JP2004263234A - 異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法および異方性希土類ボンド磁石の製造方法 - Google Patents
異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法および異方性希土類ボンド磁石の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】製造が容易であり、かつ、磁気異方性が良好な希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】希土類元素および鉄を含む原料を溶解させ、それにより得た溶湯を急冷して原料片を製造し、その原料片を粉砕して原料粉末とし、続いてその原料粉末を金属筒に封入して金属筒を加熱下で塑性変形させて異方性磁石塊を製造し、その異方性磁石塊を粉砕して異方性ボンド磁石用の磁石粉末を製造する方法において、金属筒内に充填する原料粉末に、セラミックス粉末を混合する。このようにすると、異方性磁石塊にはセラミックス粉末が分散しているので比較的弱い力で粉砕できる。従って、簡易な粉砕機を用いて磁石粉末を製造することが可能となるので、磁石粉末の製造が容易になる。また、強い破壊力で粉砕する必要がなくなると、粒形のつぶれや変形が少なくなることから、磁石粉末の磁気異方性が良好に保持される。
【選択図】 図4
【解決手段】希土類元素および鉄を含む原料を溶解させ、それにより得た溶湯を急冷して原料片を製造し、その原料片を粉砕して原料粉末とし、続いてその原料粉末を金属筒に封入して金属筒を加熱下で塑性変形させて異方性磁石塊を製造し、その異方性磁石塊を粉砕して異方性ボンド磁石用の磁石粉末を製造する方法において、金属筒内に充填する原料粉末に、セラミックス粉末を混合する。このようにすると、異方性磁石塊にはセラミックス粉末が分散しているので比較的弱い力で粉砕できる。従って、簡易な粉砕機を用いて磁石粉末を製造することが可能となるので、磁石粉末の製造が容易になる。また、強い破壊力で粉砕する必要がなくなると、粒形のつぶれや変形が少なくなることから、磁石粉末の磁気異方性が良好に保持される。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法、および、その磁石粉末を用いた異方性希土類ボンド磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類系の磁石は、高磁力が得られることから、情報・通信、医療、自動車分野での部品・機械の小型化、軽量化、薄型化、高性能化、省電力化などにとって欠かせないものとなっている。
【0003】
希土類系の磁石は、製造方法の違いから、焼結磁石、熱間加工磁石およびボンド磁石に大別される。このうち、ボンド磁石は、磁石粉末と樹脂バインダーとを混合して成形するので、寸法精度がよく、また、形状の自由度が大きいという特徴がある。この特徴から、ボンド磁石は精密機器用のモータなどに用いられている。
【0004】
また、磁石には等方性磁石と異方性磁石とがあり、異方性磁石の方が磁気特性に優れていることから、異方性磁石とした希土類系ボンド磁石が提案されている。その一例として、まず、異方性熱間加工磁石を製造して、その磁石を粉砕して磁石粉末を得て、その磁石粉末と樹脂バインダーとから希土類系異方性ボンド磁石を製造する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1では、まず、希土類−鉄−ボロン系磁石合金の超急冷リボンから得た粉末を金属筒内に充填して雰囲気制御可能な加熱プレス内に置き、非酸化性雰囲気下に、温度650〜900℃で、この金属筒ごと、その軸方向に一軸圧縮して磁石合金の粒子に塑性変形を生じさせている。塑性変形の程度は、圧縮比が3.0〜20の範囲が好ましいとされている。このように、合金の粉末を高温で塑性変形することにより、原料粉末が径方向に変形されて結晶粒が一様に偏平とされるので、磁気異方性磁石が生じる。そして、その磁気異方性磁石を粉砕してボンド磁石用の異方性磁石材料を製造している。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−233323号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、異方性磁石とするために希土類−鉄−ボロン系磁石合金の粉末を高温で塑性変形させると、比較的硬い合金塊ができることから、その合金塊を粉砕するためには強い破壊力が必要となるので、比較的高価な粉砕機が必要となる。