JP2004235040A - スパークプラグ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】中心電極20及び接地電極30の少なくとも一方は、クロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金によって構成されている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスパークプラグ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパークプラグは、筒状の主体金具を備えており、この主体金具内には、主体金具の軸方向に延在し、両端を主体金具の両端から突出させた筒状の絶縁体が固定されている。また、主体金具の軸方向には中心電極が延在し、中心電極の先端は絶縁体の先端から突出され、中心電極の後端は絶縁体内に固定されている。一方、主体金具には接地電極の一端が固定され、接地電極の他端部は中心電極との間に放電ギャップを形成している。
【0003】
一般的なスパークプラグの中心電極及び接地電極は、各々Inconel(登録商標)600等のNi合金等からなる。また、近年、エンジンの苛酷な稼動条件に耐え得るスパークプラグが求められており、この耐久性が要求されるスパークプラグの中心電極及び接地電極は、上記電極母材と、この電極母材の放電ギャップ側を形成する位置に溶接されたIrを含むPt合金等の耐火花消耗材からなるチップとを有している。特に高い耐久性が要求されるスパークプラグの中心電極及び接地電極は、そのような電極母材やそのチップにタングステン−クロム合金が採用されようとしている(特許文献1参照。)。
【0004】
同特許文献1に記載のように、タングステンは、融点が3407°Cと極めて高い材料であることから、スパークプラグの中心電極や接地電極として用いられることにより、耐熱性や耐火花消耗性の点で優れていると考えられるものの、酸素との親和力が大きいことから高温での耐酸化性や耐腐食性に懸念がある。他方、クロムは、融点が1857°Cとタングステンに比して低い材料であることから、スパークプラグの中心電極や接地電極として耐熱性や耐火花消耗性はさほど期待できないものの、タングステンの耐酸化性や耐腐食性を補う性質を有している。このため、タングステンとクロムとを含有するタングステン−クロム合金がスパークプラグの中心電極や接地電極として用いられれば、タングステン及びクロムの特性を生かしつつ、互いの欠点を補うことにより、優れた耐熱性や耐火花消耗性を発揮しつつ、耐酸化性や耐腐食性の懸念を払拭することが可能と考えられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−348640号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1記載のように、タングステン−クロム合金をスパークプラグの中心電極や接地電極として用いようとしても、その中心電極や接地電極が必ずしも優れた耐熱性や耐火花消耗性を発揮できず、高温での耐酸化性や耐腐食性も十分でない場合があることが明らかとなった。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性や耐火花消耗性と高温での耐酸化性や耐腐食性とをより確実に発揮可能なスパークプラグ及びその製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題解決のために鋭意研究を行い、上記のように確実性に欠ける原因がクロムの偏析によって生じていることを発見し、本発明を完成するに至った。すなわち、クロムが偏析すれば、その偏析を生じている部分では、クロムの濃度が相対的に高い分、タングステンの濃度が相対的に低下しており、融点が低下することとなる。また、クロムが偏析すれば、偏析を生じていない部分では、クロムの濃度が相対的に低くなり、耐酸化性や耐腐食性が低下することとなる。
【0009】
本発明のスパークプラグは、筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、該主体金具の内側に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、放電可能な先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とを備えたスパークプラグにおいて、
【0010】
前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方は、クロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金によって構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のスパークプラグの中心電極及び接地電極の少なくとも一方は、クロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金によって構成されており、換言すれば、タングステンとクロムとがともに相手側に対して好適に分散して固溶したものとなっている。このため、タングステンの特性による優れた耐熱性や耐火花消耗性が発揮されるとともに、クロムの特性による高温での耐酸化性や耐腐食性も発揮される。
