JP2004271860A - フォトニック結晶ファイバ - Google Patents
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- G02B6/02376—Longitudinal variation along fibre axis direction, e.g. tapered holes
Abstract
【課題】フォトニック結晶ファイバの優れた非線形性と入射の容易性を維持しつつ、コア径の小さい領域の機械的強度を向上させて取り扱いを容易にすることを目的とする。
【解決手段】ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッド4と、上記クラッド4の内側においてファイバ中心軸方向に延びるコア5とを備え、端部10から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部11と、上記テーパー部につながり、外径及びコア径が上記端部10の外径及びコア径よりも細く形成された延伸部12を有し、少なくとも上記延伸部12には、溶着一体化した保護層3が被覆されているフォトニック結晶ファイバである。
【選択図】 図1
【解決手段】ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッド4と、上記クラッド4の内側においてファイバ中心軸方向に延びるコア5とを備え、端部10から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部11と、上記テーパー部につながり、外径及びコア径が上記端部10の外径及びコア径よりも細く形成された延伸部12を有し、少なくとも上記延伸部12には、溶着一体化した保護層3が被覆されているフォトニック結晶ファイバである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極めて細いコアを有し、非線形光学効果を発揮するフォトニック結晶ファイバに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コア及びクラッドからなる通常の光ファイバでは実現することができない、非常に小さい実効コア断面積を持った光ファイバとして、フォトニック結晶ファイバが注目されている。このフォトニック結晶ファイバは、光ファイバの中心軸周辺に多数の空孔を規則的に配置することにより、空孔が配置された領域の内部に、入射光を伝搬する領域を形成したものである。
【0003】
このフォトニック結晶ファイバによれば、クラッドに配置された空孔の径とその間隔とを適当に設定することにより、入射光の零分散波長を長波長側、又は短波長側に容易にシフトさせることができる。このようなフォトニック結晶ファイバの非線形性を生かして、スーパーコンティニウム光を発生させる技術も実現されている。
【0004】
ところが、このようなフォトニック結晶ファイバは、コア径が2μm程度と非常に小さいため、これに光を入射しようとする際、光源とフォトニック結晶ファイバの入力端におけるアライメントが非常に困難であるという問題があった。また、接続時のアライメントを高精度に調整できた場合であっても、使用中の振動等の外乱により軸ズレが生じ、ファイバの特性が安定しないという問題があった。
【0005】
そこで、コア径の比較的大きなフォトニック結晶ファイバの端部を残して他の部分を細く延伸し、延伸領域に極細コアを有するフォトニック結晶ファイバを作成する技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1に記載された光ファイバは、延伸部の外径及びコア径が極めて小さいにも拘わらず、その両端部の外径及びコア径は比較的大きい。従って、極細のコアへ入射光を入射する際の困難性は解消されていた。
【0007】
【特許文献1】
米国特許出願公開2002/0114574A1号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献に示されたようなフォトニック結晶ファイバでは、延伸部のコア径が細くなるに伴って、該ファイバの外径までもが極めて細くなる。そのため、延伸部の機械的強度が著しく低下していまい、折れやすいといった問題があった。このようなフォトニック結晶ファイバは、単独では取り扱いが困難であるため、該フォトニック結晶ファイバを剛直な基板に固定したり、樹脂の中に埋設するなどして使用しなければならないといった取り扱い上の問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記フォトニック結晶ファイバの問題を解決するためになされたものである。即ち、上記フォトニック結晶ファイバの優れた非線形性と入射の容易性を維持しつつ、延伸部の機械的強度を向上させてフォトニック結晶ファイバの取り扱いを容易にすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、コア径及び外径の大きいフォトニック結晶ファイバの両端部若しくは一端部を残して、加熱延伸して細線化するとともに、その細線化された領域に保護層を形成して強度を確保するようにした。
【0011】
具体的に本発明は、ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備え、両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部を有し、少なくとも上記テーパー部には、溶着一体化した保護層が被覆されているフォトニック結晶ファイバである。
【0012】
本発明において、上記テーパー部の最も細い部分のコア径が2μm以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備え、両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部と、上記テーパー部につながり、外径及びコア径が上記端部の外径及びコア径よりも細く形成された延伸部を有し、少なくとも上記延伸部には、溶着一体化した保護層が被覆されているフォトニック結晶ファイバである。
