JP2004265605A - 電磁誘導を用いた発熱装置及び定着装置 - Google Patents
電磁誘導を用いた発熱装置及び定着装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】励磁コイルにより発熱部材がムラなく均一に発熱することのできる電磁誘導を用いた発熱装置及び定着装置を提供する。
【解決手段】発熱部材130と対向配置され、電磁誘導によって発熱部材を発熱させる誘導加熱手段180とを備え、誘導加熱手段180は、磁界を発生する励磁コイル220と、励磁コイル220が巻回されるコイルガイド部材190とを有し、励磁コイル220をコイルガイド部材190の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材190に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成とした電磁誘導を用いた発熱装置とした。
【選択図】 図2
【解決手段】発熱部材130と対向配置され、電磁誘導によって発熱部材を発熱させる誘導加熱手段180とを備え、誘導加熱手段180は、磁界を発生する励磁コイル220と、励磁コイル220が巻回されるコイルガイド部材190とを有し、励磁コイル220をコイルガイド部材190の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材190に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成とした電磁誘導を用いた発熱装置とした。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やファクシミリ、プリンタなどの静電記録式画像形成装置に使用される定着装置に関し、より具体的には電磁誘導を用いた発熱装置及び定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ・複写機・ファクシミリなどの画像形成装置に対し、近年、省エネルギー化・高速化についての市場要求が強くなってきている。これらの要求性能を達成するためには、画像形成装置に用いられる定着装置の熱効率の改善が重要である。
【0003】
画像形成装置では、電子写真記録・静電記録・磁気記録等の画像形成プロセスにより、画像転写方式もしくは直接方式により未定着トナー画像がシート材・印刷紙・感光紙・静電記録紙などの記録媒体に形成される。未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、電磁誘導加熱方式等の接触加熱方式の定着装置が広く採用されている。
【0004】
電磁誘導加熱方式の定着装置として、特開平8−22206号公報では、励磁コイルからなる誘導加熱手段の交番磁界により磁性金属部材である発熱部材に発生した渦電流でジュール熱を生じさせ、発熱部材を電磁誘導発熱させる技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−22206号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、通電された励磁コイルが発生する交番磁界は全体にわたって均一な磁力ではないために、発熱部材が均一に発熱しなくなる場合が生じる。
【0007】
これではトナーの定着ムラが発生して印字品質が悪化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、励磁コイルにより発熱部材がムラなく均一に発熱することのできる電磁誘導を用いた発熱装置及び定着装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明は、発熱部材と、発熱部材と対向配置され、電磁誘導によって発熱部材を発熱させる誘導加熱手段とを備え、誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、励磁コイルを前記コイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成とした電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、これにより、第1層目の最終巻回(以後コイルガイド部材周面の1巻回を1ターンと称す)とその外側の第2層目の初回ターンとが重ならない為にコイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、コイルガイド部材の開口部から漏れる磁界(発熱部材に作用しない無駄な磁界)が軽減され、発熱部材が励磁コイルの端部に生じる不安定な磁界の影響を受けることがなくなるので、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0010】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができる。
【0011】
さらに、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも可能となる構成とした。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、発熱部材と、発熱部材と対向配置され、電磁誘導によって発熱部材を発熱させる誘導加熱手段とを備え、誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、励磁コイルをコイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成とした電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、コイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、コイルガイド部材の開口部から漏れる磁界(発熱部材に作用しない無駄な磁界)が軽減され、発熱部材が励磁コイルの端部に生じる不安定な磁界の影響を受けることがなくなるので、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0013】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができるという作用を有する。
【0014】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の電磁誘導を用いた発熱装置において、コイルガイド部材は、発熱部材を覆うように湾曲形成されて発熱部材を格納するための格納室と、開口部を備えた構成とした電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、これにより、励磁コイルと発熱部材が、独立して製造可能であり、また、分離可能となるため、点検・保守・修理などの作業性が向上する構成とすることができるという作用を有する。
【0015】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2記載の電磁誘導を用いた発熱装置において、励磁コイルは、第1層目及び第2層目において、コイルガイド部材の頂部から下部開口部へ向かって巻回した電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、これにより、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも可能となる構成とすることができるという作用を有する。
【0016】
本発明の請求項4に記載の発明は、定着ニップ部で記録媒体を挟持搬送し、記録媒体上の未定着トナーを溶融、加圧して当該記録媒体に定着させる定着装置であって、磁性金属部材の回転体からなる発熱部材と、発熱部材と対向配置され電磁誘導によって発熱部材を発熱させる励磁コイルを備えた誘導加熱手段と、発熱部材もしくはこの発熱部材により加熱されるベルト部材に圧接されて順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧部材とを有し、誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、励磁コイルをコイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する様に構成した電磁誘導を用いた定着装置としたものであり、コイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、コイルガイド部材の開口部から漏れる磁界(発熱部材に作用しない無駄な磁界)が軽減され、発熱部材が励磁コイルの端部に生じる不安定な磁界の影響を受けることがなくなるので、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0017】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができるという作用を有する。