【0012】
したがって、本発明のスパークプラグによれば、優れた耐熱性や耐火花消耗性と高温での耐酸化性や耐腐食性とをより確実に発揮することができる。このため、このスパークプラグを用いれば、苛酷なエンジンの稼動条件の下でも優れた耐久性を発揮することができる。
【0013】
本発明において、クロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金はそのまま中心電極及び接地電極を構成してもよく、チップが溶接される電極母材を構成してもよく、電極母材に溶接されるチップを構成してもよい。特に、中心電極及び接地電極において、放電を行う部分がクロムの偏析の少ないタングステン−クロム合金であることが好ましい。
【0014】
ここで、タングステン−クロム合金は、30質量%以上のクロムを含むクロム系組織が面積の35%未満を占めるものであることが好ましい。すなわち、この場合、30質量%以上のクロムを含むクロム系組織がクロムの偏析部分であり、このクロムの偏析部分がタングステン−クロム合金の面積の35%未満を占めておれば、クロムの偏析が少ないと言い得る。発明者らの試験結果によれば、この場合に本発明の効果を生じる。なお、タングステン−クロム合金の面積において30質量%以上のクロムを含むクロム系組織が35%未満を占めるということは、タングステン−クロム合金の表面ばかりでなく、断面においても、30質量%以上のクロムを含むクロム系組織が35%未満の面積を占めていることとなる。
【0015】
他方、タングステン−クロム合金は、50質量%以上のタングステンを含むタングステン系組織が面積の65%以上を占めるものであることも好ましい。すなわち、この場合、50質量%以上のタングステンを含むタングステン系組織以外がクロムの偏析部分であり、このクロムの偏析部分以外の部分がタングステン−クロム合金の面積の65%以上を占めておれば、クロムの偏析が少ないと言い得る。発明者らの試験結果によれば、この場合に本発明の効果を生じる。なお、タングステン−クロム合金の面積において50質量%以上のタングステンを含むタングステン系組織が面積の65%以上を占めるということは、タングステン−クロム合金の表面ばかりでなく、断面においても、50質量%以上のタングステンを含むタングステン系組織が65%以上の面積を占めていることとなる。
【0016】
発明者らの試験結果によれば、タングステン−クロム合金は、タングステン60〜97質量部と、クロム3〜30質量部とを含むことが好ましい。ここで、質量部とは、タングステン−クロム合金の全質量を分母とし、タングステン−クロム合金に含まれるタングステン又はクロムの質量を分子とした割合である。タングステン−クロム合金が実質的にタングステン及びクロムからなり、タングステン−クロム合金の全質量部が100に相当すれば、質量部は質量%と等しい。なお、実質的にとは不可避の不純物を含み得ることを意味する。タングステンとクロムとをこの範囲内としたタングステン−クロム合金であれば、クロムの偏析が少なく、本発明の効果を生じる。タングステン−クロム合金は、タングステン70〜80質量部と、クロム20〜30質量部とを含むことがより好ましい。
【0017】
また、タングステン−クロム合金は、La、Re、Si及びIrの少なくとも1種類を含むことが好ましい。La、Re、Si及びIrは、タングステン−クロム合金中において、表面からのクロムの揮発を抑制することができるからである。発明者らの試験結果によれば、タングステン−クロム合金中において、La、Re、Si及びIrの少なくとも1種類は各々及び合計が10質量%未満で含まれておれば、クロムの揮発の抑制を十分に行うことができる。つまり、La、Re、Si又はIrのいずれか1種類が10質量%未満で含まれている場合、また、La、Re、Si又はIrのいずれか2種類の合計が10質量%未満で含まれている場合、さらに、La、Re、Si又はIrのいずれか3種類の合計が10質量%未満で含まれている場合、また、La、Re、Si及びIrの4種類の合計が10質量%未満で含まれている場合であれば、クロムの揮発の抑制を行うことができるのである。
【0018】
また、本発明のスパークプラグは、本発明のスパークプラグの製造方法により製造することができる。すなわち、この製造方法は、筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、該主体金具の内側に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、放電可能な先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とを備えたスパークプラグの製造方法において、
【0019】
