JP2004273298A - 高分子電解質膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた強度特性と高いイオン交換能を有する電解質膜材料を提供する。
【解決手段】放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体にパーフルオロスルホン酸系イオン交換材料、パーフルオロカルボン酸系イオン交換材料、または炭化水素系イオン交換材料が含浸されていて、複合型イオン交換膜として一体に成形されていることを特徴とする高分子電解質膜が提供される。
【選択図】 無し
【解決手段】放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体にパーフルオロスルホン酸系イオン交換材料、パーフルオロカルボン酸系イオン交換材料、または炭化水素系イオン交換材料が含浸されていて、複合型イオン交換膜として一体に成形されていることを特徴とする高分子電解質膜が提供される。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池における高分子電解質膜、あるいは塩の分解や水の浄化のためのイオン交換材料として用いることのできる高分子電解質膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、耐薬品性、耐熱性、低摩擦性、非接着性、低い誘電率、高い電気絶縁性などの優れた特徴により、産業界に幅広い用途が見いだされ、今後ますます需要の増大が見込まれているフッ素樹脂である。この樹脂は現在、チューブ、シート、ブロック、フィラメント、多孔膜、パウダーなどの様々な成形体に加工され、パッキン、ライニング材、コーティング材、フィルター、摺動部材、電気絶縁材、塗料、人口血管、カテーテルなどに広く利用されている。
【0003】
PTFEは他の高分子材料に類を見ない化学的安定性を有している。しかし、その化学的安定性の故に、PTFEの改質は非常に困難である。また電離性放射線(電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオンなど)に対して非常に弱く、放射線照射によってPTFEの主鎖が切断して結晶化を起こし、機械的強度が著しく低下する。そのため、放射線を利用したPTFEの改質も極めて困難であった。
【0004】
現在、PTFEの接着性を向上させるために、アルカリ金属によるケミカルエッチング、イオンビームによるスパッタエッチング、金属の蒸着、プラズマ放電、レーザー照射などによる表面処理が行われている。しかし、そのような表面処理によって接着性を向上させることはできるが、任意の化学修飾によりさらなる機能性を与えるには至っていない。前述の通り、PTFEはその熱的・化学的安定性により反応性に乏しく、機能性の付与は容易でない。
【0005】
また、放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレンからなる電解質膜の開発も行われている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この電解質膜を電池に用いると、溶媒への非溶解性と非接着性のために、電極との接合界面に空隙が生じるという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−048923号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、電解質膜材料の強度特性を向上させ、また膜材料に高いイオン交換能を付与するとともに、電池セルを組み立てるための実用的な電極と電解質膜の接合技術を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体にパーフルオロスルホン酸系イオン交換材料、パーフルオロカルボン酸系イオン交換材料、および炭化水素系イオン交換材料から選択されるいずれかのイオン交換材料が含浸されていて、複合型イオン交換膜として一体に成形されていることを特徴とする高分子電解質膜が提供される。
【0009】
放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体は基材であるが、繊維の集合体(例えば不織布)であってもよい。その孔径は10nm以上であることが好ましい。孔径が10nm未満であると多孔質体の孔にイオン交換材料を埋め込む作業が困難となり、孔への樹脂の充填が難しくなる。また孔径の上限は原理上設定する必要はないが、100μm以下であることが好ましい。孔径がこれよりも大きくなると、孔にイオン交換樹脂溶液を含浸させては乾燥させる工程が非常に多くなるため、所望する含浸状態を得るための作業が非常に繁雑になる。
【0010】
ポリテトラフルオロエチレン多孔質体に放射線グラフト処理を施してスルホン酸基を導入させるために電離性放射線を照射するが、電離性放射線としては電子線、X線、γ線、中性子線、高エネルギーイオン、放射光などを用いる。これらの放射線を単独で、あるいは混合放射線として用いることができる。放射線を照射することによってPTFEを架橋させ、次いでこれをスチレンモノマー等と反応させることによってグラフト処理を行い、さらにスチレンを硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸等と反応させることによってスルホン化させる。またグラフト処理を行う工程でスルホン酸基を有するモノマー、例えばスルホニルフルオライドビニルエーテルやビニルスルホン酸等と反応させることによって、スルホン化の工程を経ずに、スルホン酸基が導入された架橋PTFE多孔膜を得ることもできる。
【0011】
架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体の空隙は、パーフルオロスルホン酸系イオン交換材料、パーフルオロカルボン酸系イオン交換材料、または炭化水素系イオン交換材料のいずれかを含浸させて埋められる。そのようなイオン交換材料としては例えば、デュポン社のナフィオン(スルホン酸系)、旭硝子社のフレミオン(スルホン酸系およびカルボン酸系)、旭化成社のアシプレックス(スルホン酸系)、徳山曹達社のネオセプタ(炭化水素系)などがある。このようにして得られる電解質膜はイオン交換容量、電気伝導度、および耐熱性が高く、また基材が架橋構造を有し三次元的に結合しているため、耐膨潤性や耐クリープ性に優れ、強度が高い。
