JP2004269704A - 高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全性が高く、油脂の風味への影響が少なく、十分な効果を有する高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤を提供する。
【解決手段】エノキタケの抽出物を、高度不飽和脂肪酸含有油脂に対する酸化防止剤として用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】エノキタケの抽出物を、高度不飽和脂肪酸含有油脂に対する酸化防止剤として用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)に代表される高度不飽和脂肪酸(1つの脂肪酸内に二重結合を3個以上含む脂肪酸)は、優れた生理活性作用を有することが知られるようになり、魚油に代表される高度不飽和脂肪酸を多く含む油脂は、食用油脂としての更なる活用が期待されている。しかしながら、それら高度不飽和脂肪酸を含む油脂は、酸化の度合いが速く、もどり臭と呼ばれる特有の臭気や風味の劣化が発生し、食品への利用、加工が制限されていた。そのため、従来、大部分の高度不飽和脂肪酸を含む油脂は食品へ利用されるにしても、水素添加して硬化油の形でマーガリン等の食用加工油脂に使用されるにとどまっていた(この場合、水素添加の工程中にEPA、DHAなどの高度不飽和脂肪酸は殆ど消滅してしまう)。
【0003】
よって、何らかの形で高度不飽和脂肪酸の酸化を効果的に防止することができれば、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂の有効利用が図れる。従来より、油脂の酸化防止には、ブチルヒドロキシアニソール等の合成酸化防止剤の添加が有効であることが知られているが、かかる合成酸化防止剤には安全性の問題もあり、近年の消費者の天然物嗜好を考慮すると、化学的合成品に代わる有効な天然物由来物質の使用が切望されている。
【0004】
従来、天然物由来の酸化防止剤としては、トコフェロールやアスコルビン酸が広く知られ、また、近年、緑茶の抽出液が抗酸化性を示すこと、並びにシイタケやシメジのメタノール抽出液が植物油の酸化をバルク状態で抑制することも報告されている(非特許文献1)。
【0005】
しかしながら、従来提案されている天然物由来の酸化防止剤、緑茶の抽出液、シイタケやシメジのメタノール抽出液は、高度不飽和脂肪酸を含む油脂に対しては、その効果は非常に弱く、実用的に有効とは言えないものであった。
【0006】
【非特許文献1】
Yang,J,H.,Lin,H,C.,and Mau,J,L.「Food Chemistry」77,229−235(2002)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全性が高く、油脂の風味への影響が少なく、十分な効果を有する高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、古くから広く食用とされていたエノキタケ(F1ammu1ina velutipes)が強い酸化防止効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、エノキタケの抽出物を含有してなることを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を説明する。これまでに、食用キノコに関しては、様々な生理活性物質が報告されているが、エノキタケの油脂、特に高度不飽和脂肪酸を含む油脂に対する強い酸化防止能については今まで全く知られていなかったことである。
【0011】
本発明において、エノキタケからの抽出物の抽出方法は、常法と同様で良く、エノキタケもしくはその乾燥物を工タノール、アセトン等を加え、懸濁し、抽出し・濾過・遠心分離等で固形分を除去するというものである、また、熱水により抽出してもよい。これらの方法で抽出された抽出物は、強いチロシナーゼ活性抑制作用を有する。
【0012】
更に、エノキタケを凍結乾燥し粉砕したものにも、抽出物よりも効果は少ないが同様の酸化防止能が認められ、かかる凍結乾燥粉末を用いることも可能である。
【0013】
また、本発明においては、エノキタケ抽出物の酸化防止効果を相乗的に高めるために、従来より使用されているトコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、ポリフェノール類等の抗酸化物質と併用して組成物として使用することも可能である。
【0014】
