JP6799834B2 - 食用鯨油組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粗鯨油から摂食可能な鯨油組成物を製造する方法に関する。
従来、石油が登場する19世紀の半ばまで鯨油は、灯火用の燃料油、ろうそくの原料、機械用の潤滑油、皮革用の洗剤等として日常生活や工業用に用いられてきた。
より詳細には、昭和63年頃より以前、鯨油は主に捕鯨船上で搾油されていた。また、鯨油にはEPA、DHA、PAなどのn−3系多価不飽和脂肪酸が含まれており、これらの脂肪酸が酸化することで揮発性のアルデヒドが生成されて独特の臭気(いわゆる「魚臭さ」)を有していた。このため鯨油は、食用としてではなく主に日用や工業用として利用されてきた。
また、このような独特の臭気を有する鯨油を食するための試みも行われており、例えば、水素添加反応によって鯨油を硬化油とし、マーガリンやショートニングとして利用することが行われていた。この場合、鯨油に対して水素添加反応を行うことで、鯨油が有する独特な臭気を大幅に軽減することができるため、鯨油を食用油として用いることができた。
ところが、一般に食用油脂に対して水素添加反応を行うと、その副反応によりトランス脂肪酸が生成されることが知られており、このトランス脂肪酸は人の健康に悪影響を及ぼすことが知られている。したがって、鯨油から独特の臭気を除去することができるとしても、食用油脂の製造方法として水素添加反応を行うことは好ましくない。
また、一般に、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)は何れも、n−3系多価不飽和脂肪酸であり、これらに共通する作用として、中性脂肪の低下作用や血小板凝集の抑制作用が報告されている。さらに、EPAには血液粘度の低下、HDLの増加、DHAには記憶学習能力の向上、視力の向上、抗炎症作用、血漿コレステロールの低下等の作用が、また、DPAには、動脈硬化の防止、癌やリウマチへの症状改善等の作用が報告されている(非特許文献1)
さらに、オーギュスト・オドーネとミケーラ・オドーネが考案した機能性油脂である「ロレンツォのオイル」は、オレイン酸とエルカ酸の4/1のトリグリセリドで、副腎白質ジストロフィー(ALD)患者に対する食餌療法として用いられている(非特許文献2)。このロレンツォのオイルを用いた食餌療法は、ALDの病態である脱ミエリン化を起こす極長鎖脂肪酸を低下させる栄養療法であり、現在では、スクリーニングによって発症前の患児を見つけて、早期から「ロレンツォのオイル」を投与して発症予防を行うというものである。そして、このロレンツォのオイルを構成するエルカ酸は、従来菜種油に多く含まれていたが、現在は菜種の品種改良が進み、市場に流通している菜種油のエルカ酸含有率は数%程度と、ほとんど含まれていないのが現状である。また一部の魚油にもエルカ酸が含まれているが、その含有率が低い。
近年、日本では商業捕鯨に代わって調査捕鯨が行われている。また、工業用、商業用あるいは日用に用いられる油は主に石油であるため、鯨体から得られる鯨油は破棄されている。
これに対して、鯨油に含有される生体に有用な成分を有効活用すべく、鯨油から食用の油脂組成物を製造する発明がいくつか開示されている。
特許文献1には「油脂の生産方法」という名称で、基質油中に含まれる酵素の有効寿命を延長させることができる方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される油脂の生産方法は、1種以上のグリセリド類、遊離脂肪酸類、モノヒドロキシルアルコール類、ポリヒドロキシルアルコール類およびエステル類からなる群から選択された1つの化合物または化合物の混合物を含む開始基質を形成する工程と、この開始基質を1種以上の精製用媒体と接触させて精製基質を生成する工程と、エステル化またはエステル交換反応をさせるためにこの精製基質をリパーゼの酵素活性が延長されたリパーゼと接触させて油脂を作成する工程とを含むことを特徴とするものである。
上述のような特許文献1に開示される方法により生産される油脂は、多様な料理への応用に利用できる。
特許文献2には「グリセロールを用いた酵素反応による脂肪酸アルキルエステルの濃縮方法」という名称で、天然供給源における例えばω−3脂肪酸のように濃度が低い脂肪酸の濃度を高めることのできるプロセスに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明は、例えば魚油から得られるアルキルエステルを、水の存在下、異なる割合で、真空チャンバー中でグリセロールと反応させ、平衡に達する前に反応を終結させ、濃縮されたアルキルエステル画分を、短行程蒸留を用いて反応混合物から単離することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される発明によれば、いくつかの脂肪酸の持つ強い正の生物学的効果のために、脂肪酸を、補助食品として、食品/餌の原料として、および薬物として使用可能にするという効果を有する。
特許文献3には「水産動物油含有水素添加油脂の製造方法」という名称で、魚油などの水産動物油に対してトランス酸の生成をできるだけ少なくし、しかも比較的簡単な操作によって効率よく水素添加油脂を製造可能にする発明が開示されている。
特許文献3に開示される発明は、水産動物油20〜80質量%と、ヨウ素価が水産動物油より低く水産動物油を含まない食用油80〜20質量%との混合油またはエステル交換油を水素添加し、この水素添加によるトランス酸の増加量が18質量%以下であるように水素添加によるヨウ素価の低下量1単位当たりの油脂温度上昇率を0〜0.5に調整すると共に、水素添加の反応温度を60〜75℃に調整することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献3に開示される発明により製造される魚油を含む水素添加油脂は、トランス酸の増加量が18%以下に低く抑えられている。また、このような水素添加油脂をなす混合油脂中の水産動物油のヨウ素価は、概ね80以上低下するように充分な水素添加が行なわれるため、特許文献3に開示される最終産物である水素添加油脂の風味も良好になる。
特表2004−528843号公報 特開2014−50403号公報 特許4955825号公報
実用 水産油脂事典、丸善、ISBN−902923−00−9 (2005) Moser, Hugo W. (2005). "Follow−up of 89 Asymptomatic Patients With Adrenoleukodystrophy Treated With Lorenzo‘s Oil". JAMA Neurology 62: 1073−1080. doi:10.1001/archneur.62.7.1073
近年、n−3系多価不飽和脂肪酸等を含有する油脂組成物の摂取の仕方として、なるべく原料油脂に加工を加えることなく、より原料油脂に近い状態のものを摂取するという考え方がある。
このような観点からみた場合、特許文献1乃至3に開示される発明はいずれも、最終産物である油脂組成物に目的とする機能を好適に付加することができ、かつ鯨油が有する独特な臭気等を除去できると考えられる一方で、最終製品としての油脂組成物を原料油脂に対してより化学的変化の少ないものにするという要求を十分に満たすものではなかった。
