JP2004263648A - エンジン診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的とするところは各センサがもつ本来の制御対象用としての役割にとどめず、ノイズとして扱われる信号成分に着目し、その信号成分により制御対象とは異なるエンジンを構成するデバイスの異常・故障を判断するエンジン診断装置を提供することにある。
【解決手段】上記課題は、エンジンと、前記エンジンの運転状態及び制御状態を検知又は制御するために取り付けられた各種センサと、前記センサ信号に基づいてエンジン動作に関連するデバイスを駆動し、空気量,燃料噴射量,点火及びエンジン状態の少なくともいずれかを制御すると共に、前記センサで検出された信号のうち本来の制御対象以外の信号成分又は信号成分部分を用いて、前記検出された信号成分を発生するエンジン動作に関連するデバイスの異常又は故障を判定することを特徴とするエンジン診断方法によって達成される。
【選択図】 図1
【解決手段】上記課題は、エンジンと、前記エンジンの運転状態及び制御状態を検知又は制御するために取り付けられた各種センサと、前記センサ信号に基づいてエンジン動作に関連するデバイスを駆動し、空気量,燃料噴射量,点火及びエンジン状態の少なくともいずれかを制御すると共に、前記センサで検出された信号のうち本来の制御対象以外の信号成分又は信号成分部分を用いて、前記検出された信号成分を発生するエンジン動作に関連するデバイスの異常又は故障を判定することを特徴とするエンジン診断方法によって達成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンを構成するデバイスの診断装置にかかり、特に既存センサで検出される前記デバイス(インジェクタ・点火コイル等)の駆動信号を基に機能診断を行うエンジンの診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
欧州OBD規制に代表されるように車両の安全性及び運転性確保のため車両を構成する各デバイスにおける機能診断は必須の技術となっている。前記診断では常時各デバイスの機能に対して異常・故障がないかを判定し、万が一異常・故障が発生した場合はドライバへの警告と、安全性を最優先としたフェールセーフ機構の動作を行う。特にエンジンを構成するデバイスにおいては車両の駆動力の基となる燃焼を司る部位であり、デバイス異常・故障により異常な燃焼が発生すると運転性の悪化は顕著となり、デバイスそのものの高い信頼性の確保と確実なデバイスの機能診断が必要とされる。
【0003】
例えばノック制御ではノックセンサ自体が圧力振動を検出するものであり前述の燃料噴射弁の開弁・閉弁時の着座振動も検出してしまう。さらに高電圧をプラグに印加する点火コイルによる電気的ノイズの影響も受けてしまうため、精度よくノッキングだけを検出するためその検出(サンプリング)区間の設定やノックセンサ出力値処理等を施して制御性を向上させている。例としてフィルタを介してノックセンサ出力から取り出した振動エネルギーからあらかじめ計測しておいた所定のバックグランドノイズ相当量を差し引くことにより噴射弁等による機械振動ノイズ成分等の不要なエネルギー量を相殺し、ノッキング振動成分のみを抽出するようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。また弁可変駆動機構付きの動弁系のバルブ着座ノイズによる誤った点火時期の遅角処理を確実に防止するようにした技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−272607号公報
【特許文献2】
特開平6−147079号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示すようにエンジンを構成するデバイスに対してその機能診断を行う場合には各デバイス用に異常を検出するための電流検出回路等を付加していることが主流である。これに対し、車両を構成する各部品においてはコスト低減を目的に部品点数の削減が望まれており、エンジン制御ユニットにおいては基盤の集積化,回路部品点数の削減,共用化が推進されているのが現状である。このため診断用だけに新規に検出回路等を設けることは、コスト低減の観点でみれば相反するものであり、両要求を満足させることは重要な課題と考えられる。
【0006】
また前述のようにエンジンに取り付けられた各センサには、燃料噴射弁や点火コイルの駆動の有無がいわゆるノイズとして検出されている。しかしセンサそれぞれに制御対象が存在するためその対象に必要な信号成分だけを抽出する制御専用のセンサの役割しか果たしていないのが現状である。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、各センサがもつ本来の制御対象用としての役割にとどめず、ノイズとして扱われる信号成分に着目し、その信号成分により制御対象とは異なるエンジンを構成するデバイスの異常・故障を判断するエンジン診断装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的は、エンジンと、前記エンジンの運転状態及び制御状態を検知又は制御するために取り付けられた各種センサと、前記センサ信号に基づいてエンジン動作に関連するデバイスを駆動し、空気量,燃料噴射量,点火及びエンジン状態の少なくともいずれかを制御すると共に、前記センサで検出された信号のうち本来の制御対象以外の信号成分又は信号成分部分を用いて、前記検出された信号成分を発生するエンジン動作に関連するデバイスの異常又は故障を判定することを特徴とするエンジン診断方法によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明による実施例について、以下図面を参照して説明する。
【0010】
図1に本発明の制御ブロック図の一実施例を示す。本実施例は、ノックセンサで検出される信号を利用してエンジンを構成するデバイスの診断を実現しようとするものである。
【0011】
