JP2004262808A - ベンゾオキサゾール化合物の製造方法 - Google Patents
ベンゾオキサゾール化合物の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】本発明の目的は、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用な5−ブロムベンゾオキサゾール化合物の安価、簡便で高収率な製造方法を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(II)で表される化合物を、臭素および下記一般式(III)で表わされる化合物により臭素化し、かつ得られた下記一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、環化反応させることを特徴とする下記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【化1】
(一般式(I)、(II)および(IV)中、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。一般式(III)中、R1〜R4は各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。)
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(II)で表される化合物を、臭素および下記一般式(III)で表わされる化合物により臭素化し、かつ得られた下記一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、環化反応させることを特徴とする下記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【化1】
(一般式(I)、(II)および(IV)中、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。一般式(III)中、R1〜R4は各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はベンゾオキサゾール化合物の製造方法に関する。これらの化合物の中でも、特に、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用な5−ブロムベンゾオキサゾール化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
5−ブロムベンゾオキサゾール化合物は、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用である。
5−ブロムベンゾオキサゾール化合物の合成方法は種々検討されており、例えば、4−ブロモ−2−アセチルアミノフェノールを加熱して脱水環化し、5−ブロモ−2−メチルベンゾオキサゾールを合成する方法が記載されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このような脱水環化反応は一般に反応率が低く、大量の副生成物が生じることが多いため、得られたベンゾオキサゾール化合物を効率よく単離するためには、できるだけ純度の高い原料を使用しなければならない。例えば、脱水環化反応を行なう合成原料の2−アシルアミノフェノール化合物を合成し、得られた2−アシルアミノフェノール化合物を脱水環化反応してベンゾオキサゾール化合物を合成する場合、中間体の2−アシルアミノフェノール化合物は、単離精製されている。
【0004】
前記2−アシルアミノフェノール化合物の合成法も種々の方法が知られており、例えば、2位に置換基を有するフェノールを、調整された4級アンモニウムトリブロマイドにより4位をブロム化する方法が記載されているが、ベンゾオキサゾール化合物の合成方法に関しては全く記載も示唆もされていない(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−127543号公報
【非特許文献1】
ブリュトゥン・デ・ラ・ソシエーテ・キミーク・ド・フランス(Bulletin De La Societe Chimique De France),1828〜1832(1923年)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記いずれの方法においても経済性、操作性等の点で、十分でないのが実状であり、その製造方法の開発が望まれている。
本発明の目的は、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用な5−ブロムベンゾオキサゾール化合物の安価、簡便で高収率な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、前記の問題点を克服し、下記に示す2工程一貫製造方法により、本発明の上記目的が達成されることを見出した。
すなわち、本発明の前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(II)で表される化合物を、臭素および下記一般式(III)で表わされる化合物により臭素化し、かつ得られた下記一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、環化反応させることを特徴とする下記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【0008】
【化3】
(一般式(I)、(II)および(IV)中、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。一般式(III)中、R1〜R4は各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。)
<2> 前記一般式(I)、(II)および(IV)におけるRが炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とする上記<1>に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
<3> 前記一般式(I)、(II)および(IV)におけるRがメチル基であることを特徴とする上記<1>に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【0009】
<4> 一般式(II)で表わされる化合物から一般式(I)で表わされる化合物を製造する反応工程において、反応溶媒に水を用いないことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
<5> 前記一般式(IV)で表わされる化合物の環化工程が下記一般式(V)で表わされる化合物の存在下に行なわれることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【0010】
【化4】
(一般式(V)中、Aは酸根を表わす。)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の製造方法は、下記一般式(II)で表される化合物を、臭素および下記一般式(III)で表わされる化合物により臭素化し、かつ得られた下記一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、環化反応させることにより下記一般式(I)で表わされる化合物を製造することを特徴とする。