特に特許文献3に開示される発明の場合は、トランス酸の増加が抑えられているとはいえ、水素添加工程を備えているため、最終生産物中におけるトランス酸の増加は不可避であった。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、鯨油が有する独特の臭気を好適に除去し、かつ人体に有用な成分の含有率を高めることができ、かつその製造工程において人体に悪影響を及ぼす可能性のある成分の生成が起こり難い食用鯨油組成物の製造方法、およびこの製造方法により製造してなる食用鯨油組成物、およびそれを含有してなる食品を提供することにある。
さらに本発明の目的は、上記目的に加えて、鯨油を用いてALD患者の食餌療法に使用可能な食用鯨油組成物、およびそれを含有してなる食品を提供することにある。
上記課題を解決するための第1の発明である食用鯨油組成物の製造方法は、鯨体から粗鯨油を抽出する粗鯨油抽出工程と、5℃〜35℃の範囲内の温度条件下に粗鯨油を静置して固液分離させる静置工程と、固液分離した粗鯨油から同上の温度条件下において液状部を液状粗鯨油として抽出する液状部抽出工程と、液状粗鯨油と吸着剤とを直接接触させて臭気成分及び着色成分を低減させてなる食用鯨油組成物を得る脱臭・脱色工程と、を備え、食用鯨油組成物は、波長420nmにおける吸光度が0.1以下であり、かつn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上であることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明における粗鯨油抽出工程は、鯨肉、鯨皮、鯨骨、鯨内蔵などの鯨体を加熱、圧搾、溶媒抽出等の手段により粗鯨油を得る工程である。静置工程は、5℃〜35℃の範囲内の温度条件下に粗鯨油を静置することで、粗鯨油を固液分離させるという作用を有する。さらに、液状部抽出工程は、先の静置工程において固液分離した液状部のみを抽出するという作用を有する。
このように第1の発明が、静置工程と液状部抽出工程の両者を備えていることで、得られる液状粗鯨油中のn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率を高めるという作用を有する。さらに、第1の発明が、静置工程と液状部抽出工程の両者を備えていることで、この後の脱臭・脱色工程において液状粗鯨油と吸着剤とを直接接触させることを容易にするという作用も有する。
さらに、脱臭・脱色工程は、液状粗鯨油と吸着剤とを直接接触させることで、液状粗鯨油中における着色成分及び鯨油独特の臭気成分を効率的にかつ確実に除去するという作用を有する。なお、脱臭・脱色工程完了直後の食用鯨油組成物の態様は液状であるが、その後の食用鯨油組成物の態様は、食用鯨油組成物の温度によって異なり、35℃を超えていればその全ては液体であり、5℃〜35℃の範囲内であれば液体、又は、液体と固体の混合体であり、5℃を下回る場合は固体をなしている。
加えて、脱臭・脱色工程を経て得られる食用鯨油組成物は、波長420nmにおける吸光度が0.1以下であることで、人がこの食用鯨油組成物をそのまま食した際に、鯨油特有の臭気をほとんど感じない状態にするという作用を有する。
さらに、この食用鯨油組成物におけるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上であることで、この食用鯨油組成物を摂取することで、n−3系多価不飽和脂肪酸の効率的な摂取を可能にし、それに伴う生体機能の改善効果を発揮させるという作用を有する。
このような第1の発明は、粗鯨油に対して熱処理や、水素添加反応を行うものではないので、最終産物である食用鯨油組成物中における副反応物や分解物の存在を少なくして、粗鯨油が有する成分をそのまま摂取することを可能にするという作用を有する。
第2の発明である食用鯨油組成物の製造方法は、上述の第1の発明であって、脱臭・脱色工程は、5℃〜100℃の範囲内の温度条件下において行われることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用に加えて、脱臭・脱色工程を行う際の温度条件を5℃〜100℃の範囲内に特定することで、液状粗鯨油と吸着剤との直接接触による着色成分及び鯨油独特の臭気成分の除去をスムーズに進行させるという作用を有する。加えて、脱臭・脱色工程を行う際の温度条件を上記の通り特定することで、液状粗鯨油中に含有される有用成分である例えばn−3系多価不飽和脂肪酸等が酸化により劣化する、あるいは分解して減少するのを好適に抑制するという作用を有する。
なお、第2の発明においては、脱臭・脱色工程時の温度条件が5℃に近いほど有用成分である例えばn−3系多価不飽和脂肪酸等の劣化や減少を抑制できる。その反面、液状粗鯨油の流動性が低下するので、作業性の点でやや不利になる。逆に、脱臭・脱色工程時の温度条件が100℃に近いほど液状粗鯨油の流動性が高まるので処理時の作業性が向上する反面、n−3系多価不飽和脂肪酸等の酸化による劣化や減少が起きやすくなる。
第3の発明である食用鯨油組成物の製造方法は、上述の第1又は第2の発明であって、吸着剤は、活性炭、活性白土及びシリカから選択される少なくとも1種類であることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明における吸着剤を具体的に特定したものであり、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。
また、第3の発明において、吸着剤を活性炭、活性白土及びシリカから選択される少なくとも1種類に特定することで、吸着剤と液状粗鯨油が直接接触した際に、食用に適さない成分が吸着剤から液状粗鯨油中に混入するのを妨げるという作用を有する。これは、これらの吸着剤がいずれも脂質に対して不溶性を有し、かつこれらの吸着剤の表面の電気化学的な性質により液状粗鯨油中の臭気成分(例えば、酸化した油脂)や雑味の成分等が吸着除去されるためである。これにより、吸着剤を分離除去して得られる油脂組成物(本発明に係る食用鯨油組成物)に何ら後処理を施すことなくそのまま食用にすることを可能にするという作用を有する。
第4の発明である食用鯨油組成物は、波長420nmにおける吸光度が0.1以下であり、かつn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上であり、かつ、その凝固点が5℃〜35℃の範囲内であることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、先の第1乃至第3の発明における食用鯨油組成物の製造方法により製造される精油を物の発明(食用鯨油組成物)として特定したものである。
上記構成の発明によれば、人体に有用なn−3系多価不飽和脂肪酸を豊富に含有し、かつ食した際に鯨油が有する独特な臭気がほとんど感じられない食用の鯨油組成物を提供するという作用を有する。
第5の発明である食用鯨油組成物は、鯨油からなる食用鯨油組成物であって、波長420nmにおける吸光度が0.1以下であり、かつn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上であり、かつ食用鯨油組成物において含有率が最も多い成分はオレイン酸であり、かつ食用鯨油組成物中におけるリノール酸の含有率は3重量%以下であることを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、先の第1乃至第3の発明における食用鯨油組成物の製造方法により製造される精油を物の発明(食用鯨油組成物)として特定したものである。なお、上記構成の第5の発明において、含有率が最も多い成分(オレイン酸)に関する特定、並びに、リノール酸の含有率に関する特定は、この度の発明品以外の食用油脂組成物と第5の発明に係る食用鯨油組成物とを物として区別するための構成である。
