JP2004262764A - ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】排出バルブの整備の回数を減らしても高い気密性を維持できるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置１は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成する反応釜２を具備し、反応釜２には、反応釜２の内容物を排出する際に開放される排出バルブが設けられたヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置１において、排出バルブがボールコック５である。また、本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造方法は、上述したヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置１でヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを製造する。
【選択図】 図１
【解決手段】本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置１は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成する反応釜２を具備し、反応釜２には、反応釜２の内容物を排出する際に開放される排出バルブが設けられたヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置１において、排出バルブがボールコック５である。また、本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造方法は、上述したヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置１でヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを製造する。
【選択図】 図１
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを製造する際に使用されるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、反応釜の内容物を排出する際に開放される反応釜の底面に設けられた排出バルブに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートは、一般的に、触媒や重合防止剤の存在下、（メタ）アクリル酸と（メタ）アクリル酸より過剰量のアルキレンオキサイドとを原料として、温度４０〜７０℃で加圧された反応釜中で反応させて合成される。その後、反応釜内を加圧したり、上部を開放して大気圧にしたり、ポンプを用いたりして、反応釜中で生成した反応液を脱気装置や蒸留装置などに移液して高純度のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを得る。
このようなヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造に使用される反応釜には、内容物を排出する際に開放される排出バルブが設けられており、この排出バルブとしては、反応釜内に液だまりが形成しにくいことから、一般的に、フラッシュバルブが使用されている。
【０００３】
図３に、フラッシュバルブの一例の断面図を示す。このフラッシュバルブ２０は、流路２１が形成されたバルブ本体２２と、バルブ本体２２の流路２１内に挿入され、上下動可能な弁棒２３と、弁棒２３の頂部に取り付けられた弁頭２６と、流路２１内に設けられ、弁棒２３を下降させた際に弁頭２６が当接する弁座２５とを有して概略構成されたものである。また、バルブ本体２２の下部には斜め下方に向かう排出口２４が形成されている。
このようなフラッシュバルブ２０では、弁頭２６を弁座２５に当接させた際に流路が塞がれて閉止され、弁棒２３を上昇させて弁頭２３を弁座２５から離した際に開放される。
【０００４】
ところで、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの合成反応では、副生物として、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートに（メタ）アクリル酸が反応したジエステル類や、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートにアルキレンオキサイドが反応したジアルキレングリコールモノエステル類が生成することがある。
目的生成物であるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートおよび上記の副生物は、他のアルキル（メタ）アクリレートと比較して非常に重合しやすい化合物である。そのため、反応釜に、フェノール化合物、パラフェニレンジアミン類、アミン化合物、ジアルキルジチオカルバミン酸銅塩類、Ｎ−オキシル化合物などの重合防止剤を含む重合防止剤含有液が反応釜内に添加される。しかしながら、通常の添加方法では反応釜の蓋部あるいは上部等に重合防止剤含有液は接触しないので、蓋部あるいは上部に接触したヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの蒸気が重合して、ポップコーンと呼ばれる重合物を生成することがあった。
【０００５】
しかも、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの合成のようなエチレンオキサイドを使用する付加反応では不純物を嫌う上に、生産性を向上させるため、移液した後でも反応釜内部を洗浄せずに連続して次の反応を行うことが多く、長期にわたって連続的に反応を行った場合には、重合物の生成量が徐々に増え続けた。そして、その一部が断続的に剥がれ落ち、反応液上に浮遊することがあった。
このように反応液上に重合物が浮遊する場合には、フラッシュバルブを開放して反応液を排出した際に、弁頭や弁棒に重合物が引っ掛かり、重合物の全てが排出されず一部が反応釜の底面に残ってしまうことがあった。そして、重合物が底面に残ったまま弁棒を下降させてフラッシュバルブを閉止すると、残存した重合物が弁頭と弁座との当接面（シール面）に噛み込んで密閉性を低下させることがあった。
【０００６】
