JP2004266176A - 強磁性ナノ粒子、ナノ粒子分散物、及びナノ粒子塗布物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る金属を還元した後、限外濾過を行って得られる強磁性ナノ粒子、該強磁性ナノ粒子が分散してなるナノ粒子分散物である。また、支持体上に塗布膜が形成されたナノ粒子塗布物であって、前記塗布膜が、前記ナノ粒子分散物を塗布することによって形成されるナノ粒子塗布物である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体に使用可能な強磁性ナノ粒子、ナノ粒子分散物、及びナノ粒子塗布物に関する。
【0002】
【従来の技術】
録音用テープ、ビデオテープ、コンピューターテープ、ディスク等として広く用いられている磁気記録媒体は年々高密度化され記録波長が短波長になる傾向にある。このような磁気記録媒体においてS/N比を上げることは重要である。強磁性体は、重量が同じ場合、粒子サイズを小さくしていった方がノイズは下がるが、強磁性粉末として一般に使っている鉄粒子は粒子サイズを小さくしていくと、熱揺らぎにより磁化を維持できなくなる現象(超常磁性)が生じる。従って、従来用いられている鉄粒子ではノイズを下げるには限界がある。
【0003】
そこで、50nm以下の強磁性ナノ粒子を用いることが提案されている。まず1元系では非特許文献1に、Co、Fe、Niの強磁性ナノ粒子が記載され、非特許文献2にCo強磁性ナノ粒子が記載されているが、保磁力Hcが47.76kA/m(600Oe)程度であり、磁気記録媒体に必要とされる保磁力Hcが95.5kA/m(1200Oe)以上の強磁性ナノ粒子を得ることはできていない。
【0004】
特許文献1では、遷移金属から金属前駆体溶液を形成するステップ、前記金属前駆体溶液を界面活性剤溶液に加えるステップ、凝集剤を加えて永久凝集を起こすことなくナノ粒子を溶液から析出させるステップ、およびハイドロカーボン溶媒を加えて前記ナノ粒子の再結合または再コロイド化を行うステップを含む、ナノ粒子を形成する方法で強磁性ナノ粒子を得ている。
【0005】
また、特許文献2では元素Co、Fe、Ni、Sm、Nd、Pr、Pt、Gd、前記元素の金属間化合物、前記元素の二元合金、前記元素の三元合金、Fe以外の少なくとも1種の前記元素をさらに含むFe酸化物、バリウム・フェライト、およびストロンチウム・フェライトからなる群から選択された磁性材料を含む粒子が開示されている。特許文献3、非特許文献3では、特許文献1同様、金属前駆体溶液を界面活性剤溶液に加え粒子形成する方法を開示している。
【0006】
非特許文献3では強磁性FePtナノ粒子の製法が開示されている。界面活性剤だけで保護されたナノ粒子を支持体表面に静置沈降させることで強磁性体ナノ粒子塗布物を得ている。この様な静置沈降させる方法は時間がかかり工業的に好ましくない。
【0007】
非特許文献4ではバインダー中で磁性ナノ粒子を合成することが示唆されている。また、バインダー中で磁性ナノ粒子を合成しただけでは、磁気記録媒体に必要とされる保磁力Hcが95.5kA/m(1200Oe)以上の強磁性ナノ粒子を得ることはできない。
【0008】
一方、強磁性ナノ粒子を液相中で還元剤を用いて合成する方法では、生じた副生成物を除去する必要があり、従来法では、貧溶媒を加え、ナノ粒子を凝集させた後、遠心分離機を用い沈降させ、上澄みに含まれる副生成物である塩類を除去するという手法であった。しかし、この手法では、凝集したナノ粒子を再分散する必要があること、及び遠心分離機を用いることから工業的製造適性がないものとなっていた。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−54012号公報
【特許文献2】
米国特許第6162532号明細書(特開2000−48340号公報)
【特許文献3】
米国特許第6162532号明細書
【非特許文献1】
J Appl Phys VOL.80,NO.1 1996 p.103−108
【非特許文献2】
J Appl Phys VOL.79,NO.8Pt 2A 1996 p.5312−5314
【非特許文献3】
Science Vol287,1989(2000)
【非特許文献4】
Studies in Surface and Catalysis 132,243(2001)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の従来の問題点に鑑みなされたものであり以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明の目的は、工業的塗布適性に優れた強磁性ナノ粒子、ナノ粒子分散物、及びナノ粒子塗布物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
