JP2007123467A - 異方性磁石の製造方法 - Google Patents
異方性磁石の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2007123467A JP2007123467A JP2005312347A JP2005312347A JP2007123467A JP 2007123467 A JP2007123467 A JP 2007123467A JP 2005312347 A JP2005312347 A JP 2005312347A JP 2005312347 A JP2005312347 A JP 2005312347A JP 2007123467 A JP2007123467 A JP 2007123467A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- magnetic powder
- rolling
- anisotropic magnet
- iron
- rare earth
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Manufacturing Cores, Coils, And Magnets (AREA)
- Powder Metallurgy (AREA)
Abstract
【課題】希土類−鉄系異方性磁石を効率よく製造する。
【解決手段】圧延ロール22a、22b間のクリアランスに充填された希土類−鉄系急冷磁粉32を、ケーシング26内を不活性ガス雰囲気とした後、直流電源30から通電を行うことによって塑性変形可能温度以上融点未満、好適には粒成長開始温度未満に加熱する。そして、急冷磁粉32を圧延ロール22a、22bによって成形するとともに塑性変形させる。この際、急冷磁粉32の圧下率が少なくとも20%となるように、圧延加工条件を設定する。
【選択図】図1
【解決手段】圧延ロール22a、22b間のクリアランスに充填された希土類−鉄系急冷磁粉32を、ケーシング26内を不活性ガス雰囲気とした後、直流電源30から通電を行うことによって塑性変形可能温度以上融点未満、好適には粒成長開始温度未満に加熱する。そして、急冷磁粉32を圧延ロール22a、22bによって成形するとともに塑性変形させる。この際、急冷磁粉32の圧下率が少なくとも20%となるように、圧延加工条件を設定する。
【選択図】図1
Description
本発明は、磁気的特性が異方性を示す希土類−鉄系異方性磁石の製造方法に関する。
Sm−Fe−N系合金やNd−Fe−B系合金からなる磁石は、磁区が特定方向又は特定面に配向する性質を有し、このため、該磁石の磁気的特性に異方性が発現する。また、通常、この磁石には磁粉同士を結合するための樹脂バインダが含まれていることから、該磁石は、異方性ボンド磁石とも呼称されるが、単に異方性磁石と呼称されることもある。
例えば、Nd−Fe−B系異方性磁石は、Nd−Fe−B系合金のインゴットを粉砕して得られた磁粉を磁場中で成形して成形体とし、次に、この成形体を焼結することによって得られる。また、特許文献1においては、所定の組成の合金をフレーク化した後にさらに粉砕し、粉砕物を成形(高密度化)、塑性変形(磁気異方性付与)、熱処理、冷却、再粉砕を行って磁粉を得、該磁粉に対して樹脂バインダを添加した後、磁場中で圧縮成形を行い、次に加熱して樹脂バインダを硬化させて異方性磁石とすることが提案されている。
しかしながら、このように成形と塑性変形を別工程として実施する場合、必然的に工程数が増えるので、異方性磁石の生産効率が低下してしまうという不具合がある。
粉末からの成形と塑性変形とを同時に行う手法としては、特許文献2記載の技術が知られている。すなわち、該特許文献2には、1対の圧延ロール間に難加工性の粉末を流入させ、該圧延ロールに通電することで前記粉末を加熱しながら圧延することにより前記粉末同士を熱間圧着させて板材を得ることが提案されている。
希土類−鉄系磁粉を単純に塑性変形させるのみでは、磁気的異方性を大きくすることは容易ではない。換言すれば、磁粉の磁区が特定方向又は特定面に容易に配向するような条件下で塑性変形を行わなければ、磁気的性質が等方性に近づき易くなる。このため、残留磁気等の諸特性が所望の値を下回ることがある。
