JP2004261763A - モリブデン溶出防止剤及びモリブデン溶出防止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】短時間でかつ有効に、生活環境中へのモリブデンの溶出、例えばモリブデン汚染土壌からのモリブデンの溶出を防止することができる、モリブデン溶出防止剤及び当該モリブデン溶出防止剤を用いたモリブデン溶出防止方法を提供することである。
【解決手段】モリブデン溶出防止剤は、少なくとも1種類の鉄塩化合物をセメント系固化材に含有させてなり、好適には、鉄塩化合物をセメント系固化材100重量部に対して、Feに換算して0.01〜5重量部含有させてなる。また、前記モリブデン溶出防止剤、モリブデン含有材及び水を加えて混練して、当該モリブデン含有材を固化することによりモリブデンの溶出を有効に防止することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】モリブデン溶出防止剤は、少なくとも1種類の鉄塩化合物をセメント系固化材に含有させてなり、好適には、鉄塩化合物をセメント系固化材100重量部に対して、Feに換算して0.01〜5重量部含有させてなる。また、前記モリブデン溶出防止剤、モリブデン含有材及び水を加えて混練して、当該モリブデン含有材を固化することによりモリブデンの溶出を有効に防止することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モリブデン溶出防止剤及びモリブデン溶出防止方法に関し、特に、生活環境中へのモリブデンの溶出を確実に防止することができるモリブデン溶出防止剤及び、モリブデン含有材からのモリブデンの溶出を効率的にかつ確実に防止処理することができるモリブデン溶出防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場跡地や廃棄物の最終処分場の跡地等は、土壌が安定化するまで、何十年と放置して、安定化させているのが一般的であるが、これらの地盤の多くは、例えば海浜等の埋立地等であり、その有用性は高く、可能な限り早期に活用が望まれている場所である。
【0003】
然し、種々雑多な廃棄物の安定化には、長期年月がかかり、更には重金属の有害物質を含有する場合には、これらの重金属の溶出が発生することがあり、好ましくない環境問題を、長期間さらけ出している場合が多い。
社会環境の観点から、又、社会経済的な面からも、早期に無害化して、土地として活用する事は、重要な課題である。
【0004】
上記課題に鑑み、土壌中の重金属の溶出を防止する方法として、特開2001−79536号公報には、セメント系固化材に、スラグと、亜硫酸化合物、チオ硫酸化合物、硫化物の少なくとも1種からなる添加剤とを混合してなる重金属固定用固化材が開示されている。
【0005】
また、特許第3271534号には、鉛、六価クロム、ヒ素及びセレンを含有する灰からこれらの重金属を処理する方法として、当該灰に対し、水と、所定量の特定のリン酸系重金属固定化剤及び第一鉄化合物とを混練して処理する方法が開示されている。
【0006】
一方、モリブデンは生体必須金属であるが、モリブデンを過剰吸入すると、中毒症状としての腎肺症、慢性暴露による過尿酸血症や痛風を発症するおそれがあるとともに、貧血、不妊、骨粗鬆症などの発症の誘引元素であり、また銅と拮抗関係にあるために、銅欠乏症を生ぜしめることもある。
【0007】
また、モリブデンは、平成5年4月28日の環水規第121号による環境庁水質保全局長通知によると、水質要監視項目(指針値;0.07mg/L以下)となっている。
従って、モリブデンの生活環境中への溶出を防止することが望まれている。
【0008】
しかし、上記したような従来の重金属固定化材は、モリブデン汚染土壌等のモリブデン含有材からモリブデンの溶出を短時間でかつ安定的に防止するには不充分であり、溶出防止効果はあまり期待できなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、短時間でかつ有効に、生活環境中へのモリブデンの溶出、例えばモリブデン汚染土壌からのモリブデンの溶出を防止することができる、モリブデン溶出防止剤を提供することである。
特に、モリブデンの溶出処理を行なうと直ちにモリブデンを固定化することができるモリブデン溶出防止剤を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記本発明のモリブデン溶出防止剤を用いて、簡易かつ効率的に、かつ安定にモリブデンの生活環境中への溶出、例えばモリブデン汚染土壌からのモリブデンの溶出を短時間でかつ確実に防止処理することができる、モリブデン溶出防止方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明者らが検討した結果、所定量の鉄塩化合物とセメント系固化材とを含む剤料は、モリブデンの固定化が可能となることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明のモリブデン溶出防止剤は、鉄塩化合物をセメント系固化材に含有させてなることを特徴とする。
