JP2004270094A - ポリエステル短繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた抗菌性を有し、洗濯耐久性に優れかつ良好な制電性、防錆性及び変色防止性を有し、かつ生分解性を有する、ポリエステル短繊維を提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸からなり、繊維表面に下記[A]及び[B]を必須成分とした油剤を付着させてなることを特徴とする生分解性短繊維。[A]:第4級アンモニウム塩、[B]:エステルノニオン、
【選択図】なし
【解決手段】ポリ乳酸からなり、繊維表面に下記[A]及び[B]を必須成分とした油剤を付着させてなることを特徴とする生分解性短繊維。[A]:第4級アンモニウム塩、[B]:エステルノニオン、
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた抗菌性を有し、洗濯耐久性に優れかつ良好な制電性、防錆性及び変色防止性を有し、かつ生分解性を有する、ポリエステル短繊維に関するものである。さらに詳しくは、詰め綿素材として最適でかつ人間と地球に優しいポリエステル短繊維を提供することである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表される芳香族ポリエステルからなる合成繊維は物理特性に優れており、加工性、取り扱い易さなどに優れた特性を有しているため、広範囲にわたって利用されている。衣料用としては勿論のこと、産業資材用、衛材用途、あるいは布団、クッションに代表される中入れ綿用として近年多量に使用されている。布団用途としては、背あてクッションやシートクッションなどのいわゆるクッション類、枕、座布団、さらにはキルティング分野の詰め綿にも利用されている。近年、健康と快適さを向上する目的で、細菌の増殖を抑制し不快な異臭の発生を防止するため、繊維自体の抗菌性能が強く求められいる。
また中入れ綿に提供される素材の要求特性としては、軽量かつ嵩高であり、反発性があること、また経時的に黄変せず、洗濯後も特性を保持していることが望まれる。またカード通過性の点から、制電性が良いことが挙げられる。
【0003】
これらの課題を解決するため従来よりシリコーン系油剤によるポリエステル繊維の表面改質が提案されている。
【0004】
例えば、第4級アンモニウム塩基含有シリコーン油剤(特許文献1、2)、第4級アンモニウム有機酸エステル塩(特許文献3、4)、第4級アンモニウム塩とアニオンを併用した油剤(特許文献5)がそれぞれ提案されているが、製糸性、風合いや制電性が不十分であったり、繊維上での架橋・固着が弱いため、洗濯耐久性に欠けるなどの欠点を有する。
【0005】
特に、第4級アンモニウム塩基含有シリコーン油剤を用いる場合は黄変しやすいという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−86632号公報
【0007】
【特許文献2】特開昭60−181364号公報
【0008】
【特許文献3】特開平3−38552号公報
【0009】
【特許文献4】特開平10−292262号公報
【0010】
【特許文献5】特公平7−116005号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、優れた抗菌性を有し、洗濯耐久性に優れかつ良好な制電性、防錆性及び変色防止性を有し、かつ生分解性を有する、ポリエステル短繊維を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に達した。
【0013】
すなわち、上述の課題は、ポリ乳酸からなり、繊維表面に下記[A]及び[B]を必須成分とした油剤を付着させてなる生分解性短繊維とすることによって達成される。
【0014】
[A]:第4級アンモニウム塩
[B]:エステルノニオン
また、本発明における油剤が上記必須成分[A]及び[B]の他に副成分として下記[C]〜[E]の少なくとも1種を含んでいると好ましい。
【0015】
[C]:アニオン界面活性剤
[D]:エーテルノニオン
[E]:防錆剤
更に、本発明の好ましい態度としては、軽量性、嵩高性を目的に繊維断面が中空断面であり、中空率が5%以上50%以下であることを特徴とすることが含まれる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の生分解性短繊維は、ポリ乳酸繊維で構成される。本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいい、L体あるいはD体の光学純度は90%以上であると、融点が高く好ましい。L体あるいはD体の光学純度はより好ましくは97%以上である。また、L体の光学純度90%以上のポリ乳酸とD体の光学純度90%以上のポリ乳酸を70/30〜30/70/30の比率でブレンドしたものは融点がさらに向上するためさらに好ましい。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していてもよく、また、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤あるいは着色顔料等の添加物を含有していても良い。ポリ乳酸の加水分解抑制や製品の経時による物性低下抑制目的として、カルボジイミド化合物等の末端封鎖剤を含有していても良い。ポリ乳酸ポリマー分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と成形性のバランスが良く好ましい。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、より好ましくは重量平均分子量で10万〜30万である。