一般的にエステル化反応、エステル交換反応、付加反応等で製造される（メタ）アクリル酸エステルでは、主たる原料が、毒性、爆発性が低い（メタ）アクリル酸あるいはそのエステルとアルコールであるため、高い密閉性が要求されないが、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造のように、毒性、爆発性が高いアルキレンオキサイドを用いる場合には高い密閉性が要求される。その要求を満たすため、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造では、連続的な製造を中断して反応釜の底面に残った重合物を取り除く整備をすることがあった。その結果、生産性が十分に高くなかった。
フラッシュバルブの密閉性を維持する手段については、これまでにも検討されており、例えば、特許文献１に、反応釜内液の漏れが発生することのない容器底排出弁用弁座を用いることが提案されている。
【０００７】
【特許文献１】
実開平５−８１４１号公報（図１）
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、反応液上に重合物が浮遊する場合などでは、特許文献１に記載の容器底排出弁用弁座がフラッシュバルブに備えられていても、反応釜内の重合物が少量残るため、シール面における重合物の噛み込みを十分に防止できなかった。したがって、高い密閉性を維持できなかった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、排出バルブの整備の回数を減らしても高い密閉性を維持できるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置および製造方法を発明した。
すなわち、本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成する反応釜を具備し、反応釜には、反応釜の内容物を排出する際に開放される排出バルブが設けられたヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置において、排出バルブがボールコックであることを特徴とする。
本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置においては、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートがヒドロキシエチル（メタ）アクリレートである場合に好適である。
また、本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造方法は、上述したヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置でヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを製造することを特徴とする。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置（以下、製造装置と略す）の一実施形態例について図１を参照して説明する。
この製造装置１は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成する反応釜２を具備するものであり、この反応釜２の底面３には、導管４を介して、反応釜の内容物を排出する際に開放される排出バルブであるボールコック５が設けられている。
ここで、ボールコック５とは、図２（ａ）に示すように、管状のバルブ本体６内に、貫通孔７が形成された球体であるボール８が回転可能に備えられ、バルブ本体６内面の一部とボール８外面の一部とが密接したものである。そして、このボールコック５は、貫通孔７がバルブ本体６内の流路９ａ，９ｂを連通させるようにボール８を配置させた際に開放され、図２（ｂ）に示すように、貫通孔７が形成されていない面がバルブ本体６内の流路９ａ，９ｂを塞ぐようにボール８を配置させた際に閉止される。なお、ボールコック５のボール８は、図示されない駆動手段によって回転する。
【００１１】
ボールコック５においては、貫通孔７の内径がバルブ本体６の流路９ａ，９ｂの内径と略同等であることが好ましい。貫通孔７の内径がバルブ本体６の流路９ａ，９ｂの内径と略同等であれば、貫通孔７で重合物が閉塞することを防止できる。
また、ボールコック５は、できるだけ反応釜２に近い位置に設置されることが好ましい。ボールコック５ができるだけ反応釜２に近い位置に設置されていれば、反応釜２内の液溜まりを小さくできる。
【００１２】
反応釜２からボールコック５までの導管４は、重合物の閉塞をより防止できることから、鉛直方向に延在することが好ましい。なお、導管４が曲線状である場合には、重合物が閉塞するおそれがある。
【００１３】
次に、上述した製造装置を用いたヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造方法（以下、製造方法と略す）について説明する。この製造方法としては、反応釜２内で（メタ）アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させてヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成できれば何れの方法も採用できる。一般的な製造方法として次のような方法が例示できる。すなわち、まず、反応釜２の底面３に設けられたボールコック５を全閉にして、（メタ）アクリル酸と、（メタ）アクリル酸に対し過剰量のアルキレンオキサイドと、触媒とを反応釜２に仕込む。そして、加圧下で反応させてヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを含む反応液を得て、引き続き真空脱気処理により反応液中の残存アルキレンオキサイドを除去する。その後、ボールコック５を全開にして、反応液を精製装置に移液し、蒸留等により精製して、高純度のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを得る。なお、排出後は、次の反応に備え、再びボールコック５を全閉にする。
【００１４】
このような製造装置および製造方法で製造されるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートとしては特に制限されず、例えば、ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレートなどが挙げられるが、生産量が多く本発明の効果が顕著に発揮されることから、本発明は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートがヒドロキシエチル（メタ）アクリレートである場合に特に好適である。
