JP2004267099A - 大腸菌の検出方法及び大腸菌検出用ファージ - Google Patents
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Abstract
【手段】本発明は、特定の大腸菌に感染するファージを被検試料と接触させることにより、該被検試料中に存在する該大腸菌を検出する方法であって、そのファージ外殻にファージ外殻タンパク質との融合タンパク質として蛍光タンパク質を発現しており且つ溶菌酵素に欠損を持つファージを使用することを含む検出方法等に関する。特に本法には、前記大腸菌に吸着したファージの蛍光タンパク質から発せられる強度レベルの蛍光を検出すること、及び/又は前記ファージの吸着に起因して大腸菌内で発現した蛍光タンパク質から発せられる強度レベルの蛍光を検出することが含まれる。
【選択図】 なし
Description
【産業上の利用分野】
本発明は水道水や排水など環境水中に存在する大腸菌を短時間に検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大腸菌群は公衆衛生的な指標として定義されたものであり、排水や環境水中から大腸菌群が検出されれば、その水が直接又は間接的にヒトや動物の糞便に汚染されている可能性があると考えられ、チフス菌や赤痢菌などの腸管系病原菌に対する感染リスクを評価できる。そのため、水道や下水処理場の放流水などにおいて、大腸菌群の管理が義務付けられており、対象水を消毒処理して大腸菌群数を一定値以下にすることで衛生上の安全度を確保している。大腸菌群試験は下水道では排水基準に関わる検定方法でデソキシコール酸培地による平板培養法が、水道法や水質汚濁法の排水基準のなかで乳糖ブイヨン−ブリリアントグリーン乳糖胆汁ブイヨン培地(LB−BGLB)による最確数法(MPN法)がそれぞれ公定法として定められている。
【0003】
しかし、これらの方法は培養工程を有することから操作が煩雑であり、平板培養法にあっては35〜37℃で18〜20時間,最確数法にあっては35〜37℃で24±2時間の培養時間を必要とし、測定結果を消毒工程の運転管理に反映させることは到底できなかった。
【0004】
一方で、大腸菌群として検出される細菌のなかには糞便中には存在しない細菌や排水中で容易に増殖する細菌も含まれており、本来の目的に合致しない場合があることも指摘されてきた。さらに近年、大腸菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli))だけを特異的に検出する技術が進歩してきたこともあり、大腸菌群に代って大腸菌を検査対象とする動きも進んでいる。
【0005】
しかしながら、大腸菌の検査は大腸菌群の検査に比べ、さらに検出方法が煩雑で、しかも最終的な同定には長時間を要する上、その同定には豊富な知識及び経験が必要であり、汎用性に劣るものである。
【0006】
このような目的を達成するため、培養工程をほとんど必要としない短時間、簡易測定法も近年多く開発されている。たとえば、抗原抗体反応を利用する免疫測定法、特異的遺伝子を用いる方法などが知られている。免疫測定法には、蛍光物質で標識した抗体を用いる蛍光抗体法、酵素で抗体を標識した酵素免疫測定法が知られるが、どちらの場合も、事前に動物を免疫して大腸菌に対する特異抗体を作成する必要があり、多大な費用がかかる。また測定に複数の処理工程を含むことから煩雑であり、最短でも1〜3時間程度の時間を必要とする。さらにタンパク質である抗体が非特異的に粒子上に吸着することなどの問題が知られていた。
【0007】
特異的遺伝子を検出する方法としては、蛍光標識した遺伝子プローブを用いるFISH法、特異的PCRプライマーを用いる定量PCR法などがしられており、どちらも特異性の高い分析方法であるもの、定量性に課題があり、遺伝子の抽出、増幅、および検出などに煩雑かつ高度なテクニックを要する工程を含むことからリアルタイムに結果を知ることは困難であった。さらに免疫測定法、および遺伝子検出法ともに死菌と生菌の区別が困難である問題もあった。特に消毒工程の管理を行なう場合、大腸菌の死菌体を多く含む試料中に存在する,生きた大腸菌だけを特異的に検出することが必要であることからこれらの方法は原理的に適用できなかった。
【0008】
これらの課題を解決できる方法として、大腸菌に特異的に感染するバクテリオファージ(以下単に「ファージ」と記述する)を用いる方法が知られている。ファージは細菌に感染するウイルスであり、各ファージが感染できる宿主域には高い特異性がある。そのため、ファージの感染を指標にした細菌の同定や特定細菌の検出技術が提案されている。このようなファージを用いる細菌の検出法としては、遺伝子を染色したファージを用いる方法やレポーター遺伝子を導入したファージを用いる方法などが知られていた(例えば、非特許文献1)。