【0012】
【化5】
【0013】
一般式(I)、(II)および(IV)中、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。 一般式(III)中、R1〜R4は各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。
本発明の一般式(I)で表わされる化合物の製造方法は、中間体の一般式(IV)で表わされる化合物を単離しないで環化反応することにより本発明の一般式(I)で表わされる化合物を効率よく高純度で単離でき、かつ高収率で得ることができる。
以下に本発明で使用する一般式(I)、(II)及び(IV)で表わされる化合物について詳細に説明する。
【0014】
一般式(I)、(II)及び(IV)で表わされる化合物において、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、または環状のアルキル基(以下、「シクロアルキル基」とも称す。)であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、エイコシル、テトラデシル等が挙げられ、アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリール基で、例えばフェニル、ナフチルが挙げられる。
これらの各基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルまたはアリールアミノ基、アシル基、スルホニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ウレイド基等が挙げられる。
【0015】
前記Rで表わされる基のうち、好ましいものは、アルキル基であり、より好ましくは無置換のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基が最も好ましい。
【0016】
一般式(I)で表わされる化合物は、具体的には、5−ブロモ−2−メチルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−エチルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−n−プロピルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−イソプロピルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−テトラデシルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−フェニルベンゾオキサゾール等の化合物が挙げられるが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0017】
また、一般式(II)、(IV)で表わされる化合物は、上記一般式(I)で具体的に例示した化合物に対応する化合物が挙げられる。
【0018】
次に、一般式(III)で表わされる化合物を説明する。
一般式(III)中、R1〜R4は、各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。これらの各基を以下にさらに説明する。
R1〜R4は各々独立に、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−ブチル、i−ペンチル)、炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15、さらに好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、炭素数6〜20、好ましくは6〜15、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、ビフェニル、4−t−ブチルフェニル、3−メトキシフェニル)を表わす。
【0019】
一般式(III)で表わされる化合物は、具体的には、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ペンチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウム、ジメチルジ−n−テトラデシルアンモニウムブロマイド等の化合物が挙げられるが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0020】
さらに、本発明において、前記一般式(IV)で表される化合物の環化工程が一般式(V)の化合物の存在下に行われることが好ましい。
本発明において、好ましく使用される一般式(V)で表わされる化合物を説明する。
【0021】
【化6】
【0022】
一般式(V)中、Aは酸根を表わす。ここで、Aは有機酸(例えばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、3−ニトロベンゼンスルホン酸)または無機酸(例えば塩酸、硫酸、リン酸)の酸根が好ましく、より好ましくはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸の酸根であり、さらに好ましくはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の酸根であり、最も好ましくはp−トルエンスルホン酸の酸根である。
【0023】
本発明の製造方法においては、一般式(II)で表わされる化合物を、臭素および一般式(III)で表わされる化合物で臭素化し、一般式(IV)で表わされる化合物を生成させる工程(第一の工程)と、該一般式(IV)で表わされる化合物を脱水環化して一般式(I)で表わされる化合物を生成させる工程(第二の工程)を含む。
以下に、第一の工程(一般式(II)で表わされる化合物から一般式(IV)で表わされる化合物の合成)を説明する。
【0024】
第一の工程では、臭素と一般式(III)で表わされる化合物を溶媒に先行添加した後、一般式(II)で表わされる化合物を添加することが好ましい。
すなわち、一般式(III)で表わされる4級アンモニウムブロマイドを溶媒に分散させておき、一般式(III)で表わされる化合物1モルに対して0.9〜5モル、好ましくは0.9〜3モル、さらに好ましくは0.9〜1.5モルの臭素を添加して撹拌した後、一般式(II)で表わされる化合物を、一般式(III)で表わされる化合物1モルに対して1〜5モル、好ましくは1〜3モル、さらに好ましくは1〜1.5モル添加する、添加順でブロム化を行なうのが好ましい。
【0025】
臭素を滴下する際には、反応系内の温度を0〜40℃、好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは10〜25℃に行なうのが好ましい。臭素の滴下時間は、反応系内の温度が前記温度に制御できるように加えることが好ましい。一般式(II)で表わされる化合物を添加する際には、反応系内の温度を0〜100℃、好ましくは0〜50℃、さらに好ましくは5〜20℃で行なうのが好ましい。
また、一般式(II)で表わされる化合物を添加後、反応温度を30〜100℃、反応効率の観点から、好ましくは30〜70℃、さらに好ましくは40〜60℃に上昇させることが好ましい。
