含有する場合、その含有量は、3原子%以下で
あるのが好ましく、0.2〜3原子%であるのがより好
ましく、0.5〜2原子%であるのがさらに好ましい。
【0039】Qに属する元素の含有は、その種類に応じ
た固有の効果を発揮する。例えば、Cu、Si、Ga、
V、Ta、Zr、Cr、Nbは、耐食性を向上させる効
果がある。
【0040】[複合組織]また、磁石材料は、ソフト磁
性相とハード磁性相とが存在する組織(複合組織)とな
っている。
【0041】この複合組織(ナノコンポジット組織)
は、ソフト磁性相10とハード磁性相11とが、例えば
図1、図2または図3に示すようなパターン(モデル)
で存在しており、各相の厚さや粒径がナノメーターレベ
ル(例えば1〜100nm)で存在している。そして、
ソフト磁性相10とハード磁性相11とが相隣接し、磁
気的な交換相互作用を生じる。なお、図1〜図3に示す
パターンは、一例であって、これらに限られるものでは
なく、例えば図2に示すパターンにおいて、ソフト磁性
相10とハード磁性相11とが逆になっているものでも
よい。
【0042】ソフト磁性相の磁化は、外部磁界の作用に
より容易にその向きを変えるので、粒径が大きい場合に
は、保磁力が非常に小さく満足な磁気特性が得られな
い。しかし、ソフト磁性相のサイズが数10nm以下と
十分小さい場合には、ソフト磁性体の磁化が周囲のハー
ド磁性体の磁化との結合によって十分強く拘束され、系
全体がハード磁性体として振舞うようになる。
【0043】このような複合組織(ナノコンポジット組
織)を持つ磁石は、主に、以下に挙げる特徴1)〜5)
を有している。
【0044】1)B−H図(J−H図)の第二象現で、
磁化が可逆的にスプリングバックする(この意味で「ス
プリング磁石」とも言う)。 2)着磁性が良く、比較的低い磁場で着磁できる。 3)磁気特性の温度依存性がハード磁性相単独の場合に
比べて小さい。 4)磁気特性の経時変化が小さい。 5)微粉砕しても磁気特性が劣化しない。
【0045】前述した合金組成において、ハード磁性相
およびソフト磁性相は、例えば次のようなものとなる。
【0046】ハード磁性相:R2TM14B系(ただし、
TMは、FeまたはFeとCo)、またはR2TM14
Al系(あるいは、R2TM14BQ系、R2TM14BAl
Q系) ソフト磁性相:TM(特にα−Fe,α−(Fe,C
o))、またはTMとAlとの合金相(あるいは、TM
とQとの合金相、TMとAlとQとの合金相)、または
TMとBとの化合物相、またはアモルファス相 [薄帯状磁石材料の製造]次に、本発明の薄帯状磁石材
料の製造方法について説明する。
【0047】溶融した磁石材料(合金)を冷却体に接触
させて急冷し、固化することにより、薄帯状の磁石材料
(急冷薄帯またはリボンと呼ばれる)を製造する。以
下、その方法の一例について説明する。
【0048】図4は、単ロールを用いた急冷法により磁
石材料を製造する装置(急冷薄帯製造装置)の構成例を
示す斜視図、図5は、図4に示す装置における溶湯の冷
却ロールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図であ
る。
【0049】図4に示すように、急冷薄帯製造装置1
は、磁石材料を収納し得る筒体2と、該筒体2に対し図
中矢印9A方向に回転する冷却ロール5(冷却体)とを
備えている。筒体2の下端には、磁石材料(合金)の溶
湯を射出するノズル(オリフィス)3が形成されてい
る。
【0050】また、筒体2のノズル3近傍の外周には、
加熱用のコイル4が配置され、このコイル4に例えば高
周波を印加することにより、筒体2内を加熱(誘導加
熱)し、筒体2内の磁石材料を溶融状態にする。
【0051】冷却ロール5は、基部51と、冷却ロール
5の周面53を形成する表面層52とで構成されてい
る。
【0052】基部51の構成材料は、表面層52と同じ
材質で一体構成されていてもよく、また、表面層52と
は異なる材質で構成されていてもよい。
【0053】基部51の構成材料は、特に限定されない
が、表面層52の熱をより速く放散できるように、例え
ば銅または銅系合金のような熱伝導率の高い金属材料で
構成されているのが好ましい。
【0054】また、表面層52は、熱伝導率が基部51
と同等かまたは基部51より低い材料で構成されている
のが好ましい。表面層52の具体例としては、Cr等の
金属薄層または金属酸化物層や、セラミックスが挙げら
れる。
【0055】セラミックスとしては、例えば、Al
23、SiO2、TiO2、Ti23、ZrO2、Y
23、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の
酸化物系セラミックス、AlN、Si34、TiN、B
N等の窒化物系セラミックス、グラファイト、SiC、
ZrC、Al43、CaC2、WC等の炭化物系のセラ
ミックス、あるいは、これらのうちの2以上を任意に組
合せた複合セラミックスが挙げられる。
【0056】このような急冷薄帯製造装置1は、チャン
バー(図示せず)内に設置され、該チャンバー内に、好
ましくは不活性ガスやその他の雰囲気ガスが充填された
状態で作動する。特に、急冷薄帯8の酸化を防止するた
めに、雰囲気ガスは、例えばアルゴンガス、ヘリウムガ
ス、窒素ガス等の不活性ガスであるのが好ましい。
【0057】急冷薄帯製造装置1では、筒体2内に磁石