好適には、上記モリブデン溶出防止剤において、鉄塩化合物をセメント組成物100重量部に対して、Feに換算して0.01〜5重量部含有させてなることを特徴とする。
【0012】
本発明のモリブデン溶出防止方法は、本発明のモリブデン溶出防止剤、モリブデン含有材及び水を加えて混練して、当該モリブデン含有材を固化することを特徴とする。
好適には、前記モリブデン溶出防止方法において、モリブデン含有材が、モリブデン含有土壌であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明を、以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のモリブデン溶出防止剤は、鉄塩化合物をセメント系固化材に含有させてなるものである。
通常、セメント系固化材は硬化するのに一定の時間を要し、硬化するまでの間、モリブデンの溶出を完全に防止することは困難であったが、本発明においては、モリブデンを含有させることにより、セメント系固化材が完全に硬化するまでの間であっても、短時間でかつ充分にモリブデンの溶出を防止することが可能となる。
【0014】
本発明のモリブデン溶出防止剤に使用される鉄塩化合物としては、硫酸第一鉄(FeSO4)、硫酸第二鉄(Fe2(SO4)3)、塩化第一鉄(FeCl2)、塩化第二鉄(FeCl3)、硝酸第一鉄(Fe(NO3)2)、硝酸第二鉄(Fe(NO3)2)、及びこれらの含水塩(例えば、FeSO4・7H2O,FeCl3・4H2O、FeCl3・6H2O、Fe(NO3)3・9H2O等)等の、第一鉄塩化合物や第二鉄塩化合物を使用することができ、好適には、モリブデンの溶出防止性の点から第一鉄塩化合物を好適に使用できる。
これらの鉄塩化合物は、1種類のみを使用しても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
また、本発明のモリブデン溶出防止剤に用いられるセメント系固化材としては、セメントのみの他、セメントに石膏及び/または石灰が混合された混合物等を例示できる。
具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、等のポルトランドセメント系混合セメント、アルミナセメント、膨張セメント、超速硬セメント等の特殊セメント等を挙げることができる。
【0016】
上記鉄塩化合物とセメント系固化材との混合割合は、セメント系固化材100重量部に対して、鉄塩化合物がFeに換算して0.01〜5重量部、好適には0.5〜4重量部であることが好ましい。
かかる範囲で鉄塩化合物が含有されることにより、モリブデンの溶出を早期にかつ有効に抑制することができるからである。
【0017】
このように、本発明のモリブデン溶出防止剤は、セメント系固化材と鉄塩化合物との両者を含むことにより、アルカリ性であるセメント固化材と鉄塩化合物との相乗作用が発現される。
具体的には、アルカリ性の水溶液中、鉄の水酸化化合物が形成されて沈殿する際に、モリブデン酸イオンとして存在するモリブデンを有効に捕獲して、共沈する等の作用が発現し、モリブデンの溶出を効果的に防止することができると考えられる。
【0018】
また、本発明のモリブデン溶出防止方法は、モリブデン含有材、例えばモリブデン含有汚染土壌に、上記本発明のモリブデン溶出防止剤及び水を加えて混練して、当該モリブデン含有材を固化することにより、モリブデンの溶出防止処理を安定に行なうものである。
【0019】
モリブデン汚染土壌等のモリブデン含有材に対する、本発明のモリブデン溶出防止剤の添加量は、モリブデンの溶出が抑制されれば特に限定されず、モリブデン含有材の物性やpHにより適宜選定することができる。例えば、モリブデン含有材が砂質土である場合には、モリブデン溶出防止剤は50〜200kg/m3、粘土である場合には100〜400kg/m3、浚渫土である場合には200〜600kg/m3の添加量を用いることが適当である。
【0020】
また、水は、必要に応じて添加され、モリブデン含有材とモリブデン溶出防止剤との混合方法によって適宜選定される。例えば、表層土壌の改良では粉体混合方式が採用され、水は必要とされず、モリブデン含有材とモリブデン溶出防止剤とを混合した後、転圧することによりモリブデンの溶出を防止できる。また、深層土壌の改良においては、前記粉体方式又はスラリー混合方式が採用され、スラリー混合方式の場合には、ハンドリング性等の点から、水モリブデン溶出防止剤比で60〜100%となるように水を混合する。
【0021】
本発明においては、例えば、モリブデン汚染土壌等のモリブデン含有材への水及びモリブデン溶出防止剤の添加順序は特に制限されず、モリブデン含有材に、予めモリブデン溶出防止剤を混合し、これに水を添加して混練しても、モリブデン含有材、水、モリブデン溶出防止剤を同時に添加して混練しても、モリブデン溶出防止処理効果は変わらない。また、モリブデン含有材に、モリブデン溶出防止剤を構成するセメント系固化材と鉄塩化合物と、水とを同時に混合混練しても、水に予め鉄塩化合物を混合して用いてもかまわない。
【0022】