【0012】
また本発明の高分子電解質膜を製造する技術を応用すれば、架橋PTFE多孔膜の孔径を調整し、その多孔膜に付与する機能、さらには孔に充填する樹脂とその機能を組み合わせることにより、任意の複合的機能を有する膜材が得られる。孔に充填する樹脂は、樹脂またはそのモノマー類を気体または液体で充填したり、加熱溶融や熱プレスで充填したり、溶媒に溶解させた状態で含浸した後に溶媒を除去するなどの方法で孔に充填できるものであれば、その種類を問わない。ここで架橋PTFE多孔膜に付与する機能およびその孔に充填する樹脂の機能とは、強酸性、弱酸性、強塩基性、弱塩基性、選択吸着性、選択透過性などを言う。複合的機能とは、イオン交換、気体分離、液体分離、吸着、逆浸透、透析、濾過などの任意の組み合わせを言う。
【0013】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
市販のPTFE多孔質膜(フロン工業製、製品名:テフロンフィルターフィルム、サイズ:140×140×0.180mm、孔径:3μm)に電子線を100kGy照射して、予め架橋させた膜を用意した。
【0014】
この架橋PTFE膜をブレーカブルシール付きのガラスアンプルに入れ、真空脱気して、室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射してラジカルを生成させた。次いで、真空に保持されているガラスアンプルに、凍結脱気を十分に行ったスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を60℃で24時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は92%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0015】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られた膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0016】
得られたスルホン化膜に対して、スルホン酸系イオン交換樹脂であるデュポン社のナフィオンNF112をベースとする溶液を含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をナフィオンNF112で完全に埋めた膜を用意した。
【0017】
濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、462.58mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(20℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は7.19mlであった。
【0018】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、452.5mgであった。
【0019】
含水率とイオン交換容量は次式によって求めることができる。
含水率=(Ww−Wd)/Wd×100
イオン交換容量=0.01×(B−A)×(100/40)/Wd
ここで、Bは、0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液40mlの中和滴定に要した0.01MのHCl水溶液の量(今回は39.2ml)である。
【0020】
前記の式により膜のイオン交換容量を求めると1.77meq/g、含水率は2.23%であった。一方、既存のナフィオンNF112膜について同様の方法で測定した結果、イオン交換容量と含水率はそれぞれ1.22meq/gおよび2.77%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。また、ナフィオンを含浸していないスルホン化架橋PTFEフィルターフィルムについても同様の処理を行い、イオン交換容量を測定した結果、1.89meq/gであった。
【0021】
実施例2
実施例1と同様のPTFE多孔膜を用い、同様にして予め架橋させたPTFE膜を用意し、この膜に空気中室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射して過酸化ラジカルを生成させた。次いで、膜をブレーカブルシール付きのH型ガラスアンプルの片方に入れて真空脱気した。さらに、もう一方のガラスアンプルにスチレンモノマーを入れて、十分に凍結脱気を行った。真空中に保持されている架橋PTFE膜にスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を50℃で32時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は119%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0022】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られた膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0023】
得られたスルホン化膜に対して、デュポン社のナフィオンNF112ベースの溶液を含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をナフィオンNF112で完全に埋めた膜を用意した。
【0024】
濃度2MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、483.19mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(25℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は5.32mlであった。