従って、磁区が配向し易いように塑性変形時の条件を設定する必要があるが、この点に関し、前記特許文献2には何らの開示もなされていない。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、磁区を配向させることが容易であり、このために優れた諸特性を示す異方性磁石を得ることが可能な異方性磁石の製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、アトマイズ法で得られた希土類−鉄系急冷磁粉を圧延加工して平板状の異方性磁石を形成する異方性磁石の製造方法であって、
不活性雰囲気中で塑性変形可能温度以上融点未満の温度に加熱された希土類−鉄系急冷磁粉を、次式(1)で定義される圧下率が少なくとも20%となるまで圧延ロールで圧延加工を施すことを特徴とする。
不活性雰囲気中で塑性変形可能温度以上融点未満の温度に加熱された希土類−鉄系急冷磁粉を、次式(1)で定義される圧下率が少なくとも20%となるまで圧延ロールで圧延加工を施すことを特徴とする。
この場合、平板形状の異方性磁石が得られるに至る。
このようにして得られた異方性磁石を積層及び接合して、積層型の異方性磁石を設けるようにしてもよい。すなわち、本発明は、平板状の希土類−鉄系異方性磁石が複数個積層されてなる積層型の異方性磁石の製造方法であって、
アトマイズ法によって得られ、且つ不活性雰囲気中で塑性変形可能温度以上融点未満の温度に加熱された希土類−鉄系急冷磁粉を、次式(1)で定義される圧下率が少なくとも20%となるまで圧延ロールで圧延加工を施して平板状の希土類−鉄系異方性磁石を形成する工程と、
複数個の前記平板状の異方性磁石同士を積層及び接合する工程と、
を有することを特徴とする。
アトマイズ法によって得られ、且つ不活性雰囲気中で塑性変形可能温度以上融点未満の温度に加熱された希土類−鉄系急冷磁粉を、次式(1)で定義される圧下率が少なくとも20%となるまで圧延ロールで圧延加工を施して平板状の希土類−鉄系異方性磁石を形成する工程と、
複数個の前記平板状の異方性磁石同士を積層及び接合する工程と、
を有することを特徴とする。
なお、磁粉を加熱する好適な方法としては、圧延ロールに通電して該圧延ロールを加熱し、これにより熱を帯びた圧延ロールから磁粉に熱を伝達させる方法を挙げることができる。
これとは別に、上記した平板形状の異方性磁石を粉砕して磁粉とし、この磁粉を所定形状に加工して様々な形状の異方性磁石を作製するようにしてもよい。すなわち、本発明は、希土類−鉄系磁粉が成形されてなる異方性磁石の製造方法であって、
アトマイズ法によって得られ、且つ不活性雰囲気中で塑性変形可能温度以上融点未満の温度に加熱された希土類−鉄系急冷磁粉を、次式(1)で定義される圧下率が少なくとも20%となるまで圧延ロールで圧延加工を施して平板状の希土類−鉄系異方性磁石を形成する工程と、
前記異方性磁石を粉砕して磁粉とする工程と、
前記磁粉と樹脂バインダとを混合して混合物とする工程と、
前記混合物を磁場中で成形する工程と、
を有することを特徴とする。
アトマイズ法によって得られ、且つ不活性雰囲気中で塑性変形可能温度以上融点未満の温度に加熱された希土類−鉄系急冷磁粉を、次式(1)で定義される圧下率が少なくとも20%となるまで圧延ロールで圧延加工を施して平板状の希土類−鉄系異方性磁石を形成する工程と、
前記異方性磁石を粉砕して磁粉とする工程と、
前記磁粉と樹脂バインダとを混合して混合物とする工程と、
前記混合物を磁場中で成形する工程と、
を有することを特徴とする。
以上から諒解されるように、本発明においては、圧下率が20%以上となるように急冷磁粉が圧延加工される。後述するように、圧下率が大きいと結晶の配向指数が大きくなり、磁気的異方性の大きさの指標となる磁気配向率も大きくなる。
このようにして磁気配向率を大きくすることにより、磁化容易軸に沿う磁気的特性を大きくすることができ、結局、磁気的特性に優れた異方性磁石を容易に作製することができる。
なお、急冷磁粉にはアモルファス相が存在する。このアモルファス相は、急冷磁粉に対して塑性変形が施される温度において、液相に変化する。この変化に伴い、急冷磁粉に再配列が生じ、塑性変形方向に揃う。すなわち、急冷磁粉が自発的に配向し、その結果、異方性が発現する。また、圧延ロールに対して通電を行った場合、この電流によっても磁化される。
