JP2007116115A - 有機半導体材料及び有機電界効果トランジスタ - Google Patents

有機半導体材料及び有機電界効果トランジスタ Download PDF

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Abstract

【課題】塗布プロセスが可能で、高次の規則性及び結晶性を有し、且つ、安定性も良好な有機半導体材料を提供する。
【解決手段】5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合してなり、且つ、下記式(1)で表わされる部分構造を有し、移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上であり、固体状態でのイオン化ポテンシャルが、4.8eV以上、5.6eV以下である化合物を用いる。
Figure 2007116115

式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R1及び
2の少なくとも一方は、置換されていても良い芳香族基である。
【選択図】なし

Description

本発明は、オリゴチオフェン骨格を有する有機半導体材料と、該有機半導体材料を用いて形成された有機電界効果トランジスタに関する。
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下適宜「TFT」という。)は、エレクトロニクスにおけるスイッチ素子として広く使用されており、とりわけアクティブ・マトリックス型液晶表示装置やスマート・カードなど、広範囲にわたる適用分野で使用されている。薄膜トランジスタ(TFT)の殆どは、電界効果トランジスタ(field−effect transistor:以下適宜「FET」という。)である。
現在、殆どのTFTデバイスは、半導体材料としてアモルファスシリコンを使用して作製されている。しかしながら、アモルファスシリコンTFTの製造にはプラズマ強化化学気相成長法などの高コストの装置が必要であり、そのプロセスも真空中、高温(約360℃)で行なわねばならず、高コストであるのに加え、フレキシブルプラスチック基板を用いることが難しい。
一方、TFTの半導体材料として、有機半導体材料が注目されている。有機半導体材料の例は、特許文献1に記載されている。有機半導体材料(小さい分子、短鎖オリゴマー及びポリマー)は、容易なプロセスでの成膜が可能であるため、アモルファスシリコンに代わる低コストTFTを提供すると期待されている。特に、溶媒に可溶な有機半導体材料を用いれば、スピン・コーティング(spin−coating)やディップ・コーティング(dip−coating)、マイクロコンタクト・プリンティング(microcontact printing)等の安価なプロセスによって、広い面積の素子を作製することができる。さらに、有機半導体材料は低温で付着させることができ、プラスチックも含めた基板材料の範囲がより広げられる為、フレキシブルな電子デバイス用の実現に利用できると期待されている。
現在までに、短鎖でオリゴマー性の何種類かの有機半導体材料が合成され(例えばα−sezithiophene:α−6T)、その移動度は0.1〜0.6cm2/Vsで、アモルファスシリコンに近いことが実証されている。しかしながら、これらの有機半導体材料の殆どは有機溶媒に難溶なので、真空蒸着法でしかそのような比較的高い移動度を実現することができなかった。
有機溶媒への溶解性を高めるべく、上記のオリゴマー性の有機半導体材料に対して、アルキル基などの導入が試みられている。例えば、特許文献2や非特許文献1には、α位がアルキル置換されたオリゴチオフェンが報告されている。しかしながら、このアルキル置換オリゴチオフェンを有機溶媒に溶解させても、十分な溶解性が得られておらず、安定な塗布成膜が難しいのが実情である。
また、溶解性向上の観点からは、移動度が0.001〜0.01cm2/Vsである何種類かの可溶性の高分子半導体材料(例えばポリアルキルチオフェン)が報告されている。しかしながら、このような高分子半導体材料は、高分子であるために精製が難しく、高純度の材料を得るのに非常に手間がかかる。また、移動度を上げる為には結晶性を上げる工夫が必要であり、安定して高い特性を得るのが難しい。さらに、これらの材料は酸化されやすいために通常オン・オフ比が小さく、不活性ガスの雰囲気中で塗布しなければならず、半導体の効果を示すために、塩基で充分に処理して重合中に導入される意図しないドーパントを減少させなければならない。
また、近年ではポリアルキルチオフェンのオン・オフ比を向上させるべく、イオン化ポテンシャルを上げるように分子設計された半導体材料が登場したが(例えば特許文献3)、ポリマー材料であるため半導体特性のバラつきが多く、不純物の除去も不十分である。
Journal of Materials Chemistry、2000年、pp.571−588 米国特許第5347144号明細書 特開平4−133351号公報 特開2003−268083号公報
以上の背景から、塗布プロセスが可能で、高次の規則性及び結晶性を維持でき、且つ、安定性にも優れた有機半導体材料が求められていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、塗布プロセスが可能で、高次の規則性及び結晶性を有し、且つ、安定性も良好な有機半導体材料を提供すること、及び、それを用いることにより、移動度等の電気特性に優れ、且つ、耐酸化性等の安定性にも優れた有機電界効果トランジスタを提供することである。
本発明者らは、これまでの材料開発の課題に鑑み鋭意検討した結果、高純度に精製可能な低分子オリゴマーであって、且つ、イオン化ポテンシャルを上げられる構造として、置換基に芳香族基を導入して溶解性を向上させたオリゴチオフェンが有望であることを見出した。従来は、嵩高く非平面構造をとりやすい芳香族基をオリゴチオフェンに置換基として導入することは、分子の平面性を乱し、半導体特性を低下させると見なされてきたが、本発明者らは、置換基の導入位置を調製することで、塗布プロセスが可能で、高次の規則性及び結晶性を維持でき、且つ、安定性の良好な低分子オリゴチオフェン半導体材料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合してなり、且つ、下記式(1)で表わされる部分構造を有し、移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上であり、固体状態でのイオン化ポテンシャルが、4.8eV以上、5.6eV以下であることを特徴とする、有機半導体材料に存する(請求項1)。
Figure 2007116115
(式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R1及び
2の少なくとも一方は、置換されていても良い芳香族基である。)
また、該有機半導体材料は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチル、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メチルエチルケトン、安息香酸エステル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテルの少なくともいずれか1つに対する30℃での溶解度が、0.1重量%以上であることが好ましい(請求項2)。
また、該有機半導体材料は、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量が、5%以上であることが好ましい(請求項3)。
ここで、下記式(2)の部分構造を有することが好ましい(請求項4)。
Figure 2007116115
(式中、R3〜R6は各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R3〜R6のうち少なくとも一つは、置換されても良い芳香族基である。)
また、該有機半導体材料は、オリゴチオフェンであることが好ましい(請求項5)。
また、本発明の別の要旨は、少なくとも、基板と、該基板上に設けられた絶縁体部と、該絶縁体部により互いに隔離されるように設けられたゲート電極及び半導体部と、該半導体部に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え、該半導体部が、少なくとも、請求項1〜5の何れか一項に記載の有機半導体材料を含有してなることを特徴とする、有機電界効果トランジスタに存する(請求項6)。
ここで、該半導体部が、塗布プロセスで作製されてなることが好ましい(請求項7)。
本発明の有機半導体材料は、塗布プロセスが可能で、高次の規則性及び結晶性を有し、且つ、安定性も良好である。また、それを半導体部に含有する本発明の有機電界効果トランジスタは、移動度等の電気特性に優れ、且つ、耐酸化性、電気特性等の安定性にも優れている。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
[I.有機半導体材料]
〔I−1.有機半導体材料の構造〕
本発明の有機半導体材料は、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合してなり、且つ、下記式(1)で表わされる部分構造を有する化合物である。
Figure 2007116115
本発明の有機半導体材料において、結合している5員環及び/又は6員環の芳香環の数は、通常6以上、好ましくは8以上であり、また、通常20以下、好ましくは15以下である。芳香環が、少なすぎるとπ共役電子が拡がらず、本発明の有機半導体材料の半導体特性が悪くなる可能性があり、多すぎると合成面の負担が大きくなる可能性がある。
式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R1及びR2の少なくとも一方は、置換されていても良い芳香族基である。なお、本明細書において、芳香族基とは、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基を表す。
1及びR2のうち一方は芳香族基であることが必要であるが、芳香族基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基等の置換されても良い芳香族炭化水素;ピリジル基、ピラゾリル基、キノリル基、イミダゾリル基、ベンズチアゾリル基等の置換されても良い芳香族複素環などが挙げられる。その中でも好ましいのは芳香族炭化水素基であり、特に好ましいのはフェニル基及びナフチル基である。芳香族基の置換基としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、炭素数12以下のアルキル基、アルケン基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルチオ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。これらの置換基は複数置換されていても良い。その中でも好ましいのは、アルキル基である。なお、置換基の数は、1でも良く、2以上でもよい。さらに、置換基は、1種が置換していたもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していても良い。
