JPWO2002052034A1 - 生死判別方法及び核酸増幅方法 - Google Patents

生死判別方法及び核酸増幅方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、核酸定量を応用して細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法、並びに細胞及び/又は核酸の遺伝子を効率よく直接的に増幅させる核酸増幅方法に関する。例えば、生菌、死菌の混合割合の異なる検体について、DNAの安定部分及び不安定部分をPCRで増幅させると、DNA不安定部分では、全て生菌である検体AではPCR産物が確認されるが、全て死菌である検体HではPCR産物が確認されないため、検体の生死やその混合割合が分かる。

Description

技術分野
本発明は、核酸定量を応用して細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法、並びに細胞及び/又は核酸の遺伝子を効率よく直接的に増幅させる核酸増幅方法に関する。
背景技術
従来、最小の生物である単細胞、或いは細菌類や真菌類等の菌類の生死判別方法としては、検体から適当な手段によって採取した菌類を所定の菌数に調整し、寒天培地等を用いて1日乃至2日培養してコロニーの増殖を目視判定する方法や、発色酵素を混合した発色培地に採取した菌類を植菌した後、所定温度に保持されたインキュベータ等の培養器内で1日乃至2日培養し、β−ガラクトシターゼ酵素で発色酵素を分解発色させて判読する方法等がある。
また、菌類の生死を即時に判定する方法として、特開平9−275998号公報には、フルオレセイン若しくはその誘導体からなる蛍光染料とプロピデュームイオダイトとからなる蛍光染料を生理食塩水に混合し、さらに塩、キチネス若しくはセルラーゼからなる染色促進剤を混合した染色溶液中に、採取した菌類を混合し、加温して菌類細胞を染色し、目視で即時に判別する方法が開示されている。
また、特開平10−248597号公報には、蛍光染料で染色された菌液を透明セルに注入し、一方向から所定波長で且つパルス間隔が少なくとも750μ秒以上のパルス光線を照射させ、このパルス光線の軸光と直交する一方側では生菌からの蛍光発光光線を透過するバンドパスフィルターを介してフォトダイオード検知管で検知し、他方側では死菌細胞からの蛍光発色光線を透過させるバンドパスフィルターを介してフォトダイオード検知管で検知した後、無菌の染色菌液の検知電圧と菌類の存在する染色菌液の検知電圧との差をコンピュータ処理して菌類の生菌・死菌を判別する方法及び装置が開示されている。
また、これらの方法を改良した方法として、蛍光染色菌液を化学的に安定した状態で生菌細胞及び死菌細胞内に浸透染色させた蛍光染料から、蛍光発光強度が強く、且つ鮮明な蛍光画像をフォトダイオードで検知させた後、電気的処理を行って菌種、菌数、生菌数及び死菌数を即座に高い精度で判別する方法が特開平11−178568号公報に開示されている。
さらに、人をはじめとする多細胞生物の生死の判定は、死後硬直や直腸温度の測定や外観変化の観察などによって行われている。
しかしながら、検体から採取した菌類を所定の菌数に調整後、寒天培地で培養してコロニーの増殖を観察することによって菌類の生菌と死菌を判別する方法や発色酵素による発色法では、判定に1日乃至2日程度の日数が必要とされ、迅速な判定が必要となる食物等の細菌を検査する方法としては不適当であるという問題があった。
また、蛍光染料で菌細胞を染色して生菌細胞と死菌細胞とを判別する方法は、迅速に判別できる利点はあるものの、判定には専門的知識及び技術が必要とされ、簡便な判別法とは言えない。
さらに、人をはじめとする多細胞生物の死を死後硬直や直腸温度の測定や外観変化の観察で行う検死確認の方法を、細胞中の核酸の定量検査で確実に行う方法の確立が待たれている。
一方、細菌、例えば薬剤耐性菌若しくは毒素産生菌を同定するために細菌遺伝子を検査する場合には、採取した検体の細菌培養を行った後、細菌を検出し、該細菌から核酸の抽出と定量工程を経て核酸増幅法としてのPCRを実施した後、電気泳動を行い、得られたゲルを試薬にて染色して遺伝子のバンドを観察するという方法が一般的に採用されている。この方法は、通常、検査に1乃至2週間の時間と労力を要し、また、熟練した高度専門技術を要するものであった。
このため、細菌培養を行うことなく細菌同定を可能とする手段として、PCR法を応用して細菌遺伝子の検査を迅速且つ簡易に行う検査方法やキットが種々開示されている。
例えば、細菌同定を迅速に行う1つの方法として、特開平9−94100号公報には、細菌の16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子に存在する特異な塩基配列を有するDNAをプライマとし、被同定細菌から得た染色体DNAを鋳型としたPCR法を適用し、用いたプライマの塩基配列を含む特定のDNAが増幅されるか否かで細菌種の決定を行う方法が開示されている。
また、特開平6−113899号公報には、酪酸菌からゲノムDNAを抽出し、rRNA遺伝子を特異なプライマを用いてPCR法により増幅させ、増幅したrDNA断片の長さを電気泳動により解析、比較することによって酪酸菌の同定を行う方法が開示されている。
また、極めて少数の細胞・細菌でのmRNAの定量を行う方法として、特開平7−23197号公報には、遺伝子のイントロンを含まない部分由来の検出対象のmRNAから合成されたcDNAを、該cDNAに対応する部分のゲノムDNAと共に増幅させる方法が開示されている。
さらに、採取した検体から核酸を抽出することなく核酸増幅を行う際に増幅を困難にするPCR阻害物質の作用を抑制する方法として、PCR反応液にポリアミンを添加する方法が特開平8−9997号公報に、界面活性剤を添加する方法が特開平10−80279号公報にそれぞれ開示されている。