ノックセンサによる検出信号とエンジン回転数,運転負荷等のパラメータから診断を実施しようとするデバイスの信号成分を抽出する信号成分抽出手段101と、前記抽出された信号成分の有無及びレベルに応じてデバイスの異常・故障を判定するデバイス診断手段102とその診断結果をドライバに伝達するため警告灯105を動作させる故障警告手段103,故障時に安全性を確保するため各アクチュエータ(スロットルチャンバ(TH/C)107,インジェクタ(INJ)106,点火コイル108)を制御するフェールセーフ実行手段104から構成されている。
【0012】
またノックセンサ検出信号は本来の制御対象である点火時期制御手段111でのノッキング発生時の遅角等を行うために検出信号を用いノック周波数分析手段109,ノック判定手段110によりノッキング検出の処理が行われる。
【0013】
これにより、ノックセンサによる本来の機能(ノッキング発生時の点火時期遅角など)を満足させた上で、本来は意図せずに検出されてしまう燃料噴射弁駆動時に発生する着座信号成分や点火コイルの駆動信号成分をマスク(除外)せず逆に利用し、それらの信号成分を抽出・診断を行うことで、特別な診断用回路等の付加による部品点数の増加を回避し、燃料噴射弁及び点火コイルの異常・故障診断を可能とする。
【0014】
図2は、本実施形態において筒内噴射エンジン213の制御システムにおける全体構成を示したものである。該システムは高圧燃料ポンプ201を備えている。シリンダ229に導入される吸入空気は、エアクリーナ220の入口部219から取り入れられ、エンジンの運転状態計測手段の一つである空気流量計(エアフローセンサ)218を通り、吸気流量を制御する電制スロットル弁224が収容されたスロットルボディ221を通ってコレクタ223に入る。前記エアフローセンサ218からは、前記吸気流量を表す信号がエンジン制御装置であるコントロールユニット216に出力されている。
【0015】
また、前記スロットルボディ221には、電制スロットル弁224の開度を検出するエンジンの運転状態計測手段の一つであるスロットルセンサ217が取り付けられており、その信号もコントロールユニット216に出力されるようになっている。コントロールユニット216ではドライバのアクセル操作信号231や他の入力パラメータに基づき、スロットルボディ221に取り付けられた電制スロットルモータ222に駆動信号を出力し、スロットル弁224の開閉を行い、前記吸入空気量を制御する。
【0016】
前記コレクタ223に吸入された空気は、エンジン213の各シリンダ229に接続された各吸気管225に分配された後、前記シリンダ229の燃焼室228に導かれる。
【0017】
一方、ガソリン等の燃料は、燃料タンク205から燃料ポンプ204により一次加圧されて燃料圧力レギュレータ203により一定の圧力(例えば3kg/cm2)に調圧されるとともに、高圧燃料ポンプ201でより高い圧力に二次加圧(例えば50kg/cm2 )されてコモンレールへ圧送される。
【0018】
前記高圧燃料は各シリンダ229に設けられているインジェクタ214からコントロールユニット216の駆動信号に基づいて所定量・所定タイミングで燃焼室228に噴射される。該燃焼室228に噴射された燃料は、同様にコントロールユニット216により制御されたタイミングに点火コイル211で高電圧化された点火信号により点火プラグ215で着火される。また、排気弁のカムシャフトに取り付けられたカム角センサ207は、カムシャフトの位相を検出するための信号をコントロールユニット216に出力する。ここで、カム角センサは吸気弁側のカムシャフトに取り付けてもよい。また、エンジンのクランクシャフトの回転と位相を検出するためにクランク角センサ230をクランクシャフト軸上に設け、その出力をコントロールユニット216に入力する。
【0019】
また、異常燃焼によるノッキングを検出するためにエンジンブロックなどに取り付けられたノックセンサ226の検出信号はコントロールユニット216に入力される。
【0020】
さらに、排気管209中の触媒210の上流に設けられた空燃比センサ208は、排気ガスを検出し、その検出信号がコントロールユニット216に出力する。
【0021】
該コントロールユニット216の主要部は、図3に示すように、MPU302,ROM301,RAM303及びA/D変換器を含むI/OLSI304等で構成され、エンジンの運転状態を計測(検出)する手段の一つであるクランク角センサ230,カム角センサ207,燃圧センサ206,スロットルセンサ217,アクセルセンサ231,空燃比センサ208,ノックセンサ226,エアフローセンサ218などの各種センサ等からの信号を入力として取り込み、所定の演算処理を実行し、この演算結果として算定された各種の制御信号を出力し、各インジェクタ214,点火コイル211,電制スロットルモータ222及び高圧燃料ポンプ201の高圧ポンプソレノイドに所定の制御信号を供給して燃料噴射量制御,点火時期制御,吸入空気量制御及び高圧ポンプによる燃料圧力制御を実行するものである。このようにエンジン制御においては各種のアナログセンサが存在しており、それぞれが制御対象に合わせてフィルタ・マスク等の信号処理によって加工されて用いられているが、本発明ではこれら上記センサで検出される本来の制御対象とは異なるデバイスの信号成分を用いて、そのデバイスの異常検出・診断を行う。
【0022】
図13にエンジンを構成するデバイスとして燃料噴射弁の構造概略の一例を示す。この種の燃料噴射弁は弁座13gの上流に燃料通路を有し、固定コア13bと弁体13hを有する可動コア13fとがヨーク13c内で軸方向に配置されており、固定コア13bの周りには電磁コイル13dが設けてある。可動コア13fはリターンスプリング13aのばね力を受けて、電磁コイル13dの非通電時には弁体13hが弁座13gに接して閉弁状態となり、燃料は噴射されない。電磁コイル13dの通電により前記固定コア13b,ヨーク13c,可動コア13fが磁気回路を形成し、可動コア13fがリターンスプリング13aのばね力に抗して固定コア側に吸引,開弁状態となり燃料噴射が行われる。リターンスプリングのばね力と電磁コイルによる吸引力のバランスで弁駆動を行うため、駆動時にはそれらを構成する部材の衝突により着座振動といった圧力信号が発生する。特に筒内噴射エンジンにおいてはシリンダ内に直接燃料噴射弁が取り付けられており、爆発による筒内圧力に勝る弁閉力を実現するリターンスプリングのばね力設定と、高燃料圧力下での開弁力確保のため電磁コイルによる吸引力向上が必要であり、このため開閉弁時の部材の衝突力が大きくなり、前述した着座振動等の圧力信号も顕著に発生することになる。