材料(合金)を入れ、コイル4により加熱して溶融し、
その溶湯6をノズル3から吐出すると、図5に示すよう
に、溶湯6は、冷却ロール5の周面53に衝突し、パド
ル(湯溜り)7を形成した後、回転する冷却ロール5の
周面53に引きずられつつ急速に冷却されて凝固し、急
冷薄帯8が連続的または断続的に形成される。このよう
にして形成された急冷薄帯8は、やがて周面53から離
れ、図4中の矢印9B方向に進行する。なお、図5中、
溶湯の凝固界面71を点線で示す。
【0058】冷却ロール5の周速度は、合金溶湯の組
成、周面53の溶湯6に対する濡れ性等によりその好適
な範囲が異なるが、磁気特性向上のために、通常、1〜
60m/秒であるのが好ましく、5〜40m/秒である
のがより好ましい。冷却ロール5の周速度が遅すぎる
と、急冷薄帯8の体積流量(単位時間当たりに吐出され
る溶湯の体積)によっては、急冷薄帯8の厚さtが厚く
なり、結晶粒径が増大する傾向を示し、逆に冷却ロール
5の周速度が速すぎると、大部分が非晶質組織となり、
いずれの場合にも、その後に熱処理を加えたとしても磁
気特性の向上が望めなくなる。
【0059】[薄帯状磁石材料の磁気的特性]前述の
[複合組織]の項で述べた磁石組織の実現と関連して、
本発明の磁石材料は、以下に示す[1]または[2]の
いずれかの条件を満足するものである。
【0060】なお、薄帯状磁石材料および磁石粉末の磁
気特性は、その形状から主として振動試料型磁力計(V
SM)などで測定される。このような場合、サンプル形
状に基づく反磁界がかかるため、通常、適切な反磁界係
数を用いて反磁界補正を行う。本明細書中で述べる薄帯
状磁石材料および磁石粉末の磁気特性は、いずれもその
ような補正を行ったものである。これに対し、ボンド磁
石の磁気特性は、JIS−C−2501に基づき、閉磁
路での測定を行ったものである。ボンド磁石の磁気特性
を測定するための具体的な装置としては、主に直流自記
磁束計などが用いられる。
【0061】[1]このようにして得られた急冷薄帯8
について、急冷したままの状態(熱処理等を施さない状
態)での室温での磁気特性を表すJ−H図のヒステリシ
ス曲線を描いたとき、磁界が80kA/mのときの第一
象現における磁化の値をI1、磁界が−80kA/mの
ときの第二象現における磁化の値をI2としたとき、下
記式(I)を満足し、かつこのヒステリシス曲線の微分
曲線を描いたとき、−80〜80kA/mの範囲に極大
値を有する。 0.2≦I2/I1≦0.95・・・(I) [2]このようにして得られた急冷薄帯8について、急
冷したままの状態(熱処理等を施さない状態)での室温
での磁気特性を表すJ−H図のヒステリシス曲線を描い
たとき、磁界が80kA/mのときの第一象現における
磁化の値をI1、磁界が−80kA/mのときの第二象
現における磁化の値をI2としたとき、下記式(IV)を
満足し、かつ残留磁束密度Brが0.9T以上である。 0.7≦I2/I1≦0.95・・・(IV) 上記[1]の条件を満足するのは、例えば、冷却ロール
5の周速度が比較的高速であることから、組織中に一部
非晶質相が存在するような過冷却状態となっている材料
である。この材料をこのまま用いても高い磁気特性は得
難いが、その後熱処理を施すことにより、最終的に高い
磁気特性を実現することができる。
【0062】また[1]の条件を満足する材料のヒステ
リシス曲線のモデル図を図6に、図6の微分曲線のモデ
ル図を図7に示した。[1]の条件を満足する材料のヒ
ステリシス曲線の微分曲線では、保磁力付近の極大値以
外に−80〜80kA/mの間にもう一つ極大値が存在
する。
【0063】[1]では、式(I)に代わり、式(II)
を満足することが好ましく、式(III)を満足すること
がより好ましい。 0.5≦I2/I1≦0.95・・・(II) 0.7≦I2/I1≦0.95・・・(III) I2/I1の値は、大きいほどよいが、等方性磁石では、
前記式中の上限値を超えるものは、製作上困難である。
【0064】一方、I2/I1の値が前記式中の下限値未
満であると、冷却速度が速すぎるため、得られる急冷薄
帯の大部分が非晶質組織となり、その後に、後述する熱
処理を施しても低い磁気特性しか得られない。
【0065】I1は、特に限定されないが、0.95〜
1.5Tであるのが好ましく、1.05〜1.4Tであ
るのがより好ましい。
【0066】I1が、上限値を超えると、その後に熱処
理を施したとしても角型および保磁力において満足な磁
気特性が得られない場合がある。
【0067】一方、I1が、下限値未満であると、その
後に熱処理を施したとしても満足な磁気特性、特に高い
磁束密度が得られない場合がある。
【0068】I2は、特に限定されないが、0.2〜
1.3Tであるのが好ましく、0.5〜1.3Tである
のがより好ましい。
【0069】I2が、上限値を超えると、特に保磁力に
おいて、その後に熱処理を施しても満足な磁気特性が得
られない場合がある。
【0070】一方、I2が、下限値未満であると、その
後に熱処理を施したとしても満足な磁気特性、特に高い
磁束密度が得られず、また角型性、保磁力も劣化する場
合がある。
【0071】このように、I2/I1を規定することと、
J−H図のヒステリシス曲線の微分曲線を描いたときの
極大値の現れる範囲を規定することとの相乗効果によ