しかしながら、上述した特開平9−94100号公報に開示された方法は、全ての細菌を検出できるプライマを設計したことに特徴があり、PCR法を用いれば迅速に細菌の同定が可能であるため、取り立てて迅速な検査方法とは言えない。
また、上述した特開平6−113899号公報や特開平7−23197号公報にに記載されている方法は、高度の熟練技術を必要とせず、また、少数の試料から同定する方法であるが、それらは特定の菌に関するものであり、種々の検体からDNA検出を利用して細菌同定や薬剤耐性菌同定を極めて短時間に行う方法を示したものではない。
また、検体から核酸抽出を行うことなくPCR法を応用して核酸増幅を行う際に、核酸増幅酵素反応を阻害する物質の作用を抑制する目的でPCR反応液にポリアミンや界面活性剤を添加する方法は、細胞・細菌の遺伝子を直接且つ迅速に検出する方法としては優れた方法ではあるが、PCR終了後にリアルタイム定量PCR法を用いる場合に、蛍光を物理光学的に阻害する物質が除去されていないため、測定に誤差が生じるという問題があった。
発明の開示
本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、核酸定量を応用することにより菌類をはじめとする細胞の生死判別を行う生死判別方法並びに細胞及び/又は細菌の遺伝子を直接且つ迅速に効率よく増幅する核酸増幅方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明に係る生死判別方法は、検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、上記検体からDNA及びRNAを抽出してその少なくとも一部を定量し、上記検体内における上記DNA及びRNAの量比を比較することによって生死を判別することを特徴とするものである。
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る生死判別方法は、検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、上記検体からDNA及びRNAを抽出して増幅させ、増幅産物を定量して上記検体内における上記DNA及びRNAの量比を比較することによって生死を判別することを特徴とするものである。
ここで、上記DNA及びRNAの増幅は、それぞれ定量PCR法及び定量逆転写PCR法によって行うことができる。
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る生死判別方法は、検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、
上記検体からDNA及びRNAを抽出し、上記DNA及びRNAをそれぞれリアルタイムPCR法、リアルタイム逆転写PCR法で増幅し、得られた相対的DNA量及び相対的RNA量の比に基づいて生死を判別することを特徴とするものである。
ここで、上記相対的DNA量及び相対的RNA量は、PCRサイクル数と増幅DNA量若しくは増幅cDNA量との関係から得られるサイクルスレッショード値に基づいて求めることができる。
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る生死判別方法は、検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、上記検体からDNAを抽出し、当該DNAの不安定部分を増幅させ、増幅産物を定量することによって生死を判別することを特徴とするものである。
ここで、上記増幅産物のゲル電気泳動によって、若しくはサイクルスレッショード値を比較することによって、又は2本鎖DNAの温度解離曲線の解離温度点或いは2本鎖DNAの高次構造に由来する温度解離曲線のパターンに基づいて生死を判別することができる。
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る生死判別方法は、検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、上記検体から時間差をおいて等量の複数のサンプルを抽出し、上記複数のサンプルからDNAを抽出してリアルタイムPCR法で増幅させ、増幅されたDNA量を上記複数のサンプル間で比較することによって生死を判別することを特徴とするものである。
ここで、上記DNA量は、PCRサイクル数と増幅DNA量との関係から得られるサイクルスレッショード値に基づいて求められる。また、上記複数のサンプルは、上記検体から異なる培養時間で抽出されたものであってもよい。また、この際、上記複数のサンプルからDNAを抽出することなく、直接PCRバッファを用いてリアルタイムPCRで上記DNA若しくはRNAを増幅させ、増幅されたDNA量を上記複数のサンプル間で比較することによって生死を判別するようにしてもよい。
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る生死判別方法は、検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、上記検体から時間差をおいて等量の複数のサンプルを抽出し、上記複数のサンプルからRNAを抽出してリアルタイム逆転写PCR法で増幅させ、増幅されたRNA量を上記複数のサンプル間で比較することによって生死を判別することを特徴とするものである。
ここで、上記RNA量は、PCRサイクル数と増幅RNA量との関係から得られるサイクルスレッショード値に基づいて求められる。また、この際、上記複数のサンプルからRNAを抽出することなく、直接PCRバッファを用いてリアルタイム逆転写PCR法で上記RNAを増幅させ、増幅されたRNA量を上記複数のサンプル間で比較することによって生死を判別するようにしてもよい。