【0023】
図4には吸気行程噴射のタイムチャート例を示す。4気筒エンジンを例として各シリンダの行程と燃料噴射タイミングと点火タイミングを表したものである。第1気筒(#1cyl)のTDC(図中a点)から所定時間または所定クランク角度経過したb点を基準に1気筒に対して上記燃料噴射弁の開弁駆動により燃料噴射が開始される。燃料噴射量(噴射パルス)は時間Tで設定され、T経過後に燃料噴射弁の閉弁駆動を行い、噴射が終了となる。その後、圧縮行程の所定タイミング(図中c点)において点火コイルにより点火プラグに高電圧を印加し燃焼が始まる。他の気筒においても同様に行程に応じて燃料噴射,点火が行われエンジンとして駆動力(トルク)を発生させている。いわゆる均質燃焼と呼ばれるものである。ここで筒内噴射エンジンにおいては燃費向上等を目的として、点火プラグ周辺に燃えやすい混合気を集中させ、その周りには燃料の無い空気層を形成し、全体として希薄な混合気で安定した燃焼を実現する成層燃焼を採用している。よって前記成層燃焼を実現するために圧縮行程による燃料噴射を行い燃料をプラグ近傍に集中させるような技術が主流である。図5には圧縮行程噴射のタイムチャート例を示す。図4同様に4気筒エンジンを例として記述する。第1気筒の吸気BDC点(図中d点)より所定時間または所定クランク角度経過したe点を基準として噴射パルスT1がシリンダ内に燃料噴射弁により噴射される。噴射された燃料は点火プラグ周辺に燃えやすい混合気を形成し、図中f点の火花点火により成層燃焼が行われる。このように圧縮行程での噴射とプラグ周辺への燃料集中を実現させるため燃料圧力を高圧化する必要があり、燃料噴射弁には前述したようなばね力・吸引力向上が要求される。
【0024】
このようにエンジンにおいて駆動力を発生させるために行われる燃料噴射弁および点火コイルの駆動信号がエンジンに入力されるさまざまなセンサにおいて検出されることがある。本発明で実施例として挙げたノックセンサ検出信号を図6に示す。ノックセンサはエンジンブロックに取り付けられ燃焼室内の圧力振動をブロック表面の振動として検出するものが主流とされている。よってノッキングによる圧力振動だけでなく、その他エンジンを構成するデバイスによる振動信号も検出可能となる。吸気TDC(図中a点)から所定時間・角度経過後、燃料噴射弁が開弁・噴射開始し、噴射パルスT経過後に燃料噴射弁の閉弁により燃料供給が終了する(図中b点)。このときに前述した弁を構成する部材の衝突により着座振動が発生するため、その振動成分はブロック表面に伝わりノックセンサにより検出される。また圧縮行程後期(図中c点)に行われる点火コイルによる高電圧印加での火花点火の信号成分も電気的ノイズとしてノックセンサ信号で意図せずに検出されてしまう。その後燃焼が始まり圧縮TDC付近において制御対象であるノッキング発生による圧力振動がノック成分としてセンサで検出される。このようにノックセンサには本来意図しない所謂不要な信号成分が検出されてしまうため、ノック判定領域としてセンサをサンプリングする時期を設定したり、ノッキング特有周波数帯の信号成分抽出といった処理を施してノッキング判定を行うようにしている。ここが本発明の着眼点であり、本来持つ制御対象のため除去される不要な信号成分(ここで挙げた燃料噴射弁の着座成分や点火コイルによる電気的ノイズ)を利用して、上記の燃料噴射弁及び点火コイルなどのエンジンを構成するデバイスの異常検出・故障診断を行おうとするものである。
【0025】
図7に筒内噴射エンジンの燃焼設定域の一例を示す。燃費向上を目的しておりアイドル状態,R/L負荷域といった定常運転域はほとんど成層燃焼と均質リーン燃焼でカバーされている。このような希薄燃焼領域においてはノッキングが発生しにくく、またノックセンサによるノッキング判定を行わないのが一般的とされている。逆にいえば上記希薄燃焼領域ではノックセンサにより検出される不要な成分を除去する必要はなく、それを利用して診断を行う運転域が多く存在することがいえる。もちろん、ノッキングが発生する可能性のある運転領域においてもノックセンサによるノッキング判定と平行して、処理を施さない信号を基に各デバイスの信号成分を抽出し診断を行うことは可能であり、本発明の意図するところはセンサ信号を本来持つ制御対象用のみだけの役割にとどめない事である。
【0026】
図8に図1の信号成分抽出手段101の一例を示す。ノックセンサで検出される燃料噴射弁の開閉弁駆動で発生する着座成分を抽出する方法について述べる。噴射パルスによる燃料噴射弁の開閉弁時期はコントロールユニットにより制御されているため着座成分が発生するポイントは予め予測することが可能であり、本例においては噴射パルス終了時期(図中a点)をサンプリング開始点とした。サンプリング区間STは予め運転状態等に応じてマップ,テーブル値で設定してもよいし演算式により算出してもよい。図中a点〜e点のように設定されたサンプリング区間内に検出されるノックセンサ信号の積分処理を行う。積分値は異常・故障等の判定を実施するまでピークホールド(保持)しておくこととする。同様に各気筒の噴射パルス終了時期を起点として、図中b〜f,c〜g,d〜h区間でのノックセンサ信号の積分処理を行うようにしておく。ここで3気筒(#3cyl)の燃料噴射弁において制御信号線の断線・短絡や噴射弁自体の異常により開閉弁駆動が行われなかった場合、着座振動が発生しないためノックセンサ信号の積分結果は他気筒や前回噴射時と比較して小さい値となってしまう。この積分値の有無、そのレベルを用いて診断を行うことが可能である。
【0027】
図9には上記積分値を用いた図1のデバイス診断手段102の一例を示す。所定サンプリング区間内で積分された値と異常・故障を判定するしきい値THとを比較してそれぞれの気筒の燃料噴射弁を診断するものである。2気筒で積分された値Xは診断タイミングa点でしきい値THを上回っているため異常無しと判定し、3気筒については診断タイミングb点で積分値Yがしきい値THより小さいため、異常判定を示すNGフラグをセットすることで診断を行う。本例ではしきい値THとの比較で異常判定をしているが、比較対象は各気筒の前回積分値や他気筒の積分値またはそれらから算出された平均値などを用いてもよい。さらにNGフラグのセットは1回の診断結果によらず複数回においてしきい値を下回った時点でセットするようにしてもよい。
