JP2004273981A - 有機半導体および有機薄膜トランジスタ - Google Patents
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- Thin Film Transistor (AREA)
Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機半導体、特に簡単なプロセスで薄膜を形成することが可能な有機半導体および、該有機半導体で形成された薄膜を用いた電界効果トランジスタ(以下、有機薄膜トランジスタともいう。)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また更に情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置は、液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えばTFT素子では通常、それぞれの層の形成のために、真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関してもp型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされるなど、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるを得ず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料の他、有機レーザー発振素子(例えば、非特許文献1参照。)や、有機薄膜トランジスタ(例えば、非特許文献2参照。)への応用が期待されている。これら有機半導体デバイスが実現できれば、比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着による製造プロセスの簡易化や、更にはその分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたデバイスにはその可能性があり、従って前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にも、例えばTFT素子を形成できる可能性がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0008】
しかしながら、こうしたTFT素子を実現するための有機半導体としてこれまでに検討されてきたのは、ペンタセンやテトラセンといったアセン類(例えば、特許文献1参照。)、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物(例えば、特許文献2参照。)や、α−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー(例えば、特許文献3参照。)、更にはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など限られた種類の化合物(例えば、非特許文献3参照。)でしかなく、高いキャリア移動度を示す新規な電荷輸送性材料を用いた半導体性組成物の開発が待望されていた。
【0009】
また、これまで有機ケイ素化合物は特にそのポリマーとして有している電荷輸送性が産業的に利用されてきた。例えば電子写真感光体としての応用(例えば特許文献4、5参照。)が、また導電性ポリマーとしての応用(例えば、特許文献6参照。)が開示されているし、導電性ペーストとしての利用態様(例えば、特許文献7参照。)が、また導電性接着剤としての態様(例えば、特許文献8参照。)が示されている。これらは有機ケイ素ポリマーをそのまま用いる場合もあれば、バインダー樹脂に相溶もしくは分散させて用いる場合もあるが、いずれも有機ケイ素ポリマーの有する電荷輸送性に、必要に応じてドーピングを施すことにより導電性を付与させるなどして、所望の用途に応用してきたものである。
【0010】
しかしながら、これまで開示されてきた応用の中には有機ケイ素化合物を活性層に用いた薄膜トランジスタの例はなく、半導体的性質の応用については有機電界発光素子の電子輸送材料として用いる例が、わずかに開示されている(例えば、特許文献9参照。)程度であって、その応用研究の例は乏しいと云わざるを得ない。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−55568号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平5−190877号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平8−264805号公報
【0014】
【特許文献4】
特開平5−19497号公報
【0015】
【特許文献5】
特開平5−107792号公報
【0016】
【特許文献6】
特開平6−128488号公報
【0017】
【特許文献7】
特開平8−283624号公報
【0018】
【特許文献8】
特開2000−256641号公報
【0019】
【特許文献9】
特開2001−123157号公報
【0020】
【非特許文献1】
『サイエンス』(Science)誌289巻 599ページ(2000)
【0021】
【非特許文献2】
『ネイチャー』(Nature)誌403巻521ページ(2000)
【0022】
【非特許文献3】
『アドバンスド・マテリアル』(Advanced Material)誌2002年第2号99ページ
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、移動度の高い新規な有機ケイ素化合物半導体を提供することであり、また、該有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタを提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0025】
1.前記一般式(1)または(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機半導体。
【0026】
2.少なくとも1層の活性層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、前記1項に記載の化合物の少なくとも1種類を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0027】
3.前記一般式(1)におけるR11とR12が同時に、もしくは前記一般式(2)におけるR21とR22が同時にアルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルチオ基であることを特徴とする前記2項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0028】