<1> CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る少なくとも2種の金属を還元した後、限外濾過を行って得られることを特徴とする強磁性ナノ粒子である。
<2> CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る金属を還元した後、限外濾過を行って得られることを特徴とするナノ粒子分散物である。
<3> 支持体上に塗布膜が形成されたナノ粒子塗布物であって、前記塗布膜が、前記<2>に記載のナノ粒子分散物を塗布することによって形成されることを特徴とするナノ粒子塗布物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の強磁性ナノ粒子、ナノ粒子分散物、及びナノ粒子塗布物について説明する。
<強磁性ナノ粒子>
本発明の強磁性ナノ粒子は、CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る金属を還元した後、限外濾過を行って得られることを特徴としている。本発明の強磁性ナノ粒子は、限外濾過によって得られるため、ナノ粒子の収率が、軽凝集を起こさせ沈降させる方法、あるいは遠心分離法より高くなる点において優れている。軽凝集あるいは遠心分離法では再分散できなくなる場合があるからである。
【0013】
強磁性ナノ粒子を形成するには、液相法、気相法、メカノケミカルに合成する方法があるが、本発明においては量産性に優れる液相法で合成することが好ましい。液相法では溶媒は有機溶剤でも水でもよく、また有機溶剤と水の混合液を用いてもよい。好ましい溶媒は水、アルコール、ポリアルコールであり、アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等を用いることができ、ポリアルコールとしてはエチレングリコール、グリセリンを用いることができる。
【0014】
金属を還元析出させる際に、本発明においては、吸着剤としてポリマーを存在させることが好ましい。このポリマーは粒子を形成するに際して保護コロイドの役割と、塗布物を得る際の結合剤の役割を果たし、ナノ粒子の静置沈降によらずナノ粒子含有層を形成する。本発明において好ましく用いることができるポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリN−ビニル−2ピロリドン(PVP)、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アミド、等が挙げられ、特に好ましくはPVPである。ポリマーの重量平均分子量は2万〜6万が好ましく、より好ましくは3万〜5万である。ポリマーの量は強磁性ナノ粒子の重量の0.1〜10倍であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5倍の重量である。
【0015】
本発明においては、CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る金属のうちの少なくとも1種が、Co、Fe、Ni、Mn、Cr、Pr、Pt、Au、Ag、Ir、及びRhからなる群より選択される1種であることが好ましい。また、前記金属のうちの少なくとも2種が、貴な金属と卑な金属とからなることが好ましい。
【0016】
本発明においては、卑な金属を先に析出させても、貴な金属を先に析出させても、あるいは同時に析出させてもよい。同時に析出させるには還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元剤を用いればよい。液中で合金を還元析出させる際、粒子サイズを一定にするために本発明においては貴な金属を先に析出させその後、貴な金属とともにあるいは単独で卑な金属を析出させることが好ましい。卑な金属を析出させるには還元剤を用いても、卑な金属の0価の化合物を添加してもよい。0価の化合物の例として鉄カルボニルがあげられる。還元剤を用いて貴な金属と卑な金属をこの順に析出させるには、還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より貴な還元剤を用いた後、−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元電位を持つ還元剤を用いることが好ましい。