第6の発明である食用鯨油組成物は、上述の第1又は第2の発明であって、食用鯨油組成物に含まれるオレイン酸及びエルカ酸の含有率は30重量%以上であり、かつエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比は3.8〜4.2の範囲内であることを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明は、上述の第4又は第5の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第6の発明では特にオレイン酸及びエルカ酸の含有率を30重量%以上とし、かつエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比を3.8〜4.2の範囲内とすることで、この食用鯨油組成物を、ALD患者に対する食餌療法に用いることを可能にするという作用を有する。
第7の発明である食品は、上述の第4乃至第6のいずれかの発明である食用鯨油組成物を1重量%以上含有していることを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明は、第4乃至第6のいずれかの発明を含有してなる食品である。このような第7の発明では、第4乃至第6の発明である食用鯨油組成物をそのまま食する場合と比較して、食用鯨油組成物の味や食感を変化させて食し易くするという作用を有する。
上述のような第1又は第2の発明によれば、従来廃棄処分を余儀なくされていた鯨油から、人体に有用な例えばn−3系多価不飽和脂肪酸等の成分を豊富に含む食用の油脂組成物を効率良く抽出することができる。しかも、第1又は第2の発明によれば、食用鯨油組成物中に存在する鯨油独特の臭気を、そのまま食した際に気にならない程度にまで低減することができる。この結果、第1又は第2の発明によれば、従来廃棄されていた鯨油を食用としてその利用を促進することができる。
また、第1又は第2の発明によれば、静置工程と液状部抽出工程を備えていることで、粗鯨油の脱臭・脱色工程を100℃以下の温度条件下において行うことが可能になる。
鯨油は、その温度が150℃を超えると重量減少が急激に進む。これは、熱により鯨油中のn−3系多価不飽和脂肪酸が酸化して減少するためである。また、鯨油を、150℃を超えて加熱した際に生じる揮発性の分解生成物はアルデヒドなどの有臭成分である。このため、鯨油を100℃を超える温度にまで加熱すると、風味の悪化が進んで食用として適さなくなる。
このため、第1又は第2の発明においては、5℃〜35℃の範囲内の温度条件下において液状をなす液状粗鯨油を脱臭・脱色工程の処理対象物とすることで、脱臭・脱色工程時に液状粗鯨油と吸着剤との直接接触を促進するとともに、その際に液状粗鯨油の風味の悪化が起こるのを好適に防止することができる。
この結果、第1又は第2の発明によれば、簡易な作業により高品質でかつ高付加価値な食用鯨油組成物を効率良く製造することができる。
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明により発揮される効果と同じ効果に加えて、吸着剤の種類を特定することで、脱臭・脱色処理済の鯨油から吸着剤を分離する作業を容易かつ確実に行うことができる。
この結果、脱臭・脱色工程後に得られる食用油脂組成物に対して何ら処理を加えることなしにそのまま食用に供することができる。
よって、第3の発明によれば、鯨油から高品質でかつ高付加価値な食用鯨油組成物を効率良くかつ廉価に製造することができる。
第4及び第5の発明はともに、第1乃至第3のそれぞれの発明により製造される鯨油由来の油脂組成物を物の発明(食用鯨油組成物)として特定したものである。
このような第4又は第5の発明によれば、従来、廃棄を余儀なくされていた鯨油を高付加価値な油脂組成物として食用に供することができる。
また、このような第4又は第5の発明である食用鯨油組成物を摂取することで、通常の食生活で不足しがちなn−3系多価不飽和脂肪酸を効率良く摂取することが可能になり、それにより健康増進に寄与することができる。
したがって、第4又は第5の発明によれば、鯨油の利用を促進しつつ、それを適量かつ継続的に摂取することで生体機能を良い方に改変することができる。
第6の発明は、上述の第4又は第5の発明による効果と同じ効果に加えて、第6の発明に係る食用鯨油組成物を、ALD患者に対する食餌療法に用いることができる。さらに、第6の発明は、10重量%以上のn−3系多価不飽和脂肪酸を含有しているため、第6の発明を適宜摂取することで、n−3系多価不飽和脂肪酸を摂取することによる生体機能の改善効果も併せて期待できる。
また、先にも述べたが菜種の品種改良が進んだ結果、菜種油からエルカ酸を抽出することが難しくなってきている。このため、ロレンツォのオイルを人工的に調合する場合にコストがかかるという課題があった。これに対して、鯨油はオレイン酸とエルカ酸の両者を十分に含有しており、しかもこれらの含有比率はロレンツォのオイルに比較的近い。
通常、鯨の種類によって、あるいは鯨の個体ごとに、鯨油中のオレイン酸とエルカ酸の含有比率は異なっているものの、種の異なる鯨から得られた食用鯨油組成物同士を適宜配合することで、オレイン酸とエルカ酸の含有比率をロレンツォのオイルと同等にすることができる。
よって、第6の発明によれば、ALD患者に対する食餌療法に用いられるロレンツォのオイルと同等な食用鯨油組成物を提供することができる。
この結果、ALD患者の食餌療法に必要な食用油脂組成物をより安価に提供できるという効果を有する。
第7の発明によれば、第4乃至第6のそれぞれの発明である食用鯨油組成物を直接摂取する場合に比べて、食した際の食味及び/又は食感を所望に改善することができるので、食用鯨油組成物の摂取又は継続的な摂取を容易にすることができる。
この結果、第4乃至第6のそれぞれの発明に含有されている成分を摂取することによる生体機能改善効果を発揮され易くすることができる。
本発明の実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法のフローチャートである。 本発明に係る食用鯨油組成物のガスクロマトグラフィーの結果の一例である。 本発明に係る食用鯨油組成物の熱分析結果を示すグラフである。 実施例3に係る発明品C中におけるエマルジョンの粒径の分布図である。
本発明の実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法と、この製法により製造されてなる食用鯨油組成物、およびそれを用いた食品について図1乃至図4を参照しながら詳細に説明する。
はじめに、図1を参照しながら本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法について詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法のフローチャートである。