4.前記一般式(1)におけるA11とA12が同時に、もしくは前記一般式(2)におけるA21とA22が同時に、フェニル基、ピリジル基、ピラジル基、トリアジル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基から独立に選ばれる芳香族基であることを特徴とする前記2または3項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0029】
5.前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、分子内に前記一般式(1)または(2)の構造を複数有していることを特徴とする前記2〜4項のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0030】
6.前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、前記一般式(2)に示された構造単位を少なくとも繰り返し単位の一部分に有しているオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする前記2〜5項のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0031】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
一般式(1)におけるR11およびR12、一般式(2)におけるR21およびR22は、それぞれ独立にアルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、m−メチルフェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルキオ基、n−ヘキシルチオ基、ベヘニルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、複素環基(ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)のいずれかより選ばれる一価の置換基を表し、中でも好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくはこれらの置換基のアルキル鎖部分が直鎖状の構造を有している場合である。R11、R12、R21、R22で表される置換基はそれぞれ独立に、更に置換されていてもよいし、互いに結合して環状構造を形成してもよい。この場合、R11、R12、R21、R22を更に修飾する置換基としては、R11、R12、R21、R22の例として先に挙げた置換基に加えて、シアノ基、アルキルカルボニル基(アセチル基、エチルカルボニル基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アリールカルボニル基(ベンゾイル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)等の一価の有機基およびハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)を挙げることができる。またR11、R12、R21、R22のそれぞれに複数の置換基が導入されていてもよく、該置換基は単一種類の複数であっても複数種類であってもよいし、また互いに結合して環状構造を形成してもよい。また一般式(2)におけるR23およびR24はアルキル基を表し、これは上記の置換基によって置換されていてもよい。
【0032】
一般式(1)におけるA11およびA12、一般式(2)におけるA21およびA22はそれぞれ独立に芳香族基を表し、その例としては以下に示す芳香族化合物の残基を挙げることができる。
【0033】
【化2】
【0034】
該芳香族基は置換基を有していてもよく、その例としては前述のR11、R12、R21、R22に結合する置換基の例として挙げたものと同様である。また複数の置換基が互いに結合して芳香環を含む環状構造を形成してもよく、従ってA11またはA12が縮合芳香族環である場合にも、本発明の範疇に含まれる。
【0035】
以上のごとく一般式(1)および(2)で表される化合物の置換基は選択されるが、但し一般式(1)で表される化合物において、ケイ素原子に4つの環状構造が結合する場合には、少なくとも1つは5員環よりも小さい環状構造でなければならない。6員環ないしそれよりも大きな環状構造が4つケイ素原子に結合した化合物において本発明の効果が得がたい理由は定かでないが、置換基同士の立体的な反発によって分子全体がかさ高くなり、分子間での電荷輸送性に好ましくない影響を与えるためではないかと推測できる。例えば4つの5員環が結合した場合において発明の効果を得ることができるのは、立体的な反発が緩和されて分子間の距離が接近し、分子間の電荷輸送が比較的良好に行えるようになるためではないかと考えられる。また一般式(2)で表される化合物において、R21とR22が同時に環状の置換基である場合に発明の効果を得ることができないのも、同様の機構によるものと想像される。
【0036】
一般式(1)および(2)で表される化合物がその分子内に、一般式(1)または(2)で表される構造を複数有していてもよい。この場合、一般式(1)または(2)で表される構造の単一の種類が複数結合して分子を形成していてもよいし、複数種類であっても、あるいは一般式(1)で表される構造と一般式(2)で表される構造が混在していてもよい。一般式(1)または(2)で表される構造を互いに連結する連結基の構造に格別の制限はないが、一般式(1)または(2)の構造における芳香環部分を共役結合で連結するものが好ましい。また、一般式(1)もしくは(2)の構造を少なくとも1つは有する繰り返し単位から成るオリゴマーまたはポリマーであることも好ましく、特に好ましい構造として、一般式(1)または(2)の構造を含む繰り返し単位からなり、繰り返し単位内部および繰り返し単位間において、一般式(1)または(2)で表される構造の芳香環部分が共役結合で連結されたオリゴマーまたはポリマーを挙げることができる。オリゴマーおよびポリマーの語義は当業に従事する技術者には周知ながら、オリゴマーおよびポリマーそれぞれの分子量範囲には諸説あるが、ここではオリゴマーを分子内に有する繰り返し単位の数が10までであるもの、それより大きな分子をポリマーと称することにする。ポリマーの分子量としては100万未満、好ましくは20万未満である。
【0037】