【0017】
還元電位は系のpHに依存するが、還元電位が−0.2V(vs.N.H.E)より貴な還元剤としては、アルコール類、H2、HCHOが好ましく用いられる。−0.2V(vs.N.H.E)より卑な還元剤としては、S2O6 2−、H2PO2 −、BH4 −、N2H5 +、H2PO3 −、グリコール類(例えば、エチレングリコール)が好ましく用いられる。
【0018】
貴な金属としては、Pt、Pd、Rh等が好ましく用いることができ、H2PtCl6・6H2O、Pt(CH3COCHCOCH3)2、RhCl3・3H2O、Pd(OCOCH3)2、PdCl2、Pd(CH3COCHCOCH3)2等を溶媒に溶解して用いることができる。溶液の濃度は0.1〜1000μmol/mlが好ましく、より好ましくは0.1〜100μmol/mlである。
【0019】
また、卑な金属としてはCo、Fe、Ni、Crを好ましく用いることができ、特に好ましくは、Fe、Coである。このような金属は、FeSO4・7H2O、NiSO4・7H2O、CoCl2・6H2O、Co(OCOCH3)2・4H2O等を溶媒に溶解して用いることができる。溶液の濃度は0.1〜1000μmol/mlがよく、好ましくは0.1〜100μmol/mlである。
【0020】
本発明においては、2元系合金すなわちCuAu型及びCu3Au型のいずれかで、強磁性規則合金であることが好ましい。CuAu型強磁性規則合金として好ましく用いられるものは、FeNi、FePd、FePt、CoPt等が挙げられ、中でも、FePd、FePt、CoPtが好ましく、FePtが特に好ましい。
【0021】
Cu3Au型強磁性規則合金として好ましく用いられるものは、Ni3Fe、FePd3、Fe3Pt、FePt3、CoPt3、Ni3Pt、CrPt3、Ni3Mnが挙げられ、中でも、FePd3、FePt3、CoPt3、Fe3Ptが好ましい。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
貴な金属を析出させる還元反応は、必要な強磁性ナノ粒子および溶媒の沸点により80℃〜360℃の範囲の温度で行うことができるが、80℃〜240℃がより好ましい。温度がこの温度範囲より低いと粒子が成長せず、温度がこの範囲より高いと粒子は制御されずに成長し、望ましくない副産物の生成が増加することがある。
また、卑な金属を析出させる還元反応における温度は、特に限定されることなく、室温で行うことができる。ただし、卑な金属の0価の化合物を用いる場合の温度は、前記貴な金属を析出させる際の温度と同等である。
また、反応は強磁性ナノ粒子の酸化を防止するために不活性ガス中で行うことが望ましい。不活性ガスとして好ましく用いられるのはHe、Ar、N2等である。
【0023】
溶液から作製した強磁性ナノ粒子は不規則相であるときは、規則相を得るためにアニール処理(熱処理)をする必要がある。アニール温度は示差熱分析(DTA)を用い規則不規則変態点を求めその温度より上の温度で行うことが必要であり、時間は1min〜24hが好ましく、より好ましくは1min〜30minである。
【0024】
相変態を促進するためにはアニール前に強磁性ナノ粒子を酸化し、非酸化性雰囲気、特に還元性雰囲気でアニールすることで酸素欠陥を導入し、原子の拡散を容易にすることが有効である。非酸化性雰囲気としては、たとえば、N2、Ar、He、Neなどが挙げられる。還元性雰囲気としては、例えばメタン、エタン、H2等が挙げられる。防爆の観点からは還元性雰囲気のガスと非酸化性雰囲気のガスとの混合ガスを好ましく用いることができる。温度としては、具体的には3000〜600℃であり、好ましくは300〜500℃である。
【0025】
相変態を促進するためには、加圧アニールにより、応力誘起の相変態を起こす方法も有効である。加圧における圧力は、具体的には2026〜10133hPa(2〜10気圧)が好ましく、より好ましくは2026〜5065hPa(2〜5気圧)である。温度は150〜450℃が好ましく、より好ましくは200〜350℃である。最高温度での保持時間1〜60分が好ましく、より好ましくは1〜30分である。
【0026】
還元性雰囲気下で加圧アニールを行うことは両者の相乗効果を奏するという観点から好ましい。しかし、還元性のガスを高圧下で充填し高温で処理することは安全対策を要し、工業的には必ずしも有利ではない。そこで、還元性雰囲気でアニールする酸素欠陥を導入した後に、非酸化性雰囲気下で加圧アニールすることが両者の効果を合わせて発揮する点において好ましい。