【0009】
【非特許文献1】
野上;「特集,微生物制御,バクテリオファージを利用した特定細菌の迅速検出技術」,食品工業,2000−7.30, pp52−57
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者のように遺伝子を染色したファージを用いる方法は、あらかじめ遺伝子を染色したファージの大腸菌表面への吸着や、染色された遺伝子の大腸菌内への移動により大腸菌が可視化されるものであるが、遺伝子の染色工程が必要な上、あらかじめ染色したファージ遺伝子の単なる局在化を指標とすることから、高濃度のファージを感染させる必要がある上、感度的な限界が指摘されていた。また同法では発がん性を有する遺伝子染色液を宿主である大腸菌の培養液に添加し、染色ファージを調製するなど煩雑な工程を有する問題があった。
【0011】
また、後者のようにレポーター遺伝子を導入したファージを用いる方法は、蛍の発光酵素遺伝子やグリーン蛍光タンパク質(GFP)など検出性に優れるタンパク質遺伝子を導入したファージを大腸菌に感染させ、大腸菌内に増殖したファージ由来のシグナルを検出する方法である。このうち酵素遺伝子を導入する方法は酵素反応に必要な基質の添加や酵素反応時間が必要であるなど煩雑な工程を必要とする。
【0012】
一方、GFPなどの蛍光タンパク質を用いる方法は検出工程が単純であり、短時間での測定が最適であると考えられる。しかし、そのような蛍光タンパク質を用いた方法にも、下記のような問題点がある。
【0013】
▲1▼ファージ体内における蛍光タンパク質の発現量によっては十分な感度が得られず、特に初期吸着における大腸菌の可視化の実現が困難である。
【0014】
▲2▼さらに、これらファージを用いる方法では、一般菌体内で増殖したファージの溶菌酵素により菌体の溶菌が起こり、感染した菌の可視化が困難になる現象が認められ、精度の向上に支障を来たす。
【0015】
▲3▼一般に微生物を蛍光標識して検出する方法においては、免疫測定法であるか、遺伝子検出法であるか或いはファージを用いる方法であるかに関係なく、非特異的な蛍光粒子が特異的な検出を妨害していた。すなわち、下水や河川水など環境水中には自家蛍光を有する微生物粒子が多く存在し、さらには土壌粒子の発する散乱光が目的の蛍光波長と重複することにより、これら非特異的な蛍光粒子と大腸菌とを区別できないという問題がある。従来の蛍光標識法では、蛍光物質を抗体や遺伝子、あるいはファージを介して菌体近傍に濃縮することで菌体を蛍光標識するが、この場合、抗体や遺伝子、ファージの非特異的吸着による妨害も大きな問題である。これらの対処方法には、反応液中に高濃度のタンパク質や非イオン系界面活性剤を添加する方法が用いられるが、抜本的な解決にはなっていなかった。
【0016】
本発明は、上記諸事情に鑑みなされたもので、検出すべき大腸菌の溶菌に起因する感度の低下がなく、特にその生菌を特異的に検出することができ、そのようにして感度が著しく改善された上で短時間測定が可能であり、また必要ならばファージの初期吸着の検出、生菌と死菌を区別した検出、及び/又は非特異的吸着による妨害の排除が可能である大腸菌の検出法等を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ファージ一粒子あたりの蛍光タンパク質の発現量が飛躍的に増強されたファージであって、溶菌酵素欠損型のファージを大腸菌の検出に用いることを見出し、本発明を完成させた。また、この種のファージを利用することで、大腸菌の生菌と死菌を区別して同時に測定するという新しい評価技術を確立した。
【0018】
すなわち、本発明は、特定の大腸菌に感染するファージを被検試料と接触させることにより、該被検試料中に存在する該大腸菌を検出するための大腸菌の検出方法であって、そのファージ外殻にファージ外殻タンパク質との融合タンパク質として発現している蛍光タンパク質を有し且つ溶菌酵素に欠損を持つファージを使用することを含む検出方法を提供する。
【0019】
従って、本発明の大腸菌検出法には、GFPを発現したファージを大腸菌に特異的に吸着させ、蛍光を発する大腸菌を検出することによる極めて迅速な大腸菌検出法が提供される。
【0020】
上記のようなファージを利用する本発明の方法には、前記大腸菌に吸着したファージの蛍光タンパク質から発せられる強度レベルの蛍光を検出すること、及び/又は前記ファージの吸着に起因して大腸菌内で発現した蛍光タンパク質から発せられる強度レベルの蛍光を検出することを含む。
【0021】
概して、大腸菌に吸着したファージの蛍光タンパク質から発せられる蛍光の強度レベルは、被検試料内に存在する大腸菌の生死に関わりなく、一細胞あたりのファージ吸着数に依存して一定であるが、他方で、ファージの増殖に伴って大腸菌内から発せられる蛍光の強度レベルは、その生菌内での蛍光タンパク質の発現量に伴って急激に上昇する。本検出法において、それら異なる由来の蛍光をそれぞれ単独で検出してもよいし、一連の工程として組み合わせもよいし、また同時的検出を行ってもよい。