また、強い力で粉砕されるので、一部の結晶粒形につぶれや変形(丸形化)が生じて異方性が低下してしまうという問題があった。また、その一部の結晶粒形の変形により、ボンド磁石成形時の充填率が低下してしまうので、その磁石粉末から製造したボンド磁石の磁気特性が低くなってしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、製造が容易であり、かつ、磁気異方性が良好な希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法を提供すること、および、磁気特性の良い異方性希土類ボンド磁石の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、希土類元素および鉄を含む原料を溶解させる溶解工程と、その溶解工程により溶解させられたその原料の溶湯を急冷して原料片を製造する超急冷工程と、その超急冷工程により得られた原料片を粉砕して原料粉末を製造する粉砕工程と、その粉砕工程により製造された原料粉末を金属筒内に充填して、その金属筒を非酸素雰囲気中において加熱下で塑性変形させて異方性磁石塊を製造する熱間加工工程と、その熱間加工工程において製造された異方性磁石塊を粉砕して、磁石粉末を製造する粉末製造工程とを含む異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法であって、前記金属筒内に充填する前記原料粉末に、セラミックス粉末を混合することを特徴とする。
【0009】
【第1発明の効果】
このようにすれば、原料粉末にセラミックス粉末が混合された後に、その混合物が金属筒に充填されて、熱間加工工程においてその混合物が塑性変形させられる。この塑性変形により得られた異方性磁石塊には、セラミックス粉末が分散しており、金属製である原料粉末同士は結合しているが、セラミックス粉末同士やセラミックス粉末と原料粉末とは結合しないので、この異方性磁石塊は比較的弱い力で粉砕できる。従って、粉末製造工程では、簡易な粉砕機を用いて磁石粉末を製造することが可能となるので、磁石粉末の製造が容易になる。また、強い破壊力で粉砕する必要がなくなると、粒形のつぶれや変形が少なくなることから、磁石粉末の磁気異方性が良好に保持される。
【0010】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明は、前記製造方法により製造された磁石粉末を用いて異方性希土類ボンド磁石を製造する方法である。すなわちその製造方法は、前記製法方法により製造された磁石粉末と、樹脂バインダーとを混合する混合工程と、その混合工程により混合された混合物を所定の形状に成形してボンド磁石を製造する成形工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
【第2発明の効果】
この発明によれば、前記製造方法により製造された磁石粉末は、粒形のつぶれや変形が少なく、磁石粉末の形状が揃っていることから、ボンド磁石成形時の充填率が向上するので、磁気特性の良いボンド磁石が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の磁石粉末の製造方法は、たとえば、図1に示す工程P1〜P7からなる。
【0013】
溶解工程P1では、目的の磁石粉末を製造するための原料(たとえば、ネオジム、鉄、ホウ素などが所定の割合で配合された原料)が溶解させられる。溶解は、上記原料に高周波を加えることにより行われる。
【0014】
超急冷工程P2では、図2に示すように、アルゴンガスなどの不活性雰囲気下において、所定の周速で回転させられているロール10に、上記溶解工程P1で溶解させられた溶湯12が噴射され、回転させられているロール10に接触させられることにより溶湯12が急冷されて、リボン14と呼ばれる偏平な原料片が形成される。上記ロール10の周速は、磁石合金の組成によって異なるが、たとえば、20〜45m/秒である。また、ロール10の材質には、熱伝導度が高い銅、または、銅とクロムやベリリウムなどとの合金が用いられる。この超急冷工程P2により製造されるリボン14の厚さは、10〜40μm程度である。
【0015】
粉砕工程P3は、超急冷工程P2で得られたリボン14が、ピンミルやボールミルなどによって、所定の粒径(たとえば300μm)以下の粉末となるまで粉砕されて、原料粉末が製造される。
【0016】
