JP2004263053A - 減衰組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】実用性を十分に得ることができる減衰組成物を提供する。
【解決手段】減衰組成物は(A)熱可塑性高分子材料に(B)有機化剤及び(C)膨潤性粘土鉱物を配合したものである。この減衰組成物は、温度と損失正接(tanδ)との関係において、(A)熱可塑性高分子材料に起因して発現する損失正接(tanδ)の第1ピークとは異なる損失正接(tanδ)の第2ピークが発現されるようになっている。また、この第2ピークのピーク温度は第1ピークのピーク温度よりも高温側に発現されるようになっている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動エネルギー、音のエネルギー、衝撃エネルギー等のエネルギーを減衰する減衰性能を有する減衰組成物に関するものである。さらに詳しくは、例えば制振材料、吸音材料及び衝撃吸収材料として、自動車、内装材、建材、家電機器等に適用される減衰組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の減衰組成物としては、母材となる熱可塑性高分子材料に母材の双極子モーメント量を増大させる活性成分を配合したエネルギー変換組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。このエネルギー変換組成物では、双極子モーメント量の増大により、エネルギー変換組成物における損失正接(tanδ)のピーク値を向上させている。
【0003】
一般に、この種の減衰組成物では、その損失正接のピーク値が高いほど、高い減衰性能が得られる。さらに、減衰組成物が使用される実用的な温度範囲に損失正接のピーク温度が存在すると、その減衰性能は十分に発揮され、実用的な減衰組成物が得られることになる。
【0004】
一方、減衰組成物の母材には、耐衝撃性を考慮してガラス転移点の低い熱可塑性高分子材料が使用される場合がある。この減衰組成物の場合、熱可塑性高分子材料のガラス転移点が低いため、減衰組成物における損失正接のピーク温度が実用的な温度範囲よりも低くなる。従って、損失正接のピーク値が高くても、減衰性能が十分に発揮されないという問題があった。
【0005】
このようなガラス転移点の低い熱可塑性高分子材料に有機化剤を配合することにより、熱可塑性高分子材料のガラス転移点よりも高温側に損失正接のピークを発現させた減衰組成物が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特許第3318593号公報(請求項1等)
【非特許文献1】
呉馳飛ら、「ヒンダードフェノール系低分子化合物と塩素化ポリエチレンからなる有機ハイブリットの動的粘弾性」、高分子論文集、1999年12月24日、Vol.57、No.5、p.294〜299
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記非特許文献1に記載の減衰組成物では、熱可塑性高分子材料のガラス転移点よりも高温側に発現する損失正接のピーク値を高めようとすると、有機化剤の配合量を増加させる必要があった。この有機化剤の増量に伴って、減衰組成物の成形性が悪化するため、減衰組成物としての実用性が十分に得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、実用性を十分に得ることができる減衰組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の減衰組成物では、(A)熱可塑性高分子材料に(B)有機化剤及び(C)膨潤性粘土鉱物を配合することにより、温度の上昇に伴って前記(A)熱可塑性高分子材料のガラス転移点に起因する損失正接(tanδ)の第1ピークとは異なる損失正接(tanδ)の第2ピークが前記第1ピークよりも高温側に発現されるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明の減衰組成物では、請求項1に記載の発明において、前記(B)有機化剤は下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする。
【0011】
【化2】
Figure 2004263053
(式中のR、R、R及びRは、同一又は異なって、ベンジル基、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。)
請求項3に記載の発明の減衰組成物では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記(C)膨潤性粘土鉱物は、膨潤性雲母であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明の減衰組成物では、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の前記(A)熱可塑性高分子材料のガラス転移点(Tg)が−150〜10℃であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明の減衰組成物では、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記(B)有機化剤及び(C)膨潤性粘土鉱物の重量比が1:1〜1:9であることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における減衰組成物は、(A)熱可塑性高分子材料に(B)有機化剤及び(C)膨潤性粘土鉱物を配合したものである。この減衰組成物は、温度と損失正接(tanδ)との関係において、(A)熱可塑性高分子材料に起因して発現する損失正接(tanδ)の第1ピークとは異なる損失正接(tanδ)の第2ピークが発現される。また、この第2ピークのピーク温度は第1ピークのピーク温度よりも高温側に発現される。この温度と損失正接(tanδ)の関係は、通常の動的粘弾性測定によって得ることができる。