【0022】
とりわけ、本検出法によれば、MOIを必要に応じて自在に設定することができるので、下記に挙げられるような様々な態様が考えられる。
【0023】
迅速で高精度な生菌特異的検出
一般に、一細胞あたりのファージ感染数(以下単に「MOI」とも記述する)を多くすると短時間の接触であっても溶菌までの時間が短くなり、溶菌に伴って正しい検出結果が得られなくなる。これに対し、本検出法においては、溶菌酵素欠損型のファージを使用するので溶菌による精度低下が生じない。むしろ、迅速性が求められる本検出法においては、接触工程におけるファージ感染数を増やすことも許容され、大腸菌の一菌体(一細胞)あたりの感染ファージ数は、好ましくは1〜500、より好ましくは1〜200、さらに好ましくは10〜50である。
【0024】
他方、MIOは必要に応じて小さくすることもできる。つまり、本検出法の一態様では、前記被検試料にファージを接触させてから該ファージの増殖に必要とされる時間を経た後に該被検試料についての蛍光検出を行うことにより、前記大腸菌内に発現し蓄積された蛍光タンパク質から発せられる蛍光を検出する。上述したように溶菌酵素欠損型ファージによれば、生菌内にファージ由来の蛍光タンパク質を十分に蓄積させて検出することができるので、そのような生菌に特異的な蛍光を検出できる。この態様では、菌体あたりの感染ファージ数(MOI)は、1〜200、好ましくは1〜50以下、さらに好ましくは1〜10にすることにより、精度の高い生菌数の検出が可能となる。
【0025】
死菌と生菌の検出
また、MIOを十分に大きく設定することで、前記ファージ吸着のみに起因する蛍光が検出可能になることから、大腸菌にファージが吸着した直後における蛍光を計数できる。このようにして先ず大腸菌の死菌と生菌を区別することなく網羅的に検出してもよい。この場合、さらに生菌のみを染色する色素を用いて二重染色することによって、上記と同様に、培養工程を全く必要とせずに極めて短時間で大腸菌の生菌を特異的に検出できるし、また死菌と生菌とを判別して検出できる。したがって、本検出法の一態様には、前記感染ファージ数(MOI)が前記吸着ファージからの蛍光の強度レベルが検出可能となる程度に十分に高い値に設定された場合において、さらに、生菌染色用色素で染色することにより生菌のみを検出可能にすることが含まれる。
【0026】
大腸菌の生残数の簡易な測定
上述のように、初期吸着によって生じる弱い蛍光とファージの増殖によって生じる強い蛍光を同時に分別して検出することによって、大腸菌の生菌・死菌同時検出法が提供され、その結果を解析することで、容易に大腸菌生残率を求めることが可能になる。
【0027】
生菌と死菌とを区別して効率的に検出するためには、前記MOIは、前記吸着ファージからの蛍光の強度レベルが検出可能となる程度に十分に高い値に設定されるだけではなく、前記吸着ファージからの蛍光の強度レベルが、前記大腸菌内からの蛍光の強度レベルを有意に下回る程度の値に設定されることも重要である。このように由来の異なる蛍光に強度差を設けることにより、大腸菌の全菌、死菌、生菌を同時に判別して検出することが可能となる。
【0028】
上記のようにして生残数を容易に得られる本検出法の一態様には、前記被検試料にファージを接触させてから該ファージの増殖に必要とされる時間を経た後、当該被検試料中に観測される蛍光分布から、前記ファージ吸着に基づく比較的低い強度レベルの蛍光粒子と、前記大腸菌内での蛍光タンパク質の発現に基づく比較的高い強度レベルの蛍光粒子とに分別して検出し、そして、それら検出値に基づいて大腸菌の生残率を求めることが含まれる。
【0029】
また、蛍光粒子の分布を捕らえて計数を行なう大腸菌計数法によれば、初期吸着直後とファージ増殖後とでの比較、あるいはファージ接触前に認められる各蛍光粒子の蛍光強度との比較を行うことで、ファージ粒子の非特異的な吸着や自家蛍光を有する粒子による非特異的な蛍光シグナルを排除し、なおかつ生菌を特異的に検出する方法も提供される。
【0030】
上記のような本検出法の一態様には、前記ファージを接触させる前の段階で被検試料中に観測される蛍光分布、及び/又は前記ファージが吸着した段階で該被検試料中に観測される蛍光分布と、該ファージの増殖に必要とされる時間が経過した段階で該被検試料中に観測される蛍光分布とを比較することにより、検出されるべき大腸菌へのファージ吸着に基づく強度レベルの蛍光を検出すること、及び/又は検出されるべき大腸菌内での蛍光タンパク質の発現に基づく強度レベルの蛍光を検出することが含まれる。
【0031】