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る核酸増幅方法は、検体となる細胞及び/又は細菌の核酸を増幅させる核酸増幅方法であって、上記検体を破壊して核酸を露出させ、破壊産物を濾過して反応阻害物質を除去若しくは抑制し、核酸を増幅させることを特徴とするものである。
ここで、上記核酸の増幅は、PCR法又はリアルタイムPCR法によって行うことができる。
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施例の説明から一層明らかにされるであろう。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
第1の実験
第1の実験は、細胞が生きている限り一定量の特定のDNAから一定量の特定のRNAが合成される仕組みを利用して、検体から採取したDNA及びRNAを増幅させ、増幅産物中のDNA及びRNAを定量して該RNAと該DNAのモル数の比率(RNA/DNA)を測定することによって細胞の生死を判別するものである。
細胞内でタンパク質を合成する必要が生じると、DNA上の必要な塩基配列がRNAに写し取られる転写が生じ、その結果として伝令RNA(mRNA)が生成される。そして、該mRNAは細胞核の外に出てリボソームへと移動し、転移RNA(tRNA)の助けを借りてタンパク質が作られる翻訳が生じる。
ここで、検体を採取して核酸の定量を行うと、DNAは比較的安定で壊れにくく、生細胞ではRNAの分解及び生成が常に継続しているのに対して、死細胞ではRNAが生成されず早期に分解されてしまうため、生細胞に対してRNA/DNAモル比が相対的に低下する。そこで、このRNA/DNAモル比を測定することによって、細胞の生死を判別することが可能となる。
なお、第1の実験で用いる核酸の増幅方法としては、DNA断片を利用したDNAクローニング法やPCR法など、あらゆる核酸増幅法が利用できる。しかし、DNAクローニング法は、増幅操作に手間がかかると言う欠点があり、また、PCR法は、短時間に目的DNAを増幅できる利点があるが、該目的DNAが指数級数的に増幅されるため、わずかな増幅効率の違いによって増幅産物量が大きく影響され、定量的解析には問題がある。
そこで、以下では、核酸増幅法の一例として検体から抽出したRNAの定量逆転写PCR(定量RT−PCR)とDNAの定量PCRとを用いるものとするが、この定量PCR法及び定量RT−PCR法に限定されないことは勿論である。さらには、核酸増幅有無の制限を受けるものでもない。すなわち、細胞・細菌から抽出されたDNA量及びRNA量が多ければ、増幅することなく直接DNA/RNAの量比から細胞・細菌の生死判別を行うことができる。
以下、第1の実験の具体的な実施例について説明するが、この実施例に限定されるものではないことは勿論である。
実施例1
実施例1では、先ず定量RT−PCR用のコンペティタを作製する。具体的には、Competitive DNA construction kit(宝酒造株式会社製)を操作手順に従って使用し、細菌の16SリボソームRNAの一部をコードする第1の塩基配列(5‘−CAGCAGCCGCGGTAATAC−3’)及び第2の塩基配列(5‘−ACGACACGAGTCGACGAC−3’)を利用してコンペティタ(Competitor)を作製した。作製された該コンペティタは、定量して既知濃度コンペティタとした。
また、採取した検体にISOGEN(日本ジーン株式会社製)を添加し、常法通りの操作手順に従って細菌由来のゲノムDNA及びtotal RNAを抽出した。
そして、抽出したtotal RNAについては、定量後、その2μgに逆転写プライマとしてrandom hexamerを添加して逆転写反応を行った。反応終了後、逆転写産物の5μlを使用し、第1のプライマ(5’−CAGCAGCCGCGGTAATAC−3’)及び第2のプライマ(5’−ACGACACGAGCTGACGAC−3’)を用いて定量RT−PCR反応を実施した。
この定量RT−PCR反応は、6反応を行い、各反応に夫々0、1(=10−9)、2(=10−8)、3(=10−7)、4(=10−6)、5(=10−5)Mの既知濃度コンペティタを加えた。なお、該反応には、PCR beads(Amersham pharmacia biotech社製)を操作手順に従って使用した。
反応の終了したPCR産物は、アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、バンドの濃度差を濃度測定器等によって測定した。
そして、コンペティタ濃度をX軸、エチジウムブロマイド染色濃度をY軸とした検量曲線を作成し、該検量曲線にコンペティタ濃度0のサンプルのエチジウムブロマイド染色濃度を当てはめ、mRNAのモル濃度を求めた。
一方、検体から抽出したゲノムDNAについては、定量後、その2μgを用いてPCR反応を行い、反応の終了したPCR産物の5μlに上記第1のプライマ及び第2のプライマを用いて定量PCR反応を実施した。
このようにPCRを2段階で行うことによって、特異性を高めることが可能となるが、1段階目のPCRについては、省略しても構わない。なお、1段階目のPCRに用いられるプライマは、2段階目の定量PCRで用いられる第1のプライマ及び第2のプライマの外側に位置する。
定量PCR反応は、6反応を行い、各反応に夫々0、1(=10−9)、2(=10−8)、3(=10−7)、4(=10−6)、5(=10−5)Mの濃度既知コンペティタを加えた。なお、該反応には、PCR beadsを操作手順に従って使用した。
反応の終了した定量PCR産物は、アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色後、バンドの濃度差を濃度測定器等によって測定した。