【0026】
第一の工程では、反応溶媒として水を用いないことが好ましい。反応溶媒に水以外の種々の溶媒を用いることができ、例えばカルボン酸系溶媒(例えば酢酸、プロピオン酸)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン)、アミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハロゲン系溶媒(例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)が挙げられる。これらの溶媒を単独、あるいは併用して用いることができる。
前記反応溶媒として好ましくはカルボン酸系溶媒およびハロゲン系溶媒であり、反応効率の観点から、さらに好ましくは炭素数2〜4のカルボン酸系溶媒であり、最も好ましくは酢酸である。
【0027】
一般式(III)で表わされる4級アンモニウムブロマイドに対する反応溶媒の使用量は、一般式(III)で表わされる4級アンモニウムブロマイド1モルに対し、0.1〜20リットル、好ましくは0.2〜10リットル、さらに好ましくは0.4〜3リットルである。
【0028】
本発明においては、前記生成した一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、次の反応工程を行なうものである。
本発明においては、前記のように第一の工程で生成した一般式(IV)で表わされる化合物を次工程の第二の工程に供するには、一般式(IV)で表わされる化合物を含む反応液のまま用いるのが操作性の点から最も好ましい。また、反応混合物を水と有機溶媒系で抽出して得られた有機溶媒層を濃縮して、あるいは濃縮せずに用いることもできる。
【0029】
次に、第二の工程(生成した一般式(IV)で表わされる化合物から一般式(I)で表わされる化合物の合成)について説明する。
第二の工程では副生する水を反応系から除くのが好ましく、その手段としては、種々の方法が取りうるが、例えば溶媒との共沸、脱水剤(例えばオルトギ酸メチル等のオルトエステル、無水酢酸等の酸無水物、モレキュラーシーブ等のトラップ剤)が好ましく、より好ましくは溶媒との共沸および無水酢酸の添加であり、溶媒との共沸が最も好ましい。
【0030】
第二の工程では、前述したように前記一般式(V)で表わされる有機または無機の酸を添加するのが好ましく、酸の添加量は一般式(II)で表わされる化合物1モルに対して、好ましくは0.01〜3.0モル、より好ましくは0.05〜1.0モル、さらに好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0031】
第二の工程の反応温度は、好ましくは0〜250℃であり、より好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは80〜160℃である。
【0032】
第二の工程の好ましい反応溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン)、ハロゲン系溶媒(例えば1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン)であり、操作性、作業環境の観点から、より好ましくは芳香族炭化水素系溶媒であり、さらに好ましくはトルエン、キシレンであり、キシレンが最も好ましい。
【0033】
本発明においては、第一の工程で一般式(IV)で表わされる化合物を生成した後、第二の工程の反応を開始する前に、第一の工程で副生した臭化水素を除く操作をすることが好ましく、その手段としては反応を妨害する等の負の影響がなければ、特に限定されずに種々の方法を取り得ることができるが、減圧下にて撹拌、あるいは不活性ガス(例えば窒素、アルゴン)を反応液にバブリングすることを単独、あるいは組合わせて行なうことが好ましい。
【0034】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
下記の反応スキームにより、化合物(I)を合成した。
【0035】
【化7】
【0036】
3ツ口フラスコにテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド32.9g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら溶解した。ここへ、撹拌しながら臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、キシレン110mlを添加し、窒素バブリングを1時間行なった。ここへp−トルエンスルホン酸5.71gを添加し、加熱還流下にて4時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、合計90mlを反応系から分離除去した。このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたキシレン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。こうして得られたキシレン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶18.4gを得た(収率87.0%)。得られた結晶は、下記条件で1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。また、このものの純度はHPLCより99.2%であった。1H−NMRデータを下記に示す。
【0037】
【0038】
1H−NMRスペクトルデータ(TMS)
1H−NMR(CDCl3):δ=7.777(d、1H、J=1.8Hz)、7.400(dd、1H、J=1.8、8.7Hz)、7.332(d、1H、J=8.7Hz)、2.635(s、3H)
【0039】
(実施例2)
下記反応スキームにより化合物(I)を合成した。
【0040】
【化8】
【0041】
3ツ口フラスコにテトラエチルアンモニウムブロマイド22.1g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。
その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、トルエン110ml、メタンスルホン酸1.95mlを添加し、加熱還流下にて8時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、合計90mlを反応系から分離除去した。
このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたトルエン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。
こうして得られたトルエン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶16.8gを得た(収率79.3%)。
得られた結晶は、実施例1と同様に上記条件で1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。また、このものの純度はHPLCより99.0%であった。
【0042】
(比較例1)
下記反応スキームにて化合物(I)を合成した。
【0043】
【化9】
【0044】
1)中間体の化合物(IV)の合成