【0028】
図10に信号成分抽出手段101での積分処理フローチャート例を示す。処理10aにて現在サンプリング区間中,積分処理中であるかを判定し、積分中であれば処理10eにより予め設定されたサンプリング区間の終了か否かを判定する。サンプリング区間が終了すれば積分処理を終了(処理10f)し、積分値を診断タイミングまでピークホールド(保持)しておく(処理10g)。処理10aにて積分中でないときは、処理10bで噴射パルス終了タイミングが否かの判定を実施する。噴射終了タイミングを例としたが本積分開始時期は噴射パルス開始タイミングやクランク角センサによる基準角度信号などを利用してもよい。積分開始は判定されれば、処理10c,10dにてノックセンサ信号の読み込み,積分処理を開始する。
【0029】
図11ではデバイス診断手段102での診断フローチャート例を示す。図9に示すような診断タイミングにより本フローチャートでの処理が行われる。まず積分値Sの読み込みを行い(処理11a)、しきい値THとの比較を行う(処理11b)。しきい値THを上回れば正常(OK)と判定する(処理11c)。しきい値を下回る場合は処理11dで本積分値Sの対象気筒を選択し、それに対応する診断結果を格納するNGフラグをセットする(処理11e)。診断が終了すれば処理11fで積分値Sをクリアし、診断処理を終了する。前述したが、診断で用いるしきい値は所定値でなくとも他気筒値,前回値,平均値でも可能である。図12にはNGカウンタを持たせた診断フローチャート例を示している。積分値Sの読み込みを行い(処理12a)、しきい値THとの比較を行う(処理12b)。しきい値THを上回れば正常(OK)と判定する(処理12c)。しきい値を下回る場合は処理12dで本積分値Sの対象気筒を選択し、それに対応するNGカウンタを加算するようにしておく(処理12e)。処理12fで積分値Sをクリアし、その後NGカウンタが所定値を超えたか否かの判定を行い(処理12g)、超えた時点で初めて当該気筒に対するNGフラグをセットするようにしたものである(処理12h)。カウンタを持つことにより誤診断を押さえることができ、診断精度が向上できる。
【0030】
上述のように、本発明の診断装置の一例として、ノックセンサによる検出信号とエンジン回転数,運転負荷等のパラメータから診断を実施しようとするデバイスの信号成分を抽出する信号成分抽出手段と、前記抽出された信号成分の有無及びレベルに応じてデバイスの異常・故障を判定するデバイス診断手段とその診断結果をドライバに伝達するための故障警告手段,故障時に安全性を確保するため各アクチュエータ(スロットルチャンバ(TH/C),インジェクタ(INJ),点火コイル)を制御するフェールセーフ実行手段から構成されている。またノックセンサ検出信号は本来の制御対象である点火時期制御手段への要求を出力するためノック周波数分析手段,ノック判定手段により処理が行われる。
【0031】
これにより、ノックセンサで意図せず検出される燃料噴射弁及び点火コイルの駆動信号成分を抽出・診断を行うことで、特別な診断用回路等の付加による部品点数の増加を回避し、燃料噴射弁及び点火コイルの異常・故障診断が可能となる。
【0032】
以上、本発明の制御装置のいくつかの実施形態について詳述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の精神を逸脱しない範囲で、設計において種々の変更ができるものである。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、ノックセンサ等のセンサ検出信号において意図せず検出される燃料噴射弁及び点火コイルの駆動信号成分を抽出・診断を行うことで、特別な診断用回路等の付加による部品点数の増加を回避し、燃料噴射弁及び点火コイルの異常・故障診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】制御ブロック図の一実施例。
【図2】筒内噴射エンジン213の制御システムにおける全体構成例。
【図3】コントロールユニット216の主要部の一例。
【図4】吸気行程噴射のタイムチャート例。
【図5】圧縮行程噴射のタイムチャート例。
【図6】ノックセンサによる検出信号の一例。
【図7】筒内噴射エンジンの燃焼設定域の一例。
【図8】信号成分抽出手段101の一例。
【図9】積分値を用いた図1のデバイス診断手段102の一例。
【図10】信号成分抽出手段101での積分処理フローチャート例。
【図11】デバイス診断手段102での診断フローチャート例。
【図12】NGカウンタを持たせた診断フローチャート例。
【図13】燃料噴射弁の構造概略の一例。
【符号の説明】
101…信号成分抽出手段、102…デバイス診断手段、103…故障警告手段、104…フェールセーフ実行手段、201…高圧燃料ポンプ、202…カム、203…燃料圧力レギュレータ、204…燃料ポンプ、205…燃料タンク、
207…カム角センサ、208…空燃比センサ、209…排気管、210…触媒、211…点火コイル、213…筒内噴射エンジン、214…インジェクタ、
215…点火プラグ、216…コントロールユニット、217…スロットルセンサ、218…空気流量計、220…エアクリーナ、221…スロットルボディ、
223…コレクタ、224…電制スロットル弁、225…吸気管、226…ノックセンサ、228…燃焼室、229…シリンダ、230…クランク角センサ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンを構成するデバイスの診断装置にかかり、特に既存センサで検出される前記デバイス(インジェクタ・点火コイル等)の駆動信号を基に機能診断を行うエンジンの診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