そして、以上の本発明によれば、圧延加工によって急冷磁粉が成形されるとともに塑性変形が施される。従って、異方性磁石を効率よく得ることができ、このために異方性磁石を低コストで作製することができる。
ここで、圧延加工によって得られた異方性磁石を粉砕して磁粉とし、この磁粉を成形して異方性磁石とする場合、圧延ロール、ひいては出発原料である磁粉を加熱するべく圧延ロールに通電すると、この段階で磁粉が大きく磁化される。そこで、前記粉砕を実施する際に消磁を行うことが好ましい。
いずれの場合においても、出発原料である希土類−鉄系急冷磁粉の好適な例としては、Nd−Fe−B系急冷磁粉を挙げることができる。
本発明によれば、圧下率が20%以上となるように急冷磁粉を圧延加工するようにしている。圧下率が大きいと結晶の配向指数が大きくなり、磁気的異方性も大きくなるので、磁化容易軸に沿う磁気的特性を大きくすることができる。
また、本発明においては、急冷磁粉に対して圧延加工を施す際に急冷磁粉の成形と塑性変形が営まれる。このため、異方性磁石を効率よく作製することができる。
結局、本発明によれば、磁気的特性に優れた異方性磁石を容易に、しかも、高効率で作製することができる。
以下、本発明に係る異方性磁石の製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、Nd−Fe−B系磁石を作製する場合を例示する。
図1は、図2に示す平板形状の異方性磁石10を製造するための圧延加工装置20の概略構成を示す概略正面断面図である。この圧延加工装置20は、互いに対向して配置された1対の圧延ロール22a、22bを有し、該圧延ロール22a、22bの各々は、油圧シリンダ24a、24bを介してケーシング26に支持されている。すなわち、圧延ロール22a、22b同士の間隔、換言すれば、ロールギャップは、油圧シリンダ24a、24bを構成するロッド26a、26bを変位させることによって調整可能である。
この場合、圧延ロール22a、22bはグラファイトからなり、底面の直径が200mm、高さが25mmのディスク形状に近い円柱体である。また、図示しない制御回路によって任意の周速で回転動作する。
そして、圧延ロール22a、22bには、リード線28a、28bを介して直流電源30が電気的に接続されている。すなわち、圧延ロール22a、22bに対しては、直流電源30から通電を行うことが可能である。
ケーシング26の下端面及び上端面には、それぞれ、開閉可能な蓋部材(図示せず)が設けられており、これら蓋部材の双方が閉止されることに伴い、ケーシング26の内部が気密状態となる。下端面に設けられた蓋部材が開放されると、異方性磁石10を取り出すことが可能となり、上端面に設けられた蓋部材が開放されると、急冷磁粉32を充填することが可能となる。
ケーシング26には、給気ポート34及び排気ポート36が設けられている。給気ポートには図示しない不活性ガスボンベが連結されており、排気ポート36には図示しない吸引ポンプが連結されている。前記吸引ポンプの作用下に排気ポート36を介してケーシング26の気体を排気する一方、図示しない不活性ガスボンベから給気ポート34を介してケーシング26に不活性ガスを供給することにより、ケーシング26の内部が不活性ガス雰囲気に置換される。
異方性磁石10は、この圧延加工装置20によって以下のようにして作製される。
先ず、原材料であるNd−Fe−B系合金の急冷磁粉32につき説明する。この急冷磁粉32としては、アトマイズ法によって得られたものが使用される。アトマイズ法では、103K/秒程度以上の大きな冷却速度で溶湯が冷却され、このためにアモルファス相が形成される。
また、アトマイズ法で得られた粉末(急冷磁粉32)は、長径と短径を有する偏平板形状となる。すなわち、本実施の形態においては、偏平板形状の急冷磁粉32に対して圧延加工が施される。
このようなNd−Fe−B系合金の急冷磁粉32を、圧延ロール22a、22b間のクリアランスに充填する。この状態で、ケーシング26の内部を不活性ガス雰囲気に置換する。この置換は、上記したように、ケーシング26の内部に存在する気体を排気ポート36から排気した後、前記不活性ガスボンベから給気ポート34を介してケーシング26に不活性ガスを供給することによって実施される。