【0018】
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されない。具体的には、特開平6−65360号公報に開示されている製造方法がある。すなわち、乳酸を有機溶媒および触媒の存在下、そのまま脱水重合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号公報に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒存在下、共重合並びにエステル交換反応させる方法がある。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸をいったん脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
【0019】
本発明に用いられるポリ乳酸は、融点が130℃以上であることが好ましい。融点が130℃より低い場合には、製糸時、特に紡糸時に単糸間の融着が著しくなったり、更に延伸不良など発生するなど製品の品位が損なわれる恐れがある。融点は好ましくは、150℃以上であり、更に好ましくは160℃以上である。
【0020】
本発明に用いられるポリ乳酸短繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.1〜50dtexであり、より好ましくは4〜30dtexである。一般にポリ乳酸繊維の摩耗による品位低下は単繊維繊度が小さいほど顕著に現れるが、本発明のポリ乳酸短繊維では、繊維表面の滑り性に優れるため、単糸繊度が小さくても十分な耐摩耗性を有し、高品位の短繊維が得られる。また、本発明のポリ乳酸短繊維の繊維長は、好ましくは10〜100mmの範囲であり、工程通過性を考慮するとより好ましくは、20〜80mmが良い。
【0021】
本発明で用いられるポリ乳酸短繊維としては嵩高性を向上させるため、けん縮をもっているものが良く、けん縮付与方法については特に限定はされないが、スパイラルけん縮を付与することが有効である。スパイラルけん縮を付与する手段は多くあるが、例えば繊維を断面方向に非対称性を持たせ、延伸時の配向差によるスパイラルけん縮を発現させる方法、及び延伸後のリラックス熱処理時に生じる収縮差によってスパイラルけん縮を発現させる方法がある。該スパイラルけん縮を付与する方法としては中空化が有効であり、中空率5%以上の中空断面とするのが好ましい。ここで言う中空率とは、繊維断面の外形から求めた面積に対する中空部分の面積比を百分率で表したものである。中空率は見掛け密度を小さくすることが、スパイラルけん縮付与性向上から高い方が好ましいが、高すぎる場合には中空部のつぶれやクラックを発生する。好ましい中空率は5%以上50%以下であり、特に好ましいのは20%以上35%以下である。
【0022】
けん縮数については特に限定されないが、嵩高特性のバランスの観点から3山/25mm以上20山/25mm以下が良い。けん縮数が低すぎると、軽量感のある良好な風合いが達成されず、また20山/25mm以上では嵩高性が逆に低下してしまうことがある。特に好ましくは、4山/25mm以上10山/25mm以下である。
【0023】
本発明におけるポリ乳酸短繊維は、下記[A]及び[B]必須成分とした油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0024】
[A]第4級アンモニウム塩
[B]エステルノニオン
本発明における第4級アンモニウム塩とは、第4級窒素含有化合物であり、下記一般式1に示すN,N,N,N−テトラ炭化水素アンモニウム塩が好ましい。一般式1の化合物は人体に優しく安全であり、抗菌性能に非常に優れている。
【0025】
【化3】
【0026】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れかを表し、Xはハロゲン原子、炭素数1〜10のカルボン酸残基、炭素数1〜10の燐酸エステル残基、炭素数1〜10の硫酸エステル残基の何れかを表す。)
本発明におけるエステルノニオンとは、エステル結合とエーテル結合の両方を有する化合物であり、一般式2に示すポリオキシアルキレン有機酸エステルが好ましい。
【0027】
【化4】
【0028】
(式中R5〜R10は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れかを表し、Aは炭素、硫酸、リンの何れかを表し、a〜eは0〜3、f及びgは1〜500である。)
該成分は、第4級アンモニウム塩を繊維表面に固着させる作用に優れ、ポリオキシアルキレン芳香族カルボン酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪族カルボン酸エステル、ポリオキシアルキレン硫酸エステル、ポリオキシアルキレン燐酸エステルが好ましく、平滑性の面からポリオキシエチレンテレフタル酸エステルや炭素数8〜18のポリオキシエチレンアルキルエステルがさらに好ましい。
【0029】