図1に示すように、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1は、鯨体から粗鯨油を得る粗鯨油抽出工程(ステップS1)と、得られた粗鯨油を5℃〜35℃の範囲内の温度条件下に静置して固液分離させる静置工程(ステップS2)と、固液分離した粗鯨油から同上の温度条件下において液状部を液状粗鯨油として抽出する液状部抽出工程(ステップS3)と、同上の温度条件下において液状粗鯨油と吸着剤とを直接接触させて臭気成分及び着色成分を低減させた食用鯨油組成物を得る脱臭・脱色工程(ステップS4)と、を備えてなるものである。
また、上記ステップS1〜S4を経て得られる食用鯨油組成物は、波長420nmにおける吸光度が0.1以下であり、かつn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上含有してなるものである。
このような本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1によれば、従来、廃棄を余儀なくされていた鯨油(粗鯨油)に、過度に熱を作用させることなく、かつ水素添加等の処理を行うことなしに、常温で液状をなし、そのまま食しても鯨油独特の臭気がほとんど気にならない食用鯨油組成物を製造することができる。
ここで、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1におけるステップS1の粗鯨油抽出工程(図1を参照)について詳細に説明する。
この粗鯨油抽出工程としては、例えば、鯨の皮下脂肪、骨、内臓等の組織である鯨体を裁断して釜で加熱する乾式法や、釜に水を加えて裁断した鯨体とともに加熱して上層に分離する油を採取する湿式法がある。
また、粗鯨油を採取可能な鯨の種類としては、例えば、マッコウクジラ、ツチクジラ、マイルカ、マゴンドウ、ハナゴンドウ、オキゴンドウ、コビレゴンドウ、バンドウイルカ及びゴンドウクジラ等のハクジラ亜目や、ナガスクジラ、イワシクジラ、ミンククジラ(Balaenoptera acutorostrata)、クロミンククジラ(Balaenoptera bonaerensis)及びニタリクジラ等のヒゲクジラ亜目等がある。
さらに、鯨の肝臓から採取される肝油も粗鯨油として使用できる。
なお、このステップS1の粗鯨油抽出工程を実施する代わりに、市販品の鯨油を用いてもよいし、あるいは、鯨肉製品の加工工程において鯨肉を煮出した際に生じる廃棄鯨油を粗鯨油として用いてもよい。
なお、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1に用いる粗鯨油としては、ナガスクジラ、イワシクジラ、ミンククジラ、クロミンククジラ及びニタリクジラ等のヒゲクジラ亜目等(以下、これらの種の集合を「第1群」とよぶ)から得られるヒゲクジラ油が好ましく、ナガスクジラ、イワシクジラ、ミンククジラ、クロミンククジラ(以下、これらの種の集合を「第2群」とよぶ)から得られる粗鯨油がより好ましく、クロミンククジラ(以下、この種を「第3群」とよぶ)から得られる粗鯨油が特に好ましい。
この理由は、下記に示す通りである。
鯨油はその成分の組成が種毎に異なっており、さらに詳細には個体毎でも微妙にその成分が異なっている。
そして、上述の第1群に属する種の粗鯨油は、この粗鯨油中におけるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率にばらつきがあるので得られる最終産物(食用鯨油組成物)を均質なものにするためには、n−3系多価不飽和脂肪酸の含有率を調べて必要に応じて得られた食用鯨油組成物を適宜調合する必要がある(図1中におけるステップS5及びステップS6を参照)。なお、鯨油の調合は、粗鯨油の段階で行ってもよいし、精製及び脱臭・脱色後に得られた本発明に係る食用鯨油組成物を調合してもよい(図示せず)。
また、例えば、上述の第2群に属する種の粗鯨油は、この粗鯨油中におけるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率については、本発明に係る食用鯨油組成物の製造に申し分ない含有率であるが、エルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比がロレンツォのオイルのそれと比較して異なっている場合がある。このため、この第2群から得られた粗鯨油を用いてなる食用鯨油組成物をALD患者に対する食餌療法に用いる場合は、得られた粗鯨油中のエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量を調べて、目的とする比になるよう適宜配合する必要がある(図1中におけるステップS5及びステップS6を参照)。なお、鯨油の調合は、粗鯨油の段階で行ってもよいし、精製及び脱臭・脱色後に得られた本発明に係る食用鯨油組成物を調合してもよい(図示せず)。
そして、特に第3群に属しているクロミンククジラ由来の粗鯨油は、重金属等による汚染が少なく、かつ有用成分であるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が高く、しかもエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比がロレンツォのオイルとほぼ同じである。したがって、粗鯨油の原料である鯨体が特にクロミンククジラである場合(第3群に属している場合)は、鯨体の汚染が少ないという点で食用鯨油組成物を製造する際の原料として特に好ましく、かつ得られた本発明に係る食用鯨油組成物に対して調合等の調整を何ら行うことなしにロレンツォのオイルと同等の効果を有する食用油脂組成物として用いることができる。このように、特にクロミンククジラ由来の粗鯨油を用いる場合は、特に高付加価値な食用鯨油組成物を効率良く製造することができるというメリットを有している。
なお、本発明に係る食用鯨油組成物を製造する場合は、その製造に先立って、原料である鯨体又は粗鯨油が食品として適するかどうか、すなわち鯨体又は粗鯨油の重金属等による汚染の程度を調べる必要がある(図1中のステップS0を参照)ことは説明するまでもない。
なお、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1におけるステップS1に代えて、販売品として得られる粗鯨油を用いて以降の工程を実施する場合は、その販売品が食品として認められている場合を除き、ステップS2の静置工程を行う前に、粗鯨油の汚染の程度を調べて(図1中のステップS0を参照)食品としての適否を判断する必要がある。
なお、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1では、鯨体又は粗鯨油の汚染度を調べる工程(ステップS0)を必須の工程として含んでいないが、これは、ステップS0は食品としての安全性を担保するために必要な工程である一方で、本発明に係る食用鯨油組成物を製造するのに必須な工程でないためである。
次に、ステップS2の静置工程について詳細に説明する。
鯨油は、その温度が35℃を下回ると鯨油中に固体成分が析出し始めて徐々に貯蔵容器の下層に沈殿していき、その温度が5℃を下回ると完全に凝固して固形状の油脂になる。また、通常n−3系多価不飽和脂肪酸は、常温以下の温度条件下において凝固し難い性質を有している。
このため、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1では、鯨油のこのような物理的性質を利用して、粗鯨油を5℃〜35℃の範囲内の温度条件下に静置して固液分離させることで、粗鯨油中のn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率を高めている。つまり、本実施の形態に係るステップS1は、粗鯨中のn−3系多価不飽和脂肪酸の精製工程である。