【0018】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4記載の電磁誘導を用いた定着装置において、コイルガイド部材は、発熱部材を覆うように湾曲形成されて発熱部材を格納するための格納室、開口部を備えた構成とした電磁誘導を用いた定着装置としたものであり、これにより、励磁コイルと発熱部材が、独立して製造可能であり、また、分離可能となるため、点検・保守・修理などの作業性が向上する構成とすることができるという作用を有する。
【0019】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5記載の電磁誘導を用いた定着装置において、励磁コイルは、第1層目及び第2層目において、コイルガイド部材の頂部から下部開口部へ向かって巻回した電磁誘導を用いた定着装置としたものであり、これにより、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも可能となる構成とすることができるという作用を有する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図8を用いて説明する。なお、これらの図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態である定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す説明図、図2は図1の画像形成装置に用いられる本発明の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図、図3は図2の定着装置を構成する加熱ローラの構成を破断して示す説明図、図4は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図5は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図6は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図7は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図8は本発明の別の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図である。
【0022】
まず、本発明に係る画像形成装置の概略を説明する。なお、本実施の形態で説明する画像形成装置は、電子写真方式を採用する装置の中で特にカラー画像の発色に寄与する4色の基本色トナー毎に現像装置を備え、転写体に4色画像を重ね合わせ、シート材に一括転写するタンデム方式である。しかしながら、本発明はタンデム方式の画像形成装置のみに限定されず、また現像装置の数、中間転写体の有無等に拘らず、あらゆる方式の画像形成装置に採用可能であることはいうまでもない。
【0023】
図1において、感光体ドラム10a,10b,10c,10dの周囲には、各感光体ドラム10a,10b,10c,10dの表面を一様に所定の電位に帯電させる帯電手段20a,20b,20c,20d、帯電された感光体ドラム10a,10b,10c,10d上に特定色の画像データに対応したレーザビームの走査線30K,30C,30M,30Yを照射して静電潜像を形成する露光手段30、感光体ドラム10a,10b,10c,10d上に形成された静電潜像を顕像化する現像手段40a,40b,40c,40d、感光体ドラム10a,10b,10c,10d上に顕像化されたトナー像を無端状の中間転写ベルト(中間転写体)70に転写する転写手段50a,50b,50c,50d、感光体ドラム10a,10b,10c,10dから中間転写ベルト70にトナー像を転写した後に感光体ドラム10a,10b,10c,10dに残っている残留トナーを除去するクリーニング手段60a,60b,60c,60dがそれぞれ配置されている。
【0024】
ここで、露光手段30は、感光体ドラム10a,10b,10c,10dに対して所定の傾きをもって配置されている。また、中間転写ベルト70は、図示する場合においては、矢印A方向へ回動する。なお、画像形成ステーションPa,Pb,Pc,Pdでは、それぞれブラック画像、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像が形成される。そして、感光体ドラム10a,10b,10c,10dに形成された各色の単色画像が中間転写ベルト70上に順次重ね転写されてフルカラー画像が形成される。
【0025】
装置の下部には、印字用紙などのシート材(記録媒体)90が収納された給紙カセット100が設けられている。そして、シート材90は、給紙ローラ80により給紙カセット100から1枚ずつ用紙搬送路に送り出される。
【0026】
用紙搬送路上には、中間転写ベルト70の外周面と所定量にわたって接触し、この中間転写ベルト70上に形成されたカラー画像をシート材90に転写するシート材転写ローラ110、シート材90上に転写されたカラー画像をローラの狭持回転に伴う圧力と熱とによってシート材90に定着する定着器120が配置されている。
【0027】
このような構成の画像形成装置において、まず画像形成ステーションPaの帯電手段20aおよび露光手段30により感光体ドラム10a上に画像情報のブラック成分色の潜像が形成される。この潜像は現像手段40aでブラックトナーを有する現像手段40aによりブラックトナー像として可視像化され、転写手段50aにより中間転写ベルト70上にブラックトナー像として転写される。
【0028】
一方、ブラックトナー像が中間転写ベルト70に転写されている間に、画像形成ステーションPbではシアン成分色の潜像が形成され、続いて現像手段40bでシアントナーによるシアントナー像が顕像化される。そして、先の画像ステーションPaでブラックトナー像の転写が終了した中間転写ベルト70にシアントナー像が画像ステーションPbの転写手段50bにて転写され、ブラックトナー像と重ね合わされる。
【0029】
以下、マゼンタトナー像、イエロートナー像についても同様な方法で画像形成が行われ、中間転写ベルト70に4色のトナー像の重ね合わせが終了すると、給紙ローラ80により給紙カセット100から給紙されたシート材90上にシート材転写ローラ110によって4色のトナー像が一括転写される。そして、転写されたトナー像は定着器120でシート材90に加熱定着され、このシート材90上にフルカラー画像が形成される。
【0030】
次に、このような画像形成装置に用いられた定着装置について説明する。
【0031】
図2に示すように、定着装置は、誘導加熱手段180の電磁誘導により加熱される加熱ローラ(発熱部材)130と、加熱ローラ130と平行に配置された定着ローラ140と、加熱ローラ130と定着ローラ140とに張け渡され、加熱ローラ130により加熱されるとともに少なくともこれらのいずれかのローラの回転により矢印B方向に回転する無端帯状の耐熱性ベルト(トナー加熱媒体)150と、耐熱性ベルト150を介して定着ローラ140に圧接されるとともに耐熱性ベルト150に対して順方向に回転する加圧ローラ160とから構成されている。
【0032】
加熱ローラ130はたとえば鉄、コバルト、ニッケルまたはこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材の回転体からなり、外径をたとえば20mm、肉厚をたとえば0.3mmとして、低熱容量で昇温の速い構成となっている。
【0033】
加熱ローラ130は、図3に示すように、亜鉛メッキ鋼板からなる支持側板131に固定されたベアリング132により、その両端が回転可能に支持されている。加熱ローラ130は、図示しない装置本体の駆動手段によって回転駆動される。加熱ローラ130は、鉄・ニッケル・クロムの合金である磁性材料によって構成され、そのキュリー点が300℃以上となるように調整されている。また、加熱ローラ130は、厚さ0.3mmのパイプ状に形成されている。
【0034】