1及びR2のうち、少なくとも一方は芳香族基であるが、もう一方は芳香族基で無いものが好ましい。両方とも芳香族基であると、立体障害の為に両方の芳香族基ともほぼ垂直に立ってしまうために、分子全体のπ共役性が減じられてしまうためである。
本発明の有機半導体材料が有する上記式(1)の部分構造の数は、一つ以上であれば特に制限されないが、好ましくは2個以上、さらに好ましくは4以上である。上記式(1)の部分構造の数が少な過ぎるとπ共役が拡がらず、半導体特性が低下する傾向がある。
本発明の有機半導体材料では、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量が、5%以上であることが好ましい。さらに好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。ここで、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分とは、水素以外の置換基は除く芳香族環が連結した部分である。又、R1及びR2の芳香族部分とは、R1及びR2のうち水素以外の置換基を除く芳香族環部分である。
本発明の有機半導体材料が上記式(1)の部分構造以外に有する部分構造の好ましい例としては、以下の式(I)〜(VII)で表わされる構造が挙げられる。但し、これらはあくまでも例示であり、本発明の有機半導体材料が上記式(1)の部分構造以外に有する部分構造は、以下の式(I)〜(VII)の構造に限定されるわけではない。
Figure 2007116115
Figure 2007116115
Figure 2007116115
(式(III)中のnは、0以上6以下の整数を表わす。)
Figure 2007116115
Figure 2007116115
Figure 2007116115
Figure 2007116115
上記式(I)〜(VII)において、各符号の定義はそれぞれ以下の通りである。
7、R8、R10〜R46は、各々独立に、
H、
F、
CH3−、
CH3(CH2n−(nは1以上23以下の整数を表わす。)、
CH3(CH2n(CF2m−(n及びmは各々独立に、1以上23以下の整数を表わす
。)、
CF3−、
CF3(CF2n−(nは1以上23以下の整数を表わす。)、
CF3(CH2n(CF2m−(n及びmは各々独立に、1以上23以下の整数を表わす
。)、
ニトロ基、
アミノ基、
シアノ基、
カルボキシル基、
スルホン酸基、
水酸基、又は
アルコキシ基を表わす。
1〜A10は、各々独立に、炭素原子又は窒素原子を表わす。
1〜Q5は、各々独立に、−CR4748−、−NR49−、−N−、−S−、−SiR5051−、又は−Se−を表わす(R47〜R51は、各々独立に、水素原子、炭素数1以上23以下の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、又はそのアルキル基が1又は2以上のフッ素原子で置換されたフッ素置換アルキル基を表わす。)。
1は、窒素原子又は
Figure 2007116115
を表わす。
式(I)〜(VII)で表わされる構造の中で、好ましくは式(I)、式(III)、式(VI)であり、特に好ましいのは式(I)で表される構造である。さらに、式(I)で表わされる構造の中でも、Q1が硫黄原子、R7及びR8が水素原子である構造が特に好ましい。
また、本発明の有機半導体材料はオリゴチオフェンであることが好ましい。本発明の有機半導体材料がオリゴチオフェンである場合、各チオフェン環の硫黄原子の相互作用により、分子間の距離が密になり、結晶化が促進され、結果として半導体特性が向上するという利点を得ることができる。
中でも、本発明の有機半導体材料は、下記式(2)で表わされる部分構造を有することが好ましい。
Figure 2007116115
(式(2)中、R3〜R6は各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R3〜R6のうち少なくとも一つは、置換されても良い芳香族基である。)
3〜R6の好ましい例としては、先に挙げた式(1)のR1及びR2と同様である。
本発明の有機半導体材料が上記式(2)の部分構造を有する場合、その数は一つ以上であれば特に制限されないが、好ましくは2個以上である。上記式(2)の部分構造の数が少な過ぎるとπ共役が拡がらず、半導体特性が低下する傾向がある。
また、本発明の有機半導体材料が上記式(2)の部分構造を有する場合、その他に有する部分構造の好ましい例としては、先に挙げた式(I)〜(VII)の部分構造が挙げられる。中でも、特に好ましいのは式(I)で表される構造である。さらに、式(I)で表わされる構造の中でも、Q1が硫黄原子、R7及びR8が水素原子である構造が特に好ましい。
中でも、チオフェンオリゴマー分子の平面性を維持する観点から、本発明の有機半導体材料は、下記式(3)で表わされる部分構造を有することが特に好ましい。
Figure 2007116115
式(3)中、R47及びR48は各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R47及びR48の少なくとも一方は、置換されても良い芳香族基である。R47及びR48の好ましい例としては、先に挙げた式(1)のR1及びR2と同様である。
また、式(3)中、nは2〜5の整数を表わす。芳香族基が多すぎると、π共役系部分の平面性の低下が著しく、半導体特性の低下を引き起こすからである。
有機半導体材料が高いキャリア移動度を有するためには、固体状態で隣り合う分子間が良好に重なりあうことが望ましい。これは、キャリア、すなわち電子或いは正孔が分子間を伝達して行く際に、π電子軌道間の相互作用が重要であるためである。有機半導体において、π電子が電荷輸送に重要な役割を果たすことは良く知られている。しかし、π電子がマクロなスケールまで共役して半導体特性を示す例は殆ど知られていない。
特に、分子性結晶ではπ電子の共役は分子内に限られており、電荷の輸送は分子間を電荷が移動することによりなされる。その場合、分子内で共役しているπ軌道の重なりが大きいほど、その電荷移動の効率が高くなる。それゆえ、分子性結晶の移動度は一般に方向依存性が生ずる。それ故、一般には非晶質の材料よりも結晶性の高い材料の方が高い移動度を示す。
分子間のπ軌道の重なりを大きくする為には、分子のπ共役系の平面性が高いことが望ましく、これまで既存のチオフェンオリゴマーはそのπ共役平面性を阻害しないアルキル基等の導入が主に検討されてきた。これに対し、本発明では、置換基に嵩高いアリール基を導入しても、導入の位置をコントロールすることで、それほど平面性を犠牲にすることなくアルキル基以上の有機溶媒に対する溶解性を付与できることを見出した。また、置換基に嵩高い芳香族基を導入することで、部分的に平面性からのずれを導入してπ共役性を減じ、その結果イオン化ポテンシャルを大きくすることに成功し、分子の酸化を抑制することが可能となったため、オン・オフ比を向上させることができるようになった。
なお、本発明の有機半導体材料は、上述の様に5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合してなるが、その末端に存在する基(以下適宜「末端基」という。)は、半導体特性に悪影響を与えない基であれば特に制限されない。好ましい末端基の例としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、炭素数16以下のアルキル基、アルケン基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルチオ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。中でも好ましいのは、フッ素原子、炭素数16以下のアルキル基である。
本発明の有機半導体材料の好ましい具体例としては、以下に挙げる化学式で表わされる化合物が挙げられる。但し、本発明の有機半導体材料は、以下の化合物に制限されるものではない。なお、以下の化学式中、「Hex」はヘキシル基を表わし、「Ar」は芳香族基を表わす。
Figure 2007116115
Figure 2007116115
Figure 2007116115
Figure 2007116115
Figure 2007116115
Figure 2007116115
〔I−2.有機半導体材料の合成方法〕
本発明の有機半導体材料を合成する方法は特に限定されず、公知の各種の方法を用いて合成すればよい。以下に代表的な合成方法の例を説明するが、本発明の有機半導体材料の合成方法は以下の例に制限されるものではない。
この合成方法では、以下の第1〜第3のステップにより、本発明の有機半導体材料を比較的容易に合成することができる。うち第1及び第2のステップは、本発明の有機半導体材料の構造によらず共通である。なお、下記の各反応式において、「Ar」は芳香族基を表わし、「Phe」はフェニル基又はフェニレン基を表わし、「Ac」はアセチル基を表わす。
・第1のステップ:
第1のステップは、曽根他、Bulletin of the Chemical Society of Japan、1970年、pp.1411に記載されている塩化アルミニウムを用いたFriedel−Craft反応によって、2,5−ジクロロチオフェンの2位のクロロ基を脱離させると同時に、3位に芳香族基を導入することにより、3−アリール−5−クロロチオフェンを得るステップである(下記反応式1)。
Figure 2007116115
上記反応において、2,5−ジクロロチオフェンに対して芳香族化合物(上記反応式中のAr−Hで表わされる化合物)、塩化アルミニウムはそれぞれ等量ずつ用いることが好ましいが、芳香族化合物及び塩化アルミニウムは反応系に過剰量存在していて問題はない。反応に使用する溶媒としては、2,5−ジクロロチオフェン及び芳香族化合物が溶解するものであれば特に制限されないが、テトラヒドロフラン(THF)等が好ましい。反応時間は特に制限されないが、通常1時間以上、中でも4時間以上、通常100時間以下、中でも24時間以下の範囲が好ましい。反応温度も特に制限されないが、通常は常温以上、好ましくは40℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは100℃以下の範囲である。反応圧力も特に制限されないが、通常は常圧で行なわれる。
・第2のステップ:
第2のステップは、上記第1のステップで合成された3−アリール−5−クロロチオフェンの2位をヨウ素化した後、これを金属マグネシウムと反応させてグリニャール化合物を調製し、このグリニャール試薬と臭素、塩素等のハロゲン化芳香族化合物とを、パラジウム触媒(例えばPd(dppf)Cl2等)の作用によりクロスカップリング反応させ
て、クロロ基を消失することなく芳香族基置換チオフェン誘導体を得るステップである。以下に、ハロゲン化芳香族化合物として2−ブロモビチオフェンを用い、これを3−アリール−5−クロロチオフェンと反応させた例を挙げる(下記反応式2)。
Figure 2007116115