欧州OBD規制に代表されるように車両の安全性及び運転性確保のため車両を構成する各デバイスにおける機能診断は必須の技術となっている。前記診断では常時各デバイスの機能に対して異常・故障がないかを判定し、万が一異常・故障が発生した場合はドライバへの警告と、安全性を最優先としたフェールセーフ機構の動作を行う。特にエンジンを構成するデバイスにおいては車両の駆動力の基となる燃焼を司る部位であり、デバイス異常・故障により異常な燃焼が発生すると運転性の悪化は顕著となり、デバイスそのものの高い信頼性の確保と確実なデバイスの機能診断が必要とされる。
【0003】
例えばノック制御ではノックセンサ自体が圧力振動を検出するものであり前述の燃料噴射弁の開弁・閉弁時の着座振動も検出してしまう。さらに高電圧をプラグに印加する点火コイルによる電気的ノイズの影響も受けてしまうため、精度よくノッキングだけを検出するためその検出(サンプリング)区間の設定やノックセンサ出力値処理等を施して制御性を向上させている。例としてフィルタを介してノックセンサ出力から取り出した振動エネルギーからあらかじめ計測しておいた所定のバックグランドノイズ相当量を差し引くことにより噴射弁等による機械振動ノイズ成分等の不要なエネルギー量を相殺し、ノッキング振動成分のみを抽出するようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。また弁可変駆動機構付きの動弁系のバルブ着座ノイズによる誤った点火時期の遅角処理を確実に防止するようにした技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−272607号公報
【特許文献2】
特開平6−147079号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示すようにエンジンを構成するデバイスに対してその機能診断を行う場合には各デバイス用に異常を検出するための電流検出回路等を付加していることが主流である。これに対し、車両を構成する各部品においてはコスト低減を目的に部品点数の削減が望まれており、エンジン制御ユニットにおいては基盤の集積化,回路部品点数の削減,共用化が推進されているのが現状である。このため診断用だけに新規に検出回路等を設けることは、コスト低減の観点でみれば相反するものであり、両要求を満足させることは重要な課題と考えられる。
【0006】
また前述のようにエンジンに取り付けられた各センサには、燃料噴射弁や点火コイルの駆動の有無がいわゆるノイズとして検出されている。しかしセンサそれぞれに制御対象が存在するためその対象に必要な信号成分だけを抽出する制御専用のセンサの役割しか果たしていないのが現状である。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、各センサがもつ本来の制御対象用としての役割にとどめず、ノイズとして扱われる信号成分に着目し、その信号成分により制御対象とは異なるエンジンを構成するデバイスの異常・故障を判断するエンジン診断装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的は、エンジンと、前記エンジンの運転状態及び制御状態を検知又は制御するために取り付けられた各種センサと、前記センサ信号に基づいてエンジン動作に関連するデバイスを駆動し、空気量,燃料噴射量,点火及びエンジン状態の少なくともいずれかを制御すると共に、前記センサで検出された信号のうち本来の制御対象以外の信号成分又は信号成分部分を用いて、前記検出された信号成分を発生するエンジン動作に関連するデバイスの異常又は故障を判定することを特徴とするエンジン診断方法によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明による実施例について、以下図面を参照して説明する。
【0010】
図1に本発明の制御ブロック図の一実施例を示す。本実施例は、ノックセンサで検出される信号を利用してエンジンを構成するデバイスの診断を実現しようとするものである。
【0011】
ノックセンサによる検出信号とエンジン回転数,運転負荷等のパラメータから診断を実施しようとするデバイスの信号成分を抽出する信号成分抽出手段101と、前記抽出された信号成分の有無及びレベルに応じてデバイスの異常・故障を判定するデバイス診断手段102とその診断結果をドライバに伝達するため警告灯105を動作させる故障警告手段103,故障時に安全性を確保するため各アクチュエータ(スロットルチャンバ(TH/C)107,インジェクタ(INJ)106,点火コイル108)を制御するフェールセーフ実行手段104から構成されている。
【0012】
またノックセンサ検出信号は本来の制御対象である点火時期制御手段111でのノッキング発生時の遅角等を行うために検出信号を用いノック周波数分析手段109,ノック判定手段110によりノッキング検出の処理が行われる。
【0013】
これにより、ノックセンサによる本来の機能(ノッキング発生時の点火時期遅角など)を満足させた上で、本来は意図せずに検出されてしまう燃料噴射弁駆動時に発生する着座信号成分や点火コイルの駆動信号成分をマスク(除外)せず逆に利用し、それらの信号成分を抽出・診断を行うことで、特別な診断用回路等の付加による部品点数の増加を回避し、燃料噴射弁及び点火コイルの異常・故障診断を可能とする。
【0014】
図2は、本実施形態において筒内噴射エンジン213の制御システムにおける全体構成を示したものである。該システムは高圧燃料ポンプ201を備えている。シリンダ229に導入される吸入空気は、エアクリーナ220の入口部219から取り入れられ、エンジンの運転状態計測手段の一つである空気流量計(エアフローセンサ)218を通り、吸気流量を制御する電制スロットル弁224が収容されたスロットルボディ221を通ってコレクタ223に入る。前記エアフローセンサ218からは、前記吸気流量を表す信号がエンジン制御装置であるコントロールユニット216に出力されている。
【0015】
また、前記スロットルボディ221には、電制スロットル弁224の開度を検出するエンジンの運転状態計測手段の一つであるスロットルセンサ217が取り付けられており、その信号もコントロールユニット216に出力されるようになっている。コントロールユニット216ではドライバのアクセル操作信号231や他の入力パラメータに基づき、スロットルボディ221に取り付けられた電制スロットルモータ222に駆動信号を出力し、スロットル弁224の開閉を行い、前記吸入空気量を制御する。