なお、この静置工程(ステップS2)を行う際の温度条件は35℃以下であれば良く、5℃に近づくほど固液分離後の液状粗鯨油中におけるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が高くなる。その一方で、この静置工程(ステップS2)を行う際の温度条件が35℃を超える場合は、液状粗鯨油中のn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が低くなってしまい好ましくない。
なお、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1では、粗鯨油の温度を段階的に低下させていき、その都度液状部をなす液状粗鯨油を抽出してもよい。この場合、より低い温度で抽出された液状粗鯨油の方がn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が高くなるため、その品質が高いことになる。
また、より品質の高い液状粗鯨油を得るには、5℃〜25℃の範囲内の温度条件下においてこのステップS2及び続くステップS3を行うことがより望ましい。
次に、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1におけるステップS3の液状部抽出工程について詳細に説明する。
このステップS3の液状部抽出工程は、先のステップS2の静置工程において固液分離した粗鯨油から個体部分を除去して液状粗鯨油のみを抽出する工程である。
より具体的には、ステップS3の液状部抽出工程は、5℃〜35℃の範囲の温度条件下において固液分離してなる粗鯨油を、固液分離させた際の温度をそのまま維持しながら、例えば、自然ろ過、吸引ろ過、デカンテーション等の手法により液体部を構成している液体粗鯨油を抽出する工程である。
なお、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1では、この静置工程(ステップS1)及び液状部抽出工程(ステップS2)を有することで、n−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上である液状粗鯨油を得ることができる。
続いて、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1におけるステップS4の脱臭・脱色工程について詳細に説明する。
このステップ4の脱臭・脱色工程は、先のステップS3において得られた液状粗鯨油を5℃〜100℃の範囲の温度条件下において、吸着剤と直接接触させてから、この吸着材を分離除去して本発明に係る食用鯨油組成物を得る工程である。
より具体的には、このステップS4の脱臭・脱色工程は、5℃〜100℃の範囲の温度条件下にある液状粗鯨油に、吸着剤である活性炭、活性白土及びシリカから選択される少なくとも1種類を直接接触させて、この液状粗鯨油を、波長420nmにおける吸光度が0.1以下になるまで脱臭・脱色処理を行う工程である。
なお、このステップS4において使用可能な活性炭としては、例えば日本ノーリット社のPK、PKDA MESY/MRX、ELORIT、AZ0、DARCO、HYDRODARCO 3000/4000、DARCO 12X20LI、DARCO12X20DC、PETRODARCO、DARCO MRX、GAC、GAC PLUS、DARCO VAPURE、GCN、C−GRANULAR等の破砕活性炭類、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUS等の粉末活性炭類、ROW、RO、ROX、RB、R、R.EXTRA、SORBONORIT、GF 40/50、CNR、ROZ、RBAA、RBHG、RZN、RGM等の成型活性炭・添着活性炭類、PICA社の粒状活性炭類、球状活性炭類、粉末活性炭類、日本エンバイロケミカル社のモルシーボン、WHA、粒状白鷺(X2M、GM2X、GH2X、GHXUG、GS1X、GS3X、GTX、GTSX、G2X、GS2X、GAAX、MAC−W、GOC、GOX、GOHX、APRC、TAC、MAC、XRC、NCC、SRCX)等の機能性活性炭類、粒状白鷺(G2C、C2C、WH2C、W2C、WH5C、W5C、LGK−400、LGK−100、LH2C、KL、G2X、GH2X、WH2X、S2X、C2X、X7000H、X7100H、X700H−3、X7100H−3、LGK−700、DX7−3)、X−7000、X−7100、X−7000−3、X−7100−3、等の粒状活性炭類、白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11等の粉末活性炭類、ハニカムカーボ白鷺、モールドカーボン、カーボンペーパー、白鷺C−DC、カルボラフィンDC、粒状白鷺DC、アルデナイト、アルデナイトSP等の活性炭加工品類二村化学工業社のSG、SGP等の顆粒活性炭類、TA、TS、TG、TM等の造粒活性炭類、S、FC、SA1000、K、A、KA、AC、M、P、IC、IP、CB、GB、GLP、CLP、W等の粉末活性炭類、CG48B、CG48BR、CW130B、CW130A、CW130BR、CW130AR、CW480SZ、CW6100SZ、GL130A、GL240A、GM130A、GM240A、GMC等の破砕活性炭類を使用することができる。
また、このステップS4において使用可能な活性白土としては、例えば日本活性白土(株)製の活性白土SA85、活性白土SA1、活性白土強、活性白土T、活性白土R−15、活性白土E、ニッカナイトG−36、ニッカナイトG−153、ニッカナイトG−168、水澤化学工業(株)のガンレオンアース、ガレオナイト等がある。
さらに、このステップS4において使用可能なシリカとしては、例えば水澤化学工業(株)のシルホナイト、和光純薬工業(株)のワコーゲル等がある。
なお、このステップS4において液状粗鯨油に接触させる吸着剤の量については特に制限はなく、最終産物である食用鯨油組成物の波長420nmにおける吸光度を0.1以下にできるのであればその量は自由に設定してよい。
また、特に説明するまでないが、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1のステップS4において吸着剤として用いることができる活性炭、活性白土及びシリカは上述のものに限定される必要はなく、液状粗鯨油中から食用に適さない臭気成分や着色成分等を好適に除去することができ、かつ吸着剤を構成する成分が5℃〜100℃の温度条件下において処理対象である液状粗鯨油中に略溶出しないものであればどのようなものでも使用可能である。
また、このステップS4では液状粗鯨油と吸着剤の接触を、有機溶剤等を用いることなく直接行ってもよいし、例えば、ヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロアルカン類等の有機溶剤を用いて行ってもよい。
特に、後者の場合は、減圧乾燥等によって有機溶剤を除去する必要がある。そして、特に減圧乾燥により有機溶剤を除去する場合は、減圧下で水蒸気を吹き込むことで有機溶剤を完全に除去することができる。