り、優れた磁気特性を実現できる薄帯状磁石材料を提供
することが可能となる。
【0072】上記[2]は、急冷したままの状態で、す
でに良好な磁気特性が得られる薄帯状磁石材料であり、
上記[1]の材料のように低磁界において微分曲線の極
大値は存在しない場合もある。また急冷後に熱処理を施
しても高い磁気特性が得られるものである。
【0073】[2]では、式(IV)に代わり、式(V)
を満足することが好ましく、式(VI)を満足することが
より好ましい。 0.75≦I2/I1≦0.95・・・(V) 0.85≦I2/I1≦0.95・・・(VI) I2/I1の値は、大きいほどよいが、等方性磁石では、
前記式中の上限値を超えるものは、製作上困難である。
【0074】一方、I2/I1の値が前記式中の下限値未
満であると、冷却速度が遅すぎる場合には、結晶粒径が
粗大化していて、その後に、後述する熱処理を施しても
低い磁気特性しか得られない。
【0075】また、残留磁束密度Brは、0.9T以上
であるのが好ましく、0.95〜1.4Tであるのがよ
り好ましい。
【0076】残留磁束密度Brが0.9T未満である
と、特に、このヒステリシス曲線の微分曲線において、
−80〜80kA/mの範囲に極大値が存在しない場
合、すなわち冷却速度が比較的遅い場合、その後に、後
述する熱処理を施しても低い磁気特性しか得られない。
【0077】I1は、特に限定されないが、0.95〜
1.4Tであるのが好ましく、1.0〜1.3Tである
のがより好ましい。
【0078】I1が、上限値を超えると、その後に熱処
理を施したとしても角型および保磁力において満足な磁
気特性が得られない場合がある。
【0079】一方、I1が、下限値未満であると、その
後に熱処理を施したとしても満足な磁気特性、特に高い
磁束密度が得られない場合がある。
【0080】I2は、特に限定されないが、0.65〜
1.2Tであるのが好ましく、0.75〜1.1Tであ
るのがより好ましい。
【0081】I2が、上限値を超えると、特に保磁力に
おいて、その後に熱処理を施しても満足な磁気特性が得
られない場合がある。
【0082】一方、I2が、下限値未満であると、その
後に熱処理を施したとしても満足な磁気特性、特に高い
磁束密度が得られず、また、角型性、保磁力も劣化する
場合がある。
【0083】このように、本発明では、I2/I1を規定
することと、残留磁束密度Brを規定することとの相乗
効果により、優れた磁気特性を発揮することができる。
【0084】なお、得られた急冷薄帯8に対しては、例
えば、非晶質組織の再結晶化の促進、組織の均質化のた
めに、少なくとも1回熱処理を施すこともできる。この
熱処理の条件としては、例えば、400〜900℃で、
0.5〜300分程度とすることができる。
【0085】また、この熱処理は、酸化を防止するため
に、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×1
-6 Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、
ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲
気中で行うのが好ましい。
【0086】以上のような製造方法により得られた急冷
薄帯(薄帯状の磁石材料)8は、微細結晶組織、もしく
は微細結晶がアモルファス組織中に含まれるような組織
となり、優れた磁気特性が得られる。
【0087】[磁石粉末の製造]以上のような急冷薄帯
8を粉砕することにより、本発明の磁石粉末が得られ
る。
【0088】粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボ
ールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種
粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。この場
合、粉砕は、酸化を防止するために、真空または減圧状
態下(例えば1×10-1〜1×10-6 Torr )、あ
るいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活
性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うこともでき
る。
【0089】磁石粉末の平均粒径は、特に限定されない
が、後述する等方性ボンド磁石を製造するためのものの
場合、磁石粉末の酸化防止と、粉砕による磁気特性劣化
の防止とを考慮して、0.5〜150μm程度が好まし
く、0.5〜80μm程度がより好ましく、1〜50μ
m程度がさらに好ましい。
【0090】また、ボンド磁石の成形時のより良好な成
形性を得るために、磁石粉末の粒径分布は、ある程度分
散されている(バラツキがある)のが好ましい。これに
より、得られたボンド磁石の空孔率を低減することがで
き、その結果、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を同じ
としたときに、ボンド磁石の密度や機械的強度をより高
めることができ、磁気特性をさらに向上することができ
る。
【0091】なお、得られた磁石粉末に対しては、例え
ば、粉砕により導入されたひずみの影響の除去、結晶粒