そして、コンペティタ濃度をX軸、エチジウムブロマイド染色濃度をY軸とした検量曲線を作成し、該検量曲線にコンペティタ濃度0のサンプルのエチジウムブロマイド染色濃度を当てはめ、DNAのモル濃度を求めた。
この定量RT−PCR及び定量PCRにより、検体中の細菌由来16SリボソームRNAのmRNA及びゲノムDNAの各モル濃度が得られる。生菌では、RNA/DNA比が高値になり、死菌では逆に低値となるために、その結果から検体に生菌又は死菌が含まれているか否かの判定を行った。
実施例2
実施例2では、死亡したラットの肝臓、腎臓、脾臓、心臓、肺等の内蔵部位、筋肉、皮膚及び眼球を取り出し、実施例1と同様の条件で定量RT−PCRを行った。その結果、経時的なRNAの減少が観察された。
以上説明したように、第1の実験においては、検体から抽出したDNA及びRNAを増幅させ、そのモル比を求めることによって、検体中の細胞の生死を正確且つ迅速に判別することが可能とされる。
ところで、この第1の実験は、細菌ゲノムDNAの検出を基本原理とするものであるため、細菌が死菌であっても菌体にゲノムDNAを保持している限り陽性、すなわち生菌と判定してしまう危険性を内在している。
そこで、以下に示す第2の実験及び第3の実験では、より正確に検体中の細胞・細菌の生死を判別する方法について説明する。
第2の実験
第2の実験では、検体から抽出されたDNA及びRNAを、それぞれリアルタイムPCR法及びリアルタイム逆転写PCR(RT−PCR)法を用いて増幅させ、PCRサイクル数と増幅DNA量若しくは増幅RNA量との関係から得られるCt(サイクルスレッショード)値を比較することによって細胞・細菌の生死を判別する。
また、この第2の実験では、細胞・細菌から抽出されたゲノムDNAが部位により不安定である性質を利用し、PCR法などによって核酸増幅することによっても、細菌の生死を判別する。
すなわち、PCR法は、DNAの特定の標的部位を増幅する技術であるが、PCR標的部位に連続性のあることが必須条件となっている。したがって、この部位に不連続性がある場合や、DNAの不安定性から極端な立体構造の変化を呈した場合には、PCRは完遂されず標的部位も増幅されない。特に、細胞死という劇的な生体変化が菌体内に起こった際には、標的部位に変化が起きる確率が非常に高くなる。つまり、安定性の高い標的部位は、生菌、死菌共に増幅されるのに対して、不安定性の高い標的部位は、生菌では増幅されるが死菌では増幅されないことを利用して、細菌・細胞の生死を判定することもできる。
なお、DNA不安定部位を利用した方法では、PCR法を用いることが有用であるが、PCR法に限定されるものでなく、あらゆる核酸増幅法が利用できる。さらには、核酸増幅有無の制限を受けるものでもない。細胞・細菌から抽出されたDNA量及びRNA量が多ければ、増幅することなく直接DNA/RNAの量比から細胞・細菌の生死判別を行うことができる。
以下、第2の実験の具体的な実施例について説明するが、この実施例に限定されるものではないことは勿論である。
実施例3
実施例3では、リアルタイムPCR法及びリアルタイムRT−PCR法を利用して求めた相対的DNA量と相対的RNA量とを比較することによって細胞の生死を判別した。
ここで、リアルタイムPCR法は、2本鎖DNAに取り込まれ蛍光を発する蛍光発色物質を反応液中に存在させることにより、PCRのサイクル経過と共に増幅する2本鎖DNA(PCR産物)を蛍光強度の増強として捉えてPCR産物の増加を知る方法である。
PCR産物は、元の鋳型DNAが多ければ早期のPCRサイクルで増加し、蛍光強度も増強される。したがって、一定の蛍光強度を予め定めておき、この強度に到達するまでのPCRサイクル数をCt値とすると、鋳型DNAが多いか又はPCR効率の高い場合は、早期のPCRサイクル数でこの蛍光強度に到達するためにCt値が低くなり、鋳型DNAが少ないか又はPCR効率の低い場合は、相当のPCRサイクル数でこの蛍光強度に到達するためにCt値が高くなる。
そして、このCt値を予め既知量DNAを用いて求めたCt値と比較し、そのCt値に対応するDNA量を相対的DNA量とする。RNAについても同様である。
実施例3において、検体からの細菌由来のゲノムDNA及びtotal RNAの抽出は、採取した検体にISOGEN(日本ジーン株式会社製)を添加し、常法通りの操作で採取することによって行った。
また、リアルタイムPCR法による相対的DNAモル数の推定は、以下の表1に示すPCR反応液を準備して行った。
Figure 2002052034
この表1に示すPCR反応液をポルテックスにて攪拌した後、波長365nmの紫外線を1cmの距離から4分間照射した。
次に、上述した第1のプライマ(10pモル/μl)及び第2のプライマ(10pモル/μl)を各3μlと、蛍光インターカレータである1×SyGreen(サイバーグリーン)5μlとを加え、合計50μlのPCR反応試薬とした後、ポルテックスで攪拌してPCR反応試薬とした。
上記PCR反応試薬中に、抽出した細菌DNA2μgを添加し、98℃/1秒、55℃/10秒、72℃/10秒のプロトコールでGeneAmp5700(アプライドバイオ社製)を使用してPCRを40サイクル行った。そして、PCR増幅曲線のプラトー値とベースライン値との中点、或いはPCR増殖曲線の直線部分の中点における蛍光強度を定め、この蛍光強度に達するサイクル数をCt値とした。このCt値を予め作製した既知量DNA−Ct値の検量曲線に当てはめ、相対的DNA量を算定した。
一方、抽出したRNAについては、定量後、その2μgを逆転写反応に使用した。なお、反応は、You−prime first strand beads(Amersham pharmacia biotech社製)を使用して行った。また、逆転写プライマは、random hexamerを使用した。