また、上記のような蛍光分布は、蛍光顕微鏡やCCDカメラを使用して観測するとよい。特に、各蛍光の強度レベルの判別、計数、比較処理のためには、前記検試料中に観測される各蛍光分布をCCDカメラで撮影した画像データとして得ることが好ましい。かくして、本検出法により蛍光粒子の計数を行なう大腸菌計数法において、蛍光顕微鏡やCCDカメラにより、同一試料における初期吸着直後とファージ増殖後、あるいはさらにファージ接触前のそれぞれの段階に認められる各蛍光粒子の一定視野面積内の数、および蛍光強度を計測し、なおかつ同画像を処理して、目的とする大腸菌の全菌、または生菌のみを特異的に計数する大腸菌生菌、全菌数の測定法、さらには生残率の測定法が提供される。
【0032】
さらに本発明は、ファージ外殻にファージ外殻タンパク質との融合タンパク質として蛍光タンパク質を発現しており且つ溶菌酵素に欠損を持つ大腸菌検出用ファージをも提供する。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の細菌の検出方法について詳しく説明する。
本発明の大腸菌の検出方法は、大腸菌に特異的に感染するファージを被検出対象中の大腸菌と接触させ、同ファージを大腸菌に吸着、または、感染させることにより大腸菌を特異的に検出するものであり、吸着、または感染したファージの検出方法として、遺伝子組み換え技術によってファージ体内、または体表に多量に生産された蛍光タンパク質の蛍光を検出することを特徴とするものである。
【0034】
そのように蛍光タンパク質を外殻に組み込むにあたっては、ファージ外殻タンパク質としてはSmall outer capsidタンパク質(以下「Soc」と記述する)が好ましく、蛍光タンパク質としては、グリーン蛍光タンパク質(以下「GFP」と記述する)が好ましい。但し、本発明に使用可能なタンパク質は、それらに限定されるわけではなく、例えば、GFP以外にも下に列挙されたような公知の蛍光タンパク質、また、Soc以外にもHoc (highly antigenic outer capsid protein)等の外殻タンパク質を使用できる。因みに、Socはファージあたり960分子程度で発現されるのに対し、Hocは160分子程度で発現される。蛍光タンパク質をファージ外殻に首尾良く提示させのに如何なる蛍光タンパク質と外殻タンパク質に着目すべきかは、当業者ならば適宜選択することができるし、それらの有用性は、本明細書及びここに開示された文献を参照して実験等を行うことにより簡易に確かめることができる。
【0035】
以下、各工程毎に説明する。
本発明においては、大腸菌に特異的に感染するファージを利用するが、このようなファージとしては、大腸菌に対する感染の特異性、感染率の高いものが好ましく、このような好ましい例としては、大腸菌ファージに代表されるT系ファージ、λファージなどが利用できる。このような大腸菌に特異的に感染するファージは米国ATCC等で入手可能である。また、大腸菌の中でも特定の大腸菌、例えば病原性大腸菌に特異的なファージも用いることができる。
【0036】
本発明においては、このようなファージに対して蛍光タンパク質遺伝子を導入する。本発明に用いられる代表的な蛍光タンパク質遺伝子として、GFP遺伝子(Prasher, D.C., et al., Gene, 111:229−233 (1992); Chalfe, M., et al., Science, 263:802−805 (1994))を挙げることができ、EBFP(Blue Fluorescent Protein)遺伝子、ECFP(Cyan Fluorescent Protein)遺伝子、EYFP(Yellow Fluorescent Protein)遺伝子、DsRed(Red Fluorescent Protein)遺伝子(現在、Genbankにsubmit 中, Matz, M.V., et al., Nature Biotech.、17:969−973(1999))なども同様に利用可能であるが、これらに限定されるものではなく、上述のように、バクテリオファージ内に導入することが可能であり、かつ感染した細菌内において発現することができる蛍光タンパク質遺伝子であれば、あらゆる蛍光タンパク質遺伝子を用いることができる。
【0037】
このような蛍光タンパク質遺伝子を上述したようなバクテリオファージ内に導入する方法としては、一般的に行われている遺伝子組み換え技術を用いて行うことができる。しかしファージ内に発現する蛍光タンパク質の分子数は大腸菌の検出感度、および精度に大きく影響するものであり、特に初期の吸着時において検出を行う場合にはこの影響は顕著である。よってこれらの課題を解決する蛍光タンパク質遺伝子の導入方法としては、ファージ外殻の主要な構成タンパク質遺伝子の下流または上流にフレームが合うように蛍光タンパク質遺伝子を挿入し、蛍光タンパク質が外殻タンパク質との融合タンパク質としてファージ外殻表層で発現するように導入されることが望ましい。