また、本発明のポリエステル短繊維に処理し固着させる油剤は、[A]:第4級アンモニウム塩、[B]:エステルノニオンの必須成分の他、さらにその他に副成分として[C]:アニオン界面活性剤、[D]:エーテルノニオン、[E]:防錆剤の少なくとも1種を含むものであることが好ましい。この理由は、油剤の乳化分散やカード工程での制電作用を補うことができ、またカード機での錆発生を抑制する効果を向上させることができるからである。
【0030】
本発明におけるアニオン界面活性剤とは、有機酸塩であり、炭素数6〜22のアルキル基または/およびポリオキシアルキレン基を有する燐酸塩が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基または/およびポリオキシエチレン基を含有する燐酸塩がさらに好ましい。燐酸塩としてはアルカリ金属などの金属塩が好ましい。該化合物は制電性に優れているので、必須成分[A]および[B]の制電作用を補う。なお、アニオン界面活性剤は1種類に限定されるものではなく数種類を併用することができる。
【0031】
本発明におけるエーテルノニオンとは、エーテル結合を有する化合物であり、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテル、ポリオキシアルキレン芳香族エーテルなどである。ノニルフェノールが環境ホルモンであることを考慮すればポリオキシアルキレン脂肪族エーテルが好ましい。該化合物は乳化作用に優れているので、必須成分を水分散してから繊維に付与する場合、必須成分の乳化分散安定性を補う。なお、エーテルノニオンは1種類に限定されるものではなく、数種類を併用することができる。
【0032】
本発明における防錆剤とは、非塩型極性化合物であり、有機酸および有機アミンが好ましい。有機酸としては、炭素数6〜30の脂肪酸、アルケニルコハク酸、ホウ酸、アリルスルホンアミドカルボン酸、ベンゾチアゾールチオ酢酸などがさらに好ましい。有機アミンとしては、ベンゾトリアゾール、アルキルアミンやモノアルカノールアミン、ポリアルカノーアミンなどがさらに好ましい。また、防錆剤は1種類に限定されるものではなく数種類を併用することができる。カウンターアニオン(X−)がハロゲン原子や硫酸エステル残基の第4級アンモニウムの場合には防錆剤の併用が好ましい。
【0033】
本発明において、必須成分[A]および[B]との比率は[A]/[B]=50〜90/50〜10が好ましく、60〜80/40〜20がさらに好ましい。
[A]が50未満であると初期の抗菌作用が乏しくなり、逆に90を越えると抗菌作用の洗濯耐久性や平滑作用が乏しくなる。
【0034】
本発明において、副成分を使用する場合は必須成分および副成分との比率は([A]+[B])/([C]+[D]+[E])=50〜100/50〜0が好ましい。[A]+[B]が50未満となると抗菌・平滑作用およびその洗濯耐久性が乏しくなる。
【0035】
本発明に上述した油剤のポリ乳酸短繊維への付着量は、特に限定されないが、一般的に繊維重量対比0.01〜10重量%が好ましく、工程通過性、初期嵩高性を考慮すると、より好ましくは、0.1〜1重量%が良い。
【0036】
次に本発明の繊維は、例えば次のようにして製造することができる。
【0037】
ポリ乳酸ポリマーを通常の紡糸機を用いて溶融・紡糸する。このとき、中空繊維に場合は、例えば吐出孔形状を4スリットからなる中空口金などとする。紡糸後は、紡糸直後の冷却を20℃の冷却空気を強く吹き付けて行い、巻き取った後、液浴延伸後に軽度の機械けん縮を付与する。次いで、油剤を付与した後、所定の長さに繊維を切断し、リラックス状態で高温熱処理して、スパイラル形状のけん縮を発現させることにより、本発明の短繊維を得ることができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
(1)繊度:
JIS L−1015に示される方法により測定される繊度(dtex)で示す。
(2)繊維長:
JIS L−1015に示される方法により測定される繊維長(mm)で示す。
(3)けん縮数:
JIS L−1015に示される方法により測定されるけん縮数(山/25mm)で示す。
(4)抗菌性:
繊維製品衛生加工協議会で定めた統一試験方法(JAFET法)により行った。 すなわち、試料綿を開繊してウェブ状とした試料布をJIS L−0217−103号に記載の洗濯方法により水洗洗濯を10回行い滅菌してから、黄色ブドウ状球菌の1/20ニュートリエント懸濁液を注加し、密閉容器中で37℃×18時間培養した後生菌数を計数し、無加工試料布に対する静菌活性値と殺菌活性値を求め、以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。なお、抗菌性評価は(財)日本紡績検査協会に依頼した。
【0039】
優秀(◎):静菌活性値≧5.0、殺菌活性値≧3.0
良 (○):静菌活性値=4.0〜4.9、殺菌活性値=2.0〜2.9
不良(△):静菌活性値=3.0〜3.9、殺菌活性値=1.0〜1.9
不可(×):静菌活性値<2.0、殺菌活性値<1.0
(5)熱黄変度:
試料綿1gを170℃の温度下で24時間静置する前とした後の繊維サンプルを、各々開繊して繊維が平行となるよう引きそろえた繊維サンプルをスガ社製「カラーコンピューター;型式SM−3」を用いてb値を測定した。静置後のb値から静置前のb値を差し引いたΔbを熱黄変度とし、1以下を良好なものとした。
(6)制電性:
試料綿を温度30℃、相対湿度40%の条件下で12時間静置した後、スライバーの目付が4.3g/mとなるように試料綿を投入する。カード機として豊田自動織機製作所(株)製「TOYODA CK−7D」を使用し、該カード工程において、該温湿度条件50m/分の速度で走行している幅30cmとしたウェッブ上10cmの帯電圧[V]を測定した。該測定を5回繰り返し行い、その値の平均値が−500〜500[V]を望ましいものとした。
(6)風合い耐久性:
側地25cm×25cm(40番/40番:T120本/L120本(インチ))のダウンプルーフに目付0.04g/cm2の開繊した試料綿を詰め込み、JIS 1096−1990 6.23のA法に示される方法により10回洗濯後、その風合いを触感により3段階で判定し、羽毛調の滑り性のあることを望ましいとした。
(7)融点:
JIS L−1015に示される方法により融点(℃)を示す。
(8)中空率:
日本光学社製光学顕微鏡により糸断面写真を撮影し、図1に示したように、繊維1の中空部を含む外形から求められる面積(A)と、中空断面の中空部2の面積(B)を求め、次式より算出し、測定回数を20回として、その値の平均値を中空率とした。
【0040】
中空率(%)=(B/A)×100
(9)生分解性
得られた短繊維10gの試料を土中に埋没し、6ヶ月後に取り出した。この短繊維の強力が埋没前の強力初期値に対して50%以下に低下している場合、生分解性が良好(○)であるとし、強力が埋没前の強力値に対して50%を越える場合には生分解性が不良(×)であると評価した。繊維の強力はJIS−L−1015記載の方法に準じて引張強度(g/d)を求めた。
実施例1
融点165℃であるポリ乳酸チップ(カーギル・ダウ社製;グレード6200D)を、100℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度240℃にて溶融紡糸し、紡糸温度240℃として溶融パックへ導入して、スリット幅0.13mm、スリット直径1.2mm、孔長0.30mmの細孔を180ホール有する紡糸口金から紡出した。この紡出糸を20℃、160m/分のチムニー風により非対称冷却を行った。冷却後、油剤を付与して、収束した後、1200m/分で引き取って、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して70万dtexとして、70℃の液浴中で3.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、70mmに切断し、ポリ乳酸短繊維(SF1)を得た。該繊維に表2に示す成分を含む油剤をスプレー方式にて繊維に対し0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施した。得られた綿についての評価結果を表1に示す通り、ポリ乳酸特有のキシミ感もなく、良好な反発性を有し、黄変もなく、洗濯後も優れた抗菌性を有し、良好なものが得られた。
実施例2、3、4、5
実施例1で得られた(SF1)に表2に示す、2、3、4、5の油剤を各々スプレー方式にて繊維に対して0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施した。得られた綿は、表1に示す通り、実施例1と同様、良好な制電性及び変色防止性、優れた嵩高反発性を有しており、洗濯後の抗菌性、風合いも良好なものが得られた。
実施例4
融点165℃であるポリ乳酸チップ(カーギル・ダウ社製;グレード6200D)を、100℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度240℃にて溶融紡糸し、紡糸温度240℃として溶融パックへ導入して、スリット幅0.13mm、スリット直径1.2mm、孔長0.30mmの細孔を180ホール有する紡糸口金から紡出した。この紡糸糸を20℃、100m/分のチムニー風により非対称冷却を行った。冷却後、油剤を付与して、収束した後、1200m/分で引き取って、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して70万dtexとして、70℃の液浴中で3.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、70mmに切断し、ポリ乳酸短繊維(SF2)を得た。該繊維に表2に示す成分を含む油剤をスプレー方式にて繊維に対し0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施し、中空率10%の綿を得た。得られた綿についての評価結果を表1に示す通り、ポリ乳酸特有のキシミ感もなく、洗濯後も優れた抗菌性を有し、良好なものが得られた。
比較例1、2、3
実施例1で得られた(SF1)に表2に示す、6、7、8の油剤をスプレー方式にて繊維に対して0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施した。得られた綿は、表1に示した。比較例1、2では、抗菌性に劣り、比較例3では抗菌性は良好であったが、熱処理により変色し、制電性に劣るものであった。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明により、優れた抗菌性を有し、洗濯耐久性に優れかつ良好な制電性、防錆性及び変色防止性を有し、かつ生分解性を有する、ポリエステル短繊維に関するものである。さらに詳しくは、詰め綿素材として最適でかつ人間と地球に優しいポリエステル短繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、中空率を求める方法を説明する概略図である。