また、その混練方法は、特に限定されず、モリブデン溶出防止剤、モリブデン含有材及び水が均一に混合できれば、公知の任意の方法を用いることができる。
【0023】
本発明のモリブデン溶出防止方法は、モリブデンを短時間で確実に溶出防止できるため、例えば、モリブデンを含有する土壌の地盤改良等に有効に使用することができる。
【0024】
(実施例)
本発明を以下の実施例、比較例及び試験例により説明する
実施例1
普通ポルトランドセメント(商品名;住友大阪セメント株式会社製)100重量部に対して、塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)を2重量部添加し(Fe換算で0.88重量部)、均一に混合して、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0025】
実施例2
塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)の量を2重量部から5重量部(Fe換算で2.21重量部)に代えた以外は、実施例1と同様にして、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0026】
実施例3
2重量部の塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)の代わりに、10重量部(Fe換算で3.68重量部)の硫酸第一鉄(FeSO4)(試薬;国産化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0027】
実施例4
2重量部の塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)の代わりに、10重量部(Fe換算で2.01重量部)の硫酸第一鉄の七水和物(FeSO4・7H2O)(試薬;キシダ化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0028】
比較例1
比較のため、普通ポルトランドセメント(商品名;住友大阪セメント株式会社製)を、モリブデン溶出防止剤とした。
【0029】
試験例1
実施例1〜4及び比較例1のモリブデン溶出防止剤を用いて、モリブデン溶出防止試験を行なった。
(試験用汚染土壌の調整)
試験用土壌を調製するにあたり、試料土として豊浦砂を用いた。
モリブデンは、原子吸光分析用モリブデン標準原液1000mg/l(関東化学株式会社製)を用い、混練水が7ppm(平成5年4月28日の環水規第121号による環境庁水質保全局長通知による水質要監視項目指針値の100倍)となるように汚染水を調製後、乾燥質量が1kgの前記試料土(豊浦砂)に、100gの汚染水を混合して、これを試験用汚染土壌とした。
【0030】
(試験方法)
地盤工学会基準JGS0821に準拠して、上記実施例1〜4及び比較例1で得られたモリブデン溶出防止剤、上記試験用汚染土壌及び水を混練して、当該試験用汚染土壌を固化体とした。
但し、かかる場合、前記試験用汚染土壌に対するモリブデン溶出防止剤の混合添加量は、300kg/m3、水は240kg/m3(水固化材比80%)とした。
次に、得られた固化体を環境庁告示46号に準拠して、モリブデンを溶出させ、その溶出量(mg/l)を、混練10分後、1時間後、3時間後、6時間後、24時間後の固化体それぞれについて測定した。
この結果を次の表1に示す。また、実施例2及び比較例1の結果を図1に表す。
【0031】
【表1】
判定は、環水規第121号による環境庁水質保全局長通知による水質要監視項目の指針値が0.07mg/l以下の場合を○、前記数値を超える場合を×で表したものである。
【0032】
上記表1及び図1から明らかなように、比較例1のモリブデン溶出防止剤を用いた場合には、モリブデンの溶出量は、材齢経過とともに、減少しているが、若材齢の際には、モリブデンの溶出を充分に溶出することができず、環水規第121号による環境庁水質保全局長通知による水質要監視項目(指針値;0.07mg/l)を満足することができない。
一方、本発明の実施例1〜4によるモリブデン溶出防止剤は、混合直後から充分な溶出防止効果を有することがわかる。
【0033】
【発明の効果】
本発明のモリブデン溶出防止剤は、モリブデンを含有する材、例えばモリブデン汚染土壌と混合することで、短時間でかつ充分に、モリブデンの固定化を可能として、モリブデンの溶出を防止することができる。
【0034】
また、本発明のモリブデン溶出防止方法によれば、モリブデンを安定に固定化することができ、安全にかつ短時間で確実にモリブデンの生活環境中への溶出を防止することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明及び従来のモリブデン溶出防止剤を用いた際の、モリブデン溶出量と時間との関係を示す線図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、モリブデン溶出防止剤及びモリブデン溶出防止方法に関し、特に、生活環境中へのモリブデンの溶出を確実に防止することができるモリブデン溶出防止剤及び、モリブデン含有材からのモリブデンの溶出を効率的にかつ確実に防止処理することができるモリブデン溶出防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場跡地や廃棄物の最終処分場の跡地等は、土壌が安定化するまで、何十年と放置して、安定化させているのが一般的であるが、これらの地盤の多くは、例えば海浜等の埋立地等であり、その有用性は高く、可能な限り早期に活用が望まれている場所である。