以下に、具体的化合物例を示すが、本発明における化合物がこれらに限定されるものではない。また、一般式(1)または(2)に示した構造を有する繰り返し単位をもつポリマーについては、その重合度をnで示し、平均分子量をMとして構造式に併記した。平均分子量の測定にはゲル泳動クロマトグラフィーを用い、ポリスチレンを基準に用いた。また共重合体について併記したm:nは各々の繰り返し単位を誘導するモノマーの重合時における仕込比率を表している。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
本発明に係る有機ケイ素化合物は、いずれも当業に従事する研究者には周知の方法を用いて合成することができる。例えば例示化合物11の合成は下記の経路によって、カルバゾール誘導体とシラシクロペンタジエン誘導体の、鈴木カップリングとして知られるパラジウム触媒と塩基を用いた炭素−炭素結合形成反応によって行うことができる。その他の化合物も同様に、公知の合成反応によって合成することが可能である。
【0046】
【化10】
【0047】
本発明の有機半導体は有機薄膜トランジスタの活性層に設置することにより、良好に駆動するトランジスタ装置を提供することができる。本発明の化合物は真空蒸着により基板上に設置することもできるが、適切な溶剤に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液をキャストコート、スピンコート、印刷、インクジェット法、アブレーション法等によって基板上に設置するのが好ましい。この場合、本発明の有機半導体を溶解する溶剤は、該有機半導体を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば格別の制限はないが、具体的にはジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を挙げることができる。
【0048】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0049】
実施例1
抵抗率0.01Ω・cmのSiウェハーに厚さ200mmの熱酸化膜を形成した後、例示化合物11のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。更に、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。幅100μm、厚さ200nmのソースおよびドレイン電極は、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの有機薄膜トランジスタ素子1を形成した。
【0050】
実施例2
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し、例示化合物11を例示化合物16に代えて有機トランジスタ素子2を作製した。
【0051】
実施例3
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し例示化合物11を例示化合物18に代えて有機トランジスタ素子3を作製した。
【0052】
比較例1
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し例示化合物14に代えてポリ(3−ヘキシルチオフェン)(regioregular、アルドリッチ社製、平均分子量89000)を用いて、比較例としての有機トランジスタ素子4を作製した。
【0053】
比較例2
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し例示化合物14に代えてペンタセン(アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)を用いて、比較例としての有機トランジスタ素子5を作製した。
【0054】
以上のようにして作製した有機トランジスタ素子のそれぞれに、ソース・ドレイン電極間に−50Vの電圧を印加し、ゲート電圧を−100Vから100Vの範囲で変化させた際の、最大電流値と最小電流値の比をとって、これを各々の有機トランジスタ素子のON/OFF比として記録した。比較例である有機トランジスタ素子4の示した値を100としたときの相対値によって結果を示すと以下のとおりであった。
【0055】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いて作製した有機トランジスタ素子が、優れたON/OFF特性を示すことがわかる。また、ペンタセンを用いた有機トランジスタ素子5の結果は、塗布による薄膜形成によっては活性層として機能するペンタセン薄膜を得がたいことを示している。
【0056】
実施例4
実施例1にて測定に使用した有機トランジスタ素子1〜5を、温度40℃、湿度60%にて1週間保存した後、実施例1と同様の測定を行った。結果を実施例1と同様に、実施例1における各々の有機トランジスタ素子の結果を100とする相対値によって示すと以下のとおりであった。
【0057】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いた場合、作製した有機トランジスタ素子は保存性においても優れた特性を示し、素子としての寿命を長期化できることがわかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明により、移動度の高い新規な有機ケイ素化合物半導体を提供すること、また、該有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は有機半導体、特に簡単なプロセスで薄膜を形成することが可能な有機半導体および、該有機半導体で形成された薄膜を用いた電界効果トランジスタ(以下、有機薄膜トランジスタともいう。)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また更に情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置は、液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えばTFT素子では通常、それぞれの層の形成のために、真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関してもp型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされるなど、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるを得ず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0007】