さらに、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1のステップS4では、液状粗鯨油と上述のような吸着剤との接触処理は、5℃〜100℃の範囲内の温度条件下において行うことが望ましい。より望ましくは、先のステップS3の液状部抽出工程における液状鯨油の抽出温度と同じか、それよりも高い温度で、かつ100℃以下の範囲内の温度条件下において行うことが望ましい。
これは、先にも述べたように5℃を下回る温度条件下においては、より詳細には先のステップS3の液状部抽出工程における液状鯨油の抽出温度よりも低い温度では、鯨油中に固体が析出してしまい、あるいは、液状粗鯨油の凝固が起きてしまい、吸着剤による臭気成分及び着色成分の除去を効率良く行うことができないためである。
他方、ステップS4において被処理対象である液状粗鯨油の温度が100℃を超える場合は、鯨油の劣化や減少などの変化が起こりやすくなるため、好ましくない。
さらに、鯨油が有する独特な臭気は、主に鯨油を構成する成分が酸化することによって生じ、このような酸化した鯨油は通常、黄色味を呈している。
本発明の発明者らは、鯨油の波長420nmにおける吸光度が低いほど、鯨油が有する独特の臭気(魚臭さ)が低くなることを見出した。つまり、鯨油の見かけの色味(特に黄色味)と食した際の鯨油の食味は明らかな相関を有しており、鯨油の波長420nmにおける吸光度が低いほど、その鯨油の食味が良好になる。
このような事情に鑑み本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、液状粗鯨油と吸着剤とを直接接触させることで、液状粗鯨油中の、酸化して劣化した油脂、高分子化した油脂、極性脂質及び無機塩類等の食した際に好ましくない臭気や雑味の元となる成分を効率良くかつ確実に除去できることを見出したのである。
さらに、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1によれば、上述のステップS4の処理を実施中又は完了した鯨油の420nmにおける吸光度を測定することで、その脱臭の程度を的確に把握することができる。
なお、鯨油の吸光度は、市販の吸光光度計を用いて容易に分析することができる。
よって、本実施の形態に係るステップS4では、このステップS4を完了して得られる液状鯨油が、波長420nmにおける吸光度が0.1以下である場合に食用に適した食用鯨油組成物とすることができる。
また、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1では、最終産物である食用鯨油組成物の波長420nmにおける吸光度を0.1以下に特定することで、ステップS4の最終産物である液状鯨油が、食用に適する程度にまで十分に脱臭されているか否かを容易に判断することが可能になる。
通常、粗鯨油の原料となる鯨体の使用部位やその保管状態、あるいは粗鯨油の製法によって、得られる粗鯨油中の臭気成分(着色成分)の含有率は異なっている。そして、粗鯨油中における臭気成分(着色成分)の含有率が大きい場合は、臭気成分が十分に除去されるまでステップS4を継続するか、あるいはステップS4を繰り返し行う必要がある。
これに対して、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1では、ステップS4の脱臭・脱色工程を継続するか否かを、処理中の液状鯨油の吸光度により容易に判断できるため、鯨油特有の臭気が十分に脱臭された高品質な食用鯨油組成物を効率良く製造することができるというメリットを有する。
また、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1におけるステップS4にでは、吸着剤との接触により臭気成分や着色成分が除去された液状鯨油から吸着剤を完全に除去する必要がある。
本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1に用いる吸着剤は、いずれもその成分が液状粗鯨油中に溶解しないため、従来公知の固液分離法により容易にこれらを分離することができる。
また、上述のような理由により、ステップS4において吸着剤が除去されてなる鯨油(ただしステップS4において上述のような溶剤を使用していない場合に限る)は、それを直ちに食用に供することができる。
よって、上述のような本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1によれば、従来廃棄を余儀なくされていた鯨油から、鯨油特有の好ましくない臭気成分や雑味を除去して、n−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上であり、食味が良好な高品質な食用鯨油組成物を効率良く製造することができる。
また、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1では、ステップS2の静置工程と、ステップS2の液状部抽出工程を備えていることで、有用成分であるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上である粗鯨油を効率良く製造することができる。
さらに、上述の本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1により製造されてなるものが本実施の形態に係る食用鯨油組成物となる。
このような本実施の形態に係る食用鯨油組成物は、波長420nmにおける吸光度が0.1以下であるので、そのまま食した場合に鯨油独特の臭気や雑味を感じにくく、年齢を問わず摂取しやすい食用油脂組成物である。
また、本実施の形態に係る食用鯨油組成物は、n−3系多価不飽和脂肪酸を10重量%以上含有しているので、適量を継続して摂取することでn−3系多価不飽和脂肪酸を摂取することによる健康増進効果又は生体機能の好ましい改善効果の発揮が期待できる。
また、上述のような本実施の形態に係る食用鯨油組成物の凝固点は、5℃〜35℃の範囲内であり、かつこの食用鯨油組成物において含有率が最も多い成分はオレイン酸であり、さらに、食用鯨油組成物中におけるリノール酸の含有率は3重量%以下である。
本実施の形態に係る食用鯨油組成物が上述のような特性や成分を有していることで、任意の食用油脂組成物におけるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有量や波長420nmにおける吸光度に加えて、その凝固点や脂肪酸組成を調べることで本発明に係る食用鯨油組成物であるか否かを容易に判断することができる。
なお、上述のような本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1により得られる食用鯨油組成物は、その製造工程において原料である粗鯨油に対して極力熱を作用させないよう工夫されているため、最終産物中におけるトランス脂肪酸の含有率は低い状態のまま維持される。より具体的には、本実施の形態に係る食用鯨油組成物は、原料である鯨体に由来するトランス脂肪酸がほぼそのまま含有されており、その含有率は3重量%以下である。
したがって、本実施の形態に係る食用鯨油組成物によれば、人体に有害なトランス脂肪酸の含有率が低い鯨油由来の食用油脂組成物を製造して提供することができる。
さらに、本実施の形態に係る食用鯨油組成物において、オレイン酸及びエルカ酸の含有率が30重量%以上であり、かつエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比は3.8〜4.2の範囲内である場合(選択的構成要素)は、この食用鯨油組成物をロレンツォのオイルとしてALD患者に対する食餌療法に用いることができるという別の効果を発揮させることができる。
