JP2004263951A - グロープラグ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記現象の原因は定かでないが、本発明者は1000℃を越える高温によりMgOが発熱コイル部30bのFe成分やNi成分と何らかの反応を起こして断線した可能性が高いと推測し、前記発熱コイル部30bをコイル主材31bとそのコイル主材31bの表面を覆う被覆層32bで形成し、その被覆層32bをPt、Pd、Rhの何れか一種又は二種以上の合金で形成するようにした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンを予熱する用途などに使われるグロープラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆる自己制御型のグロープラグを図2に基づき説明する。グロープラグ1は、筒状の主体金具2と、主体金具2の中心を貫くシーズヒータ3とから概略構成される。
前記シーズヒータ3は、先端をほぼ半球状にして閉じ後端を開口させた形態である耐熱金属製のシース3a内に、先端側が発熱コイル部30bで後端側が制御コイル部300bである抵抗線コイル3bと電極軸3cの先端側とを入れてMgO(酸化マグネシウム)製の絶縁粉末3dを充填し、シース3aの開口内面と電極軸3cの間に絶縁用のゴムパッキン3eを挟んで密封してなる。前記電極軸3cは、先端がシース3aの中程にあって前記抵抗線コイル3b(制御コイル部300b)に電気的に接続され、後端が主体金具2の中心を通って外部に突出している。また、シース3aの筒先内面に抵抗線コイル3b(発熱コイル部30b)が電気的に接続されており、従って電極軸3cとシース3aは、抵抗線コイル3bを介して電気的に繋がっている。
【0003】
しかして自己制御型のグロープラグ1の前記抵抗線コイル3bは、発熱コイル部30bと制御コイル部300bが直列に接続された状態になっており、主として発熱コイル部30bが発熱してシース3aの先端を赤熱させ、一方、制御コイル部300bは、昇温により電気抵抗が急増して発熱コイル部30bに流れる電流を抑制する。このように抵抗線コイル3bの発熱コイル部30bと制御コイル部300bには夫々の役割があり、その役割に応じて適宜材料が選択されている。例えば、発熱コイル部30bには耐酸化性、耐熱性に優れたFe−Cr合金やNi−Cr合金が、また、制御コイル部300bには温度の変化が電気抵抗値に敏感に反映されるよう正の温度抵抗係数が大きい純Feなどが使われている(例えば、特許文献1参照。)。なお、特許文献1のグロープラグは、制御コイル部300bの材料として純Feを採用し、その純Feの耐酸化性を向上させる目的でFe線の表面にNi又はCrの鍍金を施すようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−59372号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
言うまでもなく発熱コイル部30bには耐熱性、耐酸化性に優れた材料が選定されているのであるが、発熱コイル部30bの温度が1000℃を越えると計算通りの耐久性を発揮しない現象に行き当たる。例えばFe−Cr−Al系合金で発熱コイル部30bを形成した場合、同合金の耐熱性、耐酸化性の性能からすれば1000℃の温度にも十分耐え得る筈であるが、実際に製造して1000℃の耐久性試験(試験方法については後述する。)を行うと、発熱コイル部30bの表面が溶け断線に至る現象が確認された。斯かる現象は予想外のものであってその原因は定かでないが、本発明者は、1000℃を越える高温により絶縁粉末3dのMgOが発熱コイル部30bを構成する合金のFe成分やNi成分と何らかの反応を起こして断線した可能性が高いと推測した。
【0006】
本発明の目的は、高温、特に1000℃を越える高温での耐久性に優れたグロープラグを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は、先端が閉じた筒状のシース内に少なくとも発熱コイル部を有する抵抗線コイルとMgO製の絶縁粉末を装填しさらにシースの後端に電極軸の一端を差し込んで密封してなるシーズヒータと、筒状の主体金具を有し、その主体金具の筒孔内に前記シーズヒータを差し込んでシースの先端側を主体金具の外部に突出させるようにしたグロープラグであって、前記発熱コイル部をコイル主材とそのコイル主材の表面を覆う被覆層で形成し、その被覆層をPt又はPd又はRhの何れか一種又は二種以上の合金で形成するようにしたグロープラグを提供する。
【0008】
1000℃を越える高温により絶縁粉末のMgOが発熱コイル部を構成する合金のFe成分やNi成分と何らかの反応を起こした可能性が高い、という本発明者の推測に基づき、発熱コイル部のコイル主材をPt又はPd又はRhの何れか一種又は二種以上の合金による被覆層で被覆し、もってMgOとコイル主材が直接接しないようにしたところ、1000℃を越える高温にも実用上十分な耐久性を持つグロープラグが得られた。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1は一部拡大図を含むグロープラグの縦断面図である。
【0010】
図1に示したようにグロープラグ1は、筒状の主体金具2と、主体金具2の中心を貫くシーズヒータ3とから概略構成される。
前記シーズヒータ3は、先端をほぼ半球状にして閉じ後端を開口させた形態である耐熱金属製のシース3a内に、先端側が発熱コイル部30bで後端側が制御コイル部300bである抵抗線コイル3bと電極軸3cの先端側とを入れてMgO製の絶縁粉末3dを充填し、シース3aの開口内面と電極軸3cの間に絶縁用のゴムパッキン3eを挟んで密封してなる。前記電極軸3cは、先端がシース3aの中程にあって前記抵抗線コイル3bに電気的に接続され、後端が主体金具2の中心を通って外部に突出している。また、シース3aの筒先内面に抵抗線コイル3bが電気的に接続されており、従って電極軸3cとシース3aは、抵抗線コイル3bを介して電気的に繋がっている。