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料の他、有機レーザー発振素子(例えば、非特許文献1参照。)や、有機薄膜トランジスタ(例えば、非特許文献2参照。)への応用が期待されている。これら有機半導体デバイスが実現できれば、比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着による製造プロセスの簡易化や、更にはその分子構造を適切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、有機半導体溶液をインク化することによりインクジェット方式を含む印刷法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能と考えられてきたが、有機半導体を用いたデバイスにはその可能性があり、従って前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にも、例えばTFT素子を形成できる可能性がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0008】
しかしながら、こうしたTFT素子を実現するための有機半導体としてこれまでに検討されてきたのは、ペンタセンやテトラセンといったアセン類(例えば、特許文献1参照。)、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物(例えば、特許文献2参照。)や、α−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー(例えば、特許文献3参照。)、更にはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など限られた種類の化合物(例えば、非特許文献3参照。)でしかなく、高いキャリア移動度を示す新規な電荷輸送性材料を用いた半導体性組成物の開発が待望されていた。
【0009】
また、これまで有機ケイ素化合物は特にそのポリマーとして有している電荷輸送性が産業的に利用されてきた。例えば電子写真感光体としての応用(例えば特許文献4、5参照。)が、また導電性ポリマーとしての応用(例えば、特許文献6参照。)が開示されているし、導電性ペーストとしての利用態様(例えば、特許文献7参照。)が、また導電性接着剤としての態様(例えば、特許文献8参照。)が示されている。これらは有機ケイ素ポリマーをそのまま用いる場合もあれば、バインダー樹脂に相溶もしくは分散させて用いる場合もあるが、いずれも有機ケイ素ポリマーの有する電荷輸送性に、必要に応じてドーピングを施すことにより導電性を付与させるなどして、所望の用途に応用してきたものである。
【0010】
しかしながら、これまで開示されてきた応用の中には有機ケイ素化合物を活性層に用いた薄膜トランジスタの例はなく、半導体的性質の応用については有機電界発光素子の電子輸送材料として用いる例が、わずかに開示されている(例えば、特許文献9参照。)程度であって、その応用研究の例は乏しいと云わざるを得ない。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−55568号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平5−190877号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平8−264805号公報
【0014】
【特許文献4】
特開平5−19497号公報
【0015】
【特許文献5】
特開平5−107792号公報
【0016】
【特許文献6】
特開平6−128488号公報
【0017】
【特許文献7】
特開平8−283624号公報
【0018】
【特許文献8】
特開2000−256641号公報
【0019】
【特許文献9】
特開2001−123157号公報
【0020】
【非特許文献1】
『サイエンス』(Science)誌289巻 599ページ(2000)
【0021】
【非特許文献2】
『ネイチャー』(Nature)誌403巻521ページ(2000)
【0022】
【非特許文献3】
『アドバンスド・マテリアル』(Advanced Material)誌2002年第2号99ページ
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、移動度の高い新規な有機ケイ素化合物半導体を提供することであり、また、該有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタを提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0025】
1.前記一般式(1)または(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機半導体。
【0026】
2.少なくとも1層の活性層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、前記1項に記載の化合物の少なくとも1種類を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0027】
3.前記一般式(1)におけるR11とR12が同時に、もしくは前記一般式(2)におけるR21とR22が同時にアルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルチオ基であることを特徴とする前記2項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0028】
4.前記一般式(1)におけるA11とA12が同時に、もしくは前記一般式(2)におけるA21とA22が同時に、フェニル基、ピリジル基、ピラジル基、トリアジル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基から独立に選ばれる芳香族基であることを特徴とする前記2または3項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0029】
5.前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、分子内に前記一般式(1)または(2)の構造を複数有していることを特徴とする前記2〜4項のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0030】