本発明において、対象とする油脂は、脂肪酸1分子中に二重結合を3個以上含む高度不飽和脂肪酸、具体的には、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸などを含有(一般的に0.1重量%程度以上)する油脂(トリグリセライド)であって、イワシ、サバ、サンマ、タラ等を原料とする魚油等が挙げられる。
【0015】
本発明のエノキタケ抽出物の具体的使用形態としては、対象とする油脂に直接配合してもよいが、エマルション形態とした油脂に配合するのが効果的である。
【0016】
油脂のエマルションとしては、O/W型、O/W/O型、W/O/W型のいずれのタイプでも良く、特に汎用されるO/W型の場合に有効である、エマルションの調製は常法と同様で良く、適宜乳化剤、糖質、増粘多糖類、塩類、蛋白質等を含むものであり、エマルションの水相部にエノキタケ抽出物を合することにより酸化防止効果が発揮される。
【0017】
また、油脂に対するエノキタケ抽出液の配合量は特に制限されるものではなく、油脂に対し0.1重量%以上であれば良く、望ましくは2.0〜10.0重量%程度である。
【0018】
【発明の効果】
以下に示す実施例からも明らかなように、高度不飽和脂肪酸を含む油脂を含有するO/W型エマルションに対するエノキタケ抽出物の効果は、緑茶抽出物、カテキン、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテートと比較してハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費量、DHA酸化消費量の何れのデータからも、高度不飽和脂肪酸を含む油脂の酸化を顕著に抑制していることが確認でき、さらに風味の劣化も抑制していた。
【0019】
即ち、エノキタケ抽出物を、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を使用している油脂またはエマルション中に配合することにより、その油脂の酸化を強く抑制することが可能となる。これにより、長期間良好な風味を維持することが可能となる。
【0020】
よって本発明を用いることにより、従来、速い酸化によるもどり臭、風味劣化のため食品への利用・加工が制限されていた高度不飽和脂肪酸を含有する油脂の有効利用が図れるようになり、各種加工油脂食品(マーガリン類、クリーム類、ソース類など)及びこれらを使った食品(パン類、菓子類、惣菜類など)並びに機能性食品、健康食品(特定保健用食品含む)、畜産動物飼料、ペット用飼料、養殖飼料などへの応用が出来る。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(試料の調製)
市販エノキタケ実体を凍結乾燥し、細かく粉砕した。この乾燥エノキタケ10gに70%アセトン200m1を加え、4分間ホモジナイズした。次に3000rpmで15分間遠心分離して、上清と沈殿物を分けた、この沈殿物に再度同様の操作を行い、得られた2回分の上清を合わせてエバポレーターで溜去したものを粗抽出液として使用した。
(精製タラ肝油・精製エイコサペンタエン酸(EPA)エチルエステルの調製)
タラ肝油及びEPAエチルエステルについては、市販品を、極性物質、トコフェロール類を除去するため、ケイ酸カラムクロマトグラフィーで処理したものを使用した。
実施例1(酸化安定性試験1)
表1に示す比率のタラ肝油・乳化剤(Tween20(登録商標))及びO.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)を、連続撹拌しながら、超音波発振機によって6分間処理し、水中油型エマルションを調製した(コントロール)。
【0022】
また、コントロールに対し、表1に示すように、エノキタケ粗抽出液、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテートを添加したものを試料1及び2、比較1及び2として調製した(それぞれの油に対する濃度は、試料1;7.0%、試料2;O.7%、比較1及び2;O.05%である)。
【0023】
表1に示す各々のエマルションを容量50m1の三角フラスコに25m1ずつ入れ、50℃の暗所で連続振とうしながら酸化を行い、24時間ごとにサンプリングし、下記の如くして酸化安定性を調べた。
(1)ドコサヘキサエン酸(DHA)量の測定
常法によりGLCで高度不飽和脂肪酸であるDHA量を測定した。
(2)ハイドロパーオキサイド量の測定
常法によりHPLCでハイドロパーオキサイド生成量を測定した。
(3)2−チオバルビツール酸(TBA)値の測定
AOCS公定法により測定した。
【0024】
また、上記とは別に、各々のエマルションを容量61mlのガラス製バイアルビンに5m1ずつ入れ密閉し、50℃の暗所で連続振とうしながら酸化を行い、24時間ごとにサンプリングし、常法によりGLCで酸素消費量を測定した。
【0025】