【符号の説明】
1:繊維
2:中空部
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた抗菌性を有し、洗濯耐久性に優れかつ良好な制電性、防錆性及び変色防止性を有し、かつ生分解性を有する、ポリエステル短繊維に関するものである。さらに詳しくは、詰め綿素材として最適でかつ人間と地球に優しいポリエステル短繊維を提供することである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表される芳香族ポリエステルからなる合成繊維は物理特性に優れており、加工性、取り扱い易さなどに優れた特性を有しているため、広範囲にわたって利用されている。衣料用としては勿論のこと、産業資材用、衛材用途、あるいは布団、クッションに代表される中入れ綿用として近年多量に使用されている。布団用途としては、背あてクッションやシートクッションなどのいわゆるクッション類、枕、座布団、さらにはキルティング分野の詰め綿にも利用されている。近年、健康と快適さを向上する目的で、細菌の増殖を抑制し不快な異臭の発生を防止するため、繊維自体の抗菌性能が強く求められいる。
また中入れ綿に提供される素材の要求特性としては、軽量かつ嵩高であり、反発性があること、また経時的に黄変せず、洗濯後も特性を保持していることが望まれる。またカード通過性の点から、制電性が良いことが挙げられる。
【0003】
これらの課題を解決するため従来よりシリコーン系油剤によるポリエステル繊維の表面改質が提案されている。
【0004】
例えば、第4級アンモニウム塩基含有シリコーン油剤(特許文献1、2)、第4級アンモニウム有機酸エステル塩(特許文献3、4)、第4級アンモニウム塩とアニオンを併用した油剤(特許文献5)がそれぞれ提案されているが、製糸性、風合いや制電性が不十分であったり、繊維上での架橋・固着が弱いため、洗濯耐久性に欠けるなどの欠点を有する。
【0005】
特に、第4級アンモニウム塩基含有シリコーン油剤を用いる場合は黄変しやすいという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−86632号公報
【0007】
【特許文献2】特開昭60−181364号公報
【0008】
【特許文献3】特開平3−38552号公報
【0009】
【特許文献4】特開平10−292262号公報
【0010】
【特許文献5】特公平7−116005号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、優れた抗菌性を有し、洗濯耐久性に優れかつ良好な制電性、防錆性及び変色防止性を有し、かつ生分解性を有する、ポリエステル短繊維を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に達した。
【0013】
すなわち、上述の課題は、ポリ乳酸からなり、繊維表面に下記[A]及び[B]を必須成分とした油剤を付着させてなる生分解性短繊維とすることによって達成される。
【0014】
[A]:第4級アンモニウム塩
[B]:エステルノニオン
また、本発明における油剤が上記必須成分[A]及び[B]の他に副成分として下記[C]〜[E]の少なくとも1種を含んでいると好ましい。
【0015】
[C]:アニオン界面活性剤
[D]:エーテルノニオン
[E]:防錆剤
更に、本発明の好ましい態度としては、軽量性、嵩高性を目的に繊維断面が中空断面であり、中空率が5%以上50%以下であることを特徴とすることが含まれる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の生分解性短繊維は、ポリ乳酸繊維で構成される。本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいい、L体あるいはD体の光学純度は90%以上であると、融点が高く好ましい。L体あるいはD体の光学純度はより好ましくは97%以上である。また、L体の光学純度90%以上のポリ乳酸とD体の光学純度90%以上のポリ乳酸を70/30〜30/70/30の比率でブレンドしたものは融点がさらに向上するためさらに好ましい。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していてもよく、また、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤あるいは着色顔料等の添加物を含有していても良い。ポリ乳酸の加水分解抑制や製品の経時による物性低下抑制目的として、カルボジイミド化合物等の末端封鎖剤を含有していても良い。ポリ乳酸ポリマー分子量は、重量平均分子量で5万〜50万であると、力学特性と成形性のバランスが良く好ましい。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、より好ましくは重量平均分子量で10万〜30万である。
【0018】
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されない。具体的には、特開平6−65360号公報に開示されている製造方法がある。すなわち、乳酸を有機溶媒および触媒の存在下、そのまま脱水重合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号公報に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒存在下、共重合並びにエステル交換反応させる方法がある。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸をいったん脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