【0038】
このような導入法としては、蛍光タンパク質遺伝子を外殻タンパク質であるSoc遺伝子下流の停止コドンより下流側に蛍光タンパク質遺伝子をフレームが合うように挿入するか、もしくはSoc遺伝子の開始コドンより上流側に蛍光タンパク質遺伝子をフレームが合うように挿入し、蛍光タンパク質遺伝子発現ファージを作成する方法等を挙げることができる。
【0039】
さらに遺伝子を導入するファージは、溶菌酵素をコードする遺伝子にアンバー変異(amber mutation)を導入することにより、溶菌酵素発現能を欠損したファージであることが望ましく、同ファージを利用することで、検出時に問題となるファージ感染大腸菌の溶菌から解消されるうえ、大腸菌体内で増殖するファージ数が増加することにより感度の上昇が期待できる。
【0040】
このようなファージの生産方法としては、たとえば、アンバー変異を抑制するアンバーサプレッサー(amber suppressor)能を有する大腸菌の培養液に同ファージを添加し数時間継続して培養した後、増殖したファージを分離する、一般的なファージ溶菌液の調整法が利用できる。得られたファージは、溶菌液の状態でも冷蔵保存することで長期間安定であり、凍結乾燥法などの方法によって乾燥することで、常温でもさらに安定的に保存できる。
【0041】
本発明においては、次に、上記蛍光タンパク質遺伝子が導入されたファージを被検出対象と接触させ、一定時間反応する。接触方法としては、水試料に直接上記ファージ、またはファージ懸濁液を添加すればよく、また試料をろ過してろ紙上に捕捉した大腸菌に対して、ファージを含む溶液を接触させる方法なども適用できる。
【0042】
反応時間は、ファージの初期吸着を指標とする場合においては、大腸菌とファージが接触するために必要な時間であり、大腸菌とファージ両濃度によって影響をうけるものの、一般的には0分間から6時間でよく、好ましくは1分間から60分間、より好ましくは、3分間から30分間である。また感染後に増殖したファージの蛍光を検出する場合においては、反応時間は10分間以上でよく、好ましくは30分間以上である。なお、溶菌酵素欠損ファージを用いる本発明においては、長時間の反応によっても、大腸菌の溶菌が起こらないことから最大の接触時間が限定されることはない。
【0043】
この反応は大腸菌の増殖に最適な温度条件を考慮して20℃から40℃の間で加温することが好ましく、また大腸菌の増殖に必要な基質を共存させることも効果的であるが、必ずしも必要でない。
【0044】
そして、本検出法では、蛍光検出装置を用いて上記蛍光タンパク質に由来する蛍光を発する細菌粒子を検出する。ここで用いる蛍光検出装置としては、特定波長の蛍光を特異的に検出できる装置、システムであれば特に限定されるものではないが、蛍光顕微鏡、CCDカメラ、フローサイトメーター、さらには蛍光光度計などが挙げられる。このうち蛍光顕微鏡を用いる場合は、上記反応液の一定量を直接、またはろ紙上に捕捉して蛍光粒子を顕微鏡観察し、一定視野面積内の蛍光粒子を測定することで被検出対象中の大腸菌濃度を定量的に検出することが可能である。なお、ろ紙上の大腸菌に対してファージを反応させる場合においては、直接ろ紙上の蛍光粒子を検出すればよい。CCDカメラを用いる場合は、目的の蛍光タンパク質に最適な励起波長を有する励起光を上記方法により蛍光標識した大腸菌を捕捉したろ紙表面に照射し、発生する蛍光をCCDカメラで直接検出する。これらの方法においては、得られた蛍光画像を画像処理して目的以外の蛍光を排除し、目的とする蛍光粒子数を自動的に測定するシステムを用いて自動計測することが好ましい。また、フローサイトメーターによれば、液体状の上記反応液に対して直接適用することも可能である。
【0045】
本発明では、上記方法により作成した蛍光強度が極めて強く、感染時においても宿主大腸菌を溶菌しないことを特徴とする優れたファージを用いることから、以下のような特徴ある検出法を実現できる。
【0046】
すなわち、本発明では大腸菌一細胞あたりの感染ファージ数(MOI)を極めて大きくする条件で接触させ、ファージが初期吸着した大腸菌由来の蛍光粒子を計数することで、10分以内の極めて短時間で生死を問わず大腸菌の全菌数を計数することが可能である。またこのとき、生きた細菌の持つ呼吸や特定酵素(エステラーゼなど)の活性を検出する蛍光試薬を反応させることで、生きた大腸菌だけを特異的、かつ短時間で測定することも可能である。このような蛍光試薬としては、5−cyano−2,3−ditolyl tetrazolium chloride、fluorescein diacetate、あるいは5−(and 6−) sulfofluorescein diacetateなどを利用できるがこの限りではない。
【0047】