DHA量の測定結果を表2に、ハイドロパーオキサイド量の測定結果を図1に、TBA値の測定結果を図2に、酸素消費量の測定結果を図3に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
その結果、DHA量、ハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費量の何れにおいても、エノキタケ粗抽出液の添加は酸化を強く抑制していることが確認された。
【0029】
また、酸化開始後168時間のエマルションの臭いと色(目視)を比較した結果、コントロールは淡黄色に変化して強い魚油特有の劣化臭がしたが、試料1、2は酸化開始前の状態を保っていた。
実施例2(酸化安定性試験2)
上記実施例1と同じコントロールに対し、表3に示すように、GDTE、カテキンを添加したものを比較3及び4として調製した(それぞれの油に対する濃度は、比較3;3.06%、比較4;0.05%である)。
【0030】
表3に示す各々のエマルションについて、連続振とうの際の温度を40℃にした以外は実施例1と同様にして酸化安定性を調べた(DHA量の測定は割愛)。
【0031】
ハイドロパーオキサイド量の測定結果を図4に、TBA値の測定結果を図5に、酸素消費量の測定結果を図6に示す。
【0032】
尚、GDTEは、クロロフィル除去緑茶抽出物であり、以下のように調製したものである。乾燥緑茶粉末に50%エタノールを加えホモジナイズし、遠心分離により固形物を除いた上清を濾過後、クロロホルムと酢酸エチルで洗浄し、溶媒を溜去した。これをイオン交換クロマトグラフィー処理した後、溶媒を溜去してGDTEを得た。
【0033】
【表3】
【0034】
その結果、ハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費量の何れにおいても、エノキタケ粗抽出液の添加は酸化を強く抑制していることが確認された。
実施例3(酸化安定性試験3)
表4に示す通り、タラ肝油に代えてEPAエチルエステルを用いた以外は実施例1と同様にしてコントロール、試料3及び4の水中油型エマルションを調製した。
【0035】
表4に示す各々のエマルションについて、実施例1と同様にして酸化安定性を調べた。
【0036】
DHA量の測定結果を表5に、ハイドロパーオキサイド量の測定結果を図7に、TBA値の測定結果を図8に、酸素消費量の測定結果を図9に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
その結果、DHA量、ハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費最の何れにおいても、エノキタケ粗抽出液の添加は酸化を強く抑制していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の試験による、酸化時間とハイドロパーオキサイド量の関係を示すグラフである。
【図2】実施例1の試験による、酸化時間とTBA値の関係を示すグラフである。
【図3】実施例1の試験による、酸化時間と酸素消費量の関係を示すグラフである。
【図4】実施例2の試験による、酸化時間とハイドロパーオキサイド量の関係を示すグラフである。
【図5】実施例2の試験による、酸化時間とTBA値の関係を示すグラフである。
【図6】実施例2の試験による、酸化時間と酸素消費量の関係を示すグラフである。
【図7】実施例3の試験による、酸化時間とハイドロパーオキサイド量の関係を示すグラフである。
【図8】実施例3の試験による、酸化時間とTBA値の関係を示すグラフである。
【図9】実施例3の試験による、酸化時間と酸素消費量の関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)に代表される高度不飽和脂肪酸(1つの脂肪酸内に二重結合を3個以上含む脂肪酸)は、優れた生理活性作用を有することが知られるようになり、魚油に代表される高度不飽和脂肪酸を多く含む油脂は、食用油脂としての更なる活用が期待されている。しかしながら、それら高度不飽和脂肪酸を含む油脂は、酸化の度合いが速く、もどり臭と呼ばれる特有の臭気や風味の劣化が発生し、食品への利用、加工が制限されていた。そのため、従来、大部分の高度不飽和脂肪酸を含む油脂は食品へ利用されるにしても、水素添加して硬化油の形でマーガリン等の食用加工油脂に使用されるにとどまっていた(この場合、水素添加の工程中にEPA、DHAなどの高度不飽和脂肪酸は殆ど消滅してしまう)。
【0003】
よって、何らかの形で高度不飽和脂肪酸の酸化を効果的に防止することができれば、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂の有効利用が図れる。従来より、油脂の酸化防止には、ブチルヒドロキシアニソール等の合成酸化防止剤の添加が有効であることが知られているが、かかる合成酸化防止剤には安全性の問題もあり、近年の消費者の天然物嗜好を考慮すると、化学的合成品に代わる有効な天然物由来物質の使用が切望されている。