混合工程P4では、上記原料粉末にセラミックス粉末が混合される。上記セラミックス粉末は、熱間アップセット工程P6において加えられる熱によって溶解せず、且つ、上記原料粉末と反応しないものであればよいので、窒化ホウ素(BN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)などの一般的なセラミックスを用いることができる。セラミックス粉末の混合割合は、原料粉末に対して2重量%〜20重量%が好ましい。2重量%よりも少なすぎると、熱間アップセット工程P6により製造される磁石塊において金属製の原料粉末同士の結合が強くなりすぎて、磁石塊が固くなりすぎることから好ましくなく、20重量%を超えると、常磁性材料であるセラミックス粉末の割合が多すぎることに起因して、最終的に製造されるボンド磁石の磁気特性が低下するので好ましくない。
【0017】
封入工程P5では、上記混合工程P4により原料粉末とセラミックス粉末とが所定割合で混合された混合物が、金属製であって円筒などの所定の形状の筒に封入される。
【0018】
熱間加工工程である熱間アップセット工程P6では、上記封入工程P5で原料粉末とセラミックス粉末の混合物が封入された金属筒が、加熱加圧可能なダイの上に載置され、加熱中に金属に酸化反応が生じないように、真空状態、またはアルゴンガスなど不活性ガス雰囲気とされた状態で、所定の温度に加熱された上で、軸方向に加圧されて、金属筒は加圧前に比べて軸方向に潰れた偏平な円柱となる。加熱温度は、温度が低すぎると原料粉末の異方性化が不十分となり、温度が高すぎると合金の保磁力が低くなってしまうことから、100℃〜900℃の範囲が好ましく、特に、650℃〜900℃の範囲が好ましい。この熱間アップセット工程P6により、原料粉末の結晶は径方向に塑性変形されて偏平となり、その変形により各原料粉末の磁化方向が揃うので、この工程P6により得られた偏平な円柱状の合金塊は、異方性磁石となっている。
【0019】
粉末製造工程P7では、熱間アップセット工程P6により得られた合金塊が、ローターミルなどの簡易な粉砕機で粉砕されることにより、異方性の磁石粉末が製造される。
【0020】
図3は、上記のようにして得られた異方性磁石粉末を用いてボンド磁石を製造する工程を示す図である。
【0021】
混合工程P8では、図1の工程を経て得られた異方性磁石粉末と、樹脂バインダーとが混合させられる。上記樹脂バインダーには特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であっても、ナイロンなどの熱可塑性樹脂であってもよい。また、それらのバインダー樹脂には、カップリング剤や滑剤が添加されてもよい。
【0022】
成形工程P9では、混合工程P8で混合させられた異方性磁石粉末と樹脂バインダーとの混合物が、圧縮成形、射出成形、押し出し成形などの成形方法によって所定の形状に成形されて、ゴム磁石、射出成形磁石、圧縮成形磁石、押し出し磁石などの異方性ボンド磁石が製造される。なお、圧縮成形など、成形過程において磁石粉末の配向方向が一様とならない成形では、所定の強さの磁場中において成形されるが、成形過程において磁石粉末の配向方向が一様となる成形の場合には、磁場の印加はされない。
【0023】
【実験例】
以下、本発明の効果を検証する為に本発明者がおこなった実験例について説明する。
[試料製造条件]
試料は以下のようにして製造した。まず、ネオジム、鉄、ホウ素、コバルト、ガリウムを原子組成比でそれぞれ、13.7%、73.5%、5.5%、6.7%、0.6%含む磁石合金の原料をアルゴン雰囲気中で高周波溶解した後、周速35m/sで高速回転している銅製のロール上に溶湯を噴射することにより急冷して、リボンを得た。そのリボンを粉砕し、得られたフレーク状粉末を約300μmのふるいにかけ、大きい粉末を取り除いた。続いて、そのフレーク状粉末に対して10重量%のBN粉末(ボロンナイトライド粉末)を混合した。次に、その混合物を円筒状の金属筒に充填した。そして、その金属筒を、アルゴン雰囲気中750℃で加工率が90%となるようにプレスして異方性Nd−Fe−B磁石合金とした。続いて、プレス後の金属筒を室温まで冷却し、金属筒を開いてその磁石合金を取り出し、簡易な粉砕機であるロータミルで粉砕して粉末とした。そして、得られた粉末にエポキシ樹脂を2重量%混合し、その混合物を圧縮成形により成形して、縦5mm×横5mm×高さ10mmの角柱形の異方性ボンド磁石とした。また、比較試料として、セラミックス粉末を混合しないこと以外は上記と同じ方法で、異方性ボンド磁石を製造した。
【0024】
[試料の測定]