【0019】
本発明に用いられるポリ乳酸は、融点が130℃以上であることが好ましい。融点が130℃より低い場合には、製糸時、特に紡糸時に単糸間の融着が著しくなったり、更に延伸不良など発生するなど製品の品位が損なわれる恐れがある。融点は好ましくは、150℃以上であり、更に好ましくは160℃以上である。
【0020】
本発明に用いられるポリ乳酸短繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.1〜50dtexであり、より好ましくは4〜30dtexである。一般にポリ乳酸繊維の摩耗による品位低下は単繊維繊度が小さいほど顕著に現れるが、本発明のポリ乳酸短繊維では、繊維表面の滑り性に優れるため、単糸繊度が小さくても十分な耐摩耗性を有し、高品位の短繊維が得られる。また、本発明のポリ乳酸短繊維の繊維長は、好ましくは10〜100mmの範囲であり、工程通過性を考慮するとより好ましくは、20〜80mmが良い。
【0021】
本発明で用いられるポリ乳酸短繊維としては嵩高性を向上させるため、けん縮をもっているものが良く、けん縮付与方法については特に限定はされないが、スパイラルけん縮を付与することが有効である。スパイラルけん縮を付与する手段は多くあるが、例えば繊維を断面方向に非対称性を持たせ、延伸時の配向差によるスパイラルけん縮を発現させる方法、及び延伸後のリラックス熱処理時に生じる収縮差によってスパイラルけん縮を発現させる方法がある。該スパイラルけん縮を付与する方法としては中空化が有効であり、中空率5%以上の中空断面とするのが好ましい。ここで言う中空率とは、繊維断面の外形から求めた面積に対する中空部分の面積比を百分率で表したものである。中空率は見掛け密度を小さくすることが、スパイラルけん縮付与性向上から高い方が好ましいが、高すぎる場合には中空部のつぶれやクラックを発生する。好ましい中空率は5%以上50%以下であり、特に好ましいのは20%以上35%以下である。
【0022】
けん縮数については特に限定されないが、嵩高特性のバランスの観点から3山/25mm以上20山/25mm以下が良い。けん縮数が低すぎると、軽量感のある良好な風合いが達成されず、また20山/25mm以上では嵩高性が逆に低下してしまうことがある。特に好ましくは、4山/25mm以上10山/25mm以下である。
【0023】
本発明におけるポリ乳酸短繊維は、下記[A]及び[B]必須成分とした油剤が繊維表面に固着されてなるものである。
【0024】
[A]第4級アンモニウム塩
[B]エステルノニオン
本発明における第4級アンモニウム塩とは、第4級窒素含有化合物であり、下記一般式1に示すN,N,N,N−テトラ炭化水素アンモニウム塩が好ましい。一般式1の化合物は人体に優しく安全であり、抗菌性能に非常に優れている。
【0025】
【化3】
【0026】
(式中、R1〜R4は炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れかを表し、Xはハロゲン原子、炭素数1〜10のカルボン酸残基、炭素数1〜10の燐酸エステル残基、炭素数1〜10の硫酸エステル残基の何れかを表す。)
本発明におけるエステルノニオンとは、エステル結合とエーテル結合の両方を有する化合物であり、一般式2に示すポリオキシアルキレン有機酸エステルが好ましい。
【0027】
【化4】
【0028】
(式中R5〜R10は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れかを表し、Aは炭素、硫酸、リンの何れかを表し、a〜eは0〜3、f及びgは1〜500である。)
該成分は、第4級アンモニウム塩を繊維表面に固着させる作用に優れ、ポリオキシアルキレン芳香族カルボン酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪族カルボン酸エステル、ポリオキシアルキレン硫酸エステル、ポリオキシアルキレン燐酸エステルが好ましく、平滑性の面からポリオキシエチレンテレフタル酸エステルや炭素数8〜18のポリオキシエチレンアルキルエステルがさらに好ましい。
【0029】
また、本発明のポリエステル短繊維に処理し固着させる油剤は、[A]:第4級アンモニウム塩、[B]:エステルノニオンの必須成分の他、さらにその他に副成分として[C]:アニオン界面活性剤、[D]:エーテルノニオン、[E]:防錆剤の少なくとも1種を含むものであることが好ましい。この理由は、油剤の乳化分散やカード工程での制電作用を補うことができ、またカード機での錆発生を抑制する効果を向上させることができるからである。
【0030】
本発明におけるアニオン界面活性剤とは、有機酸塩であり、炭素数6〜22のアルキル基または/およびポリオキシアルキレン基を有する燐酸塩が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基または/およびポリオキシエチレン基を含有する燐酸塩がさらに好ましい。燐酸塩としてはアルカリ金属などの金属塩が好ましい。該化合物は制電性に優れているので、必須成分[A]および[B]の制電作用を補う。なお、アニオン界面活性剤は1種類に限定されるものではなく数種類を併用することができる。