3ツ口フラスコにテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド32.9g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら溶解した。ここへ、撹拌しながら臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。
ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、反応液を氷200gに注ぎ、撹拌しながら水150mlを添加した。そのまま30分撹拌して、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、目的の化合物(IV)20.9gを得た(収率91.0%)。
【0045】
2)化合物(I)の合成
3ツ口フラスコに、先に得た化合物(IV)20.9g、キシレン110mlを入れ、ここへp−トルエンスルホン酸5.71gを添加し、加熱還流下にて4時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、反応系から分離除去した。
このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたキシレン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。
こうして得られたキシレン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶16.1gを得た(収率83.6%)。
得られた結晶は、実施例1と同様に1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。このものの純度はHPLCより98.8%であった。ここで、化合物(II)からの2工程の総収率は76.1%であった。
【0046】
(比較例2)
下記反応スキームにて化合物(I)を合成した。
【0047】
【化10】
【0048】
1)中間体の化合物(IV)の合成
3ツ口フラスコにテトラエチルアンモニウムブロマイド22.1g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら、臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。
ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、反応液を氷200gに注ぎ、撹拌しながら水150mlを添加した。そのまま30分撹拌して、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、目的の化合物(IV)18.6gを得た(収率80.8%)。
【0049】
2)化合物(I)の合成
3ツ口フラスコに、先に得た化合物(IV)18.6g、トルエン110ml、メタンスルホン酸1.95mlを入れ、加熱還流下にて8時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、反応系から分離除去した。
このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたトルエン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。
こうして得られたトルエン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶14.8gを得た(収率86.4%)。
得られた結晶は、実施例1と同様に1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。このものの純度はHPLCより97.1%であった。ここで、化合物(II)からの2工程の総収率は69.8%であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明により、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用な5−ブロムベンゾオキサゾール化合物を安価、簡便で高収率に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はベンゾオキサゾール化合物の製造方法に関する。これらの化合物の中でも、特に、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用な5−ブロムベンゾオキサゾール化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
5−ブロムベンゾオキサゾール化合物は、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用である。
5−ブロムベンゾオキサゾール化合物の合成方法は種々検討されており、例えば、4−ブロモ−2−アセチルアミノフェノールを加熱して脱水環化し、5−ブロモ−2−メチルベンゾオキサゾールを合成する方法が記載されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このような脱水環化反応は一般に反応率が低く、大量の副生成物が生じることが多いため、得られたベンゾオキサゾール化合物を効率よく単離するためには、できるだけ純度の高い原料を使用しなければならない。例えば、脱水環化反応を行なう合成原料の2−アシルアミノフェノール化合物を合成し、得られた2−アシルアミノフェノール化合物を脱水環化反応してベンゾオキサゾール化合物を合成する場合、中間体の2−アシルアミノフェノール化合物は、単離精製されている。
【0004】
前記2−アシルアミノフェノール化合物の合成法も種々の方法が知られており、例えば、2位に置換基を有するフェノールを、調整された4級アンモニウムトリブロマイドにより4位をブロム化する方法が記載されているが、ベンゾオキサゾール化合物の合成方法に関しては全く記載も示唆もされていない(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−127543号公報
【非特許文献1】
ブリュトゥン・デ・ラ・ソシエーテ・キミーク・ド・フランス(Bulletin De La Societe Chimique De France),1828〜1832(1923年)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記いずれの方法においても経済性、操作性等の点で、十分でないのが実状であり、その製造方法の開発が望まれている。
本発明の目的は、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用な5−ブロムベンゾオキサゾール化合物の安価、簡便で高収率な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、前記の問題点を克服し、下記に示す2工程一貫製造方法により、本発明の上記目的が達成されることを見出した。
すなわち、本発明の前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(II)で表される化合物を、臭素および下記一般式(III)で表わされる化合物により臭素化し、かつ得られた下記一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、環化反応させることを特徴とする下記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【0008】