加熱ローラ130の表面には、離型性を付与するために、厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層(図示せず)が被覆されている。尚、離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。加熱ローラ130をモノクロ画像の定着用として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、加熱ローラ130をカラー画像の定着用として用いる場合には弾性を付与することが望ましく、その場合にはさらに厚いゴム層を形成する必要がある。
【0035】
定着ローラ140は、たとえばステンレススチール等の金属製の芯金140aと、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金140aを被覆した弾性部材140bとからなる。そして、加圧ローラ160からの押圧力でこの加圧ローラ160と定着ローラ140との間に所定幅の定着ニップ部Nを形成するために外径を30mm程度として加熱ローラ130より大きくしている。弾性部材140bはその肉厚を3〜8mm程度、硬度を15〜50°(Asker硬度:JIS A の硬度では6〜25°による)程度としている。この構成により、加熱ローラ130の熱容量は定着ローラ140の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ130が急速に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0036】
加熱ローラ130と定着ローラ140とに張り渡された耐熱性ベルト150は、誘導加熱手段180により加熱される加熱ローラ130との接触部位で加熱される。そして、加熱ローラ130,定着ローラ140の回転によって耐熱性ベルト150の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
【0037】
耐熱性ベルト150は、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性を有する金属またはそれらを基材とする合金を基材とした発熱層と、その表面を被覆するようにして設けられたシリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性部材からなる離型層とから構成された複合層ベルトである(図示せず)。
【0038】
上記複合層ベルトを使用すれば、ベルトを直接加熱できる他、発熱効率が良くなり、またレスポンスが速くなる。
【0039】
また、仮に何らかの原因で、例えば耐熱性ベルト150と加熱ローラ130との間に異物が混入してギャップが生じたとしても、耐熱性ベルト150の発熱層の電磁誘導による発熱で耐熱性ベルト150自体が発熱するので、温度ムラが少なく定着の信頼性が高くなる。
【0040】
図2において、加圧ローラ160は、たとえば銅またはアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金160aと、この芯金160aの表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材160bとから構成されている。芯金160aには上記金属以外にSUSを使用しても良い。
【0041】
加圧ローラ160は耐熱性ベルト150を介して定着ローラ140を押圧してシート材90を挟持搬送する定着ニップ部Nを形成しているが、本実施の形態では、加圧ローラ160の硬度を定着ローラ140に比べて硬くすることによって、加圧ローラ160が定着ローラ140(及び耐熱性ベルト150)へ食い込む形となり、この食い込みにより、シート材90は加圧ローラ160表面の円周形状に沿うため、シート材90が耐熱性ベルト150表面から離れやすくなる効果を持たせている。この加圧ローラ160の外径は定着ローラ140と同じ30mm程度であるが、肉圧は2〜5mm程度で定着ローラ140より薄く、また硬度は20〜60°(Asker硬度:JIS A の硬度では6〜25°による)程度で前述したとおり定着ローラ140より硬く構成されている。定着ニップ部Nの入口側近傍において耐熱性ベルト150の内面側に当接して配置されたサーミスタなどの熱応答性の高い感温素子からなる温度検出手段240により、ベルト内面温度が検知される。
【0042】
次に、誘導加熱手段180の構成について説明する。
【0043】
電磁誘導により加熱ローラ130を加熱する誘導加熱手段180は、図2に示すように、加熱ローラ130の外周面と対向配置されている。誘導加熱手段180には、加熱ローラ130を覆うように湾曲形成されて加熱ローラ130を格納するための格納室200を備えた支持フレーム(コイルガイド部材)190が設けられている。なお、支持フレーム190は難燃性の樹脂で構成されている。
【0044】
支持フレーム190の加熱ローラ130に相対する位置にはサーモスタット210が設けられ、サーモスタット210の温度を検知する部分が支持フレーム190から加熱ローラ130及び耐熱性ベルト150に向けて一部表出して設けられている。これにより、加熱ローラ130及び耐熱性ベルト150の温度を検知し、異常温度を検知した場合に電源回路(図示せず)を強制切断する。
【0045】
支持フレーム190の外周面には、磁界発生手段である表面が絶縁された線材を束ねた線束の励磁コイル220が巻回されている。励磁コイル220は長い一本の励磁コイル線材をこの支持フレーム190に沿って加熱ローラ130の軸方向に交互に巻き付けたものである(図8参照)。コイルを巻き付ける長さは耐熱性ベルト150と加熱ローラ130とが接する領域と略同じにされている。
【0046】
励磁コイル220は、発振回路が周波数可変の駆動電源(図示せず)に接続され、駆動電源(図示せず)から10kHz〜1MHzの高周波交流電流、好ましくは20kHz〜800kHzの高周波交流電流が給電され、これにより交番磁界を発生する。そして、加熱ローラ130と耐熱性ベルト150との接触領域およびその近傍部においてこの交番磁界が加熱ローラ130および耐熱性ベルト150の発熱層に作用し、これらの内部では交番磁界の変化を妨げる方向に渦電流が流れる。
【0047】
この渦電流が加熱ローラ130および耐熱性ベルト150の発熱層の抵抗に応じたジュール熱を発生させ、主として加熱ローラ130と耐熱性ベルト150との接触領域およびその近傍部において加熱ローラ130および耐熱性ベルト150が電磁誘導加熱される。
【0048】
支持フレーム190の外側には格納室200を囲む形でショートリング230が設けられている。ショートリング230には励磁コイル220に電流を流すことによって生じる磁束のうち外部に漏れ出る漏れ磁束を打ち消す方向に渦電流が発生する。渦電流が発生するとフレミングの法則により、漏れ磁束の磁界を打ち消す方向に磁界が発生し、漏れ磁束による不要輻射を防止する。
【0049】
ショートリング230は、例えば、導電性の高い銅またはアルミニウムを材料とする。また、ショートリング230は、少なくとも、漏れ磁束を打ち消す磁束を発生させられる位置にあればよい。
【0050】
ショートリング230の上面には、同じく支持フレーム190の格納室200を囲むような形で励磁コイルコア250が設けられ、その上部には、支持フレーム190の格納室200をまたぐような形でC型コイルコア260が設けられている。
【0051】
励磁コイルコア250及びC型コイルコア260を設けることにより、励磁コイル220のインダクタンスが大きくなり、励磁コイル220と加熱ローラ130との電磁結合が良好となる。このため、同じコイル電流でも多くの電力を加熱ローラ130へ投入することが可能となり、ウォームアップ時間の短い定着装置を実現することができる。
【0052】
この励磁コイル220を挟んで加熱ローラ130の反対側には、誘導加熱手段180の内部を覆うハウジング270が取り付けられている。ハウジング270はたとえば樹脂製であり、C型コイルコア260やサーモスタット210を覆うような屋根型で支持フレーム190に取り付けられている。なお、ハウジング270は樹脂製以外であってもよい。ハウジング270には複数の放熱孔(図示せず)が形成されており、内部の支持フレーム190、励磁コイル220、C型コイルコア260等から発散された熱が外部に放出されるようになっている。
【0053】
ハウジング270に形成された放熱孔を塞がないような形状で、ショートリング290が支持フレーム190に取り付けられている。
【0054】