【0014】
本発明において、上記延伸部のコア径が2μm以下であることが好ましい。
【0015】
更に、上記保護層は、上記クラッドを形成する材料と同質の材料を主成分とすることも可能である。
【0016】
本発明において、上記空孔の直径をd、隣接する空孔の中心間の距離をΛとした場合、d/Λが0.6以上、0.8以下であることが好ましい。
【0017】
本発明は、ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備えた光ファイバが、該光ファイバの外径より僅かに大きい内径を有する石英管に挿通され、該石英管の長さ方向の中心近傍が加熱された状態で、長さ方向に延伸されたフォトニック結晶ファイバである。
【0018】
ここで、上記フォトニック結晶ファイバとは、フォトニック結晶構造を応用した光ファイバをいう。フォトニック結晶構造は、内部に周期的な屈折率分布を持つ結晶構造をいい、本発明においては、ファイバの中心軸の周囲に複数の空孔を配置することにより上記屈折率分布を実現している。フォトニック結晶ファイバは、上記ファイバ内部の構造により光を閉じ込める特性を有し、コア径を更に小さくすることにより、従来の光ファイバでは達成困難な非線形光学効果を実現することができる。
【0019】
上記テーパー部は、上記フォトニック結晶ファイバの両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成された領域である。両端部からテーパー部が形成されている場合、該テーパー部は、該フォトニック結晶ファイバの両端側から中心部の向かって外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されている。また、一端部からテーパー部が形成されている場合、該テーパー部は、該フォトニック結晶ファイバの一端部側から他端部側へ向かって外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されている。該テーパー部は、外径及びコア径が徐々に細く形成されるとともに、該ファイバの長さ方向に延伸されていてもよい。
【0020】
本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、延伸部を有する。延伸部のコア径は両端部のコア径よりも更に細く形成されているため、短距離で効率的に上記非線形光学効果を発現させることができる。上記延伸部の外径及びコア径は、概ね一定であるが、若干テーパー形状を有していても構わない。
【0021】
上記フォトニック結晶ファイバの両端部、又は少なくとも一端部は、テーパー加工が施されていないため、大きいコア径を有する。これにより、入射端において入射効率の良い結合が可能になるとともに、温度、湿度、外力などによって結合効率が低下することを防止することができる。上記テーパー部は、上記端部と延伸部を滑らかにつないでいる。また、上記フォトニック結晶ファイバが延伸部を有しない場合、上記テーパー部は上記一端部から徐々に細くなり、外径の極小部を経て徐々に太くなり他端部に到る。上記延伸部、又はテーパー部と延伸部には、保護層が被覆されている。これにより、上記フォトニック結晶ファイバの外径が細くなった領域が保護層により補強され、外力によって断線する危険性を低減することができる。
【0022】
本発明において、上記保護層を形成する材料と上記クラッドを形成する材料が同質の材料で形成されることにより、保護層及びクラッドを形成する材料の融点が一致し、良好な溶着状態が得られる。
【0023】
従って、上記クラッドが石英(SiO2)で形成されている場合、上記保護層も石英で形成される。また、本発明において、上記クラッドの内側領域に、該クッラドを形成する材料よりも屈折率の高い材料からなる領域を形成することも可能である。例えば、屈折率の高い材料としてGe、F、Sn、又はP等がドーパントされた石英が用いられ、クラッドを形成する材料としてそれらドーパント成分を含まない石英によって形成される場合がある。このような場合、上記保護層は、上記ドーパント成分を含まない石英によって形成される。
【0024】
本発明において、上記テーパー部の最も細い部分の外径、又は上記延伸部のコア径が2μm以下であれば、極めて良好に非線形光学効果を発現させることができる。
【0025】
本発明において、上記d/Λは、クラッドの空隙率であって、この値が大きいほど、クラッドに占める空孔の割合が大きいことを示す。上記d/Λが0.6以上、0.8以下であれば、通常の光ファイバではシングルモード伝搬させることができない短波長の入射光を、シングルモード伝搬させることが可能となる。また、d/Λが大きく設定されることにより、クラッドの伝搬光をコアへ閉じ込める効果が強くなる。その結果、上記フォトニック結晶ファイバは、曲げ損失が小さくなるとともに上記非線形光学効果を生じやすくなる。一方、上記d/Λが0.8を上回ると、フォトニック結晶ファイバの機械的強度が極端に低下してしまい、上記保護層が形成されているにもかかわらず、断線等の危険性が高まってしまう。
【0026】
本発明において、典型的には、比較的口径の大きいフォトニック結晶ファイバと石英管を用いて形成される。上記石英管は、管状のものであってもよいし、半管状の石英部材で上記光ファイバを挟み込んで管状とする割子構造のものであってもよい。該石英管は、上記光ファイバの外径より僅かに大きい内径を有するため、上記光ファイバをスムーズに挿通することができるとともに、加熱融着した際に石英管と光ファイバとの間に生じる気泡を少なくすることができる。延伸する際、上記石英管の長さ方向の中心部近傍を加熱溶着すれば十分であるが、石英管全体を加熱溶着させて延伸することも可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係るフォトニック結晶ファイバ1の概略構成図である。上記フォトニック結晶ファイバ1は、芯線2と保護層3を有する。図3は、上記芯線2の端面を示した模式図である。芯線2は、内部にフォトニック結晶構造を有する光ファイバである。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る芯線2は、両端部10から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部11と、上記テーパー部11につながり、外径及びコア径が上記端部10の外径及びコア径よりも細く形成された延伸部12を有する。該延伸部12も該ファイバ1の中心部に向かって、テーパー状に形成されていてもよい。本実施形態に係るフォトニック結晶ファイバ1は、芯線2の上記テーパー部11及び延伸部12に保護層3が被覆されている。