次に、直流電源30からの通電を開始する。これにより圧延ロール22a、22bが昇温され、熱を帯びる。この熱が急冷磁粉32に伝達され、結局、急冷磁粉32が加熱される。
この際、直流電源30から供給される電流は、急冷磁粉32が塑性変形可能な温度以上であり、且つ急冷磁粉32の融点未満の温度範囲に設定される。また、融点未満であっても、急冷磁粉32同士が焼結して粒成長を起こすことのない温度未満とすることが好ましい。急冷磁粉32が粒成長を起こして粗大化すると、保磁力が低下するからである。
この観点から、急冷磁粉32がNd−Fe−B系合金である本実施の形態においては、該急冷磁粉32の温度を600〜900℃の範囲内とすることが好ましい。600℃未満では圧延加工を施すことが容易ではなく、一方、900℃を超えると、急冷磁粉32が粗大化する傾向が現れる。
この場合、急冷磁粉32を上記した温度範囲とするには、直流電源30から供給される電流の電流密度を0.5〜0.83kA/cm2とすることが好ましく、0.73〜0.8kA/cm2とすることがより好ましい。
なお、この通電により、急冷磁粉32が磁化される。すなわち、急冷磁粉32に保磁力が発現する。また、圧延加工装置20のケーシング26内が不活性ガス雰囲気に置換されているので、加熱に伴って急冷磁粉32が酸化されることがない。
そして、圧延ロール22a、22b間の距離、すなわち、ロールギャップを調整することにより、急冷磁粉32に加わる荷重が0.2〜0.7トン/cm2の範囲内となるように設定する。その後、圧延ロール22a、22bを回転付勢する。
圧延ロール22a、22bの周速は、次式(1)で定義される圧下率が少なくとも20%となるように設定される。
ここで、式(1)中の平均厚さは、急冷磁粉32の短径寸法の平均を表す。
圧下率が20%未満となる場合、圧延加工が施されて成形された磁石中に含まれる急冷磁粉32の結晶配向性が小さくなる。従って、該磁石は、磁気的異方性が乏しく、このために所望の諸特性を得ることが困難となる。
諸条件を上記したように設定する本実施の形態では、圧延ロール22a、22bの周速を0.25〜1mm/秒に設定することが好ましい。1mm/秒を超えると、圧延ロール22a、22bにおける急冷磁粉32の噛み込み角(急冷磁粉32に加圧力を付与可能な角度)が小さくなるので、圧下率を20%以上とすることが容易ではない。また、圧延ロール22a、22bの底面の直径が200mmである本実施の形態において、周速を0.25mm/秒未満とするには、圧延ロール22a、22bの回転・回転停止を繰り返す必要があり、このために成形品である磁石の板厚が不均一となる。また、生産効率も低下する。
特に好ましい周速は、0.5mm/秒である。この場合、圧下率を70%程度と大きくすることができ、後述する結晶の配向指数も8%以上となる。
圧延ロール22a、22bが回転付勢されることに伴い、急冷磁粉32の圧延加工が開始される。塑性変形可能温度以上融点以下、好ましくは粒成長温度以下に昇温された急冷磁粉32は、圧延ロール22a、22bの間を通過する間に先ず圧潰され、次に圧延加工(塑性変形加工)が施されて、相対密度が90%以上の平板形状となる。上記した諸条件下では、この間に急冷磁粉32と圧延ロール22a、22bとが反応を起こすこともない。
上記したように、急冷磁粉32にはアモルファス相が存在する。このアモルファス相は、急冷磁粉32に対して圧延加工が施される温度において液相に変化する。これにより急冷磁粉32に再配列が生じ、その粒子が圧延加工方向に揃う。すなわち、圧延加工が施されることに伴い、急冷磁粉32が配向した状態で平板が得られる。
この平板における圧延された表面のX線回折パターンを、焼結によって得られたNd−Fe−B系異方性焼結磁石のX線回折パターンとともに図3に併せて示す。この図3から、両回折パターンにおいて、Nd2Fe14B結晶構造の磁化容易軸である(00X)面及び(105)面のピーク強度が著しく大きいことが認められる。このことから、上記のようにして得られた平板が、磁気的異方性を示す異方性磁石であることが諒解される。