ショートリング290は、上述したショートリング230と同様のものであり、C型コイルコア260等の背面から外部に漏れ出るわずかな漏れ磁束を打ち消す方向に渦電流が発生することで、漏れ磁束の磁界を打ち消す方向に磁界が発生し、漏れ磁束による不要輻射を防止する。
【0055】
ここで、励磁コイル220の支持フレーム(コイルガイド部材)190への巻回構成について以下、図2及び図4〜図7を参照しながら説明する。
【0056】
図2に示すように、加熱ローラ130の回転軸に垂直な断面において、加熱ローラ130の上半分を覆うように配置された指示フレーム190の周面に、線束の励磁コイル220を加熱ローラ130の周方向に沿って互いに密着させて配置し、それを外側に向かって二重に重ねた形状となっている。加熱ローラ130の一端部から他端部に向かう線束のうち隣接する線束が密着し、加熱ローラ130の他端部から一端部に向かう線束のうち隣接する線束が密着するように構成されている。
【0057】
なお、言うまでもないが、本発明は二重に重ねた形状に限定されるものではない。
【0058】
図4は、本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図であり、支持フレーム190長手一端方向から見た外観図である。励磁コイル220の第1層目を支持フレーム190周面に頂部191から、下部開口部192方向へ向かって順次1ターン目から第1層目の最終ターンである11ターンまで巻回している。(ターン数はこれに限定されるものではない)第1層目の最終ターンの終端に至ったところで、第1層目の外側の第2層目の開始ターン(12ターン)が、1ターンの外側に重なる様によう、11ターン終端から12ターン始端部に向かって励磁コイル220を第1層目の上側(外側)を支持フレーム190の下部開口部から頂部へ向かって第1層目とクロスするように張架している(図6参照)。なお、第2層目の開始ターン(12ターン)の始端が、第1層目開始ターン(1ターン)の始端の上側(外側)近傍となるようにクロスするように張架する。
【0059】
ここで、11ターン終端から12ターン始端部に向かって第1層目が巻き終わった段階で、第1層目のコイルを覆うように絶縁部材225を第1層目と第2層目の間に挟み込むように第2層目の巻回を開始する(図5参照)。なお、絶縁部材は、コイルがクロスする部分のみに挟み込んでも良い。
【0060】
図7(a)は、第2層目の励磁コイル220を途中まで巻回した状態を示たもので、図7(b)は、第2層目を巻き終えた状態を示したものである。
【0061】
上記実施の形態においては、励磁コイル220を2層重ねた構成に付いて説明したが、3層以上重ねる場合においても、第1層目と第2層目と同様に第2層目の最終ターンの終端と第3層目の開始ターンの始端をクロスすように励磁コイル220を引き回す。
【0062】
このように巻回された励磁コイル220が電磁誘導によって発熱ローラ130を発熱させる。励磁回路(図示せず)からの交流電流によって励磁コイル220が発生させる磁束は、加熱ローラ130の磁性のために、加熱ローラ130内を円周方向に貫通し、生成消滅を繰り返す。この磁束の変化によって発熱ローラ130に発生する誘導電流は、表皮効果によってほとんど発熱ローラ130の表面にのみ流れ、ジュール熱を発生させる。
【0063】
図2で説明した定着装置は耐熱性ベルト150を介して、定着を行う構成の定着装置に本発明の誘導加熱手段を用いたもの上げたが、図8に示すように、ベルトを介しない構成の定着装置にも図4〜図7に示した誘導加熱手段を用いる事は容易である。
【0064】
330は発熱部材としての加熱ローラであり、加熱ローラ330は、図示しない装置本体の駆動手段によって回転駆動される。加熱ローラ330は、鉄・ニッケル・クロムの合金である磁性材料によって構成され、そのキュリー点が300℃以上となるように調整されている。また、加熱ローラ330は、厚さ0.3mmのパイプ状に形成されている。
【0065】
加熱ローラ330の表面には、離型性を付与するために、厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層(図示せず)が被覆されている。尚、離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。加熱ローラ330をモノクロ画像の定着用として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、加熱ローラ330をカラー画像の定着用として用いる場合には弾性を付与することが望ましく、その場合にはさらに厚いゴム層を形成する必要がある。
【0066】
360は加圧手段としての加圧ローラである。この加圧ローラ360は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成され、20kgfの押圧力で加熱ローラ330に圧接してニップ部を形成している。そして、この状態で、加圧ローラ360は、加熱ローラ330の回転に伴って回転する。尚、加圧ローラ360の材料としては、他のフッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂やゴムを用いてもよい。また、耐摩耗性や離型性を高めるために、加圧ローラ360の表面には、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを単独であるいは混合して被覆することが望ましい。また、熱の放散を防ぐために、加圧ローラ360は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
【0067】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、電磁誘導加熱にようる発熱装置または定着装置の励磁コイルの巻回しをコイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成(少なくとも2層以上形成)すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成としたことにより、第1層目の最終巻回(以後コイルガイド部材周面の1巻回を1ターンと称す)とその外側の第2層目の初回ターンとが重ならない為にコイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0068】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができる。
【0069】
さらに、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも出来るという効果を奏することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す説明図
【図2】図1の画像形成装置に用いられる本発明の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図
【図3】図2の定着装置を構成する加熱ローラの構成を破断して示す説明図
【図4】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図5】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図6】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図7】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図8】本発明の別の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図
【符号の説明】
90 シート材(記録媒体)
130 加熱ローラ(発熱手段)
140 定着ローラ
220 励磁コイル
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やファクシミリ、プリンタなどの静電記録式画像形成装置に使用される定着装置に関し、より具体的には電磁誘導を用いた発熱装置及び定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ・複写機・ファクシミリなどの画像形成装置に対し、近年、省エネルギー化・高速化についての市場要求が強くなってきている。これらの要求性能を達成するためには、画像形成装置に用いられる定着装置の熱効率の改善が重要である。
【0003】