なお、本実施の形態に係る食用鯨油組成物におけるエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比は、3.9〜4.1がより好ましく、4.0が特に好ましい。
また、本実施の形態に係る食用鯨油組成物中におけるオレイン酸及びエルカ酸の含有率が30重量%を下回る場合は、十分なALD発症抑制効果が期待できなくなるので好ましくない。
通常、ロレンツォのオイルは、オレイン酸とエルカ酸を別々に準備してこれらを調合して製造している。特にエルカ酸は、菜種油や一部の魚油から抽出できるが、いずれの場合もその含有率が低いためコストがかかるという課題を有していた。
しかしながら、本実施の形態に係る食用鯨油組成物によれば、ALD発症抑制効果が期待できる食用油脂を鯨油から製造して提供することができる。
ここで、鯨油(本発明品以外も含む)中のn−3系多価不飽和脂肪酸の含有量、オレイン酸とエルカ酸の含有量及びこれらの比の求め方について図2を参照しながら説明する。
鯨油等の油脂組成物中の各成分の含有率は、被検査対象である鯨油とメタノールを反応させて脂肪酸メチルエステルに誘導し、ガスクロマトグラフで求めることができる。
たとえば、ナガスクジラ由来の食用鯨油組成物が10重量%、イワシクジラ由来の食用鯨油組成物が10重量%、クロミンククジラ由来の食用鯨油組成物が80重量%となるようにそれぞれを混合して本発明に係る食用鯨油組成物(混合油脂)とし、これにメタノールを反応させてなる脂肪酸メチルエステルのガスクロマトグラフィーの結果を示したものが図2である。
図2は本発明に係る食用鯨油組成物のガスクロマトグラフィーの結果の一例である。
図2に示すグラフのピーク面積から、上記本発明に係る食用鯨油組成物(調合後)中のn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率は、EPA、DHA、DPAの合計で12.6重量%であった。また、上述の本発明に係る食用鯨油組成物(調合済)中のオレイン酸とエルカ酸の含有率の合計は39.5%であった。さらに、上記本発明に係る食用鯨油組成物(調合済)におけるエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比を求めると3.9であった。この値は3.8〜4.2の範囲内であるから、この度の分析に用いられた食用鯨油組成物(調合済)は、ALD患者に対する食餌療法に用いることができる。
なお、本発明に係る食用鯨油組成物を実際に市場に流通させる場合は、この食用油脂組成物が経時変化に伴う酸化により品質が劣化するのを抑制するために、適宜ビタミンEなどの各種ビタミン等を添加しておいてもよい。
なお、本発明に係る食用鯨油組成物をサプリメントとして提供する場合は、体内で容易に溶ける例えばゼラチン等食材の内部に本発明に係る食用鯨油組成物を封止してもよい。
本発明に係る食用鯨油組成物は、様々な食品の原料として使用することができる。
なお、本発明に係る食用鯨油組成物を使用可能な食品としては、油脂を使用する食品であれば特に制限なく使用することができる。
また、このような本発明に係る食用鯨油組成物を含有してなる食品(以下、「本発明に係る食品」という)における食用鯨油組成物の含有率は、その目的に応じて1重量%以上の任意の値に設定してよい。
より具体的には、このような本発明に係る食品としては、例えば、各種菓子類、各種調理品、各種加工食品などの食品全般が挙げられる。とくに、マヨネーズ様に乳化させたものは、エマルジョンによって鯨油独特の臭気を一層緩和させることができるので特に好ましい。また、本発明に係る食用鯨油組成物は、疾病改善用経腸栄養剤、疾病改善用サプリメント、疾病改善用食品、高齢者向け介護食品、乳幼児及び妊産婦・授乳婦向けの調製乳などに好適に使用することができ、これらも本発明に係る食品の一例である。
また、上述のような本実施の形態に係る食用鯨油組成物を含有してなる疾病改善用食品、高齢者向け介護食品のより具体的な態様としては、例えば、プリン、クッキー、ケーキなどの菓子類、ハンバーグなどの肉料理、焼き魚などの魚料理、卵焼きなどの卵料理、カレー、シチューなどの鍋料理などの各種調理品、経腸栄養剤などが挙げられる。
特に、本発明に係る食用鯨油組成物の吸収性を考慮すると、経腸栄養剤として好適に利用できる。
また、本発明に係る食用鯨油組成物を用いた調整乳の形態としては、液状、粉末状のいずれでもよく、乳幼児用としては、エネルギー、蛋白質等の各種成分組成を適合させた乳幼児用調整粉乳としてもよい。また、妊産婦・授乳婦用としては、カルシウム、鉄分等を強化した妊産婦・授乳婦用粉乳としてもよい。
このような本発明に係る食品によれば、本発明に係る食用鯨油組成物をそのまま摂取する場合に比べてその味や食感をより摂取し易いものに変えて消費者に提供することができる。
この結果、本発明に係る本発明に係る食用鯨油組成物を含有してなる食品を継続的に摂取し続けることが容易になり、それによる健康増進効果や、生体機能の改善効果が一層発揮され易くなる。
また、本発明に係る食品は、100℃以上の温度条件下において加熱調理されていない方がより好ましい。
これは、本発明に係る食用鯨油組成物は、その温度が100℃を超えると酸化が進行して風味の低下や、有用成分であるn−3系多価不飽和脂肪酸の分解による減少が起こりやすくなるためである。
この点について図3を参照しながら詳細に説明する。
図3は本発明に係る食用鯨油組成物の熱分析結果を示すグラフである。なお、図3中において滑らかなS字状をなす曲線は本発明に係る食用鯨油組成物の重量減少率(%)を、また、同図において不定形な曲線は示唆熱(μV/mg)の変化を示している。なお、重量減少率(%)は、加熱前の重量をa、加熱後の重量をbとするときに次式、[(b−a)/a]×100、により求めることができる。
図3に示すように、本発明に係る食用鯨油組成物を加熱すると、150℃を超えた辺りから食用鯨油組成物の重量減少が進行することが確認された。これは、主に酸化によるものであると考えられ、熱によって特にDHAやEPA等のn-3系多価不飽和脂肪酸の減少が生じていると考えられる。また、本発明に係る食用鯨油組成物を加熱した際に生じる揮発性の分解生成物は、アルデヒド等の有臭成分である。このため、本発明に係る食用鯨油組成物を、100℃を超えて加熱すると、有用成分であるn-3系多価不飽和脂肪酸の減少や、風味の低下が起こる。
したがって、本発明に係る食品は、100℃以下の温度条件下において調理されたものであることが好ましく、加熱処理されていない方がより好ましい。
以下に、本発明の実施例及び変形例について説明する。なお、本発明の実施の形態は、以下に示す実施例に限定される必要はなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で自由に変更することができる。
クロミンククジラ由来の粗鯨油100gを25℃に保って静置して固液分離を行い、85gの液状粗鯨油を得た。この液状粗鯨油の420nmにおける吸光度は0.21であった。続いて、同じく25℃の温度条件下において得られた液状粗鯨油85gにシリカ(和光純薬工業株式会社製 ワコーゲルC−200)を15g加えて撹拌し、吸引ろ過することで420nmにおける吸光度が0.05であるクロミンククジラ由来の食用鯨油組成物(以下、「発明品A」という)を70g得た。