少なくともタングステン粉末及びクロム粉末を含む混合粉末により成形体を得る成形工程と、該成形体を水素雰囲気で焼結し、一次焼結体を得る一次焼結工程と、該一次焼結体を真空雰囲気、窒素雰囲気又は不活性ガス雰囲気で該一次焼結工程の温度を超えない温度により焼結し、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方を得る二次焼結工程とを備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明のスパークプラグの製造方法では、成形工程において、少なくともタングステン粉末及びクロム粉末を含む混合粉末により成形体を得る。そして、一次焼結工程において、成形体を水素雰囲気で焼結し、一次焼結体を得る。発明者らの試験結果によれば、こうして成形体を水素雰囲気で焼結することにより、クロムが表面から揮発することを抑制することができる。この後、二次焼結工程において、一次焼結体を真空雰囲気、窒素雰囲気又は不活性ガス雰囲気で一次焼結工程の温度を超えない温度により焼結し、中心電極及び接地電極の少なくとも一方を得る。発明者らの試験結果によれば、こうして一次焼結体を真空雰囲気、窒素雰囲気又は不活性ガス雰囲気で一次焼結工程の温度を超えない温度により焼結することにより、内部のクロムの濃度を均一化することができる。成形体を真空雰囲気、窒素雰囲気又は不活性ガス雰囲気で焼結後、水素雰囲気で焼結すると、却ってクロムの揮発量が多くなってしまう。また、二次焼結工程を一次焼結工程の温度以上の温度で行なってもクロムの揮発量が多くなってしまう。発明者らの試験結果によれば、こうして中心電極及び接地電極の少なくとも一方を得れば、クロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金を得ることができる。このため、こうして得られるスパークプラグによって本発明の効果を奏することができる。
【0021】
ここで、二次焼結工程では、加圧焼結を行なうことが好ましい。加圧焼結としては、例えば、熱間等方圧加工(HIP)処理等を用いることができる。加圧焼結によってタングステン−クロム合金の焼結強度が高められることとなり、タングステン−クロム合金の結晶密度を高めることができるからである。このため、中心電極及び設置電極の強度を高めることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスパークプラグ及びその製造方法を具体化した実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(試験例)
先ず、図1に示すように、成形工程S10において、W、Cr、La2O3、Re、Si及びIrの各金属粉末を表1に示す各試料1〜19の組合せで混合する。なお、各元素記号の前の数字は質量%である。こうして得られる混合粉末をプレスによって成形する。こうして、表1に示す各試料1〜19の成形体を得る。
【0024】
【表1】
【0025】
次に、図1に示すように、一次焼結工程S20において、各試料1〜19の成形体を表1に示す雰囲気中において1600(°C)で焼結する。こうして表1に示す各試料1〜19の一次焼結体を得る。
【0026】
次いで、図1に示すように、二次焼結工程S30において、各試料1〜13の一次焼結体を表1に示す雰囲気で焼結する。その際、真空雰囲気の場合は1600(°C)の温度で焼結を行う。また、窒素や不活性ガス雰囲気の場合は1500(°C)の温度でHIPによる加圧焼結を行う。タングステン−クロム合金の焼結強度が高められ、その結晶密度を高めることができるからである。こうして二次焼結工程S30において、一次焼結工程S20の温度を超えない温度により焼結を行う。なお、各試料14〜19の一次焼結体については、二次焼結工程S30を行っていない。
【0027】
こうして得られた各試料1〜19を接地電極のチップとして、以下に示す机上耐酸化試験及びエンジン耐久試験を行う。
【0028】
机上耐酸化試験では、先ず、各試料1〜19のチップの質量を測定する。次に、大気雰囲気の電気炉において、各試料1〜19のチップを1050(°C)の温度で20時間加熱した後、そのチップの質量を測定する。そして、数1に示す式において、加熱前の各試料1〜19のチップに対する加熱後の各試料1〜19のチップの質量変化a(%)を求める。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、質量変化a(%)について、50≦a<105(%)の範囲にある場合を◎とし、30≦a<50(%)の範囲にある場合を○とし、0(%)≦a<30(%)、105(%)≦aの範囲にある場合を×とする。その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
また、各試料1〜19のチップを図2に示す接地電極30のチップ31としてスパークプラグ10を製造する。このスパークプラグ10は、筒状の主体金具60を備えており、この主体金具60内には、主体金具60の軸方向に延在し、両端を主体金具60の両端から突出させた筒状の絶縁体62が固定されている。また、主体金具60の軸方向には中心電極20が延在し、中心電極20の先端は絶縁体62の先端から突出され、中心電極20の後端は絶縁体62の後端で図示しない抵抗材及び導電材を介して端子63に電気的に接続されている。一方、主体金具60には、厚さ1(mm)、幅2.2(mm)のNi合金からなる接地電極30の一端が固定され、接地電極30の他端部は中心電極20との間に放電ギャップを形成している。接地電極30の他端部の放電ギャップ側にはφ0.9(mm)のチップ31が固定されている。こうして、中心電極20及び接地電極30は放電ギャップを形成しながら対向して設けられている。ここで、中心電極20の先端と接地電極30のチップ31と間には、1.1(mm)間隔を初期値とした放電ギャップが形成されている。
【0033】