上記反応において、3−アリール−5−クロロチオフェンに対し、ヨウ素、金属マグネシウム及び2−ブロモビチオフェンはそれぞれ等量ずつ使用することが好ましく、また、パラジウム触媒は0.01等量使用することが好ましい。但し、2−ブロモビチオフェン及びパラジウム触媒は反応系に過剰量存在していて問題はない。反応に使用する溶媒としては、3−アリール−5−クロロチオフェン及び2−ブロモビチオフェンが溶解するものであれば特に制限されないが、中でもTHFやジエチルエーテル等が好ましい。反応時間は特に制限されないが、通常1時間以上、中でも4時間以上、通常100時間以下、中でも24時間以下の範囲が好ましい。反応温度も特に制限されないが、通常は常温以上、好ましくは40℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは100℃以下の範囲である。反応圧力も特に制限されないが、通常は常圧である。
・第3のステップ:
第3のステップは、上記第2のステップで得られた、末端にクロロ基を有する芳香族基置換チオフェン誘導体のクロロ基を、n−ブチルリチウム等でモノメタレーション(モノリチウム化)した後、リチウム化した芳香族基置換チオフェンをGarnier et al.、 Journal of the American Chemical Society、1993年、Vol.115、pp.8716記載の方法により、様々な酸化剤、とりわけ塩化銅によって酸化カップリングすることで、6量体以上の芳香族基置換チオフェンオリゴマーである本発明の有機半導体材料を得るステップである。
上記反応に使用する溶媒は、末端にクロロ基を有する芳香族基置換チオフェン誘導体するものであれば特に制限されないが、中でもTHFやジエチルエーテル等が好ましい。反応時間は特に制限されないが、モノメタレーション(モノリチウム化)は通常1時間以上、中でも4時間以上、また、通常100時間以下、中でも24時間以下の範囲が好ましく、酸化カップリング反応は通常1時間以上、中でも4時間以上、通常100時間以下、中でも24時間以下の範囲が好ましい。反応温度も特に制限されないが、モノメタレーション(モノリチウム化)は通常−40℃以上、好ましくは−30℃以上、また、通常0℃以下、好ましくは−5℃以下の温度で行うことが好ましく、酸化カップリング反応は通常25℃以上、好ましくは40℃以上で行なうことが好ましい。反応圧力も特に制限されないが、通常は常圧以上である。
〔I−3.有機半導体材料の物性等〕
本発明の有機半導体材料は、移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上であることを特徴とする。また、この移動度は、好ましくは5.0×10-3cm2/Vs以上、さらに好ましくは1.0×10-2cm2/Vs以上である。移動度が小さいと半導体として性能が悪く、電界効果トランジスタ等の応用に対し、駆動電圧の上昇を招く可能性がある。移動度の上限は特に限定はないが、通常10cm2/Vs以下である。また、移動度は、大気下、25℃において、電流−電圧測定といった方法により求めることができる。
なお、本発明の有機半導体材料の構造は、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:以下「NMR」と略す。)スペクトル、赤外(infrared:以下「IR」と略す。)スペクトル、元素分析法、質量分析法(mass spectroscopy:以下「MS」と略す。)等の方法
で分析し、同定することが可能である。
また、本発明の有機半導体材料の分子量は、通常248以上、好ましくは330以上、また、通常2万以下、好ましくは1万以下の範囲である。分子量が小さすぎるとπ共役が拡がらず、半導体特性が低下する傾向があり、分子量が大き過ぎるとπ共役構造を形成しづらくなる傾向がある。なお、本発明の有機半導体材料の分子量は、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:以下「MALDI−TOF−MS」と略す。)等の質量分析法により測定することができる。具体的には、例えば、Macromolecules、2001年、Vol.34、No. 21、pp.7570-7572に記載の方法に従って、MALDI−TOF−MS法により測定することができる。
有機半導体材料の安定性を示す目安として、一般的にイオン化ポテンシャル(Ip)が挙げられる。チオフェン材料の代表的なものとして、低分子ではα−ヘキサチオフェン(α−6T)、高分子ではレジオレギュラーポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5ジイル)(P3HT)があるが、これらのチオフェン材料のイオン化ポテンシャル(Ip)は通常4.7eV程度であり、酸化されやすい傾向がある。
これに対して、本発明の有機半導体材料は、芳香族基を選択的に部分導入しているためイオン化ポテンシャルが大きくなっている。本発明の有機半導体材料のイオン化ポテンシャル(Ip)は、通常4.8eV以上、好ましくは4.9eV以上、また、通常5.6eV以下、好ましくは5.5eV以下、さらに好ましくは5.4eV以下の範囲である。イオン化ポテンシャルが小さいと有機半導体が酸化されて導電性が高まり、オン・オフ比が高くなる傾向があり、イオン化ポテンシャルが大きいと電極からの電荷注入が悪くなる傾向がある。
なお、イオン化ポテンシャルの測定法としては、試料を固体状態で光電子分光法により測定するものが好ましい。簡便に測定できる装置の例としては、理研計器社製のAC−1型(或いはその後継機)の光電子分光装置等が挙げられる。
〔I−4.有機半導体材料の用途〕
本発明の有機半導体材料は、塗布プロセス可能で高い半導体特性を示すものであり、薄膜中で電荷を輸送して動作する電子デバイスに利用できる。そのような電子デバイスとしては、電界効果トランジスタ、電界発光(electroluminescence:以下適宜「EL」と略す。)素子、太陽電池、光導電体(感光体)等が挙げられるが、電界効果トランジスタに応用するのが最も好ましい。
有機半導体材料を有機電界効果トランジスタ等の有機電子デバイスに応用するために必要なキャリア移動度は、制御する電流の大きさやスイッチング速度、素子の構造から決められるものである。本発明の有機半導体材料を使用することで、キャリア移動度として、通常は1×10-3cm2/Vs以上の有機デバイスを提供することができる。これまでの分子結晶の有機半導体材料の移動度は、ペンタセン等の芳香族縮合炭化水素の単結晶で、通常1cm2/Vs以下程度の値である。チオフェンオリゴマー分子はπ軌道が大きく広がっているため分子間相互作用が大きくなる可能性があり、移動度が10cm2/Vs程度、更には100cm2/Vs程度までも達成できると考えられる。
有機電子デバイスが高い移動度を示す為のもう一つの条件として、半導体部を構成する半導体材料の純度が挙げられる。キャリアをトラップする不純物は、微量でも大きな移動度の低下を引き起こす可能性がある。このようなトラップになりやすい不純物は、キャリアを受け入れる準位が半導体のエネルギーギャップ中にあるものである。具体的に、キャリアが正孔である場合には、半導体よりも高い最高被占分子軌道(highest occupied molecular orbital:以下適宜「HOMO」と略す。)準位を有するもの、キャリアが電子である場合には、半導体よりも低い最低空分子軌道(lowest unoccupied molecular orbital:以下適宜「LUMO」と略す。)準位を有するものが、そのようなトラップになりやすい不純物に該当する。
また、上記のエネルギー準位を与えない不純物も、濃度が高くなると半導体の結晶構造に欠陥をもたらすために、移動度の低下を引き起こす。このため、不純物の濃度は低いことが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは1%以下である。後述する、溶解性の高い前駆体(本発明の有機半導体材料)を用いた半導体層の製造方法によれば、高純度の有機半導体材料からなる半導体層(半導体部)が形成できる利点がある。
本発明の有機半導体材料では、通常は正孔がキャリアとなるが、芳香族基における置換基の選択により電子輸送性を示し、電子をキャリアとすることも可能である。
電界効果トランジスタのように電極からの電荷の注入がスムーズに起こる必要のある場合には、キャリアのエネルギー準位には好ましい位置が存在する。正孔の場合は、HOMO準位が低すぎると電荷注入の障壁が大きくなり好ましくない。但し、HOMO準位があまりに高いと、空気による酸化を受けやすく不安定になりやすい。従って、HOMO準位に対応する固体状態でのイオン化ポテンシャルは、通常5.6eV以下、好ましくは5.5eV以下、中でも5.4eV以下、また、通常4.8eV以上、中でも4.9eV以上の範囲が好ましい。
本発明の有機半導体材料としては、室温(例えば20℃以上、30℃以下程度)で固体状態のものが、有機電子デバイスへの応用に都合がよく好ましい。なお、式(1)又は式(2)中の置換基によっては、液晶性を示す化合物が得られるが、液晶性状態でも有機半導体として用いることができる。特に、本発明の有機半導体材料は主軸の平面性の良好な構造をしているため、スメクチック液晶が得られることが期待されるが、そのような構造はキャリアの輸送に都合がよい。本発明の有機半導体材料が室温で固体状態を取る場合、これを用いた有機電子デバイスが動作する温度範囲で大きな特性の変化を生じるのは好ましくないので、融点や凝固点等の相転移温度が5℃〜40℃の範囲ではないことが好ましい。また、本発明の有機半導体材料が室温で固体状態を取る場合、融点又はガラス転移温度が通常50℃以上、中でも100℃以上であることが好ましい。
本発明の有機半導体材料は、通常、従来の有機半導体材料が溶解しにくかった溶媒に対して高い溶解性を示す。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチル、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メチルエチルケトン、安息香酸エステル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテルの少なくともいずれか1つに対する30℃での溶解度が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。一方、上限は特に限定はないが、通常20重量%以下である。溶解度が低すぎると、塗布プロセスを利用できなくなり、成膜困難となる可能性がある。
また、本発明の有機半導体材料を何らかの有機溶媒に溶解させた場合、得られる溶液の、表面張力は通常10mN/m以上、60mN/m以下、粘度は通常1mPa・s以上、50mPa・s以下、沸点は通常50℃以上、250℃以下であることが好ましい。これは、上記の塗布プロセスにおいて使用する場合に重要である。なお、前記の表面張力は、温度25℃、湿度60%、溶液濃度0.3重量%における測定値である。また、粘度は、温度25℃、湿度60%、溶液濃度0.3重量%における測定値である。さらに、沸点は、溶液濃度0.3重量%の溶媒を大気圧下で測定した測定値である。
[II.有機電界効果トランジスタ]
次に、本発明の有機半導体材料を用いた有機電界効果トランジスタ(以下「本発明の電界効果トランジスタ」或いは「本発明のFET」と略する場合がある。)について説明する。
〔II−1.有機電界効果トランジスタの構成及び作製方法〕