6.前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、前記一般式(2)に示された構造単位を少なくとも繰り返し単位の一部分に有しているオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする前記2〜5項のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0031】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
一般式(1)におけるR11およびR12、一般式(2)におけるR21およびR22は、それぞれ独立にアルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、m−メチルフェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルキオ基、n−ヘキシルチオ基、ベヘニルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、複素環基(ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)のいずれかより選ばれる一価の置換基を表し、中でも好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくはこれらの置換基のアルキル鎖部分が直鎖状の構造を有している場合である。R11、R12、R21、R22で表される置換基はそれぞれ独立に、更に置換されていてもよいし、互いに結合して環状構造を形成してもよい。この場合、R11、R12、R21、R22を更に修飾する置換基としては、R11、R12、R21、R22の例として先に挙げた置換基に加えて、シアノ基、アルキルカルボニル基(アセチル基、エチルカルボニル基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アリールカルボニル基(ベンゾイル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)等の一価の有機基およびハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)を挙げることができる。またR11、R12、R21、R22のそれぞれに複数の置換基が導入されていてもよく、該置換基は単一種類の複数であっても複数種類であってもよいし、また互いに結合して環状構造を形成してもよい。また一般式(2)におけるR23およびR24はアルキル基を表し、これは上記の置換基によって置換されていてもよい。
【0032】
一般式(1)におけるA11およびA12、一般式(2)におけるA21およびA22はそれぞれ独立に芳香族基を表し、その例としては以下に示す芳香族化合物の残基を挙げることができる。
【0033】
【化2】
【0034】
該芳香族基は置換基を有していてもよく、その例としては前述のR11、R12、R21、R22に結合する置換基の例として挙げたものと同様である。また複数の置換基が互いに結合して芳香環を含む環状構造を形成してもよく、従ってA11またはA12が縮合芳香族環である場合にも、本発明の範疇に含まれる。
【0035】
以上のごとく一般式(1)および(2)で表される化合物の置換基は選択されるが、但し一般式(1)で表される化合物において、ケイ素原子に4つの環状構造が結合する場合には、少なくとも1つは5員環よりも小さい環状構造でなければならない。6員環ないしそれよりも大きな環状構造が4つケイ素原子に結合した化合物において本発明の効果が得がたい理由は定かでないが、置換基同士の立体的な反発によって分子全体がかさ高くなり、分子間での電荷輸送性に好ましくない影響を与えるためではないかと推測できる。例えば4つの5員環が結合した場合において発明の効果を得ることができるのは、立体的な反発が緩和されて分子間の距離が接近し、分子間の電荷輸送が比較的良好に行えるようになるためではないかと考えられる。また一般式(2)で表される化合物において、R21とR22が同時に環状の置換基である場合に発明の効果を得ることができないのも、同様の機構によるものと想像される。
【0036】
一般式(1)および(2)で表される化合物がその分子内に、一般式(1)または(2)で表される構造を複数有していてもよい。この場合、一般式(1)または(2)で表される構造の単一の種類が複数結合して分子を形成していてもよいし、複数種類であっても、あるいは一般式(1)で表される構造と一般式(2)で表される構造が混在していてもよい。一般式(1)または(2)で表される構造を互いに連結する連結基の構造に格別の制限はないが、一般式(1)または(2)の構造における芳香環部分を共役結合で連結するものが好ましい。また、一般式(1)もしくは(2)の構造を少なくとも1つは有する繰り返し単位から成るオリゴマーまたはポリマーであることも好ましく、特に好ましい構造として、一般式(1)または(2)の構造を含む繰り返し単位からなり、繰り返し単位内部および繰り返し単位間において、一般式(1)または(2)で表される構造の芳香環部分が共役結合で連結されたオリゴマーまたはポリマーを挙げることができる。オリゴマーおよびポリマーの語義は当業に従事する技術者には周知ながら、オリゴマーおよびポリマーそれぞれの分子量範囲には諸説あるが、ここではオリゴマーを分子内に有する繰り返し単位の数が10までであるもの、それより大きな分子をポリマーと称することにする。ポリマーの分子量としては100万未満、好ましくは20万未満である。
【0037】
以下に、具体的化合物例を示すが、本発明における化合物がこれらに限定されるものではない。また、一般式(1)または(2)に示した構造を有する繰り返し単位をもつポリマーについては、その重合度をnで示し、平均分子量をMとして構造式に併記した。平均分子量の測定にはゲル泳動クロマトグラフィーを用い、ポリスチレンを基準に用いた。また共重合体について併記したm:nは各々の繰り返し単位を誘導するモノマーの重合時における仕込比率を表している。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
本発明に係る有機ケイ素化合物は、いずれも当業に従事する研究者には周知の方法を用いて合成することができる。例えば例示化合物11の合成は下記の経路によって、カルバゾール誘導体とシラシクロペンタジエン誘導体の、鈴木カップリングとして知られるパラジウム触媒と塩基を用いた炭素−炭素結合形成反応によって行うことができる。その他の化合物も同様に、公知の合成反応によって合成することが可能である。
【0046】
【化10】
【0047】