【0016】
前記コレクタ223に吸入された空気は、エンジン213の各シリンダ229に接続された各吸気管225に分配された後、前記シリンダ229の燃焼室228に導かれる。
【0017】
一方、ガソリン等の燃料は、燃料タンク205から燃料ポンプ204により一次加圧されて燃料圧力レギュレータ203により一定の圧力(例えば3kg/cm2)に調圧されるとともに、高圧燃料ポンプ201でより高い圧力に二次加圧(例えば50kg/cm2 )されてコモンレールへ圧送される。
【0018】
前記高圧燃料は各シリンダ229に設けられているインジェクタ214からコントロールユニット216の駆動信号に基づいて所定量・所定タイミングで燃焼室228に噴射される。該燃焼室228に噴射された燃料は、同様にコントロールユニット216により制御されたタイミングに点火コイル211で高電圧化された点火信号により点火プラグ215で着火される。また、排気弁のカムシャフトに取り付けられたカム角センサ207は、カムシャフトの位相を検出するための信号をコントロールユニット216に出力する。ここで、カム角センサは吸気弁側のカムシャフトに取り付けてもよい。また、エンジンのクランクシャフトの回転と位相を検出するためにクランク角センサ230をクランクシャフト軸上に設け、その出力をコントロールユニット216に入力する。
【0019】
また、異常燃焼によるノッキングを検出するためにエンジンブロックなどに取り付けられたノックセンサ226の検出信号はコントロールユニット216に入力される。
【0020】
さらに、排気管209中の触媒210の上流に設けられた空燃比センサ208は、排気ガスを検出し、その検出信号がコントロールユニット216に出力する。
【0021】
該コントロールユニット216の主要部は、図3に示すように、MPU302,ROM301,RAM303及びA/D変換器を含むI/OLSI304等で構成され、エンジンの運転状態を計測(検出)する手段の一つであるクランク角センサ230,カム角センサ207,燃圧センサ206,スロットルセンサ217,アクセルセンサ231,空燃比センサ208,ノックセンサ226,エアフローセンサ218などの各種センサ等からの信号を入力として取り込み、所定の演算処理を実行し、この演算結果として算定された各種の制御信号を出力し、各インジェクタ214,点火コイル211,電制スロットルモータ222及び高圧燃料ポンプ201の高圧ポンプソレノイドに所定の制御信号を供給して燃料噴射量制御,点火時期制御,吸入空気量制御及び高圧ポンプによる燃料圧力制御を実行するものである。このようにエンジン制御においては各種のアナログセンサが存在しており、それぞれが制御対象に合わせてフィルタ・マスク等の信号処理によって加工されて用いられているが、本発明ではこれら上記センサで検出される本来の制御対象とは異なるデバイスの信号成分を用いて、そのデバイスの異常検出・診断を行う。
【0022】
図13にエンジンを構成するデバイスとして燃料噴射弁の構造概略の一例を示す。この種の燃料噴射弁は弁座13gの上流に燃料通路を有し、固定コア13bと弁体13hを有する可動コア13fとがヨーク13c内で軸方向に配置されており、固定コア13bの周りには電磁コイル13dが設けてある。可動コア13fはリターンスプリング13aのばね力を受けて、電磁コイル13dの非通電時には弁体13hが弁座13gに接して閉弁状態となり、燃料は噴射されない。電磁コイル13dの通電により前記固定コア13b,ヨーク13c,可動コア13fが磁気回路を形成し、可動コア13fがリターンスプリング13aのばね力に抗して固定コア側に吸引,開弁状態となり燃料噴射が行われる。リターンスプリングのばね力と電磁コイルによる吸引力のバランスで弁駆動を行うため、駆動時にはそれらを構成する部材の衝突により着座振動といった圧力信号が発生する。特に筒内噴射エンジンにおいてはシリンダ内に直接燃料噴射弁が取り付けられており、爆発による筒内圧力に勝る弁閉力を実現するリターンスプリングのばね力設定と、高燃料圧力下での開弁力確保のため電磁コイルによる吸引力向上が必要であり、このため開閉弁時の部材の衝突力が大きくなり、前述した着座振動等の圧力信号も顕著に発生することになる。
【0023】
図4には吸気行程噴射のタイムチャート例を示す。4気筒エンジンを例として各シリンダの行程と燃料噴射タイミングと点火タイミングを表したものである。第1気筒(#1cyl)のTDC(図中a点)から所定時間または所定クランク角度経過したb点を基準に1気筒に対して上記燃料噴射弁の開弁駆動により燃料噴射が開始される。燃料噴射量(噴射パルス)は時間Tで設定され、T経過後に燃料噴射弁の閉弁駆動を行い、噴射が終了となる。その後、圧縮行程の所定タイミング(図中c点)において点火コイルにより点火プラグに高電圧を印加し燃焼が始まる。他の気筒においても同様に行程に応じて燃料噴射,点火が行われエンジンとして駆動力(トルク)を発生させている。いわゆる均質燃焼と呼ばれるものである。ここで筒内噴射エンジンにおいては燃費向上等を目的として、点火プラグ周辺に燃えやすい混合気を集中させ、その周りには燃料の無い空気層を形成し、全体として希薄な混合気で安定した燃焼を実現する成層燃焼を採用している。よって前記成層燃焼を実現するために圧縮行程による燃料噴射を行い燃料をプラグ近傍に集中させるような技術が主流である。図5には圧縮行程噴射のタイムチャート例を示す。図4同様に4気筒エンジンを例として記述する。第1気筒の吸気BDC点(図中d点)より所定時間または所定クランク角度経過したe点を基準として噴射パルスT1がシリンダ内に燃料噴射弁により噴射される。噴射された燃料は点火プラグ周辺に燃えやすい混合気を形成し、図中f点の火花点火により成層燃焼が行われる。このように圧縮行程での噴射とプラグ周辺への燃料集中を実現させるため燃料圧力を高圧化する必要があり、燃料噴射弁には前述したようなばね力・吸引力向上が要求される。
【0024】