【化3】
(一般式(I)、(II)および(IV)中、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。一般式(III)中、R1〜R4は各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。)
<2> 前記一般式(I)、(II)および(IV)におけるRが炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とする上記<1>に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
<3> 前記一般式(I)、(II)および(IV)におけるRがメチル基であることを特徴とする上記<1>に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【0009】
<4> 一般式(II)で表わされる化合物から一般式(I)で表わされる化合物を製造する反応工程において、反応溶媒に水を用いないことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
<5> 前記一般式(IV)で表わされる化合物の環化工程が下記一般式(V)で表わされる化合物の存在下に行なわれることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
【0010】
【化4】
(一般式(V)中、Aは酸根を表わす。)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の製造方法は、下記一般式(II)で表される化合物を、臭素および下記一般式(III)で表わされる化合物により臭素化し、かつ得られた下記一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、環化反応させることにより下記一般式(I)で表わされる化合物を製造することを特徴とする。
【0012】
【化5】
【0013】
一般式(I)、(II)および(IV)中、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。 一般式(III)中、R1〜R4は各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。
本発明の一般式(I)で表わされる化合物の製造方法は、中間体の一般式(IV)で表わされる化合物を単離しないで環化反応することにより本発明の一般式(I)で表わされる化合物を効率よく高純度で単離でき、かつ高収率で得ることができる。
以下に本発明で使用する一般式(I)、(II)及び(IV)で表わされる化合物について詳細に説明する。
【0014】
一般式(I)、(II)及び(IV)で表わされる化合物において、Rはアルキル基またはアリール基を表わす。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、または環状のアルキル基(以下、「シクロアルキル基」とも称す。)であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、エイコシル、テトラデシル等が挙げられ、アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリール基で、例えばフェニル、ナフチルが挙げられる。
これらの各基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルまたはアリールアミノ基、アシル基、スルホニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ウレイド基等が挙げられる。
【0015】
前記Rで表わされる基のうち、好ましいものは、アルキル基であり、より好ましくは無置換のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基が最も好ましい。
【0016】
一般式(I)で表わされる化合物は、具体的には、5−ブロモ−2−メチルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−エチルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−n−プロピルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−イソプロピルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−テトラデシルベンゾオキサゾール、5−ブロモ−2−フェニルベンゾオキサゾール等の化合物が挙げられるが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0017】
また、一般式(II)、(IV)で表わされる化合物は、上記一般式(I)で具体的に例示した化合物に対応する化合物が挙げられる。
【0018】
次に、一般式(III)で表わされる化合物を説明する。
一般式(III)中、R1〜R4は、各々独立にアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表わす。これらの各基を以下にさらに説明する。
R1〜R4は各々独立に、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜5のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−ブチル、i−ペンチル)、炭素数7〜20、好ましくは炭素数7〜15、さらに好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、炭素数6〜20、好ましくは6〜15、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、ビフェニル、4−t−ブチルフェニル、3−メトキシフェニル)を表わす。
【0019】
一般式(III)で表わされる化合物は、具体的には、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ペンチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウム、ジメチルジ−n−テトラデシルアンモニウムブロマイド等の化合物が挙げられるが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0020】
さらに、本発明において、前記一般式(IV)で表される化合物の環化工程が一般式(V)の化合物の存在下に行われることが好ましい。
本発明において、好ましく使用される一般式(V)で表わされる化合物を説明する。
【0021】
【化6】
【0022】
一般式(V)中、Aは酸根を表わす。ここで、Aは有機酸(例えばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、3−ニトロベンゼンスルホン酸)または無機酸(例えば塩酸、硫酸、リン酸)の酸根が好ましく、より好ましくはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸の酸根であり、さらに好ましくはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の酸根であり、最も好ましくはp−トルエンスルホン酸の酸根である。