径の制御を目的として、熱処理を施すこともできる。こ
の熱処理の条件としては、例えば、350〜850℃
で、0.5〜300分程度とすることができる。
【0092】また、この熱処理は、酸化を防止するため
に、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×1
-6 Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、
ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲
気中で行うのが好ましい。
【0093】以上のような磁石粉末を用いてボンド磁石
を製造した場合、そのような磁石粉末は、結合樹脂との
結合性(結合樹脂の濡れ性)が良く、そのため、このボ
ンド磁石は、機械的強度が高く、熱安定性(耐熱性)、
耐食性が優れたものとなる。従って、当該磁石粉末は、
ボンド磁石の製造に適している。
【0094】[ボンド磁石およびその製造]次に、本発
明のボンド磁石について説明する。
【0095】本発明のボンド磁石は、前述の磁石粉末を
結合樹脂で結合してなるものである。
【0096】結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑
性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0097】熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミ
ド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナ
イロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロ
ン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可
塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマ
ー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファ
イド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸
ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィ
ン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエー
テルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、
またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマ
ーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種
以上を混合して用いることができる。
【0098】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高いことから、ポリアミド、耐熱性向
上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイ
ドを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性
樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
【0099】このような熱可塑性樹脂は、その種類、共
重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱
性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の
選択が可能となるという利点がある。
【0100】一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビ
スフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン
樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリ
イミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙
げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して
用いることができる。
【0101】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリ
コーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、
混練の均一性にも優れている。
【0102】なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)
は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでも
よい。
【0103】このような本発明のボンド磁石は、例えば
次のようにして製造される。磁石粉末と、結合樹脂と、