【0025】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、471.88mgであった。
【0026】
実施例1と同様にして膜のイオン交換容量を求めると1.80meq/g、含水率は2.40%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。また、ナフィオンを含浸していないスルホン化架橋PTFEフィルターフィルムについても同様の処理を行い、イオン交換容量を測定した結果、1.92meq/gであった。
【0027】
実施例3
実施例1と同様のPTFE多孔膜を用い、同様にして予め架橋させたPTFE膜を用意し、この膜をブレーカブルシール付きのガラスアンプルに入れ、真空脱気して、室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射してラジカルを生成させた。次いで、真空に保持されているガラスアンプルに、凍結脱気を十分に行ったスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を60℃で24時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は92%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0028】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られた膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0029】
得られたスルホン化膜に対して、カルボン酸系イオン交換樹脂である旭硝子社のフレミオンをベースとする溶液を含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をフレミオンで完全に埋めた膜を用意した。
【0030】
濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、470.12mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(20℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は9.22mlであった。
【0031】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、462.30mgであった。
【0032】
実施例1と同様にして膜のイオン交換容量を求めると1.62meq/g、含水率は1.69%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。
【0033】
実施例4
実施例1と同様のPTFE多孔膜を用い、同様にして予め架橋させたPTFE膜を用意し、この膜をブレーカブルシール付きのガラスアンプルに入れ、真空脱気して、室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射してラジカルを生成させた。次いで、真空に保持されているガラスアンプルに、凍結脱気を十分に行ったスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を60℃で24時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は92%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0034】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られたスルホン化膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0035】
スチレンモノマー(90vol%)とジビニルベンゼン(10vol%)をベンゼン中でS−ブチルリチウムを開始剤として30℃で24時間反応させ、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のベンゼン溶液を得た。この溶液をスルホン化膜に含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をスチレン−ジビニルベンゼン共重合体で完全に埋めた膜を用意した。
【0036】
膜を再び四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜内のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体部分のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。
【0037】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、526.34mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(20℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は5.76mlであった。
【0038】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、509.63mgであった。
【0039】
実施例1と同様にして膜のイオン交換容量を求めると1.64meq/g、含水率は3.28%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。
【0040】