得られた発明品Aをそのまま食したところ、鯨油特有の臭気成分は特に感じられず風味は良好であった。また、発明品Aの脂肪酸組成を、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、n−3系多価不飽和脂肪酸の含有率は14.7重量%であり、オレイン酸及びエルカ酸の含有率の合計は34.2重量%であった。また、発明品Aにおけるエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比は4.0であった。このような実施例1に係る発明品Aは、ALD患者に対する食餌療法に用いる食用油脂としても使用することができる。
ナガスクジラ由来の粗鯨油50重量%に対して、イワシクジラ由来の粗鯨油50重量%を混合してなる混合粗鯨油を、25℃に保って固液分離を行い、85gの混合液状粗鯨油を得た。この混合粗鯨油の420nmにおける吸光度は0.25であった。続いて、同じく25℃の温度条件下において得られた混合液状粗鯨油に活性白土(日本活性白土株式会社製 活性白土SA1)を10g加えて攪拌し、吸引ろ過することで420nmにおける吸光度が0.05である混合粗鯨油由来の食用鯨油組成物(以下、「発明品B」という)73gを得た。
得られた発明品Bをそのまま食したところ、鯨油特有の臭気成分は特に感じられず風味は良好であった。また、発明品Bの脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、n−3系多価不飽和脂肪酸の含有率は13.6重量%であった。また、発明品Bにおけるエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比は3.9であった。このような実施例2に係る発明品Bは、ALD患者に対する食餌療法に用いる食用油脂としても使用することができる。
上記実施例1で得られたクロミンククジラ由来の本発明に係る食用鯨油組成物油を70g、食酢20g、塩4g、卵黄1個(19g)を室温で混合攪拌してマヨネーズ様乳化物を得た。また、得られたマヨネーズ様乳化物(以下、「発明品C」という)中の油脂組成物の含有率は62重量%、また、この発明品Cの25℃における粘度は7.8(Pa・s)であった。
さらに、この発明品Cのエマルジョンの粒径をレーザー回折式粒度分布測定法により分析した結果を示したものが図4である。
図4は実施例3に係る発明品C中におけるエマルジョンの粒径の分布図である。
図4に示すように、発明品C中のエマルジョンの粒径は、5.9μmであり、室温条件下において3か月以上静置した後も安定であった。
続いて、比較例1,2について説明する。
<比較例1>
420nmにおける吸光度が0.50であるナガスクジラ由来の粗鯨油100gを固液分離せず、活性白土(日本活性白土株式会社製 活性白土SA1)50gを加えて攪拌し、吸引ろ過により、420nmにおける吸光度が0.05であるナガスクジラ由来の精製油(以下、「比較品A」という)45gを得た。この比較品Aをそのまま食したところ、風味は良好であった。また、比較品Aの脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、n−3系多価不飽和脂肪酸の含有率は9.5重量%であり、10重量%を下回っていた。さらに、比較品Aにおけるオレイン酸及びエルカ酸の含有率の合計は43.9重量%であり、30重量%を上回っていた。しかしながら、この比較品Aにおけるエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比は8.3であり、このままではALD患者に対する食餌療法用の食用油脂としては適さない。
<比較例2>
クロミンククジラ由来の粗鯨油100gを25℃に保って固液分離を行い、85gの液状粗鯨油を得た。このクロミンククジラ由来の液状粗鯨油(以下、「比較品B」という)の420nmにおける吸光度は0.21であった。
また、この比較品Bをそのまま食したところ、その風味には魚臭があり食用に適さなかった。また、この比較品Bの脂肪酸組成をクロマトグラフィーにより分析したところ、n−3系多価不飽和脂肪酸の含有率は14.7重量%であった。さらに、比較品Bにおけるオレイン酸及びエルカ酸の含有率の合計は34.2重量%であり、30重量%を上回っていた。また、この比較品Bにおけるエルカ酸残基量に対するオレイン酸残基量の比は4.0であった。
この比較品Bは、脂肪酸組成としては問題ないが、風味が改善されていないため食用としても、経口タイプのサプリメントにも不向きである。
したがって、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1によれば、粗鯨油に含まれている人体に有用な成分(例えば、n−3系多価不飽和脂肪酸)の含有率を高めることができかつ、食用とする際の大きな課題である不快な臭気(魚臭)を、鯨油中に含有される有用成分の分解や低減を引き起こすことなく除去することができる。この結果、従来食用に適さないとされてきた粗鯨油から、人体に有用な成分を含有する高品質でかつ高付加価値な食用油脂を効率良く製造することができる。
また、本実施の形態に係る食用鯨油組成物の製造方法1によれば、従来、廃棄を余儀なくされていた鯨油を食用の油脂組成物として有効利用できるだけでなく、それから製造される食用鯨油組成物(本発明品)を適量、継続的に摂取することにより人体の機能改善効果、より具体的には人体における中性脂肪を低下させる効果や、場合によっては副腎白質ジストロフィー発症を抑制する効果等を発揮させることができる。
以上説明したように本発明は、鯨体から抽出された粗鯨油から人体に有用な成分並びに組成を有する食用鯨油組成物を製造する方法、およびこの製法により製造されてなる食用鯨油組成物、およびこの食用鯨油組成物を含有してなる食品であり、食品や加工食品、医薬品に関する技術分野において利用可能である。
1…食用鯨油組成物の製造方法

Claims (4)

  1. 鯨体から粗鯨油を抽出する粗鯨油抽出工程と、
    5℃〜35℃の範囲内の温度条件下に前記粗鯨油のみを静置して固液分離させる静置工程と、
    固液分離した前記粗鯨油から同上の温度条件下において液状部を液状粗鯨油として抽出する液状部抽出工程と、
    前記液状粗鯨油と吸着剤とを直接接触させて臭気成分及び着色成分を低減させてなる食用鯨油組成物を得る脱臭・脱色工程と、を備え、
    前記食用鯨油組成物は、波長420nmにおける吸光度が0.1以下であり、かつEPA、DHA、DPAからなるn−3系多価不飽和脂肪酸の含有率が10重量%以上であることを特徴とする食用鯨油組成物の製造方法。
  2. 前記脱臭・脱色工程は、5℃〜100℃の範囲内の温度条件下において行われることを特徴とする請求項1に記載の食用鯨油組成物の製造方法。
  3. 前記吸着剤は、活性炭、活性白土及びシリカから選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の食用鯨油組成物の製造方法。
  4. 前記粗鯨油の温度を5℃〜35℃の範囲内で段階的に低下させつつ、前記静置工程及び前記液状部抽出工程を複数セット行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の食用鯨油組成物の製造方法。
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