一方、細菌を蛍光標識する他の方法で指摘されているように、環境試料中には特異蛍光を妨害する因子があることが知られている。たとえば、蛍光標識物の非特異的な吸着や自家蛍光を有する粒子による擬似陽性シグナルの影響である。しかし本法によれば、非特異的な蛍光粒子を排除して、大腸菌だけを特異的に検出することが可能である。すなわち、本発明では、初期吸着時の大腸菌粒子の蛍光強度がファージ増殖後の蛍光強度と比べて有意に弱い蛍光強度を示すように大腸菌の一細胞あたりの感染ファージ数(MOI)を設定し、初期吸着時における蛍光粒子をすべて非特異的な蛍光粒子として排除することで大腸菌の生菌に特異的な検出法を確立した。またファージ吸着時の試料中の蛍光粒子を排除し、初期吸着時の蛍光粒子とファージ増殖後の蛍光粒子における蛍光強度の違いを比較することにより、同一試料中の大腸菌の全菌、生菌をそれぞれ検出することが可能であることから、生残率を算出することも容易である。
【0048】
以上のように本法は、蛍光検出法において問題であった非特異的な蛍光粒子の影響を受けることなく、生菌、死菌を区別して大腸菌を簡単、迅速に測定する方法を提供するものである。なお、あくまでも上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
GFPを発現させた溶菌酵素欠損ファージを大腸菌に感染させ、GFPの蛍光により大腸菌を特異的に検出した実施例を以下に示す。
【0050】
【実施例】
実施例1: T4−e−GFP 組換えファージの作成方法
T4ファージ Socをコードするsoc遺伝子とその上流および下流域を含む遺伝子断片をT4ファージ染色体を鋳型に用いPCR法により得た。このSocを含む遺伝子断片socと大腸菌発現用プラスミドpQB2に含まれるGFPをコードするgfp遺伝子を大腸菌発現ベクタープラスミドであるpUC118上で連結酵素(リガーゼ)を用いて結合し、ベクタープラスミドpUC−GFPSocを得た。そしてこのpUC−GFPSocにより大腸菌K12(W3110)を形質転換した。さらにこの形質転換体大腸菌K12(W3110)にT4e−ファージを感染させて感染大腸菌内における相同組換えにより、GFPを提示したT4e−組換え体ファージを作成した。なお、T4e−ファージは溶菌酵素遺伝子gp−eにアンバー変異を持つT4ファージである(Kao,S.H., and Mcclain W.H., J. virol., 34, p95 (1980))。T4e−GFP組換え体ファージのスクリーニングは、ファージプラークの蛍光発光を指標として行なった。この時、T4−e−GFP組換えファージを生じる確率は約1/10,000であった。
【0051】
実施例2: T4−wtGFP 組換えファージの作成方法
実施例1と同様の操作によりpUC−GFPSocを作成し、大腸菌K12(W3110)を形質転換した。さらにこの形質転換体大腸菌K12(W3110)に野生型T4ファージ(T4−wtファージ)を感染させて感染大腸菌内における相同組換えにより、GFPを提示したT4−wt組換え体ファージを作成した。T4−wtGFP組換え体ファージのスクリーニングは、ファージプラークの蛍光発光を指標として行なった。
【0052】
実施例3: PP01−GFP 組換えファージの製作方法
大腸菌O157:H7特異的ファージであるPP01のSocをコードするsoc遺伝子とその上流および下流域を含む遺伝子断片をPP01ファージ染色体を鋳型に用いPCR法により得た。なお、PP01ファージは発明者らがブタ糞便より大腸菌O157:H7を指標細菌としてスクリーニングしたファージである。このSocを含む遺伝子断片socと大腸菌発現ベクタープラスミドであるpQB2に含まれるgfpを大腸菌発現ベクタープラスミドであるpUC118上で連結酵素(リガーゼ)を用いて結合し、pUC−GFPSocを得た。そしてこのpUC−GFPSocにより大腸菌O157:H7を形質転換した。さらにこの形質転換体大腸菌O157:H7にPP01ファージを感染させて感染大腸菌内における相同組換えにより、GFPを提示したPP01ファージ組換え体ファージを作成した。
【0053】
PP01−GFP組換え体ファージのスクリーニングは、ファージプラークの蛍光発光を指標として行なった。
【0054】
実施例4: T4−e − GFP ファージの大量調整方法
T4−e−ファージは溶菌酵素をコードするgp−e遺伝子にアンバー変異を有し、溶菌酵素を産生する能力を喪失している。したがって、一般の大腸菌K12株には感染することはできても、大腸菌を溶菌しないためファージ溶菌液の作成は困難である。一方、大腸菌CR63株はアンバーサプレッサー株であり、T4−e−ファージの持つアンバー変異を抑制し、溶菌酵素を産生することができ、T4−e−ファージの感染によりファージを複製および放出することができる。そこで、ここではGFPで標識されたT4−e−ファージを大腸菌CR63株を宿主株として使用した。
【0055】
大腸菌CR63株の培養体に対して同ファージを感染させ、ファージ添加から約6時間の培養後、クロロホルムを加え、4℃恒温下で1時間放置することにより、菌体を完全に溶菌した。そして遠心分離により大腸菌破砕物を沈殿として取り除いた。PEG6000およびNaClを加えファージを沈殿させ、遠心分離により沈殿したファージを分離した。
【0056】
分離したファージを少量の緩衝液に再懸濁し、セシウムクロライド密度勾配遠心による精製後、透析によりセシウムクロライドを取り除いた。
【0057】
実施例5: T4−wt GFP ファージの大量調整方法
実施例4のT4−e−ファージの大量調整方法に準じて、T4−wt GFPファージ調整した。但し、使用するファージをT4−wt、感染させる大腸菌をK12(W3110)株とした。
【0058】
実施例6: PP01−GFP ファージの大量調整方法
GFPで標識されたPP01−GFPファージを大腸菌O157:H7株に感染させた。ファージ添加から約6時間の培養後、クロロホルムを加え、4℃恒温下で1時間放置することにより、菌体を完全に溶菌した。遠心分離により大腸菌破砕物を沈殿として取り除いた。
【0059】
PEG6000およびNaClを加えファージを沈殿させ、遠心分離により沈殿したファージを分離した。分離したファージを少量の緩衝液に再懸濁し、セシウムクロライド密度勾配遠心による精製後、透析によりセシウムクロライドを取り除いた。
【0060】
実施例7: T4GFP ファージによる大腸菌感染時の溶菌特性
T4GFPファージによる大腸菌感染時の溶菌特性を解析した。対数増殖初期にある大腸菌(E.coli K−12(W3110)株)の培養液(LB,ca.)にMOI=5となるようにT4T4wtGFPファージおよび、T4e−GFPファージ添加して、OD660nmの径時変化を測定した(図1)。
【0061】
なお、図1において、Controlは、ファージを感染させなかったとき、T4wtは時間0でファージ(T4(wt))をMOI=5で感染させたとき、T4e−は時間0でファージ(T4(e−))をMOI=5で感染させたときを示す。同図で示されるように、コントロールでは、誘導期を経て30分以降濁度の上昇を伴う菌体の増殖が認められ、T4wtでは感染40分以降、菌体の溶菌による濁度の減少が認められるが、T4e−では感染は成立するが、溶菌酵素を欠損しているために、濁度の減少が認められない。
【0062】
実施例8:大腸菌の蛍光観察
実施例7の感染条件において、蛍光顕微鏡により大腸菌の蛍光を観察した。落射蛍光位相差顕微鏡(AX80T、オリンパス)を用い、GFP蛍光観察用フィルター(U−MWIBA/GFP、オリンパス)を用いて試料に励起光を照射し、GFPの緑色の蛍光を観察した。T4wtGFPファージ、およびT4e−GFPファージとも添加直後の初期吸着において弱い蛍光を発し、20分後には、吸着および一部菌体内におけるファージの増殖による蛍光が認められたが、両者に大きな差は無い(図2)。しかし、ファージ感染60分後、図3によると、T4(wt)では溶菌が始まり、菌体数の減少が見られる。ただし、溶菌しないもの、または大きな菌体破片には複製したファージが吸着しており、蛍光顕微鏡で検出できる。しかし、その割合は培養時間の経過に伴い減少する。一方、T4(e−)では溶菌が生じないので、長時間の培養によっても、高い蛍光発光が認められた。
【0063】
実施例9: T4e−GFP ファージによる蛍光顕微鏡を用いた大腸菌の検出
大腸菌を含む環境水に対して、LB培地(1 % Tryptone, 0.5 % Yeast Extract, 1 % NaCl, pH 7)に懸濁したT4e−GFPファージ液(5×107PFU/ml)を1対1で混合し、28℃で弱く撹拌しながら反応させた。そして、30分反応後の検体の一定量を分取して、0.2μmのろ紙でろ過し、さらにLB培地でろ紙を洗浄した。このろ紙の一部をスライドグラス上に置き、蛍光封入試薬を敵下した後、カバーガラスを乗せて落射蛍光顕微鏡でGFPの緑色の蛍光を観察した。蛍光画像はCCDカメラによりパーソナルコンピュータに取り込み、画像解析ソフトウエアIP Lob(株式会社イメージ アンドメジャーメント)を用いて、蛍光を有する粒子数を10視野においてカウントし平均値を算出した。ここでは強い蛍光強度を示す粒子を生菌として、弱い蛍光を示す粒子を死菌体、その合計を全菌として計数した(表1)。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例 10 : T4e−GFP ファージによる CCD カメラを用いた大腸菌の検出