【0011】
前記抵抗線コイル3bは、発熱コイル部30bと制御コイル部300bが直列に接続された状態になっており、主として発熱コイル部30bが発熱してシース3aの先端を赤熱させ、一方、制御コイル部300bは、昇温により電気抵抗が急増する性質を利用して発熱コイル部30bに流れる電流を抑制する役割を果たす。そのため制御コイル部300bは、温度の変化が電気抵抗値に敏感に反映されるよう正の温度抵抗係数が大きい純FeやCo−Ni系合金などの材料で形成されている。
【0012】
一方、発熱コイル部30bは、高温に耐えるべく耐酸化性と耐熱性に優れたFe−Cr−Al系合金やNi−Cr系合金によりコイル主材31bを形成し、そのコイル主材31bの表面を被覆層32bで覆った構成にしてある。この被覆層32bは、Pt(白金)又はPd(パラジウム)又はRh(ロジウム)の何れか一種又は二種以上を合金にして例えば鍍金、蒸着により薄く均一に形成したものである。なお、被覆層32bを形成するこれらの金属は延性、展性に富むため、シース3aをスウェージングする工程で抵抗線コイル3bが縮径しても被覆層32bにクラックが入り難い。ちなみに被覆層32bにクラックが入ると、そのクラックを通じてコイル主材31bと絶縁粉末3dのMgOが接触するため、高温での耐久性が低下する。
【0013】
【耐久性試験】
本発明の効果を確認するため、発熱コイル部30bのコイル主材31bをFe−Cr−Al系合金(Fe:66重量%、Cr:26重量%、Al:8重量%)で形成し、制御コイル部300bをCo−Ni系合金(Co:71重量%、Ni:25重量%、Fe:4重量%)で形成し、さらに発熱コイル部30bの被覆層32bをNo.1(無し)、No.2(Ni鍍金)、No.3(Pt鍍金)、No.4(Rh鍍金)、No.5(Pd鍍金)としてシーズヒータ3を5種類作成した。そしてそのシーズヒータ3で図1に示したようなグロープラグ1を製造し、耐久性試験を実施した。その結果を表1に示す。なお、耐久性試験は、直流11Vで10秒間通電→直流13Vで300秒間通電→OFF状態で60秒間維持、を1サイクルとしてそれを連続して繰り返すものであり、この耐久試験での発熱コイル部30bの最高温度は約1100℃に達する。
【0014】
【表1】
【0015】
表1において、断線欄の「×」は完全断線を、「△」は断線の兆候が見られたことを、「○」は断線の兆候が全くなかったことを示す。
また、性能劣化欄の「×」は規格(5000サイクル以上)のサイクル終了後に発熱温度が試験開始時の発熱温度より100℃以上低下したことを示す。
また、耐久性欄は断線と性能劣化の総合評価であって、「×」は耐久性に問題があり、「○」は耐久性に問題がないことを示す。
【0016】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例に相当するNo.3〜5のグロープラグは、No.1,2のグロープラグに比べて耐久性に優れていた。なお、No.2のグロープラグはコイル主材31bをNi鍍金で被覆したものであるが、この場合はNiとコイル主材31bが合金化したために結果的に性能劣化を惹起したと考えられる。
【0017】
以上本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば実施形態では自己制御型のグロープラグ1を例示したが、制御コイル部300bを備えていない、すなわち抵抗線コイル3bの全てが発熱コイル部30bであるような場合でも本発明は適用可能である。
また、本発明の要旨は発熱コイル部30bの構造にあり、従って制御コイル部300bの構造は特に限定を要しない。
【0018】
【発明の効果】
本発明は、1000℃を越える高温下において、抵抗線コイルの発熱コイル部を構成する材料が十分な耐熱性、耐酸化性を有していながら計算通りの耐久性が得られない現実に直面し、その原因を推測して発熱コイル部のコイル主材をPtなどの被覆層で覆った結果、1000℃を越える高温にも実用上十分な耐久性を持つグロープラグが得られた。従って本発明は、高温、特に1000℃を越える高温での耐久性に優れたグロープラグの実現に極めて高い有用性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一部拡大図を含むグロープラグの縦断面図である。
【図2】一部拡大図を含む従来のグロープラグの縦断面図である。
【符号の説明】
1 …グロープラグ
2 …主体金具
3 …シーズヒータ
3a …シース
3b …抵抗線コイル
30b…発熱コイル部
31b…コイル主材
32b…被覆層
3c …電極軸
3d …絶縁粉末
Claims (2)
- 先端が閉じた筒状のシース内に少なくとも発熱コイル部を有する抵抗線コイルとMgO製の絶縁粉末を装填しさらにシースの後端に電極軸の一端を差し込んで密封してなるシーズヒータと、筒状の主体金具を有し、その主体金具の筒孔内に前記シーズヒータを差し込んでシースの先端側を主体金具の外部に突出させるようにしたグロープラグであって、
前記発熱コイル部をコイル主材とそのコイル主材の表面を覆う被覆層で形成し、その被覆層をPt又はPd又はRhの何れか一種又は二種以上の合金で形成するようにしたことを特徴とするグロープラグ。 - 前記発熱コイル部のコイル主材がFe−Cr−Al系合金であることを特徴とする請求項1記載のグロープラグ。
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