JP2000348917A - 磁石粉末、磁石粉末の製造方法及びボンド磁石 - Google Patents

磁石粉末、磁石粉末の製造方法及びボンド磁石

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JP2000348917A
JP2000348917A JP11155231A JP15523199A JP2000348917A JP 2000348917 A JP2000348917 A JP 2000348917A JP 11155231 A JP11155231 A JP 11155231A JP 15523199 A JP15523199 A JP 15523199A JP 2000348917 A JP2000348917 A JP 2000348917A
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magnet
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Masahide Nakamura
昌英 中村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】磁石への成形の際の磁石粉末の酸化、劣化を防
止し、高い磁気特性を維持することができる。 【解決手段】磁石粉末10は、例えばNd−Fe−B系
合金のような希土類元素を含む磁石粉末である。磁石粉
末10の表面付近には、中心部に比べて酸素濃度が高い
高酸素濃度領域12を有する。この高酸素濃度領域12
の体積は、磁石粉末10全体の体積の0.005〜1.
3%である。高酸素濃度領域12の平均酸素濃度をx
[at%]、それより中心側の中核部11の平均酸素濃
度をy[at%]としたとき、これらの比は、x/y>
2を満足するのが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁石粉末、磁石粉
末の製造方法及びボンド磁石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁石材料として、希土類元素を含む合金
で構成される希土類磁石材料は、高い磁気特性を有する
ことが知られており、希土類磁石粉末を結合樹脂(バイ
ンダー)で結合してなるボンド磁石は、モータの分野に
代表される種々の分野で応用されている。
【0003】ところで、希土類元素を含む磁石粉末は大
変酸化され易く、酸化された希土類磁石粉末を用いた磁
石は、磁気特性が低下するという問題がある。そのた
め、希土類磁石粉末の製造、特に粉砕による粉末化は、
例えばアルゴンガスのような不活性ガスによる雰囲気中
で行われる。
【0004】しかしながら、このような酸化が防止され
た希土類磁石粉末は、ボンド磁石に成形する際に、次の
ような問題を生じる。
【0005】磁石粉末を結合樹脂と混合し、混練する際
には、結合樹脂との密着性を向上するために、例えば温
間混練が行われるが、そのため、磁石粉末が結合樹脂と
の反応により酸化、劣化が生じ、磁気特性が低下するこ
とがある。
【0006】また、結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合、ボ
ンド磁石を成形後、結合樹脂を硬化させるために加熱す
る際に、磁石粉末が結合樹脂と反応し、酸化、劣化が生
じ、磁気特性が低下することがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、磁石
への成形の際の磁石粉末の酸化、劣化を防止し、高い磁
気特性を維持することができる磁石粉末、磁石粉末の製
造方法及びボンド磁石を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(22)の本発明により達成される。
【0009】(1) 希土類元素を含む磁石粉末であっ
て、表面付近に、中心部に比べて酸素濃度が高い高酸素
濃度領域を有し、前記高酸素濃度領域の体積が磁石粉末
全体の体積の0.005〜1.3%であることを特徴と
する磁石粉末。
【0010】(2) 希土類元素を含む磁石粉末であっ
て、磁石粉末の表面から中心部に向かって酸素濃度が漸
減する傾向を示し、その平均酸素濃度が中心部に比べて
高い高酸素濃度領域を有し、前記高酸素濃度領域の体積
が磁石粉末全体の体積の0.005〜1.3%であるこ
とを特徴とする磁石粉末。
【0011】(3) 高酸素濃度領域の平均酸素濃度が
17at%以上である上記(1)または(2)に記載の
磁石粉末。
【0012】(4) 中心部の平均酸素濃度が17at
%未満である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載
の磁石粉末。
【0013】(5) 高酸素濃度領域の平均酸素濃度を
x[at%]、中心部の平均酸素濃度をy[at%]と
したとき、x/y>2を満足する上記(1)ないし
(4)のいずれかに記載の磁石粉末。
【0014】(6) 高酸素濃度領域が磁石粉末の外表
面の70%以上を覆っている上記(1)ないし(5)の
いずれかに記載の磁石粉末。
【0015】(7) 磁石粉末は、R(ただし、Rは、
Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM
(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)
とBとを含む合金で構成される上記(1)ないし(6)
のいずれかに記載の磁石粉末。
【0016】(8) 磁石粉末は、ソフト磁性相とハー
ド磁性相とが相隣接して存在するナノコンポジット組織
を有するものである上記(1)ないし(7)のいずれか
に記載の磁石粉末。
【0017】(9) 希土類元素を含む磁石材料を粉砕
して磁石粉末とし、その後、前記磁石粉末を酸素と接触
させて、磁石粉末の表面付近に、中心部に比べて酸素濃
度が高い高酸素濃度領域を磁石粉末全体の体積の0.0
05〜1.3%形成することを特徴とする磁石粉末の製
造方法。
【0018】(10) 希土類元素を含む磁石材料を粉
砕して磁石粉末とし、その後、前記磁石粉末を酸素と接