【0015】
この減衰組成物は、振動エネルギー、音のエネルギー、衝撃エネルギー等のエネルギーを吸収し、それらのエネルギーを減衰する減衰性能を有するものである。この減衰組成物は、各種形状に成形され、制振材料、吸音材料、衝撃吸収材料等として、自動車、内装材、建材、家電機器等の適用箇所に適用される。
【0016】
ここで、減衰組成物の減衰性能は、損失正接のピーク値の高さ、及び減衰組成物が使用される実用的な温度範囲内に損失正接のピーク温度が存在すること、によって示すことができる。つまり、減衰組成物における損失正接のピーク値が高ければ高いほど、その減衰性能が高くなる。また、減衰組成物における損失正接のピーク温度が実用的な温度範囲内に存在すると、減衰組成物の減衰性能が十分に発揮されることになる。本実施形態における減衰組成物は、モータ等の発熱体の近傍で使用されることを想定している。よって、実用的な温度範囲とは、減衰組成物が好ましくは20〜120℃、より好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは60〜120℃である。
【0017】
(A)熱可塑性高分子材料(以下(A)成分という。)は、母材として減衰組成物に成形性を付与するために配合される。この(A)成分としては、熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等が挙げられる。熱可塑性合成樹脂としては、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0018】
ゴムとしては、アクリルゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン/ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
【0019】
これらの(A)成分は、単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(A)成分の中でも、好ましくはガラス転移点(Tg)が−150〜50℃、より好ましくは−120〜30℃、さらに好ましくは−100〜20℃の(A)成分である。このガラス転移点が−150℃未満であると、第2ピークのピーク温度を実用的な温度範囲に適合させにくくなるおそれがある。一方、50℃を超える(A)成分では、結晶性が高いため、(B)有機化剤との相溶性が低下するおそれがあるとともに、耐衝撃性が悪化するおそれがある。
【0020】
また、これらの(A)成分の中でも、(B)有機化剤や(C)膨潤性粘土鉱物との相溶性の観点から、極性を有する熱可塑性高分子材料が好ましい。極性を有する熱可塑性合成樹脂としては、ポリ塩化ビニリデン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。極性を有する熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。極性を有するゴムとしては、アクリルゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
【0021】
さらに、これらの(A)成分の中でも、耐衝撃性に優れるとともに第2ピークのピーク温度を実用的な温度範囲に適合させ易いことから、好ましくはゴム又は熱可塑性エラストマー、より好ましくは塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーである。塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーの塩素含有量は、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%である。この塩素含有量が20重量%未満であると、極性が低く、(B)有機化剤との相溶性が低下するおそれがある。一方、60重量%を超えるとガラス転移点(Tg)が高くなりすぎて、第2ピークのピーク温度を実用的な温度範囲に適合させにくくなるおそれがある。
【0022】
減衰組成物中における(A)成分の含有量は、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは30〜85重量%、さらに好ましくは40〜70重量%である。この含有量が20重量%未満であると、減衰組成物の成形性が悪化するおそれがある。一方、95重量%を超えて配合すると(B)有機化剤等の他の成分を有効量配合させることができず、十分な減衰性能が得られないおそれがある。
【0023】
(B)有機化剤(以下、(B)成分という。)は、(A)成分のガラス転移点より高温側に損失正接の第2ピークを発現させるために配合される。(B)成分の具体例としては、下記一般式(1)で示される化合物、ヒンダードフェノール系低分子化合物等が挙げられる。
【0024】
【化3】
Figure 2004263053
(式中のR、R、R及びRは、同一又は異なって、ベンジル基、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。)
上記一般式(1)で表される化合物としては、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、トリラウリルメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトルエチルアンモニウムイオン、フェニルトリメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0025】