【0027】
強磁性ナノ粒子の保磁力は95.5〜398kA/m(1200〜5000Oe)が好ましく、磁気記録媒体に適用した場合、記録ヘッドが対応できるという観点から95.5〜278.6kA/m(1200〜3500Oe)が好ましい。強磁性ナノ粒子の粒径は1〜100nmが好ましく、より好ましくは3〜20nmであり、さらに好ましくは3〜10nmである。粒子サイズを大きくする方法としては種晶法が有効である。磁気記録媒体として用いるには強磁性ナノ粒子を最密充填することが記録容量を高くする上で好ましく、そのためには、本発明の強磁性ナノ粒子のサイズの標準偏差は10%未満が好ましく、より好ましくは5%以下である。
【0028】
粒子サイズが小さすぎると超常磁性となり好ましくない。そこで粒子サイズを大きくするために種晶法を用いることが好ましい。その際、粒子を構成する金属より貴な金属を析出させるケースが出てくる。この時、粒子の酸化が懸念され、予め粒子を水素化処理することが好ましい。
【0029】
強磁性ナノ粒子の最外層は酸化防止の観点から貴な金属にすることが好ましいが、凝集しやすいため、本発明では貴な金属と卑な金属の合金であることが好ましい。
【0030】
強磁性ナノ粒子を合成後に溶液から塩類を除くことは、粒子の分散安定性を向上させる意味から好ましい。脱塩にはアルコールを過剰に加え、軽凝集を起こし、自然沈降あるいは遠心沈降させ、塩類を上澄みとともに除去する方法がある。しかし、自然沈降では長時間を要し、遠心沈降では凝集したものを再分散することが困難であった。従って、本発明においては、限外濾過法を採用している。
【0031】
限外濾過に用いられるメンブレンフィルターの素材としては、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース類、等の有機膜やアルミナ、シリカ、酸化チタン、ジルコニアを主成分としたセラミック膜や合金類を燒結した金属膜等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、モジュールの形態としては、有機膜では中空系やチューブラー型、セラミック膜や金属膜ではチューブラー型やマルチルーメン型が好ましく用いられる。本発明においては、原液を濾過膜のモジュールに循環させて流し、液の一部を濾液として取り出すクロスフロー方式が好適に用いられる。
【0032】
本発明において、原液を濾過膜モジュールに流す速度としては、濾過膜に対し原水の流速が0.2m/秒以上になるようにすることが好ましい。原水の流速が0.2m/秒未満では、濾過膜が閉塞したり、濾過流量の低下が著しくなったりすることがある。また、濾過膜にかかる原水の圧力は膜の種類によって異なるが、9.8×104〜5.9×105Pa(1〜6kgf/cm2)であることが好ましい。9.8×104Pa未満では、濾過に要する時間が長くなることがあり、5.9×105Paを超えると、容器の耐圧性が問題となることがある。また、メンブレンフィルターには閉塞による濾過流量低下を防ぐため、一定時間毎に濾液側から圧力をかけて逆洗する機構を備えることも可能である。
【0033】
本発明の強磁性ナノ粒子の粒径評価には透過型電子顕微鏡(TEM)を用いることができる。強磁性ナノ粒子の結晶系を決めるにはTEMによる電子回折でもよいが、X線回折を用いた方が精度が高く好ましい。強磁性ナノ粒子の内部の組成分析には電子線を細かく絞ることができるFE−TEMにEDAXを付け評価することが好ましい。強磁性ナノ粒子の磁気的性質の評価はVSMを用いて行うことができる。
【0034】
本発明の強磁性ナノ粒子はビデオテープ、コンピューターテープ、フロッピー(R)ディスク、ハードディスクに好ましく用いることができる。また、MRAMへの適用も好ましい。
【0035】
<ナノ粒子分散物>
本発明のナノ粒子分散物は、CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る金属を還元した後、限外濾過を行って得られることを特徴としている。本発明のナノ粒子分散物は、塩類などの副生成物を除去するに際し遠心分離機を用いることなく、限外濾過によって行うため、工業的製造適性に優れている。
【0036】
本発明のナノ粒子分散物は、限外濾過を行う前に既述のポリマーとともに分散させることが好ましい。ポリマーを存在させると、前述のように、ポリマーが粒子形成の際、保護コロイドの役割を果たし、また結合剤の役割を果たすため塗布適性が高くなる。ポリマーの量は、既述の通り、強磁性ナノ粒子の重量の0.1〜10倍であることが好ましく、0.1〜5倍であることがより好ましい。