【0030】
具体的に、図3に示す芯線2は、ファイバ中心軸P方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸Pの周囲に周期的に配置された多数の空孔4aを有するクラッド4と、上記クラッド4の内側の領域であって、ファイバ中心軸P方向に延びるコア5とを備える。芯線2は、径方向の最外部に中実なオーバークラッド部4bを有し、その内側にファイバ中心軸P方向に延びる多数の空孔4a、4a…が周期的に配置されてなるクラッド4を有する。
【0031】
クラッド4のファイバ径方向の最もファイバ中心軸Pに近い部分には、ファイバ中心軸Pを挟んで対向する6つの空孔4a、4a…が正六角形状に配置されている。これら6つの空孔4a、4a…に囲まれた内部の領域がコア5となる。
【0032】
上記クラッド4における空孔4a、4a…の配置は、隣り合う空孔間の距離が全て同じであって、隣接する三つの空孔が正三角形をなす周期的な配置であり、この周期でコア5の周囲に配置されている。
【0033】
上記コア5は、このような空孔4aの周期的配置の欠陥部分ともいえ、周期的に配置された空孔が一つ消失している部分である。
【0034】
上記コア5、クラッド4及びオーバークラッド部4bは、同質の石英から形成されている。上記コア5は、その周囲に形成された上記フォトニック結晶構造により、光を閉じ込めて伝搬することができる。
【0035】
上記保護層3は、本実施形態において延伸部12及びテーパー部11を被覆するように形成されている。上記保護層3は、少なくとも芯線2の延伸部12を被覆するように形成されている必要がある。上記保護層3の厚さは特に限定されるものではないが、延伸部12に被覆された状態で、該保護層を含めた延伸部2の外径が概ね上記芯線2の端部の外径程度となるように設定されることが好ましい。
【0036】
上記保護層3は、上記クラッド4(オーバークラッド4b)と同質の石英から形成されている。このように、保護層3がクラッド4と同質の材料で形成されることにより融点が一致し、両者の溶着が良好となる。
【0037】
次に、本発明に係るフォトニック結晶ファイバの製造方法について説明する。
【0038】
本発明に使用される大口径フォトニック結晶ファイバ6は、中実の石英ロッドと、その中心に空孔を有する石英キャピラリとを大口径の石英パイプで束ねて作製される。本実施形態において、石英ロッド及び石英キャピラリは、すべて同じ外径に形成されている。
【0039】
石英キャピラリは、その中心軸に沿って空孔が形成されている。本実施形態において石英ロッドは、均質な石英から形成されており、通常の高屈折率コア部を有する伝送ファイバの母材と同じ方法で母材作製後、所望の径にまで加熱延伸して作製する。石英キャピラリは、石英棒材にそれぞれ所定の孔を開けた後、所望の径に加熱延伸して作製する。
【0040】
次に、石英パイプの中心軸部分に石英ロッドを挿入し、石英ロッドにそれぞれ接するように6本の石英キャピラリを配置し、石英ロッドの周りを石英キャピラリで一重に取り囲む。次に、6本石英キャピラリのまわりに12本の石英キャピラリ、更にそのまわりに18本の石英キャピラリというように上記石英パイプの内壁まで詰め込む。石英キャピラリが石英パイプの内壁に接するまで詰め込まれると、加熱して石英パイプの両端を封鎖する。
【0041】
このように封鎖された母材を加熱延伸すると、石英ロッド、石英キャピラリ及び石英パイプの相互の境界が溶融密着することにより大口径フォトニック結晶ファイバ6が形成される。本実施形態に係る大口径フォトニック結晶ファイバ6は、約125μmの外径と約5μmのコア径を有するように形成される。
【0042】
保護層3の形成方法について説明する。図2に示すように、上記保護層3は、石英管7に上記大口径フォトニック結晶ファイバ6を挿通し、加熱延伸することにより形成される。具体的に、本実施形態において、石英管7は円管状の部材であって、その内径は上記大口径フォトニック結晶ファイバ6の外径より僅かに大きく形成され、その外径は大口径フォトニック結晶ファイバ6の外径の2倍から数倍程度に形成されている。
【0043】
図2に示すように、上記大口径フォトニック結晶ファイバ6が石英管7に挿通され、石英管7の長手方向の中心部付近をバーナー8等で加熱する。加熱領域が石英の融点にまで加熱されると大口径フォトニック結晶ファイバ6の外周面と石英管7の内周面が溶着して一体化し始める。この状態で上記大口径フォトニック結晶ファイバ6の両端を一定張力で引っ張ると、大口径フォトニック結晶ファイバ6と石英管7がともに延伸されて、保護層3が被覆された上記延伸部12が形成される。
【0044】
延伸部12の両端にはテーパー部11が形成され、該テーパー部11は延伸部12と両端部10を滑らかにつなぐ。このように加熱延伸加工された上記大口径フォトニック結晶ファイバ6が、本発明に係るフォトニック結晶ファイバの芯線2となる。
【0045】
上記のように形成された本発明に係るフォトニック結晶ファイバ1は、両端部10において延伸される前の大口径フォトニック結晶ファイバ6と同じコア径及び外径を有している。一方、上記フォトニック結晶ファイバ1の延伸部12は、上記大口径フォトニック結晶ファイバ6よりも更にコア径の小さいコア5を有する。また、上記延伸部12は保護層3により補強されている。従って、従来、細く弱いため取り扱いの困難であった高非線形光学効果を発現するフォトニック結晶ファイバの取り扱いを向上させることができる。
【0046】