得られたボンド磁石の磁気特性は、BHループトレーサーにより測定した。測定結果を図4および表1に示す。
【0025】
図4および表1から、セラミックス粉末を加えた磁石は、非磁性のセラミックス粉末が加えられているにもかかわらず、磁気特性が向上していることが分かる。
【0026】
上述の実施例によれば、原料粉末にセラミックス粉末が混合された後に、その混合物が金属筒に充填されて、熱間アップセット工程P6においてその混合物が塑性変形させられる。この塑性変形により得られた異方性磁石塊には、セラミックス粉末が分散しており、金属製である原料粉末同士は結合しているが、セラミックス粉末同士やセラミックス粉末と原料粉末とは結合しないので、この異方性磁石塊は比較的弱い力で粉砕できる。従って、粉末製造工程P7では、ローターミルなどの簡易な粉砕機を用いて磁石粉末を製造することが可能となるので、磁石粉末の製造が容易になる。また、強い破壊力で粉砕する必要がなくなると、粒形のつぶれや変形が少なくなることから、磁石粉末の磁気異方性が良好に保持される。
【0027】
また、上述の実施例によれば、磁石粉末は、粒形のつぶれや変形が少なく、磁石粉末の形状が揃っていることから、ボンド磁石成形時の充填率が向上するので、磁気特性の良いボンド磁石が得られる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに別の態様においても実施される。
【0029】
たとえば、前述の実施例においては、原料粉末とセラミックス粉末との混合物は、封入工程P5で筒内に封入された後、そのまま熱間アップセット工程P6において加工されていたが、封入工程P5と熱間アップセット工程P6との間に、原料粉末とセラミックス粉末との混合物をプレスして固めるプレス工程が設けられてもよい。
【0030】
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁石粉末の製造工程を説明する工程図である。
【図2】図1の超急冷工程を説明する図である。
【図3】本発明のボンド磁石の製造工程を説明する工程図である。
【図4】本発明の効果を検証する為の実験例の結果を示す拡大減磁曲線である。
【符号の説明】
10:ロール
12:溶湯
14:リボン(原料片)
【発明の属する技術分野】
本発明は、異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法、および、その磁石粉末を用いた異方性希土類ボンド磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類系の磁石は、高磁力が得られることから、情報・通信、医療、自動車分野での部品・機械の小型化、軽量化、薄型化、高性能化、省電力化などにとって欠かせないものとなっている。
【0003】
希土類系の磁石は、製造方法の違いから、焼結磁石、熱間加工磁石およびボンド磁石に大別される。このうち、ボンド磁石は、磁石粉末と樹脂バインダーとを混合して成形するので、寸法精度がよく、また、形状の自由度が大きいという特徴がある。この特徴から、ボンド磁石は精密機器用のモータなどに用いられている。
【0004】
また、磁石には等方性磁石と異方性磁石とがあり、異方性磁石の方が磁気特性に優れていることから、異方性磁石とした希土類系ボンド磁石が提案されている。その一例として、まず、異方性熱間加工磁石を製造して、その磁石を粉砕して磁石粉末を得て、その磁石粉末と樹脂バインダーとから希土類系異方性ボンド磁石を製造する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1では、まず、希土類−鉄−ボロン系磁石合金の超急冷リボンから得た粉末を金属筒内に充填して雰囲気制御可能な加熱プレス内に置き、非酸化性雰囲気下に、温度650〜900℃で、この金属筒ごと、その軸方向に一軸圧縮して磁石合金の粒子に塑性変形を生じさせている。塑性変形の程度は、圧縮比が3.0〜20の範囲が好ましいとされている。このように、合金の粉末を高温で塑性変形することにより、原料粉末が径方向に変形されて結晶粒が一様に偏平とされるので、磁気異方性磁石が生じる。そして、その磁気異方性磁石を粉砕してボンド磁石用の異方性磁石材料を製造している。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−233323号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、異方性磁石とするために希土類−鉄−ボロン系磁石合金の粉末を高温で塑性変形させると、比較的硬い合金塊ができることから、その合金塊を粉砕するためには強い破壊力が必要となるので、比較的高価な粉砕機が必要となる。