【0037】
<ナノ粒子塗布物>
本発明のナノ粒子塗布物は、支持体上に塗布膜が形成された磁性粒子塗布物であって、前記塗布膜が既述のナノ粒子分散物を塗布したことによって形成されたものである。以下、本発明のナノ粒子塗布物の製造方法について説明する。
【0038】
前述の通り、強磁性ナノ粒子を規則相とするためには、アニール処理をする必要があるが、粒子状態でアニール処理を施すと粒子の移動が起こりやすく融着が生じやすい。このため高い保磁力は得られるが粒子サイズが大きくなる欠点を有しやすい。従ってアニール処理は、ナノ粒子の凝集を防ぐ観点から、支持体上などに塗布して、塗布膜を形成した状態で行うことが好ましい。
支持体上でナノ粒子をアニールして磁性粒子とすることで、かかる磁性粒子からなる層を磁性層とした磁気記録媒体等のナノ粒子塗布物に供することができる。
【0039】
支持体としては、磁気記録媒体に使用される支持体であれば、無機物および有機物のいずれでもよい。
無機物の支持体としては、Al、Al−Mg、Mg−Al−Zn等のMg合金、ガラス、石英、カーボン、シリコン、セラミックス等が用いられる。これらの支持体は耐衝撃性に優れ、また薄型化や高速回転に適した剛性を有する。また、有機物の支持体と比較して、熱に強い特徴を有している。
【0040】
有機物の支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリオレフィン類;セルロ−ストリアセテート、ポリカ−ボネート、ポリアミド(脂肪族ポリアミドやアラミド等の芳香族ポリアミドを含む)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリベンゾオキサゾール;等を用いる事ができる。
【0041】
支持体上に塗布するに際し、ナノ粒子分散物を溶媒に溶解してナノ粒子含有液を調製する。ここで溶媒としては、ヘプタン、オクタン、デカン、等の有機溶媒を使用することができる。ナノ粒子分散物は、もともと上記溶媒(分散媒)に分散されていたため、同種の溶媒を使用することで、容易に強磁性ナノ粒子が分散したナノ粒子含有液を調製することができる。
上記のように調製したナノ粒子含有液に必要に応じて種々の添加剤を添加して、これを支持体上に塗布する。
このときの強磁性ナノ粒子の含有量は所望の濃度(0.01〜0.1mg/ml)とすることが好ましい。
【0042】
支持体に塗布する方法としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。
【0043】
アニール処理を施す際の雰囲気としては、相変態を効率良く進行させ合金の酸化を防ぐため、H2、N2、Ar、He、Ne等の非酸化性雰囲気下とすることが好ましい。
特に、酸化処理により格子上に存在する酸素を脱離させる観点から、メタン、エタン、H2等の還元性雰囲気とすることが好ましい。さらに、粒径維持の観点から、還元性雰囲気下の磁場中でアニール処理を行うことが好ましい。なお、H2雰囲気とする場合は防爆の観点から、不活性ガスを混合させることが好ましい。
また、アニール時に粒子の融着を防止するために、変態温度以下、不活性ガス中で一旦アニール処理を行い、分散剤を炭化した後、還元性雰囲気中で変態温度以上でアニール処理を行うことが好ましい。このとき、必要に応じて変態温度以下の前記アニール処理後に、ナノ粒子からなる層上にSi系の樹脂等を塗布し、変態温度以上でアニール処理を行うことが最も好ましい態様である。
【0044】
以上のようなアニール処理を施すことで、強磁性ナノ粒子が不規則相である場合、不規則相から規則相に相変態し、強磁性を有する磁性粒子が得られる。そして、支持体上に塗布膜が形成されたナノ粒子塗布物であって、その塗布膜が、既述のナノ粒子分散物を塗布したことによって形成されているナノ粒子塗布物が作製される。
【0045】
ナノ粒子塗布物における強磁性ナノ粒子は、その保磁力が95.5〜1194kA/m(1200〜15000Oe)であることが好ましく、磁気記録媒体に適用した場合、記録ヘッドが対応できることを考慮して95.5〜636.8kA/m(1200〜8000Oe)であることがより好ましい。
また、当該磁性粒子の粒径は1〜100nmであることが好ましく、3〜20nmであることがより好ましく、3〜10nmであることがさらに好ましい。
【0046】
<磁気記録媒体>
以下、本発明の強磁性ナノ粒子、ナノ粒子分散物、及びナノ粒子塗布物が好ましく用いられる磁気記録媒体の作製方法を述べる。該磁気記録媒体は、前記本発明のナノ粒子塗布物を磁性層として有し、必要に応じて他の層を有してなる。即ち、該磁気記録媒体は、支持体表面に、強磁性ナノ粒子を含有する磁性層を有し、必要に応じて磁性層と支持体との間に非磁性層が設けられる。