ヒンダードフェノール系低分子化合物としては、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
【0026】
これらの(B)成分は、単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(B)成分の中でも、第2ピークをより高温側に発現させることができることから、好ましくは上記一般式(1)で表される化合物、より好ましくはトリオクチルメチルアンモニウムイオン及びベンジルトリブチルアンモニウムイオンから選ばれる少なくとも一種である。
【0027】
減衰組成物中における(B)成分の含有量は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは7〜45重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。この含有量が5重量%未満であると、第2ピークのピーク値が低すぎて、十分な減衰性能が得られないおそれがある。一方、50重量%を超えて配合すると減衰組成物の成形性が悪化するおそれがある。ただし、(B)成分として上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、一価の塩化物として重量を算出した場合である。
【0028】
(C)膨潤性粘土鉱物(以下、(C)成分という。)は、第2ピークを発現させたり、第2ピークのピーク値を高めたりする特異的な作用により、減衰性能を高めたり、その減衰性能を発揮させたりするために配合される。(C)成分の具体例としては、膨潤性雲母、スメクタイト属粘土鉱物、バーミキュライト、これらの誘導体等が挙げられる。
【0029】
膨潤性雲母としては、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等が挙げられる。スメクタイト属粘土鉱物としては、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、モンモリロナイト、ノントロナイト、ベントナイト等の天然物又は合成物が挙げられる。
【0030】
これらの(C)成分は、単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの(C)成分の中でも、第2ピークのピーク値をより高めることができることから、膨潤性雲母が好ましい。
【0031】
減衰組成物中における(C)成分の含有量は、好ましくは5〜75重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは15〜65重量%である。この含有量が5重量%未満であると、第2ピークのピーク値が十分に得られず、減衰性能が十分に得られないおそれがある。一方、75重量%を超えて配合すると、減衰組成物の成形性が悪化するおそれがある。
【0032】
上記(B)成分及び(C)成分の重量比[=(B)成分の重量:(C)成分の重量]は、好ましくは1:1〜1:9、より好ましくは1:2〜1:7、さらに好ましくは1:2〜1:5である。この重量比よりも(B)成分の配合量が多い場合、(A)成分に対する(B)成分の相溶性が悪化すると推測され、第2ピークのピーク値が低すぎて、十分な減衰性能が得られないおそれがある。一方、この重量比よりも(C)成分が多い場合も、第2ピークのピーク値が低すぎて、十分な減衰性能が得られないおそれがある。
【0033】
(A)、(B)及び(C)の各成分からなる減衰組成物における損失正接(tanδ)の第2ピークの値は、好ましくは0.250〜1.300、より好ましくは0.270〜1.300、さらに好ましくは0.300〜1.300である。この損失正接の第2ピークの値が0.250未満であると、十分な減衰性能が得られないおそれがある。一方、1.300を超える値は、各成分の動的粘弾性を考慮すると得られにくく、得られた場合であっても減衰組成物の成形が困難となるおそれがある。
【0034】
また、(A)、(B)及び(C)の各成分からなる減衰組成物における損失正接の第2ピーク温度と(A)成分のガラス転移点(Tg)との差は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜100℃である。この差が10℃未満であると、第2ピークのピーク温度が実用的な温度範囲に適合されないおそれがある。一方、ガラス転移点より120℃を超える第2ピークのピーク温度は、各成分の物性を考慮すると得られにくく、得られた場合であっても減衰組成物の成形性が困難となるおそれがある。
【0035】
減衰組成物に配合されるその他の成分として、活性成分、フィラー、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、安定剤、発泡剤、滑剤等を必要に応じて適宜加えることができる。
【0036】
活性成分は、減衰組成物中の双極子モーメント量を増大させることによって、減衰性能を向上させるために配合されることが好ましい。活性成分の具体例としては、ベンゾチアジル基を有する化合物、ベンゾトリアゾール基を有する化合物、ジフェニルアクリレート基を有する化合物、ベンゾフェノン基を有する化合物等が挙げられる。
【0037】
ベンゾチアジル基を有する化合物としては、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルスルフィド、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、N,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)等が挙げられる。