上記保護層の形成方法に関し、上記石英管7の中心部近傍のみならず、石英管全体を加熱し、石英管7全体を大口径フォトニック結晶ファイバ6に溶着させてから延伸することも可能である。
【0047】
また、上記大口径フォトニック結晶ファイバ6の表面に紫外線硬化性樹脂などが塗布されている場合、該紫外線硬化性樹脂を剥離しなければ良好な溶着状態が得られない。しかし、延伸する前の該フォトニック結晶ファイバ6の長さが長く、全長にわたって上記樹脂を剥離することが困難な場合は、石英管7の長さ分だけ上記樹脂を剥離し、割子構造になった石英管を被せることも可能である。この場合、半管状の石英部材で大口径フォトニック結晶ファイバ6を挟み込むように被覆し、所々に点付けを施して固定しておく。その後、上記と同様、バーナーやヒーターで石英管7及び大口径フォトニック結晶ファイバ6を加熱し延伸する。
【0048】
【実施例】
本発明の実施例として、両端部の外径が125μm、コア径が5μmであって、延伸部のコア径が2μmであるフォトニック結晶ファイバを作成した。本実施例に使用された大口径フォトニック結晶ファイバは、外径が125μm、コア径が5μmの石英製フォトニック結晶ファイバであって、長さは約1mであった。本実施例に使用された石英管は、外径が250μm、内径が127μmであって、長さが5cmの円管状部材であった。上記大口径フォトニック結晶ファイバの一端を上記石英管の一端から挿通してゆき、石英管を該フォトニック結晶ファイバの長手方向の略中心部まで移動させた。この状態で上記大口径フォトニック結晶ファイバを溶融延伸装置にセットした。
【0049】
溶融延伸装置とは、同軸上に配置された引っ張り装置と、それに固定されたチャックを有し、両チャック間にファイバを加熱するためのヒーター若しくはバーナーが設置された装置である。溶融延伸装置は両チャック間に渡されたファイバをバーナー等で加熱しながら、引っ張り装置を駆動させることにより、ファイバを延伸することができる。引っ張り装置の引っ張り強度、引っ張り速度及びバーナーの温度は、自由に調節することができる。
【0050】
上記石英管に挿通された大口径フォトニック結晶ファイバの各端部を上記溶融延伸装置の各チャックに固定し、バーナーの位置を上記石英管の略中心部になるよう調整した。空気雰囲気下、バーナーに点火して上々に加熱温度を上げてゆくと、加熱部分が赤熱した。更に加熱温度を上げてゆくと、加熱部分が白熱してくる。加熱温度が1200℃を越えると、バーナーの加熱温度が一定になるように調節し、上記引っ張り装置を駆動させる。
【0051】
引っ張り装置はチャックに固定された大口径フォトニック結晶ファイバを両端から引っ張り、加熱溶融している大口径フォトニック結晶ファイバの中心部近傍を延伸してゆく。延伸工程において、加熱され溶融状態にある大口径フォトニック結晶ファイバの外周面と石英管の内周面は、溶着しながら延伸されてゆく。延伸部のコア径が約2μm、延伸部を被覆する保護層の外径が約125μmになるとバーナーを消して引っ張り装置を停止させた。加熱された上記ファイバを空気中で自然放冷することで所望のフォトニック結晶ファイバを得た。
【0052】
このような工程により、延伸部の長さが約5cmで、入射端のコア径が5μmと十分に大きく、延伸部のコア径が2μmと小さいうえに、延伸部に被覆された保護層の外径が約125μmと十分な機械的強度を備えたフォトニック結晶ファイバが得られた。本実施例に係るフォトニック結晶ファイバは、延伸部のが2μmと小さいため、延伸部の長さが5cmと比較的短くても十分な非線形光学効果を発揮することができた。また、上記延伸部は保護層で被覆されているため、十分な機械的強度を備えており、断線のおそれが少ないため取り扱いも容易であった。
【0053】
本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、優れた非線形光学効果を有するため、フェムト秒レーザを光源として使用することにより、ブロードバンドコヒーレント光源を非常に小型の構成で実現することができる。ブロードバンドコヒーレント光源は、例えば、光周波数計測、WDM用光源、あるいはマルチフォトン顕微鏡用光源などとして広い技術範囲に応用することができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に述べる効果を奏する。
【0055】
本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、その端部の外径及びコア径が比較的大きいため、通常のシングルモード光ファイバとの接続が容易であって、且つ接続効率が高い。
【0056】
また、本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、テーパー部の最も細い部分、又は延伸部のコア径が十分に小さいため、比較的短距離で効果的に非線形光学効果を発揮することができる。
【0057】
更に、上記延伸部やテーパー部は、保護層により被覆されているため、通常の光ファイバと同等程度の機械的強度を備えている。従って、上記フォトニック結晶ファイバは、取り扱いが容易であり、外力による断線の危険性が低減されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るフォトニック結晶ファイバの概略構成図である。
【図2】実施形態に係るフォトニック結晶ファイバの延伸工程を示す概略図である。
【図3】実施形態に係る芯線の端部を示す概略図である。
【符号の説明】
1 フォトニック結晶ファイバ
2 芯線
3 保護層
4 クラッド
5 コア
6 大口径フォトニック結晶ファイバ
7 石英管
8 バーナー
10 端部
11 テーパー部
12 延伸部
【発明の属する技術分野】
本発明は、極めて細いコアを有し、非線形光学効果を発揮するフォトニック結晶ファイバに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コア及びクラッドからなる通常の光ファイバでは実現することができない、非常に小さい実効コア断面積を持った光ファイバとして、フォトニック結晶ファイバが注目されている。このフォトニック結晶ファイバは、光ファイバの中心軸周辺に多数の空孔を規則的に配置することにより、空孔が配置された領域の内部に、入射光を伝搬する領域を形成したものである。