必要に応じ添加剤(酸化防止剤、潤滑剤等)とを含むボ
ンド磁石用組成物(コンパウンド)を製造し、このボン
ド磁石用組成物を用いて、圧縮成形(プレス成形)、押
出成形、射出成形等の成形方法により、無磁場中で所望
の磁石形状に成形する。結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合
には、成形後、加熱等によりそれを硬化する。
【0104】ここで、前記3種の成形方法のうち、押出
成形および射出成形(特に、射出成形)は、形状選択の
自由度が広く、生産性が高い等の利点があるが、これら
の成形方法では、良好な成形性を得るために、成形機内
におけるコンパウンドの十分な流動性を確保しなければ
ならないため、圧縮成形に比べて、磁石粉末の含有量を
多くすること、すなわちボンド磁石を高密度化すること
ができない。しかしながら、本発明では、後述するよう
に、高い磁束密度が得られ、そのため、ボンド磁石を高
密度化しなくても優れた磁気特性が得られるので、押出
成形、射出成形により製造されるボンド磁石にもその利
点を享受することができる。
【0105】ボンド磁石中の磁石粉末の含有量(含有
率)は、特に限定されず、通常は、成形方法や、成形性
と高磁気特性との両立を考慮して決定される。具体的に
は、75〜99.5wt%程度であるのが好ましく、8
5〜97.5wt%程度であるのがより好ましい。
【0106】特に、ボンド磁石が圧縮成形により製造さ
れたものの場合には、磁石粉末の含有量は、90〜9
9.5wt%程度であるのが好ましく、93〜98.5
wt%程度であるのがより好ましい。
【0107】また、ボンド磁石が押出成形または射出成
形により製造されたものの場合には、磁石粉末の含有量
は、75〜98wt%程度であるのが好ましく、85〜
97wt%程度であるのがより好ましい。
【0108】ボンド磁石の密度ρは、それに含まれる磁
石粉末の比重、磁石粉末の含有量、空孔率等の要因によ
り決定される。本発明のボンド磁石において、その密度
ρは特に限定されないが、5.3〜6.6g/cm3
度であるのが好ましく、5.5〜6.4g/cm3程度
であるのがより好ましい。
【0109】本発明では、磁石粉末の磁束密度、保磁力
が大きいので、ボンド磁石に成形した場合に、磁石粉末
の含有量が多い場合はもちろんのこと、含有量が比較的
少ない場合でも、優れた磁気特性(特に、高い最大磁気
エネルギー積(BH)max、高保磁力HcJ)が得られ
る。
【0110】本発明のボンド磁石の形状、寸法等は特に
限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱
状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板状、湾
曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大き
さも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさ
のものが可能である。特に、小型化、超小型化された磁
石に有利であることは、本明細書中で度々述べている通
りである。
【0111】本発明のボンド磁石は、保磁力(室温での
固有保磁力)HcJが320〜720kA/m程度である
のが好ましく、400〜640kA/m程度であるのが
より好ましい。保磁力が前記下限値未満では、モータの
用途によっては逆磁場がかかったときの減磁が顕著にな
り、また、高温における耐熱性が劣る。また、保磁力が
前記上限値を超えると、着磁性が低下する。従って、保
磁力HcJを上記範囲とすることにより、ボンド磁石(特
に、円筒状磁石)に多極着磁等をするような場合に、十
分な着磁磁場が得られないときでも、良好な着磁が可能
となり、十分な磁束密度が得られ、高性能なボンド磁
石、特にモータ用ボンド磁石を提供することができる。
【0112】本発明のボンド磁石は、最大磁気エネルギ
ー積(BH)maxが60kJ/m3以上であるのが好まし
く、65kJ/m3以上であるのがより好ましく、70
〜130kJ/m3であるのがさらに好ましい。最大磁
気エネルギー積(BH)maxが60kJ/m3未満である
と、モータ用に用いた場合、その種類、構造によって
は、十分なトルクが得られない。
【0113】本発明のボンド磁石は、不可逆減磁率(初
期減磁率)の絶対値が5.7%以下であるのが好まし
く、4.4%以下であるのがより好ましく、3.2%以
下であるのがさらに好ましい。これにより、熱的安定性
(耐熱性)に優れたボンド磁石が得られる。
【0114】本発明のボンド磁石の形状、寸法等は特に
限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱
状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板状、湾
曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大き
さも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさ
のものが可能である。
【0115】このようなことから、本発明のボンド磁石
は、多極着磁に供される、または多極着磁されたもので
あるのが好ましい。