【0038】
ベンゾトリアゾール基を有する化合物としては、ベンゼン環にアゾール基が結合したベンゾトリアゾールを母核とし、これにフェニル基が結合した2−{2’−ハイドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”テトラハイドロフタリミデメチル)−5’−メチルフェニル}−ベンゾトリアゾール(2HPMMB)、2−{2’−ハイドロキシ−5’−メチルフェニル}−ベンゾトリアゾール(2HMPB)、2−{2’−ハイドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール(2HBMPCB)、2−{2’−ハイドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール(2HDBPCB)等が挙げられる。
【0039】
ジフェニルアクリレート基を有する化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジ−フェニルアクリレート等が挙げられる。
ベンゾフェノン基を有する化合物としては、2−ハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(HMBP)、2−ハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォニックアシド(HMBPS)等が挙げられる。
【0040】
これらの活性成分は、単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
これらの活性成分の中でも、減衰組成物中の双極子モーメント量を増大させる作用に優れることから、ベンゾチアジル基を有する化合物、ベンゾトリアゾール基を有する化合物及びジフェニルアクリレート基を有する化合物から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0041】
減衰組成物中における活性成分の含有量は、好ましくは4〜14重量%、より好ましくは5〜11重量%である。この含有量が4重量%未満であると、減衰組成物中の双極子モーメント量を増大させる作用が十分に得られないおそれがある。一方、この含有量が14重量%を超えると、活性成分が母材に十分に相溶しない等の不具合が生じるおそれがある。
【0042】
フィラーの具体例としては、カーボンブラック、シリカ、ガラス、カーボン、炭酸カルシウム、バライト、沈降硫酸バリウム等が挙げられる。
減衰組成物は、(A)、(B)及び(C)の各成分、並びにその他の成分をロール混練等によって調製される。このロール混練に使用される装置としては、熱ロール、バンバリーミキサー、二軸混練機、押出機等が挙げられる。得られた減衰組成物は、T−ダイ等のダイス、押出機、プレス機等の成形機を用いて、シート状、ブロック状等の各種形状に成形することにより、減衰成形物が得られる。
【0043】
さて、減衰組成物を製造するには、上記の混練装置に(A)、(B)及び(C)の各成分、並びにその他の成分を投入する。続いて、各材料を溶融混練することによって、減衰組成物は製造される。このとき、(A)成分に対する(B)成分の相溶性は、(C)成分の膨潤性によって向上されると推測される。この(B)成分の相溶性の向上により、損失正接の第2ピークのピーク値を高めることができる。
【0044】
得られた減衰組成物は、各種形状に成形され、減衰成形物として適用箇所に適用される。このとき、減衰組成物には第2ピークが発現されているため、(A)成分のガラス転移点より高温側に存在する使用温度領域において、減衰組成物の減衰性能が十分に発揮される。
【0045】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ この実施形態の減衰組成物においては、(A)熱可塑性高分子材料に(B)有機化剤及び(C)膨潤性粘土鉱物が配合されている。また、この減衰組成物は、温度の上昇に伴って損失正接(tanδ)の第2ピークが発現されている。さらに、この第2ピークは(A)成分のガラス転移点に起因する損失正接(tanδ)の第1ピークより高温側に発現されている。このように構成した場合、(A)成分に対する(B)成分の相溶性が(C)成分によって向上されると推測され、(B)成分を増量させることなく、第2ピークのピーク値を高めることができる。従って、減衰組成物の成形性が低下することを抑制することができ、実用性を十分に得ることができる。
【0046】
・ この実施形態の減衰組成物においては、(B)成分は上記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。このように構成した場合、第2ピークのピーク温度をより高温側に発現させることができ、より高温側の温度範囲において減衰性能を十分に発揮させることができる。
【0047】
・ この実施形態の減衰組成物においては、(C)成分は膨潤性雲母であることが好ましい。このように構成した場合、他の(C)成分と比較して膨潤性雲母は、層間剥離し易いため(A)成分に対する(B)成分の相溶性がより向上されると推測される。従って、第2ピークのピーク値をより高めることができ、減衰性能を高めることができる。
【0048】
・ この実施形態の減衰組成物においては、(A)成分のガラス転移点(Tg)が−150〜10℃であることが好ましい。このように構成した場合、第2ピークのピーク温度を実用的な温度範囲に適合させ易く、減衰組成物の実用性をさらに向上することができる。
【0049】