【0003】
このフォトニック結晶ファイバによれば、クラッドに配置された空孔の径とその間隔とを適当に設定することにより、入射光の零分散波長を長波長側、又は短波長側に容易にシフトさせることができる。このようなフォトニック結晶ファイバの非線形性を生かして、スーパーコンティニウム光を発生させる技術も実現されている。
【0004】
ところが、このようなフォトニック結晶ファイバは、コア径が2μm程度と非常に小さいため、これに光を入射しようとする際、光源とフォトニック結晶ファイバの入力端におけるアライメントが非常に困難であるという問題があった。また、接続時のアライメントを高精度に調整できた場合であっても、使用中の振動等の外乱により軸ズレが生じ、ファイバの特性が安定しないという問題があった。
【0005】
そこで、コア径の比較的大きなフォトニック結晶ファイバの端部を残して他の部分を細く延伸し、延伸領域に極細コアを有するフォトニック結晶ファイバを作成する技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1に記載された光ファイバは、延伸部の外径及びコア径が極めて小さいにも拘わらず、その両端部の外径及びコア径は比較的大きい。従って、極細のコアへ入射光を入射する際の困難性は解消されていた。
【0007】
【特許文献1】
米国特許出願公開2002/0114574A1号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献に示されたようなフォトニック結晶ファイバでは、延伸部のコア径が細くなるに伴って、該ファイバの外径までもが極めて細くなる。そのため、延伸部の機械的強度が著しく低下していまい、折れやすいといった問題があった。このようなフォトニック結晶ファイバは、単独では取り扱いが困難であるため、該フォトニック結晶ファイバを剛直な基板に固定したり、樹脂の中に埋設するなどして使用しなければならないといった取り扱い上の問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記フォトニック結晶ファイバの問題を解決するためになされたものである。即ち、上記フォトニック結晶ファイバの優れた非線形性と入射の容易性を維持しつつ、延伸部の機械的強度を向上させてフォトニック結晶ファイバの取り扱いを容易にすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、コア径及び外径の大きいフォトニック結晶ファイバの両端部若しくは一端部を残して、加熱延伸して細線化するとともに、その細線化された領域に保護層を形成して強度を確保するようにした。
【0011】
具体的に本発明は、ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備え、両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部を有し、少なくとも上記テーパー部には、溶着一体化した保護層が被覆されているフォトニック結晶ファイバである。
【0012】
本発明において、上記テーパー部の最も細い部分のコア径が2μm以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備え、両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部と、上記テーパー部につながり、外径及びコア径が上記端部の外径及びコア径よりも細く形成された延伸部を有し、少なくとも上記延伸部には、溶着一体化した保護層が被覆されているフォトニック結晶ファイバである。
【0014】
本発明において、上記延伸部のコア径が2μm以下であることが好ましい。
【0015】
更に、上記保護層は、上記クラッドを形成する材料と同質の材料を主成分とすることも可能である。
【0016】
本発明において、上記空孔の直径をd、隣接する空孔の中心間の距離をΛとした場合、d/Λが0.6以上、0.8以下であることが好ましい。
【0017】
本発明は、ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備えた光ファイバが、該光ファイバの外径より僅かに大きい内径を有する石英管に挿通され、該石英管の長さ方向の中心近傍が加熱された状態で、長さ方向に延伸されたフォトニック結晶ファイバである。
【0018】
ここで、上記フォトニック結晶ファイバとは、フォトニック結晶構造を応用した光ファイバをいう。フォトニック結晶構造は、内部に周期的な屈折率分布を持つ結晶構造をいい、本発明においては、ファイバの中心軸の周囲に複数の空孔を配置することにより上記屈折率分布を実現している。フォトニック結晶ファイバは、上記ファイバ内部の構造により光を閉じ込める特性を有し、コア径を更に小さくすることにより、従来の光ファイバでは達成困難な非線形光学効果を実現することができる。
【0019】
上記テーパー部は、上記フォトニック結晶ファイバの両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成された領域である。両端部からテーパー部が形成されている場合、該テーパー部は、該フォトニック結晶ファイバの両端側から中心部の向かって外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されている。また、一端部からテーパー部が形成されている場合、該テーパー部は、該フォトニック結晶ファイバの一端部側から他端部側へ向かって外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されている。該テーパー部は、外径及びコア径が徐々に細く形成されるとともに、該ファイバの長さ方向に延伸されていてもよい。
【0020】