画像形成装置では、電子写真記録・静電記録・磁気記録等の画像形成プロセスにより、画像転写方式もしくは直接方式により未定着トナー画像がシート材・印刷紙・感光紙・静電記録紙などの記録媒体に形成される。未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、電磁誘導加熱方式等の接触加熱方式の定着装置が広く採用されている。
【0004】
電磁誘導加熱方式の定着装置として、特開平8−22206号公報では、励磁コイルからなる誘導加熱手段の交番磁界により磁性金属部材である発熱部材に発生した渦電流でジュール熱を生じさせ、発熱部材を電磁誘導発熱させる技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−22206号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、通電された励磁コイルが発生する交番磁界は全体にわたって均一な磁力ではないために、発熱部材が均一に発熱しなくなる場合が生じる。
【0007】
これではトナーの定着ムラが発生して印字品質が悪化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、励磁コイルにより発熱部材がムラなく均一に発熱することのできる電磁誘導を用いた発熱装置及び定着装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明は、発熱部材と、発熱部材と対向配置され、電磁誘導によって発熱部材を発熱させる誘導加熱手段とを備え、誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、励磁コイルを前記コイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成とした電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、これにより、第1層目の最終巻回(以後コイルガイド部材周面の1巻回を1ターンと称す)とその外側の第2層目の初回ターンとが重ならない為にコイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、コイルガイド部材の開口部から漏れる磁界(発熱部材に作用しない無駄な磁界)が軽減され、発熱部材が励磁コイルの端部に生じる不安定な磁界の影響を受けることがなくなるので、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0010】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができる。
【0011】
さらに、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも可能となる構成とした。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、発熱部材と、発熱部材と対向配置され、電磁誘導によって発熱部材を発熱させる誘導加熱手段とを備え、誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、励磁コイルをコイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成とした電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、コイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、コイルガイド部材の開口部から漏れる磁界(発熱部材に作用しない無駄な磁界)が軽減され、発熱部材が励磁コイルの端部に生じる不安定な磁界の影響を受けることがなくなるので、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0013】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができるという作用を有する。
【0014】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の電磁誘導を用いた発熱装置において、コイルガイド部材は、発熱部材を覆うように湾曲形成されて発熱部材を格納するための格納室と、開口部を備えた構成とした電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、これにより、励磁コイルと発熱部材が、独立して製造可能であり、また、分離可能となるため、点検・保守・修理などの作業性が向上する構成とすることができるという作用を有する。
【0015】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2記載の電磁誘導を用いた発熱装置において、励磁コイルは、第1層目及び第2層目において、コイルガイド部材の頂部から下部開口部へ向かって巻回した電磁誘導を用いた発熱装置としたものであり、これにより、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも可能となる構成とすることができるという作用を有する。
【0016】
本発明の請求項4に記載の発明は、定着ニップ部で記録媒体を挟持搬送し、記録媒体上の未定着トナーを溶融、加圧して当該記録媒体に定着させる定着装置であって、磁性金属部材の回転体からなる発熱部材と、発熱部材と対向配置され電磁誘導によって発熱部材を発熱させる励磁コイルを備えた誘導加熱手段と、発熱部材もしくはこの発熱部材により加熱されるベルト部材に圧接されて順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧部材とを有し、誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、励磁コイルをコイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する様に構成した電磁誘導を用いた定着装置としたものであり、コイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、コイルガイド部材の開口部から漏れる磁界(発熱部材に作用しない無駄な磁界)が軽減され、発熱部材が励磁コイルの端部に生じる不安定な磁界の影響を受けることがなくなるので、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0017】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができるという作用を有する。
【0018】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4記載の電磁誘導を用いた定着装置において、コイルガイド部材は、発熱部材を覆うように湾曲形成されて発熱部材を格納するための格納室、開口部を備えた構成とした電磁誘導を用いた定着装置としたものであり、これにより、励磁コイルと発熱部材が、独立して製造可能であり、また、分離可能となるため、点検・保守・修理などの作業性が向上する構成とすることができるという作用を有する。
【0019】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5記載の電磁誘導を用いた定着装置において、励磁コイルは、第1層目及び第2層目において、コイルガイド部材の頂部から下部開口部へ向かって巻回した電磁誘導を用いた定着装置としたものであり、これにより、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも可能となる構成とすることができるという作用を有する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図8を用いて説明する。なお、これらの図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態である定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す説明図、図2は図1の画像形成装置に用いられる本発明の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図、図3は図2の定着装置を構成する加熱ローラの構成を破断して示す説明図、図4は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図5は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図6は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図7は本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図、図8は本発明の別の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図である。