【0047】
形成される磁性層の厚さは、適用される磁気記録媒体の種類にもよるが、4nm〜1μmであることが好ましく、4nm〜100nmであることがより好ましい。
【0048】
前記磁気記録媒体は、磁性層のほかに必要に応じて他の層を有していてもよい。例えば、ディスクの場合、磁性層の反対側の面にさらに磁性層や非磁性層を設けることが好ましい。テープの場合、磁性層の反対側の不溶性支持体面上にバック層を設けることが好ましい。
【0049】
また、磁性層上に非常に薄い保護膜を形成することで、耐磨耗性を改善し、さらにその保護膜上に潤滑剤を塗布して滑り性を高めることによって、十分な信頼性を有する磁気記録媒体とすることができる。
【0050】
保護膜の材質としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物;窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物;炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物;グラファイト、無定型カーボンなどの炭素(カーボン);等があげられるが、特に好ましくは、一般に、ダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質の非晶質のカーボンである。
【0051】
カーボンからなるカーボン保護膜は、非常に薄い膜厚で十分な耐磨耗性を有し、摺動部材に焼き付きを生じ難いため、保護膜の材料としては好適である。
カーボン保護膜の形成方法として、ハードディスクにおいては、スパッタリング法が一般的であるが、ビデオテープ等の連続成膜を行う必要のある製品ではより成膜速度の高いプラズマCVDを用いる方法が多数提案されている。従って、これらの方法を適用することが好ましい。
中でもプラズマインジェクションCVD(PI−CVD)法は成膜速度が非常に高く、得られるカーボン保護膜も硬質かつピンホールが少ない良質な保護膜が得られると報告されている(例えば、特開昭61−130487号公報、特開昭63−279426号公報、特開平3−113824号公報等)。
【0052】
このカーボン保護膜は、ビッカース硬度で1000Kg/mm2以上であることが好ましく、2000Kg/mm2以上であることがより好ましい。また、その結晶構造はアモルファス構造であり、かつ非導電性であることが好ましい。
そして、カーボン保護膜として、ダイヤモンド状炭素(ダイヤモンドライクカーボン)膜を使用した場合、この構造はラマン光分光分析によって確認することができる。すなわち、ダイヤモンド状炭素膜を測定した場合には、1520〜1560cm−1にピークが検出されることによって確認することができる。炭素膜の構造がダイヤモンド状構造からずれてくるとラマン光分光分析により検出されるピークが上記範囲からずれるとともに、保護膜としての硬度も低下する。
【0053】
このカーボン保護膜を形成するための炭素原料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等のアルカン;エチレン、プロピレン等のアルケン;アセチレン等のアルキン;をはじめとした炭素含有化合物を用いることが好ましい。また、必要に応じてアルゴンなどのキャリアガスや膜質改善のための水素や窒素などの添加ガスを加えることができる。
【0054】
カーボン保護膜の膜厚が厚いと、電磁変換特性の悪化や磁性層に対する密着性の低下が生じ、膜厚が薄いと耐磨耗性が不足する。従って、膜厚は、2.5〜20nmとすることが好ましく、5〜10nmとすることがより好ましい。
また、この保護膜と基板となる磁性層の密着性を改善するために、あらかじめ磁性層表面を不活性ガスでエッチングしたり、酸素等の反応性ガスプラズマに曝して表面改質する事が好ましい。
【0055】
磁性層は電磁変換特性を改善するため重層構成としたり、磁性層の下に公知の非磁性下地層や中間層を有していてもよい。走行耐久性および耐食性を改善するため、既述のように、上記磁性層もしくは保護膜上に潤滑剤や防錆剤を付与することが好ましい。添加する潤滑剤としては公知の炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤などが使用できる。
【0056】