本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、延伸部を有する。延伸部のコア径は両端部のコア径よりも更に細く形成されているため、短距離で効率的に上記非線形光学効果を発現させることができる。上記延伸部の外径及びコア径は、概ね一定であるが、若干テーパー形状を有していても構わない。
【0021】
上記フォトニック結晶ファイバの両端部、又は少なくとも一端部は、テーパー加工が施されていないため、大きいコア径を有する。これにより、入射端において入射効率の良い結合が可能になるとともに、温度、湿度、外力などによって結合効率が低下することを防止することができる。上記テーパー部は、上記端部と延伸部を滑らかにつないでいる。また、上記フォトニック結晶ファイバが延伸部を有しない場合、上記テーパー部は上記一端部から徐々に細くなり、外径の極小部を経て徐々に太くなり他端部に到る。上記延伸部、又はテーパー部と延伸部には、保護層が被覆されている。これにより、上記フォトニック結晶ファイバの外径が細くなった領域が保護層により補強され、外力によって断線する危険性を低減することができる。
【0022】
本発明において、上記保護層を形成する材料と上記クラッドを形成する材料が同質の材料で形成されることにより、保護層及びクラッドを形成する材料の融点が一致し、良好な溶着状態が得られる。
【0023】
従って、上記クラッドが石英(SiO2)で形成されている場合、上記保護層も石英で形成される。また、本発明において、上記クラッドの内側領域に、該クッラドを形成する材料よりも屈折率の高い材料からなる領域を形成することも可能である。例えば、屈折率の高い材料としてGe、F、Sn、又はP等がドーパントされた石英が用いられ、クラッドを形成する材料としてそれらドーパント成分を含まない石英によって形成される場合がある。このような場合、上記保護層は、上記ドーパント成分を含まない石英によって形成される。
【0024】
本発明において、上記テーパー部の最も細い部分の外径、又は上記延伸部のコア径が2μm以下であれば、極めて良好に非線形光学効果を発現させることができる。
【0025】
本発明において、上記d/Λは、クラッドの空隙率であって、この値が大きいほど、クラッドに占める空孔の割合が大きいことを示す。上記d/Λが0.6以上、0.8以下であれば、通常の光ファイバではシングルモード伝搬させることができない短波長の入射光を、シングルモード伝搬させることが可能となる。また、d/Λが大きく設定されることにより、クラッドの伝搬光をコアへ閉じ込める効果が強くなる。その結果、上記フォトニック結晶ファイバは、曲げ損失が小さくなるとともに上記非線形光学効果を生じやすくなる。一方、上記d/Λが0.8を上回ると、フォトニック結晶ファイバの機械的強度が極端に低下してしまい、上記保護層が形成されているにもかかわらず、断線等の危険性が高まってしまう。
【0026】
本発明において、典型的には、比較的口径の大きいフォトニック結晶ファイバと石英管を用いて形成される。上記石英管は、管状のものであってもよいし、半管状の石英部材で上記光ファイバを挟み込んで管状とする割子構造のものであってもよい。該石英管は、上記光ファイバの外径より僅かに大きい内径を有するため、上記光ファイバをスムーズに挿通することができるとともに、加熱融着した際に石英管と光ファイバとの間に生じる気泡を少なくすることができる。延伸する際、上記石英管の長さ方向の中心部近傍を加熱溶着すれば十分であるが、石英管全体を加熱溶着させて延伸することも可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係るフォトニック結晶ファイバ1の概略構成図である。上記フォトニック結晶ファイバ1は、芯線2と保護層3を有する。図3は、上記芯線2の端面を示した模式図である。芯線2は、内部にフォトニック結晶構造を有する光ファイバである。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る芯線2は、両端部10から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部11と、上記テーパー部11につながり、外径及びコア径が上記端部10の外径及びコア径よりも細く形成された延伸部12を有する。該延伸部12も該ファイバ1の中心部に向かって、テーパー状に形成されていてもよい。本実施形態に係るフォトニック結晶ファイバ1は、芯線2の上記テーパー部11及び延伸部12に保護層3が被覆されている。
【0030】
具体的に、図3に示す芯線2は、ファイバ中心軸P方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸Pの周囲に周期的に配置された多数の空孔4aを有するクラッド4と、上記クラッド4の内側の領域であって、ファイバ中心軸P方向に延びるコア5とを備える。芯線2は、径方向の最外部に中実なオーバークラッド部4bを有し、その内側にファイバ中心軸P方向に延びる多数の空孔4a、4a…が周期的に配置されてなるクラッド4を有する。
【0031】
クラッド4のファイバ径方向の最もファイバ中心軸Pに近い部分には、ファイバ中心軸Pを挟んで対向する6つの空孔4a、4a…が正六角形状に配置されている。これら6つの空孔4a、4a…に囲まれた内部の領域がコア5となる。
【0032】
上記クラッド4における空孔4a、4a…の配置は、隣り合う空孔間の距離が全て同じであって、隣接する三つの空孔が正三角形をなす周期的な配置であり、この周期でコア5の周囲に配置されている。
【0033】
上記コア5は、このような空孔4aの周期的配置の欠陥部分ともいえ、周期的に配置された空孔が一つ消失している部分である。
【0034】
上記コア5、クラッド4及びオーバークラッド部4bは、同質の石英から形成されている。上記コア5は、その周囲に形成された上記フォトニック結晶構造により、光を閉じ込めて伝搬することができる。
【0035】
上記保護層3は、本実施形態において延伸部12及びテーパー部11を被覆するように形成されている。上記保護層3は、少なくとも芯線2の延伸部12を被覆するように形成されている必要がある。上記保護層3の厚さは特に限定されるものではないが、延伸部12に被覆された状態で、該保護層を含めた延伸部2の外径が概ね上記芯線2の端部の外径程度となるように設定されることが好ましい。