本発明のFETは、少なくとも、基板と、基板上に設けられた絶縁体部と、絶縁体部により互いに隔離されるように設けられたゲート電極及び半導体部と、半導体部に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを備える。そして、半導体部が少なくとも、本発明の有機半導体材料を含有することを特徴とする。
図1〜3は何れも、本発明のFETの構成例を模式的に示す断面図である。本発明のFETの基本的な構造は、例えば図1〜3に示すように、支持基板(基板)1上に、絶縁体層(絶縁体部)3と、この絶縁体層3により互いに隔離されたゲート電極2及び半導体層(電荷輸送性層、半導体部)4と、この半導体層4に接するように設けられたソース電極5及びドレイン電極6とを有するものである。また、各電極(ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6)には、必要に応じて各種の配線が接続される。なお、本発明のFETは何ら図1〜3に示す構造のFETに限定されるものではない。例えば、図1〜3に示される順序以外の順序で各層が積層されていてもよく、また、図1〜3に示される層以外の層が形成されていても良い。
支持基板1の材料は、本発明のFET及びその上に作製される表示素子、表示パネル等を支持できるものであれば、その種類は特に制限されない。例としては、ガラス等の無機基板やポリマーからなるプラスチック基板が挙げられる。中でも好ましくは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、アモルファスポリオレフィン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ビニル系ポリマー、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びシロキサンよりなる群から選択されるプラスチック基板が好適である。更に、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル類やポリカーボネート等の汎用樹脂が強度やコストの点から好ましく、また、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸等の縮合系高分子や、熱処理などにより不溶化が行なえるポリビニルフェノール等の架橋体が耐熱性や耐溶剤性の点から好ましい。支持基板の構成材料としては、特に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが好ましく、最も好ましいのはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル及びポリイミドである。
絶縁体層3の材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリベンゾキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、窒化珪素等の窒化膜、SrTiO3、BaTiO3等の強誘電性酸化物膜、或いは、上記酸化物や窒化物、強誘電性酸化物等の粒子を分散させたポリマー膜等が挙げられる。これらの材料のうち、後述の半導体層4に用いられる本発明の有機半導体材料との相性が良いのは、ポリマー系の材料である。絶縁体層3の材料としてポリマー系の材料を使用する場合、ガラス転移点(Tg)が80℃以上であることが好ましい。Tgが80℃より低いと、流動性が高く、膜厚不均一化や表面状態凹凸化等が発生し、絶縁体層3を維持できない可能性がある。また、支持基板1を溶解しない溶媒に可溶で、且つ、後述するように塗布法により半導体層4を作製する際に、溶剤に侵食されない耐溶剤性を有することが望ましい。
絶縁体層3は、例えば、塗布(スピンコーティングやブレードコーティング)、蒸着、スパッタ、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法、アルミニウム上のアルマイトの様に金属上に酸化膜を形成する方法等、材料特性に合わせた方法で作製することが出来る。特に、絶縁体層3の材料としてポリマー系の材料を使用する場合、塗布法又は塗布に類似の技術により絶縁体層3を形成することが好ましい。
塗布法は、成膜対象の材料を適切な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、これを塗布して溶媒を除去することにより成膜を行なう手法である。塗布液の作製に用いる溶媒としては、成膜対象の材料を好適に溶解又は分散させることが出来、且つ、成膜対象となる材料に悪影響を及ぼさないものであれば、その種類は特に制限されない。通常はハロゲン系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、芳香族化合物等が用いられるが、アルコール系溶媒等も使用可能である。なお、これらの溶媒は何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。塗布の方法としては、塗布液を垂らして乾燥させるだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップ・コーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクト・プリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、更にはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。
また、塗布に類似の技術としては、水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュア・ブロジェット法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入したりする方法等が挙げられる。
塗布法及び架橋反応によって形成される絶縁体層3は、ゲート電極2への漏れ電流や、FETの低ゲート電圧駆動に関係することから、室温での電気伝導度が10-12S/cm以下、更には10-14S/cm以下の値を示すことが好ましく、また、比誘電率が2.0以上、更には2.5以上の値を示すことが好ましい。このような絶縁体層3を得るために、絶縁体層の厚みの上限は通常4μm以下、中でも2μm以下が好ましい。一方、絶縁体層3の厚みの下限は通常0.1μm以上、中でも0.2μm以上が好ましい。一般に、絶縁体層3の静電容量が大きくなるほど、低いゲート電圧でFETを駆動できることになるので有利になる。これを実現するには、例えば、絶縁体層3の材料として誘電率の大きな材料を用いるか、絶縁体層3の厚さを薄くすればよい。
半導体層4は、本発明の有機半導体材料を含有する層である。本発明の有機半導体材料は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、一種又は二種以上の本発明の有機半導体材料と、一種又は二種以上の他の半導体材料とを併用しても良い。更には、必要に応じて各種添加剤等を併用しても良い。
半導体層4は通常、支持基板1又は絶縁体層3等の上に、本発明の有機半導体材料(並びに、必要に応じて用いられるその他の半導体材料や添加剤等)を成膜することにより形成される。成膜の手法は特に制限されないが、通常は、塗布プロセス、即ち、塗布法又は塗布に類似の技術により行なう。塗布法の詳細、及び、塗布に類似の技術の例は、絶縁体層3について上述した通りである。但し、絶縁体層3の上に半導体層4を形成する場合には、塗布液の溶媒として絶縁体層3を溶解しない溶媒を選択する必要がある。なお、複数の半導体材料を併用する場合には、これらを混合して単一の層として成膜しても良いが、これらを個別に成膜し、複数の層からなる積層構造として形成することも可能である。
半導体層4の膜厚は特に制限されない。有機FETの場合、半導体層4が必要な膜厚以上であれば、その特性は半導体層4の膜厚には依存しない。但し、半導体層4が厚くなると、漏れ電流が増加してくることが多い。従って、好ましい膜厚は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上である。また、通常10μm以下、中でも500nm以下が望ましい。
半導体層4は、後処理により特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、成膜時に生じた膜中の歪みを緩和することができ、特性の向上や安定化を図ることができる。更に、酸素や水素等の酸化性或いは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化或いは還元による特性変化を誘起することもできる。これは例えば膜中のキャリア密度の増加或いは減少の目的で利用することができる。
各電極(ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6)や配線の材料としては、金、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性の酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、等の導電性高分子及びそれに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウムカリウム等の金属原子等のドーピングされた材料、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、等の半導体及びそのドーピングされた材料、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料や金属粒子を分散した導電性の複合材料等の、導電性を有する材料が用いられる。
各電極(ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6)や配線を形成する方法は特に制限されず、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等の公知の方法を用いることができる。また、そのパターニング方法も、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクト・プリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法及びこれらの手法を複数組み合わせた手法を利用することができる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去したり材料の導電性を変化させたりすることにより、直接パターンを作製することも利用できる。
なお、形成した半導体層4や各電極(ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6)、配線等の表面には、外気の影響を最小限にするために、保護膜を形成することができる。これには、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等のポリマー膜、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化膜や窒化膜等が挙げられる。ポリマー膜の形成方法としては、ポリマー溶液を塗布、乾燥する方法や、モノマーを塗布或いは蒸着して重合する方法等が挙げられる。更には、架橋処理を施したり、多層膜を形成することも可能である。無機物の膜の形成には、スパッタ法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法も用いることができる。