このようにエンジンにおいて駆動力を発生させるために行われる燃料噴射弁および点火コイルの駆動信号がエンジンに入力されるさまざまなセンサにおいて検出されることがある。本発明で実施例として挙げたノックセンサ検出信号を図6に示す。ノックセンサはエンジンブロックに取り付けられ燃焼室内の圧力振動をブロック表面の振動として検出するものが主流とされている。よってノッキングによる圧力振動だけでなく、その他エンジンを構成するデバイスによる振動信号も検出可能となる。吸気TDC(図中a点)から所定時間・角度経過後、燃料噴射弁が開弁・噴射開始し、噴射パルスT経過後に燃料噴射弁の閉弁により燃料供給が終了する(図中b点)。このときに前述した弁を構成する部材の衝突により着座振動が発生するため、その振動成分はブロック表面に伝わりノックセンサにより検出される。また圧縮行程後期(図中c点)に行われる点火コイルによる高電圧印加での火花点火の信号成分も電気的ノイズとしてノックセンサ信号で意図せずに検出されてしまう。その後燃焼が始まり圧縮TDC付近において制御対象であるノッキング発生による圧力振動がノック成分としてセンサで検出される。このようにノックセンサには本来意図しない所謂不要な信号成分が検出されてしまうため、ノック判定領域としてセンサをサンプリングする時期を設定したり、ノッキング特有周波数帯の信号成分抽出といった処理を施してノッキング判定を行うようにしている。ここが本発明の着眼点であり、本来持つ制御対象のため除去される不要な信号成分(ここで挙げた燃料噴射弁の着座成分や点火コイルによる電気的ノイズ)を利用して、上記の燃料噴射弁及び点火コイルなどのエンジンを構成するデバイスの異常検出・故障診断を行おうとするものである。
【0025】
図7に筒内噴射エンジンの燃焼設定域の一例を示す。燃費向上を目的しておりアイドル状態,R/L負荷域といった定常運転域はほとんど成層燃焼と均質リーン燃焼でカバーされている。このような希薄燃焼領域においてはノッキングが発生しにくく、またノックセンサによるノッキング判定を行わないのが一般的とされている。逆にいえば上記希薄燃焼領域ではノックセンサにより検出される不要な成分を除去する必要はなく、それを利用して診断を行う運転域が多く存在することがいえる。もちろん、ノッキングが発生する可能性のある運転領域においてもノックセンサによるノッキング判定と平行して、処理を施さない信号を基に各デバイスの信号成分を抽出し診断を行うことは可能であり、本発明の意図するところはセンサ信号を本来持つ制御対象用のみだけの役割にとどめない事である。
【0026】
図8に図1の信号成分抽出手段101の一例を示す。ノックセンサで検出される燃料噴射弁の開閉弁駆動で発生する着座成分を抽出する方法について述べる。噴射パルスによる燃料噴射弁の開閉弁時期はコントロールユニットにより制御されているため着座成分が発生するポイントは予め予測することが可能であり、本例においては噴射パルス終了時期(図中a点)をサンプリング開始点とした。サンプリング区間STは予め運転状態等に応じてマップ,テーブル値で設定してもよいし演算式により算出してもよい。図中a点〜e点のように設定されたサンプリング区間内に検出されるノックセンサ信号の積分処理を行う。積分値は異常・故障等の判定を実施するまでピークホールド(保持)しておくこととする。同様に各気筒の噴射パルス終了時期を起点として、図中b〜f,c〜g,d〜h区間でのノックセンサ信号の積分処理を行うようにしておく。ここで3気筒(#3cyl)の燃料噴射弁において制御信号線の断線・短絡や噴射弁自体の異常により開閉弁駆動が行われなかった場合、着座振動が発生しないためノックセンサ信号の積分結果は他気筒や前回噴射時と比較して小さい値となってしまう。この積分値の有無、そのレベルを用いて診断を行うことが可能である。
【0027】
図9には上記積分値を用いた図1のデバイス診断手段102の一例を示す。所定サンプリング区間内で積分された値と異常・故障を判定するしきい値THとを比較してそれぞれの気筒の燃料噴射弁を診断するものである。2気筒で積分された値Xは診断タイミングa点でしきい値THを上回っているため異常無しと判定し、3気筒については診断タイミングb点で積分値Yがしきい値THより小さいため、異常判定を示すNGフラグをセットすることで診断を行う。本例ではしきい値THとの比較で異常判定をしているが、比較対象は各気筒の前回積分値や他気筒の積分値またはそれらから算出された平均値などを用いてもよい。さらにNGフラグのセットは1回の診断結果によらず複数回においてしきい値を下回った時点でセットするようにしてもよい。
【0028】
図10に信号成分抽出手段101での積分処理フローチャート例を示す。処理10aにて現在サンプリング区間中,積分処理中であるかを判定し、積分中であれば処理10eにより予め設定されたサンプリング区間の終了か否かを判定する。サンプリング区間が終了すれば積分処理を終了(処理10f)し、積分値を診断タイミングまでピークホールド(保持)しておく(処理10g)。処理10aにて積分中でないときは、処理10bで噴射パルス終了タイミングが否かの判定を実施する。噴射終了タイミングを例としたが本積分開始時期は噴射パルス開始タイミングやクランク角センサによる基準角度信号などを利用してもよい。積分開始は判定されれば、処理10c,10dにてノックセンサ信号の読み込み,積分処理を開始する。
【0029】
図11ではデバイス診断手段102での診断フローチャート例を示す。図9に示すような診断タイミングにより本フローチャートでの処理が行われる。まず積分値Sの読み込みを行い(処理11a)、しきい値THとの比較を行う(処理11b)。しきい値THを上回れば正常(OK)と判定する(処理11c)。しきい値を下回る場合は処理11dで本積分値Sの対象気筒を選択し、それに対応する診断結果を格納するNGフラグをセットする(処理11e)。診断が終了すれば処理11fで積分値Sをクリアし、診断処理を終了する。前述したが、診断で用いるしきい値は所定値でなくとも他気筒値,前回値,平均値でも可能である。図12にはNGカウンタを持たせた診断フローチャート例を示している。積分値Sの読み込みを行い(処理12a)、しきい値THとの比較を行う(処理12b)。しきい値THを上回れば正常(OK)と判定する(処理12c)。しきい値を下回る場合は処理12dで本積分値Sの対象気筒を選択し、それに対応するNGカウンタを加算するようにしておく(処理12e)。処理12fで積分値Sをクリアし、その後NGカウンタが所定値を超えたか否かの判定を行い(処理12g)、超えた時点で初めて当該気筒に対するNGフラグをセットするようにしたものである(処理12h)。カウンタを持つことにより誤診断を押さえることができ、診断精度が向上できる。