触させて、磁石粉末の表面から中心に向かって酸素濃度
が漸減する傾向を示し、その平均酸素濃度が中心部に比
べて高い高酸素濃度領域を磁石粉末全体の体積の0.0
05〜1.3%形成することを特徴とする磁石粉末の製
造方法。
【0019】(11) 高酸素濃度領域の平均酸素濃度
をx[at%]、中心部の平均酸素濃度をy[at%]
としたとき、x/y>2を満足する上記(9)または
(10)に記載の磁石粉末の製造方法。
【0020】(12) 前記酸素との接触は、磁石粉末
を酸素を含む雰囲気中で熱処理することにより行われる
上記(9)ないし(11)のいずれかに記載の磁石粉末
の製造方法。
【0021】(13) 前記酸素を含む雰囲気は、不活
性ガスと酸素ガスの混合ガスである上記(12)に記載
の磁石粉末の製造方法。
【0022】(14) 前記熱処理の温度は、410〜
900℃である上記(12)または(13)に記載の磁
石粉末の製造方法。
【0023】(15) 前記磁石材料の製造は、急冷法
により行われる上記(9)ないし(14)のいずれかに
記載の磁石粉末の製造方法。
【0024】(16) 前記急冷法による磁石材料の製
造は、磁石材料の溶湯をノズルから射出し、前記ノズル
に対し回転している冷却ロールの周面に衝突させ、冷却
固化して、薄帯状の磁石材料を製造することにより行わ
れる上記(15)に記載の磁石粉末の製造方法。
【0025】(17) 前記磁石材料の製造または粉砕
は、酸素を含む雰囲気中で行われる上記(9)ないし
(16)のいずれかに記載の磁石粉末の製造方法。
【0026】(18) 上記(1)ないし(8)のいず
れかに記載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを
特徴とするボンド磁石。
【0027】(19) 上記(9)ないし(17)のい
ずれかに記載の磁石粉末の製造方法により製造された磁
石粉末を結合樹脂で結合してなることを特徴とするボン
ド磁石。
【0028】(20) 前記磁石粉末の含有量が82〜
99.5wt%である上記(18)または(19)に記載
のボンド磁石。
【0029】(21) 保磁力iHcが2〜15kOe
である上記(18)ないし(20)のいずれかに記載の
ボンド磁石。
【0030】(22) 最大磁気エネルギー積(BH)
maxが7MGOe以上である上記(18)ないし(2
1)のいずれかに記載のボンド磁石。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の磁石粉末、磁石粉
末の製造方法及びボンド磁石について、添付図面を参照
しつつ詳細に説明する。
【0032】[磁石粉末の金属組成]本発明における磁
石粉末としては、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元
素のうちの少なくとも1種)を含む合金、特にR(ただ
し、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1
種)とTM(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なく
とも1種)とBとを含む合金が挙げられ、次の[1]〜
[4]の組成のものが好ましい。
【0033】[1] Smを主とする希土類元素と、C
oを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、
Sm−Co系合金と言う)。
【0034】[2] R(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷
移金属と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−Fe
−B系合金と言う)。
【0035】[3] Smを主とする希土類元素と、F
eを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを
基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言
う)。 [4] R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうち
少なくとも1種)とFe等の遷移金属とを基本成分と
し、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接して存在す
るナノコンポジット組織を有するもの。
【0036】Sm−Co系合金の代表的なものとして
は、SmCo5、Sm2TM17(ただしTMは、遷移金
属)が挙げられる。
【0037】R−Fe−B系合金の代表的なものとして
は、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、N
d−Pr−Fe−B系合金、Nd−Dy−Fe−B系合
金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−
Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、N
i等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
【0038】Sm−Fe−N系合金の代表的なものとし
ては、Sm2Fe17合金を窒化して作製したSm2Fe17
3が挙げられる。
【0039】前記希土類元素としては、Y、La、C
e、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが
挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができ
る。また、前記遷移金属としては、Fe、Co、Ni等
が挙げられ、これらを1種または2種以上含むことがで
きる。また、保磁力、磁気エネルギー積等の磁気特性を
向上させるために、磁石材料中には、必要に応じ、B、
Al、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、N
b、Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge等を含有するこ