圧下率を種々変更した場合の配向指数の変化を、図4に示す。ここで、配向指数は、次式(2)によって求めたFaを、式(3)によって求めたFiで除すことによって求めた値である。
すなわち、次式(4)が成立する。
配向指数=Fa/Fi …(4)
配向指数=Fa/Fi …(4)
一方、圧下率は、得られた平板の側面を光学顕微鏡で観察して視野に現れた急冷磁粉32の平均厚み(短径の平均寸法)を求め、この平均厚みを、圧延加工前の急冷磁粉32の平均厚みから差し引き、その差を圧延加工前の急冷磁粉32の平均厚みで除すことによって算出される(上記式(1)参照)。
図4から、圧下率と配向指数は略直線関係にあり、圧下率を大きくすることで結晶の配向性を大きくすることができることが分かる。すなわち、本実施の形態によれば、高密度を有し且つ磁気的異方性の大きな平板形状の磁石10(図2参照)を効率よく作製することができる。
なお、出発原料として使用した急冷磁粉32の平均厚みが30μm程度であるとき、圧下率が約70%であれば板厚が約0.7mmの平板が得られ、約20%であれば約1.7mmの平板が得られる。
上記のようにして得られた平板形状の異方性磁石10は、その状態でも使用可能であるが、図5に示すように、得られた異方性磁石10同士を積層して積層型異方性磁石40を構成するようにしてもよい。この場合エポキシ樹脂等の接着剤によって異方性磁石10同士を接合すればよい。
また、異方性磁石10を用い、例えば、図6に示すリング状異方性磁石42等の所定形状の磁石を作製することもできる。この場合、上記の手順に従って得られた異方性磁石10を粉砕し、分級を行って磁粉とする。前記の通電によってもたらされた磁力を解消するべく、この磁粉に対し、消磁が実施される。具体的には、磁粉をキュリー点(およそ400℃)以上に加熱すればよい。
次に、この磁粉と樹脂バインダとを混練して混合物とする。ここで、樹脂バインダとしては、液体状の熱硬化性樹脂、又は、固体状熱硬化性樹脂を溶媒に溶解してペースト状としたものが好適である。粉末状熱硬化性樹脂を磁粉に混合するようにしてもよい。
次に、この混合物を磁場内で圧縮成形する。磁場が加えられることにより、大多数の磁粉は、それ自身が有する磁区の方向が磁場方向に指向するように揺動される。換言すれば、磁粉が揺動された結果、該磁粉の磁区の方向が磁場方向に指向して配向される。そして、圧縮成形によって成形体となる。
最後に、この成形体を加熱処理する。この加熱処理により樹脂バインダが硬化され、その結果、磁粉同士が強固に接着される。この接着により前記成形体が硬化され、大多数の磁区が一方向に揃って配向されたリング状異方性磁石42が得られるに至る。
このリング状異方性磁石42における磁場配向方向に沿う残留磁束密度Br1と、該磁場配向方向に直交する方向の残留磁束密度Br2(単位はともにkG)を求め、次式(5)に従って磁気配向率を算出した。
この磁気配向率と、前記配向指数との関係をグラフにして図7に示す。この図7と前記図4から、圧下率を大きくして配向指数を大きくすることにより、磁気配向率、ひいては磁気的異方性が大きく、諸特性に優れたリング状異方性磁石42を構成できることが明らかである。
なお、圧延ロールの周速、圧延圧力、直流電源30から供給される電流の電流密度は、上記した条件に限定されるものではなく、圧延ロールの寸法や材質、電気抵抗率、熱伝導率、磁粉の材質等に応じて適宜設定される。
また、急冷磁粉32の加熱方法は、圧延ロール22a、22bに対して通電を行うことに限定されるものではない。例えば、急冷磁粉32を圧延ロール22a、22bに供給する前に一旦貯蔵しておくホッパを設け、このホッパに通電して該ホッパを加熱するようにしてもよい。加熱方法も、通電による抵抗加熱(ジュール熱加熱)に特に限定されるものではなく、例えば、高周波加熱を行うようにしてもよい。
いずれの場合においても、急冷磁粉としては、希土類と鉄とが含まれるものであればよく、Nd−Fe−B系合金急冷磁粉に限定されるものでないことはいうまでもない。
急冷凝固粉末であるMQP−A(マグネクエンチ社製のNd−Fe−B系磁粉の商標)を、図1に示す圧延加工装置20の圧延ロール22a、22b間のクリアランスに充填した。その後、排気ポート36を介してケーシング26内を真空排気し、さらに、給気ポート34から不活性ガスを供給して、ケーシング26内を不活性ガス雰囲気とした。