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類;ステアリン酸ブチル等のエステル類;オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類;リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類;ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類;ステアリルアミン等のアミン類;などが挙げられる。
【0057】
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。
パーフルオロポリエーテル基としては、パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)nまたはこれらの共重合体等である。
【0058】
また、炭化水素系潤滑剤のアルキル基の末端や分子内に水酸基、エステル基、カルボキシル基などの極性官能基を有する化合物が、摩擦力を低減する効果が高く好適である。
さらに、この分子量は、500〜5000、好ましくは1000〜3000である。500未満では揮発性が高く、また潤滑性が低いなることがある。また、5000を超えると、粘度が高くなるため、スライダーとディスクが吸着しやすく、走行停止やヘッドクラッシュなどを発生しやすくなることがある。
このパーフルオロポリエーテルは、具体例的には、アウジモンド社製のFOMBLIN、デュポン社製のKRYTOXなどの商品名で市販されている。
【0059】
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類;亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類;トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類;二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤;などが挙げられる。
【0060】
前記潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用される。これらの潤滑剤を磁性層もしくは保護膜上に付与する方法としては、潤滑剤を有機溶剤に溶解し、ワイヤーバー法、グラビア法、スピンコート法、ディップコート法等で塗布するか、真空蒸着法によって付着させればよい。
【0061】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体;ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体;等が挙げられる。
【0062】
既述のように、磁気記録媒体が磁気テープ等の場合は、非磁性支持体の磁性層が形成されていない面にバックコート層(バッキング層)が設けられていてもよい。バックコート層は、非磁性支持体の磁性層が形成されていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを公知の有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられる層である。
粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
また、ナノ粒子含有液の塗布面およびバックコート層が形成される面には、公知の接着剤層が設けられていてもよい。
【0063】
以上のようにして製造される磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて、好ましくは0.1〜5nm、より好ましくは1〜4nmの範囲とする。このように、極めて優れた平滑性を有する表面とすることが、高密度記録用の磁気記録媒体として好ましいからである。
このような表面を得る方法として、磁性層を形成した後にカレンダー処理を施す方法が挙げられる。また、バーニッシュ処理を施してもよい。
【0064】
得られた磁気記録媒体は、適宜、打ち抜き機で打ち抜いたり、裁断機などを使用したりして所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0065】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
(実施例1〜2、比較例1〜2)
1.強磁性ナノ粒子の作製
(1)ナノ粒子分散物1(CoPt)の調製
N2雰囲気下で以下の操作を行った。