環境水1mlを0.2μmのろ紙でろ過し、さらにLB培地でろ紙を洗浄した。さらにLB培地に懸濁したファージ(109PFU/ml)をろ紙上に添加し、10分間28℃で反応した。再びろ紙をLB培地で洗浄し、同ろ紙に励起光を照射しながら、ろ紙上の緑色蛍光粒子の数と蛍光強度をCCDカメラ(VIM CAMERA C2400−47、浜松ホトニクス)を用いてマクロ観察した。なお、観察はすべて遮光した計測箱の中で行なった。得られた画像データは、画像解析ソフトウエア ARGUS−50(浜松ホトニクス)を用いて、ファージ添加前、添加直後、30分後の各段階における蛍光粒子の数、蛍光強度の変化を解析し、ファージ添加前に存在せず、添加直後に弱い蛍光を有し、その後に蛍光が強くなる粒子を大腸菌の生菌として計数した。また同時にファージ添加直後に弱い蛍光を生じ、蛍光強度の増大が認められない粒子を大腸菌の死菌体として計数した(表2)。
【0066】
【表2】
【0067】
【発明の効果】
本発明は、ファージ粒子あたりの蛍光タンパク質の発現量を飛躍的に多くしたファージ、および、または溶菌酵素欠損型のファージを用いることにより、大腸菌の検出法において、著しい感度の向上、およびそれに伴う測定時間の短縮が達成できる。さらに同ファージを用いることにより、大腸菌の生菌と死菌を区別して同時に測定する新しい評価手法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ファージを感染させた後の大腸菌K12 (W3110)の増殖特性を示す。
【図2】図2は、ファージ感染20分後の光学顕微鏡写真と蛍光顕微鏡写真を示す。
【図3】図3は、ファージ感染60分後の光学顕微鏡と蛍光顕微鏡の写真を示す。
Claims (10)
- 特定の大腸菌に感染するファージを被検試料と接触させることにより、該被検試料中に存在する該大腸菌を検出する方法であって、そのファージ外殻にファージ外殻タンパク質との融合タンパク質として蛍光タンパク質を発現しており且つ溶菌酵素に欠損を持つファージを使用することを含む検出方法。
- 前記大腸菌に吸着したファージの蛍光タンパク質から発せられる強度レベルの蛍光を検出すること、及び/又は前記ファージの吸着に起因して大腸菌内で発現した蛍光タンパク質から発せられる強度レベルの蛍光を検出することを含む、請求項1に記載の検出方法。
- 大腸菌の一細胞あたりの感染ファージ数(MOI)は、前記吸着ファージからの蛍光の強度レベルが、前記大腸菌内からの蛍光の強度レベルを有意に下回る程度の値に設定される、請求項2に記載の検出方法。
- 大腸菌の一細胞あたりの感染ファージ数(MOI)は、前記吸着ファージからの蛍光の強度レベルが検出可能となる程度に十分に高い値に設定される、請求項2又は3に記載の検出方法。
- 前記感染ファージ数(MOI)が前記吸着ファージからの蛍光の強度レベルが検出可能となる程度に十分に高い値に設定された場合において、さらに、生菌染色用色素で染色することにより生菌を選択的に検出可能にすることを含む、請求項4に記載の検出方法。
- 前記被検試料にファージを接触させてから該ファージの増殖に必要とされる時間を経た後に該被検試料についての蛍光検出を行うことにより、前記大腸菌内に発現し蓄積された蛍光タンパク質から発せられる蛍光を検出可能にすることを含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の検出方法。
- 前記被検試料にファージを接触させてから該ファージの増殖に必要とされる時間を経た後、当該被検試料中に観測される蛍光分布から、前記ファージ吸着に基づく比較的低い強度レベルの蛍光粒子と、前記大腸菌内での蛍光タンパク質の発現に基づく比較的高い強度レベルの蛍光粒子とに分別して検出し、そして、それら検出値に基づいて大腸菌の生残率を求めることを含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の検出方法。
- 前記ファージを接触させる前の段階で被検試料中に観測される蛍光分布、及び/又は前記ファージが吸着した段階で該被検試料中に観測される蛍光分布と、該ファージの増殖に必要とされる時間が経過した段階で該被検試料中に観測される蛍光分布とを比較することにより、検出されるべき大腸菌へのファージ吸着に基づく強度レベルの蛍光を検出すること、及び/又は検出されるべき大腸菌内での蛍光タンパク質の発現に基づく強度レベルの蛍光を検出することを含む、請求項4〜7のいずれか1項に記載の検出方法。
- 前記検試料中に観測される各蛍光分布は、CCDカメラにより得られた画像データであることを含む、請求項7又は8に記載の検出方法。
- ファージ外殻にファージ外殻タンパク質との融合タンパク質として蛍光タンパク質を発現しており且つ溶菌酵素に欠損を持つ大腸菌検出溶用ファージ。
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