本発明の有機半導体は有機薄膜トランジスタの活性層に設置することにより、良好に駆動するトランジスタ装置を提供することができる。本発明の化合物は真空蒸着により基板上に設置することもできるが、適切な溶剤に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液をキャストコート、スピンコート、印刷、インクジェット法、アブレーション法等によって基板上に設置するのが好ましい。この場合、本発明の有機半導体を溶解する溶剤は、該有機半導体を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば格別の制限はないが、具体的にはジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を挙げることができる。
【0048】
【実施例】
以下実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0049】
実施例1
抵抗率0.01Ω・cmのSiウェハーに厚さ200mmの熱酸化膜を形成した後、例示化合物11のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(厚さ50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。更に、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソースおよびドレイン電極を形成した。幅100μm、厚さ200nmのソースおよびドレイン電極は、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの有機薄膜トランジスタ素子1を形成した。
【0050】
実施例2
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し、例示化合物11を例示化合物16に代えて有機トランジスタ素子2を作製した。
【0051】
実施例3
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し例示化合物11を例示化合物18に代えて有機トランジスタ素子3を作製した。
【0052】
比較例1
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し例示化合物14に代えてポリ(3−ヘキシルチオフェン)(regioregular、アルドリッチ社製、平均分子量89000)を用いて、比較例としての有機トランジスタ素子4を作製した。
【0053】
比較例2
有機トランジスタ素子1と同様の方法で、但し例示化合物14に代えてペンタセン(アルドリッチ社製市販試薬を昇華精製して用いた)を用いて、比較例としての有機トランジスタ素子5を作製した。
【0054】
以上のようにして作製した有機トランジスタ素子のそれぞれに、ソース・ドレイン電極間に−50Vの電圧を印加し、ゲート電圧を−100Vから100Vの範囲で変化させた際の、最大電流値と最小電流値の比をとって、これを各々の有機トランジスタ素子のON/OFF比として記録した。比較例である有機トランジスタ素子4の示した値を100としたときの相対値によって結果を示すと以下のとおりであった。
【0055】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いて作製した有機トランジスタ素子が、優れたON/OFF特性を示すことがわかる。また、ペンタセンを用いた有機トランジスタ素子5の結果は、塗布による薄膜形成によっては活性層として機能するペンタセン薄膜を得がたいことを示している。
【0056】
実施例4
実施例1にて測定に使用した有機トランジスタ素子1〜5を、温度40℃、湿度60%にて1週間保存した後、実施例1と同様の測定を行った。結果を実施例1と同様に、実施例1における各々の有機トランジスタ素子の結果を100とする相対値によって示すと以下のとおりであった。
【0057】
この結果より、本発明の半導体性材料を活性層に用いた場合、作製した有機トランジスタ素子は保存性においても優れた特性を示し、素子としての寿命を長期化できることがわかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明により、移動度の高い新規な有機ケイ素化合物半導体を提供すること、また、該有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタを提供することができる。
Claims (6)
- 少なくとも1層の活性層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、請求項1に記載の化合物の少なくとも1種類を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
- 前記一般式(1)におけるR11とR12が同時に、もしくは前記一般式(2)におけるR21とR22が同時にアルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルチオ基であることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記一般式(1)におけるA11とA12が同時に、もしくは前記一般式(2)におけるA21とA22が同時に、フェニル基、ピリジル基、ピラジル基、トリアジル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基から独立に選ばれる芳香族基であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、分子内に前記一般式(1)または(2)の構造を複数有していることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
- 前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、前記一般式(2)に示された構造単位を少なくとも繰り返し単位の一部分に有しているオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
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JP2006114701A (ja) * | 2004-10-14 | 2006-04-27 | Hiroshima Univ | 有機半導体材料およびこれを用いた電子デバイス |
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2003
- 2003-03-12 JP JP2003066284A patent/JP2004273981A/ja active Pending
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