・ この実施形態の減衰組成物においては、(B)成分及び(C)成分の重量比が1:1〜1:9であることが好ましい。このように構成した場合、(A)成分に対する(B)成分及び(C)成分をバランスよく作用させることができ、十分な減衰性能を得ることができる。
【0050】
・ この実施形態の減衰組成物においては、(A)成分はゴム又は熱可塑性エラストマーであることが好ましい。このように構成した場合、第2ピークのピーク温度を実用的な温度範囲に適合させ易く、十分な減衰性能を得ることができる。また、優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0051】
・ この実施形態の減衰組成物においては、(A)成分は塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーである。このように構成した場合、第2ピークのピーク温度を実用的な温度範囲に適合させ易く、十分な減衰性能を得ることができる。また、優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0052】
・ この実施形態の減衰組成物においては、(A)成分は塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーであるとともに(B)成分は上記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。従来、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーに上記一般式(1)で表される化合物のみを配合しても、第2ピークの発現がほとんど確認されなかった。この現象は、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーに対する一般式(1)で表される化合物の相溶性が悪く、それらの相互作用が十分に得られないためと推測される。本実施形態における減衰組成物においては、(C)成分が配合されているため、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーに対する一般式(1)で表される化合物の相溶性が向上されると推測される。この(C)成分の配合によって、減衰組成物には第2ピークが発現され、実用的な温度範囲において、減衰組成物の減衰性能を十分に発揮させることができる。
【0053】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜5)
表1に示す(A)、(B)及び(C)の各成分を熱ロールにて、110℃、10分の条件で各成分を混練することにより、減衰組成物を調製した。
【0054】
実施例1〜実施例5における(A)、(B)及び(C)の各成分の配合量を表1に示す。
(比較例1〜4)
表1に示す各成分を熱ロールにて、実施例1〜5と同様にして減衰組成物を調製した。
【0055】
【表1】
Figure 2004263053
(※1)塩素化ポリエチレン系エラストマー
(MR−104、塩素量40重量%、Tg=0℃:ダイソー(株)製)
(※2)テトラオクチルアンモニウムクロライド
(TOMAC:広栄化学工業(株)製)
(※3)ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド
(BTBAC:広栄化学工業(株)製)
(※4)3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
(アデカスタブAO−80:旭電化工業(株)製)
(※5)Na型テトラシリシックフッ素雲母
(ソマシフME−100:コープケミカル(株)製)
(※6)Na型テトラシリシックフッ素雲母
(DMA−80E:トピー工業(株)製)
(減衰組成物の成形)
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた減衰組成物を110℃に加熱した金型間に挟んでプレス機で圧力2942kPa、加圧時間120秒の条件で減衰組成物を加圧成形した。さらに、加圧成形された減衰組成物を110℃、7845kPa、120秒間の条件でシート状の減衰成形物(厚さ0.8mm)を加圧成形した。得られた減衰成形物を36mm×5mmの寸法に切断し、動的粘弾性測定用の試験片とした。
(動的粘弾性の測定)
動的粘弾性測定装置(RSA−II:レオメトリック社製)を用いて試験片を加振しながら連続的に昇温した際の損失正接(tanδ)を測定した。測定条件は、加振の周波数10Hz、測定温度範囲−50〜170℃、昇温速度5℃/minとした。実施例1及び比較例1における測定結果を図1、実施例2及び比較例2における測定結果を図2に示す。また、実施例1〜5及び比較例1〜4における第1ピーク及び第2ピークについて、それらのピーク値(tanδ)及びピーク温度を表2及び表3に示す。ただし、表2において「−」は第2ピークが発現されないことを示す。
【0056】
【表2】
Figure 2004263053
【0057】
【表3】
Figure 2004263053
図1、図2、表2及び表3の結果から明らかなように、実施例1〜5では第2ピークが発現され、そのピーク値も高い値を示している。実施例1及び実施例3〜5では、(B)成分として上記一般式(1)で表される化合物が配合されているため、第2ピークのピーク温度が実施例2よりも高い値を示している。また、実施例1〜5の減衰組成物の成形性はいずれも良好であり、実用性を十分に得ることができた。
【0058】
これに対し、比較例1では(B)成分として上記一般式(1)で表される化合物が配合されているが、(C)成分が配合されていないため、第2ピークが発現されていない。比較例2では、(B)成分としてヒンダードフェノール系低分子化合物が配合されているため、第2ピークが発現されているが、そのピーク値(tanδ)は低く、十分な減衰性能が発揮されないことが示唆されている。比較例3及び比較例4では、(B)成分が配合されていないため、第2ピークが発現されていない。