ともできる。
【0040】前記ナノコンポジット組織は、ソフト磁性
相とハード磁性相とを有し、各相の厚さや粒径がナノメ
ーターレベル(例えば1〜100nm)で存在してい
る。そして、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接
し、磁気的な交換相互作用を生じる。
【0041】ソフト磁性相の磁化は、外部磁界の作用に
より容易にその向きを変えるので、ハード磁性相に混在
すると、系全体の磁化曲線はB−H図の第二象現で段の
ある「へび型曲線」となる。しかし、ソフト磁性相のサ
イズが数10nm以下と十分小さい場合には、ソフト磁
性体の磁化が周囲のハード磁性体の磁化との結合によっ
て十分強く拘束され、系全体がハード磁性体として振舞
うようになる。
【0042】このようなナノコンポジット組織を持つ磁
石は、主に、以下に挙げる特徴1)〜5)を有してい
る。
【0043】1)B−H図の第二象現で、磁化が可逆的
にスプリングバックする(この意味で「スプリング磁
石」とも言う)。
【0044】2)着磁性が良く、比較的低い磁場で着磁
できる。
【0045】3)磁気特性の温度依存性がハード磁性相
単独の場合に比べて小さい。
【0046】4)磁気特性の経時変化が小さい。
【0047】5)微粉砕しても磁気特性が劣化しない。
【0048】前述した合金組成において、ハード磁性相
及びソフト磁性相は、例えば次のようなものとなる。
【0049】ハード磁性相:R2TM14B系(TMは、
FeまたはFeとCo)、またはR2TM14BSi系 ソフト磁性相:TM(特にα−Fe,α−(Fe,C
o)) [磁石粉末の構造]図1は、本発明の磁石粉末を模式化
(モデル化)した断面図、図2は、磁石粉末の表面から
深さ方向に測定した酸素濃度分布を示すグラフである。
図1に示すように、本発明の磁石粉末10は、表面付近
に、中心部に比べて酸素濃度が高い高酸素濃度領域12
を有する。ここで、高酸素濃度領域12とは、次のよう
にして定めることができる。
【0050】酸素(O)濃度は、磁石粉末10の表面近
傍が最も高く、磁石粉末の中心部に向かって徐々に減少
し、あるところでほぼ一定となるという傾向を示す。そ
こで、磁石粉末10の表面から中心部に向かって酸素濃
度が漸減する傾向を示す部分(ほぼ一定となるまでの部
分)を高酸素濃度領域12とし、それより中心側、すな
わち、酸素濃度がほぼ一定となっている部分を中核部
(中心部)11と言う。この場合、高酸素濃度領域12
における酸素濃度(平均酸素濃度)は、中核部11にお
ける酸素濃度(平均酸素濃度)より高い。
【0051】このような高酸素濃度領域12を有するこ
とにより、磁石粉末10を用いて例えばボンド磁石を成
形した際に、結合樹脂との接触、特に高温下での接触に
よる酸化、劣化等が抑制される。従って、磁石粉末10
の酸化、劣化等による磁気特性の低下を防止することが
できる。
【0052】本発明では、高酸素濃度領域12が占める
体積の比率が重要である。すなわち、高酸素濃度領域1
2の体積が磁石粉末10全体の体積の0.005〜1.
3%とされ、好ましくは0.01〜1.0%、より好ま
しくは0.04〜0.7%とされる。この比率が小さす
ぎると、ボンド磁石への成形時における磁石粉末10の
酸化、劣化等の抑制効果が少なく、また、耐食性が低下
する場合がある。一方、この比率が大きすぎると、磁石
粉末10全体の酸素濃度が高くなり、磁気特性が低下す
る。
【0053】高酸素濃度領域12における平均酸素濃度
x[at%(原子%)]は、特に限定されないが、xは
17以上であるのが好ましく、20以上であるのがより
好ましい。xが17未満であると、前記高酸素濃度領域
12の体積比率が比較的小さい場合に、ボンド磁石への
成形時における磁石粉末10の酸化、劣化等の抑制効果
が不充分となるおそがある。
【0054】中核部11における平均酸素濃度y[at
%]は、特に限定されないが、yは17未満であるのが
好ましく、13.5以下であるのがより好ましい。yが
17以上であると、磁石粉末10全体の酸素濃度が高く
なり、磁気特性が低下するおそれがある。
【0055】また、xとyの比率は、x/y>2を満足
するのが好ましく、x/y>2.3を満足するのがより
好ましい。この比率が小さすぎると、ボンド磁石への成
形時における磁石粉末10の酸化、劣化等の抑制効果が
不充分となるか、または磁石粉末10全体の酸素濃度が
高くなり、磁気特性が低下するおそれがある。
【0056】以上のような高酸素濃度領域12は、磁石
粉末10の外表面の一部のみを覆っているものでもよい
が、高酸素濃度領域12が磁石粉末10の外表面を覆う
面積の比率が多いほど、ボンド磁石への成形時における
磁石粉末10の酸化、劣化等の抑制効果が大きい。従っ
て、高酸素濃度領域12は、磁石粉末10の外表面の7
0%以上の面積を覆っているのが好ましく、85%以上
の面積を覆っているのがより好ましく、図1のモデルで
示すように、磁石粉末10の外表面のほぼ全体を覆って
いるのがさらに好ましい。
【0057】[磁石粉末の粒度]本発明の磁石粉末10
は、例えば後述するようなボンド磁石の製造に用いられ
るものであるが、その粒度(平均粒径)は、磁石への成
形に必要な粒度とされているのが好ましい。
【0058】この場合、磁石粉末10の平均粒径は、特
に限定されないが、後述するボンド磁石を製造するため
のものの場合、0.5〜100μm程度が好ましく、1
〜60μm程度がより好ましい。また、後述するような
少量の結合樹脂で成形時の良好な成形性を得るために、
磁石粉末10の粒径分布は、ある程度分散されている
(バラツキがある)のが好ましい。これにより、得られ
たボンド磁石の空孔率を低減することができ、ボンド磁
石の機械的強度をより高め、磁気特性をさらに向上する
ことができる。
【0059】[磁石粉末の製造]以上のような磁石粉末
10は、溶融合金を急冷することにより製造されたもの
であるのが好ましく、特に、合金の溶湯を急冷、固化し
て得られた急冷薄帯(リボン)を粉砕して製造されたも
のであるのが好ましい。以下、その方法の一例について
説明する。
【0060】図3は、磁石材料を単ロール法により製造