【0036】
上記保護層3は、上記クラッド4(オーバークラッド4b)と同質の石英から形成されている。このように、保護層3がクラッド4と同質の材料で形成されることにより融点が一致し、両者の溶着が良好となる。
【0037】
次に、本発明に係るフォトニック結晶ファイバの製造方法について説明する。
【0038】
本発明に使用される大口径フォトニック結晶ファイバ6は、中実の石英ロッドと、その中心に空孔を有する石英キャピラリとを大口径の石英パイプで束ねて作製される。本実施形態において、石英ロッド及び石英キャピラリは、すべて同じ外径に形成されている。
【0039】
石英キャピラリは、その中心軸に沿って空孔が形成されている。本実施形態において石英ロッドは、均質な石英から形成されており、通常の高屈折率コア部を有する伝送ファイバの母材と同じ方法で母材作製後、所望の径にまで加熱延伸して作製する。石英キャピラリは、石英棒材にそれぞれ所定の孔を開けた後、所望の径に加熱延伸して作製する。
【0040】
次に、石英パイプの中心軸部分に石英ロッドを挿入し、石英ロッドにそれぞれ接するように6本の石英キャピラリを配置し、石英ロッドの周りを石英キャピラリで一重に取り囲む。次に、6本石英キャピラリのまわりに12本の石英キャピラリ、更にそのまわりに18本の石英キャピラリというように上記石英パイプの内壁まで詰め込む。石英キャピラリが石英パイプの内壁に接するまで詰め込まれると、加熱して石英パイプの両端を封鎖する。
【0041】
このように封鎖された母材を加熱延伸すると、石英ロッド、石英キャピラリ及び石英パイプの相互の境界が溶融密着することにより大口径フォトニック結晶ファイバ6が形成される。本実施形態に係る大口径フォトニック結晶ファイバ6は、約125μmの外径と約5μmのコア径を有するように形成される。
【0042】
保護層3の形成方法について説明する。図2に示すように、上記保護層3は、石英管7に上記大口径フォトニック結晶ファイバ6を挿通し、加熱延伸することにより形成される。具体的に、本実施形態において、石英管7は円管状の部材であって、その内径は上記大口径フォトニック結晶ファイバ6の外径より僅かに大きく形成され、その外径は大口径フォトニック結晶ファイバ6の外径の2倍から数倍程度に形成されている。
【0043】
図2に示すように、上記大口径フォトニック結晶ファイバ6が石英管7に挿通され、石英管7の長手方向の中心部付近をバーナー8等で加熱する。加熱領域が石英の融点にまで加熱されると大口径フォトニック結晶ファイバ6の外周面と石英管7の内周面が溶着して一体化し始める。この状態で上記大口径フォトニック結晶ファイバ6の両端を一定張力で引っ張ると、大口径フォトニック結晶ファイバ6と石英管7がともに延伸されて、保護層3が被覆された上記延伸部12が形成される。
【0044】
延伸部12の両端にはテーパー部11が形成され、該テーパー部11は延伸部12と両端部10を滑らかにつなぐ。このように加熱延伸加工された上記大口径フォトニック結晶ファイバ6が、本発明に係るフォトニック結晶ファイバの芯線2となる。
【0045】
上記のように形成された本発明に係るフォトニック結晶ファイバ1は、両端部10において延伸される前の大口径フォトニック結晶ファイバ6と同じコア径及び外径を有している。一方、上記フォトニック結晶ファイバ1の延伸部12は、上記大口径フォトニック結晶ファイバ6よりも更にコア径の小さいコア5を有する。また、上記延伸部12は保護層3により補強されている。従って、従来、細く弱いため取り扱いの困難であった高非線形光学効果を発現するフォトニック結晶ファイバの取り扱いを向上させることができる。
【0046】
上記保護層の形成方法に関し、上記石英管7の中心部近傍のみならず、石英管全体を加熱し、石英管7全体を大口径フォトニック結晶ファイバ6に溶着させてから延伸することも可能である。
【0047】
また、上記大口径フォトニック結晶ファイバ6の表面に紫外線硬化性樹脂などが塗布されている場合、該紫外線硬化性樹脂を剥離しなければ良好な溶着状態が得られない。しかし、延伸する前の該フォトニック結晶ファイバ6の長さが長く、全長にわたって上記樹脂を剥離することが困難な場合は、石英管7の長さ分だけ上記樹脂を剥離し、割子構造になった石英管を被せることも可能である。この場合、半管状の石英部材で大口径フォトニック結晶ファイバ6を挟み込むように被覆し、所々に点付けを施して固定しておく。その後、上記と同様、バーナーやヒーターで石英管7及び大口径フォトニック結晶ファイバ6を加熱し延伸する。
【0048】
【実施例】
本発明の実施例として、両端部の外径が125μm、コア径が5μmであって、延伸部のコア径が2μmであるフォトニック結晶ファイバを作成した。本実施例に使用された大口径フォトニック結晶ファイバは、外径が125μm、コア径が5μmの石英製フォトニック結晶ファイバであって、長さは約1mであった。本実施例に使用された石英管は、外径が250μm、内径が127μmであって、長さが5cmの円管状部材であった。上記大口径フォトニック結晶ファイバの一端を上記石英管の一端から挿通してゆき、石英管を該フォトニック結晶ファイバの長手方向の略中心部まで移動させた。この状態で上記大口径フォトニック結晶ファイバを溶融延伸装置にセットした。
【0049】
溶融延伸装置とは、同軸上に配置された引っ張り装置と、それに固定されたチャックを有し、両チャック間にファイバを加熱するためのヒーター若しくはバーナーが設置された装置である。溶融延伸装置は両チャック間に渡されたファイバをバーナー等で加熱しながら、引っ張り装置を駆動させることにより、ファイバを延伸することができる。引っ張り装置の引っ張り強度、引っ張り速度及びバーナーの温度は、自由に調節することができる。
【0050】
上記石英管に挿通された大口径フォトニック結晶ファイバの各端部を上記溶融延伸装置の各チャックに固定し、バーナーの位置を上記石英管の略中心部になるよう調整した。空気雰囲気下、バーナーに点火して上々に加熱温度を上げてゆくと、加熱部分が赤熱した。更に加熱温度を上げてゆくと、加熱部分が白熱してくる。加熱温度が1200℃を越えると、バーナーの加熱温度が一定になるように調節し、上記引っ張り装置を駆動させる。