【0031】
本発明におけるエーテルノニオンとは、エーテル結合を有する化合物であり、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテル、ポリオキシアルキレン芳香族エーテルなどである。ノニルフェノールが環境ホルモンであることを考慮すればポリオキシアルキレン脂肪族エーテルが好ましい。該化合物は乳化作用に優れているので、必須成分を水分散してから繊維に付与する場合、必須成分の乳化分散安定性を補う。なお、エーテルノニオンは1種類に限定されるものではなく、数種類を併用することができる。
【0032】
本発明における防錆剤とは、非塩型極性化合物であり、有機酸および有機アミンが好ましい。有機酸としては、炭素数6〜30の脂肪酸、アルケニルコハク酸、ホウ酸、アリルスルホンアミドカルボン酸、ベンゾチアゾールチオ酢酸などがさらに好ましい。有機アミンとしては、ベンゾトリアゾール、アルキルアミンやモノアルカノールアミン、ポリアルカノーアミンなどがさらに好ましい。また、防錆剤は1種類に限定されるものではなく数種類を併用することができる。カウンターアニオン(X−)がハロゲン原子や硫酸エステル残基の第4級アンモニウムの場合には防錆剤の併用が好ましい。
【0033】
本発明において、必須成分[A]および[B]との比率は[A]/[B]=50〜90/50〜10が好ましく、60〜80/40〜20がさらに好ましい。
[A]が50未満であると初期の抗菌作用が乏しくなり、逆に90を越えると抗菌作用の洗濯耐久性や平滑作用が乏しくなる。
【0034】
本発明において、副成分を使用する場合は必須成分および副成分との比率は([A]+[B])/([C]+[D]+[E])=50〜100/50〜0が好ましい。[A]+[B]が50未満となると抗菌・平滑作用およびその洗濯耐久性が乏しくなる。
【0035】
本発明に上述した油剤のポリ乳酸短繊維への付着量は、特に限定されないが、一般的に繊維重量対比0.01〜10重量%が好ましく、工程通過性、初期嵩高性を考慮すると、より好ましくは、0.1〜1重量%が良い。
【0036】
次に本発明の繊維は、例えば次のようにして製造することができる。
【0037】
ポリ乳酸ポリマーを通常の紡糸機を用いて溶融・紡糸する。このとき、中空繊維に場合は、例えば吐出孔形状を4スリットからなる中空口金などとする。紡糸後は、紡糸直後の冷却を20℃の冷却空気を強く吹き付けて行い、巻き取った後、液浴延伸後に軽度の機械けん縮を付与する。次いで、油剤を付与した後、所定の長さに繊維を切断し、リラックス状態で高温熱処理して、スパイラル形状のけん縮を発現させることにより、本発明の短繊維を得ることができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
(1)繊度:
JIS L−1015に示される方法により測定される繊度(dtex)で示す。
(2)繊維長:
JIS L−1015に示される方法により測定される繊維長(mm)で示す。
(3)けん縮数:
JIS L−1015に示される方法により測定されるけん縮数(山/25mm)で示す。
(4)抗菌性:
繊維製品衛生加工協議会で定めた統一試験方法(JAFET法)により行った。 すなわち、試料綿を開繊してウェブ状とした試料布をJIS L−0217−103号に記載の洗濯方法により水洗洗濯を10回行い滅菌してから、黄色ブドウ状球菌の1/20ニュートリエント懸濁液を注加し、密閉容器中で37℃×18時間培養した後生菌数を計数し、無加工試料布に対する静菌活性値と殺菌活性値を求め、以下の4段階の判定を行い、優秀(◎)と良(○)を合格とした。なお、抗菌性評価は(財)日本紡績検査協会に依頼した。
【0039】
優秀(◎):静菌活性値≧5.0、殺菌活性値≧3.0
良 (○):静菌活性値=4.0〜4.9、殺菌活性値=2.0〜2.9
不良(△):静菌活性値=3.0〜3.9、殺菌活性値=1.0〜1.9
不可(×):静菌活性値<2.0、殺菌活性値<1.0
(5)熱黄変度:
試料綿1gを170℃の温度下で24時間静置する前とした後の繊維サンプルを、各々開繊して繊維が平行となるよう引きそろえた繊維サンプルをスガ社製「カラーコンピューター;型式SM−3」を用いてb値を測定した。静置後のb値から静置前のb値を差し引いたΔbを熱黄変度とし、1以下を良好なものとした。
(6)制電性:
試料綿を温度30℃、相対湿度40%の条件下で12時間静置した後、スライバーの目付が4.3g/mとなるように試料綿を投入する。カード機として豊田自動織機製作所(株)製「TOYODA CK−7D」を使用し、該カード工程において、該温湿度条件50m/分の速度で走行している幅30cmとしたウェッブ上10cmの帯電圧[V]を測定した。該測定を5回繰り返し行い、その値の平均値が−500〜500[V]を望ましいものとした。
(6)風合い耐久性:
側地25cm×25cm(40番/40番:T120本/L120本(インチ))のダウンプルーフに目付0.04g/cm2の開繊した試料綿を詰め込み、JIS 1096−1990 6.23のA法に示される方法により10回洗濯後、その風合いを触感により3段階で判定し、羽毛調の滑り性のあることを望ましいとした。
(7)融点:
JIS L−1015に示される方法により融点(℃)を示す。
(8)中空率:
日本光学社製光学顕微鏡により糸断面写真を撮影し、図1に示したように、繊維1の中空部を含む外形から求められる面積(A)と、中空断面の中空部2の面積(B)を求め、次式より算出し、測定回数を20回として、その値の平均値を中空率とした。