そして、このPCR反応試薬中に、反応の終了した逆転写産物5μlを添加し、98℃/1秒、55℃/10秒、72℃/10秒のプロトコールでGeneAmp5700(アプライドバイオ社製)を使用してPCRを40サイクル行った。そして、上述と同様に、Ctを求め、これを予め作製した検量曲線に当てはめて相対的RNA量を算定した。
ここで、大腸菌を使用してリアルタイムPCR及びリアルタイム逆転写PCRを行い、そのCt値から算定した相対的DNA量及び相対的RNA量の結果を以下の表2に示す。
Figure 2002052034
表2に示すように、生菌と比較して死菌では相対的RNA量/相対的DNA量の比が小さくなり、両者が混在している場合には、その中間程度の値となる。したがって、予め実験的に基準値を定めておくことにより、細菌の生死判定を正確かつ容易に行うことができる。
実施例4
実施例4では、細菌DNAの安定部分及び不安定部分をPCRで増幅させ、増幅産物をゲル電気泳動することによって細菌の生死を判別した。先ず、以下の表3に示す処方のPCR反応液を用意した。
Figure 2002052034
表3において、検体DNA溶液については、DNAを1μg含有する量が用いられ、xμl+yμl=35.5μlとなるように滅菌蒸留水を加えて調製した。
DNA安定部分検出用プライマとしては、上述の第1のプライマ及び第2のプライマを使用し、DNA不安定部分検出用プライマとしては、第3のプライマ(5’−AACTGGAGGAAGGTGGGGAY−3’)及び第4のプライマ(5’−AGGAGGTGATCCAACCGCA−3’)を使用した。
PCRは、98℃/1秒、55℃/10秒、72℃/10秒のプロトコールで30サイクル行った。そして、PCR終了後のPCR産物は、その10μlを定法に従い1%アガロースゲルで100V、30分間電気泳動し、エチジウムブロマイドでPCR産物を染色後、紫外線照射によってバンドを確認した。
ここで、DNA安定部分検出用プライマでは、生菌、死菌共にPCRで増幅されるためにPCR産物が確認されるが、DNA不安定部分検出用プライマでは、生菌のPCR産物のみ確認され、死菌のPCR産物は確認されないか極端に低い増幅が確認される。
生菌、死菌の混合割合の異なる8群について検討した結果を図1に示す。なお、各群における生菌と死菌との比率は、以下の表4の通りであり、図1中、アルファベットは、表4の検体群に対応する。死菌は、121℃のオートクレーブで20分間熱処理することによって作製した。
Figure 2002052034
図1に示すように、DNA安定部分では全ての検体において増幅が観察されるが、DNA不安定部分では検体中の菌が全て死菌である場合(検体A)、又は過半数が死菌である場合(検体B−D)にはPCRで増幅されていないことが判る。また、生菌の一部に死菌が混入している場合(検体E−G)には低い増幅のみが観察される。しかし、生菌の場合(検体H)ではDNA不安定部分でもPCRは正常に増幅されて検出される。
実施例5
実施例5では、実施例4と同様にISOGEN(日本ジーン株式会社製)を用いて検体から細菌由来のDNAを抽出し、リアルタイムPCR法によって生菌と死菌の判別を行った。
ここで、実施例5において、リアルタイムPCRは、以下の表5に示す処方のPCR反応液を用いて行った。
Figure 2002052034
表5において、検体DNA溶液については、DNAを1μg含有する量が用いられ、xμl+yμl=35.5μlとなるように滅菌蒸留水を加えて調整した。
DNA安定部分検出用プライマとしては、実施例3で使用した第1のプライマ及び第2のプライマを使用し、DNA不安定部分検出用プライマとしては、実施例4で使用した第3のプライマ及び第4のプライマを使用した。
PCRは、98℃/1秒、55℃/10秒、72℃/10秒のプロトコールで40サイクル行った。また、リアルタイムPCRは、GeneAmp5700(アプライドバイオ社製)を使用して行った。
ここで、DNA安定部分検出用プライマでは、生菌、死菌共にPCRで増幅されるためにPCR産物を確認することができるのに対して、DNA不安定部分検出用プライマでは、生菌のPCR産物のみ確認され、死菌のPCR産物は確認されないか極端に低い増幅が確認される。
つまり、DNA安定部分検出用プライマでのPCR産物では、生菌、死菌共にほぼ一定のCt値を示すが、DNA不安定部分検出用プライマでのそれは、死菌のCt値が生菌に比べて高い値となるか又はPCR反応が起こらないので、生菌と死菌とを判別することが可能となる。
実施例4と同様の8群からなる試料を用いてリアルタイムPCRを行い、Ct値を求めた結果を以下の表6に示す。
Figure 2002052034
表6に示すように、DNA安定部分検出用プライマの場合には、8群の試料のCt値がほぼ一定であるのに対して、DNA不安定部分検出用プライマの場合には、全て死菌の場合(検体A)や生菌に死菌が混入している場合(検体B−G)は、全て生菌の場合(検体H)に比べてCt値が高くなることが確認された。これにより、予め基準Ct値を検討することによって、生死判別のみならず、死菌混入の程度を推測することが可能となる。
実施例6
実施例6では、紫外線照射、次亜塩素酸ソーダ、強酸、強アルカリで処理してDNAがランダムに破壊される環境下に置いた試料について実施例5と同様の試験を行った。この結果、Ct値は全て高い値を示した。これは、このような環境下ではDNA安定部分も破壊されて死菌となるためと推測された。
実施例7
実施例7では、2本鎖DNAの温度解離変化を検出するTm値或いはTmパターンを利用して、細胞・細菌の生死判別を行った。
先ず、AGPC法(酸性グアニジン・フェノール・クロロフォルム法)などの定法に従い、検体から細菌・細菌由来のDNAを抽出して、以下の表7に示す処方の反応液にてリアルタイムPCRを行った。
Figure 2002052034
表7において、検体DNA溶液については、DNAを1μg含有する量が用いられ、xμl+yμl=35.5μlとなるように滅菌蒸留水を加えて調整した。