【0030】
上述のように、本発明の診断装置の一例として、ノックセンサによる検出信号とエンジン回転数,運転負荷等のパラメータから診断を実施しようとするデバイスの信号成分を抽出する信号成分抽出手段と、前記抽出された信号成分の有無及びレベルに応じてデバイスの異常・故障を判定するデバイス診断手段とその診断結果をドライバに伝達するための故障警告手段,故障時に安全性を確保するため各アクチュエータ(スロットルチャンバ(TH/C),インジェクタ(INJ),点火コイル)を制御するフェールセーフ実行手段から構成されている。またノックセンサ検出信号は本来の制御対象である点火時期制御手段への要求を出力するためノック周波数分析手段,ノック判定手段により処理が行われる。
【0031】
これにより、ノックセンサで意図せず検出される燃料噴射弁及び点火コイルの駆動信号成分を抽出・診断を行うことで、特別な診断用回路等の付加による部品点数の増加を回避し、燃料噴射弁及び点火コイルの異常・故障診断が可能となる。
【0032】
以上、本発明の制御装置のいくつかの実施形態について詳述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の精神を逸脱しない範囲で、設計において種々の変更ができるものである。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、ノックセンサ等のセンサ検出信号において意図せず検出される燃料噴射弁及び点火コイルの駆動信号成分を抽出・診断を行うことで、特別な診断用回路等の付加による部品点数の増加を回避し、燃料噴射弁及び点火コイルの異常・故障診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】制御ブロック図の一実施例。
【図2】筒内噴射エンジン213の制御システムにおける全体構成例。
【図3】コントロールユニット216の主要部の一例。
【図4】吸気行程噴射のタイムチャート例。
【図5】圧縮行程噴射のタイムチャート例。
【図6】ノックセンサによる検出信号の一例。
【図7】筒内噴射エンジンの燃焼設定域の一例。
【図8】信号成分抽出手段101の一例。
【図9】積分値を用いた図1のデバイス診断手段102の一例。
【図10】信号成分抽出手段101での積分処理フローチャート例。
【図11】デバイス診断手段102での診断フローチャート例。
【図12】NGカウンタを持たせた診断フローチャート例。
【図13】燃料噴射弁の構造概略の一例。
【符号の説明】
101…信号成分抽出手段、102…デバイス診断手段、103…故障警告手段、104…フェールセーフ実行手段、201…高圧燃料ポンプ、202…カム、203…燃料圧力レギュレータ、204…燃料ポンプ、205…燃料タンク、
207…カム角センサ、208…空燃比センサ、209…排気管、210…触媒、211…点火コイル、213…筒内噴射エンジン、214…インジェクタ、
215…点火プラグ、216…コントロールユニット、217…スロットルセンサ、218…空気流量計、220…エアクリーナ、221…スロットルボディ、
223…コレクタ、224…電制スロットル弁、225…吸気管、226…ノックセンサ、228…燃焼室、229…シリンダ、230…クランク角センサ。
Claims (8)
- エンジンと、前記エンジンの運転状態及び制御状態を検知又は制御するために取り付けられた各種センサと、前記センサ信号に基づいてエンジン動作に関連するデバイスを駆動し、空気量,燃料噴射量,点火及びエンジン状態の少なくともいずれかを制御すると共に、
前記センサで検出された信号のうち本来の制御対象以外の信号成分又は信号成分部分を用いて、前記検出された信号成分を発生するエンジン動作に関連するデバイスの異常又は故障を判定することを特徴とするエンジン診断方法。 - 請求項1に記載のエンジン診断方法において、前記異常・故障の判定は、前記デバイスにより発生する信号成分の有り無し或いは所定値との比較により行うことを特徴とするエンジン診断方法。
- 請求項1に記載のエンジン診断方法において、前記センサはエンジンのノッキング発生を検出するために取り付けられたノックセンサであり、前記ノックセンサにより検出される振動成分、又は電気ノイズの信号成分に基づいてエンジンを作動,構成するデバイスを診断することを特徴とするエンジン診断方法。
- 請求項1に記載のエンジン診断方法において、前記制御対象以外の信号成分又は信号成分部分の抽出は、デバイスが発生する信号成分の時期に合わせてサンプリング区間を所定時間または角度で設定しておくことを特徴とするエンジン診断方法。
- 請求項1に記載のエンジン診断方法において、前記信号成分又は信号成分部分の抽出は、所定区間内で検出されたセンサ信号を積分処理して算出することを特徴とするエンジン診断方法。
- 請求項1に記載のエンジン診断方法において、前記デバイスは燃料を供給する燃料噴射弁とし、その駆動によって発生する振動成分をノックセンサで検出された振動信号から抽出し、前記燃料噴射弁の異常又は故障の判定を行うことを特徴とするエンジン診断方法。
- 請求項1に記載のエンジン診断方法において、前記デバイスは火花点火を実現する点火コイルであり、点火の高電圧印加時に発生する電気的ノイズがセンサで検出されたか否かを判定し、前記点火コイルの異常又は故障の判定を行うことを特徴とするエンジン診断方法。
- ノッキング発生を検出するためにエンジンに取り付けられたノックセンサと、前記ノックセンサの検出信号を信号処理し、前記処理された信号に基づいてにノッキング判定を行い、点火時期制御により点火時期の補正を行うと共に、
前記ノックセンサにより検出されるノッキング以外の振動およびノイズ成分からエンジンを構成する各種デバイスの診断を行う機能を備えたことを特徴とするエンジン制御方法。
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