する装置(急冷薄帯製造装置)の構成例を示す斜視図、
図4は、図3に示す装置における溶湯の冷却ロールへの
衝突部位付近の状態を示す断面側面図である。
【0061】図3に示すように、急冷薄帯製造装置1
は、磁石材料を収納し得る筒体2と、該筒体2に対し図
中矢印9A方向に回転する冷却ロール5とを備えてい
る。筒体2の下端には、磁石材料の溶湯を射出するノズ
ル(オリフィス)3が形成されている。
【0062】また、筒体2のノズル3近傍の外周には、
加熱用のコイル4が配置され、このコイル4に例えば高
周波を印加することにより、筒体2内を加熱(誘導加
熱)し、筒体2内の磁石材料を溶融状態にする。
【0063】冷却ロール5は、基部51と、冷却ロール
5の周面53を形成する表面層52とで構成されてい
る。
【0064】基部51の構成材料は、表面層52と同じ
材質で一体構成されていてもよく、また、表面層52と
は異なる材質で構成されていてもよい。
【0065】基部51の構成材料は、特に限定されない
が、表面層52の熱をより速く放散できるように、例え
ば銅または銅系合金のような熱伝導率の高い金属材料で
構成されているのが好ましい。
【0066】また、表面層52は、熱伝導率が基部51
と同等かまたは基部51より若干低い材料で構成されて
いるのが好ましい。
【0067】このような急冷薄帯製造装置1は、チャン
バー(図示せず)内に設置され、該チャンバー内に、所
定の雰囲気ガスが充填された状態で作動する。特に、急
冷薄帯8の過度の酸化を防止するために、雰囲気ガス
は、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性
ガスであるのが好ましい。また、雰囲気ガス中には、少
量の酸素が含まれていてもよい。
【0068】急冷薄帯製造装置1では、筒体2内に磁石
材料(合金)を入れ、コイル4により加熱して溶融し、
その溶湯6をノズル3から射出すると、図4に示すよう
に、溶湯6は、冷却ロール5の周面53に衝突し、パド
ル(湯溜り)7を形成した後、回転する冷却ロール5の
周面53に引きずられつつ急速に冷却されて凝固し、急
冷薄帯8が連続的または断続的に形成される。このよう
にして形成された急冷薄帯8は、やがて、そのロール面
81が周面53から離れ、図3中の矢印9B方向に進行
する。なお、図4中、溶湯の凝固界面71を点線で示
す。
【0069】冷却ロール5の周速度は、溶湯の合金組
成、周面53の溶湯6に対する濡れ性等によりその好適
な範囲が異なるが、磁気特性の向上のために、通常、1
〜60m/秒であるのが好ましく、5〜40m/秒であ
るのがより好ましい。冷却ロール5の周速度が遅すぎる
と、急冷薄帯8の体積流量によっては、急冷薄帯8の厚
さtが厚くなり、結晶粒径が増大する傾向を示し、逆に
冷却ロール5の周速度が速すぎると、大部分が非晶質組
織となり、いずれの場合にも、得られた磁石粉末の磁気
特性に影響を及ぼす。
【0070】なお、得られた急冷薄帯8に対しては、例
えば、非晶質組織の再結晶化の促進、組織の均質化のた
めに、熱処理を施すこともできる。この熱処理の条件と
しては、例えば、400〜900℃で、0.5〜300
分程度とすることができる。
【0071】また、この熱処理は、真空または減圧状態
下(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは窒
素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中
で行うことができる。また、この熱処理は、少量の酸素
を含む雰囲気中で行われてもよい。
【0072】以上のような製造方法により得られた急冷
薄帯(薄帯状の磁石材料)8は、微細結晶組織、もしく
は微細結晶がアモルファス組織中に含まれるような組織
となり、優れた磁気特性が得られる。
【0073】次に、この急冷薄帯8を所望の粒度、すな
わち磁石に成形する際の粒度に粉砕する。粉砕の方法
は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジ
ェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用
いて行うことができる。
【0074】この場合、粉砕は、真空または減圧状態下
(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは窒素
ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中で
行うこともできる。また、この粉砕は、少量の酸素を含
む雰囲気中で行われてもよい。
【0075】次に、磁石粉末の表面付近に高酸素濃度領
域12を形成するために、粉砕により得られた磁石粉末
を酸素を含む雰囲気下におき、酸素と接触させる。特
に、磁石粉末を酸素を含む雰囲気中で熱処理するのが好
ましい。これにより、前記x/yが比較的大きい高酸素
濃度領域12を容易に得ることができる。
【0076】この熱処理における雰囲気は、窒素ガス、
アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスと酸素ガス
との混合ガスが好ましい。雰囲気中の酸素分圧を調整す
ることにより、所望の条件(酸素濃度等)の高酸素濃度
領域12を容易に形成することができるという利点があ
るからである。
【0077】なお、熱処理における雰囲気中の酸素濃度
は、特に限定されず、熱処理の温度や熱処理時間等の条
件を考慮して適宜決定されるものであり、例えば0.5
〜100ppm程度で行われるのが好ましい。
【0078】また、この熱処理における温度は、特に限
定されないが、410〜900℃程度であるのが好まし
く、500〜800℃程度であるのがより好ましい。熱
処理の温度が低すぎると、所望の高酸素濃度領域12を
形成するのに長い熱処理時間を必要とし、前記x/yが
小さくなり、高酸素濃度領域12の占める体積の比率が
大きくなる傾向を示す。また、熱処理の温度が高すぎる
と、酸化が急激に進み、磁石粉末全体が酸化し、磁気特
性が低下するおそれがある。
【0079】また、この熱処理における熱処理時間は、
特に限定されないが、前述した熱処理温度の場合、0.