【0004】
従来、天然物由来の酸化防止剤としては、トコフェロールやアスコルビン酸が広く知られ、また、近年、緑茶の抽出液が抗酸化性を示すこと、並びにシイタケやシメジのメタノール抽出液が植物油の酸化をバルク状態で抑制することも報告されている(非特許文献1)。
【0005】
しかしながら、従来提案されている天然物由来の酸化防止剤、緑茶の抽出液、シイタケやシメジのメタノール抽出液は、高度不飽和脂肪酸を含む油脂に対しては、その効果は非常に弱く、実用的に有効とは言えないものであった。
【0006】
【非特許文献1】
Yang,J,H.,Lin,H,C.,and Mau,J,L.「Food Chemistry」77,229−235(2002)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全性が高く、油脂の風味への影響が少なく、十分な効果を有する高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、古くから広く食用とされていたエノキタケ(F1ammu1ina velutipes)が強い酸化防止効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、エノキタケの抽出物を含有してなることを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を説明する。これまでに、食用キノコに関しては、様々な生理活性物質が報告されているが、エノキタケの油脂、特に高度不飽和脂肪酸を含む油脂に対する強い酸化防止能については今まで全く知られていなかったことである。
【0011】
本発明において、エノキタケからの抽出物の抽出方法は、常法と同様で良く、エノキタケもしくはその乾燥物を工タノール、アセトン等を加え、懸濁し、抽出し・濾過・遠心分離等で固形分を除去するというものである、また、熱水により抽出してもよい。これらの方法で抽出された抽出物は、強いチロシナーゼ活性抑制作用を有する。
【0012】
更に、エノキタケを凍結乾燥し粉砕したものにも、抽出物よりも効果は少ないが同様の酸化防止能が認められ、かかる凍結乾燥粉末を用いることも可能である。
【0013】
また、本発明においては、エノキタケ抽出物の酸化防止効果を相乗的に高めるために、従来より使用されているトコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、ポリフェノール類等の抗酸化物質と併用して組成物として使用することも可能である。
【0014】
本発明において、対象とする油脂は、脂肪酸1分子中に二重結合を3個以上含む高度不飽和脂肪酸、具体的には、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸などを含有(一般的に0.1重量%程度以上)する油脂(トリグリセライド)であって、イワシ、サバ、サンマ、タラ等を原料とする魚油等が挙げられる。
【0015】
本発明のエノキタケ抽出物の具体的使用形態としては、対象とする油脂に直接配合してもよいが、エマルション形態とした油脂に配合するのが効果的である。
【0016】
油脂のエマルションとしては、O/W型、O/W/O型、W/O/W型のいずれのタイプでも良く、特に汎用されるO/W型の場合に有効である、エマルションの調製は常法と同様で良く、適宜乳化剤、糖質、増粘多糖類、塩類、蛋白質等を含むものであり、エマルションの水相部にエノキタケ抽出物を合することにより酸化防止効果が発揮される。
【0017】
また、油脂に対するエノキタケ抽出液の配合量は特に制限されるものではなく、油脂に対し0.1重量%以上であれば良く、望ましくは2.0〜10.0重量%程度である。
【0018】
【発明の効果】
以下に示す実施例からも明らかなように、高度不飽和脂肪酸を含む油脂を含有するO/W型エマルションに対するエノキタケ抽出物の効果は、緑茶抽出物、カテキン、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテートと比較してハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費量、DHA酸化消費量の何れのデータからも、高度不飽和脂肪酸を含む油脂の酸化を顕著に抑制していることが確認でき、さらに風味の劣化も抑制していた。
【0019】
即ち、エノキタケ抽出物を、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を使用している油脂またはエマルション中に配合することにより、その油脂の酸化を強く抑制することが可能となる。これにより、長期間良好な風味を維持することが可能となる。