〔II−2.有機電界効果トランジスタの用途〕
本発明の有機FETは、その種類に応じて任意の用途に用いることができる。その代表的な例を以下に挙げるが、本発明の有機FETの用途は以下の例に制限されるものではない。
・アクティブマトリクス:
例えば、本発明の有機FETは、表示素子(ディスプレー)のアクティブマトリクスのスイッチング素子として利用することが出来る。これは、ゲートに印加される電圧でソースとドレイン間の電流をスイッチング出来ることを利用して、ある表示素子に電圧を印加或いは電流を供給する時のみスイッチを入れ、その他の時間は回路を切断する事により、高速、高コントラストな表示を行なうものである。
本発明の有機FETが適用される表示素子としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロルミネッセント素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられる。
特に、本発明の有機FETは、低温プロセスでの素子作製が可能であり、プラスチック基板、プラスチックフィルムや紙等の、高温処理に耐えない基板を用いることができる。また、塗布或いは印刷プロセスでの素子作製が可能であることから、大面積のディスプレーへの応用に適している。また、従来のアクティブマトリクスの代替としても、省エネルギープロセス、低コストプロセスの可能な素子として有利である。
・IC:
また、本発明の有機FETを集積することにより、デジタル素子やアナログ素子が実現できる。これらの例としては、AND、OR、NAND、NOT等の論理回路、メモリー素子、発振素子、増幅素子等が挙げられる。さらにこれらを組み合わせることにより、ICカードやICタグを作製することが出来る。
・センサー:
また、一般に、有機半導体材料は、ガスや化学物質、温度等の外部の刺激により、特性が大きく変化するので、この現象を利用して、本発明の有機FETをセンサーへ応用することも考えられる。例えば、本発明の有機FETの特性が、気体や液体との接触により変化する量を測定することにより、定性的或いは定量的にそれに含まれている化学物質を検出することが可能である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[I.有機半導体材料の合成]
以下の合成項1〜14に従って、オリゴチオフェンA〜E(本発明の有機半導体材料)を合成した。各合成項における反応の概要を、各合成項の最初に反応式で示す。なお、各合成項及び各反応式の記載中、「Phe」はフェニル基又はフェニレン基を表わし、「Et」はエチル基を表わし、「Ac」はアセチル基を表わし、「Hex」はヘキシル基を表わし、「NBS」はN−ブロモスクシンイミドを表わし、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドを表わす。
[合成項1]
・2−クロロ−4−エチルフェニルチオフェンの合成:
Figure 2007116115
2,5−ジクロロチオフェン30.6g(0.20M)、エチルベンゼン100ml(0.77M)、ジクロロメタン100mlの混合物に、塩化アルミニウム26.7g(0.20M)を加え、1時間還流した。反応液を300gの氷水に投入し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで洗浄して、塩化カルシウムで乾燥した。過剰のエチルベンゼンを減圧蒸留で取り除いた後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離して、目的物である2−クロロ−4−エチルフェニルチオフェン24.3gを得た。目的物の収率は55%、性状は白色結晶、融点(以下適宜「mp.」と略する。)は97〜98℃(文献値(以下適宜「lit.」と略する。)は97〜98℃)であった。
[合成項2]
・5−クロロ−3−エチルフェニル−2−ヨードチオフェンの合成:
Figure 2007116115
合成項1において得られた2−クロロ−4−エチルフェニルチオフェン8.90g(40mM)、ヨウ素5.08g(20mM)、ヨードベンゼンジアセテート7.09g(22mM)、クロロホルム(80ml)の混合物を1時間還流した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(100ml)、水(100ml)で順次洗浄して、塩化カルシウムで乾燥した。副生するヨードベンゼンを減圧蒸留で取り除いた後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物である5−クロロ−3−エチルフェニル−2−ヨードチオフェン13.1gを得た。目的物の収率は94%、性状は黄色粘性油状物であった。
[合成項3]
・5'−クロロ−3'−エチルフェニル−5''−ヘキシル−2,2':5,2''−ターチオフェンの合成:
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、合成項2において得られた5−クロロ−3−エチルフェニル−2−ヨードチオフェン6.27g(18mM)とマグネシム0.48g(19.8mM)から調製したグリニャール試薬を、パラジウムジフェニルホスフィノフェロセンジクロライド0.29g(0.36mM)を触媒として、乾燥トルエン(25ml)に溶解した5−ヘキシル−5'−クロロ−2,2'−ビチオフェン8.90g(40mM)に加え、4時間還流した。5%塩酸(20ml)を加えて攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)で洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物である5'−クロロ−3'−エチルフェニル−5''−ヘキシル−2,2':5,2''−ターチオフェン4.36gを得た。目的物の収率は77%、性状は黄色粘性油状物であった。また、目的物の構造の確認はMS及び1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
MS(EI): m/z 470 (M+, 100%)
1H NMR(500MHz, CDCl3): δ 7.26 (d, J = 7.6Hz, 2H), 7.18 (d, J = 7.6Hz, 2H), 6.89 (s, 1H), 6.89 (d, J = 3.9Hz, 1H), 6.87 (d, J = 3.6Hz, 1H), 6.80 (d, J = 3.9Hz, 1H), 6.63 (d, J = 3.6Hz, 1H), 2.76 (t, J = 7.6Hz, 2H), 2.67 (q, J = 7.6Hz, 2H), 1.65 (m, 2H), 1.40-1.24 (m, 9H), 0.88 (t, J = 7.6Hz, 3H)
[合成項4]
・オリゴチオフェンA(6量体)の合成:
Figure 2007116115
窒素気流下にて、乾燥DMF(30ml)に、無水塩化ニッケル0.78g(6mM)、トリフェニルホスフィン6.30g(24mM)、亜鉛粉末0.39g(6mM)を加えて、50℃で1時間攪拌した。その後、合成項3で得られた5'−クロロ−3'−エチルフェニル−5''−ヘキシル−2,2':5,2''−ターチオフェン2.36g(5mM)を乾燥DMF(3ml)に溶解させた溶液を加え、50℃で1時間攪拌した。反応液を300mlの水に投入し、析出した赤黒色沈殿を吸引ろ過して、200mlの水で洗浄した。この沈殿をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物であるオリゴチオフェンA(6量体)1.8gを得た。目的物の収率は83%、性状は赤色針状晶、mp.は115〜116℃であった。また、目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ 7.26 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.18 (d, J = 7.6Hz, 4H), 6.89 (s, 2H), 6.89 (d, J = 3.9Hz, 2H), 6.87 (d, J = 3.6Hz, 2H), 6.80 (d, J = 3.9Hz,2H), 6.63 (d, J = 3.6Hz, 2H), 2.76 (t, J = 7.6Hz, 4H), 2.67(q, J = 7.6Hz, 4H), 1.65 (m, 4H), 1.40-1.24 (m, 18H), 0.88 (t, J = 7.6Hz, 6H)
[合成項5]
・5'−ヘキシル−2,2':5,2''−ターチオフェンの合成:
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、2−ヘキシル−5−ブロモ−チオフェン6.60g(26.7mM)とマグネシム0.71g(29.4mM)から調製したグリニャール試薬を、触媒であるニッケルジフェニルホスフィノプロパンジクロライド0.19g(0.35mM)の存在下、乾燥エーテル(20ml)に溶解した5−ブロモ−2,2'−ビチオフェン4.36g(17.8mM)に加え、室温で2時間攪拌した。5%塩酸30mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物である5'−ヘキシル−2,2':5,2''−ターチオフェン4.6gを得た。目的物の収率は88%、性状は黄色針状晶、mp.は63〜63.5℃であった。また、目的物の構造の確認はMS及び1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
MS(EI): m/z 322(M+, 100%)
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ 7.20 (dd, J = 5.1Hz and 1.5Hz, 1H), 7.15 (dd, J = 3.9Hz and 1.5Hz, 1H), 7.05 (d, J = 3.9Hz, 1H), 7.01 (dd, J = 5.1Hz and 3.9Hz, 1H), 6.99 (d, J = 3.6Hz, 1H), 6.98(d, J = 3.9Hz, 1H), 6.68 (d, J = 3.6Hz, 1H), 2.80(t, J = 7.6Hz, 2H), 1.68 (m, 2H), 1.40-1.24 (m, 6H), 0.88 (t, J = 7.6Hz, 3H)
[合成項6]
・5'−ヘキシル−5''−ブロモ−2,2':5,2''−ターチオフェンの合成:
Figure 2007116115