こうして製造されたスパークプラグ10を2800ccの排気量を有する図示しない6気筒エンジンに取り付けることによって、エンジン耐久試験を行う。
【0034】
エンジン耐久試験では、スロットルを全開にして、回転数を5500(rpm)とした苛酷な稼動条件下において、400時間、連続運転する。その際、中心電極20の温度は約900(°C)になっている。そして、エンジンを止めた後、放電ギャップの増加量c(mm)を測定する。ここで、放電ギャップの増加量c(mm)について、0≦c<0.45(mm)の範囲にある場合を◎とし、0.45≦c<0.55(mm)の範囲にある場合を○とし、0.55≦c<0.65(mm)の範囲にある場合を△とし、0.65(mm)≦cの範囲にある場合を×とする。その結果も表2に示す。
【0035】
また、各試料1〜19について、以下に示す方法でW濃度が50(質量%)以上である面積の割合(%)と、Cr濃度が30(質量%)以上である面積の割合(%)とを測定する。
【0036】
まず、各試料1〜19は、図3(a)に示すように、材質の中心Oを通るように切断され、図3(b)に示すように、切断面S1が形成される。こうして切断された切断面S1は、図3(a)に示す各試料1〜19の表面積S0の10(%)以上の面積を有していることがわかる。切断された各試料1〜19の切断面S1に対し、JEOL社製の電子線プローブマイクロアナライザー(JXA−8800M)(以下、EPMAという。)を用い、加速電圧20(kV)、ビーム電流2.5×10−8(mA)、スポット径(1μm以下)の条件下、300×300(μm2)の範囲の定性分析を行う。その際、200倍に拡大されたEPMAの画像において、Cr濃度が30(質量%)以上である場合と、W濃度が50(質量%)以上である場合とで異なる色が着色されるように設定している。こうして着色されたEPMAの画像を解析し、それぞれ着色された面積の割合(%)を算出する。その結果も表2に示す。
【0037】
<確認>
各試料1〜19について、クロム濃度が30(質量%)以上である理論上の面積の割合(%)を確認する。図4では、タングステン−クロム合金に含まれるタングステンと添加物(W及びCr以外の上記金属粉末)との合計の濃度(質量%)を下の横軸として、その濃度に対応するクロムの濃度(質量%)を上の横軸とする。また、クロム濃度が30(質量%)以上である面積の割合(%)を縦軸とする。こうして、クロム濃度が30(質量%)以上である理論上の面積の割合は着色部分A1に示す範囲内である。こうして、表1に示す各試料1〜19において、図4からわかるように、クロム濃度が30(質量%)以上である理論上の面積の割合(%)を表3に示す。
【0038】
また、各試料1〜19について、タングステン濃度が50(質量%)以上である理論上の面積の割合(%)を確認する。図5に示すように、タングステン−クロム合金に含まれるタングステンの濃度(質量%)を下の横軸として、その濃度に対応するクロムの濃度(質量%)を上の横軸とする。また、タングステン濃度が50(質量%)以上である面積の割合(%)を縦軸とする。こうして、タングステン濃度が50(質量%)以上である理論上の面積の割合は着色部分A2に示す範囲内である。こうして、表1に示す各試料1〜19において、図5から判るように、W濃度が50(質量%)以上である理論上の面積の割合(%)を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
<評価>
各試料1〜19において、表2に示すW濃度が50(質量%)以上である面積の割合(%)は、表3に示す理論上の面積の割合(%)を満たしており、表2に示すCr濃度が30(質量%)以上である面積の割合(%)も、表3に示す理論上の面積の割合(%)を満たしている。その中で、机上耐酸化試験で◎又は○であり、かつエンジン耐久試験が◎又は○であるものは、試料2〜9、11、13であった。
【0041】
各試料2〜9、11、13は、30質量%以上のクロムを含むクロム系組織が面積の35%未満を占めており、かつ50質量%以上のタングステンを含むタングステン系組織が面積の65%以上を占めている。
【0042】
各試料2〜9、11、13は、タングステン60〜97質量部と、クロム3〜30質量部とが含まれている。また、各試料4〜9、11、13は、クロムの揮発の抑制するため、La、Re、Si及びIrの少なくとも1種類が含まれている。このため、試料4〜9、11、13において、La、Re、Si及びIrの少なくとも1種類は各々及び合計が10質量%未満の範囲で含まれている。
【0043】
特に、各試料2〜9、11、13は、図1に示す一次焼結工程S20において、その試料の成形体が水素雰囲気で焼結されているため、表面から揮発するクロムが抑制されている。また、二次焼結工程S30において、その試料の一次焼結体を真空雰囲気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気で一次焼結工程S20の温度を超えない温度により焼結されているため、内部のクロムの濃度が均一化されている。なお、試料11、13では、二次焼結工程S30でHIPが用いられているため、タングステン−クロム合金の焼結強度及び結晶密度が高められている。このようなタングステン−クロム合金であれば、中心電極及び接地電極の強度を高めることができる。
【0044】