【0022】
まず、本発明に係る画像形成装置の概略を説明する。なお、本実施の形態で説明する画像形成装置は、電子写真方式を採用する装置の中で特にカラー画像の発色に寄与する4色の基本色トナー毎に現像装置を備え、転写体に4色画像を重ね合わせ、シート材に一括転写するタンデム方式である。しかしながら、本発明はタンデム方式の画像形成装置のみに限定されず、また現像装置の数、中間転写体の有無等に拘らず、あらゆる方式の画像形成装置に採用可能であることはいうまでもない。
【0023】
図1において、感光体ドラム10a,10b,10c,10dの周囲には、各感光体ドラム10a,10b,10c,10dの表面を一様に所定の電位に帯電させる帯電手段20a,20b,20c,20d、帯電された感光体ドラム10a,10b,10c,10d上に特定色の画像データに対応したレーザビームの走査線30K,30C,30M,30Yを照射して静電潜像を形成する露光手段30、感光体ドラム10a,10b,10c,10d上に形成された静電潜像を顕像化する現像手段40a,40b,40c,40d、感光体ドラム10a,10b,10c,10d上に顕像化されたトナー像を無端状の中間転写ベルト(中間転写体)70に転写する転写手段50a,50b,50c,50d、感光体ドラム10a,10b,10c,10dから中間転写ベルト70にトナー像を転写した後に感光体ドラム10a,10b,10c,10dに残っている残留トナーを除去するクリーニング手段60a,60b,60c,60dがそれぞれ配置されている。
【0024】
ここで、露光手段30は、感光体ドラム10a,10b,10c,10dに対して所定の傾きをもって配置されている。また、中間転写ベルト70は、図示する場合においては、矢印A方向へ回動する。なお、画像形成ステーションPa,Pb,Pc,Pdでは、それぞれブラック画像、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像が形成される。そして、感光体ドラム10a,10b,10c,10dに形成された各色の単色画像が中間転写ベルト70上に順次重ね転写されてフルカラー画像が形成される。
【0025】
装置の下部には、印字用紙などのシート材(記録媒体)90が収納された給紙カセット100が設けられている。そして、シート材90は、給紙ローラ80により給紙カセット100から1枚ずつ用紙搬送路に送り出される。
【0026】
用紙搬送路上には、中間転写ベルト70の外周面と所定量にわたって接触し、この中間転写ベルト70上に形成されたカラー画像をシート材90に転写するシート材転写ローラ110、シート材90上に転写されたカラー画像をローラの狭持回転に伴う圧力と熱とによってシート材90に定着する定着器120が配置されている。
【0027】
このような構成の画像形成装置において、まず画像形成ステーションPaの帯電手段20aおよび露光手段30により感光体ドラム10a上に画像情報のブラック成分色の潜像が形成される。この潜像は現像手段40aでブラックトナーを有する現像手段40aによりブラックトナー像として可視像化され、転写手段50aにより中間転写ベルト70上にブラックトナー像として転写される。
【0028】
一方、ブラックトナー像が中間転写ベルト70に転写されている間に、画像形成ステーションPbではシアン成分色の潜像が形成され、続いて現像手段40bでシアントナーによるシアントナー像が顕像化される。そして、先の画像ステーションPaでブラックトナー像の転写が終了した中間転写ベルト70にシアントナー像が画像ステーションPbの転写手段50bにて転写され、ブラックトナー像と重ね合わされる。
【0029】
以下、マゼンタトナー像、イエロートナー像についても同様な方法で画像形成が行われ、中間転写ベルト70に4色のトナー像の重ね合わせが終了すると、給紙ローラ80により給紙カセット100から給紙されたシート材90上にシート材転写ローラ110によって4色のトナー像が一括転写される。そして、転写されたトナー像は定着器120でシート材90に加熱定着され、このシート材90上にフルカラー画像が形成される。
【0030】
次に、このような画像形成装置に用いられた定着装置について説明する。
【0031】
図2に示すように、定着装置は、誘導加熱手段180の電磁誘導により加熱される加熱ローラ(発熱部材)130と、加熱ローラ130と平行に配置された定着ローラ140と、加熱ローラ130と定着ローラ140とに張け渡され、加熱ローラ130により加熱されるとともに少なくともこれらのいずれかのローラの回転により矢印B方向に回転する無端帯状の耐熱性ベルト(トナー加熱媒体)150と、耐熱性ベルト150を介して定着ローラ140に圧接されるとともに耐熱性ベルト150に対して順方向に回転する加圧ローラ160とから構成されている。
【0032】
加熱ローラ130はたとえば鉄、コバルト、ニッケルまたはこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材の回転体からなり、外径をたとえば20mm、肉厚をたとえば0.3mmとして、低熱容量で昇温の速い構成となっている。
【0033】
加熱ローラ130は、図3に示すように、亜鉛メッキ鋼板からなる支持側板131に固定されたベアリング132により、その両端が回転可能に支持されている。加熱ローラ130は、図示しない装置本体の駆動手段によって回転駆動される。加熱ローラ130は、鉄・ニッケル・クロムの合金である磁性材料によって構成され、そのキュリー点が300℃以上となるように調整されている。また、加熱ローラ130は、厚さ0.3mmのパイプ状に形成されている。
【0034】
加熱ローラ130の表面には、離型性を付与するために、厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層(図示せず)が被覆されている。尚、離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。加熱ローラ130をモノクロ画像の定着用として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、加熱ローラ130をカラー画像の定着用として用いる場合には弾性を付与することが望ましく、その場合にはさらに厚いゴム層を形成する必要がある。
【0035】
定着ローラ140は、たとえばステンレススチール等の金属製の芯金140aと、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金140aを被覆した弾性部材140bとからなる。そして、加圧ローラ160からの押圧力でこの加圧ローラ160と定着ローラ140との間に所定幅の定着ニップ部Nを形成するために外径を30mm程度として加熱ローラ130より大きくしている。弾性部材140bはその肉厚を3〜8mm程度、硬度を15〜50°(Asker硬度:JIS A の硬度では6〜25°による)程度としている。この構成により、加熱ローラ130の熱容量は定着ローラ140の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ130が急速に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0036】
加熱ローラ130と定着ローラ140とに張り渡された耐熱性ベルト150は、誘導加熱手段180により加熱される加熱ローラ130との接触部位で加熱される。そして、加熱ローラ130,定着ローラ140の回転によって耐熱性ベルト150の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
【0037】
耐熱性ベルト150は、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性を有する金属またはそれらを基材とする合金を基材とした発熱層と、その表面を被覆するようにして設けられたシリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性部材からなる離型層とから構成された複合層ベルトである(図示せず)。