また、強い力で粉砕されるので、一部の結晶粒形につぶれや変形(丸形化)が生じて異方性が低下してしまうという問題があった。また、その一部の結晶粒形の変形により、ボンド磁石成形時の充填率が低下してしまうので、その磁石粉末から製造したボンド磁石の磁気特性が低くなってしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、製造が容易であり、かつ、磁気異方性が良好な希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法を提供すること、および、磁気特性の良い異方性希土類ボンド磁石の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、希土類元素および鉄を含む原料を溶解させる溶解工程と、その溶解工程により溶解させられたその原料の溶湯を急冷して原料片を製造する超急冷工程と、その超急冷工程により得られた原料片を粉砕して原料粉末を製造する粉砕工程と、その粉砕工程により製造された原料粉末を金属筒内に充填して、その金属筒を非酸素雰囲気中において加熱下で塑性変形させて異方性磁石塊を製造する熱間加工工程と、その熱間加工工程において製造された異方性磁石塊を粉砕して、磁石粉末を製造する粉末製造工程とを含む異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法であって、前記金属筒内に充填する前記原料粉末に、セラミックス粉末を混合することを特徴とする。
【0009】
【第1発明の効果】
このようにすれば、原料粉末にセラミックス粉末が混合された後に、その混合物が金属筒に充填されて、熱間加工工程においてその混合物が塑性変形させられる。この塑性変形により得られた異方性磁石塊には、セラミックス粉末が分散しており、金属製である原料粉末同士は結合しているが、セラミックス粉末同士やセラミックス粉末と原料粉末とは結合しないので、この異方性磁石塊は比較的弱い力で粉砕できる。従って、粉末製造工程では、簡易な粉砕機を用いて磁石粉末を製造することが可能となるので、磁石粉末の製造が容易になる。また、強い破壊力で粉砕する必要がなくなると、粒形のつぶれや変形が少なくなることから、磁石粉末の磁気異方性が良好に保持される。
【0010】
【課題を解決するための第2の手段】
また、前記目的を達成するための第2発明は、前記製造方法により製造された磁石粉末を用いて異方性希土類ボンド磁石を製造する方法である。すなわちその製造方法は、前記製法方法により製造された磁石粉末と、樹脂バインダーとを混合する混合工程と、その混合工程により混合された混合物を所定の形状に成形してボンド磁石を製造する成形工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
【第2発明の効果】
この発明によれば、前記製造方法により製造された磁石粉末は、粒形のつぶれや変形が少なく、磁石粉末の形状が揃っていることから、ボンド磁石成形時の充填率が向上するので、磁気特性の良いボンド磁石が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の磁石粉末の製造方法は、たとえば、図1に示す工程P1〜P7からなる。
【0013】
溶解工程P1では、目的の磁石粉末を製造するための原料(たとえば、ネオジム、鉄、ホウ素などが所定の割合で配合された原料)が溶解させられる。溶解は、上記原料に高周波を加えることにより行われる。
【0014】
超急冷工程P2では、図2に示すように、アルゴンガスなどの不活性雰囲気下において、所定の周速で回転させられているロール10に、上記溶解工程P1で溶解させられた溶湯12が噴射され、回転させられているロール10に接触させられることにより溶湯12が急冷されて、リボン14と呼ばれる偏平な原料片が形成される。上記ロール10の周速は、磁石合金の組成によって異なるが、たとえば、20〜45m/秒である。また、ロール10の材質には、熱伝導度が高い銅、または、銅とクロムやベリリウムなどとの合金が用いられる。この超急冷工程P2により製造されるリボン14の厚さは、10〜40μm程度である。
【0015】
粉砕工程P3は、超急冷工程P2で得られたリボン14が、ピンミルやボールミルなどによって、所定の粒径(たとえば300μm)以下の粉末となるまで粉砕されて、原料粉末が製造される。
【0016】