合成項5で得られた5'−ヘキシル−2,2':5,2''−ターチオフェン4.6g(15mM)をクロロホルム(15ml)に溶解させ、N−ブロモスクシンイミド2.67g(15mM)を加えて、室温で3時間攪拌した。反応液を100mlの水に投入し、水層と有機層を分離して有機層を水洗し、塩化カルシウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物である5'−ヘキシル−5''−ブロモ−2,2':5,2''−ターチオフェン5.8gを得た。目的物の収率は93%、性状は黄色鱗片状晶、mp.は84〜85℃であった。目的物の構造の確認はMS及び1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
MS(EI): m/z 400 (M+, 100%)
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ 6.98 (d, J = 3.9Hz, 1H), 6.97 (d, J = 3.9Hz, 1H), 6.97 (d, J = 3.9Hz, 1H), 6.96 (d, J = 3.6Hz, 1H), 6.87 (d, J = 3.9Hz, 1H), 6.66 (d,J = 3.6Hz, 1H), 2.79 (t, J = 7.6Hz, 2H), 1.67 (m, 2H), 1.40-1.28 (m, 6H), 0.89 (t, J = 7.6Hz, 3H)
[合成項7]
・5'−ヘキシル−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェンの合成:
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、合成項2で得られた5−クロロ−3−エチルフェニル−2−ヨードチオフェン6.75g(16.5mM)とマグネシム0.42g(18.1mM)から調製したグリニャール試薬を、触媒であるパラジウムジフェニルホスフィノフェロセンジクロライド0.29g(0.36mM)の存在下、5'−ヘキシル−5''−ブロモ−2,2':5,2''−ターチオフェン4.41g(11.0mM)を乾燥トルエン(20ml)に溶解させた溶液に加え、4時間還流した。これに5%塩酸30mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物である5'−ヘキシル−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェン4.4gを得た。目的物の収率は87%、性状は黄色針状晶、mp.は85〜86℃であった。目的物の構造の確認はMS及び1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
MS (EI): m/z 552 (M+, 100%)
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ 7.27 (d, J = 7.6Hz, 2H), 7.19 (d, J = 7.6Hz, 2H), 6.96-6.93 (m, 4H), 6.89 (s, 1H), 6.82(d, J = 3.9Hz, 1H), 6.67 (d, J = 3.6Hz, 1H), 2.78 (t, J = 7.6Hz, 2H), 2.68 (q, J = 7.6Hz, 2H), 1.66 (m, 2H), 1.40-1.28 (m, 6H), 1.26 (t, J=7.6Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.6Hz, 3H)。
[合成項8]
・オリゴチオフェンB(8量体)の合成:
Figure 2007116115
窒素気流下にて、乾燥DMF25mlに、無水塩化ニッケル0.65g(5mM)、トリフェニルホスフィン5.25g(20mM)、亜鉛粉末0.33g(5mM)を加えて50℃で1時間加温攪拌した。その後、合成項7で得られた5'−ヘキシル−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェン2.40g(4.3mM)を乾燥DMF(3ml)に溶解させた溶液を加え、更に50℃で1時間加温攪拌した。反応液を300mlの水に投入し、析出した赤黒色沈殿を吸引ろ過して、200mlの水で洗浄した。この沈殿をn−ヘキサンでソックスレー抽出してトリフェニルホスフィンを除いた後、ヘキサン−トルエン混合溶液によりソックスレー抽出することで、目的物であるオリゴチオフェンB(8量体)2.0gを得た。目的物の収率は87%、性状は赤色粉末、mp.は159〜161℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ7.35 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.23 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.14
(bs, 2H), 6.96-6.93 (m,8H), 6.87 (s,2H), 6.67 (d, J = 3.6Hz, 2H), 2.79 (t, J = 7.6Hz, 4H), 2.70 (q, J = 7.6Hz, 4H), 1.68 (m, 4H), 1.40-1.25 (m, 18H), 0.89 (t, J = 7.6Hz, 6H)。
[合成項9]
・5',5''−ジブロモ−2,2':5,2''−ターチオフェンの合成:
Figure 2007116115
ターチオフェン3.9g(16mM)をDMF(40ml)に溶かし、N−ブロモスクシンイミド5.63g(32mM)を加えて、40℃で2時間攪拌した。反応液を400mlの水に投入し、析出した黄色沈殿を吸引ろ過して200mlの温水で洗浄し、デシケータ内で減圧乾燥して、目的物である5',5''−ジブロモ−2,2':5,2''−ターチオフェン6.1gを得た。目的物の収率は96%、性状は黄色鱗片状晶、mp.は156〜158℃(lit.160〜161℃)であった。
[合成項10]
・5'−ブロモ−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェン及び5'',5''''−ジクロロ−3'',3''''−ジ(エチルフェニル)−2,2':5',2'':5,2''':5''',2''''−クインキュチオフェンの合成:
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、5−クロロ−3−エチルフェニル−2−ヨードチオフェン5.23g(15mM)とマグネシム0.40g(16.5mM)から調製したグリニャール試薬を、触媒であるパラジウムジフェニルホスフィノフェロセンジクロライド0.08g(0.1mM)の共存下、合成項9で得られた5',5''−ジブロモ−2,2':5,2''−ターチオフェン2.03g(5.0mM)を乾燥トルエン(20ml)に溶解した溶液に加え、10時間還流した。5%塩酸20mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物である5'−ブロモ−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェン0.86g(収率32%)と、5'',5''''−ジクロロ−3'',3''''−ジ(エチルフェニル)−2,2':5',2'':5,2''':5''',2''''−クインキュチオフェン1.09g(収率31%)を得た。
5'−ブロモ−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェンの性状は黄色針状晶、mp.は114〜117℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR(500MHz, CDCl3): δ 7.26 (d, J = 7.6Hz, 2H), 7.20 (d, J = 7.6Hz, 2H), 6.94-6.98 (m, 4H), 6.90 (s, 1H), 6.89 (d, J = 3.6Hz, 1H), 6.83 (d, J = 3.6Hz, 1H), 2.68 (q, J = 7.6Hz, 2H), 1.27(t, J = 7.6Hz, 3H)
また、5'',5''''−ジクロロ−3'',3''''−ジ(エチルフェニル)−2,2':5',2'':5,2''':5''',2''''−クインキュチオフェンの性状は黄色針状晶、mp.は173〜176℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ 7.26 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.19 (d, J = 7.6Hz, 4H), 6.94 (d, J = 3.6Hz, 2H), 6.92 (s, 2H), 6.90 (s, 2H), 6.82 (d, J = 3.6Hz, 2H), 2.68 (q, J = 7.6Hz, 4H), 1.26 (t, J = 7.6Hz, 6H)
[合成項11]
・5''−ヘキシル−5''''−クロロ−3''''−エチルフェニル−2,2':5',2'':5,2''':5''',2''''−クインキュチオフェンの合成:
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、5−ブロモ−2−ヘキシルチオフェン0.99g(4.0mM)とマグネシム0.11g(4.4mM)から調製したグリニャール試薬を、触媒であるパラジウムジフェニルホスフィノフェロセンジクロライド0.018g(0.022mM)の存在下、合成項10で得られた5'−ブロモ−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェン1.20g(2.2mM)を乾燥トルエン(10ml)に溶解させた溶液に加え、室温で3時間攪拌した。そこに5%塩酸20mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:クロロホルム=19:1)で分離することにより、目的物である5''−ヘキシル−5''''−クロロ−3''''−エチルフェニル−2,2':5',2'':5,2''':5''',2''''−クインキュチオフェン1.1gを得た。目的物の収率は78%、性状は黄色粉末、mp.は114〜116℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ 7.27 (d, J = 7.6Hz, 2H), 7.20 (d, J = 7.6Hz, 2H), 7.03-6.95 (m, 6H), 6.90 (s, 1H), 6.83 (d, J = 3.6Hz, 1H), 6.66 (d, J = 3.6Hz, 1H), 2.79 (t, J = 7.6Hz, 2H), 2.69 (q, J = 7.6Hz, 2H), 1.68 (m, 2H), 1.42-1.28 (m, 6H), 1.27 (t, J = 7.6Hz, 3H), 0.89 (t, J = 7.6Hz, 3H)
[合成項12]
・オリゴチオフェンC(10量体)の合成
Figure 2007116115