【0023】
本発明の製造方法においては、一般式(II)で表わされる化合物を、臭素および一般式(III)で表わされる化合物で臭素化し、一般式(IV)で表わされる化合物を生成させる工程(第一の工程)と、該一般式(IV)で表わされる化合物を脱水環化して一般式(I)で表わされる化合物を生成させる工程(第二の工程)を含む。
以下に、第一の工程(一般式(II)で表わされる化合物から一般式(IV)で表わされる化合物の合成)を説明する。
【0024】
第一の工程では、臭素と一般式(III)で表わされる化合物を溶媒に先行添加した後、一般式(II)で表わされる化合物を添加することが好ましい。
すなわち、一般式(III)で表わされる4級アンモニウムブロマイドを溶媒に分散させておき、一般式(III)で表わされる化合物1モルに対して0.9〜5モル、好ましくは0.9〜3モル、さらに好ましくは0.9〜1.5モルの臭素を添加して撹拌した後、一般式(II)で表わされる化合物を、一般式(III)で表わされる化合物1モルに対して1〜5モル、好ましくは1〜3モル、さらに好ましくは1〜1.5モル添加する、添加順でブロム化を行なうのが好ましい。
【0025】
臭素を滴下する際には、反応系内の温度を0〜40℃、好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは10〜25℃に行なうのが好ましい。臭素の滴下時間は、反応系内の温度が前記温度に制御できるように加えることが好ましい。一般式(II)で表わされる化合物を添加する際には、反応系内の温度を0〜100℃、好ましくは0〜50℃、さらに好ましくは5〜20℃で行なうのが好ましい。
また、一般式(II)で表わされる化合物を添加後、反応温度を30〜100℃、反応効率の観点から、好ましくは30〜70℃、さらに好ましくは40〜60℃に上昇させることが好ましい。
【0026】
第一の工程では、反応溶媒として水を用いないことが好ましい。反応溶媒に水以外の種々の溶媒を用いることができ、例えばカルボン酸系溶媒(例えば酢酸、プロピオン酸)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン)、アミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハロゲン系溶媒(例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)が挙げられる。これらの溶媒を単独、あるいは併用して用いることができる。
前記反応溶媒として好ましくはカルボン酸系溶媒およびハロゲン系溶媒であり、反応効率の観点から、さらに好ましくは炭素数2〜4のカルボン酸系溶媒であり、最も好ましくは酢酸である。
【0027】
一般式(III)で表わされる4級アンモニウムブロマイドに対する反応溶媒の使用量は、一般式(III)で表わされる4級アンモニウムブロマイド1モルに対し、0.1〜20リットル、好ましくは0.2〜10リットル、さらに好ましくは0.4〜3リットルである。
【0028】
本発明においては、前記生成した一般式(IV)で表わされる化合物を単離することなく、次の反応工程を行なうものである。
本発明においては、前記のように第一の工程で生成した一般式(IV)で表わされる化合物を次工程の第二の工程に供するには、一般式(IV)で表わされる化合物を含む反応液のまま用いるのが操作性の点から最も好ましい。また、反応混合物を水と有機溶媒系で抽出して得られた有機溶媒層を濃縮して、あるいは濃縮せずに用いることもできる。
【0029】
次に、第二の工程(生成した一般式(IV)で表わされる化合物から一般式(I)で表わされる化合物の合成)について説明する。
第二の工程では副生する水を反応系から除くのが好ましく、その手段としては、種々の方法が取りうるが、例えば溶媒との共沸、脱水剤(例えばオルトギ酸メチル等のオルトエステル、無水酢酸等の酸無水物、モレキュラーシーブ等のトラップ剤)が好ましく、より好ましくは溶媒との共沸および無水酢酸の添加であり、溶媒との共沸が最も好ましい。
【0030】
第二の工程では、前述したように前記一般式(V)で表わされる有機または無機の酸を添加するのが好ましく、酸の添加量は一般式(II)で表わされる化合物1モルに対して、好ましくは0.01〜3.0モル、より好ましくは0.05〜1.0モル、さらに好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0031】
第二の工程の反応温度は、好ましくは0〜250℃であり、より好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは80〜160℃である。
【0032】
第二の工程の好ましい反応溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン)、ハロゲン系溶媒(例えば1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン)であり、操作性、作業環境の観点から、より好ましくは芳香族炭化水素系溶媒であり、さらに好ましくはトルエン、キシレンであり、キシレンが最も好ましい。
【0033】
本発明においては、第一の工程で一般式(IV)で表わされる化合物を生成した後、第二の工程の反応を開始する前に、第一の工程で副生した臭化水素を除く操作をすることが好ましく、その手段としては反応を妨害する等の負の影響がなければ、特に限定されずに種々の方法を取り得ることができるが、減圧下にて撹拌、あるいは不活性ガス(例えば窒素、アルゴン)を反応液にバブリングすることを単独、あるいは組合わせて行なうことが好ましい。
【0034】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
下記の反応スキームにより、化合物(I)を合成した。
【0035】
【化7】
【0036】
3ツ口フラスコにテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド32.9g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら溶解した。ここへ、撹拌しながら臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、キシレン110mlを添加し、窒素バブリングを1時間行なった。ここへp−トルエンスルホン酸5.71gを添加し、加熱還流下にて4時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、合計90mlを反応系から分離除去した。このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたキシレン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。こうして得られたキシレン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶18.4gを得た(収率87.0%)。得られた結晶は、下記条件で1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。また、このものの純度はHPLCより99.2%であった。1H−NMRデータを下記に示す。