【００１５】
以上説明した製造装置および製造方法では、反応釜２の蓋部あるいは上部に形成したポップコーン等の重合物が剥がれ落ちて反応液に混入した場合でも、排出バルブがボールコック５であるので、重合物が反応液と共に流れ出やすく、閉塞することがない。したがって、重合物がシール面に噛み込むことを防止できるので、整備の回数を減らしても、長期にわたって密閉性を維持することができ、生産性の低下を防止できる。しかも、アルキレンオキサイドの漏洩を防止できるので、工業的な面、環境的な面の両面において極めて有用である。
【００１６】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
（実施例）
底面に排出バルブとしてボールコックが設置された２−ヒドロキシエチルメタクリレート製造用反応釜（容積５ｍ３ ）に、メタクリル酸３４キロモルと、エチレンオキサイド３８キロモルと、触媒であるメタクリル酸鉄０．１５キロモルとを仕込み、温度６０℃にて反応させた。次いで、反応釜内の真空脱気処理を実施後、ボールコックを全開にして反応液を精製装置に移液し、高純度のヒドロキシエチル（メタ）アクリレートを得た。その際、ボールコックにかかる圧力を最高４００ｋＰａ（ゲージ圧）、最低２．０ｋＰａ（絶対圧）とした。
１回／７日の間隔で、ボールコックの一次側を４００ｋＰａ（ゲージ圧）に加圧し、ボールコック二次側に石鹸水を塗布して密閉性を調べたところ、連続８８０バッチの反応を行っても、漏れは確認されなかった。すなわち、分解整備しなくても、高い密閉性を維持していた。
【００１７】
（比較例）
排出バルブを、ボールコックに代えてフラッシュバルブにしたこと以外は実施例と同様にしてヒドロキシエチル（メタ）アクリレートを製造した。
その結果、連続７０バッチ目で漏れが認められたので分解整備した後に運転を再開させた。しかしながら、その後１９６バッチ目で再度漏れが認められたため分解整備後、再度立ち上げ、さらにその後、１０５バッチ目で漏れが認められて分解整備した。このように、分解整備の回数が多く、生産性が低下した。
【００１８】
（参考例）
底面に排出バルブとしてフラッシュバルブが設置された反応釜（容積１５ｍ３ ）に、ブタノール４４キロモルと、メチルメタクリレート７５キロモルと、触媒であるテトラブトキシチタネート０．０３キロモルとを仕込み、反応温度１００〜１３０℃にて反応させてブチルメタクリレート（ＢＭＡ）製造した。この場合、連続１６００バッチ反応を行っても、フラッシュバルブの漏れは認められなかった。
【００１９】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの重合物がシール面に噛み込むことを防止できるので、排出バルブの整備の回数を減らしても高い気密性を維持できる。さらに、本発明は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートがヒドロキシエチル（メタ）アクリレートである場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置の一実施形態例を示す側面図である。
【図２】本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置の一実施形態例を構成するボールコックの断面図であって、（ａ）は、全開にされているときの図であり、（ｂ）は、全閉にされているときの図である。
【図３】フラッシュバルブの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
１ ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置
２ 反応釜
３ 底面
５ ボールコック
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを製造する際に使用されるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、反応釜の内容物を排出する際に開放される反応釜の底面に設けられた排出バルブに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートは、一般的に、触媒や重合防止剤の存在下、（メタ）アクリル酸と（メタ）アクリル酸より過剰量のアルキレンオキサイドとを原料として、温度４０〜７０℃で加圧された反応釜中で反応させて合成される。その後、反応釜内を加圧したり、上部を開放して大気圧にしたり、ポンプを用いたりして、反応釜中で生成した反応液を脱気装置や蒸留装置などに移液して高純度のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを得る。
このようなヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造に使用される反応釜には、内容物を排出する際に開放される排出バルブが設けられており、この排出バルブとしては、反応釜内に液だまりが形成しにくいことから、一般的に、フラッシュバルブが使用されている。
【０００３】
図３に、フラッシュバルブの一例の断面図を示す。このフラッシュバルブ２０は、流路２１が形成されたバルブ本体２２と、バルブ本体２２の流路２１内に挿入され、上下動可能な弁棒２３と、弁棒２３の頂部に取り付けられた弁頭２６と、流路２１内に設けられ、弁棒２３を下降させた際に弁頭２６が当接する弁座２５とを有して概略構成されたものである。また、バルブ本体２２の下部には斜め下方に向かう排出口２４が形成されている。
このようなフラッシュバルブ２０では、弁頭２６を弁座２５に当接させた際に流路が塞がれて閉止され、弁棒２３を上昇させて弁頭２３を弁座２５から離した際に開放される。
【０００４】
ところで、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの合成反応では、副生物として、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートに（メタ）アクリル酸が反応したジエステル類や、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートにアルキレンオキサイドが反応したジアルキレングリコールモノエステル類が生成することがある。