プライマは、実施例4で使用した第3のプライマ及び第4のプライマを使用し、リアルタイム定量PCRは、GeneAmp5700(アプライドバイオ社製)を使用して98℃/1秒、55℃/10秒、72℃/10秒のプロトコールで40サイクル行った
PCR終了後、65℃から95℃までの温度における2本鎖DNAのTm値或いはTmパターンを測定して変化を調べた。
大腸菌死菌100%と大腸菌生菌100%との場合について、各10回測定したTm値を以下の表8に示す。なお、死菌は、121℃のオートクレーブで20分間処理して作製した。
Figure 2002052034
表8に示すように、検体中の菌が死菌である場合、DNAの不安定部分に変異が生じるため、そのPCR産物のTm値或いはTmパターンは、生菌のPCR産物のTm値或いはTmパターンと異なる値やパターンになる。そこで、このTm値或いはTmパターンを調べることによって生菌と死菌とを区別することができる。
また、このTm値やDNAの高次構造に由来するTmパターンは、各菌種に特異なものであり、菌種毎に生菌、死菌の解析を行っておくことによって、容易に菌種毎の生死判別が可能となる。
以上説明したように、第2の実験においては、検体から抽出したDNA及びRNAを増幅後、定量して両者の量比、Ct値又はTm値或いはTmパターンに基づいて、検体中の細胞の生死を正確且つ迅速に判別することが可能とされる。
第3の実験
第3の実験では、時間差をおいて検体からDNA及びRNAを複数回抽出し、夫々リアルタイムPCR法及びリアルタイム逆転写PCR法で増幅させ、PCRサイクル数と増幅DNA量若しくは増幅RNA量との関係から得られるCt値を比較することによって細胞の生死を判別する。
つまり、時間経過後にDNA量若しくはRNA量の増加を認めれば生細胞・生菌であり、DNA量若しくはRNA量に変化を認めなければ死細胞・死菌であると推定される。
また、この判定にリアルタイムPCR法等を用いた場合、Ct値が時間経過後に小さくなる場合(DNA量若しくはRNA量の増加を意味する。)は、生細胞・生菌であり、CT値が時間経過後に変化しない場合は、死細胞・死菌であると推定することができる。特に、リアルタイムPCR法等を用いた核酸定量法では、プラトーに達する前のCt値を判定基準として用いることができるため、微少なDNA量若しくはRNA量の変化をも捉えることができ、検体採取間の時間差が短時間であっても生菌・死菌の判別が可能である。
なお、検体採取間の時間差をさらに短時間とするため、細胞・細菌に最適条件、例えば温度・湿度・酸素濃度・培地供給などを供することが有効である。
また、短時間での微少なDNA若しくはRNAの変化を捉えるためには、検体から核酸抽出を行わず、検体を直接リアルタイムPCR法に供することがより有効である。例えば、Ampdirect(島津製作所製)に代表される直接PCRバッファなどの併用が可能である。これにより、迅速性、効率性が改善され、条件によっては60分前後で細胞・細菌の生死判別が可能となる。
以下、第3の実験の具体的な実施例について説明するが、この実施例に限定されるものではないことは勿論である。
実施例8
実施例8では、リアルタイムPCR法を利用し、時間差をおいて検体を複数回採取し、DNA量を比較することによって細胞の生死を判別した。
ここで、検体は、生理食塩水中に10/mlの濃度で大腸菌を混入させたものを用いた。また、比較のため生菌、死菌(オートクレーブ滅菌)の両者について、同時に同条件で操作を行った。
リアルタイムPCR法によるDNA量の比較は、以下の表9に示すPCR反応液を準備して行った。
Figure 2002052034
表9に示したPCR反応液をボルテックスにて攪拌した後、検体5μlを加え、合計55μlのPCR反応試薬としてボルテックスで再度攪拌し、反応液とした。
また、リアルタイムPCRは、GeneAmp5700(アプライドバイオ社製)を用いて測定を行った。プライマは、上述の第1のプライマ及び第2のプライマを使用した。
PCRは、98℃/1秒、55℃/10秒、72℃/10秒のプロトコールで40サイクル行い、Ct値を予め作製した検量曲線に当てはめて、評価DNA量を算定した。
そして、以下の表10に示す検体を用いて生菌・死菌の判別を行った。菌の濃度は、何れも10/mlであり、菌種は大腸菌を用いた。また、培地はLB培地を用い、培養条件は37℃加温、100rpm/min振蕩で行った。
Figure 2002052034
この表10に示す各検体から5μlを採取し、表9記載の計50μlのPCR反応液に混ぜてリアルタイムPCRを行い、結果をCt値で評価した。以下の表11に詳細を記す。
Figure 2002052034
表11に示すように、生菌の場合は、時間差をおいて増殖させた場合、DNA量が増加するためCt値は小さくなる。これに対して死菌の場合は、時間差をおいても増殖しないためDNA量の変化はなく、Ct値もほぼ一定の値をとる。
なお、検体あるいは標的細胞・細菌によっては、培地の添加が不要な場合、又は加温や振蕩が不要な場合もある。また、本実施例では180分の時間差が有用であったが、これも対象により一定ではない。
以上説明したように、第3の実験においては、検体を適当な条件下におき、時間差をおいて検体を複数回採取し、検体中のDNA若しくはRNAを定量してその変化を比較することによって、細胞・細菌の生死判定を正確かつ迅速に行うことができる。
ところで、上述した第1の実験乃至第3の実験では、検体となる細胞及び/又は細菌の核酸を増幅させることが不可欠であり、この核酸増幅を効率よく迅速に行うことによって、検体の生死をより正確且つ迅速に判別することが可能となる。
そこで、以下の第4の実験では、細胞及び/又は細菌の核酸を直接且つ迅速に効率よく増幅させる核酸増幅方法について説明する。
第4の実験
第4の実験では、採取した細胞・細菌の核酸が露出されるように検体を破壊し、該破壊産物を濾過して核酸増幅酵素反応阻害物質及び物理光学的反応阻害物質を除去若しくは制御し、得られた核酸増幅反応液を用いて核酸増幅することによって検体の細菌遺伝子を検出する。