こうして得られた各試料2〜9、11、13うち、例えば、試料6の切断面S1におけるSEM写真を図6に示す。また、試料16の切断面S1におけるSEM写真を図7に示す。このため、試料6は、試料16に比してクロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金となっている。
【0045】
図6に示すように、クロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金は、タングステンとクロムとがともに相手側に対して好適に分散して固溶したものとなっている。このため、タングステンの特性による優れた耐熱性や耐火花消耗性が発揮されるとともに、クロムの特性による高温での耐酸化性や耐腐食性も発揮される。このため、試料2〜9、11、13のタングステン−クロム合金は、図2に示すスパークプラグ10の接地電極30のチップ31に用いて好適であると考えられる。また、中心電極20に設けられるチップや中心電極20及び接地電極30の母材として用いても好適である。
【0046】
したがって、実施形態のスパークプラグ10によれば、優れた耐熱性や耐火花消耗性と高温での耐酸化性や耐腐食性とをより確実に発揮することができる。このため、このスパークプラグを用いれば、苛酷なエンジンの稼動条件の下でも優れた耐久性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のスパークプラグの製造方法を示す工程図である。
【図2】実施形態のスパークプラグの一部断面図である。
【図3】実施形態のタングステン−クロム合金の斜視図である。
【図4】実施形態に係り、クロム濃度が30(質量%)以上である理論上の面積の割合(%)を示す図である。
【図5】実施形態に係り、タングステン濃度が50(質量%)以上である理論上の面積の割合(%)を示す図である。
【図6】実施形態のタングステン−クロム合金のSEM写真の図である。
【図7】従来のタングステン−クロム合金のSEM写真の図である。
【符号の説明】
60…主体金具
62…絶縁体
20…中心電極
30…接地電極
10…スパークプラグ
S10…成形工程
S20…一次焼結工程
S30…二次焼結工程
Claims (9)
- 筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、該主体金具の内側に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、放電可能な先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とを備えたスパークプラグにおいて、
前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方は、クロムの偏析が少ないタングステン−クロム合金によって構成されていることを特徴とするスパークプラグ。 - 前記タングステン−クロム合金は、30質量%以上のクロムを含むクロム系組織が面積の35%未満を占めるものであることを特徴とする請求項1記載のスパークプラグ。
- 前記タングステン−クロム合金は、50質量%以上のタングステンを含むタングステン系組織が面積の65%以上を占めるものであることを特徴とする請求項1又は2記載のスパークプラグ。
- 前記タングステン−クロム合金は、タングステン60〜97質量部と、クロム3〜30質量部とを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のスパークプラグ。
- 前記タングステン−クロム合金は、タングステン70〜80質量部と、クロム20〜30質量部とを含むことを特徴とする請求項4記載のスパークプラグ。
- 前記タングステン−クロム合金は、La、Re、Si及びIrの少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のスパークプラグ。
- La、Re、Si及びIrの少なくとも1種類は各々及び合計が10質量%未満であることを特徴とする請求項6記載のスパークプラグ。
- 筒状の主体金具と、該主体金具の軸方向に延在し、該主体金具の内側に固定された筒状の絶縁体と、該主体金具の軸方向に延在し、放電可能な先端を該絶縁体の先端から突出させて後端が該絶縁体内に固定された中心電極と、該主体金具に一端が固定され、該中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極とを備えたスパークプラグの製造方法において、
少なくともタングステン粉末及びクロム粉末を含む混合粉末により成形体を得る成形工程と、
該成形体を水素雰囲気で焼結し、一次焼結体を得る一次焼結工程と、
該一次焼結体を真空雰囲気、窒素雰囲気又は不活性ガス雰囲気で該一次焼結工程の温度を超えない温度により焼結し、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方を得る二次焼結工程とを備えたことを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 前記二次焼結工程では、加圧焼結を行なうことを特徴とする請求項8記載のスパークプラグの製造方法。
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