【0059】
また、実施例2の(B)成分の含有量と比較例2の(B)成分の含有量は、いずれも15重量%であるにも関わらず、実施例2では(C)成分が配合されているため、第2ピークのピーク値(tanδ)が1.9倍以上向上されていることがわかる。よって、(B)成分を増量して第2ピークのピーク値を向上させることによる成形性の悪化を抑制することができる。
【0060】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記実施形態における減衰組成物は、各種形状に成形され、適用物に適用されている。この他に、溶融状態の減衰組成物を適用箇所にコーティングや充填させて使用することもできる。
【0061】
・ 前記実施形態における減衰組成物をシート状に成形することによって、減衰成形物としての非拘束型制振シートを得ることができる。この非拘束型制振シートは、適用箇所に貼り合わせることによって、制振シートの一側面が拘束されていない非拘束型制振材料とすることができる。また、シート状に成形された減衰組成物を制振層とし、制振層の表面に制振層を拘束するための拘束層を張り合わせることによって減衰成形物としての拘束型制振シートを得ることができる。拘束層としては、アルミニウム、鉛等の金属箔、ポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂から形成されるフィルム、不織布等が挙げられる。この拘束型制振シートは、制振層側を適用箇所に張り合わせることによって制振層の両面が拘束されている拘束型制振材料とすることができる。減衰組成物を拘束型制振材料として使用する場合、減衰組成物の損失正接をさらに向上させ、制振性能を向上させることができることから、減衰組成物に上記活性成分を配合することが好ましい。
【0062】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記(A)熱可塑性高分子材料は、ゴム又は熱可塑性エラストマーである請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の減衰組成物。この場合、十分な減衰性能を得ることができる。
【0063】
(2) 前記(A)熱可塑性高分子材料は、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の減衰組成物。この場合、減衰性能を十分に発揮させることができる。
【0064】
(3) さらに、(A)熱可塑性高分子材料中における双極子モーメント量を増大させる活性成分を含有する請求項1から請求項5、上記(1)及び(2)のいずれか一項に記載の減衰組成物。この場合、減衰性能を向上させることができる。
【0065】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の減衰組成物によれば、実用性を十分に得ることができる。
【0066】
請求項2に記載の発明の減衰組成物によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、より高温側の温度範囲において減衰性能を十分に発揮させることができる。
【0067】
請求項3に記載の発明の減衰組成物によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、減衰性能を高めることができる。
請求項4に記載の発明の減衰組成物によれば、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明の効果に加え、実用性をさらに向上することができる。
【0068】
請求項5に記載の発明の減衰組成物によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の効果に加え、減衰性能をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1における減衰組成物の温度と損失正接の関係を示すグラフ。
【図2】実施例2及び比較例2における減衰組成物の温度と損失正接の関係を示すグラフ。

Claims (5)

  1. (A)熱可塑性高分子材料に(B)有機化剤及び(C)膨潤性粘土鉱物を配合することにより、温度の上昇に伴って前記(A)熱可塑性高分子材料のガラス転移点に起因する損失正接(tanδ)の第1ピークとは異なる損失正接(tanδ)の第2ピークが前記第1ピークよりも高温側に発現されることを特徴とする減衰組成物。
  2. 前記(B)有機化剤は下記一般式(1)で表される化合物である請求項1に記載の減衰組成物。
    Figure 2004263053
    (式中のR、R、R及びRは、同一又は異なって、ベンジル基、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。)
  3. 前記(C)膨潤性粘土鉱物は、膨潤性雲母である請求項1又は請求項2に記載の減衰組成物。
  4. 前記(A)熱可塑性高分子材料のガラス転移点(Tg)が−150〜10℃である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の減衰組成物。
  5. 前記(B)有機化剤及び(C)膨潤性粘土鉱物の重量比が1:1〜1:9である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の減衰組成物。
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