【0003】
然し、種々雑多な廃棄物の安定化には、長期年月がかかり、更には重金属の有害物質を含有する場合には、これらの重金属の溶出が発生することがあり、好ましくない環境問題を、長期間さらけ出している場合が多い。
社会環境の観点から、又、社会経済的な面からも、早期に無害化して、土地として活用する事は、重要な課題である。
【0004】
上記課題に鑑み、土壌中の重金属の溶出を防止する方法として、特開2001−79536号公報には、セメント系固化材に、スラグと、亜硫酸化合物、チオ硫酸化合物、硫化物の少なくとも1種からなる添加剤とを混合してなる重金属固定用固化材が開示されている。
【0005】
また、特許第3271534号には、鉛、六価クロム、ヒ素及びセレンを含有する灰からこれらの重金属を処理する方法として、当該灰に対し、水と、所定量の特定のリン酸系重金属固定化剤及び第一鉄化合物とを混練して処理する方法が開示されている。
【0006】
一方、モリブデンは生体必須金属であるが、モリブデンを過剰吸入すると、中毒症状としての腎肺症、慢性暴露による過尿酸血症や痛風を発症するおそれがあるとともに、貧血、不妊、骨粗鬆症などの発症の誘引元素であり、また銅と拮抗関係にあるために、銅欠乏症を生ぜしめることもある。
【0007】
また、モリブデンは、平成5年4月28日の環水規第121号による環境庁水質保全局長通知によると、水質要監視項目(指針値;0.07mg/L以下)となっている。
従って、モリブデンの生活環境中への溶出を防止することが望まれている。
【0008】
しかし、上記したような従来の重金属固定化材は、モリブデン汚染土壌等のモリブデン含有材からモリブデンの溶出を短時間でかつ安定的に防止するには不充分であり、溶出防止効果はあまり期待できなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、短時間でかつ有効に、生活環境中へのモリブデンの溶出、例えばモリブデン汚染土壌からのモリブデンの溶出を防止することができる、モリブデン溶出防止剤を提供することである。
特に、モリブデンの溶出処理を行なうと直ちにモリブデンを固定化することができるモリブデン溶出防止剤を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記本発明のモリブデン溶出防止剤を用いて、簡易かつ効率的に、かつ安定にモリブデンの生活環境中への溶出、例えばモリブデン汚染土壌からのモリブデンの溶出を短時間でかつ確実に防止処理することができる、モリブデン溶出防止方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明者らが検討した結果、所定量の鉄塩化合物とセメント系固化材とを含む剤料は、モリブデンの固定化が可能となることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明のモリブデン溶出防止剤は、鉄塩化合物をセメント系固化材に含有させてなることを特徴とする。
好適には、上記モリブデン溶出防止剤において、鉄塩化合物をセメント組成物100重量部に対して、Feに換算して0.01〜5重量部含有させてなることを特徴とする。
【0012】
本発明のモリブデン溶出防止方法は、本発明のモリブデン溶出防止剤、モリブデン含有材及び水を加えて混練して、当該モリブデン含有材を固化することを特徴とする。
好適には、前記モリブデン溶出防止方法において、モリブデン含有材が、モリブデン含有土壌であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明を、以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のモリブデン溶出防止剤は、鉄塩化合物をセメント系固化材に含有させてなるものである。
通常、セメント系固化材は硬化するのに一定の時間を要し、硬化するまでの間、モリブデンの溶出を完全に防止することは困難であったが、本発明においては、モリブデンを含有させることにより、セメント系固化材が完全に硬化するまでの間であっても、短時間でかつ充分にモリブデンの溶出を防止することが可能となる。
【0014】
本発明のモリブデン溶出防止剤に使用される鉄塩化合物としては、硫酸第一鉄(FeSO4)、硫酸第二鉄(Fe2(SO4)3)、塩化第一鉄(FeCl2)、塩化第二鉄(FeCl3)、硝酸第一鉄(Fe(NO3)2)、硝酸第二鉄(Fe(NO3)2)、及びこれらの含水塩(例えば、FeSO4・7H2O,FeCl3・4H2O、FeCl3・6H2O、Fe(NO3)3・9H2O等)等の、第一鉄塩化合物や第二鉄塩化合物を使用することができ、好適には、モリブデンの溶出防止性の点から第一鉄塩化合物を好適に使用できる。
