JPH11318499A - 細菌の検出方法及び装置 - Google Patents

細菌の検出方法及び装置

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JPH11318499A
JPH11318499A JP13032498A JP13032498A JPH11318499A JP H11318499 A JPH11318499 A JP H11318499A JP 13032498 A JP13032498 A JP 13032498A JP 13032498 A JP13032498 A JP 13032498A JP H11318499 A JPH11318499 A JP H11318499A
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JP
Japan
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acridine orange
phage
fluorescence
bacteria
excitation light
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Application number
JP13032498A
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English (en)
Inventor
Rie Yano
矢野理江
Takako Nogami
野上尊子
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Organo Corp
Original Assignee
Organo Corp
Japan Organo Co Ltd
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Publication date
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  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 紫外線よりも波長の長いレーザー光源光を用
いて、迅速で、高精度な検出を簡便に行うことができる
細菌の検出方法を提供する。 【解決手段】 480〜500nmの波長の励起光によ
り緑色蛍光を発するアクリジンオレンジでファージDN
Aを標識したバクテリオファージを細菌に接触させて、
宿主細菌を蛍光染色し、レーザー光源により細菌細胞内
に注入されたバクテリオファージDNAに標識したアク
リジンオレンジに緑色蛍光を生じさせてこれを光学的に
検出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば大腸菌など
の細菌を検出するのに適した方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】細菌をはじめとする微生物はあらゆる環
境に存在し、人間の生活と密接な関係を保っている。し
かし微生物の中には人間あるいは家畜に疾病をもたらす
ものもあり、病原性微生物として人間あるいは家畜への
感染に注意が払われている。病原性微生物の中でも特に
細菌は増殖が速く、低温、高温、乾燥などの環境条件に
影響を受けにくく、そのため人間の周りに持続的に存在
し、一度好条件を得れば爆発的に数を増やして感染症の
原因となる。食品や飲料水(水道水を含む)のように人
間の体内に直接摂取されるものについてはもちろんのこ
と、食品の製造工程で利用される水、食器等の洗浄に利
用される水、河川、湖沼、海、プール、浴場、その他の
修景親水利用のためのアメニティ用水など、人が身体を
接触させる水、下水放流水など、人と接触する機会があ
る水については、細菌に対する適正な管理が実施される
ことが望まれる。
【0003】これらのことを前提として、食品、飲料と
なる水道水については「大腸菌群は検出されないこと」
という基準が定められ、プール水では「10mlの水を
5本培養し大腸菌群陽性の管が2本以下であること」と
いう基準が定められ、また、修景親水利用の水について
は「1ml中10個以下」、一般排水については「1m
l中3000個以下」が望ましいという目標値が設けら
れている。このように、腸内細菌特に大腸菌および大腸
菌群の有無を調べる項目についての管理基準として上記
各種の利用水(食品、飲料水、あるいは親水施設のアメ
ニティ用水等)毎に定められているのは、細菌による感
染症が、人あるいは動物を起源とする細菌によって引き
起こされる疾病の頻度が最も高く、被害も拡大しやすい
ことから考えれば妥当なところである。
【0004】ところで、例えば上述のような食品、飲料
水(水道水)、プール水、修景親水用水などを管理する
のに必要な細菌の検出は、従来一般的には培養法により
実施されている。この培養法は、例えば大腸菌や大腸菌
群を例として言えば、これを他の一般細菌と区別して検
出する工夫が必要であるため、例えば、大腸菌や大腸菌
群が選択的に増殖する培地、あるいは増殖すると色調が
変化したりコロニーの色に特殊な色が生じる工夫がされ
た培地を用いて実施されるが、培養によって菌が増殖す
るまでに時間がかかり、これに加えて増殖した細菌が大
腸菌あるいは大腸菌群であるかどうかの判定法が煩雑で
あるため最終的な判定までに数日以上の時間がかかると
いう問題がある。また一般的な最大希釈倍率から求める
方法による場合は、おおよその定量推定値が求められる
にすぎず、定量性の精度は乏しいという問題がある。
【0005】このような単純な培養法とは別に、簡略化
した検出方法として特異酵素基質培地法も知られてい
る。この方法は、例えば大腸菌や大腸菌群に特異的に含
まれる酵素に対する基質の存在下で試料を培養し、陽性
であれば特徴的な色や蛍光が生じるように工夫した方法
である。
【0006】また上記方法の他にも、PCR法(ポリメ
ラーゼ・チェーン・リアクション法)、ATPを測る方
法、更に、特開平8−154700号公報で提案されて
いる、標識としての放射性同位元素,酵素をバクテリオ
ファージ表面に結合する方法、あるいはレポータ遺伝子
をバクテリオファージのDNAに遺伝子組換えで組み込
む形で標識する方法も知られている。
【0007】しかし、上述した従来法はいずれも、実際
の実施場面から考えると、処理の迅速性、処理操作の簡
便性、検出精度の高さなどの種々の点から極めて解決困
難な問題が以下のようにある。
【0008】例えば、特異酵素基質培地法は、単純な培
養法に比べて、大腸菌および大腸菌群の定性試験が24
時間で実施できる利点があるものの、大腸菌や大腸菌群
についても全てを検出することはできないし、定量試験
を行うとすれば最大希釈倍率で陽性を示す値から求める
形式で行うしかなく、測定法に由来する定量検出の精度
に限界がある。
【0009】PCR法は、感度は鋭敏であるが、死滅し
ていて実際には無害な細菌も検出してしまい、死菌,生
菌の区別ができないという問題がある他、定量性も期待
できない。
【0010】ATP法は、操作が簡単でしかも生菌だけ
を特異的に検出できる点で優れているが、検出感度が低
い(1000個以上の細菌でないと検出できない)とい
う問題があり、これに加えて、細菌を特定して検出でき
ないという用途によっては致命的な問題がある。
【0011】また、前記特開平8−154700号公報
に記載の方法のうち、ファージ表面に放射性同位元素
(アイソトープ)又は酵素を標識して用いる標識法は、
処理操作の簡便性、検出精度の高さなどの点について問
題がある。
【0012】すなわち、放射性同位元素を用いる方法
は、細菌に吸着したファージがもつ放射性同位元素標識
由来の信号と、非吸着のファージがもつ同標識由来の信
号を区別することができないから、これら吸着,非吸着
のファージを物理的に分離する余分な操作が必要とな
る。またこれに加えて、細菌(あるいはろ過膜等の分離
手段)に非特異的に吸着したファージに標識した放射性
同位元素をカウントしてしまうという致命的な誤検出の
虞がある。また、酵素を標識として用いる方法は、放射
性同位元素を用いる場合と同じように非特異的な吸着が
ある問題に加えて、微小量の酵素の活性を利用する方法
であるので、酵素活性の作用を受ける基質に現れる現象
から微小量の酵素量を精度よく検出することが必ずしも
容易でなく、定量検出精度を向上させるための新たな技
術開発が必要になるという問題がある。
【0013】更に、レポーター遺伝子を用いる方法は、
細菌毎に特異的なファージ別に遺伝子組換え体のレポー
ター遺伝子を調製することが必要であり、このレポータ
遺伝子を含むファージ核酸の複製,転写,翻訳を行わ
せ、産生蛋白質を検出する操作が必要となるため汎用性
は殆ど期待できない。
【0014】以上のように、従来知られている種々の方
法はいずれも問題があり、特に、迅速性、操作の簡便
性、検出精度、検出感度などの点でいまだ解決すべき課
題が多い。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、以上のよ
うな従来法の問題点を解消し、細菌そのものを特異的に
標識付けすることで細菌を特定した検出・判定を可能と
しながら、簡易な操作、測定時間の短縮、効率の向上、
検出精度の向上などを飛躍的に高めることができる方法
として、バクテリオファージDNA(以下「ファージD
NA」と略称する)に蛍光物質(又は色素物質)を標識
したバクテリオファージ(以下「ファージ」と略称す
る)を用いる方法を提案した(特願平9−240919
号)。
【0016】この提案発明は、上述したレポータ遺伝子
を用いる方法のようにファージ毎(つまり細菌と特異的
な関係にあるファージ毎)に特殊なファージDNAを遺
伝子組換え操作で調製する必要がなく、種々のファージ
について、基本的には共通した同一,単一の普遍性のあ
る操作を用いて、各宿主細菌に特異的なファージのファ
ージDNAを蛍光物質で標識付けでき、しかも、このフ
ァージDNAを宿主細菌に注入することで蛍光物質によ
る輝点(蛍光点)を大きくかつ強く示すことができて、
光学的な検出を容易かつ迅速に実現できるという利点が
ある。
【0017】なお上記方法では、宿主細菌の培養培地に
蛍光物質を添加し、宿主細菌にファージを感染させて増
殖させる方法で、蛍光物質で標識したファージDNAを
有するファージを得ている(フルカワ氏らの方法(“ D
NA Injection During Bacteriophage T4 Infection of
Escherichia coli”:「JOURNAL OF BACTERIOLOGY」 ,p9
38-945:1983)参照)。
【0018】ところで、本発明者が上記提案発明の技術
について更に鋭意研究を進めたところ、いくつかの新た
な知見を見い出し、これらの知見に基づいて本発明をな
すに至ったものである。
【0019】すなわち本発明は、蛍光を発するための励
起光に可視光の光源光を用いることができるようにする
こと、したがって光源装置として有利な安価で長寿命の
可視光ランプ光源、あるいは照射光を集中できて長寿命
な可視光レーザー光源を有効に活用できる細菌の検出方
法及び装置を提供することを目的とする。
【0020】また本発明の別の目的は、長い波長側の蛍
光を発する結果として他の物質の蛍光によるノイズの影
響を受けるという問題を解消するところにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】本願は上記の目的を達成
するために、上述した特許請求の範囲の各請求項に記載
した発明を提供する。
【0022】本願請求項1の細菌の検出方法の発明は、
ファージDNAにインターカレーション結合でアクリジ
ンオレンジを標識したファージ(バクテリオファージ)
を、宿主細菌に接触させ、励起光を照射することで上記
ファージDNAに標識したアクリジンオレンジが発する
蛍光を光学的に検出することを特徴とする。
【0023】この発明によれば、ファージの宿主細菌に
対する感染は即時的であり、また蛍光を蛍光顕微鏡等の
光学的検出手段を用いて簡易に検出操作を行うことがで
きるので、迅速性、操作の簡便性、高い検出精度の要求
を満足することができる。
【0024】この発明において「ファージDNA」とい
う場合、一重鎖,二重鎖のDNAのいずれも含むことは
もちろんであるが、RNAからなる核酸を除外する趣旨
ではない。
【0025】上記のアクリジンオレンジ(C1720Cl
3 )は、下記一般式の化学構造を有するものである
が、一部が他の原子又は原子団で置換された置換体,誘
導体であってもよく、要は、アクリジンオレンジとし
て、ファージDNAに標識することができかつ所定波長
の励起光により蛍光を発するものであればよい。
【0026】
【化1】
【0027】上記において「細菌」というのは、特異的
な関係にあるファージが存在する微生物であれば特に限
定されることなく対象とすることができ、これらの全て
を含み、例えば衛生試験などで、食中毒の原因となって
いる病原性の腸内細菌である大腸菌、大腸菌群細菌、赤
痢菌、コレラ菌、サルモネラ菌、ビブリオ菌、ボツリヌ
ス菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、セレウス菌などの病
原性細菌を、これらの細菌を宿主とするファージを用い
て容易に検出できる。また食中毒以外の感染症の原因と
なる細菌、例えば結核菌、肺炎双球菌、緑膿菌、レジオ
ネラ菌、その他の細菌にも適用できる。また細菌のコロ
ニーを採ってファージ溶液に懸濁し、蛍光染色の有無で
細菌を同定する確認試験にも有効に用いることができ
る。
【0028】細菌の特定が特に求められる場合として
は、食中毒,病院の院内感染などの細菌感染症の原因と
なる細菌の同定を行う場合や、食品工場などでの用水等
の汚染細菌の同定を行う場合などが挙げられ、具体的に
いうと、例えば、細菌の検出が求められる環境水や環境
空気、食品や上下水、病院(特に臨床場面)、精密機器
製造工場等において、存在が忌避される細菌を検出する
場合が挙げられる。忌避される主な細菌と、これに特異
的なファージの組合せを例示すれば、大腸菌とT系ファ
ージ,λファージ等、サルモネラとP系ファージ等、シ
ュードモナスとP系ファージ等、クレブシアラとスタン
フォード大学60,92の各ファージ、クロストリジウ
ムと70,71,72の各ファージ、シゲラとφ80,
スタンフォード大学37,D20、コリネバクテリウム
とC系ファージ、マイクロコッカスとN系ファージ,M
L53-40 ファージなどを挙げることができる。また忌避
細菌の検出だけでなく、有用な細菌の濃度を確認する用
途にも当然用いることができ、有用細菌を利用した種々
の生成物の生産管理に有効に利用される。
【0029】この発明によれば、次の作用が得られる。
すなわち、一般に核酸(DNA)に対して親和性を有す
る色素,蛍光物質として知られる物質であっても上記方
法でファージDNAを標識できるものは必ずしも多くな
く、しかも標識できる物質であっても、細菌検出に用い
る場合の使い勝手に違いのあることが認められる。例え
ば標識可能な蛍光物質のうちの4,6−ジアミジノ−2
−フェニルインドールハイドロクロライド(DAPI)
は紫外線照射により青色の蛍光を呈し、アクリジンオレ
ンジは、基本的には、可視光である450nm付近の波
長域の励起光により650nm付近の波長域の赤橙色
(オレンジ色)の蛍光を呈する他、490nm付近の波
長域の励起光により530nm付近の波長域の緑色の蛍
光を呈する。上記において「450nm付近」、「49
0nm付近」、「650nm付近」、「530nm付
近」の波長というのは、照射励起光および励起光により
発する蛍光がそれらの波長ないしその近傍の波長を中心
とした範囲のものであることを意味する。光源から照射
される励起光および励起光により発する蛍光のスペクト
ルはある程度の範囲でブロードであるのが普通であるか
ら、それ以外の波長の光を厳密に含まないものに限定す
る趣旨ではない(以下において同じ)。
【0030】波長の長い可視光の照明光源光を用いるこ
とは、紫外線等の短波長の照明光源を用いる場合に比べ
て装置構成上有利である場合が多い。例えば、励起光照
射にランプを用いる場合、可視光ランプ光源は、紫外線
ランプ光源に比べて一般に寿命が長くまた安価であると
いう利点をもつ。また、照明光を集中できて光強度を高
めるのに有利なレーザー光源の場合には、450nm〜
490nm波長付近のレーザー光源に比べ、紫外線レー
ザー光源は波長が短いため、製造が難しく一般に極めて
高価であるため装置コストが嵩むという問題がある他、
可視光ビームは人の目で見ることができるので光軸調整
が容易で、特にフローサイトメトリーで検出操作を行う
場合に確実な検出ができる。
【0031】したがって、アクリジンオレンジを標識物
質として用いることで可視光光源を用いて細菌検出を行
うことができる本発明は有効である。
【0032】上記において蛍光が「赤橙色」、「緑色」
というのは、アクリジンオレンジが蛍光として呈する色
度の概ねの状態を表すためのものであり、この呈色の表
現により本発明が限定されるものではない。
【0033】上記構成において、励起された蛍光を検出
する光学系には、蛍光顕微鏡等の顕微鏡、フローセル等
を用いたフローサイトメトリー(流動細胞計測法)の装
置などを用いることができる。
【0034】上記ファージは、アクリジンオレンジを添
加した宿主細菌の培養培地中にファージを添加し、増殖
したファージを回収することでアクリジンオレンジでフ
ァージDNAを標識したファージを得ることができる。
【0035】上記方法でファージDNAをアクリジンオ
レンジで標識したファージの調製する際に用いられる方
法としては、(1)ファージ感染した細菌がファージに
より溶菌する前に遠心により培養液を除いて該細菌を集
め、これをDNase,クロロホルム等を添加して細菌
を破砕し、得られた液を例えば平衡密度勾配遠心法で精
製する方法、(2)ファージが細菌内で増殖して溶菌す
るまで培養した後、低速遠心して細胞の残渣を除去し、
ポリエチレングリコール(PEG)を加えて所定時間放
置した後、凝集物を遠心回収して、有機溶媒で目的とす
るファージを回収する方法などを用いることができる。
【0036】また、上記ファージDNAに対するアクリ
ジンオレンジの標識は、インターカレーション結合によ
る形態としたものを用いることができる。
【0037】アクリジンオレンジがファージDNAに対
して標識付けされる形態は、上記のインターカレーショ
ンによる場合と、ファージDNAにアクリジンオレンジ
がイオン結合的に静電力結合して標識する場合とがあ
り、そしてこれらの結合形態の違いにより励起光で呈す
る蛍光に違いが認められる。インターカレーション結合
は、バクテリオファージの二本鎖DNAの立体構造の隙
間に入り込んだ形態のものとして理解される。
【0038】なお、このような標識付け形態の違いがあ
るファージは、上述した宿主細菌の培養培地にアクリジ
ンオレンジを添加し、宿主細菌にファージを感染させ増
殖させてファージを得る際に、培養培地中へのアクリジ
ンオレンジの添加量を制御することにより選択的に得る
ことができる。例えば上記インターカレーションの標識
付けの形態は、培養培地中へのアクリジンオレンジの添
加量を培地1リットル当たり100mg以下、好ましく
は5〜100mg、最適には20〜50mgとすること
で得られる。培地へのアクリジンオレンジの添加量が5
mg/lよりも少ないと、ファージDNAに対する標識
量が少ないために、ファージDNAが細菌内に注入した
後、励起光を照射することで呈される蛍光強度が弱くな
り、例えば蛍光顕微鏡等に高感度カメラを接続した検出
装置等が必要となって装置コストが嵩むという難を招
く。反対に培地へのアクリジンオレンジの添加量が10
0mg/lを越えると、静電力結合でファージDNAに
結合したアクリジンオレンジの標識量が多くなり、細菌
へのファージDNAの注入が阻害される可能性があるの
で上記の範囲とされることがよい。添加量を200mg
/lを越えるように多くするとファージ合成阻害が起こ
って目的とするファージが回収できない。なお、アクリ
ジンオレンジが高濃度であると2量体を生成し、本発明
の標識としては不適当なものとなるが、上記インターカ
レーション結合を生ずる濃度範囲で用いることでこの問
題も同時に防止できる。
【0039】請求項2の発明は、上記検出方法の発明に
おいて、アクリジンオレンジの蛍光検出を、宿主細菌に
注入されたバクテリオファージDNAを標識しているア
クリジンオレンジを対象として行うことを特徴とする。
【0040】この発明によれば次の作用が得られる。す
なわち、バクテリオファージは、宿主細菌に対して特異
的に結合し、かつ細菌のエネルギー状態に依存して生物
活性を失っている場合にはファージDNAの注入が起こ
らないことが知られている。そして、極めて凝集した状
態でファージ内に存在するファージDNAに標識付けさ
れたアクリジンオレンジを励起光で励起させても、呈す
る蛍光は極めて小さく、かつ多数のアクリジンオレンジ
が発する蛍光の相互作用によるためか光強度の弱い輝点
を示すにすぎないのに対し、ファージDNAの注入が行
われると、細菌内ではファージDNAが広がって大きな
輝点となり、また多数のアクリジンオレンジ相互の距離
が大きくなって励起光による輝点の光強度も大きくな
り、容易にしかもファージ内のアクリジンオレンジと区
別して検出することができるようになる。したがって、
注入が行われた細菌(生菌)は、生物活性を失った細菌
(死菌)に対して結合したファージはファージDNAの
注入が起こらないので、これらを光学的に区別して検出
できる。
【0041】また、ファージDNAが注入された細菌
(生菌)は、面積が大きくかつ光強度も大きい輝点とし
て検出できるので、高感度に精度よく検出を行うことが
できる利点もある。
【0042】請求項3の発明は、上記検出方法の発明に
おいて、光学的に検出するアクリジンオレンジの蛍光
は、該アクリジンオレンジが緑色の蛍光を発する可視光
領域の励起光により励起されたもの、及び/又は該アク
リジンオレンジが発する緑色の蛍光を受ける可視光領域
で受光されたものであることを特徴とする。
【0043】この発明によれば、目的細菌以外のものを
誤検出してしまう虞れがあるという問題を解消できる利
点がある。すなわち、藻類を含む可能性がある河川水等
を対象として細菌を検出する用途において、赤橙色の蛍
光呈色で細菌を検出しようとする場合、藻類がもつクロ
ロフィルが赤色の蛍光を発するため、蛍光の波長が、こ
の藻類がもつクロロフィルの蛍光波長と近似してこれが
ノイズとして誤検出の原因になる虞れがあるが、緑色の
蛍光呈色で細菌を検出するようにすれば、この誤検出の
虞れは解消できるからである。
【0044】請求項4の発明は、ファージDNAにイン
ターカレーション結合でアクリジンオレンジを標識した
バクテリオファージを検出対象細菌を含む被検液に添加
し、フローセルに流しながら該アクリジンオレンジの発
する緑色の蛍光を光学的に検出するフローサイトメトリ
ーにおいて、レーザー光源を用いて励起光を照射すると
共に、光学的に検出した蛍光を、予め定めた蛍光強度の
閾値と比較して細菌を検出することを特徴とする。
【0045】この発明によれば、上述した各発明の利点
が得られることに加えて、高感度、高精度の検出が実現
できる。
【0046】すなわち、フローサイトメトリーは、通
常、数十μm〜数百μm内径程度の微細な管状のフロー
セルに被検液を流しながらこれに励起光を照射し、流動
する被検液中で発せられる蛍光を受光し検出するもので
あり、本発明にあっては、標識ファージDNAが注入さ
れた細菌と共に、アクリジンオレンジでファージDNA
を標識した多数のファージをこのフローセル中の流動流
体に含んでいる。したがって、蛍光点としては小さく、
蛍光強度も弱いとはいえ、これらのファージがバックグ
ラウンドのノイズとして検出される。この際、励起光が
ランプ光源からの照射光である場合には、広い光束で広
い範囲に渡り流体を照明する結果としてバックグラウン
ドの光度が高くなり、特にファージが集中して存在する
ような部分ではその蛍光強度を示す信号が大きくなって
これがノイズとして誤検出される虞れがある。これに対
して、励起光がレーザー光源からの照明光である場合に
は、光束が集中できて励起光を高強度にできるだけでな
く、フローセルに対する照明範囲を狭く絞ることができ
る結果として、その範囲に存在するファージ量を少なく
でき、したがってファージの蛍光に由来するバックグラ
ウンドの光を低く抑制することができる。これにより検
出対象の細菌が発している蛍光強度とバックグラウンド
の蛍光の差が大きくとれるので、感度のよい検出が実現
できると共に、設定した閾値光強度の値をバックグラウ
ンドのノイズが上回る虞れも低減でき、これにより誤検
出を防止した精度のよい検出が実現できるという細菌検
出法として優れた利点が得られる。
【0047】請求項5の細菌の検出に用いる装置の発明
は、ファージDNAにインターカレーション結合でアク
リジンオレンジを標識したバクテリオファージを、検出
しようとする宿主細菌を含む被検液(細菌検出を目的と
する検査対象の「水,液」をいい、検査対象液を濃縮、
希釈した液も含む)に添加する手段と、該バクテリオフ
ァージが添加された被検液に対してアクリジンオレンジ
が蛍光を発する可視光領域の励起光を照射する励起光照
射手段と、該励起光照射により生ずる蛍光を検出する光
学的な検出手段とを有することを特徴とする。
【0048】上記被検液にファージDNAをアクリジン
オレンジで標識したファージを添加する手段は、被検液
に対して適当な濃度のファージ含有検査液を添加できる
手段であればよく、槽,管などの内部の被検液に検査液
(ファージ液)を注入するシリンジポンプ等が例示でき
る。また必要に応じて混合、攪拌手段を設けることもで
きる。添加濃度は検出しようとする被検液の種類により
異なるので一律的には決められないが実験的,経験的に
決めることができる。一般的には被検液1ml当たり1
5 〜1014個程度とすればよい場合が多い。
【0049】また、励起光照射手段としては、アクリジ
ンオレンジが蛍光を発する450〜490nm付近の波
長の照明光を照明できるものであれば、ランプ光源、レ
ーザー光源等のいずれのものを用いることもできる。な
お、アクリジンオレンジが発する赤橙色あるいは緑色の
蛍光を検出するためには、450〜460nmの波長域
の励起光を照明光とし、あるいは480〜500nm付
近の波長域の励起光を照明光とするように、照射する照
明光の波長をできるだけその波長域に絞るか、若しくは
受光側の波長を650nm付近あるいは530nm付近
に絞ることが好ましく、また励起光側および受光側の両
方を絞ることが好ましい。このために光学系にバンドパ
スフィルタを用いることや、発光波長域が狭く限定でき
るレーザー光源を用いることが推奨される。
【0050】光学的検出手段としては、検出画像を目視
で判断する場合には例えば蛍光顕微鏡等を用いることが
でき、検出を機械化,自動化して行う場合には、蛍光顕
微鏡,蛍光光度計,蛍光検出器等を用いることに加え
て、既知のコンピュータ技術を利用して検出信号を解析
して輝点の数をカウントする方法などを用いることがで
きる。また流動する被検液中の細菌を検出するためには
フローセルを用いたフローサイトメトリーの装置を採用
することももちろんできる。
【0051】この発明によれば、簡易な装置によって、
迅速かつ高精度に細菌の検出を行うことができ、しかも
操作性も簡便であるという利点が得られる。
【0052】請求項6の発明は、上記検出装置における
励起光照射手段が、アクリジンオレンジが緑色の蛍光を
発する可視光領域の励起光を照射するレーザー光照射手
段であることを特徴とする。
【0053】この発明によれば、簡易な装置によって、
迅速かつ高精度に細菌の検出を行うことができ、操作性
も簡便であることに加えて、緑色の蛍光呈色で細菌を検
出するので、上述したように、藻類を含む河川水等を対
象として細菌を検出する用途において、藻類がもつクロ
ロフィルがノイズとして誤検出される虞れがなく、誤差
の虞れの少ない高精度の検出が実現できる。
【0054】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。
【0055】参考例1 (大腸菌に対するアクリジンオレンジ標識ファージの製
造)大腸菌B株をLブロス培地(1リットル中にバクト
トリプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム5
gを含む)中、37℃で好気的に培養し、対数増殖期中
期でIFO(Institution for fermentation,Osaka)よ
り入手したバクテリオファージT4(No.20004)を添加
しファージを増殖させた。なおファージの増殖培養に使
用する培地は、栄養リッチな培地であれば特に限定され
ない。
【0056】DNAを蛍光標識したファージ粒子を調製
するため培地にファージを加えると同時に、蛍光色素と
してアクリジンオレンジ(C1720ClN3 ・xZnC
2:和光純薬社製 CI46005)を、培地1リッ
トル当たりそれぞれ5,10,20,50,70,10
0,200,500mg添加した8例を調製した。
【0057】上記の各例において、ファージが大腸菌細
胞内で増殖し、細胞を溶かして培地中に放出されるま
で、37℃で好気的に培養を続けた。その後、ファージ
を含む培養液を低速遠心(3000rpm 10分)し
て細胞の残渣を除き、塩化ナトリウムを1Mになるよう
に加えて溶解し、さらにポリエチレングリコールを10
%になるように加えて溶解し、4℃で一晩放置した。放
置後生じた凝集物を遠心(15000rpm 20分)
によって回収し、この沈殿を、5mM硫酸マグネシウム
を含む20mMトリス塩酸緩衝液の少量に懸濁した。懸
濁液に等量のクロロホルムを加え、30秒間激しく攪拌
した後、遠心してクロロホルム層と水層を分離した。フ
ァージを含んだ水層を採り、30000rpm、30分
の遠心により、ファージを回収した。得られた沈殿を少
量の5mM硫酸マグネシウム−20mMトリス塩酸緩衝
液に懸濁した。
【0058】この懸濁液を、密度を57%、46%、3
3%とした塩化セシウムの不連続密度勾配の上に乗せ、
水平ロータで30000rpm、4℃で3時間遠心し
た。形成されたファージのバンドを採り、透析して塩化
セシウムを除去し、蛍光標識ファージの精製標品とし
た。得られたファージの精製標品の濃度は、アクリジン
オレンジ添加量が5〜100mg/lのものでは1010
〜1012個/mlの範囲であったが、添加量が増えると
ともに、標識されたファージの回収量は低下し、200
mg/l以上ではほとんど回収することができなかっ
た。これは大腸菌内でのファージ増殖時にアクリジンオ
レンジが高濃度で存在するために、ファージ合成が阻害
されたものと考えられる。
【0059】参考例2 (アクリジンオレンジ標識ファージの蛍光確認)前記に
より製造したアクリジンオレンジ標識ファージの精製標
品をスライドガラスの上に乗せ、波長400〜500n
mの励起光を照射し、波長520nm以上で受光しなが
ら蛍光顕微鏡(OLYMPUS BX60)で観察を行った。
【0060】その結果、培地1リットルあたりのアクリ
ジンオレンジ添加量が5〜50mgで調製したファージ
標品は、緑色蛍光を発するファージのみであることが確
認され、中でも添加量が20〜50mg/lのファージ
標品は、それ以下の濃度のものに比べて強い蛍光を発し
ていた。また、50mg/lを越える添加量のファージ
標品は緑色と赤橙色のものが混在し、アクリジンオレン
ジ添加量の高いものほど赤橙色の割合が多かった。
【0061】ところで、アクリジンオレンジのファージ
DNAへの結合形態は、上述した通りファージDNAの
二重鎖螺旋間でのインターカレーション結合と、様々な
部位にイオン結合的につく静電力結合とがあり、また一
般に、アクリジンオレンジがDNAにインターカレーシ
ョン結合した形態では、励起光480〜500nm付近
で530nm付近の緑色蛍光を発することが知られてい
る。したがって、上記観察結果は、5〜50mgのアク
リジンオレンジ添加量の場合には殆どがインターカレー
ション結合しているのに対し、添加量が多くなるとイン
ターカレーション結合以外の結合が増えるために赤橙色
の蛍光が増すものと推定される。また高濃度のアクリジ
ンオレンジの存在により蛍光物質同士が干渉して蛍光が
長波長側(赤色側)に変位し蛍光が赤橙色を示すという
理由も考えられる。
【0062】実施例1 (大腸菌の検出)培養大腸菌含有液(大腸菌濃度108
個/ml)1mlに対して、参考例1で調製したアクリ
ジンオレンジ標識ファージ標品中、培地1リットルあた
りアクリジンオレンジ添加量20mgで調製したもの2
0μlを添加し、蛍光顕微鏡(前出)で観察した。
【0063】その結果、図1に示すように、大腸菌細胞
が緑色に蛍光染色されていることが確認された(図1中
の白点は実際には緑色の蛍光点)。
【0064】また、他の細菌株の含有液に上記参考例1
のアクリジンオレンジ標識ファージ標品を添加しても、
細菌細胞は蛍光染色されなかった。これにより参考例1
のT4ファージは大腸菌を宿主として特異的に結合し、
標識したアクリジンオレンジにより大腸菌だけを蛍光染
色できることが確認された。
【0065】また、上記培養大腸菌含有液を塩素殺菌し
た他は、上記と同様にしてアクリジンオレンジ標識ファ
ージ標品を添加して蛍光顕微鏡で観察したところ、蛍光
染色された細菌細胞は観察されなかった。この結果か
ら、本例のアクリジンオレンジ標識ファージのDNA
は、生菌にのみ注入されることが確認された。
【0066】参考例3 (サルモネラ菌に対するアクリジンオレンジ標識ファー
ジの製造)サルモネラ菌特異的ファージP22(IFO
(前出)より入手)とサルモネラ菌を用いた以外は、参
考例1と同じ操作で、アクリジンオレンジ標識ファージ
を調整して精製標品を得た。なお培地1リットルあたり
のアクリジンオレンジの添加量は20mgとした。
【0067】実施例2 (サルモネラ菌の検出)参考例3で製造したサルモネラ
菌に特異的なアクリジンオレンジ標識ファージを用い
て、サルモネラ菌の検出を上記実施例1と同様にして行
った。
【0068】すなわち、培養サルモネラ菌含有液(サル
モネラ菌濃度108 個/ml)1mlに対して、上記参
考例3のアクリジンオレンジ標識ファージ標品の20μ
lを添加し、蛍光顕微鏡下で観察したところ、サルモネ
ラ菌が緑色に蛍光染色されていることが確認された。
【0069】また、他の細菌株の含有液に上記参考例3
のアクリジンオレンジ標識ファージ標品を添加しても、
細菌細胞は蛍光染色されなかった。これにより本例のP
22ファージはサルモネラ菌を宿主として特異的に結合
し、標識したアクリジンオレンジによりサルモネラ菌だ
けを蛍光染色できることが確認された。
【0070】実施例3 (フローセルを用いた大腸菌の検出)検出装置としてフ
ローセルを用いて、フローサイトメトリーによる細菌検
出試験を行った。
【0071】図2はこのフローサイトメトリーに用いた
検出装置の概要を平面図で示し、この図2において、1
はシースフローセルであり、試料液(ファージを混合し
たサンプル液)は、サンプルシリンジポンプ2により該
フローセル1に紙面に垂直な方向に上方から下方に流さ
れる。この試料液流束の周囲には、シース液がシースシ
リンジポンプ3より供給されて高速に流され、これによ
って試料液の流束をより細くするようにしている。これ
により、この試料液の側方から観察される蛍光点の重な
りは低減されて、ファージ単独(細菌に結合していない
ファージ)の蛍光の重なりによるバックグラウンドの上
昇を抑制でき、また蛍光を発する細菌の重なりによる検
出誤差の虞れも低減される。
【0072】4はアルゴン(Ar)レーザー光源であ
り、レーザービームを調整するビームエキスパンダ5で
レンズ6を通して、励起光を前記シースフローセル1に
照射する。
【0073】そしてレーザービームの照射により発生す
る試料液中の蛍光点は、対物レンズ7、干渉フィルタ
8、ピンホール9を通して光電子増倍管10で検出さ
れ、プリアンプ11を経てオシロスコープ12で表示す
る。
【0074】この装置によれば、試料(サンプル)液の
流れはシースフローにより細くなり、また励起光が照射
される範囲もレーザー光源を用いることで狭くなるの
で、ファージ単独の蛍光点が重なることによるバックグ
ラウンドの蛍光が大きくなることを可及的に抑制するこ
とができて、検出感度の向上、及び検出精度の向上が図
られる。
【0075】以上の装置を用い、シリンジポンプ2によ
りシースフローセル1に試料液を連続的に流しながら、
シースフローセル1中の試料液にアルゴンレーザー光源
4から波長488nmの励起光を照射した。
【0076】一方、励起光照射により発せられる蛍光を
検出するために、対物レンズ7で蛍光を集光し、緑色蛍
光の波長のみを効率的に受光するために前記干渉フィル
タ8(透過中心波長535nm、半値幅60nm)を通
して得られるパルス状の光を光電子増倍管10で受光し
て電気信号に光電変換し、プリアンプ11で信号処理し
た後、バックグラウンドノイズと大腸菌との信号の識別
(例えば各蛍光点強度を所定の閾値と比較)を行って、
大腸菌の数を求めた。
【0077】試料液としては、上記参考例1における培
地1リットルあたりのアクリジンオレンジ添加量を20
mgとして調製したアクリジンオレンジ標識ファージの
精製標品(ファージ濃度108 個/ml)を試料液A、
実施例1の培養大腸菌含有液(大腸菌濃度108 個/m
l)を試料液B、これらを混合比1:1で混合したもの
を試料液Cとし、各試料液についてそれぞれ上記試験を
行った。なお、本例において検出される蛍光は、緑色の
蛍光であった。
【0078】結果は、試料液Aのみ(シース液は流す:
以下同じ)をシースフローセル1に流した試験では、パ
ルス信号は検出されなかった。これは、ファージ粒子が
極めて微小であるためかあるいはファージDNAの形態
によるためか理由は必ずしも明らかでないが、当該装置
の検出限界以下であるためと考えられる。
【0079】試料液Bのみをシースフローセルに流した
試験においても、蛍光物質が存在しないため当然である
が、パルス信号は検出されなかった。
【0080】次に、試料液Cをシースフローセルに流し
て検出試験を行った。この場合には、信号の大きなパル
スが検出され、パルス信号の計測数から大腸菌数の算出
したところ、上記試料液Cの大腸菌濃度と一致した値が
得られた。
【0081】以上のことから、本例のシースフローセル
を用いた簡便な検出操作によって、アクリジンオレンジ
で標識されたファージDNAが注入された大腸菌が、高
精度かつ迅速に行えることが確認された。
【0082】
【発明の効果】本発明によれば、アクリジンオレンジで
ファージDNAを標識したバクテリオファージは、宿主
細菌を特異的に認識して細菌を染色することができ、フ
ァージDNAが注入された細菌を光学的に有意に識別で
きるため、染色された細菌とバクテリオファージを物理
的に分離する操作を必要としないという利点が得られ、
特定の細菌を、しかも生菌のみを、迅速にかつ簡単な操
作で検出・同定でき、例えば環境水、環境空気、食品や
上下水、病院,精密機械工場,食品製造・加工工場の用
水や空気において存在が忌避される微量の細菌を検出す
ることができるという効果が奏される他、これに加えて
以下の効果が奏される。
【0083】請求項1の発明によれば、迅速かつ簡便な
操作で、高精度の細菌検出を実現できる。
【0084】またDNAに親和性を有してファージDN
Aに標識できるものであるDAPIに比べ、これが呈す
る青色蛍光を励起するための紫外線が短波長であるのに
対し、アクリジンオレンジが呈する赤橙色(オレンジ
色)蛍光あるいは緑色蛍光を励起するための光は、可視
光である(波長450nm,490nm程度)長波長側
にあるため、紫外線等の短波長の照明光源に比べ、汎用
性のある安価な照明光源、特に光強度を高めるのに有利
なレーザー光源を用いることができという効果が奏され
る。
【0085】請求項2の発明によれば、バクテリオファ
ージは、宿主細菌に対して特異的に結合し、かつ生菌の
みを検出でき、また、ファージDNAが注入された細菌
(生菌)は、面積が大きくかつ光強度も大きい輝点とし
て検出できるので、高感度,高精度な検出が実現でき
る。
【0086】請求項3の発明によれば、緑色の蛍光呈色
で細菌を検出するので、藻類等を含む河川水等を対象と
して細菌を検出する用途において、クロロフィルがノイ
ズとして誤検出される虞れがなく、精度の高い検出が実
現できる。
【0087】すなわち、アクリジンオレンジがファージ
DNAにインターカレーション結合して励起光により緑
色蛍光を発するファージを用いれば、赤橙色の蛍光波長
はクロロフィルの蛍光波長と近似するためこれをもつ藻
類を含む可能性がある対象水(例えば河川水等)につい
て細菌検出をする場合には誤検出の虞れを招くが、緑色
蛍光を励起させるようにすることでこの虞れのない細菌
検出を実施できる。
【0088】請求項4の発明によれば、上述した各発明
の利点が得られることに加えて、高感度、高精度の検出
が実現できる。すなわち、アクリジンオレンジでファー
ジDNAを標識した多数のファージを流動液体に含み、
これがバックグラウンドのノイズとして検出されるが、
励起光としてレーザー光源からの照明光を用いるこの発
明によれば、光束が集中できて励起光を高強度にできる
だけでなく、フローセルに対する照明範囲を狭く絞るこ
とができて、その範囲に存在するファージ量を少なくで
き、したがって単独のファージに由来するバックグラウ
ンドの蛍光を低く抑制できて細菌が発している蛍光強度
との差を大きくとることができ、感度のよい検出が実現
できる。また、バックグラウンドのノイズが閾値光強度
の値を上回る虞れを低減でき、誤検出を防止した高精度
の検出が実現できる効果が奏される。
【0089】請求項5の発明によれば、簡易な装置によ
って、迅速かつ高精度に細菌の検出を行うことができ、
しかも操作性も簡便であるという利点が得られる。
【0090】請求項6の発明によれば、簡易な装置によ
って、迅速かつ高精度に細菌の検出を行うことができ、
操作性も簡便であることに加えて、緑色の蛍光呈色で細
菌を検出するので、クロロフィルがノイズとして誤検出
される虞れがなく、誤差の虞れの少ない高精度の検出装
置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例2で得られた緑色蛍光を呈する
大腸菌の顕微鏡写真であり、図中の白点は緑色の蛍光点
を示す。
【図2】実施例3のシースフローセルを用いた大腸菌の
検出に用いた装置の概要一例を示した図。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ファージDNAにインターカレーション
    結合でアクリジンオレンジを標識したバクテリオファー
    ジを宿主細菌に接触させ、励起光を照射することで上記
    ファージDNAに標識したアクリジンオレンジが発する
    蛍光を光学的に検出することを特徴とする細菌の検出方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、アクリジンオレンジ
    の蛍光検出は、宿主細菌に注入されたバクテリオファー
    ジDNAを標識しているアクリジンオレンジを対象とし
    て行うことを特徴とする細菌の検出方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、光学的に検
    出するアクリジンオレンジの蛍光は、該アクリジンオレ
    ンジが緑色の蛍光を発する可視光領域の励起光により励
    起されたものであることを特徴とする細菌の検出方法。
  4. 【請求項4】 ファージDNAにインターカレーション
    結合でアクリジンオレンジを標識したバクテリオファー
    ジを検出対象細菌を含む被検液に添加し、フローセルに
    流しながら該アクリジンオレンジの発する緑色の蛍光を
    光学的に検出するフローサイトメトリーにおいて、レー
    ザー光源を用いて励起光を照射すると共に、光学的に検
    出した蛍光を、予め定めた蛍光強度の閾値と比較して細
    菌を検出することを特徴とする細菌の検出方法。
  5. 【請求項5】 ファージDNAにインターカレーション
    結合でアクリジンオレンジを標識したバクテリオファー
    ジを検出対象細菌を含む被検液に添加する手段と、該バ
    クテリオファージが添加された被検液に対してアクリジ
    ンオレンジが蛍光を発する可視光領域の励起光を照射す
    る励起光照射手段と、該励起光照射により生ずる蛍光を
    検出する光学的な検出手段とを有することを特徴とする
    細菌の検出に用いる装置。
  6. 【請求項6】 請求項5において、励起光照射手段が、
    アクリジンオレンジが緑色の蛍光を発する可視光領域の
    励起光を照射するレーザー光照射手段であることを特徴
    とする細菌の検出に用いる装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20190094189A (ko) * 2016-12-09 2019-08-12 가부시끼가이샤 사따께 미생물의 검사 방법 및 그 장치

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