【0116】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0117】(実施例1)以下に述べるような方法で合
金組成が(Nd0.7Pr0.25Dy0.058.7Feba lCo
7.05.6Al0.5の急冷薄帯8を得た。
【0118】まず、Nd、Pr、Dy、Fe、Co、
B、Alの各原料を秤量して母合金インゴットを鋳造
し、このインゴットから約15gのサンプルを切り出し
た。
【0119】図4および図5に示す構成の急冷薄帯製造
装置1を用意し、底部にノズル(円孔オリフィス:オリ
フィス直径0.6mm)3を設けた石英管内に前記サン
プルを入れた。急冷薄帯製造装置1が収納されているチ
ャンバー内を脱気した後、不活性ガス(アルゴンガス)
を導入し、所望の温度および圧力の雰囲気とした。
【0120】冷却ロール5としては、銅製の基部51の
外周に、イオンプレーティングにより、ZrCよりなる
厚さ約8μmの表面層52を設けたもの(直径200m
m)を用いた。
【0121】その後、石英管内のインゴットサンプルを
高周波誘導加熱により溶解し、さらに、溶湯の噴射圧
(石英管の内圧と雰囲気圧との差圧)を60kPaに調
整して、溶湯を冷却ロール5の周面53に向けて噴射
し、急冷薄帯(平均厚さ:28μm、平均幅:1.2m
m)を得た。
【0122】このとき、冷却ロール5の周速度を3〜4
5m/秒の間で変化させて、No.1〜No.8の8種
の急冷薄帯サンプルを製造した。
【0123】得られた8種のサンプルについて、その相
構成を分析するため、Cu−Kαを用い回折角20°〜
60°にてX線回折を行った。回折パターンからハード
磁性相であるR2(Fe・Co)14B型相と、ソフト磁
性相であるα−(Fe,Co)型相の回折ピークが確認
でき、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果か
ら、いずれも、複合組織(ナノコンポジット組織)を形
成していることが確認された。
【0124】また、これらの急冷薄帯サンプルについ
て、振動試料型磁力計を用いて室温での磁気特性を測定
した。
【0125】その結果得られたJ−H図のヒステリシス
曲線から求めたI2/I1の値、およびこのヒステリシス
曲線の微分曲線を描いたときの極大値の現れる磁界の強
さH 1を表1に示した。
【0126】さらに、これらの急冷薄帯サンプルに対
し、アルゴンガス雰囲気中、690℃×600秒の熱処
理を施した。
【0127】この熱処理後の急冷薄帯サンプルについ
て、振動試料型磁力計を用いて、磁気特性を測定した。
2/I1、残留磁束密度Br、最大磁気エネルギー積
(BH) max、および保磁力HcJの値を併せて示した。
【0128】
【表1】
【0129】表1から明らかなように、本発明の急冷薄
帯(No.3〜No.7)は、いずれも、優れた磁気特
性(残留磁束密度Br、最大磁気エネルギー積(BH)
maxおよび保磁力HcJ)を有しているのに対し、比較例
の急冷薄帯(No.1、No.2、No.8)は、磁気
特性が劣っている。
【0130】(実施例2)実施例1で得られた急冷薄帯
を粉砕して、磁石粉末を得た。
【0131】次に、粒度調整のために、この磁石粉末を
さらに粉砕機(ライカイ機)を用いてアルゴンガス中で
粉砕し、平均粒径40μmの磁石粉末にした。
【0132】この磁石粉末について、振動試料型磁力計
を用いて磁気特性を測定した。その結果を下記表2に示
した。
【0133】
【表2】
【0134】表2から明らかなように、本発明の磁石粉
末(No.3〜No.7)は、いずれも、優れた磁気特
性(残留磁束密度Br、最大磁気エネルギー積(BH)
maxおよび保磁力HcJ)を有しているのに対し、比較例
の急冷薄帯(No.1、No.2、No.8)は、磁気
特性が劣っている。
【0135】(実施例3)実施例2で得られた各磁石粉
末に、エポキシ樹脂(結合樹脂)と、少量のヒドラジン
系酸化防止剤とを混合し、これらを混練してボンド磁石
用組成物(コンパウンド)を作製した。このとき、磁石
粉末とエポキシ樹脂との配合比率(重量比)は、各サン
プルについてほぼ等しい値とした。
【0136】次いで、このコンパウンドを粉砕して粒状
とし、この粒状物を秤量してプレス装置の金型内に充填
し、圧力7ton/cm2で圧縮成形(無磁場中)し
て、成形体を得た。
【0137】離型後、150℃の加熱によりエポキシ樹
脂を硬化させて(キュア処理)、直径10mm×高さ7
mmの円柱状の等方性ボンド磁石を得た。各ボンド磁石
において、磁石粉末の含有量は、98wt%、密度ρ
は、6.2g/cm3であった。
【0138】これらのボンド磁石について、磁場強度
3.2MA/mのパルス着磁を施した後、直流自記磁束
計にて最大印加磁場2.0MA/mで保磁力HcJおよび
最大磁気エネルギー積(BH)maxを測定した。測定時
の温度は、23℃(室温)であった。それらの結果を表
3に示した。
【0139】次に耐熱性のテストを行った。この耐熱性
は、ボンド磁石を100℃×1時間の環境下に保持した
後、室温に戻した際の不可逆減磁率(初期減磁率)を測
定し、評価した。不可逆減磁率(初期減磁率)の絶対値
が小さいほど、耐熱性(熱安定性)に優れる。測定の結
果得られた不可逆減磁率を表3に示した。
【0140】
【表3】
【0141】表3から明らかなように、サンプルNo.