これらの鉄塩化合物は、1種類のみを使用しても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
また、本発明のモリブデン溶出防止剤に用いられるセメント系固化材としては、セメントのみの他、セメントに石膏及び/または石灰が混合された混合物等を例示できる。
具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、等のポルトランドセメント系混合セメント、アルミナセメント、膨張セメント、超速硬セメント等の特殊セメント等を挙げることができる。
【0016】
上記鉄塩化合物とセメント系固化材との混合割合は、セメント系固化材100重量部に対して、鉄塩化合物がFeに換算して0.01〜5重量部、好適には0.5〜4重量部であることが好ましい。
かかる範囲で鉄塩化合物が含有されることにより、モリブデンの溶出を早期にかつ有効に抑制することができるからである。
【0017】
このように、本発明のモリブデン溶出防止剤は、セメント系固化材と鉄塩化合物との両者を含むことにより、アルカリ性であるセメント固化材と鉄塩化合物との相乗作用が発現される。
具体的には、アルカリ性の水溶液中、鉄の水酸化化合物が形成されて沈殿する際に、モリブデン酸イオンとして存在するモリブデンを有効に捕獲して、共沈する等の作用が発現し、モリブデンの溶出を効果的に防止することができると考えられる。
【0018】
また、本発明のモリブデン溶出防止方法は、モリブデン含有材、例えばモリブデン含有汚染土壌に、上記本発明のモリブデン溶出防止剤及び水を加えて混練して、当該モリブデン含有材を固化することにより、モリブデンの溶出防止処理を安定に行なうものである。
【0019】
モリブデン汚染土壌等のモリブデン含有材に対する、本発明のモリブデン溶出防止剤の添加量は、モリブデンの溶出が抑制されれば特に限定されず、モリブデン含有材の物性やpHにより適宜選定することができる。例えば、モリブデン含有材が砂質土である場合には、モリブデン溶出防止剤は50〜200kg/m3、粘土である場合には100〜400kg/m3、浚渫土である場合には200〜600kg/m3の添加量を用いることが適当である。
【0020】
また、水は、必要に応じて添加され、モリブデン含有材とモリブデン溶出防止剤との混合方法によって適宜選定される。例えば、表層土壌の改良では粉体混合方式が採用され、水は必要とされず、モリブデン含有材とモリブデン溶出防止剤とを混合した後、転圧することによりモリブデンの溶出を防止できる。また、深層土壌の改良においては、前記粉体方式又はスラリー混合方式が採用され、スラリー混合方式の場合には、ハンドリング性等の点から、水モリブデン溶出防止剤比で60〜100%となるように水を混合する。
【0021】
本発明においては、例えば、モリブデン汚染土壌等のモリブデン含有材への水及びモリブデン溶出防止剤の添加順序は特に制限されず、モリブデン含有材に、予めモリブデン溶出防止剤を混合し、これに水を添加して混練しても、モリブデン含有材、水、モリブデン溶出防止剤を同時に添加して混練しても、モリブデン溶出防止処理効果は変わらない。また、モリブデン含有材に、モリブデン溶出防止剤を構成するセメント系固化材と鉄塩化合物と、水とを同時に混合混練しても、水に予め鉄塩化合物を混合して用いてもかまわない。
【0022】
また、その混練方法は、特に限定されず、モリブデン溶出防止剤、モリブデン含有材及び水が均一に混合できれば、公知の任意の方法を用いることができる。
【0023】
本発明のモリブデン溶出防止方法は、モリブデンを短時間で確実に溶出防止できるため、例えば、モリブデンを含有する土壌の地盤改良等に有効に使用することができる。
【0024】
(実施例)
本発明を以下の実施例、比較例及び試験例により説明する
実施例1
普通ポルトランドセメント(商品名;住友大阪セメント株式会社製)100重量部に対して、塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)を2重量部添加し(Fe換算で0.88重量部)、均一に混合して、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0025】
実施例2
塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)の量を2重量部から5重量部(Fe換算で2.21重量部)に代えた以外は、実施例1と同様にして、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0026】
実施例3
2重量部の塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)の代わりに、10重量部(Fe換算で3.68重量部)の硫酸第一鉄(FeSO4)(試薬;国産化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0027】
実施例4