混合工程P4では、上記原料粉末にセラミックス粉末が混合される。上記セラミックス粉末は、熱間アップセット工程P6において加えられる熱によって溶解せず、且つ、上記原料粉末と反応しないものであればよいので、窒化ホウ素(BN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)などの一般的なセラミックスを用いることができる。セラミックス粉末の混合割合は、原料粉末に対して2重量%〜20重量%が好ましい。2重量%よりも少なすぎると、熱間アップセット工程P6により製造される磁石塊において金属製の原料粉末同士の結合が強くなりすぎて、磁石塊が固くなりすぎることから好ましくなく、20重量%を超えると、常磁性材料であるセラミックス粉末の割合が多すぎることに起因して、最終的に製造されるボンド磁石の磁気特性が低下するので好ましくない。
【0017】
封入工程P5では、上記混合工程P4により原料粉末とセラミックス粉末とが所定割合で混合された混合物が、金属製であって円筒などの所定の形状の筒に封入される。
【0018】
熱間加工工程である熱間アップセット工程P6では、上記封入工程P5で原料粉末とセラミックス粉末の混合物が封入された金属筒が、加熱加圧可能なダイの上に載置され、加熱中に金属に酸化反応が生じないように、真空状態、またはアルゴンガスなど不活性ガス雰囲気とされた状態で、所定の温度に加熱された上で、軸方向に加圧されて、金属筒は加圧前に比べて軸方向に潰れた偏平な円柱となる。加熱温度は、温度が低すぎると原料粉末の異方性化が不十分となり、温度が高すぎると合金の保磁力が低くなってしまうことから、100℃〜900℃の範囲が好ましく、特に、650℃〜900℃の範囲が好ましい。この熱間アップセット工程P6により、原料粉末の結晶は径方向に塑性変形されて偏平となり、その変形により各原料粉末の磁化方向が揃うので、この工程P6により得られた偏平な円柱状の合金塊は、異方性磁石となっている。
【0019】
粉末製造工程P7では、熱間アップセット工程P6により得られた合金塊が、ローターミルなどの簡易な粉砕機で粉砕されることにより、異方性の磁石粉末が製造される。
【0020】
図3は、上記のようにして得られた異方性磁石粉末を用いてボンド磁石を製造する工程を示す図である。
【0021】
混合工程P8では、図1の工程を経て得られた異方性磁石粉末と、樹脂バインダーとが混合させられる。上記樹脂バインダーには特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であっても、ナイロンなどの熱可塑性樹脂であってもよい。また、それらのバインダー樹脂には、カップリング剤や滑剤が添加されてもよい。
【0022】
成形工程P9では、混合工程P8で混合させられた異方性磁石粉末と樹脂バインダーとの混合物が、圧縮成形、射出成形、押し出し成形などの成形方法によって所定の形状に成形されて、ゴム磁石、射出成形磁石、圧縮成形磁石、押し出し磁石などの異方性ボンド磁石が製造される。なお、圧縮成形など、成形過程において磁石粉末の配向方向が一様とならない成形では、所定の強さの磁場中において成形されるが、成形過程において磁石粉末の配向方向が一様となる成形の場合には、磁場の印加はされない。
【0023】
【実験例】
以下、本発明の効果を検証する為に本発明者がおこなった実験例について説明する。
[試料製造条件]
試料は以下のようにして製造した。まず、ネオジム、鉄、ホウ素、コバルト、ガリウムを原子組成比でそれぞれ、13.7%、73.5%、5.5%、6.7%、0.6%含む磁石合金の原料をアルゴン雰囲気中で高周波溶解した後、周速35m/sで高速回転している銅製のロール上に溶湯を噴射することにより急冷して、リボンを得た。そのリボンを粉砕し、得られたフレーク状粉末を約300μmのふるいにかけ、大きい粉末を取り除いた。続いて、そのフレーク状粉末に対して10重量%のBN粉末(ボロンナイトライド粉末)を混合した。次に、その混合物を円筒状の金属筒に充填した。そして、その金属筒を、アルゴン雰囲気中750℃で加工率が90%となるようにプレスして異方性Nd−Fe−B磁石合金とした。続いて、プレス後の金属筒を室温まで冷却し、金属筒を開いてその磁石合金を取り出し、簡易な粉砕機であるロータミルで粉砕して粉末とした。そして、得られた粉末にエポキシ樹脂を2重量%混合し、その混合物を圧縮成形により成形して、縦5mm×横5mm×高さ10mmの角柱形の異方性ボンド磁石とした。また、比較試料として、セラミックス粉末を混合しないこと以外は上記と同じ方法で、異方性ボンド磁石を製造した。
【0024】
[試料の測定]
得られたボンド磁石の磁気特性は、BHループトレーサーにより測定した。測定結果を図4および表1に示す。