目的生成物であるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートおよび上記の副生物は、他のアルキル（メタ）アクリレートと比較して非常に重合しやすい化合物である。そのため、反応釜に、フェノール化合物、パラフェニレンジアミン類、アミン化合物、ジアルキルジチオカルバミン酸銅塩類、Ｎ−オキシル化合物などの重合防止剤を含む重合防止剤含有液が反応釜内に添加される。しかしながら、通常の添加方法では反応釜の蓋部あるいは上部等に重合防止剤含有液は接触しないので、蓋部あるいは上部に接触したヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの蒸気が重合して、ポップコーンと呼ばれる重合物を生成することがあった。
【０００５】
しかも、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの合成のようなエチレンオキサイドを使用する付加反応では不純物を嫌う上に、生産性を向上させるため、移液した後でも反応釜内部を洗浄せずに連続して次の反応を行うことが多く、長期にわたって連続的に反応を行った場合には、重合物の生成量が徐々に増え続けた。そして、その一部が断続的に剥がれ落ち、反応液上に浮遊することがあった。
このように反応液上に重合物が浮遊する場合には、フラッシュバルブを開放して反応液を排出した際に、弁頭や弁棒に重合物が引っ掛かり、重合物の全てが排出されず一部が反応釜の底面に残ってしまうことがあった。そして、重合物が底面に残ったまま弁棒を下降させてフラッシュバルブを閉止すると、残存した重合物が弁頭と弁座との当接面（シール面）に噛み込んで密閉性を低下させることがあった。
【０００６】
一般的にエステル化反応、エステル交換反応、付加反応等で製造される（メタ）アクリル酸エステルでは、主たる原料が、毒性、爆発性が低い（メタ）アクリル酸あるいはそのエステルとアルコールであるため、高い密閉性が要求されないが、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造のように、毒性、爆発性が高いアルキレンオキサイドを用いる場合には高い密閉性が要求される。その要求を満たすため、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造では、連続的な製造を中断して反応釜の底面に残った重合物を取り除く整備をすることがあった。その結果、生産性が十分に高くなかった。
フラッシュバルブの密閉性を維持する手段については、これまでにも検討されており、例えば、特許文献１に、反応釜内液の漏れが発生することのない容器底排出弁用弁座を用いることが提案されている。
【０００７】
【特許文献１】
実開平５−８１４１号公報（図１）
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、反応液上に重合物が浮遊する場合などでは、特許文献１に記載の容器底排出弁用弁座がフラッシュバルブに備えられていても、反応釜内の重合物が少量残るため、シール面における重合物の噛み込みを十分に防止できなかった。したがって、高い密閉性を維持できなかった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、排出バルブの整備の回数を減らしても高い密閉性を維持できるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置および製造方法を発明した。
すなわち、本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成する反応釜を具備し、反応釜には、反応釜の内容物を排出する際に開放される排出バルブが設けられたヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置において、排出バルブがボールコックであることを特徴とする。
本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置においては、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートがヒドロキシエチル（メタ）アクリレートである場合に好適である。
また、本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造方法は、上述したヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置でヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを製造することを特徴とする。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置（以下、製造装置と略す）の一実施形態例について図１を参照して説明する。
この製造装置１は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成する反応釜２を具備するものであり、この反応釜２の底面３には、導管４を介して、反応釜の内容物を排出する際に開放される排出バルブであるボールコック５が設けられている。
ここで、ボールコック５とは、図２（ａ）に示すように、管状のバルブ本体６内に、貫通孔７が形成された球体であるボール８が回転可能に備えられ、バルブ本体６内面の一部とボール８外面の一部とが密接したものである。そして、このボールコック５は、貫通孔７がバルブ本体６内の流路９ａ，９ｂを連通させるようにボール８を配置させた際に開放され、図２（ｂ）に示すように、貫通孔７が形成されていない面がバルブ本体６内の流路９ａ，９ｂを塞ぐようにボール８を配置させた際に閉止される。なお、ボールコック５のボール８は、図示されない駆動手段によって回転する。
【００１１】
ボールコック５においては、貫通孔７の内径がバルブ本体６の流路９ａ，９ｂの内径と略同等であることが好ましい。貫通孔７の内径がバルブ本体６の流路９ａ，９ｂの内径と略同等であれば、貫通孔７で重合物が閉塞することを防止できる。
また、ボールコック５は、できるだけ反応釜２に近い位置に設置されることが好ましい。ボールコック５ができるだけ反応釜２に近い位置に設置されていれば、反応釜２内の液溜まりを小さくできる。
【００１２】
反応釜２からボールコック５までの導管４は、重合物の閉塞をより防止できることから、鉛直方向に延在することが好ましい。なお、導管４が曲線状である場合には、重合物が閉塞するおそれがある。
【００１３】