3〜No.7の磁石材料から得られたボンド磁石は、い
ずれも、優れた磁気特性(残留磁束密度Br、最大磁気
エネルギー積(BH)maxおよび保磁力HcJ)を有する
とともに、不可逆減磁率の絶対値が5.7%以下と低
く、熱的安定性(耐熱性)にも優れている。
【0142】これに対し、比較例であるサンプルNo.
1、No.2、No.8の磁石材料から得られたボンド
磁石は、磁気特性が劣っているとともに、不可逆減磁率
の絶対値が9.3%以上と大きく、熱的安定性も低い。
【0143】(実施例4)実施例2で得られた各磁石粉
末を用いて、実施例2と同様にして、外径22mm×内
径20mm×高さ4mmの円筒状(リング状)の等方性
ボンド磁石を製造し、得られた各ボンド磁石を8極に多
極着磁した。着磁の際に着磁コイルに流す電流値は16
kAとした。
【0144】なお、このとき、着磁率90%を達成する
のに要した着磁磁界の大きさは、比較的小さく、よっ
て、着磁性は良好であった。
【0145】このようにして着磁された各ボンド磁石を
ロータ磁石として用いて、CD−ROM用スピンドルモ
ータを組み立てた。
【0146】各CD−ROM用スピンドルモータにおい
て、ロータを1000rpmで回転させたときの巻線コ
イルに発生した逆起電圧を測定した。その結果、サンプ
ルNo.1、No.2、No.8によるボンド磁石を用
いたモータは、電圧が0.80V以下であったのに対
し、サンプルNo.3〜No.7によるボンド磁石を用
いたモータは、いずれも0.96V以上と20%以上高
い値が得られた。
【0147】その結果、本発明のボンド磁石を用いる
と、高性能のモータが製造できることが確認された。
【0148】ボンド磁石を押出成形により製造した以外
は、上記実施例1〜3と同様にして本発明のボンド磁石
およびモータを製造し、性能評価を行ったところ、前記
と同様の結果が得られた。
【0149】ボンド磁石を射出成形により製造した以外
は、上記実施例1〜3と同様にして本発明のボンド磁石
およびモータを製造し、性能評価を行ったところ、前記
と同様の結果が得られた。
【0150】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次
のような効果が得られる。
【0151】・ソフト磁性相とハード磁性相とを有する
複合組織の特徴を持ちつつ、低磁界での磁化の減少率が
小さく、残留磁束密度が大きいため、優れた磁気特性を
発揮する。
【0152】・特に、磁石材料の合金組成、冷却ロール
の周速度等を好適な範囲に設定することにより、さらに
優れた磁気特性が得られる。
【0153】・高い磁束密度が得られ、等方性であって
も、高磁気特性を持つボンド磁石が得られる。特に、従
来の等方性ボンド磁石に比べ、より小さい体積のボンド
磁石で同等以上の磁気性能を発揮することができるの
で、より小型で高性能のモータを得ることが可能とな
る。
【0154】・高い磁束密度が得られることなどから、
ボンド磁石の製造に際し、高密度化を追求しなくても十
分に高い磁気特性を得ることができ、その結果、成形性
の向上と共に、寸法精度、機械的強度、耐食性、熱的安
定性等の向上が図れ、信頼性の高いボンド磁石を容易に
製造することが可能となる。
【0155】・着磁性が良好なので、より低い着磁磁場
で着磁することができ、特に多極着磁等を容易かつ確実
に行うことができ、かつ高い磁束密度を得ることができ
る。
【0156】・高密度化を要求されないことから、圧縮
成形法に比べて高密度の成形がしにくい押出成形法や射
出成形法によるボンド磁石の製造にも適し、このような
成形方法で成形されたボンド磁石でも、前述したような
効果が得られる。よって、ボンド磁石の成形方法の選択
の幅、さらには、それによる形状選択の自由度が広が
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁石粉末におけるナノコンポジット組
織(マクロ組織)の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の磁石粉末におけるナノコンポジット組
織(マクロ組織)の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の磁石粉末におけるナノコンポジット組
織(マクロ組織)の一例を模式的に示す図である。
【図4】磁石材料を製造する装置(急冷薄帯製造装置)
の構成例を示す斜視図である。
【図5】図4に示す装置における溶湯の冷却ロールへの
衝突部位付近の状態を示す断面側面図である。
【図6】急冷薄帯の磁気特性を表すJ−H図のヒステリ
シス曲線のモデル図(第一象現および第二象現の一部)
である。
【図7】図6の微分曲線のモデル図である。
【符号の説明】
1 急冷薄帯製造装置 2 筒体 3 ノズル 4 コイル 5 冷却ロール 51 基部 52 表面層 53 周面 6 溶湯 7 パドル 71 凝固界面 8 急冷薄帯 9A 矢印 9B 矢印 10 ソフト磁性相 11 ハード磁性相

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Rx(Fe1-yCoy100-x-z-wzAlw
    (ただし、Rは、少なくとも1種の希土類元素、x:
    7.1〜9.9原子%、y:0〜0.30、z:4.6
    〜6.9原子%、w:0.02〜1.5原子%)で表さ
    れる合金組成からなり、合金溶湯を急冷することによっ
    て得られる薄帯状磁石材料であって、 ソフト磁性相とハード磁性相とが存在する複合組織を構
    成し、かつ、 急冷したままの状態での室温での磁気特性を表すJ−H
    図のヒステリシス曲線で、磁界が80kA/mのときの
    第一象現における磁化の値をI1、磁界が−80kA/
    mのときの第二象現における磁化の値をI2としたと
    き、0.2≦I2/I1≦0.95の関係を満足し、か
    つ、 前記ヒステリシス曲線の微分曲線を描いたとき、磁界が
    −80〜80kA/mの範囲に極大値を有することを特
    徴とする薄帯状磁石材料。
  2. 【請求項2】 Rx(Fe1-yCoy100-x-z-wzAlw
    (ただし、Rは、少なくとも1種の希土類元素、x:
    7.1〜9.9原子%、y:0〜0.30、z:4.6
    〜6.9原子%、w:0.02〜1.5原子%)で表さ
    れる合金組成からなり、合金溶湯を急冷することによっ
    て得られる薄帯状磁石材料であって、 ソフト磁性相とハード磁性相とが存在する複合組織を構
    成し、かつ、 急冷したままの状態での室温での磁気特性を表すJ−H
    図のヒステリシス曲線で、磁界が80kA/mのときの
    第一象現における磁化の値をI1、磁界が−80kA/
    mのときの第二象現における磁化の値をI2としたと
    き、0.7≦I2/I1≦0.95の関係を満足し、かつ
    残留磁束密度Brが0.9T以上であることを特徴とす
    る薄帯状磁石材料。
  3. 【請求項3】 前記Rは、Ndおよび/またはPrを主
    とする希土類元素である請求項1または2に記載の薄帯
    状磁石材料。
  4. 【請求項4】 前記Rは、Prを含み、その割合が前記
    R全体に対し5〜75%である請求項1ないし3のいず
    れかに記載の薄帯状磁石材料。
  5. 【請求項5】 前記Rは、Dyを含み、その割合が前記
    R全体に対し14%以下である請求項1ないし4のいず
    れかに記載の薄帯状磁石材料。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載の薄
    帯状磁石材料を粉砕して得られたことを特徴とする磁石
    粉末。
  7. 【請求項7】 磁石粉末は、その製造過程で、または製
    造後少なくとも1回熱処理が施されたものである請求項
    6に記載の磁石粉末。
  8. 【請求項8】 残留磁束密度Brが0.9T以上である
    請求項6または7に記載の磁石粉末。
  9. 【請求項9】 平均粒径が0.5〜150μmである請
    求項6ないし8のいずれかに記載の磁石粉末。
  10. 【請求項10】 請求項6ないし9のいずれかに記載の
    磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを特徴とするボ
    ンド磁石。
  11. 【請求項11】 磁石粉末の含有量が75〜95.5%
    である請求項10に記載のボンド磁石。
  12. 【請求項12】 保磁力HcJが320〜720kA/m
    である請求項10または11に記載のボンド磁石。
  13. 【請求項13】 最大磁気エネルギー積(BH)max
    60kJ/m3以上である請求項10ないし12のいず
    れかに記載のボンド磁石。
  14. 【請求項14】 不可逆減磁率(初期減磁率)の絶対値
    が5.7%以下である請求項10ないし13のいずれか
    に記載のボンド磁石。
  15. 【請求項15】 多極着磁に供される、または多極着磁
    された請求項10ないし14のいずれかに記載のボンド
    磁石。
  16. 【請求項16】 モータに用いられる請求項10ないし
    15のいずれかに記載のボンド磁石。
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