【0020】
よって本発明を用いることにより、従来、速い酸化によるもどり臭、風味劣化のため食品への利用・加工が制限されていた高度不飽和脂肪酸を含有する油脂の有効利用が図れるようになり、各種加工油脂食品(マーガリン類、クリーム類、ソース類など)及びこれらを使った食品(パン類、菓子類、惣菜類など)並びに機能性食品、健康食品(特定保健用食品含む)、畜産動物飼料、ペット用飼料、養殖飼料などへの応用が出来る。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(試料の調製)
市販エノキタケ実体を凍結乾燥し、細かく粉砕した。この乾燥エノキタケ10gに70%アセトン200m1を加え、4分間ホモジナイズした。次に3000rpmで15分間遠心分離して、上清と沈殿物を分けた、この沈殿物に再度同様の操作を行い、得られた2回分の上清を合わせてエバポレーターで溜去したものを粗抽出液として使用した。
(精製タラ肝油・精製エイコサペンタエン酸(EPA)エチルエステルの調製)
タラ肝油及びEPAエチルエステルについては、市販品を、極性物質、トコフェロール類を除去するため、ケイ酸カラムクロマトグラフィーで処理したものを使用した。
実施例1(酸化安定性試験1)
表1に示す比率のタラ肝油・乳化剤(Tween20(登録商標))及びO.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)を、連続撹拌しながら、超音波発振機によって6分間処理し、水中油型エマルションを調製した(コントロール)。
【0022】
また、コントロールに対し、表1に示すように、エノキタケ粗抽出液、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテートを添加したものを試料1及び2、比較1及び2として調製した(それぞれの油に対する濃度は、試料1;7.0%、試料2;O.7%、比較1及び2;O.05%である)。
【0023】
表1に示す各々のエマルションを容量50m1の三角フラスコに25m1ずつ入れ、50℃の暗所で連続振とうしながら酸化を行い、24時間ごとにサンプリングし、下記の如くして酸化安定性を調べた。
(1)ドコサヘキサエン酸(DHA)量の測定
常法によりGLCで高度不飽和脂肪酸であるDHA量を測定した。
(2)ハイドロパーオキサイド量の測定
常法によりHPLCでハイドロパーオキサイド生成量を測定した。
(3)2−チオバルビツール酸(TBA)値の測定
AOCS公定法により測定した。
【0024】
また、上記とは別に、各々のエマルションを容量61mlのガラス製バイアルビンに5m1ずつ入れ密閉し、50℃の暗所で連続振とうしながら酸化を行い、24時間ごとにサンプリングし、常法によりGLCで酸素消費量を測定した。
【0025】
DHA量の測定結果を表2に、ハイドロパーオキサイド量の測定結果を図1に、TBA値の測定結果を図2に、酸素消費量の測定結果を図3に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
その結果、DHA量、ハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費量の何れにおいても、エノキタケ粗抽出液の添加は酸化を強く抑制していることが確認された。
【0029】
また、酸化開始後168時間のエマルションの臭いと色(目視)を比較した結果、コントロールは淡黄色に変化して強い魚油特有の劣化臭がしたが、試料1、2は酸化開始前の状態を保っていた。
実施例2(酸化安定性試験2)
上記実施例1と同じコントロールに対し、表3に示すように、GDTE、カテキンを添加したものを比較3及び4として調製した(それぞれの油に対する濃度は、比較3;3.06%、比較4;0.05%である)。
【0030】
表3に示す各々のエマルションについて、連続振とうの際の温度を40℃にした以外は実施例1と同様にして酸化安定性を調べた(DHA量の測定は割愛)。
【0031】
ハイドロパーオキサイド量の測定結果を図4に、TBA値の測定結果を図5に、酸素消費量の測定結果を図6に示す。
【0032】
尚、GDTEは、クロロフィル除去緑茶抽出物であり、以下のように調製したものである。乾燥緑茶粉末に50%エタノールを加えホモジナイズし、遠心分離により固形物を除いた上清を濾過後、クロロホルムと酢酸エチルで洗浄し、溶媒を溜去した。これをイオン交換クロマトグラフィー処理した後、溶媒を溜去してGDTEを得た。
【0033】
【表3】
【0034】
その結果、ハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費量の何れにおいても、エノキタケ粗抽出液の添加は酸化を強く抑制していることが確認された。
実施例3(酸化安定性試験3)