【0040】
中空率(%)=(B/A)×100
(9)生分解性
得られた短繊維10gの試料を土中に埋没し、6ヶ月後に取り出した。この短繊維の強力が埋没前の強力初期値に対して50%以下に低下している場合、生分解性が良好(○)であるとし、強力が埋没前の強力値に対して50%を越える場合には生分解性が不良(×)であると評価した。繊維の強力はJIS−L−1015記載の方法に準じて引張強度(g/d)を求めた。
実施例1
融点165℃であるポリ乳酸チップ(カーギル・ダウ社製;グレード6200D)を、100℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度240℃にて溶融紡糸し、紡糸温度240℃として溶融パックへ導入して、スリット幅0.13mm、スリット直径1.2mm、孔長0.30mmの細孔を180ホール有する紡糸口金から紡出した。この紡出糸を20℃、160m/分のチムニー風により非対称冷却を行った。冷却後、油剤を付与して、収束した後、1200m/分で引き取って、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して70万dtexとして、70℃の液浴中で3.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、70mmに切断し、ポリ乳酸短繊維(SF1)を得た。該繊維に表2に示す成分を含む油剤をスプレー方式にて繊維に対し0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施した。得られた綿についての評価結果を表1に示す通り、ポリ乳酸特有のキシミ感もなく、良好な反発性を有し、黄変もなく、洗濯後も優れた抗菌性を有し、良好なものが得られた。
実施例2、3、4、5
実施例1で得られた(SF1)に表2に示す、2、3、4、5の油剤を各々スプレー方式にて繊維に対して0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施した。得られた綿は、表1に示す通り、実施例1と同様、良好な制電性及び変色防止性、優れた嵩高反発性を有しており、洗濯後の抗菌性、風合いも良好なものが得られた。
実施例4
融点165℃であるポリ乳酸チップ(カーギル・ダウ社製;グレード6200D)を、100℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度240℃にて溶融紡糸し、紡糸温度240℃として溶融パックへ導入して、スリット幅0.13mm、スリット直径1.2mm、孔長0.30mmの細孔を180ホール有する紡糸口金から紡出した。この紡糸糸を20℃、100m/分のチムニー風により非対称冷却を行った。冷却後、油剤を付与して、収束した後、1200m/分で引き取って、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して70万dtexとして、70℃の液浴中で3.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、70mmに切断し、ポリ乳酸短繊維(SF2)を得た。該繊維に表2に示す成分を含む油剤をスプレー方式にて繊維に対し0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施し、中空率10%の綿を得た。得られた綿についての評価結果を表1に示す通り、ポリ乳酸特有のキシミ感もなく、洗濯後も優れた抗菌性を有し、良好なものが得られた。
比較例1、2、3
実施例1で得られた(SF1)に表2に示す、6、7、8の油剤をスプレー方式にて繊維に対して0.5重量%となるように給油付与し、145℃×10分の熱処理を施した。得られた綿は、表1に示した。比較例1、2では、抗菌性に劣り、比較例3では抗菌性は良好であったが、熱処理により変色し、制電性に劣るものであった。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明により、優れた抗菌性を有し、洗濯耐久性に優れかつ良好な制電性、防錆性及び変色防止性を有し、かつ生分解性を有する、ポリエステル短繊維に関するものである。さらに詳しくは、詰め綿素材として最適でかつ人間と地球に優しいポリエステル短繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、中空率を求める方法を説明する概略図である。
【符号の説明】
1:繊維
2:中空部
Claims (4)
- ポリ乳酸からなり、繊維表面に下記[A]及び[B]を必須成分とする油剤を付着させてなることを特徴とする生分解性短繊維。
[A]:第4級アンモニウム塩
[B]:エステルノニオン - 請求項1記載の必須成分の他に副成分として下記[C]〜[E]の少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1記載の生分解性繊維。
[C]:アニオン界面活性剤
[D]:エーテルノニオン
[E]:防錆剤 - 繊維断面が中空形状であり、中空率が5%以上50%以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の生分解性ポリエステル短繊維。
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