【0038】
上記複合層ベルトを使用すれば、ベルトを直接加熱できる他、発熱効率が良くなり、またレスポンスが速くなる。
【0039】
また、仮に何らかの原因で、例えば耐熱性ベルト150と加熱ローラ130との間に異物が混入してギャップが生じたとしても、耐熱性ベルト150の発熱層の電磁誘導による発熱で耐熱性ベルト150自体が発熱するので、温度ムラが少なく定着の信頼性が高くなる。
【0040】
図2において、加圧ローラ160は、たとえば銅またはアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金160aと、この芯金160aの表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材160bとから構成されている。芯金160aには上記金属以外にSUSを使用しても良い。
【0041】
加圧ローラ160は耐熱性ベルト150を介して定着ローラ140を押圧してシート材90を挟持搬送する定着ニップ部Nを形成しているが、本実施の形態では、加圧ローラ160の硬度を定着ローラ140に比べて硬くすることによって、加圧ローラ160が定着ローラ140(及び耐熱性ベルト150)へ食い込む形となり、この食い込みにより、シート材90は加圧ローラ160表面の円周形状に沿うため、シート材90が耐熱性ベルト150表面から離れやすくなる効果を持たせている。この加圧ローラ160の外径は定着ローラ140と同じ30mm程度であるが、肉圧は2〜5mm程度で定着ローラ140より薄く、また硬度は20〜60°(Asker硬度:JIS A の硬度では6〜25°による)程度で前述したとおり定着ローラ140より硬く構成されている。定着ニップ部Nの入口側近傍において耐熱性ベルト150の内面側に当接して配置されたサーミスタなどの熱応答性の高い感温素子からなる温度検出手段240により、ベルト内面温度が検知される。
【0042】
次に、誘導加熱手段180の構成について説明する。
【0043】
電磁誘導により加熱ローラ130を加熱する誘導加熱手段180は、図2に示すように、加熱ローラ130の外周面と対向配置されている。誘導加熱手段180には、加熱ローラ130を覆うように湾曲形成されて加熱ローラ130を格納するための格納室200を備えた支持フレーム(コイルガイド部材)190が設けられている。なお、支持フレーム190は難燃性の樹脂で構成されている。
【0044】
支持フレーム190の加熱ローラ130に相対する位置にはサーモスタット210が設けられ、サーモスタット210の温度を検知する部分が支持フレーム190から加熱ローラ130及び耐熱性ベルト150に向けて一部表出して設けられている。これにより、加熱ローラ130及び耐熱性ベルト150の温度を検知し、異常温度を検知した場合に電源回路(図示せず)を強制切断する。
【0045】
支持フレーム190の外周面には、磁界発生手段である表面が絶縁された線材を束ねた線束の励磁コイル220が巻回されている。励磁コイル220は長い一本の励磁コイル線材をこの支持フレーム190に沿って加熱ローラ130の軸方向に交互に巻き付けたものである(図8参照)。コイルを巻き付ける長さは耐熱性ベルト150と加熱ローラ130とが接する領域と略同じにされている。
【0046】
励磁コイル220は、発振回路が周波数可変の駆動電源(図示せず)に接続され、駆動電源(図示せず)から10kHz〜1MHzの高周波交流電流、好ましくは20kHz〜800kHzの高周波交流電流が給電され、これにより交番磁界を発生する。そして、加熱ローラ130と耐熱性ベルト150との接触領域およびその近傍部においてこの交番磁界が加熱ローラ130および耐熱性ベルト150の発熱層に作用し、これらの内部では交番磁界の変化を妨げる方向に渦電流が流れる。
【0047】
この渦電流が加熱ローラ130および耐熱性ベルト150の発熱層の抵抗に応じたジュール熱を発生させ、主として加熱ローラ130と耐熱性ベルト150との接触領域およびその近傍部において加熱ローラ130および耐熱性ベルト150が電磁誘導加熱される。
【0048】
支持フレーム190の外側には格納室200を囲む形でショートリング230が設けられている。ショートリング230には励磁コイル220に電流を流すことによって生じる磁束のうち外部に漏れ出る漏れ磁束を打ち消す方向に渦電流が発生する。渦電流が発生するとフレミングの法則により、漏れ磁束の磁界を打ち消す方向に磁界が発生し、漏れ磁束による不要輻射を防止する。
【0049】
ショートリング230は、例えば、導電性の高い銅またはアルミニウムを材料とする。また、ショートリング230は、少なくとも、漏れ磁束を打ち消す磁束を発生させられる位置にあればよい。
【0050】
ショートリング230の上面には、同じく支持フレーム190の格納室200を囲むような形で励磁コイルコア250が設けられ、その上部には、支持フレーム190の格納室200をまたぐような形でC型コイルコア260が設けられている。
【0051】
励磁コイルコア250及びC型コイルコア260を設けることにより、励磁コイル220のインダクタンスが大きくなり、励磁コイル220と加熱ローラ130との電磁結合が良好となる。このため、同じコイル電流でも多くの電力を加熱ローラ130へ投入することが可能となり、ウォームアップ時間の短い定着装置を実現することができる。
【0052】
この励磁コイル220を挟んで加熱ローラ130の反対側には、誘導加熱手段180の内部を覆うハウジング270が取り付けられている。ハウジング270はたとえば樹脂製であり、C型コイルコア260やサーモスタット210を覆うような屋根型で支持フレーム190に取り付けられている。なお、ハウジング270は樹脂製以外であってもよい。ハウジング270には複数の放熱孔(図示せず)が形成されており、内部の支持フレーム190、励磁コイル220、C型コイルコア260等から発散された熱が外部に放出されるようになっている。
【0053】
ハウジング270に形成された放熱孔を塞がないような形状で、ショートリング290が支持フレーム190に取り付けられている。
【0054】
ショートリング290は、上述したショートリング230と同様のものであり、C型コイルコア260等の背面から外部に漏れ出るわずかな漏れ磁束を打ち消す方向に渦電流が発生することで、漏れ磁束の磁界を打ち消す方向に磁界が発生し、漏れ磁束による不要輻射を防止する。
【0055】
ここで、励磁コイル220の支持フレーム(コイルガイド部材)190への巻回構成について以下、図2及び図4〜図7を参照しながら説明する。
【0056】
図2に示すように、加熱ローラ130の回転軸に垂直な断面において、加熱ローラ130の上半分を覆うように配置された指示フレーム190の周面に、線束の励磁コイル220を加熱ローラ130の周方向に沿って互いに密着させて配置し、それを外側に向かって二重に重ねた形状となっている。加熱ローラ130の一端部から他端部に向かう線束のうち隣接する線束が密着し、加熱ローラ130の他端部から一端部に向かう線束のうち隣接する線束が密着するように構成されている。
【0057】
なお、言うまでもないが、本発明は二重に重ねた形状に限定されるものではない。
【0058】
図4は、本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図であり、支持フレーム190長手一端方向から見た外観図である。励磁コイル220の第1層目を支持フレーム190周面に頂部191から、下部開口部192方向へ向かって順次1ターン目から第1層目の最終ターンである11ターンまで巻回している。(ターン数はこれに限定されるものではない)第1層目の最終ターンの終端に至ったところで、第1層目の外側の第2層目の開始ターン(12ターン)が、1ターンの外側に重なる様によう、11ターン終端から12ターン始端部に向かって励磁コイル220を第1層目の上側(外側)を支持フレーム190の下部開口部から頂部へ向かって第1層目とクロスするように張架している(図6参照)。なお、第2層目の開始ターン(12ターン)の始端が、第1層目開始ターン(1ターン)の始端の上側(外側)近傍となるようにクロスするように張架する。
【0059】
ここで、11ターン終端から12ターン始端部に向かって第1層目が巻き終わった段階で、第1層目のコイルを覆うように絶縁部材225を第1層目と第2層目の間に挟み込むように第2層目の巻回を開始する(図5参照)。なお、絶縁部材は、コイルがクロスする部分のみに挟み込んでも良い。
【0060】