本発明の高分子電解質膜は、スルホン化した架橋PTFE多孔質膜または繊維状架橋PTFEの不織布に対して、市販の可溶性のパーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂または炭化水素系のイオン交換樹脂を含浸して一体成形することによって得られる。この際、含浸させるものは炭化水素系のイオン交換樹脂でもよい。含浸する方法は、既存のイオン交換樹脂を溶液に溶かして行うなど、当業者が容易に取り得る方法を採用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池における高分子電解質膜、あるいは塩の分解や水の浄化のためのイオン交換材料として用いることのできる高分子電解質膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、耐薬品性、耐熱性、低摩擦性、非接着性、低い誘電率、高い電気絶縁性などの優れた特徴により、産業界に幅広い用途が見いだされ、今後ますます需要の増大が見込まれているフッ素樹脂である。この樹脂は現在、チューブ、シート、ブロック、フィラメント、多孔膜、パウダーなどの様々な成形体に加工され、パッキン、ライニング材、コーティング材、フィルター、摺動部材、電気絶縁材、塗料、人口血管、カテーテルなどに広く利用されている。
【0003】
PTFEは他の高分子材料に類を見ない化学的安定性を有している。しかし、その化学的安定性の故に、PTFEの改質は非常に困難である。また電離性放射線(電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオンなど)に対して非常に弱く、放射線照射によってPTFEの主鎖が切断して結晶化を起こし、機械的強度が著しく低下する。そのため、放射線を利用したPTFEの改質も極めて困難であった。
【0004】
現在、PTFEの接着性を向上させるために、アルカリ金属によるケミカルエッチング、イオンビームによるスパッタエッチング、金属の蒸着、プラズマ放電、レーザー照射などによる表面処理が行われている。しかし、そのような表面処理によって接着性を向上させることはできるが、任意の化学修飾によりさらなる機能性を与えるには至っていない。前述の通り、PTFEはその熱的・化学的安定性により反応性に乏しく、機能性の付与は容易でない。
【0005】
また、放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレンからなる電解質膜の開発も行われている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この電解質膜を電池に用いると、溶媒への非溶解性と非接着性のために、電極との接合界面に空隙が生じるという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−048923号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、電解質膜材料の強度特性を向上させ、また膜材料に高いイオン交換能を付与するとともに、電池セルを組み立てるための実用的な電極と電解質膜の接合技術を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体にパーフルオロスルホン酸系イオン交換材料、パーフルオロカルボン酸系イオン交換材料、および炭化水素系イオン交換材料から選択されるいずれかのイオン交換材料が含浸されていて、複合型イオン交換膜として一体に成形されていることを特徴とする高分子電解質膜が提供される。
【0009】
放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体は基材であるが、繊維の集合体(例えば不織布)であってもよい。その孔径は10nm以上であることが好ましい。孔径が10nm未満であると多孔質体の孔にイオン交換材料を埋め込む作業が困難となり、孔への樹脂の充填が難しくなる。また孔径の上限は原理上設定する必要はないが、100μm以下であることが好ましい。孔径がこれよりも大きくなると、孔にイオン交換樹脂溶液を含浸させては乾燥させる工程が非常に多くなるため、所望する含浸状態を得るための作業が非常に繁雑になる。
【0010】
ポリテトラフルオロエチレン多孔質体に放射線グラフト処理を施してスルホン酸基を導入させるために電離性放射線を照射するが、電離性放射線としては電子線、X線、γ線、中性子線、高エネルギーイオン、放射光などを用いる。これらの放射線を単独で、あるいは混合放射線として用いることができる。放射線を照射することによってPTFEを架橋させ、次いでこれをスチレンモノマー等と反応させることによってグラフト処理を行い、さらにスチレンを硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸等と反応させることによってスルホン化させる。またグラフト処理を行う工程でスルホン酸基を有するモノマー、例えばスルホニルフルオライドビニルエーテルやビニルスルホン酸等と反応させることによって、スルホン化の工程を経ずに、スルホン酸基が導入された架橋PTFE多孔膜を得ることもできる。
【0011】
架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体の空隙は、パーフルオロスルホン酸系イオン交換材料、パーフルオロカルボン酸系イオン交換材料、または炭化水素系イオン交換材料のいずれかを含浸させて埋められる。そのようなイオン交換材料としては例えば、デュポン社のナフィオン(スルホン酸系)、旭硝子社のフレミオン(スルホン酸系およびカルボン酸系)、旭化成社のアシプレックス(スルホン酸系)、徳山曹達社のネオセプタ(炭化水素系)などがある。このようにして得られる電解質膜はイオン交換容量、電気伝導度、および耐熱性が高く、また基材が架橋構造を有し三次元的に結合しているため、耐膨潤性や耐クリープ性に優れ、強度が高い。
【0012】
また本発明の高分子電解質膜を製造する技術を応用すれば、架橋PTFE多孔膜の孔径を調整し、その多孔膜に付与する機能、さらには孔に充填する樹脂とその機能を組み合わせることにより、任意の複合的機能を有する膜材が得られる。孔に充填する樹脂は、樹脂またはそのモノマー類を気体または液体で充填したり、加熱溶融や熱プレスで充填したり、溶媒に溶解させた状態で含浸した後に溶媒を除去するなどの方法で孔に充填できるものであれば、その種類を問わない。ここで架橋PTFE多孔膜に付与する機能およびその孔に充填する樹脂の機能とは、強酸性、弱酸性、強塩基性、弱塩基性、選択吸着性、選択透過性などを言う。複合的機能とは、イオン交換、気体分離、液体分離、吸着、逆浸透、透析、濾過などの任意の組み合わせを言う。
【0013】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