窒素気流下にて、乾燥DMF25mlに無水塩化ニッケル0.25g(1.9mM)、トリフェニルホスフィン2.00g(7.6mM)、亜鉛粉末0.12g(1.9mM)を加えて50℃で1時間攪拌し、合成項11で得られた5''−ヘキシル−5''''−クロロ−3''''−エチルフェニル−2,2':5',2'':5,2''':5''',2''''−クインキュチオフェン1.24g(1.9mM)を加え、50℃で1時間攪拌した。反応液を100mlの水に投入し、析出した赤黒色沈殿を吸引ろ過して、100mlの水で洗浄した。この沈殿をn−ヘキサンでソックスレー抽出してトリフェニルホスフィンを除いた後、クロロホルムでソックスレー抽出することにより、目的物であるオリゴチオフェンC(10量体)1.0gを得た。目的物の収率は77%、性状は赤色粉末、mp.は216〜219℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ7.36 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.23 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.16 (s, 2H), 7.04-6.96 (m, 12H), 6.89 (d, J = 3.6Hz, 2H), 6.68 (d, J = 3.6Hz, 2H), 2.80 (t, J = 7.6Hz, 4H), 2.72 (q, J = 7.6Hz, 4H), 1.68 (m, 4H), 1.42-1.24 (m, 12H), 1.28 (t, J = 7.6Hz, 6H), 0.90 (t, J = 7.6Hz, 6H)
[合成項13]
・オリゴチオフェンD(7量体)の合成
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、5−ブロモ−2−ヘキシルチオフェン1.48g(6.0mM)とマグネシム0.16g(6.6mM)から調製したグリニャール試薬を、触媒であるニッケルジフェニルホスフィノプロパンジクロライド0.02g(0.03mM)の存在下、合成項10で得られた5'',5''''−ジクロロ−3'',3''''−ジ(エチルフェニル)−2,2':5',2'':5,2''':5''',2''''−クインキュチオフェン1.03g(1.5mM)を乾燥トルエン(10ml)に溶解させた溶液に加え、3時間還流した。冷却した5%塩酸20mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:クロロホルム=19:1)で分離することにより、目的物であるオリゴチオフェンD(7量体)1.06gを得た。目的物の収率は74%、性状は赤色粉末、mp.は116〜118℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ7.33 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.22 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.04 (s, 2H), 7.01 (d, J = 3.6Hz, 2H), 6.95 (d, J = 3.6Hz, 2H), 6.92 (s, 2H), 6.85 (d, J = 3.6Hz, 2H), 6.69 (d, J = 3.6Hz, 2H), 2.80 (t, J = 7.6Hz, 4H), 2.70 (q, J = 7.6Hz, 4H), 1.68 (m, 4H), 1.42-1.30 (m, 18H), 0.90 (t, J = 7.6Hz, 6H)
[合成項14]
・オリゴチオフェンE(6量体)の合成
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、5−ブロモ−2−ヘキシルチオフェン1.48g(6.0mM)とマグネシム0.16g(6.6mM)から調製したグリニャール試薬を、ニッケルジフェニルホスフィノプロパンジクロライド0.022g(0.04mM)を触媒として、乾燥トルエン(10ml)に溶解した5'−ブロモ−3'''−エチルフェニル−5'''−クロロ−2,2':5,2'':5'',2'''−クォーターチオフェン2.19g(4.0mM)に
加え、室温で3時間攪拌した。そこに5%塩酸20mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン)で分離することにより、目的物であるオリゴチオフェンE(6量体)1.10gを得た。目的物の収率は48%、性状は橙色粉末、mp.は114〜116℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ7.32 (d, J = 7.6Hz, 2H), 7.21 (d, J = 7.6Hz, 2H), 7.03 (s, 1H), 7.00-6.92 (m, 7H), 6.84 (d, J = 3.6Hz, 1H), 6.68 (d, J = 3.6Hz, 1H), 6.66 (d, J = 3.6Hz, 1H), 2.78 (m, 4H), 2.69 (q, J = 7.6Hz, 2H), 1.69 (m, 4H), 1.41-1.26 (m, 12H), 1.27 (t, J = 7.6Hz, 3H), 0.90 (t, J = 7.6Hz, 6H)
[合成項15]
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、アルドリッチ社製、5−ヘキシル−5’−ブロモ−2,2’−ビチオフェン1.32g(4.0mM)とマグネシム0.11g(4.4mM)から調製したグリニャール試薬を、触媒であるパラジウムジフェニルホスフィノフェロセンジクロライド0.018g(0.022mM)の存在下、合成項10で得られた5’−ブロモ−3’’’−エチルフェニル−5’’’−クロロ−2,2’:5,2’’:5’’,2’’’−クォーターチオフェン1.20g(2.2mM)を乾燥トルエン(10ml)に溶解させた溶液に加え、室温で3時間攪拌した。そこに5%塩酸20mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:クロロホルム=19:1)で分離することにより、目的物である5’’−ヘキシル−5’’’’’−クロロ−3’’’’’−エチルフェニル−2,2’:5’,2’’:5,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’−セクスチオフェン1.2gを得た。目的物の収率は78%、性状は黄色粉末、mp.は123〜126℃であった。目的物の構造の確認はMALDI−TOF−MSにより行った。
[合成項16]
・オリゴチオフェンF(12量体)の合成
Figure 2007116115
窒素気流下にて、乾燥DMF25mlに無水塩化ニッケル0.25g(1.9mM)、トリフェニルホスフィン2.00g(7.6mM)、亜鉛粉末0.12g(1.9mM)を加えて50℃で1時間攪拌し、合成項15で得られた5’’−ヘキシル−5’’’’’−クロロ−3’’’’’−エチルフェニル−2,2’:5’,2’’:5,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’−セクスチオフェン1.26g(1.9mM)を加え、50℃で1時間攪拌した。反応液を100mlの水に投入し、析出した赤黒色沈殿を吸引ろ過して、100mlの水で洗浄した。この沈殿をn−ヘキサンでソックスレー抽出してトリフェニルホスフィンを除いた後、クロロホルムでソックスレー抽出することにより、目的物であるオリゴチオフェンF(12量体)1.0gを得た。目的物の収率は77%、性状は赤色粉末、mp.は236〜240℃であった。
[合成項17]
Figure 2007116115
乾燥エーテル中、5−ブロモ−2−ヘキシルチオフェン0.25g(1.0mM)(1.0mM)とマグネシム0.03g(1.2mM)から調製したグリニャール試薬を、触媒であるニッケルジフェニルホスフィノプロパンジクロライド0.02g(0.03mM)の存在下、合成項10で得られた5’’,5’’’’−ジクロロ−3’’,3’’’’−ジ(エチルフェニル)−2,2’:5’,2’’:5,2’’’:5’’’,2’’’’−クインキュチオフェン1.03g(1.5mM)を乾燥トルエン(10ml)に溶解させた溶液に加え、3時間還流した。冷却した5%塩酸20mlを加えてよく攪拌し、水層と有機層を分離し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:クロロホルム=19:1)で分離することにより、目的物である5’’’’’−ヘキシル−5’’−クロロ−3’’,3’’’’−ジ(エチルフェニル)−2,2’:5’,2’’:5,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’−セクスチオフェン0.88gを得た。目的物の収率は68%、性状は橙色粉末、mp.は126〜128℃であった。目的物の構造の確認は1H NMRにより行なった。その結果を以下に示す。
1H NMR (500MHz, CDCl3): δ 7.26 (d, J = 7.6Hz, 4H), 7.19 (d, J = 7.6Hz, 4H), 6.94 (d, J = 3.6Hz, 2H), 6.92 (s, 2H), 6.90 (s, 2H), 6.82 (d, J = 3.6Hz, 2H), 2.68 (q, J = 7.6Hz, 4H), 1.26 (t, J = 7.6Hz, 6H)、1.40-1.25 (m, 10H), 0.89 (t, J = 7.6Hz, 3H)。
[合成項18]
・オリゴチオフェンG(12量体)の合成
窒素気流下にて、乾燥DMF25mlに無水塩化ニッケル0.25g(1.9mM)、トリフェニルホスフィン2.00g(7.6mM)、亜鉛粉末0.12g(1.9mM)を加えて50℃で1時間攪拌し、合成項17で得られた5’’’’’−ヘキシル−5’’−クロロ−3’’,3’’’’−ジ(エチルフェニル)−2,2’:5’,2’’:5,2’’’:5’’’,2’’’’:5’’’’,2’’’’’−セクスチオフェン1.38g(1.9mM)を加え、50℃で1時間攪拌した。反応液を100mlの水に投入し、析出した赤黒色沈殿を吸引ろ過して、100mlの水で洗浄した。この沈殿をn−ヘキサンでソックスレー抽出してトリフェニルホスフィンを除いた後、クロロホルムでソックスレー抽出することにより、目的物であるオリゴチオフェンG(12量体)0.9gを得た。目的物の収率は76%、性状は赤色粉末、mp.は228〜232℃であった。目的物の構造の確認はMALDI−TOF−MSにより行った。
[実施例1]
[II.有機半導体材料の評価]
[II−1.イオン化ポテンシャルの評価]
合成項4で得られたオリゴチオフェンA(6量体)50mgをクロロホルム1mLに溶解させて溶液を調製した。この溶液をフルウチ化学社製2.5×2.5cm2の石英基板上に1000rpmでスピンコートして良好な膜を得た。このフィルムについて、住友重機械アドバンストマシナリー製のPCR−101型光電子分光装置を用いてイオン化ポテンシャル(Ip)を測定した。比較対象物として、α−6Tを真空蒸着プロセスで石英基板上に作製したものを使用した(後述する比較例1を参照)。イオン化ポテンシャルの測定結果を図4のグラフに示す。オリゴチオフェンA(6量体)のイオン化ポテンシャル(Ip)は5.34eV、α−6Tのイオン化ポテンシャル(Ip)は4.7eVという結果が得られた。この結果から、本発明の有機半導体材料であるオリゴチオフェンA(6量体)は、従来の有機半導体材料であるα−6Tに比べて、酸化されにくいことが示された。また、測定されたオリゴチオフェンAのイオン化ポテンシャルを表1に示した。