次に、上述した製造装置を用いたヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造方法（以下、製造方法と略す）について説明する。この製造方法としては、反応釜２内で（メタ）アクリル酸とアルキレンオキサイドとを反応させてヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成できれば何れの方法も採用できる。一般的な製造方法として次のような方法が例示できる。すなわち、まず、反応釜２の底面３に設けられたボールコック５を全閉にして、（メタ）アクリル酸と、（メタ）アクリル酸に対し過剰量のアルキレンオキサイドと、触媒とを反応釜２に仕込む。そして、加圧下で反応させてヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを含む反応液を得て、引き続き真空脱気処理により反応液中の残存アルキレンオキサイドを除去する。その後、ボールコック５を全開にして、反応液を精製装置に移液し、蒸留等により精製して、高純度のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを得る。なお、排出後は、次の反応に備え、再びボールコック５を全閉にする。
【００１４】
このような製造装置および製造方法で製造されるヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートとしては特に制限されず、例えば、ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレートなどが挙げられるが、生産量が多く本発明の効果が顕著に発揮されることから、本発明は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートがヒドロキシエチル（メタ）アクリレートである場合に特に好適である。
【００１５】
以上説明した製造装置および製造方法では、反応釜２の蓋部あるいは上部に形成したポップコーン等の重合物が剥がれ落ちて反応液に混入した場合でも、排出バルブがボールコック５であるので、重合物が反応液と共に流れ出やすく、閉塞することがない。したがって、重合物がシール面に噛み込むことを防止できるので、整備の回数を減らしても、長期にわたって密閉性を維持することができ、生産性の低下を防止できる。しかも、アルキレンオキサイドの漏洩を防止できるので、工業的な面、環境的な面の両面において極めて有用である。
【００１６】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
（実施例）
底面に排出バルブとしてボールコックが設置された２−ヒドロキシエチルメタクリレート製造用反応釜（容積５ｍ３ ）に、メタクリル酸３４キロモルと、エチレンオキサイド３８キロモルと、触媒であるメタクリル酸鉄０．１５キロモルとを仕込み、温度６０℃にて反応させた。次いで、反応釜内の真空脱気処理を実施後、ボールコックを全開にして反応液を精製装置に移液し、高純度のヒドロキシエチル（メタ）アクリレートを得た。その際、ボールコックにかかる圧力を最高４００ｋＰａ（ゲージ圧）、最低２．０ｋＰａ（絶対圧）とした。
１回／７日の間隔で、ボールコックの一次側を４００ｋＰａ（ゲージ圧）に加圧し、ボールコック二次側に石鹸水を塗布して密閉性を調べたところ、連続８８０バッチの反応を行っても、漏れは確認されなかった。すなわち、分解整備しなくても、高い密閉性を維持していた。
【００１７】
（比較例）
排出バルブを、ボールコックに代えてフラッシュバルブにしたこと以外は実施例と同様にしてヒドロキシエチル（メタ）アクリレートを製造した。
その結果、連続７０バッチ目で漏れが認められたので分解整備した後に運転を再開させた。しかしながら、その後１９６バッチ目で再度漏れが認められたため分解整備後、再度立ち上げ、さらにその後、１０５バッチ目で漏れが認められて分解整備した。このように、分解整備の回数が多く、生産性が低下した。
【００１８】
（参考例）
底面に排出バルブとしてフラッシュバルブが設置された反応釜（容積１５ｍ３ ）に、ブタノール４４キロモルと、メチルメタクリレート７５キロモルと、触媒であるテトラブトキシチタネート０．０３キロモルとを仕込み、反応温度１００〜１３０℃にて反応させてブチルメタクリレート（ＢＭＡ）製造した。この場合、連続１６００バッチ反応を行っても、フラッシュバルブの漏れは認められなかった。
【００１９】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの重合物がシール面に噛み込むことを防止できるので、排出バルブの整備の回数を減らしても高い気密性を維持できる。さらに、本発明は、ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートがヒドロキシエチル（メタ）アクリレートである場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置の一実施形態例を示す側面図である。
【図２】本発明のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置の一実施形態例を構成するボールコックの断面図であって、（ａ）は、全開にされているときの図であり、（ｂ）は、全閉にされているときの図である。
【図３】フラッシュバルブの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
１ ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置
２ 反応釜
３ 底面
５ ボールコック
Claims (3)
- ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを合成する反応釜を具備し、反応釜には、反応釜の内容物を排出する際に開放される排出バルブが設けられたヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置において、
排出バルブがボールコックであることを特徴とするヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置。 - ヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートがヒドロキシエチル（メタ）アクリレートであることを特徴とする請求項１に記載のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置。
- 請求項１または２に記載のヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造装置でヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートを製造することを特徴とするヒドロキシアルキル（メタ）アクリレートの製造方法。
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