そして、圧延ロール22a、22bを周速を0.5mm/秒として回転付勢した後、ロールギャップを調整して荷重を調整しながら、電流密度を上昇させた。最終的な電流密度は、0.54kA/cm2であった。
前記急冷磁粉32は以上の条件下で圧延加工され、その結果、板厚およそ1.5mmの平板形状の異方性磁石10(図2参照)が得られた。上記式(1)、(4)に従って圧下率、配向指数をそれぞれ求めたところ、約40%、約4.8であった。
この異方性磁石10の表面に生成したグラファイト変質層をビーズブラストで除去した後、カッターミルで該異方性磁石10を粉砕して磁粉とした。この磁粉に対し、2重量%の割合でエポキシ樹脂を添加し、さらに、潤滑剤を混合して混合物とした。
この混合物を直方体形状のキャビティに充填した後、20kOe、10トン/cm2の条件下で磁場成形及び樹脂バインダの硬化を行い、相対密度82%の直方体形状の異方性ボンド磁石を得た。
この異方性ボンド磁石につき、BHトレーサで磁気的特性を評価するとともにX線回折装置で配向指数を求めたところ、配向指数は約4であり、磁気配向率は70%、残留磁束密度8.4kG、保磁力13.2kOe、BHmax16.8MOeであった。
円弧状圧延ロールを使用するとともに、最終的な電流密度を0.68kA/cm2としたことを除いては実施例1に準拠して、板厚およそ1mmの平板形状の異方性磁石10を得た。この場合、圧下率、配向指数は、それぞれ、約55%、約6.2であった。
その後、実施例1に準拠して磁場成形及び樹脂バインダの硬化を行い、相対密度81%の円弧状形状の異方性ボンド磁石を得た。この異方性ボンド磁石の配向指数は約5であり、磁気配向率は73%、残留磁束密度8.8kG、保磁力13kOe、BHmax18.2MOeであった。
円弧状とした場合、磁束密度が正弦波に近似する。このため、該異方性ボンド磁石を用いてモータ等を構成すれば、高出力が得られる。
従前から、このような円弧状磁石は、直方体形状の磁石を先ず作製し、次に、この磁石に対して機械加工を施すこと等によって形成されている。これに対し、本実施例によれば、圧延ロールを円弧状に形成することで、円弧状の異方性ボンド磁石を容易に得ることが可能となる。このように、圧延加工時に成形することで、直方体から機械加工等によって円弧状磁石を作製していた従前に比して、原材料の歩留まりが向上するとともに、工程数が減少して生産効率も向上する。
最終的な電流密度を0.63kA/cm2としたことを除いては実施例1に準拠して、板厚およそ1.4mm、圧下率約35%、配向指数3.6である平板形状の異方性磁石10を複数個得た。
各異方性磁石10からグラファイト変質層をビーズブラストで除去した後、エポキシ樹脂を接着剤としてこれらを積層するとともに接合し、積層型異方性磁石40(図5参照)とした。
得られた積層型異方性磁石につき、実施例1、2と同様にBHトレーサを使用して磁気的特性を評価した。その結果、磁気配向率69%、残留磁束密度10.2kG、保磁力12.3kOe、BHmax23.6MOeであった。
10、40、42…異方性磁石 20…圧延加工装置
22a、22b…圧延ロール 24a、24b…油圧シリンダ
26…ケーシング 30…直流電源
32…急冷磁粉 34…給気ポート
36…排気ポート
22a、22b…圧延ロール 24a、24b…油圧シリンダ
26…ケーシング 30…直流電源
32…急冷磁粉 34…給気ポート
36…排気ポート
Claims (6)
- 請求項1又は2記載の製造方法において、前記圧延ロールに通電して該圧延ロールを加熱することで前記磁粉を加熱することを特徴とする異方性磁石の製造方法。
- 請求項4記載の製造方法において、前記圧延ロールに通電して該圧延ロールを加熱することで出発原料である前記磁粉を加熱し、前記粉砕を実施する際に消磁を行うことを特徴とする異方性磁石の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法において、出発原料である希土類−鉄系急冷磁粉として、Nd−Fe−B系急冷磁粉を使用することを特徴とする異方性磁石の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005312347A JP2007123467A (ja) | 2005-10-27 | 2005-10-27 | 異方性磁石の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005312347A JP2007123467A (ja) | 2005-10-27 | 2005-10-27 | 異方性磁石の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007123467A true JP2007123467A (ja) | 2007-05-17 |