【0037】
【0038】
1H−NMRスペクトルデータ(TMS)
1H−NMR(CDCl3):δ=7.777(d、1H、J=1.8Hz)、7.400(dd、1H、J=1.8、8.7Hz)、7.332(d、1H、J=8.7Hz)、2.635(s、3H)
【0039】
(実施例2)
下記反応スキームにより化合物(I)を合成した。
【0040】
【化8】
【0041】
3ツ口フラスコにテトラエチルアンモニウムブロマイド22.1g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。
その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、トルエン110ml、メタンスルホン酸1.95mlを添加し、加熱還流下にて8時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、合計90mlを反応系から分離除去した。
このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたトルエン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。
こうして得られたトルエン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶16.8gを得た(収率79.3%)。
得られた結晶は、実施例1と同様に上記条件で1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。また、このものの純度はHPLCより99.0%であった。
【0042】
(比較例1)
下記反応スキームにて化合物(I)を合成した。
【0043】
【化9】
【0044】
1)中間体の化合物(IV)の合成
3ツ口フラスコにテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド32.9g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら溶解した。ここへ、撹拌しながら臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。
ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、反応液を氷200gに注ぎ、撹拌しながら水150mlを添加した。そのまま30分撹拌して、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、目的の化合物(IV)20.9gを得た(収率91.0%)。
【0045】
2)化合物(I)の合成
3ツ口フラスコに、先に得た化合物(IV)20.9g、キシレン110mlを入れ、ここへp−トルエンスルホン酸5.71gを添加し、加熱還流下にて4時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、反応系から分離除去した。
このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたキシレン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。
こうして得られたキシレン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶16.1gを得た(収率83.6%)。
得られた結晶は、実施例1と同様に1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。このものの純度はHPLCより98.8%であった。ここで、化合物(II)からの2工程の総収率は76.1%であった。
【0046】
(比較例2)
下記反応スキームにて化合物(I)を合成した。
【0047】
【化10】
【0048】
1)中間体の化合物(IV)の合成
3ツ口フラスコにテトラエチルアンモニウムブロマイド22.1g、酢酸70mlを入れ、水冷下にて撹拌しながら、臭素16.0gを30分かけて滴下した後、そのまま30分撹拌を続けた。
ここへ化合物(II)15.1gを添加して、水浴をはずし、そのまま1時間撹拌した。その後、加温してさらに内温55℃にて1時間加熱撹拌した後、反応液を氷200gに注ぎ、撹拌しながら水150mlを添加した。そのまま30分撹拌して、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、目的の化合物(IV)18.6gを得た(収率80.8%)。
【0049】
2)化合物(I)の合成
3ツ口フラスコに、先に得た化合物(IV)18.6g、トルエン110ml、メタンスルホン酸1.95mlを入れ、加熱還流下にて8時間撹拌しながら、酢酸と生成する水を共沸させ、反応系から分離除去した。
このものを30℃まで冷却した後、重曹84g、水100mlと氷100gの混合物に注ぎ、抽出した。得られたトルエン層を飽和食塩水10mlと水60mlの混合溶液で3回洗浄し、活性炭5gと無水硫酸マグネシウム20gの混合物を加えて乾燥、精製した。
こうして得られたトルエン溶液を濃縮し、50℃にてイソプロピルアルコール30mlと水10mlの混合液を添加して溶解し、氷浴にて冷却しながら、さらにここへイソプロピルアルコール10mlと水10mlの混合液を5分間かけて滴下した。このものを氷冷下にて30分撹拌した後、析出した結晶を吸引濾過して乾燥し、結晶14.8gを得た(収率86.4%)。
得られた結晶は、実施例1と同様に1H−NMR及びHPLCにより目的の化合物(I)であることを確認した。このものの純度はHPLCより97.1%であった。ここで、化合物(II)からの2工程の総収率は69.8%であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明により、写真用増感色素および添加剤、医薬、農薬、染料並びに電子材料、もしくはこれらの中間体として有用な5−ブロムベンゾオキサゾール化合物を安価、簡便で高収率に製造することができる。
Claims (5)
- 前記一般式(I)、(II)および(IV)におけるRが炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
- 前記一般式(I)、(II)および(IV)におけるRがメチル基であることを特徴とする請求項1に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
- 一般式(II)で表わされる化合物から一般式(I)で表わされる化合物を製造する反応工程において、反応溶媒に水を用いないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の、前記一般式(I)で表わされる化合物の製造方法。
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JP2003053533A JP2004262808A (ja) | 2003-02-28 | 2003-02-28 | ベンゾオキサゾール化合物の製造方法 |
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