ここで、検体から細胞・細菌の核酸を露出させるための破壊方法としては、熱処理、浸透圧処理、超音波処理若しくは電気的処理等の物理的処理方法や、界面活性剤処理、酵素処理若しくはウイルス感染溶菌処理等の化学的処理方法があり、検査する細胞・細菌に有効且つ強力な方法を用いることができる。
また、破壊産物から核酸増幅酵素反応阻害物質及び物理光学的反応阻害物質を濾過して取り除く方法としては、カラム若しくはフイルタを用いる方法や磁気吸着する方法などがあり、何れの方法を用いてもよい。
破壊産物が通過する濾過層には、イオン性不純物を吸着する性質のあるポリアミンを添加することにより、核酸増幅反応液の純度を向上させ、PCR法等の核酸増幅酵素反応を円滑にすることができる。
ここで、ポリアミンとは、分子の主鎖に−NH−基を持つオリゴマ又はポリマ、多価アミンのことであり、濾過層に添加されて使用されるポリアミンは、検体の種類によって最適のものを利用することができる。
破壊され、反応阻害物質を取り除いて濾取された検体試料を増幅する方法としては、PCR法及びこれを応用したリアルタイム定量PCR法が利用できるが、これらに限定されるものではない。
以下、第4の実験の具体的な実施例について説明するが、この実施例に限定されるものではないことは勿論である。
実施例9
実施例9では、図2に示す核酸増幅装置を用いて、細菌の遺伝子検出を行った。図2に示すように、核酸増幅装置は、破壊チャンバ1と、濾過チャンバ2と、濾過層3と、PCR反応チャンバ4と、PCR反応液溜5とにより構成される。なお、図2は、核酸増幅装置の概念構成を示したものであり、各チャンバの形状、構成がこの例に限定されるものでないことは、勿論である。
先ず、1%のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)と3%の界面活性剤Tween20とをTrisEDTA(TE)緩衝液に溶解した後、pHを8.0に調整して細胞溶解液を作製した。
この細胞溶解液50μlと検体10μl(大腸菌10個/10μl Milk)とを混合して破壊チャンバ1に入れ、室温で2分間静置後、7000Gで10分間遠心分離して沈殿を除去し、上清をpH8.0に調整した。
そして、上清は、濾過チャンバ2を通過してPCR反応チャンバ4に落とされた。ここで、濾過チャンバ2は、濾過層3を有し、この濾過層3は、デキストランを担体とする粉体のイオン交換体であるSephadex G−50(Pharmacia社製)が含浸された孔径0.22μmのニトロセルロース製の膜が3重に重ねられた濾材からなる。
PCR反応チャンバ4には、以下の表12に示す処方のPCR反応液が充填されており、濾過された濾液と混和されてPCR反応が行われた。PCRサイクルは、98℃/1秒、55℃/10秒、72℃/10秒のプロトコールで30サイクル行った。ここで、プライマとしては、上述の第1のプライマ及び第2のプライマを使用した。
なお、高感度、高速PCRを行うためのDNAポリメラーゼとしては、TAKARA z−TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造株式会社製)が、また細菌からDNAを抽出することなくPCRを可能とするPCR緩衝液としては、Ampdirect(株式会社島津製作所製)が適しているが、それらに限定されるものではない。
Figure 2002052034
通常の方法でPCR反応を実施した場合と本実施例の方法でPCR反応を実施した場合について、PCR終了後のPCR産物10μlを定法に従い1%アガロースゲルで100V、30分電気泳動して、エチジウムブロマイドでPCR産物を染色後、紫外線照射によって細菌遺伝子を確認した。
コントロールとして大腸菌を含まない例(サンプルA)、通常のPCR法による例(サンプルB,C)、及び本発明のPCR法による例(サンプルD,E)の電気泳動写真を図3に示す。また、サンプル処方と図3の電気泳動写真で確認された結果を以下の表13に示す。
Figure 2002052034
図3及び表13に示すように、通常の方法でPCR反応を実施したサンプルB、サンプルCの場合には、30サイクルという条件下ではPCRの効率が悪く、細菌遺伝子が検出されなかった。
また、上述した細胞溶解液を添加して破壊チャンバ1にて細胞・細菌の細胞壁、細胞膜及び核膜等を破壊して核酸を露出させた後、PCR反応を行ったサンプルEの場合には、細菌遺伝子の検出が確認されたが、細胞溶解液を添加していないサンプルDでは細菌遺伝子は検出されなかった。
このように、細胞溶解とフィルタ濾過を組み合わせることによって、効率よく細菌遺伝子を検出することができた。
以上説明したように、第4の実験においては、破壊チャンバにて検体の核酸を露出させ、濾過チャンバにて反応阻害物質を除去することによって、効率よく検体の核酸を増幅させ、遺伝子を検出することができる。
さらに、この第4の実験では、検体由来の物理光学的反応阻害物が濾過チャンバで除去されているため、PCR反応液にサイバーグリーンなどの蛍光インターカレータを含有させ、リアルタイム定量PCR法と組み合わせて細菌の検出を行う場合にも、正確且つ確実に検出することができる。
例えばPCR法によって核酸を増幅させる場合、薬剤耐性遺伝子プライマを設計することにより、その検体に最適な抗生物質の推定が可能となり、また、毒素産生遺伝子検出用プライマを設計することにより、O157のような毒素産生菌についても、検出した菌を培地で培養することなく、迅速に検出することができる。また、目的に応じたプライマを用いることにより、ペストなど、診察した経験が無く病院外来で診断がつかない疾病についても的確に診断を下すことができる。