図7(a)は、第2層目の励磁コイル220を途中まで巻回した状態を示たもので、図7(b)は、第2層目を巻き終えた状態を示したものである。
【0061】
上記実施の形態においては、励磁コイル220を2層重ねた構成に付いて説明したが、3層以上重ねる場合においても、第1層目と第2層目と同様に第2層目の最終ターンの終端と第3層目の開始ターンの始端をクロスすように励磁コイル220を引き回す。
【0062】
このように巻回された励磁コイル220が電磁誘導によって発熱ローラ130を発熱させる。励磁回路(図示せず)からの交流電流によって励磁コイル220が発生させる磁束は、加熱ローラ130の磁性のために、加熱ローラ130内を円周方向に貫通し、生成消滅を繰り返す。この磁束の変化によって発熱ローラ130に発生する誘導電流は、表皮効果によってほとんど発熱ローラ130の表面にのみ流れ、ジュール熱を発生させる。
【0063】
図2で説明した定着装置は耐熱性ベルト150を介して、定着を行う構成の定着装置に本発明の誘導加熱手段を用いたもの上げたが、図8に示すように、ベルトを介しない構成の定着装置にも図4〜図7に示した誘導加熱手段を用いる事は容易である。
【0064】
330は発熱部材としての加熱ローラであり、加熱ローラ330は、図示しない装置本体の駆動手段によって回転駆動される。加熱ローラ330は、鉄・ニッケル・クロムの合金である磁性材料によって構成され、そのキュリー点が300℃以上となるように調整されている。また、加熱ローラ330は、厚さ0.3mmのパイプ状に形成されている。
【0065】
加熱ローラ330の表面には、離型性を付与するために、厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層(図示せず)が被覆されている。尚、離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。加熱ローラ330をモノクロ画像の定着用として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、加熱ローラ330をカラー画像の定着用として用いる場合には弾性を付与することが望ましく、その場合にはさらに厚いゴム層を形成する必要がある。
【0066】
360は加圧手段としての加圧ローラである。この加圧ローラ360は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成され、20kgfの押圧力で加熱ローラ330に圧接してニップ部を形成している。そして、この状態で、加圧ローラ360は、加熱ローラ330の回転に伴って回転する。尚、加圧ローラ360の材料としては、他のフッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂やゴムを用いてもよい。また、耐摩耗性や離型性を高めるために、加圧ローラ360の表面には、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを単独であるいは混合して被覆することが望ましい。また、熱の放散を防ぐために、加圧ローラ360は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
【0067】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、電磁誘導加熱にようる発熱装置または定着装置の励磁コイルの巻回しをコイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、コイルガイド部材に対して第1層目の外側に第2層目を周回させた構成(少なくとも2層以上形成)すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始する構成としたことにより、第1層目の最終巻回(以後コイルガイド部材周面の1巻回を1ターンと称す)とその外側の第2層目の初回ターンとが重ならない為にコイルガイド部材の下部開口部付近に磁界が集中する事が無く、誘導加熱手段により発熱部材がムラなく均一に発熱することができるという作用を有する。
【0068】
また、第1層目の初回ターン近傍から第2層目の初回ターンを開始することにより、第1層目と第2層目の間は、電位差分布が、極端に高くならず、おおよそ均等となるため、巻き線間の電流リーク要因を減らす事ができ、巻き始めと巻き終わりが離れる事により、両端の絶縁距離を確保することにもなり、電流リーク要因を減らす事ができるため、安定した励磁コイルとすることができる。
【0069】
さらに、周回幅の狭いコイルガイド部材の頂点から周回幅の広い下部開口部へ向かって周回を開始するため、巻き線が解けることなく安定して巻く事ができ、生産効率を向上させることも出来るという効果を奏することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す説明図
【図2】図1の画像形成装置に用いられる本発明の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図
【図3】図2の定着装置を構成する加熱ローラの構成を破断して示す説明図
【図4】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図5】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図6】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図7】本発明の一実施の形態である誘導加熱手段の励磁コイルの巻回状態を示す説明図
【図8】本発明の別の一実施の形態である定着装置の構成を示す説明図
【符号の説明】
90 シート材(記録媒体)
130 加熱ローラ(発熱手段)
140 定着ローラ
220 励磁コイル
Claims (6)
- 発熱部材と、前記発熱部材と対向配置され、電磁誘導によって前記発熱部材を発熱させる誘導加熱手段とを備え、前記誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、前記励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、前記励磁コイルを前記コイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、前記コイルガイド部材に対して前記第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始することを特徴とした電磁誘導を用いた発熱装置。
- 前記コイルガイド部材は、前記発熱部材を覆うように湾曲形成されて前記発熱部材を格納するための格納室と、開口部を備えた構成としたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導を用いた発熱装置。
- 前記励磁コイルは、前記第1層目、第2層目及び各層目において、前記コイルガイド部材の頂部から下部開口部へ向かって巻回されていることを特徴とする請求項2記載の電磁誘導を用いた発熱装置。
- 定着ニップ部で記録媒体を挟持搬送し、記録媒体上の未定着トナーを溶融、加圧して当該記録媒体に定着させる定着装置であって、磁性金属部材の回転体からなる発熱部材と、前記発熱部材と対向配置され電磁誘導によって前記発熱部材を発熱させる励磁コイルを備えた誘導加熱手段と、前記発熱部材もしくはこの発熱部材により加熱されるベルト部材に圧接されて順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧部材とを有し、前記誘導加熱手段は、磁界を発生する励磁コイルと、前記励磁コイルが巻回されるコイルガイド部材とを有し、前記励磁コイルを前記コイルガイド部材の周面に第1層目を形成するように複数回巻回させ、前記コイルガイド部材に対して前記第1層目の外側に第2層目を周回させた構成とし、少なくとも2層以上形成すると共に、第2層目以降の周回開始を第1層目の巻回開始部近傍から開始することを特徴とした電磁誘導を用いた定着装置。
- 前記コイルガイド部材は、前記発熱部材を覆うように湾曲形成されて前記発熱部材を格納するための格納室、開口部を備えた構成としたことを特徴とする請求項4記載の電磁誘導を用いた定着装置。
- 前記励磁コイルは、前記第1層目及び第2層目において、前記コイルガイド部材の頂部から下部開口部へ向かって巻回されていることを特徴とする請求項5記載の電磁誘導を用いた定着装置。
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