Family
ID=38146998
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005312347A Pending JP2007123467A (ja) | 2005-10-27 | 2005-10-27 | 異方性磁石の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007123467A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20130052206A (ko) * | 2011-11-11 | 2013-05-22 | 현대자동차주식회사 | 알루미늄 판재의 기계적 이방성 개선방법 및 그 방법으로 제조된 알루미늄 판재 |
JP2021087985A (ja) * | 2019-12-05 | 2021-06-10 | 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 | ジュール熱金属圧延装置 |
CN116544023A (zh) * | 2023-07-04 | 2023-08-04 | 包头新达磁性材料有限公司 | 一种钕铁硼稀土永磁材料压型装置 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH01297805A (ja) * | 1988-05-26 | 1989-11-30 | Daido Steel Co Ltd | 磁気的異方性粉末および異方性プラスチック磁石 |
JPH02102504A (ja) * | 1988-10-12 | 1990-04-16 | Nippon Steel Corp | 希土類−鉄−ほう素系異方性磁石粉の製造方法 |
JPH0366105A (ja) * | 1989-08-04 | 1991-03-20 | Nippon Steel Corp | 希土類系異方性粉末および希土類系異方性磁石 |
JP2000235909A (ja) * | 1998-12-17 | 2000-08-29 | Shin Etsu Chem Co Ltd | 希土類・鉄・ボロン系磁石とその製造方法 |
-
2005
- 2005-10-27 JP JP2005312347A patent/JP2007123467A/ja active Pending
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH01297805A (ja) * | 1988-05-26 | 1989-11-30 | Daido Steel Co Ltd | 磁気的異方性粉末および異方性プラスチック磁石 |
JPH02102504A (ja) * | 1988-10-12 | 1990-04-16 | Nippon Steel Corp | 希土類−鉄−ほう素系異方性磁石粉の製造方法 |
JPH0366105A (ja) * | 1989-08-04 | 1991-03-20 | Nippon Steel Corp | 希土類系異方性粉末および希土類系異方性磁石 |
JP2000235909A (ja) * | 1998-12-17 | 2000-08-29 | Shin Etsu Chem Co Ltd | 希土類・鉄・ボロン系磁石とその製造方法 |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20130052206A (ko) * | 2011-11-11 | 2013-05-22 | 현대자동차주식회사 | 알루미늄 판재의 기계적 이방성 개선방법 및 그 방법으로 제조된 알루미늄 판재 |