また、PCRで増幅した遺伝子の塩基配列を、塩基配列決定法又はDNAチップを用いて検査することによって、検出された細菌の詳細な種類を正確且つ迅速に同定することができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
産業上の利用可能性
上述したような本発明を用いることにより、細胞及び/又は細菌の生死を正確に且つ迅速に判別することが可能となり、例えば、食品に含まれる細菌の生死を始め、抗生物質等で治療中の効果判定に用いることができる。また、ヒト等の多細胞生物の生細胞、死細胞の判定を容易に行うこともできる。
また、上述したような本発明を用いることにより、細胞及び/又は細菌の核酸を直接且つ迅速に効率よく増幅させ、遺伝子を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、生菌、死菌の混合割合の異なる検体A乃至検体Hについて、DNA安定部分及びDNA不安定部分の増幅後における電気泳動パターンを説明する図である。
図2は、破壊チャンバ、濾過チャンバ、PCR反応チャンバ、PCR反応液溜からなる本発明の説明に供する核酸増幅装置の概念構成を説明する図である。
図3は、PCR反応後のPCR産物をアガロースゲルで電気泳動した電気泳動パターンを説明する図である。

Claims (15)

  1. 検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、
    上記検体からDNA及びRNAを抽出してその少なくとも一部を定量し、上記検体内における上記DNA及びRNAの量比を比較することによって生死を判別すること
    を特徴とする生死判別方法。
  2. 検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、
    上記検体からDNA及びRNAを抽出して増幅させ、増幅産物を定量して上記検体内における上記DNA及びRNAの量比を比較することによって生死を判別すること
    を特徴とする生死判別方法。
  3. 上記DNA及びRNAの増幅は、それぞれ定量PCR法及び定量逆転写PCR法によって行うことを特徴とする請求の範囲第2項記載の生死判別方法。
  4. 検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、
    上記検体からDNA及びRNAを抽出し、上記DNA及びRNAをそれぞれリアルタイムPCR法、リアルタイム逆転写PCR法で増幅し、得られた相対的DNA量及び相対的RNA量の比に基づいて生死を判別すること
    を特徴とする生死判別方法。
  5. 上記相対的DNA量及び相対的RNA量は、PCRサイクル数と増幅DNA量若しくは増幅RNA量との関係から得られるサイクルスレッショード値に基づいて求められることを特徴とする請求の範囲第4項記載の生死判別方法。
  6. 検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、
    上記検体からDNAを抽出し、当該DNAの不安定部分を増幅させ、増幅産物を定量することによって生死を判別すること
    を特徴とする生死判別方法。
  7. 上記増幅産物のゲル電気泳動によって、若しくはサイクルスレッショード値を比較することによって、又は2本鎖DNAの温度解離曲線の解離温度点或いは2本鎖DNAの高次構造に由来する温度解離曲線のパターンに基づいて生死を判別することを特徴とする請求の範囲第6項記載の生死判別方法。
  8. 検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、
    上記検体から時間差をおいて等量の複数のサンプルを抽出し、
    上記複数のサンプルからDNAを抽出してリアルタイムPCR法で増幅させ、
    増幅されたDNA量を上記複数のサンプル間で比較することによって生死を判別すること
    を特徴とする生死判別方法。
  9. 上記DNA量は、PCRサイクル数と増幅DNA量との関係から得られるサイクルスレッショード値に基づいて求められることを特徴とする請求の範囲第8項記載の生死判別方法。
  10. 上記複数のサンプルは、上記検体から異なる培養時間で抽出されたものであることを特徴とする請求の範囲第8項記載の生死判別方法。
  11. 検体となる細胞及び/又は細菌の生死を判別する生死判別方法であって、
    上記検体から時間差をおいて等量の複数のサンプルを抽出し、
    上記複数のサンプルからRNAを抽出してリアルタイム逆転写PCR法で増幅させ、
    増幅されたRNA量を上記複数のサンプル間で比較することによって生死を判別すること
    を特徴とする生死判別方法。
  12. 上記RNA量は、PCRサイクル数と増幅RNA量との関係から得られるサイクルスレッショード値に基づいて求められることを特徴とする請求の範囲第11項記載の生死判別方法。
  13. 上記検体から時間差をおいて等量の複数のサンプルを抽出し、
    上記複数のサンプルからDNA若しくはRNAを抽出することなく、直接PCRバッファを用いてリアルタイムPCR法若しくはリアルタイム逆転写PCR法で上記DNA若しくはRNAを増幅させ、
    増幅されたDNA量若しくはRNA量を上記複数のサンプル間で比較することによって生死を判別すること
    を特徴とする請求の範囲第8項乃至第13項のいずれか1項記載の生死判別方法。
  14. 検体となる細胞及び/又は細菌の核酸を増幅させる核酸増幅方法であって、
    上記検体を破壊して核酸を露出させ、破壊産物を濾過して反応阻害物質を除去若しくは抑制し、核酸を増幅させることを特徴とする核酸増幅方法。
  15. 上記核酸の増幅は、PCR法又はリアルタイムPCR法によって行うことを特徴とする請求の範囲第14項記載の核酸増幅方法。
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