1〜60分程度であるのが好ましく、0.5〜20分程
度であるのがより好ましい。
【0080】なお、磁石材料を粉砕して磁石粉末を得た
時点で、磁石粉末の表面付近に必要な高酸素濃度領域1
2が形成されている場合には、このような熱処理を行わ
なくてもよい。
【0081】以上のようにして、本発明の磁石粉末10
が製造される。この磁石粉末10を用いてボンド磁石を
製造した場合、かかる磁石粉末10は、ボンド磁石の成
形時における酸化、劣化が抑制されるばかりでなく、結
合樹脂との結合性(結合樹脂の濡れ性)が向上するた
め、機械的強度が高く、熱安定性(耐熱性)、耐食性が
優れたボンド磁石が得られる。
【0082】なお、以上では、急冷法として、単ロール
法を例に説明したが、双ロール法を採用してもよい。ま
た、その他、例えばガスアトマイズのようなアトマイズ
法、回転ディスク法、メカニカル・アロイング(MA)
法等により磁石粉末10を製造してもよい。このような
急冷法は、金属組織(結晶粒)を微細化することができ
るので、磁石粉末やそれより製造されるボンド磁石の磁
石特性、特に保磁力等を向上させるのに有効である。
【0083】なお、本発明の磁石粉末は、ボンド磁石の
製造に用いるものに限定されず、例えば、焼結磁石の製
造に用いるものであってもよいことは、言うまでもな
い。
【0084】[ボンド磁石及びその製造]次に、本発明
のボンド磁石について説明する。
【0085】本発明のボンド磁石は、前述の磁石粉末を
結合樹脂で結合してなるものである。
【0086】結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑
性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0087】熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミ
ド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナ
イロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロ
ン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、ナイロ
ン6T、ナイロン9T)、熱可塑性ポリイミド、芳香族
ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシ
ド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリ
プロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオ
レフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポ
リメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポ
リエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテ
ルイミド、ポリアセタール等、またはこれらを主とする
共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、
これらのうちの1種または2種以上を混合して用いるこ
とができる。
【0088】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高いことから、ポリアミド、耐熱性向
上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイ
ドを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性
樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
【0089】このような熱可塑性樹脂は、その種類、共
重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱
性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の
選択が可能となるという利点がある。
【0090】一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビ
スフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン
樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリ
イミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙
げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して
用いることができる。
【0091】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリ
コーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、
混練の均一性にも優れている。
【0092】なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)
は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでも
よい。
【0093】このような本発明のボンド磁石は、例えば
次のようにして製造される。
【0094】磁石粉末と、結合樹脂と、必要に応じ添加
剤(酸化防止剤、潤滑剤等)とを混合し、これらを混練
してボンド磁石用組成物(コンパウンド)を製造する。
混練は、温間混練(例えば80〜140℃で5〜20
分)とすることができる。
【0095】次に、得られたボンド磁石用組成物を用い
て、圧縮成形(プレス成形)、押出成形、射出成形等の
方法により、磁場中または無磁場中で所望の磁石形状に
成形する。結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、成形
後、加熱等によりそれを硬化する。
【0096】なお、ボンド磁石の製造方法は、上記に限
定されないことはいうまでもない。
【0097】ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、82
〜99.5wt%程度であるのが好ましく、90〜99wt
%程度であるのがより好ましい。特に、ボンド磁石が圧
縮成形により製造されたものの場合には、磁石粉末の含
有量は、93〜99.5wt%程度であるのが好ましく、
95〜99wt%程度であるのがより好ましい。
【0098】磁石粉末の含有量が少なすぎると、磁気特
性(特に最大磁気エネルギー積)の向上が図れず、ま
た、磁石粉末の含有量が多すぎると、相対的に結合樹脂
の含有量が少なくなり、成形性が低下する。
【0099】このような本発明のボンド磁石は、その原
材料となる磁石粉末の特性や、ボンド磁石の製造条件、
ボンド磁石中に含まれる磁石粉末の含有量の多さ等か
ら、優れた磁気特性を発揮する。
【0100】すなわち、本発明のボンド磁石は、保磁力
iHcが2〜15kOe程度であることが好ましく、4
〜12kOe程度であることがより好ましい。
【0101】保磁力iHcが前記上限値を超えると、着
磁性が劣り、前記下限値未満であると、モータの用途に
よっては逆磁場がかかったときの減磁が顕著になり、ま
た、高温における耐熱性が劣る。従って、保磁力iHc
が上記範囲であれば、ボンド磁石(特に、円筒状磁石)
に多極着磁等をするような場合に、十分な着磁磁場が得
られないときでも、良好な着磁が可能となり、十分な磁
束密度が得られ、高性能なボンド磁石、特にモータ用ボ
ンド磁石を提供することができる。
【0102】また、本発明のボンド磁石の最大磁気エネ
ルギー積(BH)maxは、特に限定されないが、7MG
Oe以上が好ましく、10MGOe以上がより好まし
い。
【0103】本発明のボンド磁石の形状、寸法等は特に
限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱
状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板状、湾
曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大き
さも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさ
のものが可能である。
【0104】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0105】(実施例1)以下に述べるような方法で合
金組成がNd9.1FebalCo85.7Al0.5Si
0.5の磁石粉末を得た。
【0106】まず、Nd、Fe、Co、B、Al、Si
の各原料を秤量して母合金インゴットを鋳造し、このイ
ンゴットから約20gのサンプルを切り出した。
【0107】図3及び図4に示す構成の急冷薄帯製造装
置を用意し、底部にノズル(円孔オリフィス:オリフィ
ス内径0.7mm)を設けた石英管内に前記サンプルを
入れた。急冷薄帯製造装置1が収納されているチャンバ
ー内を脱気した後、アルゴンガスと少量の酸素ガスとを
導入し、所望の温度及び圧力の雰囲気とした。
【0108】その後、石英管内のインゴットサンプルを
高周波誘導加熱により溶解し、さらに、冷却ロールの周
速度及び噴射圧(石英管の内圧と雰囲気圧との差圧)を
それぞれに20m/秒、0.5kgf/cmに調整し
て、溶湯を冷却ロールの周面(Cu製)に向けて噴射
し、急冷薄帯(平均厚さt:約35μm、平均幅w:約
1.3mm)を得た。
【0109】次に、この急冷薄帯をボールミル(粉砕
機)を用いて、アルゴンガス雰囲気中で粉砕し、平均粒
径が約50μmの磁石粉末を得た。
【0110】次に、この磁石粉末をアルゴンガスと酸素
ガスとの混合ガスによる雰囲気中で、600℃×10分
間熱処理(焼鈍)した。このとき、雰囲気中の酸素濃度
を下記A〜Fの6段階に変更した。
【0111】 A: 1.2ppm B: 8.5ppm C: 21.9ppm D: 57.2ppm E: 87.6ppm F:113.9ppm 得られた磁石粉末について、その相構成を分析するた
め、Cu−Kαを用い回折角20°〜60°にてX線回
折を行った。回折パターンからハード磁性相であるNd
2(Fe・Co)141相と、ソフト磁性相であるα−
(Fe,Co)相の回折ピークが確認でき、透過型電子
顕微鏡(TEM)による観察結果から、ナノコンポジッ
ト組織を形成していることが確認された。
【0112】また、得られた磁石粉末について、磁石粉
末表面から深さ方向の酸素濃度分布を光電子分光装置
(アルバックファイ社製Quantum2000)を用いて調べ
た。その結果、図2に示すように、磁石粉末の表面付近
で酸素濃度が最も高く、中心部に向かうに従って酸素濃
度が徐々に減少し、あるところで一定となった。
【0113】磁石粉末の表面から酸素濃度が一定となる
までの範囲を高酸素濃度領域とし、酸素濃度が一定であ
る領域を中核部とした。高酸素濃度領域は、磁石粉末の
外表面のほぼ全体を覆っていた。
【0114】磁石粉末全体の体積に対する高酸素濃度領
域の体積の比率(高酸素濃度領域の体積率Q)を求める
とともに、高酸素濃度領域における平均酸素(O)濃度
x[at%]と、中核部における平均酸素(O)濃度y
[at%]とを測定した。また、x/yを計算により求
めた。これらの結果を下記表1に示す。
【0115】次に、この磁石粉末と、エポキシ樹脂(結
合樹脂)と、少量のヒドラジン系酸化防止剤とを混合
し、110℃で10分間混練してボンド磁石用組成物
(コンパウンド)を作製した。
【0116】次いで、このコンパウンドを粉砕して粒状
とし、この粒状物を秤量してプレス装置の金型内に充填
し、130℃、圧力6ton/cmで圧縮成形(無磁
場中)して、成形体を得た。
【0117】離型後、150℃で60分間加熱して、エ
ポキシ樹脂を硬化させ(キュア処理)、直径10mmφ
×高さ7mmの円柱状の等方性ボンド磁石を得た。この
ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、96.5wt%で
あった。
【0118】得られたボンド磁石について、直流自記磁
束計を用い最大印加磁場2MA/mにて、保磁力iHc
及び最大磁気エネルギー積(BH)maxを測定した。そ
の結果を下記表1に示す。
【0119】さらに、得られたボンド磁石について、6
0℃×90%RHで300時間までの恒温恒湿試験を行
い、耐食性(表面の錆の発生状況)を調べたところ、本
発明のボンド磁石は、いずれも良好な耐食性を示した。
【0120】
【表1】
【0121】(実施例2)以下に述べるような方法で合
金組成がNd9.4FebalCo2.45.5Cu
0.70.3の磁石粉末を得た。
【0122】まず、Nd、Fe、Co、B、Cu、Vの
各原料を秤量して母合金インゴットを鋳造し、このイン
ゴットから約20gのサンプルを切り出した。
【0123】図3及び図4に示す構成の急冷薄帯製造装
置を用意し、底部にノズル(円孔オリフィス:オリフィ
ス内径0.7mm)を設けた石英管内に前記サンプルを
入れた。急冷薄帯製造装置1が収納されているチャンバ
ー内を脱気した後、アルゴンガスを導入し、所望の温度
及び圧力の雰囲気とした。
【0124】その後、石英管内のインゴットサンプルを
高周波誘導加熱により溶解し、さらに、冷却ロールの周
速度及び噴射圧(石英管の内圧と雰囲気圧との差圧)を
それぞれに20m/秒、0.6kgf/cmに調整し
て、溶湯を冷却ロールの周面(Cu製)に向けて噴射
し、急冷薄帯(平均厚さt:約30μm、平均幅w:約
1.5mm)を得た。
【0125】次に、この急冷薄帯をボールミル(粉砕
機)を用いて、少量の酸素ガスを含むアルゴンガス雰囲
気中で粉砕し、平均粒径が約40μmの磁石粉末を得
た。
【0126】次に、この磁石粉末をアルゴンガスと酸素
ガスとの混合ガスによる雰囲気中で、550℃×15分
間熱処理(焼鈍)した。このとき、雰囲気中の酸素濃度
を上記A〜Fの6段階に変更した。
【0127】得られた磁石粉末について、その相構成を
分析するため、Cu−Kαを用い回折角20°〜60°
にてX線回折を行った。回折パターンからハード磁性相
であるNd2(Fe・Co)141相と、ソフト磁性相で
あるα−(Fe,Co)相の回折ピークが確認でき、透
過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から、ナノコ
ンポジット組織を形成していることが確認された。
【0128】また、得られた磁石粉末について、磁石粉
末表面から深さ方向の酸素濃度分布を光電子分光装置
(アルバックファイ社製Quantum2000)を用いて調べ
た。その結果、図2に示すように、磁石粉末の表面付近
で酸素濃度が最も高く、中心部に向かうに従って酸素濃
度が徐々に減少し、あるところで一定となった。
【0129】磁石粉末の表面から酸素濃度が一定となる
までの範囲を高酸素濃度領域とし、酸素濃度が一定であ
る領域を中核部とした。高酸素濃度領域は、磁石粉末の
外表面のほぼ全体を覆っていた。
【0130】磁石粉末全体の体積に対する高酸素濃度領
域の体積の比率(高酸素濃度領域の体積率Q)を求める
とともに、高酸素濃度領域における平均酸素(O)濃度
x[at%]と、中核部における平均酸素(O)濃度y
[at%]とを測定した。また、x/yを計算により求
めた。これらの結果を下記表1に示す。
【0131】次に、この磁石粉末と、エポキシ樹脂(結
合樹脂)と、少量のヒドラジン系酸化防止剤とを混合
し、110℃で10分間混練してボンド磁石用組成物
(コンパウンド)を作製した。
【0132】次いで、このコンパウンドを粉砕して粒状
とし、この粒状物を秤量してプレス装置の金型内に充填
し、130℃、圧力6ton/cmで圧縮成形(無磁
場中)して、成形体を得た。
【0133】離型後、150℃で60分間加熱して、エ
ポキシ樹脂を硬化させ(キュア処理)、直径10mmφ
×高さ7mmの円柱状の等方性ボンド磁石を得た。この
ボンド磁石中の磁石粉末の含有量は、96.5wt%で
あった。
【0134】得られたボンド磁石について、直流自記磁
束計を用い最大印加磁場2MA/mにて、保磁力iHc
及び最大磁気エネルギー積(BH)maxを測定した。そ
の結果を下記表2に示す。
【0135】さらに、得られたボンド磁石について、6
0℃×90%RHで300時間までの恒温恒湿試験を行
い、耐食性(表面の錆の発生状況)を調べたところ、本
発明のボンド磁石は、いずれも良好な耐食性を示した。
【0136】
【表2】
【0137】前記表1及び表2からわかるように、本発
明の磁石粉末を用いたボンド磁石は、いずれも、高保磁
力、高磁気エネルギー積を有し、優れた磁気特性を発揮
するとともに、耐食性も優れている。
【0138】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、優
れた磁気特性を有し、また、耐食性にも優れる磁石を得
ることができる。
【0139】特に、磁石粉末が高酸素濃度領域を所定の
体積率で有することにより、磁石粉末を用いてボンド磁
石を成形した際に、結合樹脂との接触、特に高温下での
接触による酸化、劣化等が抑制され、よって、高い磁気
特性を維持することができ、しかも、高酸素濃度領域が
過度に存在することによる磁気特性の低下も防止され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁石粉末を模式化(モデル化)した断
面図である。
【図2】磁石粉末の表面から深さ方向に測定した酸素濃
度分布のモデルを示すグラフである。
【図3】磁石材料を製造する装置(急冷薄帯製造装置)
の構成例を示す斜視図である。
【図4】図3に示す装置における溶湯の冷却ロールへの
衝突部位付近の状態を示す断面側面図である。
【符号の説明】
1 急冷薄帯製造装置 2 筒体 3 ノズル 4 コイル 5 冷却ロール 51 基部 52 表面層 53 周面 6 溶湯 7 パドル 71 凝固界面 8 急冷薄帯 81 ロール面 9A 矢印 9B 矢印 10 磁石粉末 11 中核部 12 高酸素濃度領域

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類元素を含む磁石粉末であって、 表面付近に、中心部に比べて酸素濃度が高い高酸素濃度
    領域を有し、 前記高酸素濃度領域の体積が磁石粉末全体の体積の0.