市販のPTFE多孔質膜(フロン工業製、製品名:テフロンフィルターフィルム、サイズ:140×140×0.180mm、孔径:3μm)に電子線を100kGy照射して、予め架橋させた膜を用意した。
【0014】
この架橋PTFE膜をブレーカブルシール付きのガラスアンプルに入れ、真空脱気して、室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射してラジカルを生成させた。次いで、真空に保持されているガラスアンプルに、凍結脱気を十分に行ったスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を60℃で24時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は92%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0015】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られた膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0016】
得られたスルホン化膜に対して、スルホン酸系イオン交換樹脂であるデュポン社のナフィオンNF112をベースとする溶液を含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をナフィオンNF112で完全に埋めた膜を用意した。
【0017】
濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、462.58mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(20℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は7.19mlであった。
【0018】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、452.5mgであった。
【0019】
含水率とイオン交換容量は次式によって求めることができる。
含水率=(Ww−Wd)/Wd×100
イオン交換容量=0.01×(B−A)×(100/40)/Wd
ここで、Bは、0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液40mlの中和滴定に要した0.01MのHCl水溶液の量(今回は39.2ml)である。
【0020】
前記の式により膜のイオン交換容量を求めると1.77meq/g、含水率は2.23%であった。一方、既存のナフィオンNF112膜について同様の方法で測定した結果、イオン交換容量と含水率はそれぞれ1.22meq/gおよび2.77%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。また、ナフィオンを含浸していないスルホン化架橋PTFEフィルターフィルムについても同様の処理を行い、イオン交換容量を測定した結果、1.89meq/gであった。
【0021】
実施例2
実施例1と同様のPTFE多孔膜を用い、同様にして予め架橋させたPTFE膜を用意し、この膜に空気中室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射して過酸化ラジカルを生成させた。次いで、膜をブレーカブルシール付きのH型ガラスアンプルの片方に入れて真空脱気した。さらに、もう一方のガラスアンプルにスチレンモノマーを入れて、十分に凍結脱気を行った。真空中に保持されている架橋PTFE膜にスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を50℃で32時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は119%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0022】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られた膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0023】
得られたスルホン化膜に対して、デュポン社のナフィオンNF112ベースの溶液を含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をナフィオンNF112で完全に埋めた膜を用意した。
【0024】
濃度2MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、483.19mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(25℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は5.32mlであった。
【0025】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、471.88mgであった。
【0026】
実施例1と同様にして膜のイオン交換容量を求めると1.80meq/g、含水率は2.40%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。また、ナフィオンを含浸していないスルホン化架橋PTFEフィルターフィルムについても同様の処理を行い、イオン交換容量を測定した結果、1.92meq/gであった。
【0027】
実施例3
実施例1と同様のPTFE多孔膜を用い、同様にして予め架橋させたPTFE膜を用意し、この膜をブレーカブルシール付きのガラスアンプルに入れ、真空脱気して、室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射してラジカルを生成させた。次いで、真空に保持されているガラスアンプルに、凍結脱気を十分に行ったスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を60℃で24時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は92%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0028】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られた膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0029】
得られたスルホン化膜に対して、カルボン酸系イオン交換樹脂である旭硝子社のフレミオンをベースとする溶液を含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をフレミオンで完全に埋めた膜を用意した。
【0030】
濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、470.12mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(20℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は9.22mlであった。
【0031】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、462.30mgであった。
【0032】
実施例1と同様にして膜のイオン交換容量を求めると1.62meq/g、含水率は1.69%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。
【0033】
実施例4
実施例1と同様のPTFE多孔膜を用い、同様にして予め架橋させたPTFE膜を用意し、この膜をブレーカブルシール付きのガラスアンプルに入れ、真空脱気して、室温でコバルト60によるγ線を30kGy照射してラジカルを生成させた。次いで、真空に保持されているガラスアンプルに、凍結脱気を十分に行ったスチレンモノマーをブレーカブルシールを介して気相で導入し、全体を60℃で24時間、恒温槽の中に保持し、PTFE膜をスチレンモノマーと反応させた。反応後、四塩化炭素の溶液中に48時間浸漬してスチレンのホモポリマーを十分に取り除いた。次いで、真空乾燥機中で100℃で24時間加熱して乾燥させた後に重量を測定したところ、スチレンモノマーと反応させる前と比較して重量は92%増加していて、グラフト反応したことが確認された。
【0034】
次いで、膜を四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。得られたスルホン化膜を電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、初期の孔径よりも数十%収縮しているものの、直径が約2〜3μmの明瞭な孔が観察された。
【0035】
スチレンモノマー(90vol%)とジビニルベンゼン(10vol%)をベンゼン中でS−ブチルリチウムを開始剤として30℃で24時間反応させ、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のベンゼン溶液を得た。この溶液をスルホン化膜に含浸させては乾燥する操作を3回行い、孔をスチレン−ジビニルベンゼン共重合体で完全に埋めた膜を用意した。
【0036】
膜を再び四塩化炭素(80vol%)とクロロスルホン酸(20vol%)の混合溶液に浸し、50℃で4時間反応させて膜内のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体部分のスルホン化を行い、次いで膜を純水で十分に洗浄した。
【0037】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で洗浄する操作を2回繰り返し、官能基を完全にH型にした。次いで、膜の表面の水分を濾紙で軽くふき取り、水を含んだ状態での膜の重量(Ww(g))を測定した結果、526.34mgであった。次いで、濃度0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液100ml(20℃)に膜を24時間浸漬した後、浸漬液40mlをサンプリングし、メトロームシバタ製自動中和測定装置を用いて、濃度0.01MのHCl水溶液で浸漬液の滴定を行った。0.01MのNaOHを含む濃度1MのNaCl溶液を中和するのに要した0.01MのHCl水溶液の量(A)は5.76mlであった。
【0038】
次いで、濃度1MのHCl溶液に膜を24時間浸漬し、精製水で十分に洗浄した後、真空乾燥機中で60℃で16時間乾燥させた後に膜の重量(Wd(g))を測定したところ、509.63mgであった。
【0039】
実施例1と同様にして膜のイオン交換容量を求めると1.64meq/g、含水率は3.28%であった。従って、既存の膜に対して本発明の膜は、より良好なイオン交換能を示していることがわかる。
【0040】
本発明の高分子電解質膜は、スルホン化した架橋PTFE多孔質膜または繊維状架橋PTFEの不織布に対して、市販の可溶性のパーフルオロスルホン酸樹脂、パーフルオロカルボン酸樹脂または炭化水素系のイオン交換樹脂を含浸して一体成形することによって得られる。この際、含浸させるものは炭化水素系のイオン交換樹脂でもよい。含浸する方法は、既存のイオン交換樹脂を溶液に溶かして行うなど、当業者が容易に取り得る方法を採用することができる。
Claims (2)
- 放射線グラフト法によってスルホン酸基が導入された架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜にパーフルオロスルホン酸系イオン交換材料、パーフルオロカルボン酸系イオン交換材料、および炭化水素系イオン交換材料から選択されるいずれかのイオン交換材料が含浸されていて、複合型イオン交換膜として一体に成形されていることを特徴とする高分子電解質膜。
- 前記架橋ポリテトラフルオロエチレン多孔質体の孔径が10nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜。
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