表4に示す通り、タラ肝油に代えてEPAエチルエステルを用いた以外は実施例1と同様にしてコントロール、試料3及び4の水中油型エマルションを調製した。
【0035】
表4に示す各々のエマルションについて、実施例1と同様にして酸化安定性を調べた。
【0036】
DHA量の測定結果を表5に、ハイドロパーオキサイド量の測定結果を図7に、TBA値の測定結果を図8に、酸素消費量の測定結果を図9に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
その結果、DHA量、ハイドロパーオキサイド量、TBA値、酸素消費最の何れにおいても、エノキタケ粗抽出液の添加は酸化を強く抑制していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の試験による、酸化時間とハイドロパーオキサイド量の関係を示すグラフである。
【図2】実施例1の試験による、酸化時間とTBA値の関係を示すグラフである。
【図3】実施例1の試験による、酸化時間と酸素消費量の関係を示すグラフである。
【図4】実施例2の試験による、酸化時間とハイドロパーオキサイド量の関係を示すグラフである。
【図5】実施例2の試験による、酸化時間とTBA値の関係を示すグラフである。
【図6】実施例2の試験による、酸化時間と酸素消費量の関係を示すグラフである。
【図7】実施例3の試験による、酸化時間とハイドロパーオキサイド量の関係を示すグラフである。
【図8】実施例3の試験による、酸化時間とTBA値の関係を示すグラフである。
【図9】実施例3の試験による、酸化時間と酸素消費量の関係を示すグラフである。
Claims (3)
- エノキタケの抽出物を含有してなることを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤。
- エノキタケの抽出物を配合してなることを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有油脂加工油脂。
- 油脂がエマルション形態のものである請求項2記載の高度不飽和脂肪酸含有加工油脂。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003062893A JP2004269704A (ja) | 2003-03-10 | 2003-03-10 | 高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003062893A JP2004269704A (ja) | 2003-03-10 | 2003-03-10 | 高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤 |
Publications (1)
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JP2004269704A true JP2004269704A (ja) | 2004-09-30 |
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ID=33124630
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JP2003062893A Pending JP2004269704A (ja) | 2003-03-10 | 2003-03-10 | 高度不飽和脂肪酸含有油脂の酸化防止剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004269704A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008208239A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Yatsuka:Kk | 脂質酸化抑制剤 |
WO2023027106A1 (ja) * | 2021-08-25 | 2023-03-02 | 株式会社カネカ | 乳化食品用劣化臭抑制剤、該劣化臭抑制剤を含む乳化食品及びそれらの製造方法 |
-
2003
- 2003-03-10 JP JP2003062893A patent/JP2004269704A/ja active Pending
Cited By (2)
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JP2008208239A (ja) * | 2007-02-27 | 2008-09-11 | Yatsuka:Kk | 脂質酸化抑制剤 |
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