2重量部の塩化第一鉄(FeCl2)(試薬;キシダ化学株式会社製)の代わりに、10重量部(Fe換算で2.01重量部)の硫酸第一鉄の七水和物(FeSO4・7H2O)(試薬;キシダ化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明のモリブデン溶出防止剤を得た。
【0028】
比較例1
比較のため、普通ポルトランドセメント(商品名;住友大阪セメント株式会社製)を、モリブデン溶出防止剤とした。
【0029】
試験例1
実施例1〜4及び比較例1のモリブデン溶出防止剤を用いて、モリブデン溶出防止試験を行なった。
(試験用汚染土壌の調整)
試験用土壌を調製するにあたり、試料土として豊浦砂を用いた。
モリブデンは、原子吸光分析用モリブデン標準原液1000mg/l(関東化学株式会社製)を用い、混練水が7ppm(平成5年4月28日の環水規第121号による環境庁水質保全局長通知による水質要監視項目指針値の100倍)となるように汚染水を調製後、乾燥質量が1kgの前記試料土(豊浦砂)に、100gの汚染水を混合して、これを試験用汚染土壌とした。
【0030】
(試験方法)
地盤工学会基準JGS0821に準拠して、上記実施例1〜4及び比較例1で得られたモリブデン溶出防止剤、上記試験用汚染土壌及び水を混練して、当該試験用汚染土壌を固化体とした。
但し、かかる場合、前記試験用汚染土壌に対するモリブデン溶出防止剤の混合添加量は、300kg/m3、水は240kg/m3(水固化材比80%)とした。
次に、得られた固化体を環境庁告示46号に準拠して、モリブデンを溶出させ、その溶出量(mg/l)を、混練10分後、1時間後、3時間後、6時間後、24時間後の固化体それぞれについて測定した。
この結果を次の表1に示す。また、実施例2及び比較例1の結果を図1に表す。
【0031】
【表1】
判定は、環水規第121号による環境庁水質保全局長通知による水質要監視項目の指針値が0.07mg/l以下の場合を○、前記数値を超える場合を×で表したものである。
【0032】
上記表1及び図1から明らかなように、比較例1のモリブデン溶出防止剤を用いた場合には、モリブデンの溶出量は、材齢経過とともに、減少しているが、若材齢の際には、モリブデンの溶出を充分に溶出することができず、環水規第121号による環境庁水質保全局長通知による水質要監視項目(指針値;0.07mg/l)を満足することができない。
一方、本発明の実施例1〜4によるモリブデン溶出防止剤は、混合直後から充分な溶出防止効果を有することがわかる。
【0033】
【発明の効果】
本発明のモリブデン溶出防止剤は、モリブデンを含有する材、例えばモリブデン汚染土壌と混合することで、短時間でかつ充分に、モリブデンの固定化を可能として、モリブデンの溶出を防止することができる。
【0034】
また、本発明のモリブデン溶出防止方法によれば、モリブデンを安定に固定化することができ、安全にかつ短時間で確実にモリブデンの生活環境中への溶出を防止することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明及び従来のモリブデン溶出防止剤を用いた際の、モリブデン溶出量と時間との関係を示す線図。
Claims (4)
- 少なくとも1種類の鉄塩化合物をセメント系固化材に含有させてなることを特徴とするモリブデン溶出防止剤。
- 請求項1記載のモリブデン溶出防止剤において、鉄塩化合物をセメント系固化材100重量部に対して、Feに換算して0.01〜5重量部含有させてなることを特徴とするモリブデン溶出防止剤。
- 請求項1または2記載のモリブデン溶出防止剤、モリブデン含有材及び水を加えて混練して、当該モリブデン含有材を固化することを特徴とするモリブデン溶出防止方法。
- 請求項3記載のモリブデン溶出防止方法において、モリブデン含有材が、モリブデン含有土壌であることを特徴とするモリブデン溶出防止方法。
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JP2013107780A (ja) * | 2011-11-17 | 2013-06-06 | Taiheiyo Cement Corp | セメントクリンカおよびセメント組成物 |
IT201900015797A1 (it) * | 2019-09-06 | 2021-03-06 | Ecotec Gestione Impianti S R L | Procedimento per il trattamento di stabilizzazione ed inertizzazione di rifiuti solidi o fangosi contenenti molibdeno, arsenico e mercurio lisciviabili in matrici contenenti metalli pesanti e contaminanti organici. |
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2003
- 2003-03-04 JP JP2003056794A patent/JP2004261763A/ja active Pending
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