【0051】
引っ張り装置はチャックに固定された大口径フォトニック結晶ファイバを両端から引っ張り、加熱溶融している大口径フォトニック結晶ファイバの中心部近傍を延伸してゆく。延伸工程において、加熱され溶融状態にある大口径フォトニック結晶ファイバの外周面と石英管の内周面は、溶着しながら延伸されてゆく。延伸部のコア径が約2μm、延伸部を被覆する保護層の外径が約125μmになるとバーナーを消して引っ張り装置を停止させた。加熱された上記ファイバを空気中で自然放冷することで所望のフォトニック結晶ファイバを得た。
【0052】
このような工程により、延伸部の長さが約5cmで、入射端のコア径が5μmと十分に大きく、延伸部のコア径が2μmと小さいうえに、延伸部に被覆された保護層の外径が約125μmと十分な機械的強度を備えたフォトニック結晶ファイバが得られた。本実施例に係るフォトニック結晶ファイバは、延伸部のが2μmと小さいため、延伸部の長さが5cmと比較的短くても十分な非線形光学効果を発揮することができた。また、上記延伸部は保護層で被覆されているため、十分な機械的強度を備えており、断線のおそれが少ないため取り扱いも容易であった。
【0053】
本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、優れた非線形光学効果を有するため、フェムト秒レーザを光源として使用することにより、ブロードバンドコヒーレント光源を非常に小型の構成で実現することができる。ブロードバンドコヒーレント光源は、例えば、光周波数計測、WDM用光源、あるいはマルチフォトン顕微鏡用光源などとして広い技術範囲に応用することができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に述べる効果を奏する。
【0055】
本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、その端部の外径及びコア径が比較的大きいため、通常のシングルモード光ファイバとの接続が容易であって、且つ接続効率が高い。
【0056】
また、本発明に係るフォトニック結晶ファイバは、テーパー部の最も細い部分、又は延伸部のコア径が十分に小さいため、比較的短距離で効果的に非線形光学効果を発揮することができる。
【0057】
更に、上記延伸部やテーパー部は、保護層により被覆されているため、通常の光ファイバと同等程度の機械的強度を備えている。従って、上記フォトニック結晶ファイバは、取り扱いが容易であり、外力による断線の危険性が低減されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るフォトニック結晶ファイバの概略構成図である。
【図2】実施形態に係るフォトニック結晶ファイバの延伸工程を示す概略図である。
【図3】実施形態に係る芯線の端部を示す概略図である。
【符号の説明】
1 フォトニック結晶ファイバ
2 芯線
3 保護層
4 クラッド
5 コア
6 大口径フォトニック結晶ファイバ
7 石英管
8 バーナー
10 端部
11 テーパー部
12 延伸部
Claims (7)
- ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、
上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備え、
両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部を有し、
少なくとも上記テーパー部には、溶着一体化した保護層が被覆されているフォトニック結晶ファイバ。 - ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、
上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備え、
両端部若しくは少なくとも一端部から外径及びコア径が徐々に細くなるように形成されたテーパー部と、
上記テーパー部につながり、外径及びコア径が上記端部の外径及びコア径よりも細く形成された延伸部を有し、
少なくとも上記延伸部には、溶着一体化した保護層が被覆されているフォトニック結晶ファイバ。 - 上記保護層は、上記クラッドを形成する材料と同質の材料を主成分とする請求項1又は2に記載のフォトニック結晶ファイバ。
- 上記テーパー部において、最も細い部分のコア径が2μm以下である請求項1に記載のフォトニック結晶ファイバ。
- 上記延伸部において、コア径が2μm以下である請求項2に記載のフォトニック結晶ファイバ。
- 上記空孔の直径をd、隣接する空孔の中心間の距離をΛとした場合、d/Λが0.6以上、0.8以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のフォトニック結晶ファイバ。
- ファイバ中心軸方向に延び、且つ上記ファイバ中心軸の周囲に配置された多数の空孔を有するクラッドと、
上記クラッドの内側においてファイバ中心軸方向に延びるコアとを備えた光ファイバが、
該光ファイバの外径より僅かに大きい内径を有する石英管に挿通され、
該石英管の長さ方向の中心近傍が加熱された状態で、長さ方向に延伸されたフォトニック結晶ファイバ。
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CN114079219A (zh) * | 2020-08-12 | 2022-02-22 | 中国科学院大连化学物理研究所 | 带有金属涂层的空芯光子晶体光纤与高压气室密封结构 |
CN114585953A (zh) * | 2019-10-24 | 2022-06-03 | Asml荷兰有限公司 | 用于宽带辐射生成的基于空芯光子晶体光纤的光学部件 |
-
2003
- 2003-03-07 JP JP2003061964A patent/JP2004271860A/ja active Pending
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