H2PtCl6・6H2Oを蒸留水:エタノール=1:1の溶液に溶解し1.2μmol/mlの溶液を100ml得た。この溶液にポリマーとして重量平均分子量40000のPVPを0.75g溶解した後、100℃で還流した。次にCoCl2・6H2Oの12μmol/ml水溶液を10ml加えた。その後1gのNaBH4を15mlの蒸留水に溶解したものを添加した。
【0067】
(2)ナノ粒子分散物2(FePt)の調製
N2雰囲気下で以下の操作を行った。
H2PtCl6・6H2Oを0.18mmol、FeCl2・4H2Oを0.3mmol、ポリマーとして重量平均分子量40000のPVP0.2gを蒸留水:エタノール=1:1の溶液100mlに溶解した後、N2雰囲気下100℃で還流した。次にFeSO4・7H2Oの12μmol/ml水溶液を10ml加えた。その後0.07gのNaBH4を50mlの蒸留水に溶解したものを添加した。
【0068】
2.副生成物の除去
得られたナノ粒子分散物1及び2に対し、以下の(A)限外濾過法(実施例1〜2)、及び(B)遠心分離法(比較例1〜2)により、副生成物を除去した。(A)限外濾過法(実施例1〜2)
N2雰囲気下で3.9×105Pa(4kg/cm2)で加圧し、ADVANTEC社製のメンブレンフィルター(UK−10)、フィルターハウス(UHP−76K)を用い限外濾過を行った。1/3になるまで濾過した後、脱気した蒸留水を元の体積になるまで加え1/3になるまで濾過を行った。さらに脱気した蒸留水を元の体積になるまで加え1/3になるまで濾過を行った。さらにエタノールを元の体積になるまで加え、ナノ粒子の濃度が5mg/mlになるまで濾過を行い、ナノ粒子分散物を得た。
(B)遠心分離法(比較例1〜2)
N2雰囲気下、回転数10000rpmで遠心分離を行い、上澄み液を捨て、脱気した蒸留水を元の体積まで加え、再分散した後、再度遠心分離処理を行った。上澄み液を廃棄した後、エタノールを加え、ナノ粒子を5mg/ml含むナノ粒子分散物を得た。
【0069】
3.塗布
得られたナノ粒子分散物をガラス基板上に空気中でスピンコーターにより塗布した。具体的には、ナノ粒子を5mg/ml含むナノ粒子分散物を0.04ml/cm2になる量を滴下し500rpmで10秒回転させた後、4000rpmで30秒間回転し乾燥した。塗布膜が一様に形成できたかを目視により調べた。
【0070】
4.アニール処理
塗布物をH2気流中、赤外線加熱炉で50℃/minで500℃まで加熱し30min間保持した。その後、50℃/minで降温した。
【0071】
5.ナノ粒子であることの確認
調製した各ナノ粒子分散物をTEM観察用のメッシュに載せ乾燥することによりTEMサンプルを作製した。加速電圧300KVの日立製作所製透過電子顕微鏡(TEM)を用い粒子サイズを測定した。この結果、平均粒径5nmであり、変動係数10%のナノ粒子であることを確認した。
【0072】
6.磁気特性
磁気特性(保磁力)は東英工業製の高感度磁化ベクトル測定機と同社製DATA処理装置を使用し、印加磁場1273kA/m(16kOe)で測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1より、実施例1〜2、及び比較例1〜2のそれぞれのナノ粒子分散物1、2では、磁気特性(保磁力)は同等ではあったが、実施例1〜2においては、限外濾過により簡単に副生成物を除去することができており、工業的製造適性に優れていると推察される。これに対して、比較例1〜2の遠心分離機による副生成物の除去は、再分散が必要であり工業的製造適性に優れているとは言えない。また、塗布性においては、実施例1〜2では、スジの発生は見られず、塗布適性において優れていたのに対し、比較例1〜2ではスジの発生が見られ、塗布適性において劣っていた。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、工業的塗布適性に優れた強磁性ナノ粒子、ナノ粒子分散物、及びナノ粒子塗布物を提供することができる。
Claims (3)
- CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る金属を還元した後、限外濾過を行って得られることを特徴とする強磁性ナノ粒子。
- CuAu型又はCu3Au型強磁性規則合金相を形成し得る金属を還元した後、限外濾過を行って得られることを特徴とするナノ粒子分散物。
- 支持体上に塗布膜が形成されたナノ粒子塗布物であって、前記塗布膜が、請求項2に記載のナノ粒子分散物を塗布することによって形成されることを特徴とするナノ粒子塗布物。
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