【0025】
図4および表1から、セラミックス粉末を加えた磁石は、非磁性のセラミックス粉末が加えられているにもかかわらず、磁気特性が向上していることが分かる。
【0026】
上述の実施例によれば、原料粉末にセラミックス粉末が混合された後に、その混合物が金属筒に充填されて、熱間アップセット工程P6においてその混合物が塑性変形させられる。この塑性変形により得られた異方性磁石塊には、セラミックス粉末が分散しており、金属製である原料粉末同士は結合しているが、セラミックス粉末同士やセラミックス粉末と原料粉末とは結合しないので、この異方性磁石塊は比較的弱い力で粉砕できる。従って、粉末製造工程P7では、ローターミルなどの簡易な粉砕機を用いて磁石粉末を製造することが可能となるので、磁石粉末の製造が容易になる。また、強い破壊力で粉砕する必要がなくなると、粒形のつぶれや変形が少なくなることから、磁石粉末の磁気異方性が良好に保持される。
【0027】
また、上述の実施例によれば、磁石粉末は、粒形のつぶれや変形が少なく、磁石粉末の形状が揃っていることから、ボンド磁石成形時の充填率が向上するので、磁気特性の良いボンド磁石が得られる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに別の態様においても実施される。
【0029】
たとえば、前述の実施例においては、原料粉末とセラミックス粉末との混合物は、封入工程P5で筒内に封入された後、そのまま熱間アップセット工程P6において加工されていたが、封入工程P5と熱間アップセット工程P6との間に、原料粉末とセラミックス粉末との混合物をプレスして固めるプレス工程が設けられてもよい。
【0030】
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁石粉末の製造工程を説明する工程図である。
【図2】図1の超急冷工程を説明する図である。
【図3】本発明のボンド磁石の製造工程を説明する工程図である。
【図4】本発明の効果を検証する為の実験例の結果を示す拡大減磁曲線である。
【符号の説明】
10:ロール
12:溶湯
14:リボン(原料片)
Claims (3)
- 希土類元素および鉄を含む原料を溶解させる溶解工程と、
該溶解工程により溶解させられた該原料の溶湯を急冷して原料片を製造する超急冷工程と、
該超急冷工程により得られた原料片を粉砕して原料粉末を製造する粉砕工程と、
該粉砕工程により製造された原料粉末を金属筒内に充填して、該金属筒を非酸素雰囲気中において加熱下で塑性変形させて異方性磁石塊を製造する熱間加工工程と、
該熱間加工工程において製造された異方性磁石塊を粉砕して、磁石粉末を製造する粉末製造工程と
を含む異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法であって、
前記金属筒内に充填する前記原料粉末に、セラミックス粉末を混合することを特徴とする製造方法。 - 前記原料粉末に混合される前記セラミックス粉末は、該原料粉末に対して2〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法により製造された磁石粉末と、樹脂バインダーとを混合する混合工程と、
該混合工程により混合された混合物を所定の形状に成形してボンド磁石を製造する成形工程と
を含むことを特徴とする異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
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JP2003053584A JP2004263234A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | 異方性希土類ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法および異方性希土類ボンド磁石の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN107186551A (zh) * | 2017-06-30 | 2017-09-22 | 辽宁科技大学 | 一种陶瓷管内表面抛光装置及抛光方法 |
-
2003
- 2003-02-28 JP JP2003053584A patent/JP2004263234A/ja active Pending
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