[II−2.結晶性の評価]
また、上記[イオン化ポテンシャルの評価]においてオリゴチオフェンA(6量体)を用いて作製したオリゴチオフェン膜のX線回折測定を、リガク社製RINT−2000/PCにより行なった。得られたX線解説測定結果を図5に示す。In−Plane測定において、上述のオリゴチオフェン膜が結晶性の半導体層であることが確認された。結果を表1に示した。表1中では、結晶性の半導体層であった場合を○とし、それ以外を×とした。
[II−3.溶解性の評価]
オリゴチオフェンA(6量体)を、30℃にて、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチル、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メチルエチルケトン、安息香酸エステル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、及びベンジルエチルエーテルに各々溶解し、溶解度を測定した。表1に結果を示した。表1中では、各溶媒に対して0.1重量%及び0.3重量%の溶解度が確認できた場合に○とし、それ以外を×とした。
[III.有機FET]
300nmの酸化膜を形成したN型のシリコン基板(Sbドープ、抵抗率0.02Ωcm以下、住友金属工業社製)上に、フォトリソグラフィーで長さ(L)10μm、幅(W)500μmのギャップを有する金電極(ソース電極及びドレイン電極)を形成した。また、この電極と異なる位置の酸化膜をフッ酸/フッ化アンムニウム液でエッチングし、むき出しになったSi部分に金を蒸着し、これをシリコン基板に電圧を印加するための電極(ゲート電極)とした。
合成項4で得られたオリゴチオフェンA(6量体)50mgをクロロホルム1mLに溶解させて溶液を調製した。以下の成膜及び電気特性の評価は、酸素や湿度の影響を避けるために、すべて窒素雰囲気下で行なった。先に用意した溶液を、上記で電極を形成した基板上に1000rpmでスピンコートして、良好な膜(半導体層)を形成した。こうして、本発明の有機半導体材料であるオリゴチオフェンA(6量体)を半導体層に含有する有機FET(本発明の有機FET)を作製した。
得られた有機FETの電気特性を、アジレントテクノロジー社製半導体パラメータアナライザー4155Cを用いて測定した。ソースとドレイン間に印加された電圧Vdに対して流れる電流をId、ソースとゲートに印加される電圧をVg、閾値電圧をVt、絶縁膜の単位面積当たりの静電容量をCi、ソース電極とドレイン電極との間隔をL、幅をW、半導体層の移動度をμとすると、その動作は以下の式で表わすことができる。
Figure 2007116115
μは素子の電流電圧特性から求めることができる。μを求めるには式(A)或いは(B)を用いるが、(B)式の飽和電流部分のId 1/2−Vgの傾きから求める方法を採用した。このプロットのId=0との切片から閾値電圧Vt、Vd=−30V印加時のVg=30Vと−50VのIdの比をオン・オフ比とした。
以上の手順により得られた有機FETの電気特性を図6のグラフに示す。上記の有機FETの電気特性は、移動度が7.0×10-3cm2/Vs、Vtが−0.7V、オン・オフ比が2.7×106と、極めて良好であった。
また、測定されたオリゴチオフェンAの電気特性(移動度μ、閾値電圧Vt及びオン・オフ比)を表1に示した。
[IV.5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合]
オリゴチオフェンA(6量体)について、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合を、計算により求めた。その結果を表1の「主鎖の芳香環部分に対するアリール置換基の割合」の欄に示す。
[実施例2]
実施例1において、オリゴチオフェンAを合成項8で得られたオリゴチオフェンBにした以外は、実施例1と同様にして、イオン化ポテンシャルの評価、結晶性の評価、溶解性の評価、有機FETの電気特性の評価、及び、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合の算出を行なった。結果を表1に示した。
[実施例3]
実施例1において、オリゴチオフェンAを合成項12で得られたオリゴチオフェンCにした以外は、実施例1と同様にして、イオン化ポテンシャルの評価、結晶性の評価、溶解性の評価、有機FETの電気特性の評価、及び、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合の算出を行なった。結果を表1に示した。
[実施例4]
実施例1において、オリゴチオフェンAを合成項13で得られたオリゴチオフェンDにした以外は、実施例1と同様にして、イオン化ポテンシャルの評価、結晶性の評価、溶解性の評価、有機FETの電気特性の評価、及び、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合の算出を行なった。結果を表1に示した。
[実施例5]
実施例1において、オリゴチオフェンAを合成項14で得られたオリゴチオフェンEにした以外は、実施例1と同様にして、イオン化ポテンシャルの評価、結晶性の評価、溶解性の評価、有機FETの電気特性の評価、及び、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合の算出を行なった。結果を表1に示した。
[実施例6]
実施例1において、オリゴチオフェンAを合成項16で得られたオリゴチオフェンFにした以外は、実施例1と同様にして、イオン化ポテンシャルの評価、結晶性の評価、溶解性の評価、有機FETの電気特性の評価、及び、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合の算出を行なった。結果を表1に示した。
[実施例7]
実施例1において、オリゴチオフェンAを合成項18で得られたオリゴチオフェンGにした以外は、実施例1と同様にして、イオン化ポテンシャルの評価、結晶性の評価、溶解性の評価、有機FETの電気特性の評価、及び、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合の算出を行なった。結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1において、オリゴチオフェンAをα−6T(α−sezithiophene)にした以外は、実施例1と同様にして、イオン化ポテンシャルの評価、結晶性の評価、溶解性の評価、有機FETの電気特性の評価、及び、5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量の割合の算出を行なった。結果を表1に示した。
Figure 2007116115
[まとめ]
表1から、本発明の実施例1〜7に係る有機半導体材料は、塗布プロセスが可能で、高次の規則性及び結晶性を有し、且つ、安定性も良好であること、並びに、それを半導体部に含有する有機電界効果トランジスタは、移動度等の電気特性に優れ、且つ、耐酸化性、電気特性等の安定性にも優れていることが確認された。
本発明の有機半導体材料は、電気特性に優れており、有機半導体としての性質を有する。従って、本発明の有機半導体材料は、有機FETなど各種の用途に好適に用いることができ、極めて有用である。
本発明の有機FETの構造例を示す断面図である。 本発明の有機FETの別の構造例を示す断面図である。 本発明の有機FETの更に別の構造例を示す断面図である。 実施例で得られた有機半導体材料のイオン化ポテンシャルを示す図である。 実施例で得られた有機半導体材料のX線回折ピークを示す図である。 実施例で得られた有機FETの半導体特性を示す図である。
符号の説明
1 支持基板(基板)
2 ゲート電極
3 絶縁体層(絶縁体部)
4 半導体層(電荷輸送性層、半導体部)
5 ソース電極
6 ドレイン電極

Claims (7)

  1. 5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合してなり、且つ、下記式(1)で表わされる部分構造を有し、
    移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上であり、
    固体状態でのイオン化ポテンシャルが、4.8eV以上、5.6eV以下である
    ことを特徴とする有機半導体材料。
    Figure 2007116115
    (式中、R1及びR2は各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R1及びR2の少なくとも一方は、置換されていても良い芳香族基である。)
  2. トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、塩化メチル、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メチルエチルケトン、安息香酸エステル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテルの少なくともいずれか1つに対する30℃での溶解度が、0.1重量%以上である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の有機半導体材料。
  3. 5員環及び/又は6員環の芳香環が6以上、20以下結合した部分の分子量に対する、一般式(1)中のR1及びR2の芳香族部分の分子量が、5%以上である
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の有機半導体材料。
  4. 下記式(2)の部分構造を有する
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機半導体材料。
    Figure 2007116115
    (式中、R3〜R6は各々独立に、水素原子又は一価の有機基を表わす。但し、R3〜R6のうち少なくとも一つは、置換されても良い芳香族基である。)
  5. オリゴチオフェンである
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機半導体材料。
  6. 少なくとも、基板と、該基板上に設けられた絶縁体部と、該絶縁体部により互いに隔離されるように設けられたゲート電極及び半導体部と、該半導体部に接するように設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え、
    該半導体部が、少なくとも、請求項1〜5の何れか一項に記載の有機半導体材料を含有してなる
    ことを特徴とする、有機電界効果トランジスタ。
  7. 該半導体部が、塗布プロセスで作製されてなる
    ことを特徴とする、請求項6記載の有機電界効果トランジスタ。
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