    005〜1.3%であることを特徴とする磁石粉末。
  2. 【請求項2】 希土類元素を含む磁石粉末であって、 磁石粉末の表面から中心部に向かって酸素濃度が漸減す
    る傾向を示し、その平均酸素濃度が中心部に比べて高い
    高酸素濃度領域を有し、 前記高酸素濃度領域の体積が磁石粉末全体の体積の0.
    005〜1.3%であることを特徴とする磁石粉末。
  3. 【請求項3】 高酸素濃度領域の平均酸素濃度が17a
    t%以上である請求項1または2に記載の磁石粉末。
  4. 【請求項4】 中心部の平均酸素濃度が17at%未満
    である請求項1ないし3のいずれかに記載の磁石粉末。
  5. 【請求項5】 高酸素濃度領域の平均酸素濃度をx[a
    t%]、中心部の平均酸素濃度をy[at%]としたと
    き、x/y>2を満足する請求項1ないし4のいずれか
    に記載の磁石粉末。
  6. 【請求項6】 高酸素濃度領域が磁石粉末の外表面の7
    0%以上を覆っている請求項1ないし5のいずれかに記
    載の磁石粉末。
  7. 【請求項7】 磁石粉末は、R(ただし、Rは、Yを含
    む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただ
    し、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)とBと
    を含む合金で構成される請求項1ないし6のいずれかに
    記載の磁石粉末。
  8. 【請求項8】 磁石粉末は、ソフト磁性相とハード磁性
    相とが相隣接して存在するナノコンポジット組織を有す
    るものである請求項1ないし7のいずれかに記載の磁石
    粉末。
  9. 【請求項9】 希土類元素を含む磁石材料を粉砕して磁
    石粉末とし、 その後、前記磁石粉末を酸素と接触させて、磁石粉末の
    表面付近に、中心部に比べて酸素濃度が高い高酸素濃度
    領域を磁石粉末全体の体積の0.005〜1.3%形成
    することを特徴とする磁石粉末の製造方法。
  10. 【請求項10】 希土類元素を含む磁石材料を粉砕して
    磁石粉末とし、 その後、前記磁石粉末を酸素と接触させて、磁石粉末の
    表面から中心に向かって酸素濃度が漸減する傾向を示
    し、その平均酸素濃度が中心部に比べて高い高酸素濃度
    領域を磁石粉末全体の体積の0.005〜1.3%形成
    することを特徴とする磁石粉末の製造方法。
  11. 【請求項11】 高酸素濃度領域の平均酸素濃度をx
    [at%]、中心部の平均酸素濃度をy[at%]とし
    たとき、x/y>2を満足する請求項9または10に記
    載の磁石粉末の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記酸素との接触は、磁石粉末を酸素
    を含む雰囲気中で熱処理することにより行われる請求項
    9ないし11のいずれかに記載の磁石粉末の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記酸素を含む雰囲気は、不活性ガス
    と酸素ガスの混合ガスである請求項12に記載の磁石粉
    末の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記熱処理の温度は、410〜900
    ℃である請求項12または13に記載の磁石粉末の製造
    方法。
  15. 【請求項15】 前記磁石材料の製造は、急冷法により
    行われる請求項9ないし14のいずれかに記載の磁石粉
    末の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記急冷法による磁石材料の製造は、
    磁石材料の溶湯をノズルから射出し、前記ノズルに対し
    回転している冷却ロールの周面に衝突させ、冷却固化し
    て、薄帯状の磁石材料を製造することにより行われる請
    求項15に記載の磁石粉末の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記磁石材料の製造または粉砕は、酸
    素を含む雰囲気中で行われる請求項9ないし16のいず
    れかに記載の磁石粉末の製造方法。
  18. 【請求項18】 請求項1ないし8のいずれかに記載の
    磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを特徴とするボ
    ンド磁石。
  19. 【請求項19】 請求項9ないし17のいずれかに記載
    の磁石粉末の製造方法により製造された磁石粉末を結合
    樹脂で結合してなることを特徴とするボンド磁石。
  20. 【請求項20】 前記磁石粉末の含有量が82〜99.
    5wt%である請求項18または19に記載のボンド磁
    石。
  21. 【請求項21】 保磁力iHcが2〜15kOeである
    請求項18ないし20のいずれかに記載のボンド磁石。
  22. 【請求項22】 最大磁気エネルギー積(BH)maxが
    7MGOe以上である請求項18ないし21のいずれか
    に記載のボンド磁石。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002353025A (ja) * 2001-05-28 2002-12-06 Sanei Kasei Kk プラスチックマグネット
JP2002353018A (ja) * 2001-05-30 2002-12-06 Nichia Chem Ind Ltd 樹脂磁石
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