KR101714079B1 (ko) * | 2011-11-11 | 2017-03-09 | 현대자동차주식회사 | 알루미늄 판재의 기계적 이방성 개선방법 |
JP2021087985A (ja) * | 2019-12-05 | 2021-06-10 | 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 | ジュール熱金属圧延装置 |
CN116544023A (zh) * | 2023-07-04 | 2023-08-04 | 包头新达磁性材料有限公司 | 一种钕铁硼稀土永磁材料压型装置 |
CN116544023B (zh) * | 2023-07-04 | 2023-09-08 | 包头新达磁性材料有限公司 | 一种钕铁硼稀土永磁材料压型装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR102453981B1 (ko) | 희토류 자석 형성용 소결체 및 희토류 소결 자석 | |
JP6419812B2 (ja) | 熱的安定性が向上したマンガンビスマス系焼結磁石及びそれらの製造方法 | |
JP6204434B2 (ja) | 磁気特性が向上したMnBiを含む異方性複合焼結磁石及びその製造方法 | |
JP2530641B2 (ja) | 磁気異方性ボンド磁石、それに用いる磁粉及びその製造方法 | |
CN105321643A (zh) | MnBi基磁性物质、其制备方法、MnBi基烧结磁体及其制备方法 | |
JP6419813B2 (ja) | マンガンビスマスを含む異方性複合焼結磁石及びその常圧焼結方法 | |
JP2017050396A (ja) | 希土類磁石及びその製造方法 | |
KR101804313B1 (ko) | 희토류영구자석의 제조방법 | |
JP2007123467A (ja) | 異方性磁石の製造方法 | |
KR102045394B1 (ko) | 희토류 영구자석의 제조방법 | |
CN103480836B (zh) | 烧结钕铁硼粉料的造粒方法 | |
JPH01171209A (ja) | 永久磁石の製造法 | |
KR102399418B1 (ko) | 소결 자석 제조 방법 및 이에 따라 제조된 소결 자석 | |
KR102059533B1 (ko) | 희토류 영구자석의 제조방법 | |
JPH01111303A (ja) | 希土類磁石の製造方法 | |
JP2003328009A (ja) | 高性能磁性材料の製造方法およびその成形体 | |
CN107240469A (zh) | 一种提高钕铁硼磁铁矫顽力的制备方法 | |
JP2018152526A (ja) | RFeB系焼結磁石の製造方法 | |
Veluri et al. | Higher density melt spun isotropic magnets | |
JPH07211566A (ja) | 異方性磁石の製造方法 | |
JPH0483307A (ja) | 希土類磁石の製造方法 | |
CN117099173A (zh) | 高频用磁性材料及其制造法 | |
JPH04304380A (ja) | 異方性ボンド磁石用磁性粉の製造方法 | |
JP2006180607A (ja) | シート状希土類ボンド磁石およびその製造方法とモータ | |
KR20140036997A (ko) | 희토류 영구 자석 및 희토류 영구 자석의 제조 방법 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20071128 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20100423 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100427 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20100907 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |