JP2004273218A - スパークプラグの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストの低廉化を実現しつつ、長寿命のスパークプラグを安定して製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】混合工程において、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉と、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種からなり、平均粒径/主原料粉の平均粒径=0.1〜5である副原料粉とを用意し、32atm%以下の副原料粉と残部の主原料粉とを混合して混合粉を得る。そして、成形工程において、この混合粉により成形体を得る。さらに、焼結工程において、この成形体を焼結してチップを得る。
【選択図】 図1
【解決手段】混合工程において、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉と、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種からなり、平均粒径/主原料粉の平均粒径=0.1〜5である副原料粉とを用意し、32atm%以下の副原料粉と残部の主原料粉とを混合して混合粉を得る。そして、成形工程において、この混合粉により成形体を得る。さらに、焼結工程において、この成形体を焼結してチップを得る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスパークプラグの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特許文献1記載のスパークプラグの製造方法が知られている。この製造方法によるスパークプラグは、筒状の主体金具と、主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、主体金具に一端が固定され、他端部が中心電極の先端部と対向する接地電極と、中心電極及び接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えている。
【0003】
このスパークプラグのチップは、以下ように製造される。まず、Irからなる主原料粉を用意する。Irは、高融点(2410°C)であることにより中心電極や接地電極の耐火花消耗性を向上させることができる。しかし、Irは、高温下で酸化されやすい特質であるため、Rh等のIrの耐高温酸化性を向上させる元素からなる副原料粉も用意し、主原料粉に副原料粉を添加することによりチップの耐高温酸化性も確保しようとしている。これら主原料粉と副原料粉とが混合された混合粉を金型プレス成形、CIP成形、HIP成形等の圧粉成形により成形体を作製する。そして、この成形体を脱脂後に焼結し、チップを得る。なお、この成形方法は焼結法と呼ばれている。そして、得られたチップは、予め用意したInconel(登録商標)等のNi合金からなる中心電極又は接地電極の放電ギャップ側の接合面に溶接される。
【0004】
このように、焼結法によりチップを得れば、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である上、チップに割れやクラックが生じ難いという利点を有している。
【0005】
【特許文献1】
特許2079952号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、発明者らの試験結果によれば、上記特許文献1記載の製造方法では、長寿命のスパークプラグを安定して製造することができないおそれがある。
【0007】
すなわち、この製造方法では、副原料粉の含有量が低い場合、副原料粉の粒径が大きいと、焼結時にチップに副原料粉を均一に分散させることができない事態を生じてしまう。また、副原料粉の含有量が高い場合、副原料粉の粒径が小さいと、焼結時に副原料がチップから溶出する事態を生じてしまう。そのため、これらのチップを電極母材の接合面に溶接すると、チップ内の気孔が起点となって未だ微小な割れやクラックや割れが生じるおそれがある。また、このようなチップは、熱引きが悪く、局部的な消耗が発生するおそれもある。このため、このようなチップを用いたスパークプラグは長い寿命を発揮し難い。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化を実現しつつ、長寿命のスパークプラグを安定して製造することができる製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1発明のスパークプラグの製造方法は、筒状の主体金具と、該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部が該中心電極の先端部と対向する接地電極と、該中心電極及び該接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えるスパークプラグの製造方法において、
前記チップは、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉に、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種以上からなり、平均粒径が主原料粉の平均粒径の0.1〜5倍である副原料粉を32atm%以下混合させ、混合粉を得る混合工程と、
該混合粉により成形体を得る成形工程と、
該成形体を焼結する焼結工程とにより製造することを特徴とする。
【0010】
第1発明のスパークプラグの製造方法では、混合工程において、Irからなる主原料粉と、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種からなる副原料粉とにより混合粉を得る。主原料粉は平均粒径が0.5〜12μmである。副原料粉は平均粒径が主原料粉の平均粒径の0.1〜5倍である。そして、成形工程で混合粉により成形体を得る。さらに、焼結工程で成形体を焼結してチップを得る。このスパークプラグの製造方法では、成形体を焼結してチップとするため、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である。
【0011】
特に、市販品のIrからなる主原料粉についての平均粒径を測定した結果を表1に示す。表1は、平均粒径を53の区間に分け、それぞれの区間に属する主原料粉の累積の割合(%)及び区間の割合(%)を示している。また、図3は、表1に示した区間に属する主原料粉の粒度分布をグラフに表したものである。横軸は粒径(μm)を常用対数で表示したものであり、縦軸Q3は区間に属する主原料粉の累積の割合(%)を表し、縦軸q3は区間の割合(%)を表している。表1及び図3によれば、主原料粉の平均粒径は6.3μmであり、その粒径は1.527μm〜23.313μmまで分布し、その中央値は7.074μmであることがわかる。現状では、平均粒径が0.5μm未満の主原料粉は生産できず、平均粒径が12μmより大きい主原料粉では焼結が不可能である。
【0012】
【表1】
【0013】
また、Irの耐酸化性を向上させる元素としては、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種が採用され得る。これらの金属は高融点(1453°C〜3400°C)であり、副原料粉として適している。発明者らの試験結果によれば、混合工程において、上記主原料粉に対し、これらRh等からなる副原料粉として、平均粒径が主原料粉の平均粒径の0.1〜5倍であるものを32atm%以下含有させる。このように、副原料粉の含有量を比較的低くするのであれば、焼結時にチップに副原料粉を均一に分散させることができる。なお、このように比較的粒径の小さい副原料粉の絶対量が少なけば、副原料の溶出については問題とならない。
【0014】
なお、図3に示すように、横軸が粒径(μm)を常用対数で表示し、縦軸Q3が累積の割合(%)を表す粒度分布を作成した際、主原料粉及び副原料粉の粒径は、平均粒径をxとしたときのlogx±0.5の範囲内において、主原料粉又は副原料粉の累積割合が80%以上となる。例えば、図3の粒度分布の場合、上述したように、表1より平均粒径x=6.3(μm)であり、logx=0.8となる。よって、logx±0.5は0.3〜1.3の範囲となる。0.3の時は粒径が2.0(μm)、1.3の時は粒径が20(μm)となり、表1より、この範囲内の累積割合は97.93以上となる。この範囲内の累積割合が80%未満であると、副原料粉の分散及び溶出が有効にできない虞がある。
【0015】
第2発明のスパークプラグの製造方法は、筒状の主体金具と、該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部が該中心電極の先端部と対向する接地電極と、該中心電極及び該接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えるスパークプラグの製造方法において、
前記チップは、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉に、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種以上からなり、平均粒径が主原料粉の平均粒径の1〜10倍である副原料粉を32atm%を超えるように混合させ、混合粉を得る混合工程と、
該混合粉により成形体を得る成形工程と、
該成形体を焼結する焼結工程とにより製造することを特徴とする。
【0016】
第2発明のスパークプラグの製造方法においても、成形体を焼結してチップとするため、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である。また、発明者らの試験結果によれば、混合工程において、上記主原料粉に対し、Rh等からなる副原料粉として、平均粒径が主原料粉の平均粒径の1〜10倍であるものを32atm%を超えて含有させる。このように、副原料粉の含有量を比較的高くするのであれば、焼結時に副原料粉がチップから溶出するのを防止できる。なお、このように比較的粒径の大きい副原料粉の絶対量が多ければ、副原料粉の分散性については問題とならない。
【0017】
こうして、第1、2発明の製造方法で得られるチップを電極母材の接合面に溶接するのであれば、チップに微小な割れやクラックや割れが生じるおそれが少ない。また、このようなチップは、熱引きが良く、局部的な消耗が発生し難い。このため、このようなチップを用いたスパークプラグは長い寿命を発揮することができる。
【0018】
したがって、第1、2発明の製造方法によれば、製造コストの低廉化を実現しつつ、長寿命のスパークプラグを安定して製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスパークプラグの製造方法を試験1〜17により説明する。
【0020】
先ず、図1に示すように、チップ製造工程S1において、チップを製造する。チップ製造工程S1は、混合工程S11、成形工程S12、脱脂工程S13及び焼結工程S14からなる。
【0021】
混合工程S11では、まず、主原料粉として、Irからなり、平均粒径が0.5μm又は2.0μmのものを用意する。
【0022】
また、副原料粉として、Rhからなり、平均粒径が0.5μm、1.0μm、2.0μm、3.0μm、7.0μm、10.0μm、19.0μmのものを用意する。同様に、副原料粉として、Niからなり、平均粒径が0.5μmのものを用意する。なお、図3に示すように、横軸が粒径(μm)を常用対数で表示し、縦軸Q3が累積の割合(%)を表す粒度分布を作成した際、主原料粉及び副原料粉の粒径は、平均粒径をxとしたときのlogx±0.5の範囲内において、主原料粉又は副原料粉の累積割合が80%以上となっている。主原料粉及び副原料粉の平均粒径を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
そして、表2に示す成分混合割合で主原料粉と副原料粉とを混合し、さらに主原料粉及び副原料粉の合計の質量に対して1質量%のバインダであるPVAを混合して混合物とする。
【0025】
そして、成形工程S12では、その混合物を金型プレス成形方法により40Paの加圧力で加圧し、直径0.7(mm)、高さ0.9(mm)の円柱状の成形体とする。
【0026】
さらに、脱脂工程S13では、水素雰囲気中で1000°C〜1100°Cで成形体を10時間加熱し、成形体からバインダを除去する。
【0027】
その後、焼結工程S14において、1950°C、水素雰囲気中で脱脂後の成形体を1時間焼結し、試料No.1〜17のチップが完成する。
【0028】
試料No.1〜17のチップについて、副原料粉の分散性及び内部欠陥の有無について調べた。その結果も表2に示す。副原料粉の分散性について、〇は分散性のよいもの、×は分散性の悪いものを表す。また、内部欠陥の有無について、〇は内部欠陥の認められないもの、×は内部欠陥の認められるものを表す。
【0029】
表2によれば、副原料粉の含有量が32atm%以下である場合、副原料粉の平均粒径が比較的大きい試料2、5、12、13についてのみ分散性が悪いものの、内部欠陥については全ての試料で認められなかった。また、副原料粉の含有量が45atm%である場合、Irの平均粒径が0.5μm、Rhの平均粒径が7μmである試料8についてのみ内部欠陥が認められた。しかし、分散性についてはすべての試料で良い結果がでた。これらのことより、副原料粉の含有量が32atm%以下で、副原料粉の平均粒径が比較的小さい場合と、副原料粉の含有量が32atm%より多く、副原料粉の平均粒径が比較的大きい場合とにおいて、分散性がよく、内部欠陥がないことが確認できる。
【0030】
そして、溶接工程S2においては、チップを図2に示す中心電極の電極母材30にレーザ溶接する。ただし、中心電極30の電極母材は組み付けられる前の状態であり、Inconel(登録商標)600のNi合金からなる直径2.5(mm)のものである。最後に、組付工程S3において、先端が突出するように絶縁体62内に中心電極30を組み込み、絶縁体62内の中心電極30の後端に端子63を挿入する。そして、これらを主体金具60に組み込む。
【0031】
同様に、予め主体金具60に溶接された接地電極40の電極母材にチップをレーザ溶接する。この接地電極40の電極母材は、中心電極30と同様、Inconel(登録商標)600のNi合金からなる幅2.5(mm)のものである。こうして、図2に示すスパークプラグが完成する。
【0032】
この製造方法では、成形体を焼結してチップとするため、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である。また、特定の割合及び特定の粒度分布で主原料粉と副原料粉とを混合しているため、チップには、副原料が均一に分散し、かつ副原料の溶出が問題となることはなかった。そして、このチップを中心電極30や接地電極40の電極母材の接合面に溶接しても、チップに微小な割れやクラックや割れは生じなかった。また、このチップは、熱引きが良く、局部的な消耗が発生し難いものであった。
【0033】
したがって、試験に示すスパークプラグの製造方法(試料1、3、4、6、7、9〜11、14〜17)によれば、製造コストの低廉化を実現しつつ、長寿命のスパークプラグを安定して製造できることがわかる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、副原料粉として、Rh及びNiを採用したが、Pt、Pd、W又はRuを副原料粉として用いても、同様である。
【0035】
さらに、主原料粉及び副原料粉の混合粉にIrの耐高温酸化性を向上させるものとして、Y2O3やZr2O3等の酸化物を含有させてもよい。なお、酸化物の含有量は副原料粉の含有量を越えないようにして適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係り、スパークプラグの製造方法の工程図である。
【図2】実施形態に係り、スパークプラグの一部断面の側面図である。
【図3】実施形態に係り、市販品のIrについての粒径のグラフである。
【符号の説明】
60…主体金具
62…絶縁体
30…中心電極
40…接地電極
S1…チップ製造工程
S11…混合工程
S12…成形工程
S13…脱脂工程
S14…焼結工程
S2…溶接工程
S3…組付工程
【発明の属する技術分野】
本発明はスパークプラグの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特許文献1記載のスパークプラグの製造方法が知られている。この製造方法によるスパークプラグは、筒状の主体金具と、主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、主体金具に一端が固定され、他端部が中心電極の先端部と対向する接地電極と、中心電極及び接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えている。
【0003】
このスパークプラグのチップは、以下ように製造される。まず、Irからなる主原料粉を用意する。Irは、高融点(2410°C)であることにより中心電極や接地電極の耐火花消耗性を向上させることができる。しかし、Irは、高温下で酸化されやすい特質であるため、Rh等のIrの耐高温酸化性を向上させる元素からなる副原料粉も用意し、主原料粉に副原料粉を添加することによりチップの耐高温酸化性も確保しようとしている。これら主原料粉と副原料粉とが混合された混合粉を金型プレス成形、CIP成形、HIP成形等の圧粉成形により成形体を作製する。そして、この成形体を脱脂後に焼結し、チップを得る。なお、この成形方法は焼結法と呼ばれている。そして、得られたチップは、予め用意したInconel(登録商標)等のNi合金からなる中心電極又は接地電極の放電ギャップ側の接合面に溶接される。
【0004】
このように、焼結法によりチップを得れば、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である上、チップに割れやクラックが生じ難いという利点を有している。
【0005】
【特許文献1】
特許2079952号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、発明者らの試験結果によれば、上記特許文献1記載の製造方法では、長寿命のスパークプラグを安定して製造することができないおそれがある。
【0007】
すなわち、この製造方法では、副原料粉の含有量が低い場合、副原料粉の粒径が大きいと、焼結時にチップに副原料粉を均一に分散させることができない事態を生じてしまう。また、副原料粉の含有量が高い場合、副原料粉の粒径が小さいと、焼結時に副原料がチップから溶出する事態を生じてしまう。そのため、これらのチップを電極母材の接合面に溶接すると、チップ内の気孔が起点となって未だ微小な割れやクラックや割れが生じるおそれがある。また、このようなチップは、熱引きが悪く、局部的な消耗が発生するおそれもある。このため、このようなチップを用いたスパークプラグは長い寿命を発揮し難い。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化を実現しつつ、長寿命のスパークプラグを安定して製造することができる製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1発明のスパークプラグの製造方法は、筒状の主体金具と、該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部が該中心電極の先端部と対向する接地電極と、該中心電極及び該接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えるスパークプラグの製造方法において、
前記チップは、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉に、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種以上からなり、平均粒径が主原料粉の平均粒径の0.1〜5倍である副原料粉を32atm%以下混合させ、混合粉を得る混合工程と、
該混合粉により成形体を得る成形工程と、
該成形体を焼結する焼結工程とにより製造することを特徴とする。
【0010】
第1発明のスパークプラグの製造方法では、混合工程において、Irからなる主原料粉と、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種からなる副原料粉とにより混合粉を得る。主原料粉は平均粒径が0.5〜12μmである。副原料粉は平均粒径が主原料粉の平均粒径の0.1〜5倍である。そして、成形工程で混合粉により成形体を得る。さらに、焼結工程で成形体を焼結してチップを得る。このスパークプラグの製造方法では、成形体を焼結してチップとするため、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である。
【0011】
特に、市販品のIrからなる主原料粉についての平均粒径を測定した結果を表1に示す。表1は、平均粒径を53の区間に分け、それぞれの区間に属する主原料粉の累積の割合(%)及び区間の割合(%)を示している。また、図3は、表1に示した区間に属する主原料粉の粒度分布をグラフに表したものである。横軸は粒径(μm)を常用対数で表示したものであり、縦軸Q3は区間に属する主原料粉の累積の割合(%)を表し、縦軸q3は区間の割合(%)を表している。表1及び図3によれば、主原料粉の平均粒径は6.3μmであり、その粒径は1.527μm〜23.313μmまで分布し、その中央値は7.074μmであることがわかる。現状では、平均粒径が0.5μm未満の主原料粉は生産できず、平均粒径が12μmより大きい主原料粉では焼結が不可能である。
【0012】
【表1】
【0013】
また、Irの耐酸化性を向上させる元素としては、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種が採用され得る。これらの金属は高融点(1453°C〜3400°C)であり、副原料粉として適している。発明者らの試験結果によれば、混合工程において、上記主原料粉に対し、これらRh等からなる副原料粉として、平均粒径が主原料粉の平均粒径の0.1〜5倍であるものを32atm%以下含有させる。このように、副原料粉の含有量を比較的低くするのであれば、焼結時にチップに副原料粉を均一に分散させることができる。なお、このように比較的粒径の小さい副原料粉の絶対量が少なけば、副原料の溶出については問題とならない。
【0014】
なお、図3に示すように、横軸が粒径(μm)を常用対数で表示し、縦軸Q3が累積の割合(%)を表す粒度分布を作成した際、主原料粉及び副原料粉の粒径は、平均粒径をxとしたときのlogx±0.5の範囲内において、主原料粉又は副原料粉の累積割合が80%以上となる。例えば、図3の粒度分布の場合、上述したように、表1より平均粒径x=6.3(μm)であり、logx=0.8となる。よって、logx±0.5は0.3〜1.3の範囲となる。0.3の時は粒径が2.0(μm)、1.3の時は粒径が20(μm)となり、表1より、この範囲内の累積割合は97.93以上となる。この範囲内の累積割合が80%未満であると、副原料粉の分散及び溶出が有効にできない虞がある。
【0015】
第2発明のスパークプラグの製造方法は、筒状の主体金具と、該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部が該中心電極の先端部と対向する接地電極と、該中心電極及び該接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えるスパークプラグの製造方法において、
前記チップは、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉に、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種以上からなり、平均粒径が主原料粉の平均粒径の1〜10倍である副原料粉を32atm%を超えるように混合させ、混合粉を得る混合工程と、
該混合粉により成形体を得る成形工程と、
該成形体を焼結する焼結工程とにより製造することを特徴とする。
【0016】
第2発明のスパークプラグの製造方法においても、成形体を焼結してチップとするため、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である。また、発明者らの試験結果によれば、混合工程において、上記主原料粉に対し、Rh等からなる副原料粉として、平均粒径が主原料粉の平均粒径の1〜10倍であるものを32atm%を超えて含有させる。このように、副原料粉の含有量を比較的高くするのであれば、焼結時に副原料粉がチップから溶出するのを防止できる。なお、このように比較的粒径の大きい副原料粉の絶対量が多ければ、副原料粉の分散性については問題とならない。
【0017】
こうして、第1、2発明の製造方法で得られるチップを電極母材の接合面に溶接するのであれば、チップに微小な割れやクラックや割れが生じるおそれが少ない。また、このようなチップは、熱引きが良く、局部的な消耗が発生し難い。このため、このようなチップを用いたスパークプラグは長い寿命を発揮することができる。
【0018】
したがって、第1、2発明の製造方法によれば、製造コストの低廉化を実現しつつ、長寿命のスパークプラグを安定して製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスパークプラグの製造方法を試験1〜17により説明する。
【0020】
先ず、図1に示すように、チップ製造工程S1において、チップを製造する。チップ製造工程S1は、混合工程S11、成形工程S12、脱脂工程S13及び焼結工程S14からなる。
【0021】
混合工程S11では、まず、主原料粉として、Irからなり、平均粒径が0.5μm又は2.0μmのものを用意する。
【0022】
また、副原料粉として、Rhからなり、平均粒径が0.5μm、1.0μm、2.0μm、3.0μm、7.0μm、10.0μm、19.0μmのものを用意する。同様に、副原料粉として、Niからなり、平均粒径が0.5μmのものを用意する。なお、図3に示すように、横軸が粒径(μm)を常用対数で表示し、縦軸Q3が累積の割合(%)を表す粒度分布を作成した際、主原料粉及び副原料粉の粒径は、平均粒径をxとしたときのlogx±0.5の範囲内において、主原料粉又は副原料粉の累積割合が80%以上となっている。主原料粉及び副原料粉の平均粒径を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
そして、表2に示す成分混合割合で主原料粉と副原料粉とを混合し、さらに主原料粉及び副原料粉の合計の質量に対して1質量%のバインダであるPVAを混合して混合物とする。
【0025】
そして、成形工程S12では、その混合物を金型プレス成形方法により40Paの加圧力で加圧し、直径0.7(mm)、高さ0.9(mm)の円柱状の成形体とする。
【0026】
さらに、脱脂工程S13では、水素雰囲気中で1000°C〜1100°Cで成形体を10時間加熱し、成形体からバインダを除去する。
【0027】
その後、焼結工程S14において、1950°C、水素雰囲気中で脱脂後の成形体を1時間焼結し、試料No.1〜17のチップが完成する。
【0028】
試料No.1〜17のチップについて、副原料粉の分散性及び内部欠陥の有無について調べた。その結果も表2に示す。副原料粉の分散性について、〇は分散性のよいもの、×は分散性の悪いものを表す。また、内部欠陥の有無について、〇は内部欠陥の認められないもの、×は内部欠陥の認められるものを表す。
【0029】
表2によれば、副原料粉の含有量が32atm%以下である場合、副原料粉の平均粒径が比較的大きい試料2、5、12、13についてのみ分散性が悪いものの、内部欠陥については全ての試料で認められなかった。また、副原料粉の含有量が45atm%である場合、Irの平均粒径が0.5μm、Rhの平均粒径が7μmである試料8についてのみ内部欠陥が認められた。しかし、分散性についてはすべての試料で良い結果がでた。これらのことより、副原料粉の含有量が32atm%以下で、副原料粉の平均粒径が比較的小さい場合と、副原料粉の含有量が32atm%より多く、副原料粉の平均粒径が比較的大きい場合とにおいて、分散性がよく、内部欠陥がないことが確認できる。
【0030】
そして、溶接工程S2においては、チップを図2に示す中心電極の電極母材30にレーザ溶接する。ただし、中心電極30の電極母材は組み付けられる前の状態であり、Inconel(登録商標)600のNi合金からなる直径2.5(mm)のものである。最後に、組付工程S3において、先端が突出するように絶縁体62内に中心電極30を組み込み、絶縁体62内の中心電極30の後端に端子63を挿入する。そして、これらを主体金具60に組み込む。
【0031】
同様に、予め主体金具60に溶接された接地電極40の電極母材にチップをレーザ溶接する。この接地電極40の電極母材は、中心電極30と同様、Inconel(登録商標)600のNi合金からなる幅2.5(mm)のものである。こうして、図2に示すスパークプラグが完成する。
【0032】
この製造方法では、成形体を焼結してチップとするため、複雑な形状のチップであっても、製造が容易である。また、特定の割合及び特定の粒度分布で主原料粉と副原料粉とを混合しているため、チップには、副原料が均一に分散し、かつ副原料の溶出が問題となることはなかった。そして、このチップを中心電極30や接地電極40の電極母材の接合面に溶接しても、チップに微小な割れやクラックや割れは生じなかった。また、このチップは、熱引きが良く、局部的な消耗が発生し難いものであった。
【0033】
したがって、試験に示すスパークプラグの製造方法(試料1、3、4、6、7、9〜11、14〜17)によれば、製造コストの低廉化を実現しつつ、長寿命のスパークプラグを安定して製造できることがわかる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、副原料粉として、Rh及びNiを採用したが、Pt、Pd、W又はRuを副原料粉として用いても、同様である。
【0035】
さらに、主原料粉及び副原料粉の混合粉にIrの耐高温酸化性を向上させるものとして、Y2O3やZr2O3等の酸化物を含有させてもよい。なお、酸化物の含有量は副原料粉の含有量を越えないようにして適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係り、スパークプラグの製造方法の工程図である。
【図2】実施形態に係り、スパークプラグの一部断面の側面図である。
【図3】実施形態に係り、市販品のIrについての粒径のグラフである。
【符号の説明】
60…主体金具
62…絶縁体
30…中心電極
40…接地電極
S1…チップ製造工程
S11…混合工程
S12…成形工程
S13…脱脂工程
S14…焼結工程
S2…溶接工程
S3…組付工程
Claims (2)
- 筒状の主体金具と、該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部が該中心電極の先端部と対向する接地電極と、該中心電極及び該接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えるスパークプラグの製造方法において、
前記チップは、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉に、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種以上からなり、平均粒径が主原料粉の平均粒径の0.1〜5倍である副原料粉を32atm%以下混合させ、混合粉を得る混合工程と、
該混合粉により成形体を得る成形工程と、
該成形体を焼結する焼結工程とにより製造することを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 筒状の主体金具と、該主体金具内に固定された筒状の絶縁体と、該絶縁体内の先端側に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、他端部が該中心電極の先端部と対向する接地電極と、該中心電極及び該接地電極の少なくともいずれか一方に固着され、火花放電ギャップを形成するチップとを備えるスパークプラグの製造方法において、
前記チップは、Irからなり、平均粒径が0.5〜12μmである主原料粉に、Rh、Pt、Pd、Ni、W及びRuの少なくとも1種以上からなり、平均粒径が主原料粉の平均粒径の1〜10倍である副原料粉を32atm%を超えるように混合させ、混合粉を得る混合工程と、
該混合粉により成形体を得る成形工程と、
該成形体を焼結する焼結工程とにより製造することを特徴とするスパークプラグの製造方法。
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